JP2008272476A - 単位面積質量画像の作成方法 - Google Patents

単位面積質量画像の作成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】明白な画質改善が得られる比較的簡単な散乱放射補正方法を提供する。
【解決手段】二重X線吸収法において散乱放射補正された単位面積質量画像を作成するために、異なるエネルギー範囲における減弱画像によってもたらされる不均一な補正範囲(24)における付加的な情報を、1次放射関数の逆変換によって多数の減弱画像について一致する多次元の単位面積質量を見つけ、多次元の単位面積質量に基づいて散乱放射成分を求めるために使用することを提案する。
【選択図】図4

Description

本発明は、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像に基づいて単位面積質量(単位面積当り質量)画像を作成する方法であって、
放射源による放射の発生および放射による検査対象の透視ステップ、
放射による検出装置の作動および検出装置による異なるエネルギー範囲での減弱画像の検出ステップ、
検出装置の後に接続された評価ユニットによる単位面積質量画像の決定ステップ、
を有する単位面積質量画像の作成方法に関する。
この種の方法は知られている(例えば、非特許文献1参照)。二重X線吸収法の枠内において、一般に患者である検査対象が異なるエネルギーでのX線放射により透視される。この場合に二重X線吸収法は、個別の撮影によりまたは連続的に行なわれる一連の撮影により遂行される。
前者の場合、できるだけ遠くに離れたエネルギー中心点を有する応答特性を持った2つの異なるシンチレーション材料を有する2重検出器が使用される。後者の場合、X線管が使用される場合に、電子が加速される管電圧の変化または前置フィルタの選択によって発生されるできるだけ異なるX線スペクトルによる相次ぐ撮影が行なわれる。
撮影された投影画像の各画素について、異なるエネルギー範囲における減弱特性から、点状のX線源と画素との間のビーム経路における物質組成を推定することができる。投影画像は以下において減弱画像と呼ばれる。更に、物質組成とは、検査対象を通るビームに沿った種々の物質の単位面積質量(単位面積当り質量)であると理解すべきである。
異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の結合によって、検査対象内に含まれる異なった物質の単位面積質量を少なくとも近似的に再現する単位面積質量画像が作成される。一般的には減弱画像は線形結合され、その際に重み付け係数は経験に基づいて求められる。しかしながら、単位面積質量密度の数学的に正確な決定は公知の方法ではほとんどできない。
更に、単位面積質量の数学的に正確な決定は存在する散乱放射によっても困難である。平面型検出器による投射X線撮影法においては既に、大きな検出空間角度ゆえに散乱が重大な役割を演じる。散乱放射を低減するために、しばしば散乱放射線除去用グリッドが直接的に検出器入口面上において使用される。二重X線吸収法は、定量的な方法として、投射X線撮影法の枠内での簡単な投影画像化よりも高い測定データ精度を要求する。散乱放射線除去用グリッドにもかかわらず、悪影響を及ぼす散乱放射成分のデータが著しいことがある。例えば胸部では一般に非常に小さい間隙が働いて、この結果として、散乱放射線除去用グリッドにもかかわらず、とりわけ強い減弱を有する画像領域においてかつ100kV以上のX線管電圧に相当する高い光子エネルギーにおいて、散乱放射強度がなおも1次放射強度を上回ることがある。更に、散乱放射成分が高エネルギーの画像データと低エネルギーの画像データとにおいて非常に異なっているということも経験に基づく事実である。これは、特に小さい間隙の場合に、すなわち散乱対象と検出器との間の距離が僅かである場合に当てはまる。全体として、散乱放射の存在は、散乱放射線除去用グリッドにもかかわらず、二重X線吸収法においては信頼できないかつ部分的には使用できない結果をもたらすこと、例えば負の物質厚さを生じることがある。したがって、二重X線吸収法においては、散乱放射の補正が非常に重要である。
したがって、二重X線吸収法においては、散乱放射線除去用グリッドの使用のために付加的に、計算による散乱放射補正法が必要である。
ここで注記しておくに、散乱放射は以下において2次放射とも呼ぶ。測定された画像値をもたらす1次放射と2次放射との和は全放射と呼ぶ。
二重X線吸収法の枠内における散乱放射補正方法は知られているる(例えば、非特許文献2参照)。この公知の方法では、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像のそれぞれに関して、与えられた画素について経験に基づいて求められる散乱放射成分が画像値に依存して決定されることによって、散乱放射補正が行なわれる。散乱放射成分は散乱放射のための分布関数の形および幅を決定する。散乱放射関数に基づいて隣接するピクセルにおける散乱の分け前が算出される。ひき続いて方法が他の画像値のために繰り返され、個々のピクセルにおいて散乱の分け前が合計される。それにより、検出装置により記録された画像を分布関数で畳み込むことが行なわれ、分布関数の幅および形状は検出装置によって撮影された減弱画像の画像値に依存する。
ビームストップ法による散乱放射を決定するための測定技術的方法が知られている(例えば、非特許文献3参照)。この方法はファントムを用いた実験室における適用に適しているが、しかし診療事業にはほとんど適していない。
更に、コンピュータ断層撮影の枠内における散乱放射補正のための種々のコンピュータによる方法が知られている(例えば、非特許文献4参照)。
しかしながら、公知のコンピュータによる方法は一般にかなり複雑で高価である。
したがって、明白な画質改善が得られる比較的簡単な補正方法が要望されている。
WARP,R.J.;DOBBINS,J.T.:Quantitative evaluation of noise reduction strategies in dual-energy imaging:Med.Phys. 30(2),pp.190−198,Feb.2003 HINSHAW,D.A.;DOBBINS III,J.T.:Recent progress in noise reduction and scatter correction in dual−energy imaging:Proc.SPIE,1995,Vol.2432,pp.134−142 FLOYD,C.B.;BAKER,J.A.;LO,J.Y.;RAVIN C.E:Posterior Beam−Stop Method for Scatter Fraction Measurement in Digital Radiography:Investigative Radiology Feb.1992,Vol.27,pp.119−123 ZELLERHOFF,M.;SCHOLZ,B.;RUEHRNSCHOPF,E.−P.;BRUNNER,T.:Low contrast 3D−reconstruction from C−arm data:Proceedings of SPIE.Medical Imaging,2005,Vol.5745,pp.646−655
この従来技術に基づいて本発明の課題は、従来技術に比べて改善された画質を有する単位面積質量画像を作成することを可能にする方法を提供することにある。
この課題は、本発明によれば、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像に基づいて単位面積質量画像を作成する方法であって、
放射源による放射の発生および放射による検査対象の透視ステップ、
放射による検出装置の作動および検出装置による異なるエネルギー範囲での減弱画像の検出ステップ、
検出装置の後に接続された評価ユニットによる単位面積質量画像の決定ステップ
を有する単位面積質量画像の作成方法において、
評価ユニットによって、対象内の多次元の単位面積質量を異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の減弱値に結合する多次元の減弱関数の逆変換により、対象内の単位面積質量の単位面積質量値が決定されることによって解決される。
本発明による方法の有利な実施態様は次の通りである。
・ 評価ユニットによって、散乱により生じた2次放射成分が決定され、減弱画像が2次放射成分に関して、減弱によって発生した1次放射成分に基づいて補正される(請求項2)。
・ 異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の2次放射成分を決定するために、逆減弱関数の評価時に補正画像範囲についてそれぞれ同じ単位面積質量を生じる1次放射成分に関連づけられている2次放射成分が補正画像範囲内で探索される(請求項3)。
・ 補正画像範囲が減弱係数に関して不均一な対象範囲を描出し、減弱関数が多次元の単位面積質量に依存している(請求項4)。
・ 異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像内の2次放射成分が、求められた多次元の単位面積質量に基づいて近似的に決定される(請求項5)。
・ 2次放射成分がそれぞれ、多次元の単位面積質量に依存した分布関数によるそれぞれの1次放射成分の畳み込み処理によって求められる(請求項6)。
・ 分布関数が予めモンテカルロシミュレーションにより求められる(請求項7)。
・ 減弱画像内の2次放射成分が、検査対象における散乱の多次元の単位面積質量を考慮するモンテカルロシミュレーションによって求められる(請求項8)。
・ 多次元の単位面積質量の決定後に、2次放射成分が探索され、1次放射成分が補正され、補正された1次放射成分から出発して多次元の単位面積質量が新たに決定される(請求項9)。
・ 不均一な減弱係数を有する画像範囲が、骨または炭化水素を基礎としているプラスチックから作られていない移植組織を含む患者の身体領域に割り当てられている(請求項10)。
・ 補正画像範囲が、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の個々の画素を有する(請求項11)。
・ 補正画像範囲内で、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の画像値が平均化され、平均化された画像値に基づいて2次放射成分が決定される(請求項12)。
・ 補正画像範囲内の2次放射成分から2次放射強度が求められ、2次放射強度が補正画像範囲の外側の画像値から減算される(請求項13)。
・ 補正画像範囲内の2次放射成分に基づいて2次放射強度が算出され、2次放射強度が補正画像範囲の外側の画像値の補正のための補正係数を形成するために利用される(請求項14)。
・ 2次放射成分が、減弱画像上に広がるラスタの補正画像範囲内で決定される(請求項15)。
・ 補正画像範囲の外側の画像値が、隣接する補正画像範囲において決定された2次放射成分に依存して補正される(請求項16)。
本方法においては、多次元の減弱関数が逆変換されることによって、対象内の単位面積質量(単位面積当り質量)の単位面積質量値が決定される。減弱関数が、対象内の多次元の単位面積質量を、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の減弱値に結合するので、多次元の減弱関数の逆変換によって減弱画像から単位面積質量画像を求めることができる。減弱値は単調に単位面積質量値に依存し、減弱値は使用される放射のエネルギーにより直線的に目盛付けされないので、逆変換問題の一義的な解が常に存在する。この点では対象内に存在する成分の単位面積質量が正確に決定される。結局、本発明の基礎をなしているのは、一致条件、すなわち多次元の減弱関数の逆変換が必然的に一致する単位面積質量を生じることにある。なぜならば、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像はそれぞれ同じ対象を描出するからである。
方法の有利な実施態様において、散乱により生じた2次放射成分が決定され、減弱画像が2次放射成分に関して、減弱によって発生した1次放射成分に基づいて補正される。それによって多次元の減弱関数の逆変換によって作成された単位面積質量画像の画質が著しく改善される。なぜならば、結果が2次放射成分によって歪曲されないからである。
方法の他の有利な実施態様では、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の2次放射成分を決定するために、逆の多次元減弱関数の評価時に補正画像範囲についてそれぞれ同じ単位面積質量を生じる1次放射成分に関連づけられている2次放射成分が探索される。2次放射成分は単位面積質量(単位面積当り質量)に依存し、単位面積質量は再び、測定画像値が2次放射成分に関して補正された際にはじめて得られる1次放射成分に依存するので、探索過程によって求められなければならない解を有する陰関数方程式が生じる。一般に探索過程は反復法によって実行され、反復法によって陰関数方程式が解かれる。
方法の他の有利な実施態様において、2次放射成分は不均一な対象領域を描出する補正範囲内で決定される。この場合に多次元の単位面積質量に依存する多次元の減弱関数が逆変換される。逆変換の結果が多次元の単位面積質量であり、この多次元の単位面積質量により検査対象の減弱構造が少なくとも近似的に決定可能である。多次元の単位面積質量に基づいて2次放射成分が少なくとも近似的に決定可能である。
多次元の単位面積質量に依存した畳み込み関数が求められた1次放射成分により減弱画像内で畳み込み処理されることによって、2次放射成分が求められるとよい。
そのほかに、モンテカルロシミュレーションによりその都度の2次放射成分を決定することができる。モンテカルロシミュレーションを予め実行して、その結果を多次元の単位面積質量に依存してテーブル化するとよい。
散乱放射補正は、その都度、減弱画像の個々の画素において行なってもよいし、あるいはその都度予め定められた範囲にわたって平均化された画像値に基づいて決定されてもよい。2次放射成分はその都度、減弱画像上に置かれたラスタの補間点の範囲内で決定され、2次放射成分は補間点間の画素に対して補間されるとよい。
添付図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する以下の記載から、本発明の他の特性および利点を明らかにする。
図1は二重X線吸収法のための装置を示し、
図2はタングステンからなる陽極を有するX線管の異なった管電圧で取得された2つの光子スペクトルを示し、
図3は種々の身体構成要素について光子エネルギーに依存した質量減弱係数の推移を示し、
図4は不均一な画像範囲および均一な画像範囲を有する減弱画像を示し、
図5は異なった物質組み合わせの散乱放射強度の依存性を具体的に示すダイアグラムを示し、
図6は異なった管電圧についての水厚さに依存した散乱対1次の割合が描かれているダイアグラムを示し、
図7は散乱放射補正方法の流れ図を示し、
図8は単位面積質量画像の再構成を示すための仮想ファントムの断面図を示し、
図9は図8の仮想ファントムの平面図を示し、
図10は図8および図9のファントムの低エネルギーX線撮影のシミュレーションを示し、
図11は図8および図9のファントムの高エネルギーX線撮影のシミュレーションを示し、
図12は図8および図9の仮想ファントムの図10および図11のX線画像に基づいて再構成された軟部画像を示し、
図13は図8および図9の仮想ファントムの図10および図11のX線画像に基づいて再構成された骨画像を示す。
図1は、二重X線吸収法のX線撮影を実施することができるX線装置1を示す。X線装置1はX線管2を含み、X線管2はフィラメントによって形成された陰極3を有する。フィラメント3は加熱電流Iにより加熱される。その際に陰極3から電子が放出され、電子は管電圧Uにより陽極4の方向に加速される。それによって電子線5が生じ、電子線5は陽極4上の焦点に当たる。陽極4において制動された電子はX線放射6を発生する。X線放射6は低エネルギー部分の抑制のために先ずスペクトルフィルタ作用を有する前置フィルタ7を走り抜ける。前置フィルタ7は、一般に、X線放射6のビーム経路内に異なる厚さで挿入される薄い銅板である。引続いて、X線放射6は検査すべき患者8を透過する。
患者8を通り抜けたX線放射6が、患者8の減弱画像を記録するX線検出器9によって検出される。その際に、患者8内においてX線放射6を減弱させる物質の構造がX線検出器9に投影される。したがって、減弱画像を含んでいるX線撮影画像は投影画像とも呼ばれる。
X線検出器9は、ディジタルX線画像を作成することのできる多数の検出素子を有する半導体を基礎とする平面型画像検出器または平面型検出器であると好ましい。検出素子はそれぞれ1つの画素を受け入れ、ピクセルとも呼ばれる。
X線検出器9の後には評価ユニット10が接続されている。評価ユニット10は、一般に管電圧Uおよび前置フィルタの変化によってX線放射6の異なるエネルギー範囲で撮影される減弱画像の線形結合を形成する。異なるエネルギー範囲で撮影された減弱画像の線形結合によって作成された結合画像は表示ユニット11に表示される。
減弱画像の線形結合は、例えば患者8の骨構造が結合画像から消去される差の形成である。このようにして作成された結合画像は軟部組織の減弱構造を含み、このことは特に肺の検査において有利である。
異なるエネルギー範囲での減弱画像の撮影のために、特に管電圧Uおよび前置フィルタ7が変化させられる。低エネルギーでの減弱画像のためには、例えば低い管電圧Uが使用される。更に、前置フィルタ7が僅かの材料厚みを有するので、X線管2から発生されたスペクトルの低エネルギー部分はほんの僅かしか抑制されない。これに対して、高エネルギーでの減弱画像については高い管電圧Uが使用される。更に、とりわけX線管2から発生されたX線スペクトルの高エネルギー部分を通過させる大きな材料厚みを有する前置フィルタ7が使用される。
以下において単位面積質量(単位面積当り質量)を減弱画像に基づいて十分正確に決定することを可能にする方法を説明する。
散乱放射補正は結合画像の有用性にとって重要であるので、以下においては、特に散乱放射作用を低減させる方法も説明する。
1.問題提起
患者8を透過するX線放射6の信号形成は、主として放出スペクトルQU(E)、すなわち陽極での制動放射として放出される光子の、印加される管電圧Uに依存したエネルギースペクトルと、使用されるスペクトルフィルタの透過度TF(E)およびX線検出器9のスペクトル応答感度ηD(E)とによって決定される。
結果として生じる有効正規化スペクトル分布W(E;U)は、
Figure 2008272476
によって規定される。ただし、係数cUは積分された有効正規化スペクトル分布を値1で正規化する。
管電圧60kV,120kVに相当する2つの有効スペクトル分布についての例が図2に示されている。図2には、keV単位での光子エネルギーEに対する1keV間隔当たりの相対的な光子発生量Nrel/NTが描かれている。ただし、NTは光子の総数である。X線スペクトル12は70kVの管電圧に対応し、X線スペクトル13は120kVの管電圧に対応する。
光子エネルギーEへの水の質量減弱係数(μ/ρ)(E)の依存性が図3に示されている。水の質量減弱曲線14は、血液が水よりも大きい密度ρを有するにもかかわらず、血液の質量減弱曲線とほぼ完全に等しい。これに対して脂肪組織は、質量減弱曲線14とは僅かに相違する質量減弱曲線15を有する。他の質量減弱曲線16は骨組織の質量減弱係数の推移を示す。更に別の質量減弱曲線17,18はカルシウムおよびよう素の質量減弱係数の推移を描く。よう素の質量減弱曲線18は33.2keVの光子エネルギーにおいてKエッジ19を有する。よう素はしばしば造影剤として使用される。
図3に基づいて骨物質がX線放射を軟部組織よりも強く吸収することが明白となる。しかしながら、X線放射の減弱係数は、骨組織の場合、高いエネルギーのところで軟部組織の吸収よりも強く低下する。それから、1次放射関数は単色X線放射の使用時にもX線放射エネルギーに関して比例しないことが分かる。それゆえ、異なるエネルギー範囲で撮影された減弱画像に基づいて、骨組織および軟部組織の単位面積質量画像を求めることができる。同様に水の質量減弱曲線14と脂肪組織の質量減弱曲線15との異なるエネルギー依存性に基づいて水と脂肪とを分離することができる。
図4には、例えば均一な画像範囲21および不均一な画像範囲22を有する減弱画像20が示されている。均一な画像範囲21においては、専ら減弱係数の均一のエネルギー依存性を有する組織、例えば軟部組織が写像される。これに対して、不均一な画像範囲22においては、減弱係数の異なるエネルギー依存性を有する異なる種類の組織、例えば軟部組織も骨組織も写像される。均一な画像範囲21にも不均一な画像範囲22にも及ぶ減弱画像に基づいて、今や軟部組織および骨組織の単位面積質量画像を作成することができる。散乱放射補正が減弱画像全体にわたって実行されることは必ずしも必要ではない。散乱放射補正は、例えば均一な画像範囲21にある補正範囲23において、または不均一な画像範囲22に配置されている補正範囲24において実行されるとよい。
しかしながら、不均一な対象領域に割り当てられている補正範囲24において、散乱放射の補正は厄介である。なぜならば、X線放射の等しい減弱ですら、すなわち等しく正規化された1次強度P1またはP2ですら、散乱放射がビーム経路における物質組成、すなわち両物質の単位面積質量(単位面積当り質量)b1,b2に依存するからである。これについての例が図5に示されている。
図5には、同じ1次放射の場合における物質組成への散乱放射の依存性を示すモンテカルロシミュレーションの結果が示されている。管電圧としてU=70kVの電圧が仮定された。間隙の幅は20cmに設定された。X線検出器9の面積は40×30cm2に設定された。シミュレーションは、その都度等しい1次放射曲線25が生じるまで行なわれた。減弱されない放射が先ず5cmの厚みを有する骨物質からなる円板を通り抜け、引続いて20cmの厚みの水を通り抜ける際に、散乱放射分布26が生じる。これに対して、25cmの厚みの骨なしの均一な水円板が通り抜けられる際に、散乱放射分布27が生じる。1次放射曲線25ならびに散乱放射分布26,27は、中央の検出器行の座標xdに対して任意の単位で描かれている。散乱放射分布26,27はそれぞれ同じ目盛で示されている。
図5に基づいて、散乱放射分布が、存在する物質組成に依存することが明白となる。したがって、測定された投影画像を散乱放射に関して補正することができるようにするためには、個々の物質の単位面積質量(単位面積当り質量)を知っていることが必要である。
以下において、2つの異なる管電圧U1,U2が採用され、かつ場合によっては異なる管側フィルタまたは検出器側フィルタが採用されて、同一の対象についての2つの測定値が考察される。有効スペクトル分布が、
Figure 2008272476
により算出される。
ディジタルX線検出器9において全て普通の較正補正が行なわれているものと仮定する。詳細には、それは暗画像減算とピクセルの異なる感度の補正とである。更に正しいI0正規化が行なわれているものと仮定する。I0正規化とは次のことであると理解すべきである。すなわち、減弱対象なしに全く減弱されていない強度が両スペクトルについて規定され、X線検出器9の各ピクセルにおける各強度測定値が相応のI0値による割算によって正規化されることである。以下の説明は、1次放射強度値にせよ、散乱放射強度値にせよ、あるいは1次放射および散乱放射の和からなる測定される全放射強度値にせよ、これらを常に正規化された強度値として扱う。
以下の説明において次の関係が使用される。
1,I2 スペクトルW1(E)またはW2(E)における正規化された測定全強度
1,P2 正規化された当初は未知の1次強度
1,S2 正規化された当初は未知の散乱放射強度
理論上、均一な組織の場合においてスペクトルW1(E)またはW2(E)における正規化された1次強度(=1次減弱)については、その都度のX線測定ビームが同一の有効経路長X[cm]または単位面積質量X[g/cm2]を通り抜けるときに、
Figure 2008272476
が当てはまる。この方程式において、Xが単位面積質量(単位面積当り質量)であると解釈される場合には、指数μは質量減弱係数であると理解すべきである。これに対してXが経路区間であると解釈される場合には、μは線形の減弱係数であると理解すべきである。
二重X線吸収法の枠内において、2つの物質の定性的な分離が、一般的に次の経験に基づく公式にしたがって行なわれる。
Figure 2008272476
この場合、左辺の変数はグレー値画像であり、経験に基づく係数w1,w2は、視覚的に両物質のできるだけ良好な分離が得られるように選定すべきである。右辺のI1,I2は、高エネルギー強度画像および低エネルギー強度画像における測定された強度である。一般にI1,I2は異なる割合の散乱放射を含んでいる。したがって、経験に基づく係数w1,w2は異なる散乱放射成分に依存する。左辺におけるグレー値画像は当初は物理量ではない。線形結合によって得られるグレー値画像は、はじめのうちは適切な倍率および加算出数により、近似的に選択すべき両物質の擬似的物質厚みとして、例えば軟部組織および骨の物質厚みとして解釈することができる。
そこで以下においては、減弱画像から十分正確に個々の成分に基づいて分離される単位面積質量画像が作成され、しかも散乱放射作用が消去される方法を説明する。
2.不均一の画像範囲における散乱放射補正の一般的な手順
以下において詳細に説明する方法では、一般的に次の3つの手順が実行される。
2.1 逆変換
第1の手順により、両スペクトルについての予め与えられた正規化された1次強度値のペアP1,P2から、分離すべき両物質、例えば軟部組織および骨の対応する単位面積質量密度b1,b2が算出される。正規化は、測定された強度値I1,I2を、対応する減弱されていない強度値I1。0,I2。0によって割算することによって行なわれる。この手順は、
Figure 2008272476
により表わされ、=(P1,P2),=(b1,b2)はベクトルを意味する。この手順は、X線検出器9のピクセル(x,y)ごとに個別に行なわれる点操作である。物理的背景は、以下において実施例に対する説明に関連して更に詳細に説明する。
2.2 散乱放射の評価
更に、第2の手順が実行される。この第2の手順により、両スペクトルでの予め与えられた空間的な1次強度分布P1(x,y),P2(x,y)および/または分離すべき両物質の予め与えられた空間的な単位面積質量密度分布b1(x,y),b2(x,y)から、両スペクトルについての散乱強度分布S1(x,y),S2(x,y)を算出することができる。この手順は、
Figure 2008272476
により表わされ、=(P1,P2),=(b1,b2),=(S1,S2)はベクトルを意味し、それぞれ(x,y)の関数である。左辺における変数の間のセミコロンは、場合によって一方または他方の変数のいずれかへの明確な依存性が省略可能であることを示そうとするものである。インデックス「estim」は、散乱放射を評価する計算モデルであることを示そうとするものである。
第2の手順に関しては、文献「ZELLERHOFF,M.;SCHOLZ,B.;RUEHRNSCHOPF,E.−P.;BRUNNER,T.:“Low contrast 3D reconstruction from C−arm data”:Proceedings of SPIE.Medical Imaging,2005,Vol.5745,pp.646−655」に開示された如き畳み込みモデルの拡張が考慮の対象となる。この種の畳み込みモデルは比較的高速のアルゴリズムとして実現される。そのほかに今日の標準コンピュータによってもなおも時間のかかるモンテカルロシミュレーションも考慮の対象となる。両選択肢は具体的な実施例に関連して段落4.1および4.2において更に詳細に説明する。
2.3 散乱放射補正
第3の手順として、散乱ビーム補正アルゴリズムが、
Figure 2008272476
なる予め与えられた強度分布を用いて実行される。予め与えられた強度分布は1次放射と散乱放射との重なりであり、与えられた散乱放射分布S1(x,y),S2(x,y)を用いて、それから少なくとも近似的に1次強度分布P1(x,y),P2(x,y)が得られるように補正される。このような補正手順は、
Figure 2008272476
により表わされる。重要な補正アルゴリズムは4.3項において説明する。
3.反復法
方程式(#1),(#2),(#3)は反復法により解かれる。反復アルゴリズムは3つの部分、すなわち、予め定められた初期値による反復開始と、初期値が変化させられる反復規則と、中断条件とからなる。
上述の3つの手順により、今や二重X線吸収法の枠内において2つの成分に適用される次の反復法を実行することができる。
3.1 反復開始
先ず、両スペクトルの測定された強度分布I1(x,y),I2(x,y)および減弱されない放射における強度I1.0,I2.0のみが、与えられた強度分布として受け取られる。散乱放射は未だ分かっていないために、補正されていない正規化された強度分布を初期値として設定する。すなわち、
Figure 2008272476
である。 (0)は未だ散乱放射補正されていないために、両単位面積物質(単位面積当り物質)の一方が負の結果になることが起こり得る。その際にこれは=0にセットされる。軟部−骨の分離の場合に、これは一般に骨成分であり、骨成分に先ず負の値が割り当てられる。
3.2 反復規則
反復規則はインデックスn(n≧0)を有する反復からインデックスn+1を有する次の反復への移行を決定する。以下において、ピクセル座標(x,y)を省略する。この場合に、2次元関数に関係することに注意を払うべきである。
Figure 2008272476
両単位面積物質の一方が負の結果になることが再び起こり得る。その際にこれは=0にセットされる。
3.3 反復中断
反復シリーズは、相前後する反復の間における変化が予め与えられる小さな閾よりも小さい場合に中断される。たいていの場合に、特に比較的小さい中くらいまでの散乱成分(S≦P)の場合に、一般に3回までの反復で十分である。実行すべき反復の最大回数を固定的に設定しても、または比S/Pに依存して設定してもよい。
4.実行すべき動作に対する説明
2項において重要な数学的動作式を説明したが、一般論で形式的であり、まだ具体的に説明していない。ここでそれの細部の動作および変形を説明する。
4.1 M -1 :二重エネルギー投影データから単位面積当り物質の計算
基本的には、スペクトルW1(E),W2(E)における正規化された1次強度に関して、X線ビームが透過する単位面積質量密度b1,b2[g/cm2]に依存した質量減弱係数α1(E)=(μ1/ρ1)(E),α2(E)=(μ2/ρ2)(E)を有する2つの放射線学的に異なる物質の場合に、
Figure 2008272476
が当てはまる。ベクトル関数の形で次のように記述することもできる。
Figure 2008272476
有効スペクトルW1(E),W2(E)は既知として仮定することができ、有効スペクトルW1(E),W2(E)はX線管2の放出スペクトル、スペクトルフィルタの作用およびエネルギーに依存する検出器応答感度を含んでいる。図2において2つの典型的なスペクトル12,13が示され、図3にエネルギーに依存する質量減弱係数が示されている。
1次強度を記述する関数M1),M2)は原理的に単位面積質量厚さ=(b1,b2)の関数として予め算出可能であり、または実験的に決定可能である。それらは、少なくとも医療診断学において関心のあるエネルギー範囲および物質において、両変数b1,b2に関して部分的に厳密に単調に低下することから、ベクトル演算Mが逆変換させられる。逆変換は、数値計算の標準方法、例えばベクトル関数のためのニュートン−ラフソン法により行なわれる。この種の方法は、例えば「PRESS,FLANNERY,TEUKOLSKY,VETTERLING:“Numerical Recipes.The Art of Scientific Programming”,Cambridge University Press,1989,pp.268−273」に記載されている。
ここで述べておくに、逆変換のためには方程式(#6a,b)の右辺において対数計算をするのが有利である。
更に、述べておくに、少なくとも反復開始時に逆変換が一方(または両方)の単位面積質量厚さに関して物理的な定義範囲外でしか満たされない場合が発生し得る。なぜならば、1次強度P1,P2の補正された評価がまだ不正確な散乱放射補正のためにまだ誤差を含んでいるからである。逆変換M-1が正規化された測定値P1,P2の発生した値範囲全体において計算されるべきである場合、ベクトル関数は式(#7)にしたがってb1,b2の物理的な定義範囲を相応に越えて、特に仮定の負の単位面積質量厚さについても計算されなければならない。
4.2 S estim :散乱放射分布の評価モデル
散乱放射分布の決定のために、例えば既に述べた畳み込みモデルの一般化またはモンテカルロ法を使用することができる。
両方法は、散乱放射と、両物質成分、たいていは水および骨の単位面積質量密度とを決定するために、測定された全強度内に含まれる情報を使用することができる。
4.2.1 一般化された畳み込みモデルによる散乱放射決定
文献「ZELLERHOFF,M.;SCHOLZ,B.;RUEHRNSCHOPF,E.−P.;BRUNNER,T.:“Low constant 3D reconstruction from C−arm data.”:Proceedings of SPIE.Medical Imaging,2005,Vol.5745,pp.646−655」に基づく畳み込みモデルの場合には、散乱放射分布が次の数式、すなわち
Figure 2008272476
により評価される。この場合に、p(x,y)=−ln(P(x,y))であり、P(x,y)は正規化された1次分布の評価である。
G(x,y)は散乱放射伝搬によって生じさせられる低域通過フィルタ作用(ぼけ)を経験に基づいて記述する2次元の畳み込み核である。
C(p)は、較正する重み関数であり、
Figure 2008272476
である。この重み関数は、水等価物質の層厚さb0(p)に依存した標準物体、例えば均一な板または楕円筒についての散乱対1次の割合(1次強度に対する散乱強度の割合)S/Pを表す。この層厚さは、対数化された1次減弱p=−ln(p)から公知のハードニング補正に基づいて明確に決定可能である。
更に、Cは物理的な取得パラメータに依存する。すなわち、電圧U、放射フィルタ、検出器のコリメータ領域サイズFyz、散乱放射線除去用グリッド、間隙等である。
Cは、モンテカルロ計算により予め算出可能であり、テーブルとして記憶可能である。固定の取得パラメータの場合、Cは1つの変数、すなわち水等価の層厚さb0(p)にのみ依存する。2つの撮影が異なる管電圧において2つの異なるエネルギースペクトルにより行なわれることから、2つのテーブルC1,C2が必要である。
2つの典型的なテーブルが図6にグラフで示されている。
図6において、割合曲線28はU=60kVの管電圧および0.1mmの銅を有する前置フィルタの場合における1次強度に対する散乱強度の割合C1を与え、割合曲線29はU=120kVの管電圧および0.3mmの銅を有する前置フィルタの場合における1次強度に対する散乱強度の割合C2を与える。
式(#9a)における重み関数により、式(#5a−c)における反復ループ内における簡単化された散乱放射補正が得られる。評価された1次放射P1,P2から導き出された水等価の経路長およびこれから再びテーブルCを介する散乱割合S/Pが使用されて反復的に改善される。
ここに記載の公知の数式の一般化は、異なる電圧U1,U2および場合によっては前置フィルタ処理に応じた両スペクトルのためのテーブルC1,C2が、1つの変数、すなわち水層厚さだけでなく、2つの変数b1,b2、すなわち水厚さおよび骨厚さにも依存して作成されることにある。
Figure 2008272476
両物質厚さb1,b2の現在値が各反復ステップにおいて新たに得られる。物質厚さb1,b2の新たな値は、反復的に改善される散乱放射評価を得るために、今や両パラメータb1,b2に依存するテーブルC1,C2への新たな入力値として使用することができる。
pまたはPへの明白な依存性はもはや現われない。これはb1,b2への依存性によって置き換えられる。
4.2.2 モンテカルロ法による散乱放射決定
基本的には、各反復ステップにおいて新たに評価される現在の両物質厚さ分布b1(x,y),b2(x,y)対する散乱放射分布を直接的にモンテカルロ法により算出することも考えられ得る。もちろん、モンテカルロシミュレーションは非常に計算費用がかかるので、モンテカルロ法の使用は高い計算能力を必要とする。
4.3 S korr :散乱放射補正アルゴリズム
散乱放射補正は、減算によっても乗算によって行なうことができる。この場合にそれぞれ2つのスペクトルを補正することができる。
減算による散乱放射補正は、特に簡単であり、それぞれの補正されていない正規化された強度分布から、評価された散乱強度を減算することである。
Figure 2008272476
(x,y)は検出器におけるピクセル座標を表し、強度I1(x,y),I2(x,y)に
ついては、
1'(x,y)=I1(x,y)/I1.0
2'(x,y)=I2(x,y)/I2.0
が当てはまる。
一定値は非常に大まかな近似にすぎないので、式(#5)において減算時に負の値が発生することが起こり得る。このような物理的に意味のない値はできるだけ防止されるべきである。対抗措置は、式(#10a)における減算による補正の代わりに、乗算による散乱放射補正を使用することである。
Figure 2008272476
1 (n)(x,y)<<I1(x,y)およびS2 (n)(x,y)<<I2(x,y)
の場合に関しては、式(#10b)に従う乗算による補正は式(#10a)に従う減算による補正に移行する。
5. 位置依存性
散乱放射の空間的な分布は、ノイズは別として一般に平らであり、したがって低周波数である。これは、検出器面上の非常に僅かな個所における散乱放射を個々の点ごとにまたは関心範囲において決定することで十分であることを意味する。したがって、最も簡単な近似は2次放射強度についての適切な一定の平均値である。
平均の散乱放射背景強度の総括的な評価のためには、図4にしたがって適切な関心のある補正範囲23または24を選択し、低エネルギーの投影画像および高エネルギーの投影画像についてこの関心範囲にわたるそれぞれ1つの平均値を形成することで十分である。この値対I- 1,I- 2(“I- 1,I- 2”において“−”は“I”の上に付されたバ
ーを示す)について、散乱放射強度の対応する値対S- 1,S- 2(“S- 1,S- 2”において“−”は“S”の上に付されたバーを示す)が反復法によって決定される。ここにおいて使用されるオーバラインは概算された値、平均化された値であること表し、あるいはそれどころか一定値であることさえも表す。
補正範囲23または24の外側における散乱放射補正は、それぞれ補正されていない正規化された強度分布から、評価された散乱放射強度を減算することである。
Figure 2008272476
左辺には補正された1次分布があり、これに対して反復法の終了後に得られる対S- 1,S- 2は散乱放射強度である。(x,y)は検出器におけるピクセル座標を表す。波形記号(〜)は補正されたデータ、すなわち補正に基づく概算であることを示そうとするものである。
一定値は非常に大まかな近似にすぎないことから、式(#11)において減算時に負の値が発生することが起こり得る。このような物理的に意味のない値はあらゆる場合に防止されなければならない。措置は散乱放射の総括的な決定のために強い減弱の範囲における適切な補正範囲23または24を選択することである。強い減弱を有する範囲は小さなI1,I2値を有する範囲である。
他の措置は、式(#11)における減算による補正の代わりに乗算による散乱放射補正を行なうことである。
Figure 2008272476
- 1<<J1(x,y)およびS- 2<<J2(x,y)の場合に関して、式(#12)は式(#11)に移行する。
散乱放射背景の位置依存性は、さらに個々の画素に関連して先に説明した補正方法を検出器における関心範囲または走査点の一様な粗いラスタに適用し、結果を粗いラスタの補間により本来の微細なピクセルラスタに拡張することによって処理される。式(#10),(#11)による補正は同じように拡張することができる。その場合S- 1,S- 2はもはや定数ではなく、ピクセル座標(x,y)に依存した関数である(たとえこの依存性が一般に僅かのみであったとしても)。
更に、位置依存性は、個々の画素または関心範囲について説明した方法が検出器における関心範囲または走査点の一様な粗いラスタに適用されることによって把握される。それから、粗いラスタにおいて求められた散乱放射成分の値が広い分布関数により畳み込み処理をすることによって、本来の微細なラスタへの補間が行なわれる。
平滑する畳み込み演算による従来の補正方法も、散乱放射が空間的に低周波であるという事情を考慮する。該当する方法は、文献「ZELLERHOFF,M.;SCHOLZ,B.;RUEHRNSCHOPF,E.−P.;BRUNNER,T.:“Low contrast 3D reconstruction from C−arm data.”:Proceedings of SPIE.Medical Imaging,2005,Vol.5745,pp.646−655」に記載されている。ここに記載されている数式とそのような比較的高価な畳み込みモデルとの組み合わせが基本的には可能である。例えば、ここに記載されている方法の1つによって、かつそれに並行して従来の方法を用いて、散乱放射成分が決定され、その結果が平均化されるとよい。
6.方法経過
ここに記載されている散乱放射補正方法はそれぞれ、検査対象の少なくとも近似的に決定された3次元ボリューム画像を用いることなく減弱画像に基づいて散乱放射成分を決定する再現可能な方法である。本方法においては、むしろ、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像によって用いることのできる付加的な情報が散乱放射成分を評価するために使用される。
図7は方法の流れ図を示す。
この方法は値の割り当て30から始まり、これに式(#1)による逆変換31が行なわれる。その際に多次元の単位面積質量について特徴的な量が得られ、それらの量に基づいて式(#2)による評価を実行することができる。続いて、式(#3)による1次放射成分のための初期値の補正33が行なわれる。最後に質問34により、逆変換31が補正された1次放射成分により繰り返されるかどうかが決定される。
7.簡単化された方法
これまでに説明した方法のほかに、個々の減弱画像についてそれぞれ個別の散乱放射補正を行ない、その後得られた1次放射強度に基づいて式(#1)による逆変換を行なうことも可能である。例えば、低エネルギー減弱画像および高エネルギー減弱画像についてそれぞれ1つの空間的な低周波の散乱放射分布が決定されて、低エネルギー減弱画像または高エネルギー減弱画像の減弱値から差し引かれるとよい。
2次放射成分の決定は測定技術的にはビームストップ法または計算法によって行なわれる。ビームストップ法は2つの付加的な測定を必要とする欠点を有する。これらの測定は、もちろん、ノイズは別として散乱放射分布の低周波の性質ゆえに、非常に僅かな線量および僅かな付加的なX線被爆で行なわれるとよい。2次放射成分が公知の計算法により行なわれる場合、患者での付加的な測定を行なう必要がない。公知の散乱放射補正方法はリアルタイムで実施可能であるが、場合によっては予めシステム開発の枠内において測定またはモンテカルロシミュレーションによって作成されなければならないデータベースへのアクセスを必要とする。
ひき続く式(#1)による逆変換は一般に解析的には行なわれなくてよい。これに対して、既述のニュートン−ラフソン法による数値的逆変換は一般的に可能である。逆変換は、予め行なってテーブルの形で記憶させることもできるので、具体的な適用例において式(#1)の処理は処理テーブルでの検索によって置き換えることができる。
8.デモンストレーション例
図8ないし図13に基づいて、減弱画像からの単位面積質量画像の再構成を具体的に示す医用画像化の例を説明する。
二重X線吸収法についての典型的な適用例は、肺結節を検出することを可能にするための胸部撮影または肺撮影における軟部組織と骨組織との分離である。
この場合に方法はファントム35に基づいて開始される。図8はファントム35の横断面を示し、これに対して図9はファントム35の平面図を示す。
ファントム35は直方体形状の軟部組織36を含み、軟部組織36上に中間に配置された直方体形状の腫瘍組織37が存在し、腫瘍組織37は同様に軟部組織からなる。軟部組織36の半分の上方に骨組織38が広がり、骨組織38も腫瘍組織37を半分まで覆っている。
図10には低エネルギー範囲におけるX線画像39が示されている。低エネルギー範囲におけるX線画像39については、U=60kVの管電圧および0.1mmの厚さの銅の前置フィルタでの撮影がモンテカルロ法によってシミュレーションされた。これに対して、図11は高エネルギー範囲において撮影されたX線画像40を示す。特に、U=120kV管電圧および0.1mmの厚さを有する銅の前置フィルタがシミュレーションされた。X線画像39,40においては、表示可能性のために、異なるグレー値が異なる密度のハッチングによって再現された。この場合に、対応する画像範囲が暗ければ暗いほど、ハッチングの密度がますます大きくなっている。
図10および図11には、得られた減弱画像が示されているのに対して、図12および図13は、前述の8項において説明した簡単化された方法により作成された単位面積質量画像を示す。特に図12は軟部画像41を示し、図13は骨画像42を示す。軟部画像41および骨画像42においてもグレー値がハッチング密度によって再現されている。軟部画像41および骨画像42において、軟部画像41または骨画像42が明るければ明るいほど、ビーム経路内にますます多くの物質が存在する。軟部画像41に基づいて、画像半分が骨組織38によって覆われているか否かに関係なく、腫瘍組織37の範囲において明るさがほぼ一定であることが明白に認識可能である。もちろん骨組織38の範囲は軟部画像41においても比較的強い画像ノイズに基づいて認識可能である。これは、特に骨組織38の範囲内の劣った信号雑音比にも起因する。なぜならばX線放射はそこでは強く吸収されるからである。このための除去対策は高いノイズを有する範囲を局所的に強く平滑するノイズ順応性画像フィルタ処理である。
9.利点
散乱放射補正を含めた反復サイクルによって物質分離の精度が明白に向上する。
更に、反復法を含むことにより、反復がなければ用いることのできないであろう2つの物質成分の単位面積質量厚さに関する付加的な情報により散乱放射評価モデルを改良することができることによって、散乱放射補正の改善が可能にされる。特に、軟部組織および骨組織の混在時にも散乱放射補正を行なうことができる。
公式の変数またはパラメータにより記述される基礎をなす物理学的数学モデルのおかげで、計算過程は体系的に可変の範囲条件に対して簡単にパラメータまたはパラメータ関数の変化によって適合可能である。例えばスペクトルの変化は、異なった電圧の選択によって、放射フィルタの変更によって、あるいは撮影ジオメトリの変更によって考慮することができる。
基本的にはここで説明した方法は、分離すべき物質を予め設定する際に多重スペクトル画像化のパラメータを適切な評価尺度に関して最適化する可能性を開く。特に、使用電圧、フィルタの種類および検出器線量が、患者線量に比べた信号雑音比の改善のために指定される。
二重X線吸収法のための装置を示す概略図 タングステンからなる陽極を有するX線管の異なった管電圧で取得された2つの光子スペクトルを示すダイアグラム 種々の身体構成要素について光子エネルギーに依存した質量減弱係数の経過を示すダイアグラム 不均一な画像範囲および均一な画像範囲を有する減弱画像を示す概略図 異なった物質組み合わせへの散乱放射強度の依存性を具体的に示すダイアグラム 異なった管電圧についての水厚さに依存した散乱対1次の割合を示すダイアグラム 散乱放射補正方法の流れ図 単位面積質量画像の再構成を示すための仮想ファントムの断面図 図8の仮想ファントムの平面図 図8および図9のファントムの低エネルギーX線撮影のシミュレーション図 図8および図9のファントムの高エネルギーX線撮影のシミュレーション図 図8および図9の仮想ファントムの図10および図11のX線画像に基づいて再構成された軟部画像を示す概略図 図8および図9の仮想ファントムの図10および図11のX線画像に基づいて再構成された骨画像を示す概略図
符号の説明
1 X線装置
2 X線管
3 陰極
4 陽極
5 電子ビーム
6 X線放射
7 前置フィルタ
8 患者
9 X線検出器
10 評価ユニット
11 表示ユニット
12 X線スペクトル(管電圧70kV)
13 X線スペクトル(管電圧120kV)
14 水の質量減弱曲線
15 脂肪組織の質量減弱曲線
16 骨組織の質量減弱曲線
17 カルシウムの質量減弱曲線
18 よう素の質量減弱曲線
19 Kエッジ
20 減弱画像
21 均一な画像範囲
22 不均一な画像範囲
23 補正範囲
24 補正範囲
25 1次放射曲線
26 散乱放射分布
27 散乱放射分布
28 1次強度に対する散乱強度の比率を示す曲線
29 1次強度に対する散乱強度の比率を示す曲線
30 値の割り当て
31 逆変換
32 評価
33 補正
34 質問
35 ファントム
36 軟部組織
37 腫瘍組織
38 骨組織
39 低エネルギー範囲におけるX線画像
40 高エネルギー範囲におけるX線画像
41 軟部画像
42 骨画像

Claims (17)

  1. 異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像に基づいて単位面積質量画像を作成する方法であって、
    放射源(2)による放射(6)の発生および放射(6)による検査対象(8)の透視ステップ、
    放射(6)による検出装置(9)の作動および検出装置(9)による異なるエネルギー範囲での減弱画像の検出ステップ、
    検出装置(9)の後に接続された評価ユニット(10)による単位面積質量画像の決定ステップ
    を有する単位面積質量画像の作成方法において、
    評価ユニット(10)によって、対象(8)内の多次元の単位面積質量を異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の減弱値に結合する多次元の減弱関数の逆変換により、対象(8)内の単位面積質量の単位面積質量値が決定されることを特徴とする単位面積質量画像の作成方法。
  2. 評価ユニット(10)によって、散乱により生じた2次放射成分が決定され、減弱画像が2次放射成分(26,27)に関して、減弱によって発生した1次放射成分に基づいて補正されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の2次放射成分(26,27)を決定するために、逆減弱関数の評価時に補正画像範囲(23,24)についてそれぞれ同じ単位面積質量を生じる1次放射成分(25)に関連づけられている2次放射成分(26,27)が補正画像範囲(23,24)内で探索されることを特徴とする請求項2記載の方法。
  4. 補正画像範囲(24)が減弱係数に関して不均一な対象範囲を描出し、減弱関数が多次元の単位面積質量に依存していることを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像内の2次放射成分(26,27)が、求められた多次元の単位面積質量に基づいて近似的に決定されることを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. 2次放射成分(26,27)がそれぞれ、多次元の単位面積質量に依存した分布関数によるそれぞれの1次放射成分(25)の畳み込み処理によって求められることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 分布関数が予めモンテカルロシミュレーションにより求められることを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. 減弱画像内の2次放射成分(26,27)が、検査対象(8)における散乱の多次元の単位面積質量を考慮するモンテカルロシミュレーションによって求められることを特徴とする請求項5記載の方法。
  9. 多次元の単位面積質量の決定後に、2次放射成分(26,27)が探索され、1次放射成分(25)が補正され、補正された1次放射成分(25)から出発して多次元の単位面積質量が新たに決定されることを特徴とする請求項4乃至8の1つに記載の方法。
  10. 不均一な減弱係数を有する画像範囲(24)が、骨または炭化水素を基礎としているプラスチックから作られていない移植組織を含む患者(8)の身体領域に割り当てられていることを特徴とする請求項4乃至9の1つに記載の方法。
  11. 補正画像範囲(23,24)が、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の個々の画素を有することを特徴とする請求項3乃至10の1つに記載の方法。
  12. 補正画像範囲(23,24)内で、異なるエネルギー範囲において撮影された減弱画像の画像値が平均化され、平均化された画像値に基づいて2次放射成分が決定されることを特徴とする請求項3乃至11の1つに記載の方法。
  13. 補正画像範囲(23,24)内の2次放射成分から2次放射強度が求められ、2次放射強度が補正画像範囲(23,24)の外側の画像値から減算されることを特徴とする請求項2乃至12の1つに記載の方法。
  14. 補正画像範囲(23,24)内の2次放射成分に基づいて2次放射強度が算出され、2次放射強度が補正画像範囲(23,24)の外側の画像値の補正のための補正係数を形成するために利用されることを特徴とする請求項2乃至13の1つに記載の方法。
  15. 2次放射成分が、減弱画像上に広がるラスタの補正画像範囲(23,24)内で決定されることを特徴とする請求項3乃至14の1つに記載の方法。
  16. 補正画像範囲(23,24)の外側の画像値が、隣接する補正画像範囲(23,24)において決定された2次放射成分に依存して補正されることを特徴とする請求項15記載の方法。
  17. 請求項1乃至16の1つに記載の方法を実施するように構成されていることを特徴とする減弱画像の撮影装置。
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