JP2008268980A - フォトマスクの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微細なフォトマスクパターンを高精度で形成することが可能なフォトマスクの製造方法を提供すること。
【解決手段】遮光層12とクロム系化合物の反射防止層13とが順次積層されたフォトマスク基板11の反射防止層13上にレジスト膜17を形成する。レジスト膜17はアスペクト比が大きくならないように比較的薄膜であることが必要であり350nm以下であることが好ましく、一般的なレジスト材料からなる場合には75nm以上であることが好ましい。レジスト膜17を加工してレジストパターンを得た後、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)でクロム系化合物の反射防止層13のパターニングを行ない、続いて、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)に対して実質的なエッチングが生じない程度のエッチング耐性を示す遮光層12をフッ素系ドライエッチング(F系)してパターニングする。
【選択図】図3
【解決手段】遮光層12とクロム系化合物の反射防止層13とが順次積層されたフォトマスク基板11の反射防止層13上にレジスト膜17を形成する。レジスト膜17はアスペクト比が大きくならないように比較的薄膜であることが必要であり350nm以下であることが好ましく、一般的なレジスト材料からなる場合には75nm以上であることが好ましい。レジスト膜17を加工してレジストパターンを得た後、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)でクロム系化合物の反射防止層13のパターニングを行ない、続いて、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)に対して実質的なエッチングが生じない程度のエッチング耐性を示す遮光層12をフッ素系ドライエッチング(F系)してパターニングする。
【選択図】図3
Description
本発明は、半導体集積回路、CCD(電荷結合素子)、LCD(液晶表示素子)用カラーフィルタ、磁気ヘッドなどの製造に用いられるフォトマスクの製造技術に関する。
近年の半導体デバイス加工の微細化、特に大規模集積回路の高集積化に伴って、回路パターンのさらなる微細化要求が強まってきている。このような微細化を実現するためには、回路を構成する配線パターンの細線化技術や、セルを構成する層間の配線に用いられるコンタクトホールのパターン微細化技術などが必要とされるが、これらのパターニングはフォトマスクを用いた光リソグラフィにより実行されるものであるため、より微細なフォトマスクパターンを高精度で形成する技術が求められている。
より高精度のフォトマスクパターンをフォトマスク基板上に形成するためには、先ず、フォトマスクブランク上に高精度のレジストパターンを形成することが必要になる。実際の半導体基板の加工は縮小投影による光リソグラフィで実行されるため、この露光工程で用いられるフォトマスクに形成されるパターンサイズは、パターンの焼き付け対象である基板上でのパターンサイズの4倍程度の大きさとされるのが一般的である。
しかしながら、近年の光リソグラフィで描画される回路パターンのサイズは露光光の波長をかなり下回るサイズとなってきており、描画回路パターンの形状を単純に4倍にしたパターンをフォトマスクパターンとした場合には、露光の際に生じる光の干渉などの影響によってフォトマスクパターン通りの形状をレジスト膜上に転写することは困難である。このため、描画回路パターンの原版となるフォトマスクには極めて高い精度でフォトマスクパターンが形成されていることが必要とされ、露光時の光の干渉などの影響を低減させる目的で、実際の描画回路パターンよりも複雑な形状のフォトマスクパターン(いわゆるOPCパターン)とされる場合もある。
このように、フォトマスクパターンを得るためのリソグラフィ技術においても、半導体基板などの微細加工を行うための光リソグラフィ技術と同様に、高いパターン加工精度が求められている。一般に、リソグラフィ性能の指標として限界解像度が用いられるが、フォトマスク加工工程のリソグラフィ技術には、このフォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上に焼き付ける加工工程での光リソグラフィ技術と同等若しくはそれ以上の高い限界解像度が求められるのが実情である。
フォトマスクパターンの作成方式としては、光を用いて露光する方法も利用されるが電子ビーム露光が主流であり、通常は、先ず、透明基板上に遮光層が設けられたフォトマスクブランク上にフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜に電子ビームでパターンを描画しこれを現像してレジストパターンを得る。そして、このレジストパターンをマスク層用のエッチングマスクとして用いて遮光部と透光部とからなるパターン(フォトマスクパターン)を形成する。なお、一般的なマスク層は、反射防止層と遮光層の積層構造とされる。
形成するフォトマスクパターンの微細化に対応してレジストパターンも微細化されることとなるが、レジスト膜の膜厚を薄くすることなくレジストパターンのみを微細化すると、マスク層用のエッチングマスクとして機能するレジスト部のアスペクト比(レジスト膜厚とパターン幅との比)が大きくなってしまう。一般に、レジストパターンのアスペクト比が大きくなるとそのパターン形状が劣化しやすく、これをエッチングマスクとするマスク層へのパターン転写精度が低下してしまう。また、極端な場合には、レジストパターンの一部が倒れたり剥離を起こしてパターン抜けが生じたりすることも起こる。したがって、フォトマスクパターンの微細化に伴って、マスク層パターニング用のエッチングマスクとして用いるレジストの膜厚を薄くしてアスペクト比が大きくなりすぎないようにする必要がある。
ところで、レジストをエッチングマスクとしてマスク層にパターニングを施す場合の遮光膜材料についてはすでに多くの材料が提案されてきた。このうち、クロム化合物膜はそのエッチングに対する情報量が多く、実用上は常にクロム化合物が遮光膜材料として用いられてきており、事実上の標準加工工程として確立されている。例えば、特許文献1乃至3には、ArF露光用のフォトマスクブランクに求められる遮光特性を有する遮光膜をクロム化合物で形成したフォトマスクブランクの構成例が開示されており、その膜厚は50〜77nm程度とされ、この厚みの遮光膜をレジストマスクのみを用いてパターニングしている。
クロム膜やクロム化合物膜の遮光膜は一般的には酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターニングされるが、このエッチング条件はレジストなどの有機膜に対しても無視できない程度のエッチング効果を奏することが多い。このため、膜厚が比較的薄いレジスト膜をマスクとして遮光膜のエッチングを実行すると、このエッチング中にレジストがダメージを受けてレジストパターンの形状が変化し、本来のレジストパターンを遮光膜上に正確に転写することが困難となる。
しかしながら、有機膜であるフォトレジストに、高い解像性と高いパターニング精度とを両立可能なエッチング耐性(耐プラズマ性)をもたせることは技術的に困難である。このため、遮光膜エッチング時のレジストへの負荷を低減させてより高精度のフォトマスクパターンを形成するためには遮光膜の材料選択を再検討することが必要になる。
特開2003−195479号公報
特開2003−195483号公報
登録実用新案第3093632号公報
特開2001−312043号公報
特開昭63−85553号公報
遮光膜材料については既に多くの検討例があり、例えば特許文献4には、ArF露光用の遮光層としてタンタル金属膜を用いた例が報告されている。この例では、遮光層としてタンタル金属膜を、反射防止層として酸化タンタル膜を用い、この2層からなるマスク層の合計膜厚を約70nmとしている。このような層構造に加え、マスク層エッチング時のレジストへの負荷を低減するために、マスク層のエッチングをレジストに対して比較的ダメージを与え難いフッ素系のガスプラズマで実行することとされている。しかしながら、例えこのようなエッチング条件を選択したとしても、合計膜厚が約70nmとなる遮光層と反射防止層とを、レジストのみをエッチングマスクとして使用する以上は、マスク層エッチング時のレジストへの負荷低減には限界があり、微細なフォトマスクパターンを高精度で形成に対するという要求を充分に満足することは困難である。
一方、ハードマスクを用いることでドライエッチング時のレジストへの負担を軽減させるという手法は古くから試みられてきており、例えば特許文献5には、金属シリサイド膜上に形成したSiO2膜をエッチングマスクとして金属シリサイド膜のドライエッチングを実行するという手法が開示されている。しかしながら、SiO2膜は導電性に乏しいために、電子ビーム露光時にチャージアップが生じてしまうという問題が起りやすい。また、フォトマスクブランクの欠陥検査は反射率に基づいてなされるのが一般的であり、ArF露光用マスクの欠陥検査には257nmの波長の光が使用されるが、正確な欠陥検査のためにはこの波長の光において10〜20%程度の反射率が必要とされる。しかし、SiO2膜をエッチングマスクとして用いると、このSiO2膜の反射率が高すぎて欠陥検査そのものの障害となるという問題がある。
このように、従来のフォトマスクブランクの層構造では、微細なフォトマスクパターンを高精度で形成するという要求に充分に応えることは困難であり、このことは露光光波長が短く高い解像度が求められるArF露光用のフォトマスクパターンで特に深刻である。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、フォトマスクパターンを形成する際のマスクとして用いられるフォトレジストへの負担を軽減させたパターニングが可能で、且つ、欠陥検査などで求められる所要の物性も兼ね備えたフォトマスクブランクを用いて、微細なフォトマスクパターンを高精度で形成することが可能なフォトマスクの製造方法を提供することにある。
このような課題を解決するために、第1の発明にかかるフォトマスクの製造方法は、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)では実質的なエッチングがされず且つ酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)およびフッ素系ドライエッチング(F系)でエッチングが可能な金属膜の遮光層の上に、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)あるいはフッ素系ドライエッチング(F系)の少なくとも一方でエッチングが可能な金属化合物膜の反射防止層が積層されて設けられたフォトマスクブランクを加工してフォトマスクを製造する方法であって、前記反射防止層の主面上にパターン形成されたレジストマスクを用いて該反射防止層を(Cl+O)系ドライエッチングしてパターニングする第1のステップと、該パターニングされた反射防止層をハードマスクとして前記遮光層をF系ドライエッチングしてパターニングする第2のステップとを備え、前記レジストマスクの厚みが75nm以上350nm以下であることを特徴とする。
また、第2の発明にかかるフォトマスクの製造方法は、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)では実質的なエッチングがされず且つ酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)およびフッ素系ドライエッチング(F系)でエッチングが可能な金属膜の遮光層の上に、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)あるいはフッ素系ドライエッチング(F系)の少なくとも一方でエッチングが可能な金属化合物膜の反射防止層が積層されて設けられたフォトマスクブランクを加工してフォトマスクを製造する方法であって、前記反射防止層の主面上にパターン形成されたレジストマスクを用いて該反射防止層をF系ドライエッチングしてパターニングする第1のステップと、該パターニングされた反射防止層をハードマスクとして前記遮光層をCl系ドライエッチングしてパターニングする第2のステップとを備え、前記レジストマスクの厚みが75nm以上350nm以下であることを特徴とする。
さらに、第3の発明にかかるフォトマスクの製造方法は、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)では実質的なエッチングがされず且つ酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)およびフッ素系ドライエッチング(F系)でエッチングが可能な金属膜の遮光層の上に、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)あるいはフッ素系ドライエッチング(F系)の少なくとも一方でエッチングが可能な金属化合物膜の反射防止層が積層されて設けられたフォトマスクブランクを加工してフォトマスクを製造する方法であって、前記反射防止層の主面上にパターン形成されたレジストマスクを用いて該反射防止層と前記遮光層とを連続してF系ドライエッチングしてパターニングするステップを備え、前記レジストマスクの厚みが75nm以上350nm以下であることを特徴とする。
好ましくは、前記レジストマスクの厚みは、100nm以上250nm以下である。
本発明のフォトマスクの製造方法は、前記レジストマスクを除去した後に、前記パターニングされた反射防止層上にパターン形成された第2のレジストマスクを新たに設けるステップと、該第2のレジストマスクを用いて前記反射防止層と前記遮光層とをドライエッチングしてパターニングするステップとを備える態様としてもよい。
前記金属膜は、例えば、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)から選択された少なくとも1種の金属元素を主成分とする金属もしくは合金である。
前記遮光層は、複数の金属膜を積層させて構成するようにしてもよい。
前記遮光膜の露光光波長に対する光学濃度ODは2以上であることが好ましく、前記遮光膜の膜厚は15nm以上50nm以下であることが好ましい。
前記反射防止膜は露光光波長に対する消衰係数kが0.2以上1.0以下であることが好ましく、前記反射防止層はクロム系化合物の膜もしくは珪素系化合物の膜の少なくとも一方の膜を含んでいることが好ましい。
前記クロム系化合物は、例えば、クロム酸化物、クロム窒化物、もしくはクロム酸窒化物を主成分とする化合物であり、該クロム系化合物は、例えば、クロム(Cr)が30〜85原子%、酸素(O)が0〜60原子%、窒素(N)が0〜50原子%、炭素(C)が0〜20原子%の範囲の組成を有するものである。
前記珪素系化合物は、例えば、珪素酸化物、珪素窒化物、もしくは珪素酸窒化物を主成分とする化合物であり、該珪素系化合物は、例えば、珪素(Si)が10〜57原子%、酸素(O)が0〜60原子%、窒素(N)が0〜57原子%、炭素(C)が0〜30原子%の範囲の組成を有するものである。この珪素系化合物には、遷移金属の酸化物、窒化物、もしくは珪素酸窒化物が含有されていることが好ましい。
前記遷移金属は、例えば、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、およびニオブ(Nb)のうちから選択されたものであり、該遷移金属の濃度は、0.2〜25原子%の範囲であることが好ましい。
前記反射防止層は、相互に異なる組成の化合物膜を積層させた構成とすることができる。また、反射防止層の厚みは、15nm以上30nm以下であることが好ましい。
本発明では、フォトマスクブランクの層構造、フォトマスクパターンを形成する際のマスクとして用いられるフォトレジスト(レジストマスク)の厚み、および、フォトマスクブランクが備える反射防止層および遮光層をドライエッチングする際のガス条件のそれぞれを適切な範囲で選択したので、微細なフォトマスクパターンを高精度で形成することが可能なフォトマスクの製造方法が提供される。
以下に図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明者らは、フォトマスクパターン形成に際して用いられるレジストマスクへの負担を軽減させるという課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、マスク層を構成する反射防止層と遮光層に互いにドライエッチング特性の異なる材料を最適に選択して組み合わせることにより、フォトマスクパターン形成時のレジストマスクへの負担を軽減させるとともに、欠陥検査などで求められる所要の物性を備えたフォトマスク(ブランク)を得ることが可能であることを見出した。
従来のフォトマスクブランクが備える遮光層の材料には、製造プロセスを容易・簡素化する観点から、反射防止層と同一材料系のものが選択されていた。このため、反射防止層と遮光層とは類似するエッチング特性を有する結果となり、反射防止層上に設けられたレジストマスクを用いて反射防止層と遮光層の両方をエッチングして加工するというプロセスが採用されていた。
これに対して、本発明においては、反射防止層と遮光層の材料として互いにエッチング特性の異なるもの(異種材料系)を選択し、このエッチング選択性を利用してフォトマスクパターン形成時のレジストマスクへの負担を軽減するという新規な構造を採用している。
詳細は後述するが、反射防止層と遮光層の材料のエッチング選択性を利用すれば、例えば、反射防止層のエッチングマスクとしてのみレジストマスクを用い、パターニングされた反射防止層をハードマスクとして遮光層のエッチングを行うということが可能となり、その結果レジストマスクへの負荷は低減されてレジストパターンの形状変化が大幅に減少することとなり、反射防止層には本来のレジストパターンが正確に転写されることとなる。そして、このパターニングされた反射防止層をハードマスクとして遮光層をエッチングすることにより、所定のフォトマスクパターンが遮光層上に正確に転写されることとなる。
また、本発明で用いるフォトマスクブランクの構成では、レジストマスクを用いて実行されるエッチングの時間も短縮されるためにレジスト膜厚を薄くすることが可能となるから、フォトマスクパターンを微細化してもアスペクト比が大きくなりすぎることがなく、パターン形状の劣化に伴うパターン転写精度の低下や、レジストパターンの一部剥離に起因するパターン抜けなどの不都合も回避することができる。
なお、このような材料選択は、反射防止層が欠陥検査などで求められる所要の物性を備えるという条件の下でなされるので、特許文献5に記載されている従来構成のフォトマスクブランクのように、反射防止層の反射率が高すぎて欠陥検査を困難とするといった問題も生じない。
以下に、実施例により、本発明をより詳細に説明する。
(フォトマスクブランクの基本構造)
図1は、本発明で用いるフォトマスクブランクの基本構造例を説明するための断面概略図で、このフォトマスクブランクは、フォトマスク基板11の一方主面に、酸素含有の塩素系ドライエッチング((Cl+O)系ドライエッチング)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素非含有の塩素系ドライエッチング(Cl系ドライエッチング)およびフッ素系ドライエッチング(F系ドライエッチング)でエッチングが可能な金属膜を遮光層12として備え、この遮光層12の上に、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系ドライエッチング)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系ドライエッチング)あるいはフッ素系ドライエッチング(F系ドライエッチング)の少なくとも一方のエッチングでエッチングが可能な金属化合物膜を反射防止層13として備えている。なお、フォトマスク基板11に対する特別な制限はなく、石英ガラスやCF2あるいはアルミノシリケートガラスなどの一般的な透明基板を用いることができる。
図1は、本発明で用いるフォトマスクブランクの基本構造例を説明するための断面概略図で、このフォトマスクブランクは、フォトマスク基板11の一方主面に、酸素含有の塩素系ドライエッチング((Cl+O)系ドライエッチング)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素非含有の塩素系ドライエッチング(Cl系ドライエッチング)およびフッ素系ドライエッチング(F系ドライエッチング)でエッチングが可能な金属膜を遮光層12として備え、この遮光層12の上に、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系ドライエッチング)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系ドライエッチング)あるいはフッ素系ドライエッチング(F系ドライエッチング)の少なくとも一方のエッチングでエッチングが可能な金属化合物膜を反射防止層13として備えている。なお、フォトマスク基板11に対する特別な制限はなく、石英ガラスやCF2あるいはアルミノシリケートガラスなどの一般的な透明基板を用いることができる。
ここで、(Cl+O)系ドライエッチング条件は、従来よりクロム化合物膜をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものとしてよく、特別な制限はない。例えば、塩素ガスと酸素ガスの混合比(Cl2ガス:O2ガス)を体積流量比で1:2〜20:1とし、必要に応じてヘリウムなどの不活性ガスを混合する。なお、塩素ガスに対して5%以上の体積流量比で酸素ガスを混合させると、本発明で用いるフォトマスクブランクの遮光層として用いられる金属膜への実質的なエッチングは進行しないことを確認している。本実施例を含む以降の実施例においては、塩素ガス20sccm、酸素ガス9sccm、ヘリウムガス80sccmの流量のガスを混合したエッチングガスをエッチングチャンバに導入し、チャンバ内圧力を2Paとしてドライエッチングを実行している。
また、Cl系ドライエッチング条件は、酸素ガスの体積混合比が塩素ガスに対し5%未満となるように設定するが、一般的には、塩素ガスのみをエッチングガスとして用いることが好ましい。なお、実施例においては、流量20sccmの塩素ガスのみを使用し、チャンバ内圧力2Paでエッチングを実行した。
さらに、F系ドライエッチングに使用されるガスは、CF4やC2F6などのフッ素含有ガスとされるが、必要に応じて酸素などのガスを添加してもよい。なお、実施例ではC2F6ガスを用い、流量20sccmのC2F6ガスのみを使用し、チャンバ内圧力を2Paとした。
このようなエッチング特性を有する遮光層12用の金属膜としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)などの金属を主成分とする金属膜がある。これらの材料は、ArF露光で用いられる波長193nmの光に対してクロム(Cr)金属膜よりも大きな消衰係数をもつため、薄膜化が可能となる意味でも有利である。また、これらの金属膜を単層として用いることのほか複数の異種金属膜を積層させて遮光層12とすることもできる。さらに、これらの金属膜の組成は単元素組成に限らず上記金属元素から選択される2種以上の金属の合金であってもよい。
このような金属膜がフォトマスクの遮光層12として機能するためには、フォトリソグラフィ工程で用いられる露光光に対する遮光性が充分であることが必要であり、露光光に対する光学濃度(OD)が2以上であることが好ましい。特に、本発明で用いるフォトマスクブランクを好適に適用可能なArF露光(露光光波長=193nm)用のフォトマスクのOD値を2以上とするためには、金属膜の厚みを15nm以上とすることが好ましい。一方、金属膜の膜厚が厚すぎるとそのエッチング工程中での負荷が大きくなりすぎるため、遮光層12の高精度パターニングのためには膜厚を50nm以下とすることが好ましい。
また、金属膜には酸素、窒素、炭素などの非金属元素が含まれていてもよいが、これらの非金属原子を一定量以上含有する場合には遮光層としての遮光性が低下して所定の光学濃度を得ることが困難となる。特に、ArF露光用フォトマスクを作製するフォトマスクブランクとする場合には、窒素および炭素については30原子%以下、酸素については10原子%以下、また窒素、炭素、酸素を合計したものが40原子%以下であることが好ましい。
このような遮光層のフォトマスク基板上への形成は真空蒸着法やスパッタリング法などの公知の一般的な手法によることができるが、所定の金属を含有するターゲットを用いたスパッタリング法によれば均質性に優れた膜を容易に得ることができる。
このようにして材料選択される遮光層12上に設けられる反射防止層13の材料には、クロム系化合物もしくは珪素系化合物が選択される。クロム系化合物は、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)により容易にエッチングされる一方、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)やフッ素系ドライエッチング(F系)に対してはエッチング耐性を示す。また、珪素系化合物は、フッ素系ドライエッチング(F系)が可能である一方、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)および酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)に対して耐性をもつ。
表1に、以降の説明の理解を容易なものとするために、上記各材料の各ドライエッチング条件下でのエッチング特性(傾向)を纏めた(○印はエッチングされることを、×印は実質的なエッチングが生じないことを意味する)。
このようなエッチング特性を示すクロム系化合物膜としては、クロム酸化物やクロム窒化物あるいはクロム酸窒化物を主成分とする膜があり、クロム系化合物膜中には炭素やフッ素などの非金属元素が含有されていてもよい。なお、反射防止層を単一組成のクロム系化合物膜で形成することのほか、複数の異なる組成のクロム系化合物膜を積層させて反射防止層とするようにしてもよい。このようなクロム系化合物膜の反射防止層は、クロムをターゲットとした反応性スパッタリングなどの公知の方法により得ることができる。
クロム系化合物膜の具体的な原子組成は、露光光に対する消衰係数kが0.2以上1.0以下の範囲となるように選択され、例えば、クロム(Cr)=30〜85原子%、酸素(O)=0〜60原子%、窒素(N)=0〜50原子%、炭素(C)=0〜20原子%の範囲とされる。また、反射防止層をクロム系化合物で形成する場合の膜厚はマスク検査に用いる光の波長などの条件に応じて決定されるが、ArF露光用のマスクを作製する場合には15〜30nm程度の膜厚とすることが好ましい。このような組成と膜厚を有するクロム系化合物膜の反射防止層の反射率は、代表的な反射率検査波長である波長257nmの光に対して10〜20%となる。
なお、一般的なレジストは酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)に対してはあまり高いエッチング耐性は示さないためにエッチングプロセス中にダメージを受け易いが、反射防止層を15〜30nm程度に薄膜化しておけばレジストパターンがダメージにより形状変化を生じる前に反射防止層のパターニングを完了させることができるため、本来のレジストパターンを高い精度で反射防止層上に転写することができる。
また、上述したエッチング特性を示す珪素系化合物膜としては、珪素酸化物や珪素窒化物あるいは珪素酸窒化物の膜(珪素化合物膜)のほか、これらの膜に遷移金属の酸化物や窒化物あるいは珪素酸窒化物が含まれた膜(珪素遷移金属化合物の膜)などがあり、さらにこのような膜中には炭素が含有されていてもよい。なお、反射防止層を単一組成の珪素系化合物膜で形成することのほか、複数の異なる組成の珪素系化合物膜を積層させて反射防止層とするようにしてもよい。
ここで、膜中に含有される遷移金属の例としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)などが挙げられるが、エッチング加工の容易性の観点からはモリブデンが好ましい。このような遷移金属としてモリブデンを選択した珪素遷移金属化合物(例えば、MoSiON)を反射防止層として上述の遮光層と組み合わせた場合のエッチング加工性は、特許文献4に記載されている酸化タンタル膜の反射防止層とタンタル膜の遮光層との組み合わせに比較して良好であり、高精度のフォトマスクパターンが得られる。
なお、上述の珪素化合物や珪素遷移金属化合物あるいはそれらの膜に更に炭素を含有させた珪素系化合物の膜は公知の方法により得ることができ、例えば、珪素またはモリブデンシリサイドあるいはモリブデンおよび珪素、またはモリブデンシリサイドと珪素をターゲットとして、反応性ガスあるいは反応性ガスとアルゴンの混合気流中で反応性スパッタリングを行うなどの方法がある。
珪素系化合物膜の具体的な原子組成も、露光光に対する消衰係数kが0.2以上1.0以下の範囲となるように選択され、例えば、遷移金属(Mtr)=0.2〜25原子%、珪素(Si)=10〜57原子%、酸素(O)=0〜60原子%、窒素(N)=0〜57原子%、炭素(C)=0〜30原子%の範囲とされる。また、反射防止層を珪素系化合物で形成する場合の膜厚もマスク検査に用いる光の波長などの条件に応じて決定されるが、ArF露光用のマスクを作製する場合には15〜30nm程度の膜厚とすることが好ましい。このような組成と膜厚を有する珪素系化合物膜の反射防止層の反射率は、代表的な反射率検査波長である波長257nmの光に対して10〜20%となる。
このようなエッチング特性の遮光層と反射防止層を下記のように組み合わせると、反射防止層のエッチングはレジストマスクにより、遮光層のエッチングはパターニングされた反射防止層をハードマスクとして実行することが可能である。
すなわち、反射防止層の材料としてクロム系化合物を選択した場合には、レジストマスクを用いてこの反射防止層を酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)で実行してパターニングを行うが、このエッチング工程においては遮光層の金属膜は酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)に対して耐性をもつために実質的なエッチングは行われない。したがって、パターニングされた反射防止層をハードマスクとして、酸素非含有塩素系ドライエッチング((Cl)系)またはフッ素系ドライエッチング(F系)により、遮光層のエッチングを実行することが可能である。なお、この遮光層のエッチング条件である酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)およびフッ素系ドライエッチング(F系)の何れにおいても反射防止層は実質的なエッチングが進行しないから、反射防止層からなるハードマスクのパターン形状が変化することはなく、遮光層に高精度でフォトマスクパターンを形成することができる。
なお、反射防止層の材料として珪素系化合物を選択した場合には、レジストマスクを用いてこの反射防止層をF系ドライエッチングする。一般のレジスト膜はF系のエッチング条件下で比較的高い耐性をもつから、F系ドライエッチングが可能な金属膜のエッチングを、同じくF系ドライエッチング可能な珪素系化合物の反射防止層のエッチングと連続して行ったとしても、このエッチングプロセスでのレジストパターンへの負担は比較的軽微なものに止めることができる。
(位相シフトマスクブランク)
本発明で用いるフォトマスクブランクは、位相シフトマスクブランクとして構成するようにしてもよい。
本発明で用いるフォトマスクブランクは、位相シフトマスクブランクとして構成するようにしてもよい。
図2は、本発明で用いるフォトマスクブランクを位相シフトマスクブランクとして構成した構造例を説明するための断面概略図で、フォトマスク基板11の一方主面上に透明または半透明の位相シフト層16が設けられており、この位相シフト層16上に、すでに説明した遮光層12および反射防止層13が順次積層されている。この位相シフト層16には公知の種々の位相シフト膜を用いることができ、これらの膜を互いに組み合わせることで得られる複合膜であってもよい。また、位相シフト層16の吸収体材料をハーフトーン材料に変えてハーフトーンの位相シフト層としてもよい。
なお、図中の符号14および15が付された層はそれぞれ、バッファ層とエッチングストッパ層であり、これらの層は必須のものではないがフォトマスクブランクの用途に応じて適宜設けられるものである。なお、これらのバッファ層14および/またはエッチングストッパ層15は、本実施例で示す位相シフトマスクブランクに限らず、実施例1で説明した構成のフォトマスクブランクに設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
このように位相シフト層16の構成はバリエーションに富むが、高透過膜の好ましい例としては、珪素酸化物や珪素窒化物あるいは珪素酸窒化物を主成分とする単層膜あるいはこれらの膜を積層させた複合膜が挙げられる。
また、透過光を減衰させる膜で位相シフト層16を構成する場合の膜としては、珪素酸化物や珪素窒化物あるいは珪素酸窒化物を主成分とする膜(珪素化合物の膜)のほか、これらの膜に遷移金属の酸化物や窒化物あるいは珪素酸窒化物が含まれた膜(珪素遷移金属化合物の膜)などがあり、これらの膜中に炭素が含有されていてもよい。さらには、遷移金属薄膜を透過光減衰膜として位相シフト層16を形成することもできる。
なお、位相シフト層16をハーフトーン位相シフト層とする場合は、上記で列挙した材料からなる単層膜あるいは多層膜の透過率が2〜40%、位相シフト量が約180℃となるように材料の組成を調整する。
このような位相シフト層16の材料としてフッ素系ドライエッチング(F系)可能なものを選択した場合には、上述した遮光層との組み合わせた場合のエッチング加工プロセスが必要以上に複雑になることなく、かつ高精度のドライエッチング加工ができるという利点がある。
フッ素系ドライエッチング(F系)が可能なハーフトーン位相シフト膜の例としては、珪素酸化物や珪素窒化物あるいは珪素酸窒化物を主成分とする膜(珪素化合物の膜)のほか、これらの膜に遷移金属の酸化物や窒化物あるいは珪素酸窒化物が含まれた膜(珪素遷移金属化合物の膜)などがある。これらの膜は、膜中の酸素や窒素あるいは遷移金属の含有量を制御することにより、単層膜としてもあるいは複合膜を構成する一部の膜としてもハーフトーン位相シフト膜として用いることができる。このような膜からなる複合膜の例としては、上記の珪素化合物膜と珪素遷移金属化合物膜およびこれらの化合物を主成分とする金属シリサイド膜、さらにはモリブデンやタンタルもしくはタングステンを主成分とする金属膜を相互に組み合わせて得られる複合膜を挙げることができる。
(フォトマスクブランクの加工プロセス例1)
本実施例では、クロム系化合物の反射防止層を備えたフォトマスクブランクの加工プロセス例について説明する。なお、ここではフォトマスクブランクが、透明のフォトマスク基板上に遮光層と反射防止層のみが設けられた、いわゆるバイナリーマスクブランク(図1参照)であるものとして説明する。
本実施例では、クロム系化合物の反射防止層を備えたフォトマスクブランクの加工プロセス例について説明する。なお、ここではフォトマスクブランクが、透明のフォトマスク基板上に遮光層と反射防止層のみが設けられた、いわゆるバイナリーマスクブランク(図1参照)であるものとして説明する。
図3は、本実施例の加工プロセスを説明するための工程図で、先ず、透明なフォトマスク基板11上に、実施例1で既に説明した組成および膜厚を有する金属膜からなる遮光層12とクロム系化合物の反射防止層13とが順次積層されており、この反射防止層13上にレジスト膜17を形成する(図3(a))。なお、このレジスト膜17の形成に先立って、後のプロセスにおける微細パターンの剥がれや倒れという問題の発生を防ぐことを目的として、フォトマスク基板11の表面エネルギを低減させておくための表面処理を実施しておくことが好ましい。このような表面処理の好ましい方法としては、半導体製造工程で常用されるヘキサメチルジシラザン(HMDS)やその他の有機シリコン系の表面処理剤でフォトマスク基板表面をアルキルシリル化する方法があり、フォトマスク基板11の表面をこのような表面処理剤のガス中に暴露したり、あるいはフォトマスク基板11の表面に表面処理剤を直接塗布するなどの方法を採り得る。このような表面処理を行ってフォトマスク基板11の表面エネルギを低下させた後にフォトマスク基板11上にレジストを塗布・乾燥してレジスト膜17を得る。なお、当然のことであるが、レジストの塗布条件や乾燥方法は用いるレジスト材料に応じて適当なものが選ばれる。
用いるレジストとしてはフォトマスクパターンの作成に使用する描画装置に応じて適切なものが選択されることとなるが、電子ビーム(EB)描画用レジストとしては、芳香族骨格をポリマー中に有するポジ型あるいはネガ型のレジストを用いるのが一般的である。なお、より微細なパターンを有するフォトマスクを製造する場合には、化学増幅型レジストを用いることが好ましい。
レジスト膜17は、パターン形状が良好に得られ、且つエッチングマスクとしての機能を果たし得る範囲の膜厚とされる。特に、微細なパターン形成が求められるArF露光用フォトマスクを作製する場合のレジスト膜17はアスペクト比が大きくならないように比較的薄膜であることが必要であり、350nm以下であることが好ましく、より好ましくは250nm以下とされる。
一方、レジスト膜17の膜厚下限は用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定されるが、一般的なレジスト材料を用いた場合には75nm以上であることが好ましく、より好ましくは100nm以上とされる。なお、シリコーン系樹脂を使用したレジストと芳香族系樹脂を使用した下層膜の組み合わせによる「多層レジスト法」や、芳香族系化学増幅型レジストとシリコーン系表面処理剤を組み合わせた「表面イメージング法」を採用する場合には、レジスト膜17の総厚を上記値よりも薄くすることが可能となる。
このようなレジスト膜17を加工してレジストパターンを得るが(図3(b))、この際のレジスト膜17への描画は光照射による方法で行うことも可能であるが、一般には、微細パターンを形成するために好ましい方法であるEB照射による方法が採用される。例えば、レジストとして化学増幅型のものを使用してこれをEB照射により描画する場合には、通常3〜30mC/cm2のエネルギ密度範囲の電子ビームで描画を行い、この描画の後に加熱処理および現像処理してレジストパターンが得られる。
クロム系化合物の反射防止層13のパターニングは、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)で行われる(図3(c))。なお、(Cl+O)系のエッチング条件下では、レジストのような有機膜のエッチング速度は、フッ素系ドライエッチング(F系)を施す場合に比較して速くなってしまうことは上述したとおりであり、反射防止層13のエッチング中にレジストパターンのダメージが加わることとなるが、通常はクロム系化合物の反射防止層13の厚みを15〜30nm程度とすることができるため、エッチング対象である反射防止層13の厚みに比べて充分に厚い膜厚100〜250nmのレジストパターンにより高精度の加工が可能である。
このような反射防止層13のパターニングに続いて遮光層12のパターニングを行う(図3(d))。既に説明したように、タンタルやタングステンなどの金属や合金からなる金属膜は、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)に対して実質的なエッチングが生じない程度のエッチング耐性を示す。したがって、遮光層12をエッチング加工するために、エッチング条件を、フッ素系ドライエッチング(F系)、あるいは酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)に変えてパターニングを行う。本実施例では、遮光層12のエッチング加工は、フッ素系ドライエッチング(F系)でパターニングを行なっている。この遮光層12のエッチングにおいては、反射防止層13であるクロム系化合物膜がF系およびCl系の何れのドライエッチング条件下においても実質的なエッチングがなされないため、エッチングマスク(ハードマスク)としての役目を充分に果たし、高精度の加工を容易に実行することができる。
このようにしてパターニングされた反射防止層13と遮光層12からなるマスク層18を得た後に、パターニングされた反射防止層13上に残存しているレジスト膜17が剥離され、(位相シフト効果をもたない)バイナリーフォトマスクが完成する(図3(e))。
(フォトマスクブランクの加工プロセス例2)
本実施例では、珪素系化合物の反射防止層を備えたフォトマスクブランクの加工プロセス例について説明する。なお、本実施例のフォトマスクブランクも、透明のフォトマスク基板上に遮光層と反射防止層のみが設けられた、いわゆるバイナリーマスクブランクであるものとして説明するので、その加工プロセスは図3で示したものと同様であり、レジストパターン形成工程(図3(a)および図3(b))までは、既に説明したクロム系化合物の反射防止層を備えたバイナリーマスクブランクの加工と全く同様に行うことができるので説明は省略する。
本実施例では、珪素系化合物の反射防止層を備えたフォトマスクブランクの加工プロセス例について説明する。なお、本実施例のフォトマスクブランクも、透明のフォトマスク基板上に遮光層と反射防止層のみが設けられた、いわゆるバイナリーマスクブランクであるものとして説明するので、その加工プロセスは図3で示したものと同様であり、レジストパターン形成工程(図3(a)および図3(b))までは、既に説明したクロム系化合物の反射防止層を備えたバイナリーマスクブランクの加工と全く同様に行うことができるので説明は省略する。
反射防止層の材料として珪素系化合物を選択した場合は、一般のレジスト材料が比較的高い耐性を示すF系のエッチング条件を選択することが好ましい。F系のエッチング条件とした場合には、同じくF系エッチング条件で加工が可能な上記の金属膜と同時に(連続して)エッチング加工することも可能である。しかし、このような連続エッチング加工とした場合には金属膜のエッチング時に受けるダメージを考慮したレジスト膜厚設定が必要となる。したがって、レジストの薄膜化という観点からは、先ずF系ドライエッチングで反射防止層にパターニングを施し、これに続いてCl系ドライエッチングで遮光層をパターニングするという方法を採用することが好ましい。このような2段階のエッチングを行うこととすれば、パターニングされた珪素系化合物の反射防止層を遮光層のCl系ドライエッチング用マスクとして用いることができるため、レジスト膜厚を薄くした場合でも高精度なフォトマスクパターンを得ることができる。
(位相シフトマスクブランクの加工プロセス例)
本実施例では、金属膜の遮光層の下に位相シフト層を設けた位相シフトマスクブランクの加工プロセス例について説明する。
本実施例では、金属膜の遮光層の下に位相シフト層を設けた位相シフトマスクブランクの加工プロセス例について説明する。
図4および図5は共に、本実施例の加工プロセスを説明するための工程図である。これらの図に示した位相シフトマスクブランクの加工工程において、レジストパターン形成工程(図4(a)と(b)、図5(a)と(b))および反射防止層のパターニング工程(図4(c)、図5(c))までは、既に説明したバイナリーマスクブランクの加工と全く同様に行うことができるので説明は省略する。
反射防止層13のパターニングに続いて遮光層12および位相シフト層16のエッチングを施して位相シフトマスクパターンが形成されるが、この加工プロセスとしては幾つかのバリエーションがあり得る。
図4に示したのは、反射防止層13のパターニングに用いたレジスト膜17を塗り直すことなく、遮光層12と位相シフト層16とをF系のエッチング条件下で一気にパターニングした後(図4(d))、残存するレジスト膜17を剥離する例である(図4(e))。図4に示したプロセス例ではさらに、最終的にマスク層として残す部分と位相シフト層を除去した部分(基板が露出している部分)とを被覆するレジストマスク(第2のレジストマスク)17aを形成し(図4(f))、それ以外の部分について、反射防止層13および遮光層12を上述の手法でエッチング除去し(図4(g)および図4(h))、最後にレジストマスク17aを除去して位相シフトマスクが完成する(図4(i))。反射防止層13を珪素系化合物材料で構成する場合にはこの方法によるのが好ましい。
なお、本実施例では、第2のレジストマスク17aの形成にはネガ型レジストが用いられている。ネガ型レジストを前面塗布し、このレジスト膜のうちのマスク層を残す部分をパターン露光で感光させる。その後、基板11の裏面側から光を照射して全面露光を行うと、位相シフト層16が除去された領域のレジストのみが感光することとなる。したがって、これを現像すると、マスク層として残す部分と基板が露出された部分とを保護する図4(f)に示したようなレジストマスクが完成する。
しかし、このようなプロセスでは、遮光層12と位相シフト層16のエッチング工程(図4(c)から図4(d)に至る工程)中に薄膜のレジスト17がエッチング除去されてしまい、反射防止層13の表面が露出されてエッチング処理されるおそれがある。このような反射防止層13のエッチングが生じると、反射率などの諸特性値が設計値からずれてしまうおそれがある。このため、図4に図示したプロセスによる場合には、始めに設けるレジスト膜17の膜厚を厚めに設定しておくことが必要となる。
このような不都合を回避しつつレジスト膜17の薄膜化を図るためには、反射防止層13がクロム系化合物膜である場合に、反射防止層13を一旦パターニングした後に、最終的にマスク層として残す部分のみを被覆する新たなレジストマスクを形成するという方法を採用することができる。この方法によれば、反射防止層13の表面はエッチング処理の全工程を通じて確実に保護されることとなるから、反射防止層13の表面がエッチングされて反射率などが設計値からずれるという不都合は生じない。
具体的には、反射防止層13をパターニングした際のレジスト膜17を除去した後(図5(d))、反射防止層13上にレジスト膜17aを新たに設けてパターニングし、(図5(e))最終的にマスク層として残す部分のみをマスクする。なお、位相シフト層16がハーフトーンの位相シフト層である場合(ハーフトーン位相シフトマスクの場合)には、マスク層パターンに対する微細化要求は比較的緩やかである。したがって、塗り直しに用いるレジスト材料を解像力よりも耐エッチング性を重視して選択することができ、これにより以降のエッチングプロセスから反射防止膜表面を守る。また、反射防止層13のレジストマスクとして用いたものと同じレジスト材料を使用する場合には、そのレジスト膜厚を厚めに設定することが好ましい。次に反射防止膜13をエッチングマスクとして遮光層12と位相シフト層16とをF系のエッチング条件で一気にパターニングする(図5(f))。
このようなパターニングの後、既に設けてあるレジストマスク17aをエッチングマスクとしてクロム系化合物の反射防止層13を(Cl+O)系のドライエッチングにより除去する(図5(g))。これに続いて、Cl系のドライエッチングにより金属膜の遮光層12を除去し(図5(h))、レジストマスク17aを剥離してハーフトーン位相シフトマスクが完成する(図5(i))。
なお、マスク層に微細なパターニングを施す必要がある場合には、レジストの塗り直しは遮光性パターンのエッチング加工の直前に行うことが好ましい。この場合には、最初に設けるレジストの膜厚を比較的厚めにして、反射防止層、遮光層、位相シフト層の加工プロセス中に残存維持され易くするか、若しくは反射防止層の加工プロセス中での変性を考慮して膜厚設計をなす必要がある。
反射防止層として珪素系化合物の膜を用いた位相シフトマスク用のブランクを加工する場合のレジストの塗り直しは、上述したクロム系化合物膜の反射防止層を備える位相シフトマスク用のブランクの加工において、マスク層に微細加工が必要とされる場合と同様の手順でなすことができる。
以上、実施例により本発明で用いるフォトマスクブランクおよびこれを用いたフォトマスクの製造方法について説明したが、上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内にあり、更に本発明の範囲内において他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
本発明では、フォトマスクブランクの層構造、フォトマスクパターンを形成する際のマスクとして用いられるフォトレジスト(レジストマスク)の厚み、および、フォトマスクブランクが備える反射防止層および遮光層をドライエッチングする際のガス条件のそれぞれを適切な範囲で選択したので、微細なフォトマスクパターンを高精度で形成することが可能なフォトマスクの製造方法が提供される。
11 フォトマスク基板
12 遮光層
13 反射防止層
14 バッファ層
15 エッチングストッパ層
16 位相シフト層
17、17a レジスト膜
12 遮光層
13 反射防止層
14 バッファ層
15 エッチングストッパ層
16 位相シフト層
17、17a レジスト膜
Claims (20)
- 酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)では実質的なエッチングがされず且つ酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)およびフッ素系ドライエッチング(F系)でエッチングが可能な金属膜の遮光層の上に、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)あるいはフッ素系ドライエッチング(F系)の少なくとも一方でエッチングが可能な金属化合物膜の反射防止層が積層されて設けられたフォトマスクブランクを加工してフォトマスクを製造する方法であって、
前記反射防止層の主面上にパターン形成されたレジストマスクを用いて該反射防止層を(Cl+O)系ドライエッチングしてパターニングする第1のステップと、
該パターニングされた反射防止層をハードマスクとして前記遮光層をF系ドライエッチングしてパターニングする第2のステップと、を備え、
前記レジストマスクの厚みが75nm以上350nm以下であることを特徴とするフォトマスクの製造方法。 - 酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)では実質的なエッチングがされず且つ酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)およびフッ素系ドライエッチング(F系)でエッチングが可能な金属膜の遮光層の上に、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)あるいはフッ素系ドライエッチング(F系)の少なくとも一方でエッチングが可能な金属化合物膜の反射防止層が積層されて設けられたフォトマスクブランクを加工してフォトマスクを製造する方法であって、
前記反射防止層の主面上にパターン形成されたレジストマスクを用いて該反射防止層をF系ドライエッチングしてパターニングする第1のステップと、
該パターニングされた反射防止層をハードマスクとして前記遮光層をCl系ドライエッチングしてパターニングする第2のステップと、を備え、
前記レジストマスクの厚みが75nm以上350nm以下であることを特徴とするフォトマスクの製造方法。 - 酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)では実質的なエッチングがされず且つ酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)およびフッ素系ドライエッチング(F系)でエッチングが可能な金属膜の遮光層の上に、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)あるいはフッ素系ドライエッチング(F系)の少なくとも一方でエッチングが可能な金属化合物膜の反射防止層が積層されて設けられたフォトマスクブランクを加工してフォトマスクを製造する方法であって、
前記反射防止層の主面上にパターン形成されたレジストマスクを用いて該反射防止層と前記遮光層とを連続してF系ドライエッチングしてパターニングするステップを備え、
前記レジストマスクの厚みが75nm以上350nm以下であることを特徴とするフォトマスクの製造方法。 - 前記レジストマスクの厚みは、100nm以上250nm以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記レジストマスクを除去した後に、前記パターニングされた反射防止層上にパターン形成された第2のレジストマスクを新たに設けるステップと、
該第2のレジストマスクを用いて前記反射防止層と前記遮光層とをドライエッチングしてパターニングするステップと、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。 - 前記金属膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)から選択された少なくとも1種の金属元素を主成分とする金属もしくは合金であること請求項1乃至5の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記遮光層は、複数の金属膜を積層させて構成されている請求項1乃至6の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記遮光膜の露光光波長に対する光学濃度ODは、2以上である請求項1乃至7の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記遮光膜の膜厚は、15nm以上50nm以下である請求項1乃至8の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記反射防止膜は、露光光波長に対する消衰係数kが0.2以上1.0以下である請求項1乃至9の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記反射防止層は、クロム系化合物の膜もしくは珪素系化合物の膜の少なくとも一方の膜を含んでいる請求項1乃至10の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記クロム系化合物は、クロム酸化物、クロム窒化物、もしくはクロム酸窒化物を主成分とする化合物である請求項11に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記クロム系化合物は、クロム(Cr)が30〜85原子%、酸素(O)が0〜60原子%、窒素(N)が0〜50原子%、炭素(C)が0〜20原子%の範囲の組成を有するものである請求項12に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記珪素系化合物は、珪素酸化物、珪素窒化物、もしくは珪素酸窒化物を主成分とする化合物である請求項11に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記珪素系化合物は、珪素(Si)が10〜57原子%、酸素(O)が0〜60原子%、窒素(N)が0〜57原子%、炭素(C)が0〜30原子%の範囲の組成を有するものである請求項14に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記珪素系化合物には、遷移金属の酸化物、窒化物、もしくは珪素酸窒化物が含有されていることを特徴とする請求項14または15に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記遷移金属は、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、およびニオブ(Nb)のうちから選択されたものである請求項16に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記珪素系化合物中の前記遷移金属の濃度は、0.2〜25原子%の範囲である請求項17に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記反射防止層は、相互に異なる組成の化合物膜が積層されて構成されていることを特徴とする請求項1乃至18の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
- 前記反射防止層の厚みは、15nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項1乃至19の何れか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
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