JP2008277322A - 有機el素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】低分子材料の発光材料をインクジェット法で塗布した有機EL素子を得る。
【解決手段】有機EL素子の発光層に、低分子発光材料と低表面張力を有する非発光の高分子化合物を用いる。この高分子化合物の表面張力が35mN/m以下とし、発光層から抽出した上記高分子化合物として、プロトンの核磁気共鳴スペクトルの化学シフト値(δ値)が6.5ppm以上に吸収がないものとした。
【選択図】なし
【解決手段】有機EL素子の発光層に、低分子発光材料と低表面張力を有する非発光の高分子化合物を用いる。この高分子化合物の表面張力が35mN/m以下とし、発光層から抽出した上記高分子化合物として、プロトンの核磁気共鳴スペクトルの化学シフト値(δ値)が6.5ppm以上に吸収がないものとした。
【選択図】なし
Description
本発明は、有機EL素子に係り、特に塗布型低分子材料で形成した有機EL素子に好適なものである。
テレビ用などの大形のディスプレイの1つに有機EL表示装置が有望視されている。有機EL表示装置は、多数の有機EL素子を配置した有機ELパネルに駆動回路などの周辺機器を組み込んで構成される。そして、製造プロセスの簡素化の観点から、有機ELパネルに形成する有機EL素子の有機発光層に塗布型の有機EL材料を用いることが期待されている。このための塗布手段としてインクジェット(Ink Jet:IJ)法が有望である。インクジェット法による有機発光層の塗布では、基板上に形成して画素の領域を規制する土手(バンク)の内側に芳香族系化合物を溶剤とする有機発光材料のインクをノズルで吐出し、吐出したインク液滴を乾燥させることにより形成する。
従来、塗布型の有機発光層には高分子発光材料が用いられていた。しかし、高分子の発光材料は発光寿命が短いため製品化に至っていない。特許文献1では、低分子の有機発光材料をインクジェット法によって、ホール注入層と発光層を形成する方法と、そのためのインク組成物を開示する。そして、低分子発光材料のインクをインクジェット法で安定吐出する際の課題となっていたインクの高粘度化を高粘性溶剤の採用によって解決している。なお、有機薄膜トランジスタのチャネル層形成にインクジェットを用いることもできる。これに関しては、非特許文献1に開示がある。
特開2006‐66294号公報
応用物理、第70巻、第12号、1452頁
フルカラーの有機EL表示装置のための有機ELパネルの製作では、赤(R)、緑(G)、緑(B)の3色の低分子発光材料を真空マスク蒸着法で塗り分ける方式が従来から採用されている。この方式の問題点として、(1)マスク蒸着の位置精度が低く、特にテレビ用等の大形のディスプレイに適用可能な有機EL表示装置の製作は難しい、(2)発光材料をはじめとする発光層形成用材料の利用効率が低い、(3)生産性が低いこと、等を挙げることができる。
本願の発明者等は、上記の特許文献1にも開示したように、高分子発光材料の代わりに低分子発光材料を塗布型の有機発光層に適用する検討を進めてきた。この検討において、低分子発光材料を用いた場合に、以下の2点が問題となることが分かった。一つは、インク液滴の乾燥過程でパネル外周部の発光層に溶解が起こることであり、もう一つは、2色目のインク液滴の吐出によって第1色目に形成した発光層が溶解することである。この二つの問題は、インク液滴から揮発した溶剤蒸気に起因することが分かった。本発明者らは、この溶解による発光層の剥がれを抑制するためには、発光層の表面張力を下層(一般的には、ホール輸送層)のものより小さくすればよいことが分かった。低分子発光材料を用いて発光層を形成するためには、この表面張力の大小関係を制御することが極めて重要である。
特許文献1では、溶剤蒸気による発光層溶解に関しては考慮されていない。パネル周辺部における発光層の剥がれ、第1色目に形成した発光層が第2色目のインク溶剤の蒸気で溶解されることによる剥がれが発生する惧があり、多色発光層の形成が困難である。また、特許文献1では、インク液滴の乾燥工程での低分子発光材料の結晶化を抑制するために高分子化合物を添加する提案がされている。しかし、高分子化合物の表面張力の大きさによっては、溶剤蒸気による発光層の溶解が発生することがある。
本発明の目的は、低分子発光材料を印刷法で形成する際のインク液滴の乾燥過程でパネル周辺部の有機EL素子の発光層の溶解、インク液滴の吐出によって先に形成した発光層の溶解を防止した有機EL素子を用いた高品質の有機EL表示素子を得ることにある。本発明は、有機EL素子を用いた画像表示装置を製作する際に、3色の低分子発光層の塗分けをインクジェット法などの印刷法で形成できるようにするために好適な新規なインク材料に特徴を有する。
本発明は、(1)有機EL素子の発光層に、低分子発光材料と低表面張力を有する非発光の高分子化合物を用いること、(2)上記高分子化合物の表面張力が35mN/m以下としたこと、(3)発光層から抽出した上記高分子化合物として、プロトンの核磁気共鳴スペクトルの化学シフト値(δ値)が6.5ppm以上に吸収がないものとしたこと、を特徴とする。
本発明に適用できる35mN/cm以下の表面張力を有する具体的な高分子化合物(高分子材料)として、ポリイソプレン、ポリ(n‐ブチルアクリレート)、ポリ(iso−ブチルアクリレート)、ポリ(tert‐ブチルアクリレート)、ポリ(n‐ヘキシルアクリレート)等、プロトンの核磁気共鳴スペクトルの化学シフト値(δ値)が6.5ppm以上に吸収がないものを挙げることができる。
これら高分子化合物をインクに添加することにより、インクの乾燥過程で既に形成されている発光層がインク溶剤蒸気によって再溶解されても、乾燥すれば均一な発光層が再生される。これは、添加した高分子化合物によって、インク液滴がバンク壁近傍に移動されることなく、画素領域内に均一に濡れ広がるためと推定される。高分子化合物の添加量としては、低分子発光材料に対して10wt%から50wt%であることが好ましく、20wt%から40wt%であることがより好ましい。添加量が10wt%以下の場合には、高分子化合物の添加による表面張力低減の効果が認められず、50wt%以上の場合は発光特性が悪化するので好ましくない。
本発明に適用可能な低分子発光材料のホスト材料としては、アミン化合物(特開2004‐091482号公報参照)、ジアザフルオレン化合物(特開2004‐091444号公報参照)、スピロ化合物(特開2004‐083483号公報参照)、フルオレン化合物(特開2004‐083481号公報参照)、フェノキサジン系化合物(特開2004‐075750号公報参照)、アモルファス性低分子(特開2004‐014172号公報参照)、オリゴフルオレニレン化合物(特開2004‐002298号公報参照)、フェニルアントラセン誘導体(特開2002−175885号公報参照)、などを用いることができる。
また、次に列挙する発光材料を用いることができる。すなわち、芳香族アミンオリゴマー類、4,4’‐ジカルバゾール‐ピフェニル(CBP、ジカルバゾール誘導体)、1,3,5‐トリス[4‐(ジフェニルアミノ)フェニル]‐ベンゼン(TDAPB)、アントラセン誘導体、Al錯体(Balq、Alq)、Zn錯体、Ga錯体などの金属錯体、または上記の発光材料にドーパントとして下記の青(B)色、緑(G)色、赤(R)色の3色にそれぞれ発光する色素を添加した発光材料を用いることもできる。
上記色素を添加した発光材料としては、スチルベン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、ジスチリルアリレーン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジクロペンタジエン誘導体、イリジウム(III)ビス[(4,6‐ジフルオロフェニル)‐ピリジネート‐N,C2]ピコリネート(Firpic)キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、インドフェノール誘導体、インジゴ誘導体、facトリス(2‐フェニルピリジン)イリジウム(Irppy3)、4一(ジシアノ‐メチレン)‐2‐メチル‐6‐(p‐ジメチルアミノスチリル)‐4‐ピラン(DCM)、4‐(ジシアノメチレン)‐2‐tert‐ブチル‐6‐(1,1,7,7‐テトラメチルジュロリジル‐9‐エニル)‐4H‐ピラン(DCJTB:ジュロリジル誘導体)、ナイルレッド、4‐(ジシアノメチレン)‐2‐R6‐(1,3,3,7,7‐ペンタメチルジュロリジル‐9‐エニル)‐4H‐ピラン(DCJPR)、Eu錯体、Tb錯体、ローダミン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリウム誘導体、イリジウム(III)ピス(2‐(2’‐ペンゾチエニル)ピリジナート‐Nアセチルアセトネート(Btp21racac)白金‐オクタエチルポルフィリン錯体(PtOEP)を挙げることができる。
発光材料に対するドーパントの濃度は、ドーパントが蛍光性色素である場合には0.5wt%―7wt%の範囲にあることが望ましく、2wt%―5wt%の範囲にあることがより望ましい。一方、ドーパントが燐光性色素である場合には1wt%―10wt%の範囲であることが望ましく、3wt%―7wt%の範囲であることがより望ましい。
本発明の有機EL素子に適用可能なホール注入層材料・ホール輸送層材料として、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物、ポリアニリンとPSSの混合物、ポリアニリンとカンファスルホン酸の混合物、ポリピロールとドデシルベンゼンスルホン酸の混合物、ポリフルオレン誘導体等を挙げることができる。
本発明の有機EL素子に適用可能な電子輸送層材料としては、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、トリアジン、金属錯体化合物を挙げることができる。
本発明の有機EL素子に適用可能な陰極材料として、Mg合金、Al合金、Al、Ca、Li、Cs、水素化アモルファスシリコン等を挙げることができる。陰極としてAlを用いた場合、Alと発光層、あるいは電子輸送層との界面にCs、Ba、Ca、Sr等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、又はLiF、CaF2、SrF2、BaF2、Al203、MgOなどの絶縁性バッファ層を厚さ0.01―10mm程度設けてもよい。
本発明の素子の基板としては、ガラスに限らず、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンカーホネート、ポリカーボネート、ポリエーテルなどのプラスチックフィルム、等を用いても良い。
本発明のインク溶剤には、低分子発光材料を溶解する高粘性芳香族化合物が好適である。本発明に特に好適な溶剤として、分子分極の大きい芳香族化合物である3,4‐ジメトキシブロモベンゼン、3,4‐ジメトキシクロロベンゼン、3,4,5‐トリメトキシブロモベンゼン、3,4,5‐トリメトキシブロモベンゼン、6‐ブロモ‐1,4‐ベンゾジオキサン、5‐ブロモ‐1,4‐ベンゾジオキサン、2‐(2‐ブロモフェニル)‐1,3‐ジオキソラン、2‐(3‐ブロモフェニル)‐1,3‐ジオキソラン、2‐(4‐ブロモフェニル)‐1,3‐ジオキソラン、3,4‐ジメトキシブロモベンゼン(沸点255℃,粘度14.1mPa・s)、6‐ブロモ‐1,4‐ベンゾジオキサン(沸点260℃,粘度12.1mPa・8)、2‐(3‐プロモフェニル)‐1,3‐ジオキソラン(沸点232℃,粘度7,11mPa・s)を挙げることができる。これらの高粘性率を有する化合物をインク溶剤に用いることにより、印刷法で膜厚均一性の高い発光層を形成することが可能になる。
本発明の有機EL素子に適用可能な陽極としては、ITOのほか、酸化インジウム、酸化スズ、および酸化インジウム酸化亜鉛合金等を用いることができる。金、白金、銀、マグネシウム等の金属の薄膜であってもよい。
本発明は、ボトムエミッションに限らずトップエミッション方式の有機EL素子にも同様に適用できる。
赤(R)、緑(G)、緑(B)の3色高分子発光材料を印刷法で塗分ける塗布型有機EL素子は、R、G、B3色発光層形成の位置精度、材料利用効率、生産性等が高いことから大形ディスプレイヘの適用が期待されている。塗布型有機EL素子は上記のような利点を有しているが、用いる高分子発光材料の発光寿命が短いという問題がある。低分子発光材料を用いる本発明により、R、G、B低分子発光材料の塗分けがインクジェット法やスクリーン印刷等の湿式塗布法で可能になり、発光寿命の長い有機EL素子を大幅な低コストで実現できる。
本発明は,インクジェット法による低分子発光層の形成に必要なインク組成物に関するものであり,特に大型有機ELディスプレイの製作、大型基板を用いた有機ELディスプレイの製作に最も効果的に活かすことができる。
本発明のインク組成物は、インクジェットを用いた有機薄膜トランジスタのチャネル層形成にも応用することができる。この種の有機薄膜トランジスタについては非特許文献1に記載がある。
以下、本発明の最良の実施形態について説明する。
図1は、本発明の有機EL素子の1画素付近の構造例を説明する断面図である。図1において、薄膜トランジスタ(TFT)付基板TRSは、ガラス基板SUB1の内面に下地層として窒化シリコン膜SINと酸化シリコン膜SIOを有する。この下地層上にポリシリコン半導体層PSI、ゲート電極GT、ゲート絶縁膜GI、ソース電極SD1、ドレイン電極SD2からなる薄膜トランジスタが形成されている。ITOで形成された陽極ADがパッシベーション膜PASの上層に成膜されており、コンタクトホールを通してソース電極SD1に接続している。
ITOで形成された陽極ADの上には、本発明の組成を有するインクをインクジェット装置のノズルで塗布したホール注入層HTLが形成されている。ホール注入層HTLの上には特定色の発光層LMがインクジェット装置を用いて塗布されている。発光層LMLの上に電子注入層ETLを成膜し、次いでCa層を蒸着して陰極バッファ層BFとし、さらにその上にアルミニウム膜ALを蒸着して陰極CDとした。なお、陽極ADと陰極CDとの間に形成される発光に寄与する有機層として、ホール注入層、発光層、電子注入層などのように機能ごとに区分けして表記するもの、あるいはこれらの機能を兼用した層として表記するもの、等がある。
上記の構造とした薄膜トランジスタ(TFT)付基板TRSは、封止板SUB2で密封して封止される。図1の構成例では、薄膜トランジスタ(TFT)付基板TRSの陰極CDと封止板SUB2の間にエポキシ樹脂などの充填材を配置している。しかし、基板TRSと封止板SUB2の間を乾燥空間としてもよい。乾燥空間の維持には両基板の適当な位置に乾燥剤を配置するのが望ましい。
図2Aと図2Bは、図1で接続した薄膜トランジスタ付基板TRSの主面に有機EL素子を形成するプロセスを説明する模式断面図である。このプロセスは、図2Aの(a)→(b)→(c)→(d)→(e)→図2Bの(f)→(g)→(h)の順で進む。先ず、厚さ0.7mmのガラス基板SUB1を用意する(図2(a))。このガラス基板SUB1には薄膜トランジスタが形成されているが、図示は省略した。このガラス基板SUB1の上にスパッタリングによってITOを150nmの厚さに成膜し、フォトリソグラフィー法により一部をエッチング処理し、パターニングして陽極(画素電極)ADとする(図2(b))。この陽極ADの部分が1画素の領域(画素部)となる。
続いて、画素部を取り囲むように隣接する画素部との間を区画する膜厚2μmの隔壁層(バンク)PSBをイミド系高分子樹脂を含む感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法によりパターニングで形成する(図2(c))。バンクPSBには、撥インク性を付与するためにフッ素プラズマ処理を行う。PEDOT/PSS水溶液(バイエル社製)にイソプロピルアルコールを20wt%添加した溶液を0.45μmのPTFE製フィルターを通して正孔注入材料インクとする。これを基板SUB1の画素部にインクジェット装置を用いて60nmの厚さに成膜して正孔注入層HTLを形成し、200℃のホットプレートで20分間ベークする(図2A(d))。
次に、1,3,5-Tris[4-(diphenylamino)phenyl]-benzene,Tris(2‐phenylpyridine)iridium(III)(Ir(ppy)3),2‐(4‐Biphenylyl)‐5‐(4‐tert‐butylpheny1)‐1,3,4‐oxadiazole,ポリ(n‐ブチルアクリレート)を100:80:6:30の重量比で混合し、3,4−ジメトキシブロモベンゼンに固形分濃度が0.5wt%となるように溶解して0.2μmのPTFE製フィルターを通して発光材料インクとする。
このインクをピエゾ式インクジェット装置のノズルを用いて吐出し、85℃のホットプレートで15分間ベークして、画素内の正孔注入層HTL上に厚さ50nmの非晶質膜の発光層LMとする(図2Aの(e))。この後、10-6torrの真空下においてTris(8‐hydroxyquinolinato)aluminum(III)(Alq3)を蒸着速度0.1mm/秒で10nm厚に蒸着して電子注入層ETLとした(図2Bの(f))。続いて、LiFを蒸着速度0.01nm/秒で0.5nm厚に蒸着してバッファ層BFを形成する(図2Bの(g))。最後に、Alを蒸着速度1nm/秒で100mm厚に蒸着して共通電極である陰極CDを形成する(図2Bの(h))。
以上のようにして得た有機EL素子の動作確認のために、酸素濃度1ppm以下のグローブボックス中で陽極電極ADであるITOと陰極電極であるCDとの間に直流電圧を印加したところ、10Vで輝度1080cd/m2の緑色発光が得られた。
実施例1では、有機EL素子の発光層に低分子発光材料と低表面張力を有する非発光の高分子化合物を用いた。そして、この高分子化合物の表面張力が35mN/m以下であり、発光層から抽出した上記高分子化合物が、プロトンの核磁気共鳴スペクトルの化学シフト値(δ値)が6.5ppm以上に吸収がないものとしたことを特徴とする。
実施例2では、実施例1で用いた非発光高分子化合物であるポリ(n‐ブチルアクリレート)の代わりにポリイソプレン、ポリ(iso‐ブチルアクリレート)、ポリ(tert‐ブチルアクリレート),ポリ(n‐ヘキシルアクリレート)をそれぞれ用いた。実施例2によっても実施例1と同様の素子特性が得られた。
実施例2でも、有機EL素子の発光層に低分子発光材料と低表面張力を有する非発光の高分子化合物を用いた。そして、この高分子化合物の表面張力が35mN/m以下であり、発光層から抽出した上記高分子化合物が、プロトンの核磁気共鳴スペクトルの化学シフト値(δ値)が6.5ppm以上に吸収がないものとしたことを特徴とする。
図3は、本発明の有機EL素子で構成した有機ELパネルの回路構成例を説明する図である。図3に示したように、表示領域DIPには、複数のデータ線DL(DL(m+1)、DL(m)、DL(m−1)・・・)と複数のゲート線GL(GL(n+1)、 GL(n)、GL(n−1)・・・)がマトリクス状に配線されている。各データ線DLとゲート線GLで囲まれた画素PXには、スイッチング素子(コントロール・トランジスタ)である薄膜トランジスタSW1、電流供給トランジスタ(ドライブ・トランジスタ)である薄膜トランジスタSW2、データ保持用のコンデンサC、および有機EL素子OLEが配置される。
薄膜トランジスタ素子SW1の制御電極(ゲート)はゲート線GLに、チャネルの一端(ドレイン)はデータ線DLに接続されている。薄膜トランジスタSW2のゲートは薄膜トランジスタSW1のチャネルの他端(ソース)に接続されており、この接続点にはコンデンサCの一方の電極(+極)が接続されている。薄膜トランジスタSW2のチャネルの一端(ドレイン)は電流供給線PLに、その他端(ソース)は有機EL素子OLEの陽極に接続されている。データ線DLはデータ駆動回路DDRで駆動され、走査線(ゲート線)GLは走査駆動回路DDGで駆動される。また、電流供給線PLは共通電位供給バスラインPLAを通して電流供給回路PWに接続される。
図3において、1つの画素PXが走査線GLで選択されて、その薄膜トランジスタSW1がターン・オンすると、データ線DLから供給される画像データがコンデンサCに蓄積される。その後、薄膜トランジスタSW1がターン・オフした時点で薄膜トランジスタSW2がターン・オンし、電流供給線PLから有機EL素子OLEに、ほぼ1フレーム期間に亘って電流が流れる。
有機EL素子OLEに流れる電流は薄膜トランジスタSW2により調整され、また、薄膜トランジスタSW2のゲートには、コンデンサCに蓄積されている電荷に応じた電圧が印加される。複数の画素をマトリクス配列して有機ELパネルとし、駆動回路や表示制御回路を組み込んで画像表示装置とする。有機ELパネルの各画素について上記のような制御することにより、複数の画素の発光が制御され、表示領域DIPに二次元の画像が再現される。
実施例1,2では有機EL素子の有機層が正孔注入層HTL、発光層LM、および電子注入層ETLで構成されるものとして説明したが、正孔注入層を正孔輸送層と正孔注入層とし、電子注入層を電子注入層と電子輸送層とで構成する形式、その他の層構成に本発明の発光層を組み合わせることも可能である。
図4および図5により、インクジェット法を用いた有機薄膜トランジスタに応用した本発明の実施例3を説明する。図4は、絶縁基板の主面に形成した薄膜トランジスタ部分の断面図である。また、図5は、図4の導電層をインクジェット法で形成する様子を説明する模式図である。この有機薄膜トランジスタにおける基板SUB以外の部材は、有機材料により形成される。まず、ガラス基板SUBの主面(内表面)に塗布されたアクリル系ポジ型レジスト(JSR社製)の膜をフォトリソグラフィー法でパターニングすることにより、アクリル樹脂からなるセパレータ(分離層)PSBが形成される。
次いで、セパレータPSBに加熱処理を施して、これを構成するアクリル樹脂層に後述するインクの溶媒に対する不溶性を持たせる。加熱処理されたセパレータPSBには、CF4プラズマ処理により上記インクの溶媒に対して撥液(撥インク)化される。その後、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)が分散された25wt%のtert−ブタノールを含む水溶液として用意されたインクをインクジェット装置のノズルから上記基板SUB主面の上記アクリル樹脂のセパレータPSBの両側に夫々吐出することにより、セパレータPSBの両側には一対のインクの滴下パターンがセパレータPSBに沿いに延びて形成される。
基板SUBの主面を加熱して、この一対のインクの滴下パターンを乾燥させることにより、セパレータPSBの両側には(PEDOT/PSS)からなるソース電極SD1とドレイン電極SD2とが形成される。PEDOT/PSSに代えて、蒸留又は昇華により精製される(所謂低分子の)導電性有機材料でソース電極SD1及びドレイン電極SD2を形成するとき、この導電性有機材料を上述した本発明によるインクに含ませるとよい。これにより、導電性有機材料からなるソース電極SD1及びドレイン電極SD2は、金(Au)等の金属材料の蒸着で得られたそれらと同様に成形される。
ソース電極SD1とドレイン電極SD2との間には、蒸留又は昇華により精製される(所謂低分子の)有機半導体材料である1,3,5−トリス[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]ベンゼンを含む本発明によるインクを上述の如く滴下して、セパレータPSBを跨ぐ有機半導体層(半導体膜)OSCを形成するとよい。また、図4に示す如く、有機半導体層OSCを所謂高分子系のフルオレン系ポリマ(分子量30万)、例えばフルオレン−ビチオフェンを含むキシレン溶液のスピン塗布で形成してもよい。後者においては、当該キシレン溶液が塗布された基板SUB主面を窒素雰囲気にて200℃で加熱処理するこことで、有機半導体層OSCが形成される。従って、有機薄膜トランジスタにおける上述のソース電極SD1及びドレイン電極SD2を所謂低分子系の導電性有機材料で形成し、その活性層たる半導体膜OSCを所謂高分子系の有機半導体材料で形成する場合、本発明による手法は有機薄膜トランジスタの電極の形成に適用される。
図4に示す有機半導体層OSCの上には、ポリビニルフェノール等の有機材料からなるゲート絶縁膜GIが形成される。このゲート絶縁膜GIの上面はCF4プラズマ処理が施されて、次に行うインクジェット法でのゲート電極GTの形成に用いられるインクの溶媒に対して撥液化される。CF4プラズマ処理されたゲート絶縁膜GIの上面の「半導体膜OSCのソース電極SD1とドレイン電極SD2とに挟まれた部分(所謂チャネル)」に対向する領域はKrFエキシマレーザで照射され、この領域に付与された上記溶媒に対する撥液性が消される。図4に示す有機薄膜トランジスタでは、このゲート絶縁膜GIの上面の「領域」が必然的にセパレータPSB上に位置するため、これに照準を合わせてゲート絶縁膜GIの上面にKrFエキシマレーザが照射される。
ゲート電極GTは、ソース電極SD1及びドレイン電極SD2の形成に用いた上述のインクをインクジェット装置によりゲート絶縁膜GIの上面の上記KrFエキシマレーザに照射された「領域」へ吐出させ、この領域に付着したインク液滴を加熱により乾燥させて得られるPEDOT/PSSの薄膜として形成される。なお、ゲート電極GTが形成されたゲート絶縁膜GIの上面には、図示されない有機材料からなる保護膜が形成される。こうして作製された有機薄膜トランジスタのキャリア移動度等は良好な特性を示した。
上記実施例では、パターン化を要する点で共通な薄膜トランジスタの導電層であるソース電極、ドレイン電極、ゲート電極の形成をインクジェット法で行い、半導体層、絶縁層の形成をスピンコートで行った。このとき、アクリル樹脂のパターンであるセパレータPSBをガイドにしたソース電極及びドレイン電極の形成、絶縁層上面の撥インク性を抑えた部分をガイドにしたゲート電極の形成を行う際に前記した本発明の組成としたインクを用いた。
図5において、ガラス基板SUBのセパレータPSBを配置した電極形成部分に沿ってインクINKを滴下する。図5の(a)では、滴下された時点でインクが未だ液状にある状態を示す。ノズルを矢印s方向に走査しながらインクを連続的に滴下する。滴下されたインクINK(L)は基板SUB上でセパレータPSBにより不要な広がりが抑制され、液滴同士が結合し合って、走査方向に塗布不される。その後、加熱乾燥することで硬化し、図5の(b)に示したような帯状の電極(ソース電極SD1、ドレイン電極SD2、あるいはゲート電極GT)となる。硬化したインクをINK(D)で示す。
SUB1・・・基板、AD・・・陽極、PSB・・・壁層(バンク)、HTL・・・正孔注入層、LM・・・非晶質膜の発光層、ETL・・・電子注入層、BF・・・バッファ層、CD・・・陰極。
Claims (4)
- 有機EL素子の発光層に、低分子発光材料と低表面張力を有する非発光の高分子化合物を用いることを特徴とする有機EL素子。
- 請求項1において、
前記高分子化合物の表面張力が35mN/m以下であることを特徴とする有機EL素子 - 請求項1において、
前記発光層から抽出した高分子化合物が、プロトンの核磁気共鳴スペクトルの化学シフト値(δ値)6.5ppm以上に吸収がないことを特徴とする有機EL素子。 - 請求項1において、
前記高分子化合物の表面張力が35mN/m以下であり、前記発光層から抽出した高分子化合物が、プロトンの核磁気共鳴スペクトルの化学シフト値(δ値)6.5ppm以上に吸収がないことを特徴とする有機EL素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007115515A JP2008277322A (ja) | 2007-04-25 | 2007-04-25 | 有機el素子 |
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