JP2008271833A - 改良されたリガーゼ組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、添加剤を検討し、様々なDNA末端の連結を効率化するリガーゼ組成物、および使用方法を提供することである。また、それらを含有する試薬・キットおよび製造法を提供することである。
【解決手段】(A)DNAリガーゼ、(B)ポリエチレングリコール、(C)スペルミジン、(D)ベタインの各成分を含有するDNAリガーゼ組成物。
【選択図】なし
【解決手段】(A)DNAリガーゼ、(B)ポリエチレングリコール、(C)スペルミジン、(D)ベタインの各成分を含有するDNAリガーゼ組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、DNAの相補末端を効果的に連結するための新規DNAリガーゼ組成物、およびその方法に関わる。さらには、本組成物を含有する試薬および/またはキットにも関する。
DNAリガーゼは、隣接したDNAの5’側のリン酸基と3’側の水酸基をホスホジエステル結合によって連結する酵素であり、様々な生物由来のものが知られている。その中でも、分子生物学実験で頻繁に用いられているのが、T4バクテリオファージに由来する「T4 DNAリガーゼ(E.C.6.5.1.1)」である。この酵素は、反応にMgイオンとATPを要求し、平滑末端、及び突出末端の2本鎖DNAの連結や、2本鎖DNAのニック部分の修復に働くことが知られている。この他にも大腸菌に由来するE. coli DNA リガーゼや好熱性菌由来のDNAリガーゼなども頻繁に使用されている。
T4 DNA リガーゼとE. Coli DNAリガーゼが主に分子生物学実験におけるDNAの連結反応に使用される一方、好熱性菌由来のDNAリガーゼは、リガーゼチェインリアクション法などの診断用途に用いられることが多い。
近年、様々な分子生物学用試薬やキットが販売されるに至っている。その中、リガーゼ試薬も様々な工夫がなされてきている。特に、DNA以外の反応に必要な全ての成分を含んだ組成物(DNAリガーゼ反応組成物)、すなわち1液タイプのリガーゼ試薬が世に出て久しい。1液タイプのリガーゼ試薬は、一般的には連結したいDNAを含むDNA溶液と2:1〜1:0.5の比率で混合してライゲーションを行う。
分子生物学実験におけるT4 DNA リガーゼの使用の歴史は古く、1970年代まで遡ることができる。また、効率化の検討も種々行われており、特に添加剤を用いる検討の歴史は古い。
特許文献1には、ポリエチレングリコールなどの体積排除効果があり、かつDNAと相互作用しないポリマーを、ライゲーション反応に添加することによる反応促進効果が記載されている。
US4582802
また、特許文献2には、(A)ポリエチレングリコール、(B)ポリアミン、一価カチオン及び二価カチオンから成る群から選択した少なくとも1種のもの、が添加剤として挙げられており、(A)と(B)をリガーゼと共存させることにより、反応効率を格段に向上させることができることが記載されている。
特開昭62−36187
さらに、特許文献3には、ベタインを添加することによるTAクローニングの効率の向上の効果が記載されている。TAクローニングとは、Taq DNA ポリメラーゼなどを使用したPCR(Polymerase chain reaction)での増幅DNA断片の3’末端にアデニン(dA)が一塩基付加されることを利用するクローニング方法である。この一塩基付加は、Taq DNA ポリメラーゼなどが有する、Terminal deoxynucleotidyl transferase(TdT)活性による。通常3’端にチミン(dT)の一塩基突出を有するベクター(通常Tベクターと呼ばれる)とPCRプロダクトを混合し、リガーゼを反応させことによって行うことにより、ベクターとDNA断片を連結させる。本方法は、従来の制限酵素突出末端や、平滑末端を利用する方法にくらべ、迅速で簡便であるという利点があり、従来の方法に加えて頻繁に利用される方法のひとつとなっている。この方法は突出末端を用いる方法のカテゴリーに分類されるが、手法的には特許文献1及び2の時代にはなかった方法である。
特開2006−25637
上記をまとめると、頻繁にライゲーション反応を行うDNA末端の形状は、突出末端もしくは平滑末端であり、突出末端は制限酵素で得られる末端とポリメラーゼのTdT活性によって付加された一塩基の突出からなる末端の2種類に分類され、それぞれの末端に適した効率化方法が開発されてきたことになる。しかし、使用する上で、すべての組み合わせで効果的であることが望まれているといえる。
一般的に、ライゲーション反応は、一本鎖の相補的な突出部分が長いほど効率が高くなると言われており、通常2塩基以上の突出末端が形成される制限酵素サイト間でのライゲーション反応は効率は問題となりにくい。これは、相補的一本鎖部分が容易にハイブリダイズしやすいことによると考えられている。
よって、本発明においては、一般的に効率が低いとされる、平滑末端ライゲーションとTAクローニングを主な評価対象として検討を実施した。
本発明の目的は、添加剤を検討し、様々なDNA末端の連結を効率化するリガーゼ組成物、および使用方法を提供することである。また、それらを含有する試薬・キットおよび製造法を提供することである。
今まで様々なライゲーションの効率化方法が検討されてきたが、上でも述べたように様々な方法すべてに適応し得るような組成の検討はあまりなされていなかった。また、分子生物学実験においては、多くの場合、ベクターと目的遺伝子の連結が目的である場合が多く、実質、大腸菌への形質転換効率も含めた形で検討する配慮も必要となってくる。これは、ライゲーション組成を含んだままのライゲーション産物をそのまま用いて大腸菌を形質転換することが多いことに起因する。
よって、本発明においては、様々な切断末端を持つベクターとDNA断片を様々な添加剤の存在下でライゲーション反応を行った後、大腸菌へトランスフェクションすることで評価を行っている。
様々な条件を検討した結果、基本反応組成(T4 DNA リガーゼ、トリスバッファー、NaCl、MgCl2、およびATP)に加え、ポリエチレングリコール、スペルミジン、及びベタインを添加することで、幅広い条件でライゲーション効率が向上することが明らかとなり、本発明に至ることができた。
本発明は以下の構成からなる
[項1]下記(A)、(B)、(C)、及び(D)の各成分を含有するDNAリガーゼ組成物。
(A)DNAリガーゼ
(B)ポリエチレングリコール
(C)スペルミジン
(D)ベタイン
[項2]項1に記載の組成物に加え、DNA以外の「ライゲーション反応に必要な成分」を含むDNAリガーゼ組成物。
[項3]項1または2に記載の組成物を用いてリガーゼ反応を行う、ライゲーション反応方法。
[項4]項1または2に記載の組成物を含有する試薬および/またはキット。
[項5]項1または2に記載の組成物を1液で供給することを特徴とする、試薬および/またはキット。
[項1]下記(A)、(B)、(C)、及び(D)の各成分を含有するDNAリガーゼ組成物。
(A)DNAリガーゼ
(B)ポリエチレングリコール
(C)スペルミジン
(D)ベタイン
[項2]項1に記載の組成物に加え、DNA以外の「ライゲーション反応に必要な成分」を含むDNAリガーゼ組成物。
[項3]項1または2に記載の組成物を用いてリガーゼ反応を行う、ライゲーション反応方法。
[項4]項1または2に記載の組成物を含有する試薬および/またはキット。
[項5]項1または2に記載の組成物を1液で供給することを特徴とする、試薬および/またはキット。
本発明によって、様々な末端を有するDNA同士の連結反応を、従来法に比べ、より効率的に行うことができる。
本発明は、(A)DNAリガーゼ、(B)ポリエチレングリコール、(C)スペルミジン、および(D)ベタインを含有することを特徴とするDNAリガーゼの組成物である。
本発明においてDNAリガーゼの種類は、特に限定されるものではないが、好ましくはT4ファージ由来のT4 DNA リガーゼを用いる。この酵素は、ファージを感染させた大腸菌の破砕物から調製したものや、T4ファージのリガーゼ遺伝子を大腸菌に組み換えて発現させ、その破砕物から調製されたものなど様々なものを用いることができる。特に、DNA分解酵素などの混入の少ない高純度の高度を用いることが重要である。
本発明におけるポリエチレングリコールは、様々な分子量のものを使用することができるが、好ましくは分子量が200−20,000、好ましくは5,000−10,000、最も好ましくは6,000を用いる。ポリエチレングリコールの濃度は、反応時の濃度として、0.5〜3%(W/V)が好ましく用いられる。最も好ましくは0.75〜1.5%(W/V)の濃度で使用するのが良い。
本発明におけるスペルミジンは、ポリアミンの一種であり、様々な由来のものが販売されているが起源は特に限定されない。スペルミジンの濃度は、反応時の濃度として、0.1〜10mMが好ましく用いられる。最も好ましくは、0.2〜2mMで使用するのが良い。
本発明におけるベタインは、具体的にはトリメチルグリシンを指す。この分子は、グリシンのアミノ基にメチル基が3つ結合した構造を持つ。ベタインの濃度としては、反応時の濃度として、0.1〜1.5Mが好ましく用いられる。最も好ましくは、0.5〜1.25Mが好適に用いられる。
さらに本発明は、DNAリガーゼ、ポリエチレングリコール、スペルミジン、及びベタインに加え、DNA成分以外のライゲーション反応に必要な成分を含むDNAリガーゼ組成物である。DNA成分以外のライゲーション反応に必要な成分とは、ATP、マグネシウム、緩衝液成分、塩成分、及び還元剤などであり、特にATPとマグネシウムは反応の必須の成分であり重要である。
本発明に用いられるATP(アデノシン5’−三リン酸)は、アデノシンのリボースの5’位の水酸基にリン酸が3分子連続して結合したヌクレオチドのことを指す。ATPの濃度としては、反応時の濃度として、0.01〜0.2mMが好ましく用いられる。最も好ましくは、0.02〜0.1mMが好適に用いられる。
本発明に用いられるマグネシウムは、様々な塩を用いることができ、特に限定されないが、好ましくは塩化マグネシウムを用いる。塩化マグネシウムの濃度は、反応時の濃度として、1〜10mMが好ましく用いられる。最も好ましくは、2〜4mMが好適に用いられる。
緩衝液成分はpHを至適条件に保つのに重要である。T4 DNA リガーゼの反応は、pH7.5前後が最も至適とされており、pH7.5前後のpHを保つことのできるバッファー成分を含むことが好ましい。バッファーとしては特に限定されるものではないが、トリス緩衝液やHEPES緩衝液が好適に用いられる。特に、トリス−塩酸緩衝液が最も好ましい。緩衝液の濃度は、反応時の濃度として、10〜100mMが好適に用いられるが、最も好ましくは20〜50mMが最も好適用いられる。
塩成分としては、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの一般的なアルカリ土類金属の塩を用いることができる。特に、塩化ナトリウムが好適に用いることができる。塩化ナトリウムの濃度は、反応時の濃度として、10〜100mMが好適に用いられ、特に、好ましくは20〜50mMが用いられる。
還元剤成分としては、2−メルカプトエタノールやジチオスレイトール(DTT)など、一般的に生化学実験で用いられている還元成分を用いることができ、特に限定されない。特に好ましくは、還元維持能力の高いDTTが用いられる。DTTの濃度は、反応時の濃度として、0.5〜10mMが好適に用いられる。特に好ましくは、1〜5mMが用いられる。
本発明では、上に記述したような成分を含む組成物を1液で供給する。T4 DNA リガーゼは凍結融解や長期保存に対して安定な性質を有していることから、この用途には好適に用いることができる。
また本特許は、上記組成物を用いてリガーゼ反応を行うことを特徴とする。具体的には、DNAと上述の成分、酵素を混合して反応を行う。また、DNA以外の成分を予め混合しておいて、DNA成分と、1:1や0.5:1などの比率で混合して反応させることもできる。
反応に用いるDNA断片は、基本的には2本鎖であり、末端が相補的である必要がある。様々なパターンの連結反応が予想されるが、大きく分けると、突出末端を有するDNA同士、及び平滑末端を有するDNA同士の連結が考えられる。突出末端には、5’側のDNA鎖の突出したものと、3’側のDNA鎖の突出したものの2種類が考えられる。それらの多くは、制限酵素によって作り出される末端である。一方、平滑末端を有する断片は、末端の配列に関わらず連結することが可能である。
また、DNAポリメラーゼの作用により作り出される、3’末端にアデニンが一塩基基突出したDNA断片を、3’側にチミンが一塩基基突出したベクター(Tベクター)に連結するクローニング方法(TAクローニング)が近年盛んに行われるようになっている。この方法にも本発明を用いることができる。
上でも述べたが、リガーゼによる連結反応が生じるには、DNAの5’側の末端がリン酸化されている必要がある。2本鎖の連結が連結されるには、最低片方の鎖が連結される必要がある(片方のみが連結された場合は、もう片方は連結されないが、DNA断片としては連結されたことになる)。少なくとも片方のDNA断片の5’末端がリン酸化されていることが、2本鎖DNAの連結反応には必要である。多くの場合、片方だけが連結されたDNAは、大腸菌などへ導入すると、大腸菌の修復機構で連結されることが知られている。
さらに、本発明は、上記組成物を含有する試薬・キットにも関する。また、組成物を1液で供給することを特徴とする、試薬・キットにも関する。該組成物を1液で供給することは、実験の簡便性において、大きな利点であり、好ましい供給形態であるといえる。
本発明の実施の一態様としては、DNAとリガーゼ以外の上述の成分を含む溶液と、リガーゼを含む、ライゲーション用キットを挙げることができる。
また、本発明の実施の一態様としては、DNA以外のライゲーション反応に必要な上述の成分を含む1液のライゲーション試薬を挙げることができる。
以下に本発明の実施例を挙げることにより、本発明による効果をより一層明瞭なものとする。ただし、これらの実施例によって本発明の範囲は限定されるものではない。
実施例1:TAクローニング効率に及ぼす添加剤種類の検討
最終濃度で、50mM Tris−HCl(pH7.5)、8mM 塩化マグネシウム(ナカライテスク製)、0.1mM ATP(東洋紡製)、4mM DTT(ナカライテスク製)、100mM NaCl(ナカライテスク製)、0.1U/μl T4 DNA リガーゼ(東洋紡製)からなる基本組成に、様々な添加剤を添加したリガーゼ組成物を調製した。調製した組成物の種類は以下に示すとおりである。添加物はすべてナカライテスクより購入して使用した。
P :基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000
P+S:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+3mM スペルミジン
P+B:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+2M ベタイン
S+B:基本組成+3mM スペルミジン+2M ベタイン
P+S+B:基本組成+2.5%(W/V)PEG6,000+3mM スペルミジン+2M ベタイン
クローニングする(ベクターに連結する)DNAはPCR法を用いて調製した。具体的には、2種類のプライマー(5’−GAT−GAG−TTC−GTG−TCC−GTA−CAA−CT−3’、および:5’−GGT−TAT−CGA−AAT−CAG−CCA−CAG−CGC−C−3’)を使用し、λファージDNA(東洋紡製)を鋳型として、rTaq DNA polymeraseを用いて増幅し、約0.5kbのDNA断片を準備した(Taq DNA polymeraseを用いて増幅したDNA断片の3’末端には、主にアデニンが一塩基付加されている)。増幅反応は、rTaq DNA polymeraseの取扱い説明書に従い、増幅後、1%アガロースゲルを用いた電気泳動解析でバンドが生じていることを確認した。増幅したDNA断片は、精製キット(MagExtractor −PCR & Gel Clean up−:東洋紡製)を用いて精製し、濃度測定の後、使用した。
一方、クローニングベクターは、TAクローニングキット(TArget Clone:東洋紡製)に添付されているTベクター(pTA2)を用いた。
ライゲーション反応は、以下のように行った。上記DNA断片(75 fmol)とTベクター(25fmol)を含有する7.5μlの溶液に、上記リガーゼ組成物7.5μlを添加し、16℃で30分間反応させ実施した。
評価は、連結産物でDH5αを形質転換し、生じてくるコロニー数で評価を行った。今回用いたpTA2ベクターは、目的DNAが挿入された場合、X−Galを含むLB寒天培地上で白いコロニーを形成し、目的DNAが挿入されなかった場合は青いコロニーを形成する性質を有している。
形質転換は、具体的には以下のように実施した。すなわち、連結反応の終了したベクター溶液10μlを大腸菌DH5αコンピテントセル(東洋紡製)100μlと混和後、氷上に30分間放置し、42℃で30秒間ヒートショックを行い、その一部を50μg/mlアンピシリン(ナカライテスク製)、及び0.25%X−Gal(5−Bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−galactosidase:ナカライテスク製)を含むLB寒天培地に塗布し、37℃で16時間培養した後、生じたコロニー数をカウントした。
その結果を図1に示した。図1から分かるように、P+S+Bの組み合わせにおいて、極めて高い効率が得られていることが分かる。また、ここには示さなかったが、DNA溶液に対して、1/2、つまり3.75μl、を添加したものについても有意に高い効果を確認できた。
また、同様の評価系を用いて、それぞれの添加物の至適濃度を調べた結果を以下に示す。
表1は、基本組成+2.5%PEG6,000+2Mベタインを用いた場合のスペルミジンの濃度効果(濃度は調製試薬中:反応時の終濃度はこの1/2の濃度)を示す。
0.2〜4mMのスペルミジンで良好な結果が得られた。さらに、PEG6000を0.5、1、2.5および5%のうちいずれかと、ベタインを0.5、1、2および3Mのうちいずれかの組み合わせにおいても、0.2〜4mMのスペルミジンで良好な結果が得られた。
最終濃度で、50mM Tris−HCl(pH7.5)、8mM 塩化マグネシウム(ナカライテスク製)、0.1mM ATP(東洋紡製)、4mM DTT(ナカライテスク製)、100mM NaCl(ナカライテスク製)、0.1U/μl T4 DNA リガーゼ(東洋紡製)からなる基本組成に、様々な添加剤を添加したリガーゼ組成物を調製した。調製した組成物の種類は以下に示すとおりである。添加物はすべてナカライテスクより購入して使用した。
P :基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000
P+S:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+3mM スペルミジン
P+B:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+2M ベタイン
S+B:基本組成+3mM スペルミジン+2M ベタイン
P+S+B:基本組成+2.5%(W/V)PEG6,000+3mM スペルミジン+2M ベタイン
クローニングする(ベクターに連結する)DNAはPCR法を用いて調製した。具体的には、2種類のプライマー(5’−GAT−GAG−TTC−GTG−TCC−GTA−CAA−CT−3’、および:5’−GGT−TAT−CGA−AAT−CAG−CCA−CAG−CGC−C−3’)を使用し、λファージDNA(東洋紡製)を鋳型として、rTaq DNA polymeraseを用いて増幅し、約0.5kbのDNA断片を準備した(Taq DNA polymeraseを用いて増幅したDNA断片の3’末端には、主にアデニンが一塩基付加されている)。増幅反応は、rTaq DNA polymeraseの取扱い説明書に従い、増幅後、1%アガロースゲルを用いた電気泳動解析でバンドが生じていることを確認した。増幅したDNA断片は、精製キット(MagExtractor −PCR & Gel Clean up−:東洋紡製)を用いて精製し、濃度測定の後、使用した。
一方、クローニングベクターは、TAクローニングキット(TArget Clone:東洋紡製)に添付されているTベクター(pTA2)を用いた。
ライゲーション反応は、以下のように行った。上記DNA断片(75 fmol)とTベクター(25fmol)を含有する7.5μlの溶液に、上記リガーゼ組成物7.5μlを添加し、16℃で30分間反応させ実施した。
評価は、連結産物でDH5αを形質転換し、生じてくるコロニー数で評価を行った。今回用いたpTA2ベクターは、目的DNAが挿入された場合、X−Galを含むLB寒天培地上で白いコロニーを形成し、目的DNAが挿入されなかった場合は青いコロニーを形成する性質を有している。
形質転換は、具体的には以下のように実施した。すなわち、連結反応の終了したベクター溶液10μlを大腸菌DH5αコンピテントセル(東洋紡製)100μlと混和後、氷上に30分間放置し、42℃で30秒間ヒートショックを行い、その一部を50μg/mlアンピシリン(ナカライテスク製)、及び0.25%X−Gal(5−Bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−galactosidase:ナカライテスク製)を含むLB寒天培地に塗布し、37℃で16時間培養した後、生じたコロニー数をカウントした。
その結果を図1に示した。図1から分かるように、P+S+Bの組み合わせにおいて、極めて高い効率が得られていることが分かる。また、ここには示さなかったが、DNA溶液に対して、1/2、つまり3.75μl、を添加したものについても有意に高い効果を確認できた。
また、同様の評価系を用いて、それぞれの添加物の至適濃度を調べた結果を以下に示す。
表1は、基本組成+2.5%PEG6,000+2Mベタインを用いた場合のスペルミジンの濃度効果(濃度は調製試薬中:反応時の終濃度はこの1/2の濃度)を示す。
0.2〜4mMのスペルミジンで良好な結果が得られた。さらに、PEG6000を0.5、1、2.5および5%のうちいずれかと、ベタインを0.5、1、2および3Mのうちいずれかの組み合わせにおいても、0.2〜4mMのスペルミジンで良好な結果が得られた。
表2は、基本組成+3mM スペルミジン+2Mベタインを用いた場合のPEG#6,000の濃度効果(濃度は調製試薬中:反応時の終濃度はこの1/2の濃度)を示す。
0.5〜5%のPEG6000で良好な結果が得られた。さらに、スペルミジンを0.2、0.5、1および4mMのうちいずれかと、ベタインを0.5、1、2および3Mのうちいずれかの組み合わせにおいても、0.5〜5%のPEG6000で良好な結果が得られた。
0.5〜5%のPEG6000で良好な結果が得られた。さらに、スペルミジンを0.2、0.5、1および4mMのうちいずれかと、ベタインを0.5、1、2および3Mのうちいずれかの組み合わせにおいても、0.5〜5%のPEG6000で良好な結果が得られた。
表3は、基本組成+3mM スペルミジン+2.5%PEG6,000を用いた場合のベタインの濃度効果(濃度は調製試薬中:反応時の終濃度はこの1/2の濃度)を示す。
0.5〜3Mのベタインで良好な結果が得られた。さらに、スペルミジンを0.2、0.5、1および4mMのうちいずれかと、PEG6000を0.5、1、2.5および5%のうちいずれかの組み合わせにおいても、0.5〜3Mのベタインで良好な結果が得られた。
0.5〜3Mのベタインで良好な結果が得られた。さらに、スペルミジンを0.2、0.5、1および4mMのうちいずれかと、PEG6000を0.5、1、2.5および5%のうちいずれかの組み合わせにおいても、0.5〜3Mのベタインで良好な結果が得られた。
この結果より、これら3成分はある程度の濃度以上の幅広い濃度で強調して働くことがし示された。また、PEGについては、6,000以外に、20,000においてもほぼ同様の効果を示すことが示されている。
実施例2:保存安定性
実施例1のP+S+Bの試薬を−20℃にて1ヶ月保存した後、用事調製した同じ試薬とクローニング効率を比較した。また、用事調製品を10回凍結融解したものとも比較を行った。方法は実施例1の方法に準じた。保存安定性試験結果を表4に示す。
実施例1のP+S+Bの試薬を−20℃にて1ヶ月保存した後、用事調製した同じ試薬とクローニング効率を比較した。また、用事調製品を10回凍結融解したものとも比較を行った。方法は実施例1の方法に準じた。保存安定性試験結果を表4に示す。
結果、活性が保持されており、1液試薬として問題なく供給できることが示された。
実施例3:平滑末端連結の効率に及ぼす添加剤種類の検討
最終濃度で、50mM Tris−HCl(pH7.5)、8mM 塩化マグネシウム(ナカライテスク製)、0.1mM ATP(東洋紡製)、4mM DTT(ナカライテスク製)、100mM NaCl(ナカライテスク製)、0.1U/μl T4 DNA リガーゼ(東洋紡製)からなる基本組成に、様々な添加剤を添加したリガーゼ組成物を調製した。調製した組成物の種類は以下に示すとおりである。添加物はすべてナカライテスクより購入して使用した。
P :基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000
P+S:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+3mM スペルミジン
P+B:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+2M ベタイン
S+B:基本組成+3mM スペルミジン+2M ベタイン
P+S+B:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+3mM スペルミジン+2M ベタイン
クローニングするDNAはPCR法を用いて調製した。具体的には、5’末端をあらかじめリン酸化した2種類のプライマー(5’−GAT−GAG−TTC−GTG−TCC−GTA−CAA−CT−3’、および:5’−GGT−TAT−CGA−AAT−CAG−CCA−CAG−CGC−C−3’)を使用し、λファージDNA(東洋紡製)を鋳型として、KOD DNA polymeraseを用いたPCR試薬:KOD −Plus−(東洋紡)を用いて、約0.5kbのDNA断片を準備した(KOD DNA polymeraseは、強い3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有しており、PCR増幅されたDNA断片の末端は平滑化されている)。プライマーのリン酸化は、T4 Polynucleotide Kinase(東洋紡製)を用い、取扱説明書に従って行った。増幅反応は、KOD −Plus−の取扱い説明書に従い、増幅後、1%アガロースゲルを用いた電気泳動解析でバンドが生じていることを確認した。増幅したDNA断片は、精製キット(MagExtractor −PCR & Gel Clean up−:東洋紡製)を用いて精製し、濃度測定の後、使用した。
一方、クローニングベクターの調製は、まず、pUC19ベクター(東洋紡製)を制限酵素Hinc IIを用いて消化し(Hinc IIは平滑末端を生じる)、精製キットを用いて精製を行った。その後、大腸菌由来アルカリホスファターゼ(東洋紡製)を用いて脱リン酸化を行った。具体的には、添付緩衝液と酵素を至適濃度になるように添加した後、60℃で30分間反応させた。反応後、ベクターを同様に、精製キット(MagExtractor −PCR & Gel Clean up:東洋紡製)を用いて精製し、濃度測定の後、使用した。
ライゲーションは、以下のように行った。上記DNA断片(75 fmol)とTベクター(25fmol)を溶解した7.5μlの溶液に、上記リガーゼ組成物7.5μlを添加し、16℃で30分間反応させ行った。
評価は、実施例1動揺に、連結産物でDH5αを形質転換し、生じてくるコロニー数で評価を行った。
形質転換は、具体的には、以下のように実施した。すなわち、連結反応の終了したベクター溶液10μlを大腸菌DH5αコンピテントセル(東洋紡製)100μlと混和後、氷上に30分間放置した後、42℃で30秒間ヒートショックを行い、その一部を、200μg/mlアンピシリン(ナカライテスク製)、及び0.25%X−Gal(5−Bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−galactosidase:ナカライテスク製)を含むLB寒天培地に塗布し、37℃で16時間培養した後、生じたコロニー数をカウントした。
その結果を図2に示した。図2から分かるように、P+S+Bの組み合わせにおいて、極めて高い効率が得られていることが分かった。このことにより、本発明の有意性を示すことができた。
また、本実施例では示さなかったが、制限酵素Hind IIIの切断によって生じる突出末端を用いたライゲーション実験においても実証実験を行っており、高い効率を示すことを確かめている。
最終濃度で、50mM Tris−HCl(pH7.5)、8mM 塩化マグネシウム(ナカライテスク製)、0.1mM ATP(東洋紡製)、4mM DTT(ナカライテスク製)、100mM NaCl(ナカライテスク製)、0.1U/μl T4 DNA リガーゼ(東洋紡製)からなる基本組成に、様々な添加剤を添加したリガーゼ組成物を調製した。調製した組成物の種類は以下に示すとおりである。添加物はすべてナカライテスクより購入して使用した。
P :基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000
P+S:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+3mM スペルミジン
P+B:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+2M ベタイン
S+B:基本組成+3mM スペルミジン+2M ベタイン
P+S+B:基本組成+2.5%(W/V) PEG6,000+3mM スペルミジン+2M ベタイン
クローニングするDNAはPCR法を用いて調製した。具体的には、5’末端をあらかじめリン酸化した2種類のプライマー(5’−GAT−GAG−TTC−GTG−TCC−GTA−CAA−CT−3’、および:5’−GGT−TAT−CGA−AAT−CAG−CCA−CAG−CGC−C−3’)を使用し、λファージDNA(東洋紡製)を鋳型として、KOD DNA polymeraseを用いたPCR試薬:KOD −Plus−(東洋紡)を用いて、約0.5kbのDNA断片を準備した(KOD DNA polymeraseは、強い3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有しており、PCR増幅されたDNA断片の末端は平滑化されている)。プライマーのリン酸化は、T4 Polynucleotide Kinase(東洋紡製)を用い、取扱説明書に従って行った。増幅反応は、KOD −Plus−の取扱い説明書に従い、増幅後、1%アガロースゲルを用いた電気泳動解析でバンドが生じていることを確認した。増幅したDNA断片は、精製キット(MagExtractor −PCR & Gel Clean up−:東洋紡製)を用いて精製し、濃度測定の後、使用した。
一方、クローニングベクターの調製は、まず、pUC19ベクター(東洋紡製)を制限酵素Hinc IIを用いて消化し(Hinc IIは平滑末端を生じる)、精製キットを用いて精製を行った。その後、大腸菌由来アルカリホスファターゼ(東洋紡製)を用いて脱リン酸化を行った。具体的には、添付緩衝液と酵素を至適濃度になるように添加した後、60℃で30分間反応させた。反応後、ベクターを同様に、精製キット(MagExtractor −PCR & Gel Clean up:東洋紡製)を用いて精製し、濃度測定の後、使用した。
ライゲーションは、以下のように行った。上記DNA断片(75 fmol)とTベクター(25fmol)を溶解した7.5μlの溶液に、上記リガーゼ組成物7.5μlを添加し、16℃で30分間反応させ行った。
評価は、実施例1動揺に、連結産物でDH5αを形質転換し、生じてくるコロニー数で評価を行った。
形質転換は、具体的には、以下のように実施した。すなわち、連結反応の終了したベクター溶液10μlを大腸菌DH5αコンピテントセル(東洋紡製)100μlと混和後、氷上に30分間放置した後、42℃で30秒間ヒートショックを行い、その一部を、200μg/mlアンピシリン(ナカライテスク製)、及び0.25%X−Gal(5−Bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−galactosidase:ナカライテスク製)を含むLB寒天培地に塗布し、37℃で16時間培養した後、生じたコロニー数をカウントした。
その結果を図2に示した。図2から分かるように、P+S+Bの組み合わせにおいて、極めて高い効率が得られていることが分かった。このことにより、本発明の有意性を示すことができた。
また、本実施例では示さなかったが、制限酵素Hind IIIの切断によって生じる突出末端を用いたライゲーション実験においても実証実験を行っており、高い効率を示すことを確かめている。
分子生物学実験に用いられるライゲーショ試薬・キットに好適に用いられる。特に、広く用いられている高効率ライゲーション試薬・キットへの応用は、産業上の大きな進歩であると考えられる。
Claims (5)
- 下記(A)、(B)、(C)、及び(D)の各成分を含有するDNAリガーゼ組成物。
(A)DNAリガーゼ
(B)ポリエチレングリコール
(C)スペルミジン
(D)ベタイン - 請求項1に記載の組成物に加え、DNA以外の「ライゲーション反応に必要な成分」を含むDNAリガーゼ組成物。
- 請求項1または2に記載の組成物を用いてリガーゼ反応を行う、ライゲーション反応方法。
- 請求項1または2に記載の組成物を含有する試薬および/またはキット。
- 請求項1または2に記載の組成物を1液で供給することを特徴とする、試薬および/またはキット。
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---|---|---|---|
JP2007118425A JP2008271833A (ja) | 2007-04-27 | 2007-04-27 | 改良されたリガーゼ組成物 |
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JP2007118425A JP2008271833A (ja) | 2007-04-27 | 2007-04-27 | 改良されたリガーゼ組成物 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014517688A (ja) * | 2011-05-06 | 2014-07-24 | ニユー・イングランド・バイオレイブス・インコーポレイテツド | ライゲーションの促進 |
-
2007
- 2007-04-27 JP JP2007118425A patent/JP2008271833A/ja active Pending
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JP2014517688A (ja) * | 2011-05-06 | 2014-07-24 | ニユー・イングランド・バイオレイブス・インコーポレイテツド | ライゲーションの促進 |
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