JP2008280512A - 平版印刷インキ用ベースインキの製造方法および該製造方法により得られる平版印刷インキ用ベースインキ並びに該平版印刷インキ用ベースインキを用いた平版印刷インキ - Google Patents

平版印刷インキ用ベースインキの製造方法および該製造方法により得られる平版印刷インキ用ベースインキ並びに該平版印刷インキ用ベースインキを用いた平版印刷インキ Download PDF

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Abstract

【課題】生産性やコストの面で非常に有効な手段である、粗製銅フタロシアニンの乾式粉砕した摩砕物および該摩砕物を用い直接印刷インキを製造する方法において、高粘度化が防止されたベースインキや、α型結晶残存による色相の赤味化や分散性劣化に起因する流動性の劣化・高粘度化が防止された平版印刷インキを提供することである。
【解決手段】粗製銅フタロシアニンに、樹脂粘度が0.5〜5Pa・s(25℃)であるロジン変性フェノール樹脂を該銅フタロシアニンに対して1〜200重量%添加し、60〜180℃で乾式粉砕する工程Aと該工程Aで得られた乾式粉砕物と印刷インキ用溶剤、印刷インキ用ワニス及び印刷インキ用補助剤を添加・処理して製造される工程Bとからなることを特徴とする平版印刷インキ用ベースインキの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、粗製銅フタロシアニンおよびロジン変性フェノール樹脂を添加し乾式粉砕する工程A、次いで印刷インキ用溶剤、印刷インキ用ワニス及び印刷インキ用補助剤を添加し、混合される工程Bからなる平版印刷インキ用ベースインキ並びに該平版印刷インキ用ベースインキを用いた平版印刷インキに関わるものである。
通常、合成後の銅フタロシアニンは粗製銅フタロシアニンと呼ばれ、10〜200μm程度の巨大β型結晶粒子のため、そのまま印刷インキ用顔料として使用することはできない。この粗製銅フタロシアニンを印刷インキとして使用可能な大きさ(0.02〜0.1μm程度)まで微細化(顔料化)しなければならない。顔料化には種々の方法がある。
最も一般的なのがソルベントソルトミリング法と呼ばれる方法である。この方法は粗製銅フタロシアニンに食塩などの磨砕剤とβ型への結晶転移を促進させる有機溶剤を加え磨砕する方法である。この方法によるβ型銅フタロシアニン顔料はアスペクト比(一次粒子の短径と長径の比)が1〜3で、緑味鮮明で高着色力など印刷インキに適しており、広く使用されている。しかし顔料の数倍量の磨砕剤が必要であり、この磨砕剤や有機溶剤を回収する工程に多くの時間と労力を必要とする。
これに対して粗製銅フタロシアニンを乾式で粉砕した後に有機溶剤等で処理するする方法も知られている。この場合、粉砕時に機械的な力を加えることでβ型結晶の一部がα型結晶へ転移するため、再びβ型に転移させるために、この磨砕物を有機溶剤と共に加熱処理しなければならない。この方法はソルベントソルトミリング法に比べて工程が簡略化され、コスト的に有利であるが、有機溶剤で加熱処理する際に粒子が針状に成長しアスペクト比が大きくなり、インキ化した際の顔料分散性が必ずしも良好ではなく、色相が赤味になることや流動性劣化など品質面で問題がある。
一方、顔料から印刷インキを製造する方法としては乾燥顔料を用いる方法と水分を40〜70重量%含んだウエットケーキ顔料を用いる方法が一般的である。乾燥顔料を用いるインキ化方法は乾燥顔料を印刷インキワニス、溶剤、添加剤などと混合した後、ビーズミル、3本ロールなどを用いて顔料を分散させる方法であるが、乾燥顔料は一次粒子の凝集が強いため顔料を分散させるために多くのエネルギーを必要とする。ウエットケーキ顔料を用いる方法はフラッシング法と呼ばれている。フラッシング法はウエットケーキ顔料を印刷インキワニス、溶剤、添加剤などと混合し顔料を水相からワニス相へ転換させる方法であり、乾燥顔料のインキ化工程のエネルギーは必要としないもののニーダーなどの大型装置が必要となり、またフラッシングの工程においては排水も発生する。
この様にβ型銅フタロシアニンの印刷インキを製造するためには、顔料化工程とインキ化工程で非常に多くの時間とエネルギーが必要である。
低コストの印刷インキを提供するためには、顔料の形態を経由せずに粗製銅フタロシアニンから直接インキを製造することが考えられ、実際に粗製銅フタロシアニンを印刷インキ用ワニスまたは印刷インキ用溶剤と混合した後、ビーズミルを用いてインキ化と同時に顔料化を行なう方法が知られている。しかしながら、印刷インキワニス中での顔料化は摩砕効率が低いため、超微細なビーズを用いた分散ミルなどを必要とし、エネルギー効率、品質などの点で問題が多い。
特公昭55−6670号公報には、粗製銅フタロシアニンを一度乾式で磨砕した後、そのままインキ化する方法が記載されている。乾式の磨砕は効率的に行なわれるため、非常に有効な方法である。しかしながら乾式粉砕した磨砕物は強固な凝集体であり、またα/β型結晶の混合物となってしまうため、インキ中での磨砕物の分散やβ型結晶への再転移は非常に困難である。
この様な問題を解決するため、英国特許第1224627号公報には、粗製銅フタロシアニンを乾式で摩砕する際に1〜8倍量の樹脂を添加する方法が、また、特許第3159049号公報では、粗製銅フタロシアニンに対して、樹脂を1〜200重量%、及び溶剤を該樹脂に対して0.5〜20重量%添加し、70〜90℃で乾式粉砕する方法が記載されている。これらの方法は、添加した樹脂の効果により銅フタロシアニン粒子の凝集を防止する意味と添加した樹脂が後に使用する樹脂と同じものを使用できる点で非常に有効な方法と言える。
しかしながら乾式粉砕した粗製銅フタロシアニンの摩砕物を溶剤処理する方法、または印刷インキ用ワニスまたは印刷インキ用溶剤中で処理することで直接印刷インキを製造する方法において、樹脂と共に乾式粉砕する方法は生産性やコストの面で非常に有効な手段である反面、α型結晶残存による色相の赤味化や分散性劣化に起因する流動性の劣化・高粘度化など品質面での問題は依然として残り、特にインキ中の色素濃度を上げた際には、これらの問題点がより顕著となる。
この問題に関し、特開2006−96923号公報記載のギルソナイト樹脂を添加する方法は、流動性・高粘度化の問題を解決するのに有効な手段である反面、ギルソナイト樹脂が有する濃茶色により印刷インキの色相が濁るという問題がある。
また、特開2006−96921号公報及び特開2006−206804記載の顔料誘導体などを乾式粉砕時に添加する方法は、上記問題の解決に一定の効果を有するものの未だ不十分であり、またこのような誘導体の添加は印刷インキの印刷適性やコストの面において好ましくない影響を与える場合が多い。
一方、近年の平版印刷インキ市場では、平版印刷の対象となる印刷用紙の多様化への対応、印刷品質・付加価値・生産性のさらなる向上など様々な顧客ニーズが存在し、このような要望を満たすため、インキメーカーでは多品種の平版印刷インキを生産する必要に迫られている。そして、このような多品種のインキを生産するには、顔料を分散した共通のベースインキに顧客ニーズに応じた調整用ワニスや添加剤を加えて最終インキを生産する方法が効率よく、ベースインキ中の色素濃度は高いほど多品種に展開できて好ましいが、少なくとも30重量%を超えるものが望まれている。
しかしながら、このような色素濃度の高いベースインキの製造においては、粘度が高いため分散性が劣化したり、生産機への動力負荷が大きくなってしまう。また得られたインキも、先述の通りα型結晶残存による色相の赤味化や分散性劣化に起因する流動性の劣化・高粘度化など看過できない問題が山積し、このため生産効率・品質面を考慮するとベースインキ組成物中の色素濃度は、公知の技術によっては25重量%程度が上限であった。
一般的に知られているアルキッド樹脂などに代表される良分散性樹脂、または特開2006−96922号公報記載のフタロシアニン誘導体に代表される顔料誘導体などをインキ製造時に添加する方法は、上記問題の解決に一定の効果を有するが、所望の性能を得るには未だ不十分であり、またこれらの添加剤は印刷インキの印刷適性やコストの面において好ましくない影響を与える場合が多い。
特公昭55−6670号公報 英国特許第1224627号公報 特許第3159049号公報 特開2006−96921号公報 特開2006−96922号公報 特開2006−96923号公報 特開2006−206804号公報
生産性やコストの面で非常に有効な手段である、粗製銅フタロシアニンの乾式粉砕した摩砕物および該摩砕物を用い直接印刷インキを製造する方法において、高粘度化が防止されたベースインキや、α型結晶残存による色相の赤味化や分散性劣化に起因する流動性の劣化・高粘度化が防止された平版印刷インキを提供することである。
第一の発明は、粗製銅フタロシアニンに、樹脂粘度が0.5〜5Pa・s(25℃)であるロジン変性フェノール樹脂を該銅フタロシアニンに対して1〜200重量%添加し、60〜180℃で乾式粉砕する工程Aと該工程Aで得られた乾式粉砕物と印刷インキ用溶剤、印刷インキ用ワニス及び印刷インキ用補助剤を添加・処理して製造される工程Bとからなることを特徴とする平版印刷インキ用ベースインキの製造方法である。ここで樹脂粘度とは樹脂/アマニ油=1/2の重量比の混合物を180〜200℃で加熱攪拌溶解して得たワニスのコーンプレート型粘度計による25℃での粘度である。
第二の発明は、工程Bにおける印刷インキ用溶剤として、炭素数12〜24の飽和又は不飽和脂肪酸と炭素数1〜8の直鎖又は分岐のモノアルコールから構成される動植物油由来の脂肪酸モノエステルが、該銅フタロシアニンに対して5〜180重量%添加されることを特徴とする第一発明の平版印刷インキ用ベースインキの製造方法である。
第三の発明は、第一または第二発明記載の方法により得られる平版印刷インキ用ベースインキである。
第四の本発明は、第三の本発明記載の平版印刷インキ用ベースインキにおいて、当該ベースインキ中の色素濃度が30〜45重量%であることを特徴とする平版印刷インキ用ベースインキである。
第五の本発明は、第三または第四発明記載の平版印刷インキ用ベースインキを用いることを特徴とする平版印刷インキである。
本発明の方法によって、粗製銅フタロシアニンを乾式粉砕する方法により生産される銅フタロシアニン顔料組成物を使用したベースインキ生産の際に問題であった高粘度化や、このベースインキから得られた平版印刷インキの色相の赤味化、インキの流動性劣化や高粘度化など品質面での問題が改善され、生産性やコスト、品質面の要求を満足させつつ組成物中の色素濃度を30〜45%まで高めた平版印刷インキ用ベースインキを提供することが可能となった。
本発明の工程Aにおける乾式粉砕物は、ビーズ等の粉砕メディアを内蔵した粉砕機を使用して、実質的に液状物質を介在させないで粗製銅フタロシアニンを粉砕するものである。粉砕は、粉砕メディア同士の衝突による粉砕力や破壊力を利用して行なわれる。乾式粉砕装置としては、乾式のアトライター、ボールミル、振動ミルなどの公知の方法を用いることができる。また、使用する樹脂の酸化防止、もしくは生産工程における安全性確保のため、必要に応じて窒素ガスなどを流すことで乾式粉砕装置内部を脱酸素雰囲気として乾式粉砕を行なってもよい。
また、乾式粉砕は60〜180℃が好ましく、加熱下で行なってもよい。乾式粉砕を行なうことにより粗製銅フタロシアニンのβ型結晶の一部がα型へ結晶転移し、粉砕物はα/β混合型結晶となる。この際、乾式で粉砕する場合の温度を低温で行なうと磨砕物中のα型結晶の割合が増加し、後工程で再びβ型結晶へと転移させるための負担が増加するばかりか、最終的なβ型結晶粒子のアスペクト比が大きくなってしまい好ましくない。また、この温度を高温で行なうと乾式粉砕装置内部での樹脂の固着が生じる危険性が高くなる。樹脂の固着は装置内部を閉塞させ、生産に支障をきたすことがあり注意しなくてはならない。
本発明の工程Aで添加される樹脂は平版印刷インキ用として最も利用されているロジンフェノール樹脂である。添加量は粗製銅フタロシアニンに対して、1〜200重量%であり、好ましくは20〜80重量%である。樹脂の添加量が少ないとベースインキの分散性が悪くなり、添加量が多すぎると乾式粉砕装置内部での樹脂の固着が生じる危険性が高くなり生産に支障をきたす。また、装置内部を低温に保つと固着は防止できるが、β型結晶粒子のアスペクト比が大きくなり、得られたインキの色相は赤味となってしまう。
また本発明の工程Aで添加される樹脂は、25℃での樹脂粘度が0.5〜5Pa・sであるロジン変性フェノール樹脂である。ここで樹脂粘度とは樹脂/アマニ油=1/2の重量比の混合物を180〜200℃で加熱攪拌溶解して得たワニスのコーンプレート型粘度計による25℃での粘度である。樹脂粘度が5Pa・s以上であると、樹脂の溶解、膨潤及びα型結晶のβ型結晶への転移により長い時間が必要となりα型結晶が残存しやすいため、色相赤味や流動性劣化などの問題が発生する。また、樹脂粘度が0.5Pa・s以下であると平版印刷インキに要求される凝集力が不足するため、印刷時の地汚れ発生や印刷物のセット性、乾燥性劣化などの問題を招く。
当該ロジン変性フェノール樹脂の原料としては特に制約はなく、ロジンとしてはガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなど、フェノール樹脂としてはノボラック型、レゾール型、ノボラック−レゾール複合型のフェノール樹脂など、ポリオールとしてはグリセリン、ペンタエリスリトールなどが代表的に使用できる。また、前記原料を用いたロジン変性フェノール樹脂の製法や樹脂粘度の調整方法に関して、樹脂原料の投入順、反応触媒、温度や時間などの反応条件に特に制限はない。
本発明の工程Aにおける粗製銅フタロシアニンの乾式粉砕物はα/β混合結晶であるため、印刷インキ溶剤又はワニスと混合し加熱処理することで全てをβ型結晶へ転移させる必要がある。一般的に、この工程は芳香族を含まない溶剤を使用した場合は非常に困難であるが、本発明の工程Bでは、樹脂粘度が0.5〜5Pa・sであるロジン変性フェノール樹脂を使用することで、β型への結晶転移が容易となる。つまり、処理された樹脂が印刷インキ用溶剤またはワニス中に溶解することで粒子の分散、β型への結晶移転が進行する。本発明の工程Bの温度は高い方が効果的であり、好ましくは80〜170℃である。
このβ型への結晶転移は、穏やかな撹拌で十分に進行し、特に分散機などは必要としない。摩砕物の十分な分散とα型結晶のβ転移は使用する印刷インキ用溶剤によって異なるが数10分〜3時間程度で完了するが、特にこの工程の時間短縮を希望する場合は、従来から使用されているビーズミル分散機などを用いて前述の温度条件で処理することで、その時間を大幅に短縮することも可能である。
本発明の工程Bの印刷インキ用溶剤または印刷インキ用ワニス中の溶剤としては、高沸点石油系溶剤、パラフィン系及びナフテン系溶剤、高級アルコール系溶剤、動植物油類、脂肪酸エステル類、アルキルエーテル類などが挙げられ、これらの溶剤を単独あるいは2種類以上の組み合わせで任意に使用できるが、動植物油、または動植物油由来の脂肪酸モノエステルが好適であり、より好ましくは炭素数12〜24の飽和又は不飽和脂肪酸と炭素数1〜8の直鎖又は分岐のモノアルコールから構成される動植物油由来の脂肪酸モノエステルが適し、大豆油メチルエステル、大豆油ブチルエステル、大豆油イソヘキシルエステルなどが例示され得る。
本発明の工程Bの印刷インキ用溶剤または印刷インキ用ワニス中の溶剤として添加される炭素数12〜24の飽和又は不飽和脂肪酸と炭素数1〜8の直鎖又は分岐のモノアルコールから構成される動植物油由来の脂肪酸モノエステルの添加量は、該銅フタロシアニンに対して5〜180重量%であり、好ましくは25〜100重量%である。添加量が少なすぎても添加効果は得られず、添加量が多すぎると印刷物のセット性、乾燥性劣化などの問題を招く。
本発明の工程Bの印刷インキ用溶剤または印刷インキ用ワニス中の溶剤として添加される炭素数12〜24の飽和又は不飽和脂肪酸と炭素数1〜8の直鎖又は分岐のモノアルコールから構成される動植物油由来の脂肪酸モノエステルは、平版印刷インキ用溶剤として一般的に用いられている石油系溶剤と比較して溶解性に優れるため、乾式粉砕時に添加した樹脂の溶解及びフタロシアニンのβ型結晶への転移を促進する。このような効果を有する脂肪酸モノエステルの添加により、色相が緑味で優れた流動性を有するベースインキの製造が可能となり、また石油系溶剤に代わる動植物油由来脂肪酸エステルの利用は環境保護の側面からも望ましいものである。
本発明の工程Bの印刷インキ用溶剤または印刷インキ用ワニス中の溶剤として添加される炭素数12〜24の飽和又は不飽和脂肪酸と炭素数1〜8の直鎖又は分岐のモノアルコールから構成される動植物油由来の脂肪酸モノエステルについて、炭素数11以下の飽和又は不飽和脂肪酸からなる脂肪酸モノエステルでは溶解力が高すぎ、ブランケットやゴムローラと言った印刷資材への悪影響が懸念され、また炭素数25以上の飽和又は不飽和脂肪酸もしくは炭素数9以上のモノアルコールからなる脂肪酸モノエステルでは、溶解力が不足するため、樹脂の溶解やフタロシアニンのβ型結晶への転移促進という効果を得ることが難しくなる。
同様に工程Bにおける印刷インキ用ワニスに使用する樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂など印刷インキに適した樹脂を、単独あるいは2種類以上の組み合わせで任意に使用できる。
また、本発明の工程Bにおける補助剤として、ゲル化剤、酸化防止剤などを必要に応じて任意に添加することができる。
この様にして製造された平版印刷インキ用ベースインキは低粘度である。また、このベースインキから作成した平版印刷インキを従来から行なわれているソルベントソルトミリング法の顔料から製造された平版印刷インキと比較したところ、流動性、色相などの点において同等以上の品位を有していることが確認された。
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもではない。なお、以下の例中、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」「重量%」を示す。なお、実施例中で標準インキとして使用しているのは、粗製銅フタロシアニンをソルベントソルトミリング(食塩5倍量)により顔料化したウエットケーキ顔料を用いて、フラッシング法により製造したβ型銅フタロシアニン顔料インキである。また、インキしまりの指標となる粘弾性は、レオメトリックス社Dynamic Analyzer RDA-3を用いて評価し、結晶型の測定にはX線回折装置を使用した。
(フェノール樹脂製造例1)
撹拌機、水分離器付還流冷却器、温度計付4つ口フラスコにp−ノニルフェノール1030重量部、パラホルムアルデヒド290重量部、キシレン800重量部からなる混合物を加熱溶解後、48%水酸化ナトリウム水溶液80重量部を添加し、70〜80℃で5時間反応させる。反応後6N塩酸125重量部、水道水200重量部を加えて撹拌静置し、上澄み層を取り出し水洗して不揮発分62%のレゾール型フェノール樹脂のキシレン溶液約2100重量部を得、これをAレゾール液とした。
(フェノール樹脂製造例2)
Aレゾール液の製造工程中のp−ノニルフェノールをp−tert−ブチルフェノール800重量部、p−オクチルフェノール250重量部に置換した以外は同様な操作を行ない、不揮発分63%のレゾール型フェノール樹脂のキシレン溶液約2000重量部を得、これをBレゾール液とした。
(ロジン変性フェノール樹脂製造例1)
撹拌機、リービッヒ冷却管、温度計付4つ口フラスコにガムロジン800重量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、200℃で加熱溶解し、Aレゾール液450重量部を120〜200℃で添加、反応後、ペンタエリスリトール70部を仕込み、250〜260℃で、酸価20以下になるまでエステル化して、重量平均分子量15000、樹脂粘度4Pa・sのロジン変性フェノール樹脂1を得た。
(ロジン変性フェノール樹脂製造例2)
撹拌機、リービッヒ冷却管、温度計付4つ口フラスコにガムロジン700重量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、200℃で加熱溶解し、Aレゾール液550重量部を120〜200℃で添加、反応後、ペンタエリスリトール60部を仕込み、250〜260℃で、酸価20以下になるまでエステル化して、重量平均分子量15000、樹脂粘度1Pa・sのロジン変性フェノール樹脂2を得た
(ロジン変性フェノール樹脂製造例3)
撹拌機、リービッヒ冷却管、温度計付4つ口フラスコにガムロジン700重量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、200℃で加熱溶解し、Bレゾール液550重量部を120〜200℃で添加、反応後、ペンタエリスリトール60部を仕込み、250〜260℃で、酸価20以下になるまでエステル化して、重量平均分子量50000、樹脂粘度20Pa・sのロジン変性フェノール樹脂3を得た。
(平版印刷インキ用希釈ゲルワニスの製造)
撹拌機、リービッヒ冷却管、温度計付4つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂3(樹脂粘度20Pa・s、重量平均分子量50000)48重量部、大豆油5重量部、AFソルベント5号(新日本石油(株)製)46重量部を仕込み、190℃に昇温、同温で30分間攪拌した後、放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1重量部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み、190℃で30分間攪拌して平版印刷インキ用希釈ゲルワニス(以下ゲルワニスと称す)を得た。
(実施例1)
乾式アトライターに、粗製銅フタロシアニン70重量部、ロジン変性フェノール樹脂1(樹脂粘度4Pa・s、重量平均分子量15000)30重量部を仕込み、窒素気流下において160℃で1時間粉砕を行なった。次に、得られた摩砕物24重量部に、ゲルワニス13重量部、大豆油13重量部を加え120℃にて1時間緩やかに攪拌した後、60℃の3本ロールで一回練肉したところ、顔料粒子は7.5μm以下に分散された。このベースインキの粘度を50℃で測定したところ低粘度であった。次に、得られたベースインキ50重量部にゲルワニス、AF5号ソルベント、添加剤を加えて粘度75〜80Pa・s(25℃)に調整し平版印刷インキ1を得た。このインキ1を、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本実施例のインキ1は着色力、流動性、光沢、色相などの点において標準インキと同等の品位を有していた。また、α型結晶の含有率は1%以下であった。
(実施例2)
乾式アトライターに、粗製銅フタロシアニン70重量部、ロジン変性フェノール樹脂2(樹脂粘度1Pa・s、重量平均分子量15000)30重量部を仕込み、窒素気流下において160℃で1時間粉砕を行なった。次に、得られた摩砕物24重量部に、ゲルワニス13重量部、大豆油13重量部を加え120℃にて1時間緩やかに攪拌した後、60℃の3本ロールで一回練肉したところ、顔料粒子は7.5μm以下に分散された。このベースインキの粘度を50℃で測定したところ低粘度であった。次に、得られたベースインキ50重量部にゲルワニス、AF5号ソルベント、添加剤を加えて粘度75〜80Pa・s(25℃)に調整し、計100重量部の平版印刷インキ2を得た。このインキ2を、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本実施例のインキ2は着色力、流動性、光沢、色相などの点において標準インキと同等の品位を有していた。また、α型結晶の含有率は1%以下であった。
(実施例3)
乾式アトライターに、粗製銅フタロシアニン70重量部、ロジン変性フェノール樹脂1(樹脂粘度4Pa・s、重量平均分子量15000)35重量部を仕込み、窒素気流下において160℃で1時間粉砕を行なった。次に、得られた摩砕物25重量部に、ゲルワニス13重量部、大豆油イソヘキシルエステル12重量部を加え120℃にて1時間緩やかに攪拌した後、60℃の3本ロールで一回練肉したところ、顔料粒子は7.5μm以下に分散された。このベースインキの粘度を50℃で測定したところ低粘度であった。次に、得られたベースインキ50重量部にゲルワニス、AF5号ソルベント、添加剤を加えて粘度75〜80Pa・s(25℃)に調整し、計100重量部の平版印刷インキ3を得た。このインキ3を、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本実施例のインキ2は着色力、流動性、光沢、色相などの点において標準インキと同等の品位を有していた。また、α型結晶の含有率は1%以下であった。
(実施例4)
乾式アトライターに、粗製銅フタロシアニン70重量部、ロジン変性フェノール樹脂2(樹脂粘度1Pa・s、重量平均分子量15000)35重量部を仕込み、窒素気流下において160℃で1時間粉砕を行なった。次に、得られた摩砕物30重量部に、ゲルワニス8重量部、大豆油ブチルエステル12重量部を加え120℃にて1時間緩やかに攪拌した後、60℃の3本ロールで一回練肉したところ、顔料粒子は7.5μm以下に分散された。このベースインキの粘度を50℃で測定したところ低粘度であった。次に、得られたベースインキ50重量部にゲルワニス、AF5号ソルベント、添加剤を加えて粘度75〜80Pa・s(25℃)に調整し、計100重量部の平版印刷インキ4を得た。このインキ4を、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本実施例のインキ2は着色力、流動性、光沢、色相などの点において標準インキと同等の品位を有していた。また、α型結晶の含有率は1%以下であった。
(比較例1)
乾式アトライターに粗製銅フタロシアニン70重量部を加え窒素気流下において160℃で1時間粉砕を行なった。次に、得られた摩砕物16.8重量部に、ゲルワニス20.2重量部、大豆油13重量部を加え120℃にて1時間緩やかに攪拌した後、60℃の3本ロールで三回練肉したところ、顔料粒子は12.5μm以下であった。このベースインキの粘度を50℃で測定したところ高粘度で測定不可であった。次に、得られたベースインキ50重量部にゲルワニス、AF5号ソルベント、添加剤を加えて粘度75〜80Pa・s(25℃)に調整し、計100重量部の平版印刷インキ5を得た。このインキ5を、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本比較例のインキ5の流動性やインキしまりは劣っており、色相は赤味でα型結晶の含有率が6%であった。
(比較例2)
乾式アトライターに、粗製銅フタロシアニン70重量部、ロジン変性フェノール樹脂3(樹脂粘度20Pa・s、重量平均分子量50000)30重量部を仕込み、窒素気流下において160℃で1時間粉砕を行なった。次に、得られた摩砕物24重量部に、ゲルワニス13重量部、大豆油13重量部を加え120℃にて1時間緩やかに攪拌した後、60℃の3本ロールで二回練肉したところ、顔料粒子は7.5μm以下に分散された。このベースインキの粘度を50℃で測定したところ高粘度であった。次に、得られたベースインキ50重量部にゲルワニス、AF5号ソルベント、添加剤を加えて粘度75〜80Pa・s(25℃)に調整し、計100重量部の平版印刷インキ6を得た。このインキ6を、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本比較例のインキ6の流動性やインキしまりは劣っており、色相は赤味でα型結晶の含有率が2%であった。
(比較例3)
乾式アトライターに、粗製銅フタロシアニン70重量部、ロジン変性フェノール樹脂3(樹脂粘度20Pa・s、重量平均分子量50000)30重量部、AF5号ソルベント(新日本石油(株)製)5重量部を仕込み、窒素気流下において160℃で1時間粉砕を行なった。次に、得られた摩砕物24重量部に、ゲルワニス13重量部、大豆油13重量部を加え120℃にて1時間緩やかに攪拌した後、60℃の3本ロールで二回練肉したところ、顔料粒子は7.5μm以下に分散された。このベースインキの粘度を50℃で測定したところ高粘度であった。次に、得られたベースインキ50重量部にゲルワニス、AF5号ソルベント、添加剤を加えて粘度75〜80Pa・s(25℃)に調整し、計100重量部の平版印刷インキ7を得た。このインキ7を、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本比較例のインキ7の流動性やインキしまりは劣っており、色相は赤味でα型結晶の含有率が2%であった。
(比較例4)
乾式アトライターに、粗製銅フタロシアニン70重量部、ロジン変性フェノール樹脂3(樹脂粘度20Pa・s、重量平均分子量50000)35重量部を仕込み、窒素気流下において160℃で1時間粉砕を行なった。次に、得られた摩砕物25重量部に、ゲルワニス13重量部、AF5号ソルベント12重量部を加え120℃にて1時間緩やかに攪拌した後、60℃の3本ロールで二回練肉したところ、顔料粒子は7.5μm以下に分散された。このベースインキの粘度を50℃で測定したところ高粘度であった。次に、得られたベースインキ50重量部にゲルワニス、AF5号ソルベント、添加剤を加えて粘度75〜80Pa・s(25℃)に調整し、計100重量部の平版印刷インキ8を得た。このインキ8を、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本比較例のインキ8の流動性やインキしまりは劣っており、色相は赤味でα型結晶の含有率が2%であった。
(比較例5)
乾式アトライターに、粗製銅フタロシアニン70重量部、ロジン変性フェノール樹脂3(樹脂粘度20Pa・s、重量平均分子量50000)35重量部を仕込み、窒素気流下において160℃で1時間粉砕を行なった。次に、得られた摩砕物30重量部に、ゲルワニス8重量部、AF5号ソルベント12重量部を加え120℃にて1時間緩やかに攪拌した後、60℃の3本ロールで二回練肉したところ、顔料粒子は12.5μm以下に分散された。このベースインキの粘度を50℃で測定したところ高粘度で測定不可であった。次に、得られたベースインキ50重量部にゲルワニス、AF5号ソルベント、添加剤を加えて粘度75〜80Pa・s(25℃)に調整し、計100重量部の平版印刷インキ9を得た。このインキ9を、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本比較例のインキ9の流動性やインキしまりは劣っており、色相は赤味でα型結晶の含有率が4%であった。
(評価結果)
上記実施例及び比較例の顔料組成物に使用されているロジン変性フェノール樹脂、ベースインキ作成時に添加する溶剤及びベースインキ中の色素濃度について内容を表−1に纏めた。またそれぞれのベースインキについて、ロール練肉パス回数、グラインドメーターリーディング(GR:粒ゲージの読み値)、50度での粘度を、またそれぞれのインキについてα型結晶含有率、インキ流動性(スプレッドメーターによる測定)、色相、インキしまりについて評価を実施し、結果を表2に示した。
Figure 2008280512
Figure 2008280512
(α型結晶含有率の測定)
α型結晶含有率はX線回折装置を使用し、試作インキを測定した。
(スプレッドメーターによる流動性の評価方法)
スプレッドメーターに一定容量の試験インキを測り盛り、測定開始後1分後にインキが流動した中心からの距離を計測する。測定値の大きいものを流動性が高いと判定する。なお、実施例1で得られたインキ1の測定値を100とした場合の測定値を表示した。
(色相の評価方法)
白い展色紙に、試験インキを展色した後、色相を目視で観察した。
(インキしまりの評価方法)
粘弾性測定器のレオメトリックス社Dynamic Analyzer RDA-3を用いて、Dynamic Time Sweep Modeにて、貯蔵弾性率G'の経時変化を測定する(測定条件:温度40℃.各周波数(ω):0.8.Strain:30.Parallel Plate Gap:1.0mm.測定時間1時間.)。このとき6分と60分のG'の比(G'[60分]/G'[6分])を求める。この比率が高い程、インキ中に蓄えられるエネルギーが多くなりインキがしまりやすくなる。なお、実施例1で得られたインキ1の比率を100とした場合の測定値を表示した。
(粘度の測定方法)
Thermo Haake社製粘度計のHAAKE RheoStress 600を用いて測定した。(測定条件:50℃、コーン径20mm、角度5°ずり速度120/sec )

Claims (5)

  1. 粗製銅フタロシアニンに、樹脂粘度が0.5〜5Pa・s(25℃)であるロジン変性フェノール樹脂を該銅フタロシアニンに対して1〜200重量%添加し、60〜180℃で乾式粉砕する工程Aと該工程Aで得られた乾式粉砕物と印刷インキ用溶剤、印刷インキ用ワニス及び印刷インキ用補助剤を添加・混合工程Bとからなることを特徴とする平版印刷インキ用ベースインキの製造方法。
  2. 印刷インキ用溶剤として、動植物油、または炭素数12〜24の飽和又は不飽和脂肪酸と炭素数1〜8の直鎖又は分岐のモノアルコールから構成される動植物油由来の脂肪酸モノエステルが、該銅フタロシアニンに対して5〜180重量%添加されることを特徴とする請求項1記載の平版印刷インキ用ベースインキの製造方法。
  3. 請求項1または2記載の方法により得られる平版印刷インキ用ベースインキ。
  4. 請求項3記載の平版印刷インキ用ベースインキで、当該ベースインキ中の色素濃度が30〜45重量%であることを特徴とする平版印刷インキ用ベースインキ。
  5. 請求項3または4記載の平版印刷インキ用ベースインキを用いることを特徴とする平版印刷インキ。
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