<第1の実施の形態>
図1は、本実施の形態に係る光ヘッド装置100の概念的な構成を示す図である。図1の光ヘッド装置100は、所定の波長の光源光を出射する光源1と、光源1から出射された光源光を略平行光に変換するコリメータレンズ4aと、コリメータレンズ4aから出射された光を透過させると共に、光ディスク7の情報記録面7aにより反射された戻り光を偏向分離して光検出器8に導くビームスプリッタ3と、上記光源1から出射された光源光を集光して光ディスク7の情報記録面7aに照射する対物レンズ6と、光源光が光ディスク7の情報記録面7aにより反射されて生じた戻り光を光検出器8に集光するコリメータレンズ4bと、前記戻り光を素子面内への入射位置により異なる偏光状態に変換して透過させる偏光変換素子9と、非点収差レンズ11と、入射光の偏光状態により直進透過光の透過率が異なる偏光選択素子10と、上記戻り光を検出する光検出器8とを備える。
光源1から出射された光束は、コリメータレンズ4a、ビームスプリッタ3をこの順で透過して、対物レンズ6により集光されて、光ディスク7の所望の情報記録面7aに照射される。光ディスク7の情報記録面7aに集光、照射された光源光は、情報記録面7aにより反射され、対物レンズ6を透過してビームスプリッタ3で反射され、コリメータレンズ4bから偏光変換素子9、非点収差レンズ11、偏光選択素子10を介して光検出器8に入射される。
光源1は、例えば、波長650nm近傍の直線偏光の発散光束を出射する半導体レーザで構成される。なお、本発明で用いられる光源1の波長は、650nm近傍に必ずしも限定されず、例えば400nm近傍や780nm近傍、その他の波長であってもよい。ここで、400nm近傍、波長650nm近傍および780nm近傍の波長とは、それぞれ、385nm〜430nm、630nm〜670nmおよび760nm〜800nmの範囲にある波長を意味する。
また、光源1は、2つまたは3つの波長の光束を出射する構成としてもよい。かかる構成の光源としては、2個または3個の半導体レーザチップが同一基板上にマウントされた、所謂ハイブリッド型の2波長レーザ光源または3波長レーザ光源や、互いに異なる波長を発光する2個または3個の発光点を持ったモノリシック型の2波長レーザ光源または3波長レーザ光源を挙げることができる。
図2に、本実施形態に係る光ヘッド装置に用いられる偏光変換素子9の構成の1例を示す。図2の偏光変換素子9は、複屈折材料からなる複屈折層を有し、この複屈折層は光軸を中心とした放射状の境界により分割された中心角90度の4つの領域21〜23、を備えている。図2(a)に矢印20で示した偏光方向をもつ直線偏光が偏光変換素子9に入射光すると、入射光は4つの領域21〜24のそれぞれにより円偏光に変換されて出射される。このとき、隣接する領域からの透過光が互いに回転方向が逆回りの円偏光となるように変換される。以下、領域21、24から出射される円偏光を第1の円偏光といい、領域22、23から出射される、第1の円偏光とは回転方向が逆回りの円偏光を第2の円偏光という。すなわち、偏光変換素子9から出射される戻り光は、光軸を中心とする90度ずつの隣り合う領域が第1の円偏光と第2の円偏光であって、光軸を中心とする180度回転対称であるパターンの偏光状態の光束である。以下、偏光状態のパターンを「偏光パターン」という。
直線偏光の入射光を図2(a)に示したパターンの偏光状態の偏光に変換して出射する偏光変換素子の1例の平面構成図を図2(b)に示す。図2(b)の偏光変換素子9は、それぞれの領域の位相差は入射光の波長をλとしたときにともにλ/4であって、光学軸の方向25〜28が、矢印20で示した入射光の偏光方向と45度の角度をなすとともに、隣接する領域の光学軸が互いに90度の角度をなす放射状とされている。
各領域の光学軸と位相差は、出射光が図2(a)の偏光パターンとなるものであれば、図2(b)の構成に限定されず他の構成を用いることができる。例えば、同様の入射光に対して、図2(b)のそれぞれの領域の位相差は同様にλ/4とし、光学軸の方向25〜28が、矢印20で示した入射光の偏光方向と45度の角度をなす円周状とした構成や、各領域の光学軸の方向25〜28を入射光の偏光方向と45度の角度をなすとともに互いに平行とし、領域21、24の位相差をλ/4、領域22、23の位相差を3λ/4とした構成なども同様に用いることができる。
また、他の偏光状態の入射光であっても、偏光変換素子の各領域の光学軸および位相差を適宜変更して用いることができる。すなわち、入射光は他の偏光方向の直線偏光であってもよく、あるいは偏光変換素子の各領域の光学軸および位相差を適宜変更して本発明の効果が得られる限り、入射光は直線偏光に限定されず、円偏光であってもよい。
複屈折材料は、光の偏光方向によって異なる屈折率を示す材料であって、例えば、水晶やLiNbO3(ニオブ酸リチウム)のような複屈折性を示す単結晶、複屈折性を示す樹脂フィルムや樹脂の射出成型品、液晶、構造複屈折材料、等を用いることができる。複屈折材料として液晶を用いると、液晶の配向方向を制御して遅相軸方向を自由に設定できるため好ましい。液晶として、重合性液晶組成物を光や熱により高分子化させて得られる高分子液晶を用いると、さらに温度特性や取り扱い性が向上してより好ましい。また、複屈折材料として、基板上に設けた層や基板表面を加工して形成される構造複屈折材料を用いることもできる。構造複屈折材料は、光の波長と同程度またはさらに短い周期の微細な周期構造を形成して得られ、光学軸の方向や位相差の大きさを自由に設計できるので好ましい。
本実施形態に係る光ヘッド装置に用いられる偏光選択素子10の構成の1例を図3の平面図に示す。図3の偏光選択素子10は、入射光の偏光状態により透過率が異なる偏光選択層を有している。この偏光選択層は、光軸を中心とした放射状の境界により中心角90度の4つの領域に分割され、それぞれの領域に入射された入射光を、入射光の偏光状態によって異なる透過率で透過させるか、異なる光路に出射するように構成されている。
このような偏光選択素子としては、例えば、領域ごとに所望の偏光選択性をもたせて、入射光を光学多層膜に斜め入射させる偏光ミラー、偏光方向により入射光を吸収または吸収せずに透過させる吸収型偏光子、または入射光の偏光状態により回折効率が異なる偏光回折格子を形成して、作製することができる。あるいは、領域ごとに円偏光の回転方向により透過率および反射率が異なる円偏光選択反射素子などを用いることができる。
偏光選択素子10は、円偏光選択反射素子を用いることが好ましい。コレステリック液晶は、液晶の螺旋ねじれのピッチPから決まる選択反射波長帯を有していて、液晶の螺旋軸方向から入射した選択反射波長帯の光のうち、螺旋ねじれ方向と同一方向に回転する円偏光を透過させ、螺旋ねじれ方向と逆方向に回転する円偏光を反射するので、選択反射波長帯の入射光に対して所望の円偏光選択性が容易に得られる。そのため、円偏光選択反射素子としては、コレステリック液晶からなる液晶層を有する、円偏光選択反射素子を用いることが好ましい。なおコレステリック液晶は、液晶分子の配向方向が螺旋軸方向に回転した配向状態をもつ液晶であって、本明細書中では、カイラル剤を添加したネマチック液晶を含めていうものとする。コレステリック液晶層として、重合性液晶組成物を紫外線照射、加熱等により重合・固体化して得られる高分子コレステリック液晶を用いることもでる。その場合、液晶を封入するシールが不要になるとともに、特性の温度変化を抑制できてより好ましい。
図4は、かかる偏光選択素子10の構成の1例の断面図であって、この偏光選択素子10は、透光性基板45、46と、透光性基板45、46に挟持されたコレステリック相液晶からなる円偏光選択反射層41〜44(42、43は模式図していない)とを有している。透光性基板は、素子を用いる波長の光を実質的に吸収せずに透過させるガラス基板や樹脂基板が好ましく、特にガラス基板が基板の複屈折が小さいために好ましい。
円偏光選択反射層41〜44は、図3の偏光選択素子10における4つの領域31〜34に対応し、同様の円偏光選択性を有する。すなわち、円偏光選択反射層41、44は、第1の方向(例えば、反時計方向)に回転する第1の円偏光を透過させて第2の方向(例えば、時計方向)に回転する第2の円偏光を選択反射し、円偏光選択反射層42、43は、第2の円偏光を透過させて第1の円偏光を選択反射する。
円偏光選択反射層41〜44は、例えば透光性基板45の基板面上に重合性液晶組成物からなる層を形成し、この層を紫外線照射や加熱により重合固化させて得られる高分子コレステリック液晶層の非所望の領域を除去して、例えば領域42、43を形成し、次いで螺旋ねじれ方向が逆方向の高分子コレステリック液晶層を同様に形成して領域41、44を形成することにより、作製することができる。高分子コレステリック液晶からなる円偏光選択反射層が透光性基板に挟持された構造とすると、素子の剛性が向上し、良好な波面収差が得られて好ましいが、円偏光選択反射層が1枚の透光性基板の基板面上に形成された構成としてもよいし、基板を用いなくてもよい。
本実施形態に係る光ヘッド装置では、光ディスクの情報記録面により反射された戻り光は、上述したように、ビームスプリッタ3、コリメーターレンズ4bを経て、矢印20で示した偏光方向をもつ直線偏光状態で偏光変換素子9に入射される。偏光変換素子9に入射された戻り光は、図2(a)に示したように、領域21、24からの透過光は第1の円偏光、領域22、23からの透過光は第1の円偏光である偏光パターンに変換されて出射される。偏光変換素子9から出射された戻り光は、非点収差レンズ11を経て、偏光選択素子10に入射される。偏光選択素子10から出射された自層からの戻り光は、光検出器8の受光面に集光されて、光ディスクの情報記録面に記録された信号が読み取られる。
光ディスクの自層からの戻り光がコリメーターレンズ4bと非点収差レンズ11により合焦されて生じる2本の直交する焦線を、光ディスク7に近い側から第1の焦線、第2の焦線としたときに、偏光変換素子9は第1の焦線よりビームスプリッタ3側に配置され、光検出器8は、第1および第2の焦線の間に配置され、偏光選択素子10は、第1の焦線と光検出器8との間に配置される。
偏光選択素子10と偏光変換素子9は、それぞれの光軸および境界の方向と一致させて配置されるとともに、前記偏光選択層のうち隣り合う領域が、互いに逆回りの円偏光を透過させるとともに、透過させる円偏光と逆回りの円偏光を透過させないように、構成されている。すなわち、偏光変換素子9の領域31、34は第1の円偏光を反射して第2の円偏光を透過させ、領域32、33は第1の円偏光を透過させて第2の円偏光を反射するように構成され配置される。このとき、偏光変換素子9と偏光選択素子10とは、それぞれの4つの領域の境界方向のうち一方と第1の焦線の方向とを平行に配置されることが好ましい。以下の説明では、第1の焦線は、図2の紙面内で垂直方向の境界と平行であるとする。
偏光変換素子9から出射された戻り光のうち、自層からの戻り光は、非点収差レンズ11により第1の焦線に合焦されてさらに光路を進行するので、偏光変換素子9から出射されたときとは第1の焦線について線対称な偏光パターンに変換されて、偏光選択素子10に入射される。それにより、偏光変換素子9の各領域のうち、入射光を第1の円偏光に変換して出射させる領域から出射された戻り光が、偏光選択素子10の第1の円偏光を透過させる領域に入射され、入射光を第2の円偏光に変換して出射させる領域から出射された戻り光が、偏光選択素子10の第2の円偏光を透過させる領域に入射される。それにより自層からの戻り光は、減衰されることなく、偏光選択素子10から出射される。
一方、他層からの戻り光は自層からの戻り光と焦線位置が異なるため、偏光変換素子9から出射されたときと同様の偏光パターンで偏光選択素子10に入射される。そのため、偏光変換素子10の各領域から出射された戻り光は、偏光選択素子8の各領域により反射されて、光検出器8に入射する光量が低減される。他層からの戻り光の2本の焦線が、2本とも偏光変換素子10より非点収差レンズ11側に、または偏光選択素子8より光検出器側である遠い側(光検出器以遠であってもよい)となるように構成することが好ましい。この構成とすると、さらにクロストークを低減し易い。
光検出器8の受光面上における戻り光の集光状態について、図7を用いて説明する。光検出器8の受光面は、複数領域からなる受光エリア73a〜dを有していて、光ディスクの所望の情報記録層すなわち自層により反射された戻り光は、その受光エリア73a〜d内に集光されて集光スポット71を形成して、情報が読み取られる。一方、所望の情報記録層以外の情報記録層である他層により反射されて生じた戻り光は、デフォーカスされた大きなスポット径の集光スポット72となって光検出器8の受光面上に入射されるが、上述の構成によって光強度が著しく減衰されて、自層からの戻り光と他層からの戻り光との干渉が抑制される。それにより、光検出器への信号強度を低下させることなく、複層光ディスクに対して良好な読み取り/書き込み特性が実現される。
ここで、光の偏光状態を表すために、ストークスパラメータを用いて説明する。以下、ストークスパラメータについて簡単に説明するが、ストークスパラメータの詳細な説明は、例えば培風館発行「応用光学2」第5−3章「偏光の表記」に記されている。
(x,y,z)座標系においてz方向に進む光を考えると、この光のx、y成分のEx、Eyは次式で表わされる。
Ex=Ax・exp{i(ωt−kz+δx)}
Ey=Ay・exp{i(ωt−kz+δy)}
ここで、ωは角周波数、kは波数ベクトル、δx、δyはそれぞれx、y方向の光の位相、Ax、Ayはそれぞれx、y方向の電場振幅を示す。
偏光状態は4つのパラメータであるストークスパラメータ(S0,S1,S2,S3)によって表すことができる。
S0=<Ax 2>+<Ay 2>
S1=<Ax 2>−<Ay 2>
S2=2<Ax・Ay・cosδ>
S3=2<Ax・Ay・sinδ>
ここで、δ=δy−δxとし、記号“< >”は十分に長い時間の平均値を示す。
S0は光強度を表すパラメータなので、S0=1で規格化した基準化ストークスパラメータによって、光の偏光状態を表すことができる。つまり、基準化ストークスパラメータは、次のように表される。
S0=1
S1={<Ax 2>−<Ay 2>}/{<Ax 2>+<Ay 2>}
S2=2<Ax・Ay・cosδ>/{<Ax 2>+<Ay 2>}
S3=2<Ax・Ay・sinδ>/{<Ax 2>+<Ay 2>}
偏光度Vは、基準化ストークスパラメータを用いて、次式で表わされる。
V=(S1 2+S2 2+S3 2)1/2/S0 (2)
また、2つの光a、bの偏光状態を(S0a,S1a,S2a,S3a)、(S0b,S1b,S2b,S3b)とすると、これらの光の偏光状態の差は、
γ=(S1a−S1b)2+(S2a−S2b)2+(S3a−S3b)2 (3)
で表すことができる。
図3の偏光選択素子10の領域31〜34により透過された光の偏光状態を基準化ストークスパラメータで表記すると、領域31および34を透過した光は、(S0,S1,S2,S3)=(1,0,0,1)、領域32および33を透過した光は、(S0,S1,S2,S3)=(1,0,0,−1)と表わされる。また、例えば隣り合う領域31、32の偏光状態の差γは、γ=(0−0)2+(0−0)2+(1−(−1))2=4となる。
本実施形態の光ヘッド装置100では、戻り光は、領域により偏光状態が異なる偏光パターンに変換されて、各領域からの出射光を足し合わせた光束の偏光度Vは低減されて実質的に0(ゼロ)となって、受光素子の受光エリア73上で、自層からの戻り光と他層からの戻り光とが干渉する層間光干渉を生じ難いという効果が得られる。
また、本実施形態の光ヘッド装置100では、偏光変換素子9の各領域を透過した光は、隣り合う領域からの透過光との偏光状態の差が大きいので、領域の境界で回折現象を起こして、隣接する領域の戻り光に混ざり込んで偏光状態を乱すおそれがある。偏光選択素子10として、隣り合う領域を透過した光の偏光状態の基準化ストークスパラメータS3が0.7〜1.0および−0.7〜−1.0である偏光選択素子を組み合せて用いると、大きいγが得られて、偏光変換素子9の隣り合う領域による透過光の混ざり込みによる偏光状態の乱れを取り除くことができる。それにより光検出器8の受光エリア73上での、他層からの戻り光である迷光との干渉をさらに低減することができて好ましい。かかる特性の円偏光選択素子は、隣り合う領域で、捩れ方向が逆回りのコレステリック液晶を用いると、好ましく得られる。
偏光選択素子の隣り合う領域から出射される光の偏光状態の差γは、より好ましくは3以上4以下であり、とくに好ましくはγを3.5以上4以下である。γをこのような範囲とすると、他層からの戻り光の混ざり込みを低減して、光検出器8の受光エリア73における自層からの光と他層からの光との干渉性をより低減できて好ましい。上述の偏光状態の乱れをより効果的に取り除くためには、偏光選択素子10は、第1の焦線を挟んで偏光変換素子9と近接させて配置することがより好ましい。
偏光選択素子10は、できるだけ光検出器9の近くに配置することが好ましい。偏子選択素子10と光検出器9の受光面との距離を近付けると、偏光選択素子9を透過した光束の偏光パターンが各領域の境界で回折して偏光パターンが乱れるのを抑制して、自層と他層の光の干渉を低減することができる。偏光選択素子と光検出器の受光面との距離は1mm以下が好ましく、0.5mm以下さらに0.1mm以下がより好ましい。ここで、偏光選択素子と光検出器の受光面との距離とは、偏光選択素子の偏光選択層と受光面の距離をいう。
偏光変換素子9と偏光選択素子10とは、近くに配置することが好ましい。偏光変換素子9と偏光選択素子10との距離は、10mm以下が好ましく、より好ましくは5mm以下であり、さらに好ましくは2mm以下である。また、かかる距離で偏光変換素子9と偏光選択素子10とを一体化すると、光軸と境界方向とを高精度で一致させて光学系を構成することが容易となって、それによりクロストークをより低減できて好ましい。
図5は、本発明の光ヘッド装置において適用可能な、コレステリック液晶を用いた円偏光選択素子である偏光選択素子の第2の模式的断面図を示す。図5の偏光選択素子50は、円偏光選択反射層と1/2波長板が積層一体化された構成を有していて、図5の偏光選択素子50の円偏光選択反射層は、光軸方向で見たときに、図3の偏光選択素子10における4つの領域31〜34に対応する円偏光選択反射層の領域51〜54を有している。
第1の透光性基板55の基板面上には、円偏光選択反射層の領域51と不模式図の領域54とが、第2の透光性基板56の基板面上には、円偏光選択反射層の領域52と不模式図の領域53とが、それぞれ形成されている。これらの円偏光選択反射層の領域51〜54は、選択波長帯の第1の円偏光を透過させ、第2の円偏光を選択反射する高分子コレステリック液晶を用いて形成される。円偏光選択反射層の領域51と領域54とが形成された第1の透光性基板55と、円偏光選択反射層の領域52と領域53とが形成された第2の透光性基板56とは、円偏光選択反射層が形成された面を対向させ、1/2波長板層57を挟持させるとともに、接着機能を兼ね備える充填材58を空隙部を充填するように充填して、積層一体化して作製される。
図5の偏光選択素子10に選択反射波長帯の第1の円偏光が入射した場合について説明する。透光性基板55側から図中で素子の左側に入射した第1の円偏光は、円偏光選択反射層の領域51を透過し、1/2波長板層57により第2の円偏光に変換されて、偏光選択素子50から直進透過される。一方、図中で素子の右側に入射した第1の円偏光は、1/2波長板層57に入射して、第2の円偏光に変換されて円偏光選択反射層の領域52に入射され、領域52により選択反射される。
次に第2の円偏光を、同じく透光性基板55側から入射させた場合について説明する。図中で素子の左側に入射した第2の円偏光は、円偏光選択反射層の領域層51により反射される。一方、図中で素子の右側に入射した第2の円偏光は、まず1/2波長板層57に入射して、第1の円偏光に変換されて円偏光選択反射層の領域52に入射され、領域52により透過される。このように、図5に示した偏光選択素子は、隣り合う領域で透過される円偏光の回転方向が異なる偏光選択性を有している。
図6は、本発明の光ヘッド装置において適用可能な、コレステリック液晶を用いた円偏光選択素子である偏光選択素子10の第3の模式的断面図を示す。図6の偏光選択素子60の第1の透光性基板65は、光軸方向で見たときに、図3の偏光選択素子10における4つの領域31〜34のうち領域31、34に対応する領域に、1/2波長板からなる1/2波長板層の領域61と不図示の領域64とを有し、図3の領域32、33に対応する領域には、入射偏光の円偏光の回転方向を変化させないm波長板(mは正の整数)あるいは等方性材料からなる等方性層の領域62と不図示の領域63とを有している。円偏光選択反射層67は、選択波長帯の第1の円偏光を選択反射し、第2の円偏光を透過させる高分子コレステリック液晶を用いて形成される。mは1とすると製造が容易となり好ましいが、これに限定されない。
1/2波長板層61、64と等方性層62,63とが形成された透光性基板65は、基板上に形成された1/2波長板層および等方性層と円偏光選択反射層67とを挟持して、対になる透光性基板66と積層一体化されて、図6の偏光選択素子60を構成している。
図6の偏光選択素子に対して、透光性基板65側から、選択反射波長帯の第1の円偏光を入射させた場合について説明する。
図中で素子の左側に入射した第1の円偏光は、1/2波長板層の領域61に入射され、第2の円偏光に変換されて円偏光選択層67へと出射され、円偏光選択反射層67により透過されて偏光選択素子60から出射される。一方、図中で素子の右側に入射した第1の円偏光は、等方性層の領域62に入射され、偏光状態を変化されることなく円偏光選択反射層67へと出射され、円偏光選択反射層67により選択反射される。
次に第2の円偏光を、同じく透光性基板65側から入射させた場合について説明する。図中で素子の左側に入射した第2の円偏光は、等方性層の領域62に入射され、そのままの偏光状態で円偏光選択反射層67へと出射され、円偏光選択反射層67により選択反射される。一方、図中で素子の右側に入射した第2の円偏光は、等方性層の領域62に入射され、そのままの偏光状態で円偏光選択反射層157へと出射され、円偏光選択反射層157により透過されて、偏光選択素子10から出射される。このように、図6に示した偏光選択素子は、隣り合う領域で透過される円偏光の回転方向が異なる偏光選択性を有している。
以上の説明では、4つの分割された領域の隣り合う領域により互いに逆回りの円偏光に変換して透過させる偏光変換素子と、4つの分割された領域の隣り合う領域により互いに逆回りの円偏光を透過しこれと逆回りの円偏光を反射する円偏光選択反射素子と、を組合せて用いる構成を例に挙げて説明したが、偏光変換素子および偏光選択反射素子がそれぞれ透過させる偏光パターンはこれに限定されない。
たとえば、4つの分割された領域の隣り合う領域が、入射光をそれぞれ偏光方向がX方向である直線偏光とX方向に直交するY方向である直線偏光とに変換して透過させる偏光変換素子と、X方向に偏光する直線偏光成分のみを透過する領域と、X方向に直交するY方向に偏光する直線偏光成分のみを透過する領域とを有する偏光選択素子との組み合わせも同様に好ましく用いることができる。この場合、それぞれの領域からの透過光の偏光状態を基準化ストークスパラメータで標記すると、それぞれ(1,1,0,0)、(1,−1,0,0)となり、これらの領域から出射される光は、γ=(1−(−1))2+(0−0)2+(0−0)2=4と偏光状態の差γが大きくて好ましい。
また、偏光選択素子の他の例として、ある領域が直線偏光を透過させ、隣り合う領域が円偏光を透過させる偏光選択素子を用いることもできる。その場合には、隣り合う領域から出射される光は、γ=(1−0)2+(0−0)2+(0−1)2=2と偏光状態の差が大きくて好ましい。それにより、他層からの光量を概ね1/2に低減できて、光検出器上での複層ディスク自層と他層からの光の干渉を低減することができる。
偏光選択素子の隣り合う領域から出射される光の偏光状態の差γは、より好ましくは3以上4以下であり、とくに好ましくはγを3.5以上4以下である。γをこのような範囲とすると、自層からの光と他層からの光との干渉性をより低減できて好ましい。
以上のように、本実施の形態に係る光ヘッド装置100においては、ビームスプリッタ4と光検出器9との間の光路中に、偏光変換素子8および偏光選択素子10とを配置し、偏光変換素子8により、自層からの戻り光と、他層からの戻り光とを、異なる偏光パターンの光束に変換し、偏光選択素子10により、自層からの戻り光を直進透過させ、他層からの戻り光を透過させない構成としたので、光検出器8の受光面上への他層からの戻り光の入射を低減することができる。また、複層ディスクのそれぞれの層からの戻り光が照射される光検出器9上で、それぞれの層からの戻り光の偏光度を低下させることができ、それらの光の干渉性が低減される。
それにより、複層ディスクの層間隔の変化や波長の変化によって異なる層からの光の干渉条件が変化することによって信号が強度変化して、読み取り性能が低下することを抑制できるので、本実施の形態に係る光ヘッド装置100は、光検出器9への信号強度を低下させることなく複層光ディスクを記録再生することができる。
<第2の実施の形態>
本実施の形態に係る光ヘッド装置200の概念的な構成を図8に示す。本実施形態の光ヘッド装置200は、光源201、コリメータレンズ204a、ビームスプリッタ203、対物レンズ206、コリメータレンズ204b、偏光変換素子209、非点収差レンズ211、偏光選択素子210および光検出器208を備えていて、光源201とコリメータレンズ204aとの間の光路上に、光源光をメインビームと2つのサブビームとからなる3つのビームに分ける3ビーム回折素子202をさらに備えている以外は、実施形態1にかかる光ヘッド装置100と同様の構成を有する。
光検出器208では、光ディスク207の所望の情報記録面207aに記録された情報の読み取り信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号が読み取られ出力信号が生成される。なお、光ヘッド装置200は、上記のフォーカスエラー信号に基づいてレンズを光軸方向に制御する機構(フォーカスサーボ)と、上記のトラッキングエラー信号に基づいてレンズを光軸にほぼ垂直な方向に制御する機構(トラッキングサーボ)とを備えるが、図8に示す構成図では省略されている。
光源201から出射された光源光は、3ビーム回折素子202によりメインビームと2つのサブビームとからなる3つのビームに分けられて、この3つのビームからなる光源光は、コリメータレンズ204a、ビームスプリッタ203をこの順で透過して、対物レンズ206により集光されて、光ディスク207の所望の情報記録面207aに照射される。光ディスク207の情報記録面207aに集光、照射された光源光は、情報記録面207aにより反射され、対物レンズ206を透過してビームスプリッタ203で反射され、コリメータレンズ204bから偏光変換素子209、非点収差レンズ211、偏光選択素子210を介して光検出器208に入射される。
図10に、本実施形態に係る光ヘッド装置に用いられる偏光変換素子209の構成の1例を示す。本実施形態に係る光ヘッド装置に用いられる偏光変換素子209は、メインビームの光軸を中心に対称に配置された第1および第2の領域201、202と、他の部分からなる第3の領域203とを有している。第3の領域203は、偏光変換素子209の、少なくとも、光ディスクの自層で反射され光検出器に導かれる戻り光が入射する有効領域内である。
第1および第2の領域221、222は、光ヘッド装置200を構成したときに、それぞれが対応する受光エリア281および282に対して、相似する形状あるいは包絡する形状とするとともに対応する位置に配置される。これらの領域221、222、223はそれぞれ所定の光学軸方向および所定の位相差の大きさを有する複屈折性を示す複屈折層を含んでいて、偏光変換素子209に図10(a)中に矢印220で示した方向に偏光した直線偏光が入射されると、偏光変換素子209のそれぞれ第1および第2の領域221、222に入射した入射光は、図中に矢印で示したように同じ回転方向の円偏光(以下の本実施形態の記載では第1の円偏光という)に変換されて出射され、領域223に入射した入射光は、第1および第2の領域221、222から出射される円偏光とは反対方向の回転方向をもつ第2の円偏光に変換されて出射される。
本実施形態で用いる偏光選択素子210の平面模式図を図10に示した。偏光選択素子210は、入射した光のうち、第2の円偏光を透過させ、第1の円偏光を反射するように構成される。
図9に、本実施形態にかかる光ヘッド装置200の光検出器208の、受光エリアと、受光面上に集光された戻り光と、を模式的に示した。光検出器208は、前述のメインビームおよび2つのサブビームからなる3つのビームによるそれぞれの戻り光を受光するための3組の受光エリア283および281、282を備える。光ディスクの自層に照射された、メインビームおよび2つのサブビームからなる3つのビームによる戻り光は、受光面上でそれぞれ集光スポット286および285、287に集光され、また他層による反射により生じた戻り光は、受光面上でデフォーカスされた集光スポット288に集光される。
本実施形態にかかる光ヘッド装置200において、偏光変換素子209に入射した複層光ディスクからの戻り光は、領域221、222から出射された第1の円偏光である透過光と、領域203から出射された第2の円偏光である透過光とが足し合わされて、領域により偏光状態が異なる、偏光度Vが低減された光束となって出射される。
メインビームによる自層からの戻り光のうち、偏光変換素子209の第1および第2の領域221、222に入射して第1の円偏光に変換されて出射された戻り光は、偏光選択素子210により反射され、面積が大きい第3の領域223に入射して第2の円偏光に変換された戻り光が、偏光選択素子210により透過されて支配的な光束となって、メインビームを受光する受光エリア286に集光される。それにより、受光エリア286において充分な戻り光強度が得られる。
また、2本のサブビームによる自層からの戻り光のうち、偏光変換素子209の第1および第2の領域221、222により第1の円偏光に変換されて出射された戻り光は、偏光選択素子210により反射されて、面積が大きい領域203により第2の円偏光に変換されて出射された戻り光が、偏光選択素子210により透過されて支配的な光束となって、サブビームを受光する受光エリア281、282に集光されて集光スポット285、287を形成する。
一方、2本のサブビームによる他層からの戻り光は、偏光変換素子209の第1および第2の領域221、222により第1の円偏光に変換されて出射された戻り光は偏光選択素子210により反射され、面積が大きい領域203により第2の円偏光に変換されて出射された戻り光は偏光選択素子210により透過される。第1および第2の領域221、222は、それぞれ受光エリア281および282に対して相似する形状あるいは包絡する形状とされ、対応する位置に配置されているので、2本のサブビームによる他層からの戻り光は、受光エリア281、282以外の光検出器208の受光面上に、デフォーカスされた集光スポット288として集光される。これにより、自層からの戻り光と他層からの戻り光との干渉が抑制されて、良好な再生特性が実現される。
偏光変換素子209の第1および第2の領域221、222から出射された戻り光と、第3の領域223から出射された戻り光とは、偏光状態が大きく異なるため領域の境界で回折が生じて、戻り光が隣接する領域に混ざり込んで、その結果、自層と他層からの光の干渉を増加させるおそれがある。本実施形態の光ヘッド装置の構成においては、偏光選択素子210を偏光変換素子209と光検出器の間に配置することにより、回折により隣接する領域に回り込んだ不要な偏光成分を反射して、自層と他層からの光の干渉を低減できる。
なお、上述の説明においては、偏光変換素子209の領域数を3つとし、また領域201、202の形状を円形としたが、領域の数および形状は、上述の効果が得られる限り何らこれに限定されない。例えば、第1および第2の領域の間に、第1および第2の領域と同様に偏光状態を変換する第4の領域を配置した偏光変換素子とすることも好ましく、かかる偏光変換素子を用いると、第4の領域により、メインビームによる他層からの戻り光がメインビームの受光エリアに入射するのを低減することができる。さらにこの構成における第1、第4および第2の領域を、これらの領域を包絡する単一の領域としても、同様の効果が得られる。
偏光選択素子210を光検出器208の近くに配置すると、回折による不要な偏光成分の反射を高めて自層と他層からの光の干渉を効果的に低減できてより好ましい。偏光選択素子と光検出器の受光面との距離は1mm以下が好ましく、0.5mm以下さらに0.1mm以下がより好ましい。ここで、偏光選択素子と光検出器の受光面との距離とは、偏光選択素子の後述する偏光選択層と受光面の距離をいう。
偏光変換素子209の複屈折層は、実施形態1の光ヘッド装置の偏光変換素子9における複屈折層と同様である。複屈折層として高分子液晶層を用いた偏光変換素子209の構成例について以下説明する。
本構成例の偏光変換素子209は、領域201、202、203の複屈折層の光学軸の方向が、図10(b)に矢印204、205、206で示したように、互いに平行かつ入射する直線偏光の偏光方向220と45度の角度をなす。そして、領域201、202の複屈折層の位相差は入射光波長の1/4であって、領域203の複屈折層の位相差は入射光波長の3/4とである。
各領域の光学軸と位相差は、出射光の偏光状態の分布が図10(a)のパターンとなるものであれば何ら図10(b)の構成に限定されず他の構成のものも用いることができる。例えば、各領域の位相差を入射光波長の1/4で一定とし、光学軸の方向204、205を、入射光の偏光方向220と45度の角度をなして同じ方向とし、光学軸の方向206を、入射光の偏光方向220と45度の角度をなすとともに、光学軸の方向204、205と直交する方向としてもよい。さらに偏光変換素子209に入射する戻り光の偏光状態も、偏光変換素子209の各領域の光学軸と位相差を調整して所望の偏光パターンが得られれば、図示した偏光方向の直線偏光に限定されず、他の偏光方向の直線偏光や、円偏光を用いることもできる。
複屈折層として高分子液晶層を用いた偏光変換素子209の作成方法を以下に説明するが、作成方法は、以下の例示に制約されない。
透光性基板上に、入射光波長の3/4の位相差の高分子液晶層を形成し、領域201、202の高分子液晶層をフォトリソグラフィおよびドライエッチングにより層の厚さを入射光波長の1/4まで薄く加工する。透明で等方性の充填剤を用いて、この透光性基板と対になる透光性基板とを、加工した高分子液晶層を挟持させて接着して、偏光変換素子209が得られる。
光学軸方向は、高分子液晶層と接する基板面にラビングにより配向処理を行った後高分子液晶層を形成すると、所望の光学軸方向とすることができる。あるいは、光配向する配向膜材料を用いて配向処理したり、基板面に微小な凹凸溝を多数形成して、その凹凸溝方向に対して液晶分子を配向させたりして、高分子液晶層の光学軸方向を制御することもできて、かかる方法はとくに、領域により光学軸方向が異なる偏光変換素子209を作製する場合、好適である。
ここで透光性基板としては、例えば透明なガラスやプラスティックからなる基板を用いることができる。
充填剤は、高分子液晶層の常光屈折率noと異常光屈折率neとの間の屈折率を有する透明材料からなり、高分子液晶層の領域201、202の凹部を埋めるように、透光性基板の間を充填して形成することが好ましい。充填材の屈折率を、高分子液晶層62の常光屈折率noと異常光屈折率neのいずれかと一致させるか、常光屈折率noと異常光屈折率neの平均値(no+ne)/2とすると透過した光の波面の乱れを抑えることができて一層好ましい。
本実施形態で用いる偏光選択素子210は、入射した円偏光の回転方向により透過率および反射率が異なる円偏光選択反射素子が用いられ、図11に示した平面模式図のように、入射した第2の円偏光を透過させ、第1の円偏光を反射する、円偏光選択反射素子としては、コレステリック液晶からなる液晶層を有する円偏光選択反射素子を用いることが好ましい。円偏光選択反射素子は、上述と相溶の理由により、高分子コレステリック液晶からなる液晶層を用いることが好ましい。
高分子コレステリック液晶からなる液晶相を有する円偏光選択反射素子である偏光選択素子210の作成方法を以下に説明するが、作成方法は、以下の例示に制約されない。
2枚の透光性基板を外周部にシールを設けて所定の基板間距離で対向配置させたセル中に重合性液晶組成物を真空注入して重合性液晶組成物層を形成し、紫外光照射により重合性液晶組成物を重合、固化させ、高分子液晶層を形成して、円偏光選択素子が得られる。重合性液晶組成物は、カイラル剤を添加したネマチック液晶を用いると、カイラル剤の選択および添加量により、選択反射する円偏光の回転方向と選択反射波長帯の波長を調整できて好ましい。高分子液晶層の厚さは、シールを形成するシール剤に混入するスペーサの径により調整することができて、1〜30μmが好ましい。
偏光選択素子210は、円偏光選択反射層が透光性基板に挟持された構造とすると、素子の剛性が向上し、良好な波面収差が得られて好ましいが、円偏光選択反射層が1枚の透光性基板の基板面上に形成された構成としてもよいし、基板を用いなくてもよい。透光性基板は、素子を用いる波長の光を実質的に吸収せずに透過させるガラス基板や樹脂基板が好ましく、特にガラス基板が基板の複屈折が小さいために好ましい。
<第3の実施の形態>
本実施の形態に係る光ヘッド装置200の概念的な構成を図12に示す。本実施形態の光ヘッド装置300は、光源301、コリメータレンズ304a、ビームスプリッタ303、対物レンズ306、コリメータレンズ304b、偏光変換素子309、非点収差レンズ311、偏光選択素子310および光検出器208を備えていて、光源301とコリメータレンズ304aとの間の光路上に、光源光をメインビームと2つのサブビームとからなる3つのビームに分ける3ビーム回折素子302をさらに備えている以外は、実施形態1にかかる光ヘッド装置100と同様の構成を有する。
すなわち、図12の本実施の形態に係る光ヘッド装置300では、偏光変換素子309は、ビームスプリッタ303を経てコリメータレンズ304bから出射されて光検出器308に至る戻り光の光路上に、非点収差レンズ311、偏光変換素子309、偏光選択素子310の順で配置される。偏光変換素子309は、自層からの戻り光が、コリメータレンズ304bおよび非点収差レンズ311により合焦された焦線付近に配置することが好ましい。
本実施形態に係る光ヘッド装置300に用いられる偏光変換素子309の1例の平面模式図を図13に示す。図13の偏光変換素子309は、2つの領域321、322を有している。
帯状の第1の領域321は、偏光変換素子309の素子面に入射した自層からの戻り光の光束325の形状を近似して包含する形状とされ、光軸を通って前述の焦線の方向に伸長する幅の狭い形状を有していて、例えば長方形や長円形とされる。帯状の第1の領域321は、偏光変換素子309に入射した自層からの戻り光の光束325を含むように形状が決められ、位置および方向を一致させて配置されて、第2の領域322は、少なくとも偏光変換素子309に入射した他層からの戻り光の光束326を含む、第1の領域321以外の素子面内の領域である。
領域321、322は、複屈折性を示す複屈折層を備え、直線偏光の入射光を、領域121と領域122で反対の回転方向の円偏光に変換して出射させるように構成される。かかる特性を得るための構成の例として、領域321、322の複屈折層の光学軸を互いに平行、かつ入射光の偏光方向と45度の角度をなすようにし、領域321の複屈折層の位相差を入射光波長の1/4とし、領域322の複屈折層の位相差を入射光波長の3/4とした構成を挙げることができるが、上述の偏光状態の出射光が得られる限り、入射光の偏光状態とともに、これに何ら限定されない。
図12の光ヘッド装置300では、光ディスクの自層からの戻り光は、コリメータレンズ4bおよび非点収差レンズ311により集光されて小面積の線状の光束325とされて、偏光変換素子309の領域321内に照射される。帯状の領域321に入射した自層からの戻り光は、上述の構成により円偏光に変換されて、偏光変換素子309から出射される。この出射光の回転方向の円偏光を、以下第2の円偏光という。一方、他層からの戻り光は、デフォーカスされた大面積の光束326とされて、偏光変換素子309の領域322内に照射される。領域322に入射した他層からの戻り光は、上述の構成により、第2の円偏光とは回転方向が逆回りの円偏光(以下第1の円偏光という)に変換されて、偏光変換素子309から出射される。
偏光変換素子309から出射された戻り光は、次いで偏光選択素子310に入射される。偏光選択素子310は、第2の実施形態の光ヘッド装置200に用いられる偏光選択素子210と同様の構成を有していて、入射した光のうち、第2の円偏光を透過させ、第1の円偏光を反射するように構成されている。
かかる構成により、偏光変換素子309により第2の円偏光が支配的な光束に変換されて出射された自層からの戻り光は、偏光選択素子310により透過されて、光検出器308の受光面上に集光される。一方、偏光変換素子309により第1の円偏光が支配的な光束に変換されて出射された他層からの戻り光は、偏光選択素子310により反射されて、光検出器308の受光面上へ入射される光量が低減される。それにより光検出器308には、他層からの戻り光の入射が大きく低減されて、自層からの光と他層からの光の干渉を低減できるので好ましい。
本実施の形態に係る光ヘッド装置300では、偏光変換素子309は、素子面上に照射される、他層からの光束の面積が自層からの光束の面積の2倍以上となる位置に配置することが好ましい。この構成とすることにより、自層からの光に対して他層の光を半分程度に低減できるので、受光エリアにおける信号の干渉を充分に低減できて好ましい。上記面積比は、さらに好ましくは5倍以上、とくに好ましくは10倍以上である。
また上述の説明では、偏光変換素子が、帯状の第1の領域とおよび第2の領域の2つの領域を有する場合について述べたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、3ビーム法を用いる光ヘッド装置において、2つのサブビームに対応させて帯状の第1の領域を2つ設けた構成としたり、メインビームとサブビームの3つのビームに対応させて帯状の第1の領域を3つ設けた構成とすることもできて、これらの場合それぞれのビームに対して、信号の読み取り特性が向上されて好ましい。
第1〜3の実施の形態の光ヘッド装置についての説明で述べたように、本発明に係る光ヘッド装置では、ビームスプリッタと光検出器との間の光路中に、偏光変換素子および偏光選択素子とを配置し、偏光変換素子により、自層からの戻り光と、他層からの戻り光とを、異なる偏光状態の光束に変換し、偏光選択素子10により、自層からの戻り光を直進透過させ、他層からの戻り光を透過させない構成を用いることにより、光検出器の受光面上への他層からの戻り光の入射を低減することができる。また、光検出器上に照射される、複層ディスクの自層からの戻り光の偏光度を低下させることができるので、自層からの戻り光の干渉性が低減される。それにより、複層ディスクの層間隔の変化や波長の変化によって異なる層からの光の干渉条件が変化することによって信号が強度変化して、読み取り性能が低下することを抑制できるので、本発明に係る光ヘッド装置は、光検出器への信号強度を低下させることなく複層光ディスクを記録再生することができる。