JP2008279645A - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ワイパーに付着したインクが処理液供給部の処理液に混ざることを防止でき、インク混入による処理液の汚れ及び機能低下を防ぐことができるインクジェット記録装置を提供する。簡単な構成でワイパーへの処理液の転写量を制御することができ、環境変化に起因する処理液転写量の変動を抑制できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 記録ヘッド32の吐出面を保護する処理液を収容する処理液収容部81と、処理液収容部に連通する弾性変形可能な中空体の処理液転写部82と、吐出面を払拭可能なワイパー56と、を備える。処理液転写部のワイパーと接触する部位に弾性変形により開口する切れ目92を設ける。切れ目から漏出した処理液94をワイパーに転写し、ワイパーに転写された処理液を吐出面に付着させる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、記録ヘッドの吐出口から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関し、詳しくは、記録ヘッドの吐出面を払拭するためのワイパーを備えたインクジェット記録装置に関する。
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の記録装置は、画像情報に基づいて記録ヘッドにより被記録材に画像を記録するように構成されており、単体の記録装置や、コンピュータやワークステーションの出力装置として使用されている。記録装置には、インクジェット方式、レーザーピーム方式、感熱方式など種々の記録方式のものがある。また、走査方式には、被記録材の搬送方向と交差する方向の主走査と搬送方向の副走査を交互に繰り返すシリアルタイプと、副走査のみで記録を行うラインタイプなどがある。被記録材としても、通常の記録紙の他、写真調印画紙、プラスチックシート、OHPシート、布、皮革、金属など、種々の材質がある。
インクジェット方式による記録装置(インクジェット記録装置)は、画像情報に基づいて記録ヘッドの吐出口から被記録材へインクを吐出して記録を行う構成となっている。インクを吐出するために使用されるエネルギー発生素子としては、ピエゾ素子等の電気機械変換体を用いるもの、あるいは、発熱抵抗体やレーザーピーム照射等の電気熱変換手段によってインクを加熱するものなどがある。
インクジェット記録装置においては、記録ヘッドの吐出面には、複数の吐出口からなる吐出口列が形成され、カラー記録の場合には各色ごとの複数の吐出口列が並列配置をなして形成されている。また、記録動作によって記録ヘッドの吐出面にインク滴や紙粉等の異物が付着することがあり、それらを除去するために、ワイパーで吐出面を払拭することが行われている。ワイパーとしては、通常ではゴムブレード等の弾性部材が使用され、場合により多孔質材からなる払拭部材が使用される。
また、インクジェット記録装置で用いられるインクは、従来では水性染料インクが主流であったが、染料インクは、そもそも染料分子が小さいために耐候性が不十分になることがあり、記録物の色味が経時的に変化しやすい。そこで近年、水性染料インクの代わりに水性顔料インクの実用化が進められている。現在用いられている顔料インクは、顔料の粒径が100nm程度であり、染料の粒径(染料分子)と比べてはるかに大きい。このため、光やオゾンの影響を受けたとしても色材の退色が顕著ではなく、耐候性は染料インクよりも優れている。
一方、インクジェット記録装置においては、吐出口の微細化と高密度化がますます進んでおり、微細な吐出口内では、インクの増粘や固着による目詰まりや、気泡やゴミ等による目詰まりが生じやすくなっている。また、複数色のインクを用いるカラー記録では、吐出口の内外で異色インクが混じ合うという混色を防止する必要もある。そこで、記録ヘッドのインク吐出性能を維持回復し、記録画像の画質低下を防止するための回復ユニットが設けられている。この回復ユニットは、通常、記録ヘッドの吐出口を覆うキャップ、並びに吐出面に付着した異物を払拭するためのワイパーを備えている。また、キャップに接続された吸引ポンプも使用され、吐出口をキャップで密閉した状態で発生させた負圧により吐出口からインクを吸引する吸引回復が行われる。また、記録を目的としないインクをキャップやその他のインク受けに吐出する予備吐出も行われる。
このような回復処理を実施するインクジェット記録装置においては、染料インクを用いる場合は記録性能や耐久性に関する不都合は生じていない。一方、顔料インクを用いる場合は、インクが増粘したり固着したりするまでの経過時間が染料インクの場合より短く、早期に増粘したり固着したりする。また、ワイパーにより払拭する場合のワイピング性が劣るため、顔料の種類によってはワイピングしても、吐出面にインクが薄膜状に堆積する。さらに、堆積したインクが固着し、ワイパーの払拭で除去することが困難になる。
通常の染料インクは染料分子そのものが水溶液中に溶解しているが、顔料インクでは一般的に顔料粒子が疎水性であるために水には溶解しない。そのため顔料粒子に樹脂や活性剤等を吸着させるか、可溶化基を付与することで顔料分散体として、水溶液中に分散させている。あるいは顔料粒子の構造自体の末端に親水基を持たせることで水溶液中に分散させたりしている。そして、顔料粒子そのものが疎水性であるため、染料インクと比較して吐出面が顔料インクで濡れやすくなる。樹脂を用いて顔料を分散させた樹脂分散系の顔料インクでは、樹脂によって吐出面がさらに濡れやすくなる。顔料粒子が吐出面に存在する状態でワイピングを行うと、吐出面がダメージ(削れ等)を受けやすく、吐出面が濡れやすくなる。このような要因で吐出面が濡れると、インクの吐出方向が不安定になり、記録面におけるインクの着弾精度が低下し、画質低下を招きやすい。
上記の不都合に対し、吐出面に顔料インクを弾く撥水処理を施すことが考えられる。しかし、顔料インク等の濡れやすいインクの場合は徐々に撥水性が劣化するため、上記不都合を解消することはできない。また、ワイピングによっても、濡れやすい顔料インクを吐出面に広げてしまうため、撥水性が劣化することがある。このような吐出面の撥水性能もしくは親水性能の変化に対して、特許文献1及び特許文献2には、いわゆるウェットワイピング(湿式ワイピング)の技術が開示されている。これは、例えばグリセリンやポリエチレングリコール等の揮発性の低い溶剤(以下処理液又はウェット液と言う)を付着させたワイパーで吐出面を払拭するものである。このようなワイピング(ウェットワイピングという)により、吐出面の撥水性の劣化を防止するものである。
また、ウェットワイピングにおける処理液の作用として次の3点を挙げることができる。第1は、吐出面に蓄積された増粘インクや固着膜を溶解する作用である。第2は、ワイパーと吐出面の間に介在することにより潤滑材としての作用である。第3は、吐出面に処理液を付着させることで吐出面に保護膜を形成する作用である。
特開平10−138502号公報 特開2005−007635号公報
しかしながら、従来のウェットワイピングでは、記録中に浮遊するインクミストや、ワイパー上のインクなどが逆に処理液供給部の内部へ侵入することがあった。このようなインクの侵入があると、処理液にインクが混ざり合い、次回のワイピングの際にワイパーから吐出面へ混合液が付着されることになる。このため、吐出面に処理液層を維持するのに必要な量の処理液を引き出せなくなってしまう。このような不都合の発生は、ワイパーの払拭回数が増加するほど顕著になる。
また、処理液は環境温度が低くなると粘度が増大する傾向がある。処理液の粘度が増大すると、ワイパーに転写される処理液の量が減少してしまい、ウェットワイピングの作用が低減してしまう。従来技術では、このような処理液の粘度増大に起因する転写量の減少を防ぐことができず、吐出面を初期の状態に維持することがきわめて困難であった。
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、ワイパーに付着したインクが処理液転写部内の処理液に混ざることを防止でき、インク混入による処理液の汚れ及び機能低下を防ぐことができるインクジェット記録装置を提供することである。また、本発明の目的は、簡単な構成でワイパーへの処理液の転写量を制御することができ、環境変化に起因する処理液転写量の変動を抑制することができるインクジェット記録装置を提供することである。
本発明は、記録ヘッドの吐出口から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記吐出口が形成された吐出面に付着させるための処理液を収容する処理液収容部と、前記処理液収容部に連通する弾性変形可能な中空体で形成された処理液転写部と、前記処理液転写部に当接するとともに前記吐出面を払拭するように移動可能なワイパーと、を備え、前記処理液転写部に内部から外部へ通じる切れ目を設け、前記処理液転写部の弾性変形により前記切れ目を開口させて処理液を漏出させ、漏出した処理液を前記処理液転写部に当接する前記ワイパーに転写し、前記ワイパーに転写された処理液を前記吐出面に付着させることを特徴とする。
本発明によれば、ワイパーに付着したインクが処理液転写部内の処理液に混ざることを防止でき、インク混入による処理液の汚れ及び機能低下を防ぐことができるインクジェット記録装置が提供される。本発明によれば、簡単な構成でワイパーへの処理液の転写量を制御することができ、環境変化に起因する処理液転写量の変動を抑制することができるインクジェット記録装置が提供される。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。
(第1の実施形態)
図1は本発明によるインクジェット記録装置の斜視図である。図1において、記録装置には、被記録材である記録シートを装置本体内へ給送するための給紙部10と、装置本体内の記録領域を通して記録シートを搬送する搬送部20が設けられている。さらに、画像情報に基づいて記録シートに画像を記録する記録部30と、記録ヘッドの記録性能を維持回復するための回復部50が設けられている。
給紙部10に積載された記録シートは、給紙ローラによって1枚ずつ分離されて搬送部20へ給送される。給送された記録シートは搬送ローラ21と従動ローラ(ピンチローラ)22の間の摩擦力によって記録部30を通して搬送される。記録部30では、記録シートの幅方向に移動するキャリッジ31に搭載された記録ヘッド32によって画像が記録される。記録された記録シートは搬送ローラ21と同期駆動される排紙ローラ23及びその従動ローラ(例えば拍車)によって装置本体外へ(矢印J方向へ)排出される。インクジェット記録装置においては、画像情報に基づいて、記録ヘッドに設けられた複数の吐出口から選択的にインクを吐出することにより、被記録材である記録シートに画像が記録される。本実施形態では、記録ヘッド32は、ブラックインクを用いるブラックヘッド32Aとカラーインク(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)を用いるカラーヘッド32Bとで構成されている。ブラックヘッド32A及びカラーヘッド32Bは個別に交換可能である。
記録ヘッド32を搭載したキャリッジ31は、左右方向に延びるガイドシャフト34及びガイドレール35に沿って往復移動可能に案内支持されている。ガイドシャフト34はキャリッジ31の質量を支持する主ガイド部材を構成している。ガイドレール35は、主ガイド部材34を中心としたキャリッジ31の回転を規制している。記録ヘッド32の吐出口が配列された吐出面と対向する位置には、記録中の記録シートを支持するためのプラテン36が配置されている。なお、ガイドシャフト34を上下動可能とすることにより、記録ヘッドの吐出面と被記録材の記録面との距離(インクの飛翔距離)を調整することができる。キャリッジ31の往復移動は、不図示のキャリッジモータにより、プーリ37に掛けられたタイミングベルト38を介して駆動される。
記録ヘッド32A、32Bとしては、例えば、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録ヘッドが使用される。この記録ヘッドは、各吐出口内に配設された電気熱変換体により印加される熱エネルギーによってインク内に膜沸騰を生じさせ、その時に生じる気泡の成長、収縮による圧力変化を利用して吐出口よりインクを吐出させるものである。記録ヘッド32は、ピエゾ素子等電気機械変換体を用いるもの、レーザービームの照射熱を用いるものなど、他の吐出方式のものでも良い。キャリッジ31の移動(主走査)に同期して、画像情報に基づいてインクを吐出させることにより、被記録材に所望の画像が形成される。キャリッジの移動による1ライン分の記録と所定ピッチの紙送りとを交互に繰り返すことにより、被記録材全体の記録が行われる。記録された被記録材は、排紙ローラ23及び拍車により、装置前面から排出される。
回復部50は、キャリッジ31の移動範囲であって記録領域を外れた所定位置(通常、キャリッジのホームポジション又はその近傍)に配置されている。回復部50は、記録ヘッドの吐出口を覆うキャップ、該キャップに接続された吸引ポンプ、記録ヘッドの吐出面を払拭するワイパーなどを備えている。キャップは、記録ヘッド32A、32Bの吐出面に密着することで吐出口を覆う。吸引ポンプは、キャップ内に負圧を発生することで、吐出口又はキャップからインクを吸引する。ワイパーは、吐出面に付着したインクや紙粉等の付着物を払拭するものである。回復部50は処理液ユニット80を備えている。
図2は図1中の回復部において記録ヘッドからキャップを離間したときの一部破断正面図である。図3は図2の回復部において記録ヘッドをワイピングするときの状態をワイパーの移動とともに示す縦断面図である。図4は図1及び図3中の処理液ユニットの斜視図である。図5は図4の処理液ユニットの平面図である。図6は図4及び図5中の処理液転写部の動作順序を示す正面図である。図7は図4及び図5中の処理液転写部にワイパーが当接する状態を示す斜視図である。
図2及び図3において、ブラックヘッド32A及びカラーヘッド32Bからなる記録ヘッド32を搭載したキャリッジ31は、記録領域から矢印F方向に移動して回復部50に対向する図示の位置へくる。記録を開始するときは図示の位置から矢印A方向へ移動する。回復ユニット50には、記録ヘッド32A、32Bの吐出面(吐出口又は吐出口列が形成された面)32Aa、32Baに密着されることで、吐出口又は吐出口列を密閉可能なキャップ51A、51Bが設けられている。これらのキャップは、ゴム状の弾性部材で形成されている。
記録装置の電源オフやスタンバイのときは、キャップ51は記録ヘッド32の吐出面に密着して吐出口を密閉しており、吐出口へのゴミ等の付着や水分蒸発を抑制している。記録信号を受信すると、図2及び図3に示すように、キャップ51が下降してキャップオープン状態となり、キャリッジ31を移動させて記録可能な状態となる。各キャップ51A、51Bはチューブ52A、52Bを介して吸引ポンプ53A、53Bに接続されており、吸引ポンプはチューブ54A、54Bを介して廃インクタンク55に接続されている。吐出口をキャップで密封した状態で吸引ポンプを作動することにより、負圧吸引によって吐出口からインクとともに増粘インクや気泡等を排出することができる。これにより、吐出口内のインクをリフレッシュする吸引回復が行われる。
回復部50には、記録ヘッド32A、32Bの吐出面32Aa、32Baを払拭するためのワイパー56A、56Bが設けられている。ワイパー56A、56Bは、ワイパーホルダ57に取り付けられており、ワイパーホルダ57を駆動することにより、キャリッジ31の移動方向と交差する方向に往復移動可能である。ワイパー56(56A、56B)は、ゴム状弾性体などの板状の弾性部材で形成されている。ワイパー56A、56Bは、図3中に(1) 〜(5) で示す各位置を通して移動可能である。その際、(1) から(3) へ移動するときに、ワイパー56A、56Bで吐出面32Aa、32Baをワイピングし、該吐出面に付着したインクや紙粉等の付着物を拭き取り除去する。
図2は記録ヘッドの吐出面からキャップを離間させてワイパーによるワイピング(払拭)が可能な状態を示す。このとき、ブラック用のキャップ51A及びカラー用のキャップ51Bとも、それぞれの吐出面から離間している。一方、キャップを吐出面に密着させて吐出口を密閉したキャッピング状態で吐出口の保護及びインクの蒸発抑制が行われる。記録信号があると、キャップ51が矢印C方向に下降して図2及び図3に示すキャップオープンの状態となり、記録動作が可能となる。図3には、ウェットワイピングのときのワイパー56A、56Bの各動作位置(1) 〜(5) が示されている。
キャップ51A、51Bの内部には、多孔質もしくはスポンジ状の材料からなるインク吸収体58A、58Bが装填されている。回復動作の一つとして、記録を目的としないインクを吐出する予備吐出が行われる。この予備吐出は、吐出口内の混色インクや増粘インクを排出することを主目的とするものであり、通常、記録動作中でも実施可能なことから、所定の周期で行われる。かかる予備吐出は、インクをキャップもしくはインク受けへ吐出する動作で行われる。
吸引回復においては、キャッピング状態で吸引ポンプ53A、53Bを作動させ、各記録ヘッドの吐出口に吸引負圧を作用させることで、インクを強制的に排出させる。吸引したインクは、チューブら52A、52B及びチューブ54A、54Bを介して廃インクタンク55へ回収される。この吸引回復は、記録待機中や記録動作中など、必要に応じて適宜実行することができる。
ワイパー56A、56Bは、ウレタン、ブチル、シリコン等のゴム状弾性材の板状(又はブレード状)の弾性部材で形成されている。また、ワイパーは、多孔質部材やスポンジ部材などで形成することもできる。図3において、各ワイパー56A、56Bは、不図示の駆動源で駆動されるワイパーホルダ57により、矢印D及び矢印E方向に移動可能である。記録装置の後から前へ向かう矢印D方向の移動により、吐出面32Aa、32Baを払拭(ワイピング)する(図3中の(1) →(2) →(3) の動作)。このワイピングに続いてさらに矢印D方向に移動すると、ワイパークリーナ59A、59Bに当接する(図3中の(4) の位置)ことで、ワイパー56A、56Bに付着したインクやほこりを除去するクリーニング動作が行われる。このとき、キャップ51は、不図示の駆動源により矢印C方向に移動させられ、ワイパー56と干渉しない位置へ待避している。
図1及び図3〜図7において、ワイパークリーナ59よりさらに矢印D方向(前方)へ進んだ位置には、処理液ユニット80が配設されている。処理液ユニット80において、ウェットワイピングに使用される処理液がワイパーに転写(供給)される。図7には、ワイパー56が処理液ユニット80の処理液転写部に当接する状態が示されている。本実施形態におけるウェットワイピングは、ワイパー56A、56Bの払拭面(吐出面と摺擦する面)に処理液を転写し、処理液を転写されたワイパーで吐出面を払拭することで該処理液を吐出面に付着させる動作で行われる。処理液は、記録ヘッド32A、32Bの吐出面32Aa、32Baを保護するための液体である。
ウェットワイピングに使用される処理液(ウェット液)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類の単独溶剤または混合溶剤が使用される。これらの処理液は、記録ヘッドの吐出面の撥水処理等の表面処理を保護したり、吐出面に堆積した固着膜や増粘物等を剥がすときの損傷を防ぐための液体である。つまり、ウェットワイピングにより、吐出面の撥水性もしくは親水性の処理膜の劣化を防止することができる。この場合の処理液の作用としては、吐出面に蓄積された増粘インクや固着膜を溶解する作用、ワイパーと吐出面の間に介在することにより潤滑材としての作用、並びに、吐出面に処理液を付着させることで吐出面に保護膜を形成する作用が挙げられる。そこで、これらの処理液は、一般に、揮発性が低い溶剤であって、低温環境下で粘度が増大する液体である。図11は処理液として使用されるグリセリンの温度に対する粘度変化を例示するグラフである。
次に、処理液ユニット80の構成について説明する。処理液ユニット80は、回復部50の前側(矢印D方向)に配設されている。図4及び図5において、処理液ユニット80は、処理液94が収容された処理液収容部(処理液タンク)81と、該処理液収容部81の内部に連通するように接続された弾性変形可能な中空体で形成された処理液転写部82を備えている。処理液転写部83の内部には、処理液収容部81からの処理液94が充填される。本実施形態では、処理液転写部82は、弾性変形可能なチューブ状の中空体で形成されている。処理液転写部の反対側の端部はしきい部材83を介して弾性変形可能な可撓軸84に接続され、可撓軸84の他端部は支持台85に固定されている。本実施形態の可撓軸84は、2つの軸部84a、84bをばね(例えばコイルばね)86で連結して構成されている。
前記しきい部材83は、回転駆動される偏心カム88により直径方向、すなわち処理液転写部82の長さ方向と交差する方向に変位可能に保持されている。支持台85と支持台89とにより、可撓軸84と平行に回転軸91が軸支されている。偏心カム88は、回転軸91上に、しきい部材83の外周部と当接(摺動)可能に固定されている。回転軸91を矢印K方向に回転駆動したときの偏心カム88の所定の回転位置により、しきい部材83を処理液転写部82の長さ方向と交差する方向に変位(移動)させることができる。これにより、処理液転写部82を長さ方向に沿って湾曲変形(湾曲状の弾性変形)させることができる。処理液転写部82の内部は、処理液収容部91の内部に連通しており、予め処理液収容部81から供給された処理液94が充填されている。
矢印D方向に処理液ユニット80まで移動してきたワイパー56A、56Bは、処理液転写部82の下側の外面に当接する。処理液転写部82の下側部分、すなわちワイパー56A、56Bが当接する部位には、処理液転写部の内部から外部へ通じる複数の切れ目92が設けられている。これらの切れ目92は、図6に示すように、処理液転写部82の長さ方向に沿って所定ピッチで形成されている。各切れ目92は、通常状態では弾性力(復元弾性力)で密閉状態で閉口されており、処理液転写部82を弾性変形(本実施形態では湾曲変形)させることで開口させられる。つまり、通常状態では、複数の切れ目92が閉口されており、内部の処理液が漏出することはない(図6の[1])。一方、処理液転写部82が湾曲変形させられると、図6の[2]及び[3]に示すように、各切れ目92が開口し、内部の処理液94が漏出する。
所定量の処理液94が漏出すると、図6の[4]に示すように処理液転写部82が通常状態に戻され、各切れ目92は閉口する。各切れ目が閉口すると、漏出した処理液は、処理液転写部82の内部の処理液から分離される。こうして分離された処理液は、処理液転写部82の外面に保持される。処理液が保持される外面は、矢印D方向に移動してきたワイパー56A、56Bが当接する部位であり、切れ目92が形成された部位でもある。このため、漏出した処理液94は、図6の[4]及び[5]に示すように、移動してきたワイパー56A、56Bが当接することにより該ワイパーに転写される。
次に、ウェットワイピングの動作について説明する。各ワイパー56A、56Bはワイパーホルダ57に取り付けられており、各ワイパーの移動及び位置はワイパーホルダ57を介して制御される。ウェットワイピングに先立って、処理液ユニット80は図6の[2]〜[4]の動作手順を経てウェットワイピング可能な状態にセットされる。すなわち、偏心カム88の回転駆動により処理液転写部82を湾曲変形させて処理液94を漏出させ、次いで通常状態に戻して切れ目を閉口させ、漏出した処理液94を内部から分離するとともに処理液転写部82の外面に保持された状態にセットする。このとき、キャップ51A、51Bはワイパーと干渉しない位置へ待避している。
そして、ワイパー56A、56Bを、図3中の左側から右側へ(矢印D方向へ)移動させ、同図中の(1) 〜(3) の位置を移動する間に吐出面32Aa、32Baを払拭する。次いで、このワイパーは、ワイパークリーナ59A、59Bでクリーニング(付着するインクや紙粉等の除去)され後、処理液ユニット80に到達する((4) →(5) の動作)。そして、移動してきたワイパーは、図3中の処理液転写位置(5) に示すように、処理液転写部82の処理液転写部21に当接する間に、処理液94を転写される(図6の[5])。なお、ワイパークリーナ59A、59Bを設けない場合は、クリーニングすることなく、処理液ユニット80へ移動させる。
図6の[1]〜[5]は処理液転写部82の動作を示す図であり、通常は[1]に示す状態で待機しており、切れ目92は閉口(密閉)している。ウェットワイピングが開始されると、駆動機構である偏芯カム88が矢印K方向に回転することで、チューブ状の処理液転写部82が湾曲状に弾性変形させられる([2]の状態)。このとき、切れ目92は開口する。処理液転写部82はこの状態にて所定時間停止し、その間に、処理液転写部内の処理液94が水頭差により切れ目92を通して漏出する([3]の状態)。このとき、不図示の駆動機構(例えばポンプ等)により処理液転写部82の内部を加圧し、[3]に示すように、処理液転写部の内部から外面へ処理液94を漏出(吐出)させる。なお、処理液転写部82を湾曲変形させるだけで処理液が漏出する場合は、内部加圧を省略しても良い。所定時間後、再び偏芯カム88が回転し、処理液転写部82が通常状態に戻り、切れ目92も閉口する。このとき、所望量の処理液94が処理液転写部の外部にて保持される([4]の状態)。この場合、必要に応じて、切れ目92を閉口させる直前に処理液転写部82の内部を加圧する。
本実施形態では、このように切れ目を閉口させた後にワイパー56A、56Bを処理液転写部82に当接させて処理液94を転写させる([5]の状態)。このため、ワイパーに付着していたインク等が切れ目から処理液転写部82の内部へ侵入することはない。また、処理液転写部82を弾性変形させて切れ目92を開口させておく時間を制御することにより、漏出する処理液94の量を調整することができ、これにより、ワイパー56A、56Bへ転写される処理液の量を制御することができる。かかる制御によれば、環境温度の低下により処理液の粘度が増大した場合でも、温度に応じて切れ目92を開口させておく時間を制御することで、ワイパーに転写される処理液の量の変動を抑制することができる。こうして、処理液の転写量を、環境温度の変動に関わらず、ウェットワイピングに適した適正量に維持することができる。
処理液を転写されたワイパーは、処理液転写位置(5) から、吐出面をワイピングすることなく一旦初期位置(1) へ戻り、この待機位置(1) で停止する。このとき、ワイパークリーナ59A、59Bはワイパーと干渉しない位置へ退避している。また、キャリッジ31もワイピング位置から外れた位置へ移動しており、ワイパー56A、56Bの背面で記録ヘッド32A、32Bを払拭することはない。すなわち、処理液を転写されたワイパーは、一旦、ウェットワイピングを行うことなく、図3中の矢印E方向へ移動して初期位置へ移動する。
このように、本実施形態では、ワイパー56A、56Bが最初に初期位置から矢印D方向へ移動するとき(初回のワイピングのとき)は処理液用いないワイピング(ドライワイピング)を行う。そして、次回のワイピングで、処理液を転写されたワイパーによる最初のウェットワイピングが行われる。このウェットワイピングにおいて、ワイパー56A、56Bで吐出面32Aa、32Baを払拭するとともに、該ワイパーに転写された処理液94が吐出面に付着される。これは、2回目以降のウェットワイピングにおいても同様である。
この場合、処理液は、インク等に比べて、蒸発しにくい液体であるため、次回のワイピングのときに蒸発して消失していることはない。また、処理液は、通常のインクよりはるかに高い粘度を有しているため、ワイパーに付着した後に流失してしまうこともない。さらに、初回の1回のみのドライワイピング(処理液を用いないワイピング)による吐出面の状態変化も、記録装置におけるワイピングの耐久回数の場合に比べて微々たるものであり、無視することができる。また、記録ヘッドの吐出面の撥水、非撥水あるいは親水性などの状態も適宜選択して実施できるものである。また、使用されるインクの濡れ性の指標である表面張力や、吐出面に対するインクの接触角なども適宜選択して実施できるものである。さらに、インク自体に関しても、顔料インク及び染料インクのいずれを用いる場合にも、一部の条件を変更するだけで同様に実施可能である。
なお、以上の実施形態では、往復移動するワイパーを例に挙げて説明したが、以上のウェットワイピングは、支持軸を中心に回転するブレードの先端部を吐出面に摺擦させる回転式ワイパーの場合も同様に適用可能である。また、記録ヘッドに対する移動方向を異にするなど、他の構成の往復移動式のワイパーに対しても、同様に適用可能である。さらに、上記のようなスライド式のワイパーにおいて、図3中の位置(4) と位置(5) の間に折り返し位置を設け、そこから初期の停止位置(1) に戻る構成を採っても良い。かかる構成によれば、処理液の転写工程を含むウェットワイピングと、処理液の転写工程を含まないワイピングとを選択することが可能となる。
本実施形態に係るインクジェット記録装置では、記録ヘッド32Aで用いるブラックインクとしては、自己分散性の顔料インクが使用されている。これは、顔料粒子の構造自体の末端に親水基を持たせることで顔料粒子を水溶液中に自己分散させているインクである。一方、記録ヘッド32Bで用いるカラーインク(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)としては、カラー顔料インクが使用されている。これらは、顔料粒子を界面活性剤的な作用を持つ樹脂にて水中に分散させているインクである。
また、本実施形態の処理液として使用されるグリセリンは、空気中の水分を吸湿しやすく、一旦吸湿した場合でも低湿度環境下では水分を放出して乾燥する特性がある。また、グリセリン等の溶剤は、環境温度が低下すると粘度が大幅に増大する性質がある。図11に示すように、グリセリンの粘度は、常温(摂氏25度)では800cp程度であるが、摂氏15度では2300cp、摂氏5度では7000cpと、環境温度が低温になるほど急激に上昇する。粘度の上昇は、切れ目92からの処理液94(図6)の漏出量の減少、ひいてはワイパー56A、56Bへの転写量の減少を引き起こしてしまう。
処理液94は、そもそも記録装置内に装置寿命の間収容されているべきものであり、蒸発しにくいものが好ましい。また、インク吐出部に付着した増粘インクに対する溶解性や記録ヘッドの各部との接液性などを考慮すると、処理液としては、インク組成としても使用されることがあるグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコール類が好ましい。これらの溶剤は、前述のように、一般に分子量が大きく粘度が高いものが多く、従って、一般に低温環境下での粘度上昇の程度も大きい。
そこで、本実施形態においては、環境温度に応じて、処理液転写部82を弾性変形させておく時間、従って切れ目92から漏出される処理液の量を制御するように構成されている。つまり、環境温度が低い場合には弾性変形させておく時間を長くすることにより、粘度増加に起因する漏出量の減少を補正し、ウェットワイピングの処理液の量を適正な範囲に収めるように構成されている。なお、また、処理液転写部を弾性変形させておく時間は、例えば、湿度やインク性状など他の環境又は条件の変化に応じて制御しても良い。かかる構成により、簡単な構成で環境の変化に応じて、ワイパーへの処理液の転写量を容易にかつ適正に補正することができ、良好な記録品位を維持することができる。
以上説明した実施形態によれば、ワイパーによる吐出面の払拭回数が増えた場合でも、ワイパーに付着したインクが処理液転写部内の処理液に混ざることを防止でき、インク混入による処理液の汚れ及び機能低下を防ぐことができる。また、処理液転写部を弾性変形させておく時間を制御するだけの簡単な構成で、ワイパーへの処理液の転写量を制御することができ、環境変化に起因する処理液転写量の変動を抑制することができる。こうして一定量の転写を維持して適正をウェットワイピングに行うことにより、記録ヘッドの吐出面の状態変化を抑制することができ、記録装置の耐久後期までインク滴の着弾精度を維持することで良好な記録品位を維持することができる。
図8は本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の処理液転写部の動作順序を示す正面図である。前述の第1の実施形態では、処理液転写部82を湾曲変形で弾性変形させることにより切れ目92を開口させるように構成した。これに対し、本実施形態では、同様の中空体で形成された処理液転写部182を伸縮変形で弾性変形させることにより切れ目192を開口させるように構成されている。本実施形態は、処理液転写部182を湾曲変形に代えて伸縮変形させる点で第1の実施形態と相違し、その他の点では同じ構成を有する。
図8の[1]〜[5]は、本実施形態に係る処理液転写部182の動作を順を追って示す正面図である。まず、[1]に示すような通常状態で待機しており、このとき複数の切れ目192はいずれもその弾性により密閉状態で閉口している。ウェットワイピングが開始されると、[2]に示すように、処理液転写部182を不図示の駆動手段により両矢印L方向に伸長させることにより、各切れ目192を開口させる。このとき、不図示の駆動機構(例えばポンプ等)により処理液転写部182の内部を加圧し、[3]に示すように、処理液転写部の内部から外部へ処理液94を漏出させる。なお、処理液転写部182を伸ばすだけで処理液が漏出する場合は、内部加圧を省略しても良い。その後、[4]に示すように、処理液転写部82を通常状態に戻し、各切れ目192を閉口させて密閉状態にする。この場合、必要に応じて、切れ目192を閉口させる直前に処理液転写部182の内部を加圧する。
漏出した処理液94は、[4]に示すように、処理液転写部182の外面に保持される。本実施形態でも、切れ目192の開口によって処理液92が漏出し、閉口によって漏出した処理液が内部の処理液から分離され、分離された処理液が外面に保持される。外面に保持される処理液は、[5]に示すように、移動してきたワイパー56A、56Bが当接することにより、該ワイパーに転写される。処理液を転写されたワイパーは、前述の第1の実施形態の場合と同様、ワイピングすることなく一旦初期位置へ戻り、次いで、ワイピング方向(図3中の矢印D方向)へ移動することより記録ヘッドの吐出面を払拭するとともに、処理液を吐出面に付着させる。これは2回目以降のウェットワイピングにおいても同様である。本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
なお、以上の各実施形態では、処理液ユニット80の処理液転写部の弾性変形が湾曲変形である場合と伸縮変形である場合を例に挙げたが、この弾性変形は、例えばねじれ変形など、他の方法による弾性変形であっても良い。また、処理液転写部82、182の内部を加圧する場合の加圧方法も、水頭圧力による方法、あるいはポンプによる方法など、他の方法を採用しても良い。
図9は本発明の第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の処理液ユニットの平面図である。本実施形態は、前述の第1の実施形態において、処理液転写部82をワイパー56A、56Bの移動方向に対して傾斜させて配置したものであり、その他の構成は同じである。従って、対応する部分は全て同じ符号で示すことにする。処理液転写部82に形成される切れ目92は、ワイパー56A、56Bが当接する部位の1箇所もしくは複数箇所に設けられる。その場合、切れ目は、ワイパーの転写面に処理液がほぼ均一に転写されるように配置する必要がある。一方、弾性部材からなる処理液転写部82の耐久性等を考慮すると、切れ目92をあまり高密度に配置することは困難である。
そこで、本実施形態では、図9に示すように、ワイパー56A、56Bの移動方向(当接方向でもある)に対し、処理液転写部82が斜めに配置されている。かかる構成を採ることにより、ワイパーの転写面の単位面積当たりに接触(当接)可能な切れ目92の数を増やすことができる。つまり、処理液転写部82に形成されている切れ目92の配置密度を高めることなく、第1の実施形態に比べ、ワイパーの転写面の単位面積あたりの切れ目の数を増やすことができる。これにより、ワイパーに転写される処理液の分布量の一層の均一化を図ることができる。従って、本実施形態によれば、第1の実施形態と同じ効果に加え、一層容易にワイパーの転写面における処理液の均一化を図ることができる効果が得られる。なお、以上の各実施形態においては、処理液転写部の径や材質や変形量、切れ目のサイズや分布、処理液の材料や転写量などは、適宜選定されるものである。
図10は本発明によるインクジェット記録装置におけるウェットワイピングの動作例を示すフローチャートである。図10において、ワイピングが開始されると、ステップS101で記録ヘッド32及びワイパー56がワイピングポジションにあることを確認する。ステップS102で記録ヘッドの吐出面をワイパーで払拭する。そして、ステップS103で処理液転写部を弾性変形させる。この弾性変形は、湾曲変形、伸縮変形あるいはねじれ変形などで行われる。この弾性変形により、処理液転写部の内部から外部へ通じる切れ目を開口させ、開口された切れ目から処理液を漏出させる。
ステップS103aで、ステップS103での処理液転写部を弾性変形させた状態において、所定時間だけ待機する。この待機時間は環境温度に応じて制御される。すなわち、記録装置には環境温度を検知するための温度検知手段が備えられ、検知された環境温度に応じて、処理液転写部を弾性変形させた状態での待機時間が制御される。これによって、環境温度による処理液の粘度変動に起因する、切れ目からの処理液の漏出量の変動、もしくはワイパーへの処理液の転写量の変動が補正される。かかる構成により、環境温度の変化に起因する吐出面への処理液の付着量の変動を抑制して適正量に維持することができ、良好な記録品位を維持することができる。
処理液転写部を弾性変形された状態で所定時間(待機時間)が経過した後、処理液転写部を通常状態に戻して切れ目を閉口させる。そして、漏出した処理液を処理液転写部の外面に保持する。次いで、ステップS104で、移動してきたワイパーが処理液転写部に当接し、保持されていた処理液がワイパーへ転写される。ステップS105で記録ヘッドをワイピングポジションから待避させ、ステップS105でワイパーを初期位置へ移動させる。次いで、ステップS107で、記録ヘッドをワイピングポジションへ移動させ、ワイパーを移動させることにより吐出面を払拭するとともに処理液を吐出面に付着させる。かかるウェットワイピングの後、記録ヘッドを移動させるとともに、ワイパーを初期位置へ移動させて1回のウェットワイピングを終了する。
次に、以上説明した各実施形態に係るインクジェット記録装置におけるウェットワイピングの実験結果について説明する。実験では、環境温度に応じてワイパーへの処理液の転写時間を可変とした。実験結果を下記の「表1」に示す。
Figure 2008279645
「表1」は、処理液転写部を弾性変形させた状態での待機時間を環境温度に応じて制御することにより、低温での処理液の漏出量の減少を補正するための実験結果を示し、適正量の処理液を確保するためには低温ほど待機時間が長くなっている。「表1」において、待機時間は、常温(摂氏27度)では3秒と短く、このときの漏出量は5.2mgである。これに対し、摂氏15度では、仮に待機時間を変更せずに常温と同じ3秒とすると、漏出量は4.0mgと大きく減少する。そこで、摂氏15度の環境下では、処理液転写部(チューブ)の弾性変形時間(待機時間)を5秒とした。すると、処理液の漏出量を常温のときとほぼ同程度の5.3mgまで増大させることができた。弾性変形状態での待機時間は、処理液の低温での粘度上昇の程度や、処理液転写部(チューブ)の径や材質や変形量、切れ目の数、弾性変形量、機械的構造などに応じて適宜選定されるものである。
また、上記の実施形態では、温度検知手段の検知結果に基づいて待機時間を設定したが、これに限定されるものではない。例えば、低温時(摂氏5度)における待機時間を10秒に設定し、これを記録装置内のメモリに格納しておくことにより、温度検知手段無しでも温度補正を行うことが可能となる。これにより、コストダウンを図ることができる。さらに、高温時に処理液転写部の外面に保持できなくなった処理液が滴下しないように、切れ目のサイズや水頭差などを適宜設定しておくことが好ましい。かかる設定により、処理液の無駄な消費を防ぐことができる。また、処理液収容部81(図4、図5)は、例えば、一部に設けられた大気連通口を通して大気に開放された構成、あるいは伸縮自在で内部容量が可変な袋状の構成などにすることができる。
処理液収容部(処理液タンク)81の容積は、次のような方法で算出される。まず、記録装置の耐久枚数相当分のウェットワイピングを行っても、吐出面の撥水性や親水性に大きな変化がなく、記録面に対するインクの着弾位置精度を許容範囲内に収めるのに必要な処理液の転写量を実験等で求める。この転写量に耐久枚数相当分のワイピング回数を乗じた量を算出する。処理液収容部81の容積は、この算出された量の処理液を収容可能な容積を最小とし、所望の余裕を持たせたそれ以上の容量に設定される。また、処理液収容部81内の処理液の液面高さは、処理液転写部からの漏出量に影響するため、可能な限り平たい構造にして漏出量の変動を低減することが好ましい。さらに、処理液の使いきり性を考慮すると、処理液転写部は処理液収容部の底部に接続されていることが好ましい。
なお、以上説明した実施形態では、記録ヘッドを搭載して往復移動するキャリッジを用いるシリアルタイプの記録装置を例に挙げた。本発明は、被記録材を搬送する方向の副走査のみで記録するラインタイプの記録装置など、他の記録方式の場合も同様に適用可能である。また、本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の単体の記録装置の他、複合機器やシステム構成などにおける記録装置に対しても同様に適用可能である。さらに、被記録材に関しても、紙、プラスチックシート、OHPシート、布、写真調印画紙など、画像記録が可能なものであれば、種々の材質のものを使用することができる。
本発明によるインクジェット記録装置の第1の実施形態の斜視図である。 図1中の回復部において記録ヘッドからキャップを離間したときの一部破断正面図である。 図2の回復部において記録ヘッドをワイピングするときの状態をワイパーの移動とともに示す縦断面図である。 図1及び図3中の処理液ユニットの斜視図である。 図4の処理液ユニットの平面図である。 図4及び図5中の処理液転写部の動作順序を示す正面図である。 図4及び図5中の処理液転写部にワイパーが当接する状態を示す斜視図である。 本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の処理液転写部の動作順序を示す正面図である。 本発明の第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の処理液ユニットの平面図である。 本発明によるインクジェット記録装置におけるウェットワイピングの動作例を示すフローチャートである。 処理液として使用されるグリセリンの温度に対する粘度変化を例示するグラフである。
符号の説明
20 搬送部
30 記録部
31 キャリッジ
32(32A、32B) 記録ヘッド
32Aa、32Ba 吐出面
50 回復部
51(51A、51B) キャップ
53(53A、53B) 吸引ポンプ
56(56A、56B) ワイパー
57 ワイパーホルダ
59(59A、59B) ワイパークリーナ
80 処理液ユニット
81 処理液収容部
82 処理液転写部
88 偏心カム
92 切れ目
94 処理液

Claims (12)

  1. 記録ヘッドの吐出口から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、
    前記吐出口が形成された吐出面に付着させるための処理液を収容する処理液収容部と、前記処理液収容部に連通する弾性変形可能な中空体で形成された処理液転写部と、前記処理液転写部に当接するとともに前記吐出面を払拭するように移動可能なワイパーと、を備え、
    前記処理液転写部に内部から外部へ通じる切れ目を設け、
    前記処理液転写部の弾性変形により前記切れ目を開口させて処理液を漏出させ、
    漏出した処理液を前記処理液転写部に当接する前記ワイパーに転写し、
    前記ワイパーに転写された処理液を前記吐出面に付着させることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記処理液転写部が通常状態にあるとき前記切れ目は閉口していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記処理液転写部はチューブ状の中空体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記処理液転写部から漏出させた処理液は、前記切れ目が閉口することによって該処理液転写部の内部の処理液から分離されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記切れ目から漏出した処理液は前記処理液転写部の外面に保持され、前記ワイパーが接触することで該ワイパーに転写されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記処理液転写部の弾性変形は湾曲変形であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記処理液転写部の弾性変形は伸縮変形であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記処理液転写部の弾性変形はねじれ変形であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記処理液転写部が通常状態に戻されて前記切れ目が閉口する直前に該処理液転写部の内部を加圧することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記ワイパーは、前記処理液が転写された状態で前記吐出面を払拭することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  11. 環境温度に応じて、前記処理液転写部を弾性変形させて前記切れ目を開口させる時間を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  12. 環境温度が低いとき、前記切れ目を開口させる時間を長くすることを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録装置。
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JP2018114660A (ja) * 2017-01-18 2018-07-26 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 インクジェット記録装置

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