以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。なお、以下の説明では、排熱回収機関としてスターリングエンジンを用い、熱機関である内燃機関の排ガスから熱エネルギーを回収する場合を例とする。なお、排熱回収機関としては、スターリングエンジンの他、ブレイトンサイクルを利用した排熱回収装置等を用いることができる。また、熱機関の種類は問わない。
本実施形態は、次の点に特徴がある。すなわち、シリンダの内部に配置されて往復運動するピストンの内部に設けられる空間からピストンとシリンダとの間に気体を吹き出すことにより気体軸受(静圧気体軸受)を形成する排熱回収機関において、ピストンとシリンダとが接触したか否かを判定する接触判定手段が、ピストンとシリンダとが非接触になったと判定した後に排熱回収機関の起動を開始する。そして、排熱回収機関が停止した後、すなわち、ピストンの往復運動が停止した後に、ピストンの内部空間への気体の供給を停止する。まず、本実施形態に係る排熱回収手段の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係るスターリングエンジンを用いた排熱回収装置の構成例を示す全体図である。本実施形態に係る排熱回収装置100は、排熱回収機関と、排熱を回収する対象である熱機関の出力軸と排熱回収手段の出力軸との間に設けられて、両者を断続する動力断続手段とを含んで構成される。この実施形態においては、排熱回収機関として、スターリングエンジン1を用い、また、熱機関としてはレシプロ式の内燃機関101を用いる。そして、動力断続手段としては、クラッチ60を用いる。
スターリングエンジン1が備えるヒータ2Hは、内燃機関101の排気通路42内に配置される。スターリングエンジン1が備えるヒータ2Hは、排気通路42に設けられる中空のヒータケース105内に設けられる。ヒータケース105の入口(ヒータ入口)105i側には、ヒータ2Hに流入する排ガスExの温度を測定する排ガス温度計28が設けられる。また、ヒータ2Hの出口(ヒータ出口)105o側には、ヒータ2Hの温度を測定するヒータ温度計29が設けられる。
この実施形態において、スターリングエンジン1を用いて回収した排ガスExの熱エネルギーは、スターリングエンジン1で運動エネルギーに変換される。スターリングエンジン1の出力軸であるクランク軸9には、動力断続手段であるクラッチ60が取り付けられており、スターリングエンジン1の動力はクラッチ60を介して排熱回収機関用変速機65に伝達される。内燃機関101の出力軸101sは、内燃機関用変速機64に入力される。そして、内燃機関用変速機64は、内燃機関101の発生する動力と、排熱回収機関用変速機65から出力されるスターリングエンジン1の動力とを合成して、出力軸67に出力する。
上記クラッチ60は、内燃機関用変速機64と排熱回収機関用変速機65とを介して、内燃機関101の出力軸101sと、スターリングエンジン1の出力軸であるクランク軸9との間に設けられる。そして、必要に応じて、内燃機関101の出力軸101sとスターリングエンジン1のクランク軸9の機械的な接続を断続する。クラッチ60は、この実施形態に係る排熱回収装置の運転制御装置30によって制御される。なお、後述するように、この実施形態において、運転制御装置30は、機関ECU(Electronic Control Unit)50の内部に備えられる。ここで、排熱回収機関用変速機65は、入力軸65sに対する出力軸の変速比を変更できるように構成される。スターリングエンジン1の回転数は急激に変化させることが難しいが、前記変速比を変更できるようにして、内燃機関101の機関回転数の広い範囲で、スターリングエンジン1の動力と内燃機関101の動力とを合成できる。次に、本実施形態に係るピストン装置であるスターリングエンジン1の詳細な構成を説明する。
図2は、本実施形態に係る排熱回収機関であるスターリングエンジンを示す断面図である。図3は、図2に示すスターリングエンジンのピストンとシリンダとの構成を示す説明図である。図4は、図3のY−Y矢視図である。図5は、近似直線機構によりピストンを支持する構成例を示す模式図である。本実施形態に係る排熱回収手段のスターリングエンジン1は、いわゆるα型のスターリングエンジンである。
このスターリングエンジン1は、高温側シリンダ11Aと、この内部に収められて往復運動する高温側ピストン10Aと、低温側シリンダ11Bと、この内部に収められて往復運動する低温側ピストン10Bとを備える。なお、以下の説明において、高温側と低温側とを特に区別する必要がない場合には、高温側ピストン10A及び低温側ピストン10Bを単にピストン10といい、高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bを単にシリンダ11という。
高温側シリンダ11Aと低温側シリンダ11Bとは、熱交換器2によって接続される。高温側シリンダ11Aと低温側シリンダ11Bとには作動流体(本実施形態では空気)が封入されており、ヒータ2Hから供給される熱によってスターリングエンジン1が駆動される。高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bは、ともにスターリングエンジン1のシリンダケース6内に格納されている。シリンダケース6は、基準体である基板5及びクランクケース8に取り付けられる。ここで、基板5、シリンダケース6及びクランクケース8が、スターリングエンジン1の筺体を構成する。なお、少なくともクランクケース8は、金属等の導電体で構成される。スターリングエンジン1の筺体は、スターリングエンジン1の構成要素、例えば、ピストン10やシリンダ11、伝達部材12、コンロッド13、クランク軸9等を格納する。
基板5は、スターリングエンジン1を構成する高温側ピストン10Aや高温側シリンダ11Aその他の構成要素の位置基準となる。このように構成することで、前記構成要素の相対的な位置精度を確保できる。また、スターリングエンジン1を排熱回収対象である内燃機関101の排気通路42(図1参照)等へ取り付けるときの基準として、この基板5を使用することもできる。
高温側シリンダ11Aは、高温側の絶縁体(以下高温側絶縁体)16Aを介して筺体を構成する基板5とクランクケース8とに挟持され、支持される。また、低温側シリンダ11Bは、クランクケース8側に配置される低温側の絶縁体(以下低温側絶縁体)16Bとクーラー2C側に配置される低温側絶縁体16Bとによって挟持される。クーラー2Cは基板5に取り付けられるので、低温側シリンダ11Bは、低温側絶縁体16Bを介して筺体を構成する基板5とクランクケース8とに挟持され、支持されることになる。このように、本実施形態に係るスターリングエンジン1では、高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bは、スターリングエンジン1の筺体内に配置されるとともに、絶縁体を介して前記筺体内に支持される。
高温側ピストン10Aの往復運動は、高温側ピストン10Aに設けられる高温側伝達部材12A、高温側コンロッド13Aを介して、クランク軸9へ伝達される。また、低温側ピストン10Bの往復運動は、低温側ピストン10Bに設けられる低温側伝達部材12B、低温側コンロッド13Bを介して、クランクケース8内に格納されるクランク軸9へ伝達される。ここで、低温側ピストン10Bは、高温側ピストン10Aに対して、クランク角で90°程度の位相差が設けられている。ここで、高温側伝達部材12Aと低温側伝達部材12Bとを区別しない場合には伝達部材12といい、高温側コンロッド13Aと低温側コンロッド13Bとを区別しない場合にはコンロッド13という。
高温側シリンダ11Aと低温側シリンダ11Bとを接続する熱交換器2は、ヒータ2Hと再生器2Rとクーラー2Cとで構成される。ヒータ2Hの一端は、高温側ヒータ接続部材3によって高温側シリンダ11Aに接続され、他端は低温側ヒータ接続部材4によって再生器2Rに接続される。再生器2Rは、一端がヒータ2Hに接続され他端はクーラー2Cに接続される。クーラー2Cの一端は再生器2Rに接続され、他端は低温側シリンダ11Bに接続される。高温側ヒータ接続部材3及び低温側ヒータ接続部材4は、それぞれ基板5に取り付けられる。また、高温側ヒータ接続部材3は、ヒータ2Hと高温側シリンダ11Aとを接続するとともに、スターリングエンジン1の運転中には内部に高温側ピストン10Aが入り込む。すなわち、高温側ヒータ接続部材3は、高温側シリンダの一部を構成する。
本実施形態に係るスターリングエンジン1は、例えば車両において、上述したように、ガソリンエンジンのような内燃機関101とともに用いられて、内燃機関101の排ガスExを熱源として駆動される。この場合、スターリングエンジン1のヒータ2Hは、車両に搭載される内燃機関の排気通路42の内部に配置される。そして、内燃機関の排気ガスから回収した熱エネルギーにより作動流体が加熱されて、スターリングエンジン1が作動する。なお、排気通路42の内部には、スターリングエンジン1の再生器2Rを配置してもよい。
上述したように、本実施形態に係るスターリングエンジン1は、排気通路42の内部にヒータ2Hが収容される。このように、このスターリングエンジン1は、車両内の限られたスペースに設置されるため、装置全体がコンパクトである方が設置の自由度が増し、好ましい。そのために、このスターリングエンジン1では、高温側及び低温側シリンダ11A、11Bを、V字形ではなく、直列に配置した構成を採用している。
図3、図4に示すように、高温側ピストン10Aと低温側ピストン10Bとは、それぞれ気体軸受GBを介して高温側シリンダ11Aと低温側シリンダ11B内に浮いた状態で支持されている。すなわち、ピストンリングを使用せず、また潤滑油も使用しないで、ピストン10をシリンダ11内で往復運動させる構造である。これによって、ピストン10とシリンダ11との摩擦を低減して、スターリングエンジン1の熱効率を向上させることができる。また、ピストン10とシリンダ11との摩擦を低減することにより、内燃機関の排熱回収のような低温度差の運転条件下においても、スターリングエンジン1による排熱回収効率の低下を抑制できる。
高温側ピストン10A、低温側ピストン10Bの往復運動は、それぞれ高温側コンロッド13A及び低温側コンロッド13Bによってクランク軸9に伝達され、ここで回転運動に変換される。本実施形態において、スターリングエンジン1の筐体の内部、より具体的にはクランクケース8の内部が、クランクケース内加圧手段であるクランクケース加圧用ポンプ61により加圧される。これによって、高温側及び低温側シリンダ11A、11B、及びヒータ2H内の作動流体(本実施形態では空気)を加圧して、スターリングエンジン1からより多くの出力を取り出すことができる。
クランクケース加圧用ポンプ61とクランクケース8の内部とは、クランクケース用気体供給配管63によって接続されている。クランクケース加圧用ポンプ61から吐出された気体(スターリングエンジン1の作動流体であり、本実施形態では空気)は、クランクケース用気体供給配管63に設けられるクランクケース加圧用開閉弁62を通ってクランクケース8の内部へ供給される。また、クランクケース8内の圧力は、クランクケース用圧力センサ26により検出される。ここで、クランクケース加圧用ポンプ61及びクランクケース加圧用開閉弁62の動作は、ECU(Electronic Control Unit)50及びECU50が備える運転制御装置30によって制御される。
ここで、高温側及び低温側ピストン10A、10Bの往復運動は、図5に示すように、例えばグラスホッパ機構のような近似直線機構を介して、クランク軸9に伝達してもよい。このようにすれば、高温側及び高温側ピストン10A、10Bのサイドフォース(ピストンの径方向に向かう力)Fをほとんど0にできるので、負荷能力の小さい気体軸受GBを用いても、十分に高温側及び低温側ピストン10A、10Bを支持することができる。
図5に示す近似直線機構110は、グラスホッパ機構を利用している。図5に示すように、実施例1の本発明に係る近似直線機構110は、第1腕110Aと、第2腕110Bと、第3腕110Cとで構成される。第2腕110Bは、一端部が伝達部材12の端部と回動自在に連結され(連結点B)、他端部が第3腕110Cの一端部へ回動自在に連結される(連結点A)。第2腕110Bに連結されていない第3腕110Cの端部は、静止系(例えばクランクケース8)へ回動自在に連結される(連結点C)。第1腕の一端部は、静止系(例えばクランクケース8)へ回動自在に連結され、他端部は、第2腕110Bの両端部の間へ回動自在に連結される(連結点M)。このとき、連結点Bと連結点Mとの距離BM、連結点Mと連結点Qとの距離MQ、連結点Aと連結点Mとの距離AMは、式(1)の関係を満たすように設定する。このような構成の近似直線機構によってピストン10を支持することにより、ピストン10をほぼ直線に運動させることができる。
BM×MQ=AM2・・・(1)
気体軸受GBを形成するにあたり、本実施形態においてはスターリングエンジン1の作動流体に空気を用い、ピストン10とシリンダ11との間に前記空気を介在させ、気体軸受GBの機能を発揮させる。なお、シリンダ11の内面11Iに固体潤滑材を付してもよい。これによって、ピストン10とシリンダ11との摺動抵抗をさらに低減させることができる。
気体軸受GBを構成するために、図3、図4に示すピストン10とシリンダ11との間隔sは、ピストン10及びシリンダ11の全周にわたって数十μmとする(本実施形態では約10μm〜20μm)。図3に示すように、本実施形態において、ピストン10は、作動流体の圧力を受けるピストンの頂部(以下ピストン頂部という)10Tと、シリンダ11の内面11Iと対向するピストンの側部(以下ピストン側部という)10Sと、ピストンの頂部(以下ピストン頂部という)10Tと対向する位置に設けられるピストン底部10Boとで構成される。そして、ピストン頂部10Tと、ピストン側部10Sと、ピストン底部10Boとで囲まれる空間(以下ピストン内空間という)10INに、気体軸受GBを形成するための気体Gが供給される。
ピストン底部10Boには、ピストン内空間10INとピストン10の外部とを連通する気体通路21が設けられる。気体通路21には、気体軸受用気体供給配管22が接続されており、蓄圧タンク24から空気が供給される。気体通路21は、気体軸受用気体供給配管22と接続されており、気体軸受用気体供給配管22及び気体通路21を介して、蓄圧タンク24からピストン内空間10INへ気体Gが供給される。
図3、図4に示すように、ピストン側部10Sには、給気口20が設けられる。給気口20は、ピストン側部10Sの周方向に向かって複数設けられる。また、給気口20は、ピストン10が往復運動する方向と垂直な方向に向かって複数設けられる。なお、給気口20の数や配置位置は、スターリングエンジン1の仕様等によって適宜変更できる。蓄圧タンク24からピストン内空間10INへ供給された気体Gは、給気口20からピストン10とシリンダ11との間に流出して、ピストン10とシリンダ11との間に気体軸受GBを形成する。
次に、図2を用いて、気体軸受GBを形成するための空気をピストン10へ供給する構成を説明する。気体軸受GBを形成するための気体供給手段は、蓄圧タンク24と、蓄圧タンク24へ気体を供給する気体軸受用ポンプ25とを含んで構成される。気体軸受用ポンプ25から吐出された気体Gは、一旦蓄圧タンク24へ供給されてから、気体軸受用気体供給配管22及び気体通路21を介してピストン内空間10INへ供給される。蓄圧タンク24に気体Gを蓄えてからピストン内空間10INへ供給することにより、気体軸受用ポンプ25の脈動等を抑制して、安定してピストン内空間10INへ気体Gを供給できるので、気体軸受GBを安定して形成することができる。なお、気体供給手段としては、気体軸受用ポンプ25の他、圧縮機を用いてもよい。本実施形態において、気体軸受用ポンプ25の動作は、ECU50及びECU50が備える運転制御装置30によって制御される。
ここで、気体供給手段は、気体軸受GBを形成するために、ピストン10とシリンダ11との間に介在する気体の圧力(静圧)を変更できるものであればよい。すなわち、気体供給手段は、気体軸受GBを形成するため、ピストン内空間10INへ供給される気体(本実施形態では空気)の圧力を変更できるものであればよく、本実施形態に係る構成に限定されるものではない。気体供給手段は、例えば、吐出する気体の圧力を変更できる圧縮機やポンプのような加圧手段を用いてもよいし、ポンプのような加圧手段から吐出される気体の圧力を、例えば、圧力調整弁のような圧力調整手段によって変更するように構成してもよい。さらに、蓄圧タンク24に蓄えられた気体の圧力を圧力調整弁で調整してから、ピストン内空間10INへ供給するようにして、気体供給手段を構成してもよい。
蓄圧タンク24には、蓄圧タンク24内に蓄えられる空気の圧力を測定するための気体軸受用圧力センサ27が取り付けられ、気体軸受用圧力センサ27によって検出された前記圧力を、運転制御装置30が取得する。気体軸受GBの運転制御装置30は、気体軸受用圧力センサ27から取得した蓄圧タンク24内に蓄えられる空気の圧力に基づき、前記圧力が設定した値になるように、気体軸受用ポンプ25の運転を制御する。
図2に示すように、蓄圧タンク24と高温側ピストン10Aとは高温側気体軸受用気体供給配管22Aで接続されており、また、蓄圧タンク24と低温側ピストン10Bとは低温側気体軸受用気体供給配管22Bで接続されている。蓄圧タンク24と高温側ピストン10A及び低温側ピストン10Bとの間には、気体軸受用開閉弁23が配置される。なお、高温側気体軸受用気体供給配管22Aと低温側気体軸受用気体供給配管22Bとを特に区別しない場合には、単に気体軸受用気体供給配管22という。
気体軸受用開閉弁23の動作は、機関ECU50及び運転制御装置30により制御される。例えば、スターリングエンジン1が停止している場合には、気体軸受用開閉弁23を閉じて蓄圧タンク24内に蓄えられる空気の消費を抑制する。なお、本実施形態では、気体軸受用気体供給配管22を介してピストン10へ空気を供給し、ピストン10とシリンダ11との間に気体軸受GBを形成するが、クランク軸9やコンロッド13等を中空とし、ピストン10へ空気を供給してもよい。
上述したように、蓄圧タンク24内に蓄えられる気体(空気)は、ピストン10(すなわち高温側ピストン10A及び低温側ピストン10B)内へ供給される。このため、蓄圧タンク24内に蓄えられる空気の圧力を変更することによって、ピストン10へ供給される空気の圧力を変更することができる。例えば、ピストン10へ供給される空気の圧力を現状よりも高くしたい場合、運転制御装置30が、蓄圧タンク24内に蓄えられる空気の圧力の設定値を要求された値に変更し、この値になるように加圧手段である気体軸受用ポンプ25を駆動して、蓄圧タンク24内に蓄えられる空気の圧力を上昇させる。
ピストン10へ供給される空気の圧力を現状よりも低くしたい場合、運転制御装置30によって制御される圧力解放手段(例えばリリーフ弁)を蓄圧タンク24に設け、蓄圧タンク24内に蓄えられる空気の圧力を解放してもよい。しかし、本実施形態においては、スターリングエンジン1の運転中においては、常に気体軸受GBを構成するために蓄圧タンク24からピストン10へ気体を供給するので、蓄圧タンク24内に蓄えられる空気の圧力の設定値を要求される値に変更した上で、要求される圧力まで蓄圧タンク24内に蓄えられる空気の圧力が低下するまで、蓄圧タンク24内の空気をピストン10に供給し続けるように構成することが好ましい。
また、気体軸受用開閉弁23の代わりに、圧力調整機能を有する圧力調節弁を、蓄圧タンク24と高温側ピストン10A及び低温側ピストン10Bとの間へ配置してもよい。これによって、ピストン10へ供給される空気の圧力をより精密に制御することができる。また、圧力調節弁でピストン10へ供給する空気の圧力を調整するようにすれば、気体軸受用ポンプ25から供給される気体の圧力を直接調整することもできる。
本実施形態に係るスターリングエンジン1は、気体軸受GBを介してシリンダ11内にピストン10を浮上させ、これを往復運動させる。上述したように、図3、図4に示すピストン10とシリンダ11との間隔sは、ピストン10の全周にわたって約10μm〜20μm程度と極めて小さい。したがって、ピストン10の変位を計測することによりピストン10がシリンダ11内に浮上したか、又はピストン10とシリンダ11とが接触したかを判定することは困難である。
このため、本実施形態に係るスターリングエンジン1では、ピストン側部10Sとシリンダ11の内面11Iとの間に一定の大きさの電位差を与える。そして、ピストン側部10Sとシリンダ11の内面11Iとの間に電気の導通があった場合には、ピストン側部10Sとシリンダ11の内面11Iとの間に与えられた一定の大きさの電位差が変化すること、具体的には前記電位差が小さくなることを利用して、ピストン10の浮上、又はピストン10とシリンダ11との接触を判定する。次に、ピストン10の浮上、又はピストン10とシリンダ11との接触を判定するための構成について説明する。
図2に示す、本実施形態に係るスターリングエンジン1は、高温側ピストン10A、低温側ピストン10B、高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bが、いずれも導電体で構成される。導電体としては、例えばアルミニウムや銅、あるいは鉄等の金属材料を用いることができる。これによって、ピストン10のピストン側部10S、及びピストン10のピストン側部10Sに対向するシリンダ11の内面11Iは、少なくとも導電体で構成される。
高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bには、それぞれ第1接触判定回路40A、第2接触判定回路40Bが接続される。本実施形態において、第1接触判定回路40A及び第2接触判定回路40Bは抵抗と電圧を利用しており、図2に示すように、抵抗18と電源19とがシリンダ11に直列に接続される。
高温側ピストン10Aに取り付けられる高温側伝達部材12Aと高温側コンロッド13Aとの摺動部には、第1軸受14Aが設けられており、第1軸受14Aを介して高温側伝達部材12Aと高温側コンロッド13Aとが連結される。また、高温側コンロッド13Aとクランク軸9との摺動部には第2軸受15Aが設けられており、第2軸受15Aを介して高温側コンロッド13Aとクランク軸9とが連結される。
低温側ピストン10Bに取り付けられる低温側伝達部材12Bと低温側コンロッド13Bとの摺動部には、第1軸受14Bが設けられており、第1軸受14Bを介して低温側伝達部材12Bと低温側コンロッド13Bとが連結される。また、低温側コンロッド13Bとクランク軸9との摺動部には第2軸受15Bが設けられており、第2軸受15Bを介して低温側コンロッド13Bとクランク軸9とが連結される。
高温側伝達部材12A、高温側コンロッド13A、低温側伝達部材12B、低温側コンロッド13B、クランク軸9、第1軸受14A、14B、第2軸受15A、15B及びクランク軸受7は、いずれも金属等の導電体で構成される。また、上述したように、クランクケース8も金属等の導電体で構成される。そして、クランク軸9は、クランク軸受7を介してクランクケース8へ回転可能に支持される。
このような構成により、高温側及び低温側ピストン10A、10Bとクランクケース8とは、高温側伝達部材12A、第1軸受14A、高温側コンロッド13A、第2軸受15A、クランク軸9、クランク軸受7を介して、例えばこれらの金属接触を利用することにより、電気的に接続される。これによって、簡易な構成で確実に高温側及び低温側ピストン10A、10Bと筺体を構成するクランクケース8との導通を確保することができる。
このような構成により、ピストン10(高温側ピストン10A及び低温側ピストン10B)とシリンダ11(高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11B)とが接触していない場合、ピストン10の側部の電位は、シリンダ11の内面の電位よりも高くなる。電源19の電圧及び抵抗18の大きさは一定なので、ピストン10の側部と、シリンダ11の内面との間には、一定の電位差が与えられる。
図6は、電圧測定点の電圧変化を示す説明図である。ピストン10とシリンダ11との浮上又は接触を判定するときには、第1接触判定回路40Aの電圧測定点Pmにおける電圧、第2接触判定回路40Bの電圧測定点Pmにおける電圧を、それぞれ第1電圧測定器17A、第2電圧測定器17Bで測定する。ここで、第1接触判定回路40A及び第1電圧測定器17A、第2接触判定回路40B及び第2電圧測定器17Bが、後述する運転制御装置30が備える接触判定部32(図7参照)とともに、それぞれ高温側、低温側における接触判定手段として機能する。すなわち、本実施形態において、ピストン10とシリンダ11とが接触したか否かを判定する接触判定手段は、第1接触判定回路40A及び第1電圧測定器17A(あるいは第2接触判定回路40B及び第2電圧測定器17B)と、運転制御装置30が備える接触判定部32とを含んで構成される。ここで、第1電圧測定器17Aと第2電圧測定器17Bとを区別する必要がない場合には、単に電圧測定器17という。また、以下において、第1接触判定回路40Aの電圧測定点Pmを高温側電圧測定点といい、第2接触判定回路40Bの電圧測定点Pmを低温側電圧測定点という。
ここで、クランクケース8は、アースに接続される。これによって、接触判定手段を構成する第1及び第2電圧測定器17A、17Bは、筺体を構成するクランクケース8とシリンダ11の内面との間で、ピストン10の側周面とシリンダ11の内面との間の電気の導通を判定する。この構成によれば、クランクケース8とシリンダ11との電位差を測定すればよいので、ピストン10のような動作している部材をアースする場合と比較して、簡単かつ容易に構成できるとともに、電圧を安定して測定することができる。ここで、電圧測定点Pmの電圧が、ピストン10とシリンダとの間の電位差に相当する。
ピストン10がシリンダ11から浮上している場合、電圧測定点Pmの電圧はV1となる。ピストン10がシリンダ11に接触すると、電圧測定点Pmの電圧はアースと等しくなるので、0となる。これによって、ピストン10とシリンダ11との接触、浮上を確実に判定することができる。なお、本実施形態では、第1電圧測定器17A及び第2電圧測定器17Bを用いてピストン10とシリンダ11との接触、浮上を判定するが、一つの電圧測定器をリレー等で切り替えて、高温側と低温側とでピストン10とシリンダ11との接触、浮上を判定してもよい。
ピストン10がシリンダ11から浮上している場合、すなわち、電圧測定点Pmの電圧がVfである場合には、ピストン10がシリンダ11から完全に浮上しているので、スターリングエンジン1の運転を継続する。ここで、ピストン10がシリンダ11から完全に浮上したときの電圧Vfを、ピストン浮上時電圧という。ピストン10とシリンダ11とが完全に接触すると、電圧測定点Pmの電圧が0になる。あるいは、ピストン10に供給する空気の圧力を現状よりも高くすることによって、シリンダ11からピストン10を浮上させる。これにより、ピストン10とシリンダ11との接触を回避して、スターリングエンジン1の運転を継続することができる。
ピストン10に供給する空気の圧力を現状よりも高くしたにもかかわらず、電圧測定点Pmの電圧が0を示し続ける場合には、何らかの原因でピストン10がシリンダ11から浮上できなくなったと考えられるので、スターリングエンジン1の運転を中止する。これにより、ピストン10やシリンダ11の摩耗の進行を抑制したり、スターリングエンジン1の破損を抑えたりすることができる。
ピストン10やシリンダ11の表面は、完全に平滑ではなく、ある程度の表面粗さを有している。このため、例えば、ピストン10に供給される空気の圧力が低下した場合、微視的に見た場合にはピストン10とシリンダ11との間隔sが接近して接触を開始している場合がある。このような場合、電圧測定点Pmの電圧は、0とV1との間の電圧を示す。したがって、電圧測定点Pmの電圧が0とV1との間の電圧を示す場合、ピストン10とシリンダ11とが接触をし始めた状態であると判断できる。本実施形態では、電圧測定点Pmの電圧がVcである場合には、ピストン10とシリンダ11とが接触し始めたと判定する。ここで0<Vc<Vfであり、Vcを接触判定電圧とする。そして、例えば、ピストン10に供給する空気の圧力を現状よりも高くすることによって、シリンダ11からピストン10を浮上させる。これにより、ピストン10とシリンダ11との接触を回避して、スターリングエンジン1の運転を継続することができる。
この実施例に係るスターリングエンジン1では、高温側絶縁体16A及び低温側絶縁体16Bを介して、高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bを筺体内に取り付ける。これによって、簡易な構造で、高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11B以外の部分に対する電気の導通が防止される。その結果、簡易な構造で、確実にピストン10とシリンダ11との導通を検出して、両者の接触、浮上を判定できる。また、高温側シリンダ11Aには第1接触判定回路40Aを接続し、低温側シリンダ11Bには第2接触判定回路40Bを接続するので、シリンダ毎にピストンの接触、浮上を判定できる。
ここで、高温側シリンダ11Aは高温側絶縁体16Aを介して、低温側シリンダ11Bは低温側絶縁体16Bを介してスターリングエンジン1の筺体に取り付けられる。このとき、高温側絶縁体16A及び低温側絶縁体16Bには、断熱材又は作動流体のシール材の少なくとも一方の機能を兼用させてもよい。このようにすれば、断熱材やシール材を別個に用意する必要はないので、スターリングエンジン1の構成を簡略化できるとともに、製造コストを低減できる。高温側絶縁体16A及び低温側絶縁体16Bとしては、例えば、ゴムや樹脂等の材料や、非導電体のガスケット等を用いることができる。ここで、高温側絶縁体16Aは、より耐熱性に優れる材料を用いることが好ましい。
この実施例に係るスターリングエンジン1は、筺体とは別の構造体として高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bを用意し、高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bを筺体内に取り付ける。これによって、高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bの組み付け精度を高くすることができるので、ピストン10とシリンダ11との間に形成される気体軸受用の微小な間隔s(図3、図4)を、確実に設定することができる。
そして、このスターリングエンジン1では、筺体とは別の構造体として高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bを用意するので、筺体とシリンダとを絶縁するためには、高温側シリンダ11A及び低温側シリンダ11Bと筺体との間に高温側絶縁体16A及び低温側絶縁体16Bを配置するだけでよい。これによって、筺体とシリンダとを絶縁するための新たな構成が不要になる。その結果、クランクケース8等の加工や設計変更等が不要になるか、加工等が必要である場合でも簡易な加工等で済む。次に、本実施形態に係るスターリングエンジン1の起動、停止を制御するための運転制御装置30について説明する。
図7は、本実施形態に係る排熱回収装置の運転制御に用いる運転制御装置の構成を示す説明図である。図7に示すように、本実施形態に係る運転制御装置30は、機関ECU50に組み込まれて構成されている。機関ECU50は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)51と、記憶部52と、入力ポート55及び出力ポート56と、入力インターフェース57及び出力インターフェース58とから構成される。
なお、機関ECU50とは別個に、本実施形態に係る運転制御装置30を用意し、これを機関ECU50に接続してもよい。そして、本実施形態に係る運転制御を実現するにあたっては、機関ECU50が備える、スターリングエンジン1等に対する制御機能を、運転制御装置30が利用できるように構成してもよい。
運転制御装置30は、制御条件判定部31と、接触判定部32と、加圧制御部33と動作制御部34とを含んで構成される。これらが、本実施形態に係る運転制御を実行する部分となる。本実施形態において、運転制御装置30は、機関ECU50を構成するCPU51の一部として構成される。また、CPU51には、内燃機関制御部53が備えられており、これによって内燃機関101の運転を制御する。
CPU51と記憶部52とは、バス54cを介して接続される。また、運転制御装置30と内燃機関制御部53とは、バス54a、54b及び入力ポート55及び出力ポート56を介して接続される。これにより、運転制御装置30を構成する制御条件判定部31と接触判定部32と加圧制御部33と動作制御部34とは、相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成される。また、運転制御装置30は、機関ECU50が有する内燃機関101やスターリングエンジン1等の運転制御データを取得し、これを利用することができる。また、運転制御装置30は、本実施形態に係る運転制御を機関ECU50が予め備えている運転制御ルーチンに割り込ませたりすることができる。
入力ポート55には、入力インターフェース57が接続されている。入力インターフェース57には、電圧測定器17、クランクケース用圧力センサ26、気体軸受用圧力センサ27、排ガス温度計28、ヒータ温度計29、スターリングエンジン用回転数センサ45といった、運転制御に必要な情報を取得するセンサ類が接続されている。これらのセンサ類から出力される信号は、入力インターフェース57内のA/Dコンバータ57aやディジタル入力バッファ57dにより、CPU51が利用できる信号に変換されて入力ポート55へ送られる。これにより、CPU51は、内燃機関101の運転制御や、運転制御に必要な情報を取得することができる。
出力ポート56には、出力インターフェース58が接続されている。出力インターフェース58には、運転制御に必要な制御対象が接続されている。本実施形態において、運転制御に必要な制御対象は、気体軸受用開閉弁23、気体軸受用ポンプ25、クラッチ60、クランクケース加圧用ポンプ61、クランクケース加圧用開閉弁62等である。出力インターフェース58は、制御回路581、582等を備えており、CPU51で演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記センサ類からの出力信号に基づき、機関ECU50のCPU51は、スターリングエンジン1や内燃機関101を制御することができる。
記憶部52には、本実施形態に係る運転制御の処理手順を含むコンピュータプログラムや制御マップ、あるいは本実施形態に係る運転制御に用いるためのデータマップ等が格納されている。ここで、記憶部52は、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、CPU51フェース既に記録されているコンピュータプログラムと組み合わせによって、本実施形態に係る運転制御の処理手順を実現できるものであってもよい。また、この運転制御装置30は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、制御条件判定部31、接触判定部32、加圧制御部33及び動作制御部34の機能を実現するものであってもよい。次に、本実施形態に係る運転制御を説明する。なお、本実施形態に係る運転制御は、上記運転制御装置30によって実現できる。まず、スターリングエンジン1の起動時における制御を説明する。
(起動時における制御)
図8は、スターリングエンジンの起動時における本実施形態に係る運転制御の制御手順を示すフローチャートである。図9は、スターリングエンジンの起動時における本実施形態に係る運転制御のタイミングチャートである。本実施形態に係る運転制御は、スターリングエンジン1のピストン内空間10INへ気体を供給して加圧し、ピストン10がシリンダ11から完全に浮上して、両者が非接触になってからスターリングエンジン1を起動する。
本実施形態に係る運転制御において、図1に示す内燃機関101は起動している。本実施形態に係る運転制御を実行するにあたり、ステップS101において、運転制御装置30の制御条件判定部31は、スターリングエンジン1が起動可能か否かを判定する。例えば、スターリングエンジン1が自立運転可能である場合には、スターリングエンジン1を起動できると判定する。この場合、例えば、ヒータ温度計29から取得したスターリングエンジン1が備えるヒータ2Hの温度が、予め定めた起動時の目標温度を超えている場合は、スターリングエンジン1が自立運転可能であると判定する。
ステップS101でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部31がスターリングエンジン1は起動できないと判定した場合、スターリングエンジン1を起動することはできない。このため、本実施形態に係る運転制御を終了し、スターリングエンジン1を起動することができるようになるまで待機する。ステップS101でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部31がスターリングエンジン1は起動できると判定した場合、ステップS102へ進む。
ステップS102において、運転制御装置30の加圧制御部33は、気体軸受用ポンプ25を駆動し、気体軸受用開閉弁23を開いて、ピストン10のピストン内空間10INへ気体Gを供給して、ピストン内空間10INを加圧する。ここで、ピストン内空間10INの加圧を開始した時点は、図9のt=0のときである。次に、ステップS103において、運転制御装置30の接触判定部32は、ピストン10とシリンダ11とが接触しているか否かを判定する。
ピストン10とシリンダ11との接触を判定するにあたり、接触判定部32は、第1電圧測定器17A及び第2電圧測定器17Bから、高温側電圧測定点Pmの電圧(高温側電圧)Vh及び低温側電圧測定点Pmの電圧(低温側電圧)Vlを取得する。そして、高温側電圧Vh及び低温側電圧Vlの両方がピストン浮上時電圧Vfを超えたか否かを判定する。高温側電圧Vh及び低温側電圧Vlの両方がピストン浮上時電圧Vfを超えている場合、高温側ピストン10Aと高温側シリンダ11Aとが非接触、かつ低温側ピストン10Bと低温側シリンダ11Bとが非接触であると判定できる。
また、ピストン10とシリンダ11との接触を判定するにあたっては、ピストン10とシリンダ11とが非接触になるときにおけるピストン内空間10INへ供給する気体の圧力(浮上時圧力)を予め求めておき、ピストン内空間10INへ供給する気体の圧力が浮上時圧力になったときにピストン10とシリンダ11とが非接触になったと判定してもよい。浮上時圧力は、例えば、スターリングエンジン1の負荷に応じて設定し、マップ化してECU50の記憶部52へ格納しておく。そして、ピストン10とシリンダ11との接触を判定する際に、接触判定部32が記憶部52へ格納したマップを読み出して、気体軸受用圧力センサ27から取得した圧力、すなわちピストン内空間10INへ供給する気体の圧力と比較する。
高温側電圧Vh又は低温側電圧Vlの少なくとも一方がピストン浮上時電圧Vfを超えていない場合(図9のt=0からt1までの間)、高温側ピストン10A又は低温側ピストン10Bの少なくとも一方は、高温側シリンダ11Aあるいは低温側シリンダ11Bに接触している。この場合、接触判定部32は、ピストン10とシリンダ11とが接触していると判定する。すなわち、ステップS103においてNoと判定される。
ステップS103でNoと判定された場合、加圧制御部33は、ピストン内空間10INの加圧を継続する。この場合、ピストン内空間10INの圧力を現時点よりも高くする。ここで、本実施形態においては、気体軸受用圧力センサ27によって測定される蓄圧タンク24内の圧力を、ピストン内空間10INにおける圧力PPであると推定する。加圧制御部33は、気体軸受用圧力センサ27から蓄圧タンク24内の圧力を取得し、この値をピストン内空間10INの圧力PPとする。そして、蓄圧タンク24内の圧力、すなわちピストン内空間の圧力PPが現時点よりも高くなるように、気体軸受用ポンプ25を制御する。
ステップS103でYesと判定された場合、すなわち、接触判定部32が、高温側電圧Vh及び低温側電圧Vlの両方がピストン浮上時電圧Vfを超えているため、ピストン10とシリンダ11とが接触していないと判定した場合、ステップS104へ進む。ここで、ピストン10とシリンダ11とが接触していないときのピストン内空間10INにおける圧力をPαとする。Pαを浮上時ピストン内圧力という。Pαは、クランクケース8内の規定圧力Pβよりも高い値であり、例えば、規定圧力Pβの1割程度高い値に設定する。ここで、クランクケース8内の規定圧力Pβは、スターリングエンジン1の仕様によって設定される値である。
ステップS104において、加圧制御部33は、スターリングエンジン1の運転中において、ピストン内空間10INにおける圧力の目標値(目標ピストン内圧力)PPTを浮上時ピストン内圧力Pαに設定し、ECU50の記憶部52へ格納する。そして、加圧制御部33は、スターリングエンジン1の運転中において、ピストン内空間10INにおける圧力PPが浮上時ピストン内圧力Pαになるように気体軸受用ポンプ25及び気体軸受用開閉弁23を制御する。
これによって、ピストン内空間10INにおける圧力PPが浮上時ピストン内圧力Pαを下回ったときに気体軸受用ポンプ25を駆動すればよいので、常に気体軸受用ポンプ25を駆動しなくとも、ピストン10とシリンダ11との接触を確実に回避することができる。これによって、気体軸受用ポンプ25の駆動時間を短くできるので、エネルギー消費を抑制でき、また、気体軸受用ポンプ25の耐久性低下を抑制できる。なお、ステップS104は、必ずしも実行する必要はなく、ピストン10とシリンダ11とが接触していない状態において常に気体軸受用ポンプ25を駆動して、ピストン内空間10INの加圧を継続してもよい。これによって、ピストン10とシリンダ11との接触をより確実に回避することができる。
次に、ステップS105において、運転制御装置30の動作制御部34は、スターリングエンジン1を起動する。スターリングエンジン1を起動するにあたり、動作制御部34は、図1に示す排熱回収装置100のクラッチ60を係合して、内燃機関101の動力を利用してスターリングエンジン1を起動する(図9のt=t1)。そして、スターリングエンジン1の機関回転数(SE回転数)Nseを、定格運転時における回転数(定格回転数)Nsecまで上昇させ、スターリングエンジン1によって内燃機関101の排ガスExの持つ熱エネルギーを回収してクランク軸9から運動エネルギーとして出力する。スターリングエンジン1の出力は、内燃機関用変速機64によって内燃機関101の出力と合成されて、内燃機関101の出力とともに出力軸67から取り出される。
このように、本実施形態に係る運転制御によれば、ピストン10がシリンダ11から完全に浮上して、両者が非接触となってからスターリングエンジン1を起動する。これによって、ピストン10が往復運動している場合において、ピストン10とシリンダ11との接触を回避することができる。その結果、ピストン10及びシリンダ11の摩耗を回避して、ピストン10及びシリンダ11の耐久性低下を抑制できる。次に、スターリングエンジン1の停止時における制御を説明する。
(停止時における制御)
図10は、スターリングエンジンの停止時における本実施形態に係る運転制御の制御手順を示すフローチャートである。図11は、スターリングエンジンの停止時における本実施形態に係る運転制御のタイミングチャートである。本実施形態に係る運転制御は、スターリングエンジン1が完全に停止して、ピストン10の往復運動が停止してから、ピストン内空間10INへの気体の供給を停止する。
本実施形態に係る運転制御を実行するにあたり、ステップS201において、加圧制御部33は、ピストン10のピストン内空間10INにおける圧力PPが、浮上時ピストン内圧力Pα以上になるように制御する。これによって、スターリングエンジン1が確実に停止するまで、ピストン10をシリンダ11から完全に浮上させて、両者の接触を確実に回避する。
ステップS202おいて、制御条件判定部31は、スターリングエンジン1が停止したか否か、すなわち、ピストン10の往復運動が停止したか否かを判定する。スターリングエンジン1が停止したか否かは、例えば、図2に示すスターリングエンジン用回転数センサ45により、クランク軸9が停止しているか否かで判定することができる。すなわち、SE回転数Nseが0である場合に、スターリングエンジン1が停止して、ピストン10の往復運動が停止したと判定できる。
ステップS202でNoと判定された場合、すなわち、Nse≧0(rpm)であり、スターリングエンジン1はまだ停止していないと制御条件判定部31が判定した場合、ピストン10はまだ往復運動をしているため、ピストン内空間10INへの加圧を停止することはできない。このため、ステップS201へ戻り、加圧制御部33は、ピストン10のピストン内空間10INにおける圧力PPが、浮上時ピストン内圧力Pα以上になるように制御する。これによって、スターリングエンジン1が確実に停止してピストンの往復運動が停止するまで、ピストン10をシリンダ11から完全に浮上させて、両者の接触を確実に回避する。ステップS202でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部31がスターリングエンジン1は停止したと判定した場合(図11のt=t3)、ステップS203へ進む。
ステップS203において、運転制御装置30の加圧制御部33は、気体軸受用ポンプ25を停止しピストン10のピストン内空間10INに対する気体Gの供給を停止して、ピストン内空間10INへの加圧を停止する。ピストン内空間10INへの加圧を停止すると、ピストン内空間10INの圧力PPは、クランクケース8内の規定圧力Pβまで徐々に低下する(図11のt=t4)。ピストン内空間10INの圧力PPの低下にともない、ピストン10とシリンダ11とは徐々に接触する。
このように、本実施形態に係る運転制御によれば、スターリングエンジン1が完全に停止してから、すなわち、ピストン10の往復運動が完全に停止してからピストン内空間10INへの加圧を停止する。その結果、ピストン10が往復運動している間は、ピストン10がシリンダ11から完全に浮上して、両者の非接触状態が維持されているので、ピストン10とシリンダ11との摺動による摩耗を回避して、ピストン10及びシリンダ11の耐久性低下を抑制できる。次に、スターリングエンジン1の起動時における制御の変形例を説明する。
(起動時における制御の変形例)
図12は、スターリングエンジンの起動時における本実施形態に係る運転制御の制御手順を示すフローチャートである。図13は、スターリングエンジンの起動時における本実施形態に係る運転制御のタイミングチャートである。本実施形態に係る運転制御は、スターリングエンジン1のピストン内空間10IN及びクランクケース8へ同時に気体を供給して加圧し、クランクケース8内の圧力が所定の圧力に到達したら、ピストン10とシリンダ11とが非接触になるまでピストン内空間10INの加圧を継続する。そして、ピストン10がシリンダ11から完全に浮上して、両者が非接触になってからスターリングエンジン1を起動する。
本実施形態に係る運転制御において、図1に示す内燃機関101は起動している。本実施形態に係る運転制御を実行するにあたり、ステップS301において、運転制御装置30の制御条件判定部31は、スターリングエンジン1が起動可能か否かを判定する。ステップS301でNoと判定された場合、本実施形態に係る運転制御を終了し、スターリングエンジン1を起動することができるようになるまで待機する。ステップS301でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部31がスターリングエンジン1は起動できると判定した場合、ステップS302へ進む。
ステップS302において、制御条件判定部31は、ピストン内空間10INにおける圧力PPが所定の規定圧力Pβ以上、かつクランクケース8の内部における圧力PCが所定の規定圧力Pβ以上であるか否かを判定する。ステップS302においてNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部31が、ピストン内空間10INにおける圧力PP又はクランクケース8の内部における圧力PCの少なくとも一方が所定の圧力Pβよりも小さいと判定した場合には、ステップS303へ進む。
ステップS303において、運転制御装置30の加圧制御部33は、気体軸受用ポンプ25を駆動し気体軸受用開閉弁23を開くとともに、クランクケース加圧用ポンプ61を駆動してクランクケース加圧用開閉弁62を開く(図13のt=0)。これによって、ピストン10のピストン内空間10INへ気体Gを供給して、ピストン内空間10INを加圧するとともに、クランクケース8の内部を加圧する。そして、ピストン内空間10INにおける圧力PP及びクランクケース8の内部における圧力PCの両方が所定の圧力Pβ以上になるまで、ピストン内空間10IN及びクランクケース8の内部の加圧を継続する。
ステップS302においてYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部31が、ピストン内空間10INにおける圧力PP及びクランクケース8の内部における圧力PCの両方が所定の圧力Pβ以上であると判定した場合には(図13のt=t0)、ステップS304へ進む。ステップS304において、加圧制御部33は、気体軸受用ポンプ25を駆動し気体軸受用開閉弁23を開き、ピストン10のピストン内空間10INへ気体Gを供給してピストン内空間10INの加圧を継続する。なお、加圧制御部33は、クランクケース加圧用開閉弁62を閉じるとともにクランクケース加圧用ポンプ61を停止する。
次に、ステップS304において、運転制御装置30の接触判定部32は、ピストン10とシリンダ11とが接触しているか否かを判定する。ステップS304〜ステップS307は、上述した運転制御におけるステップS103〜ステップS105と同様なので、説明を省略する。このように、本実施形態の変形例に係る運転制御によれば、ピストン10がシリンダ11から完全に浮上して、両者が非接触となってからスターリングエンジン1を起動する。その結果、ピストン10及びシリンダ11の摩耗を回避して、ピストン10及びシリンダ11の耐久性低下を抑制できる。
また、クランクケース8の内部の加圧とピストン10のピストン内空間10INの加圧とを同時に実行するため、クランクケース8の内部に配置される高温側気体軸受用気体供給配管22A及び低温側気体軸受用気体供給配管22Bの内部に存在する気体の圧力と、クランクケース8の内部に存在する気体の圧力とがほぼ等しい状態でピストン内空間10INとクランクケース8の内部とへ気体を供給することができる。これによって、クランクケース8の内部に配置される高温側気体軸受用気体供給配管22A及び低温側気体軸受用気体供給配管22Bがつぶれることを回避できるので、クランクケース8の内部に配置される高温側気体軸受用気体供給配管22A及び低温側気体軸受用気体供給配管22Bに、例えばゴムチューブや樹脂チューブのような柔軟かつ柔らかい素材を使用することができる。その結果、図2に示すように、クランク軸9とピストン10とを連結するリンク機構に沿わせて高温側気体軸受用気体供給配管22A及び低温側気体軸受用気体供給配管22Bを配置することができる。
図14は、スターリングエンジンへ気体を供給する気体供給系の変形例を示す模式図である。このスターリングエンジン1は、高温側ピストン10A及び低温側ピストン10Bへ供給する気体と、クランクケース8の内部へ供給する気体とを、蓄圧タンク24aから得るものである。蓄圧タンク24aからは、気体軸受用開閉弁23を通り、高温側気体軸受用気体供給配管22A及び低温側気体軸受用気体供給配管22Bを介して高温側ピストン10A及び低温側ピストン10Bへ気体を供給する。また、蓄圧タンク24からは、クランクケース加圧用開閉弁62及びクランクケース用気体供給配管63を介してクランクケース8の内部へ気体を供給する。
高温側気体軸受用気体供給配管22A、低温側気体軸受用気体供給配管22B、及びクランクケース8の内部へ気体を供給する場合、気体軸受用開閉弁23及びクランクケース加圧用開閉弁62をともに開く。また、高温側気体軸受用気体供給配管22A及び低温側気体軸受用気体供給配管22Bのみへ気体を供給する場合は、気体軸受用開閉弁23のみを開き、クランクケース8の内部へのみ気体を供給する場合は、クランクケース加圧用開閉弁62のみを開く。このような構成によれば、気体軸受を形成するための気体を供給する手段と、クランクケース8の内部を加圧するための気体を供給する手段とを共通にすることができる(この例では加圧用ポンプ25a)。これによって、コストを低減できるとともに、信頼性を向上させることもできる。
以上、ピストンがシリンダから完全に浮上して、両者が非接触となってから排熱回収機関であるスターリングエンジンを起動する。また、排熱回収機関であるスターリングエンジンが停止してから、すなわち、ピストンの往復運動が停止してからピストン内空間への気体の供給を停止する。これによって、シリンダ内をピストンが往復運動する排熱回収機関において、ピストンが往復運動している場合にピストンとシリンダとの接触を回避できるので、ピストン及びシリンダの摩耗を回避して、ピストン及びシリンダの耐久性低下を抑制できる。
特に、気体軸受によってピストンをシリンダ内に支持する構成においては、潤滑油を用いないでピストンがシリンダ内を往復運動する。このため、気体軸受を用いてピストンをシリンダ内に支持する構成においては、ピストンが往復運動している場合においてピストンとシリンダとの接触を確実に回避する必要がある。本実施形態によれば、ピストンが完全に浮上してからスターリングエンジンを起動し、スターリングエンジンのクランク軸の回転が0になってからピストンの内部の加圧を停止する。これによって、ピストンが往復運動している場合には、ピストンとシリンダとの接触を確実に回避することができる。
また、本実施形態によれば、ピストンとシリンダとの非接触状態が検知できた時点でスターリングエンジン1を起動、すなわちピストンを往復運度させることができる。これによって、ピストンの内部に形成される空間へ供給する気体の圧力を検出することなくスターリングエンジン1を起動できる。
さらに、近似直線機構を用いてピストンを支持すれば、ピストンの直線運動の信頼性を高くすることができる。これによって、ピストンとシリンダとが非接触が確認できればスターリングエンジンを起動、すなわちピストンを往復運動させることができる。また、ピストンの往復運動が停止していれば、ピストンとシリンダとが接触してもよいので、ピストンの往復運動の停止が確認できれば、気体軸受を形成するための気体の供給を停止することができる。