JP2008266393A - 硬化性組成物、及びその架橋ゴム - Google Patents

硬化性組成物、及びその架橋ゴム Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、耐熱性に優れる飽和炭化水素系架橋ゴムを得る硬化性組成物、及びその架橋ゴムを提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)主鎖骨格が飽和炭化水素系重合体分子からなり、且つ、1分子中に1個を超えるアルケニル基を有する有機重合体、(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒に加え、酸化防止剤として、(D)ヒンダードフェノ-ル系酸化防止剤、(E)イオウ系酸化防止剤の両成分を必須成分として使用することにより、耐熱性に優れる飽和炭化水素系架橋ゴムを得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は、硬化反応により架橋ゴムを形成する硬化性組成物、及びその架橋ゴムに関する。さらに詳しくは、各種成形体、接着剤・粘着剤、塗料、塗膜防止剤、シーリング剤、発泡体シーリング剤、電気・電子用ポッティング剤、医療用成形品など幅広い用途に好適に利用可能な硬化組成物、及びその架橋ゴムに関する。
従来、(A)1分子中に1.1〜5個のアルケニル基を有する飽和炭化水素系重合体(イソブチレン系重合体及び/又は水素添加ジエン系重合体)とケイ素原子に結合している水素原子を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン化合物および白金触媒からなる硬化性組成物が知られている。該組成物より得られる硬化物は、付加反応を利用していることから収縮が小さく、深部硬化性に優れる特徴を有するとともに、主成分が飽和炭化水素であるため、優れた耐候性、耐熱性を有するものである。(特許文献1)
また、飽和炭化水素系重合体であるアリル基末端ポリイソブチレン重合体、変性ハイドロジェンポリシロキサン、白金ビニルシロキサン錯体触媒および、ヒンダードフェノール系とヒンダードアミン系とヒドロキシベンゾエート系の3種類の安定剤を併用した硬化性組成物が知られており、該組成物は硬化性に優れると共に、得られる硬化物は初期機械物性の大幅な低下がなく、高耐熱性を有するものである。(特許文献2)
しかしながら、高温下における長期耐熱性の確保にはいまだ改善の余地があるものであった。
一方、自動車分野などを中心に耐熱性の要求レベルは着実に高まっており、弾性体としてガスケットやシール材などとして使用される架橋ゴムに対しても、耐熱の要求は高まっており、より耐熱性の改善された架橋ゴムが望まれているのが現状である。
特許第2700256号 特開2002−332410号
本発明者は前記課題を解決するために種々の検討を行った結果、(A)分子中に少なくとも1個を超えるアルケニル基を有する飽和炭化水素系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(C)ヒドロシリル化触媒に加え、酸化防止剤として、(D)ヒンダードフェノ-ル系酸化防止剤、(E)イオウ系酸化防止剤の両成分を必須成分として含む硬化性組成物において、硬化反応により得られる飽和炭化水素系架橋ゴムは、極めて高い耐熱性を有することを見出し、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、
(I).下記(A)〜(D)成分からなる硬化性組成物、
(A)主鎖骨格が飽和炭化水素系重合体分子からなり、且つ1分子中に1個を超えるアルケニル基を有する有機重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
(E)イオウ系酸化防止剤
(II).(F)成分として、更に保存安定性改良剤を含む請求項1記載の硬化性組成、(III).(G)成分として、更に可塑剤を含む(I)〜(II)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(IV).(A)成分の主鎖骨格である飽和炭化水素系重合体がポリイソブチレン系重合体である(I)〜(III)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(V).(A)成分の数平均分子量が5,000〜20,000である(I)〜(IV)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(VI).(B)成分が、一般式(1)で表されるヒドロシリル基を有する化合物である(I)〜(V)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
一般式(1):
(式中、1<m+n≦40、1<m≦20、0≦n≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を含有してもよい。)
(VII).[(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5以上であることを特徴とする(I)〜(VI)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(VIII).(D)成分及び、(E)成分を、(A)成分100重量部に対して、それぞれ1重量部以上含む(I)〜(VII)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
に関する。
本発明の硬化性組成物より得られる飽和炭化水素系架橋ゴムは、極めて高い耐熱性を有し、更に、飽和炭化水素系架橋ゴムの特徴である優れた耐薬品性、圧縮永久歪、ガスバリヤー性、制振性を有することなどから、電子機器、OA機器、医療機器、自動車、建築等の各分野で使用されるガスケット、Oリング、キャップ、コネクタ、シール材、キースイッチ、コンタクトラバー、各種ロール、防振ゴム、衝撃吸収材、ダイヤフラム、ポッティング材、接着剤、粘着材など、幅広い用途に好適に使用しうる。
本発明の硬化性組成物は(A)成分として、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する飽和炭化水素系重合体を必須成分とする。
ここで、飽和炭化水素系重合体とは、分子中に芳香環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に有しない重合体をいい、耐熱性、耐候性、耐久性、及び、湿気遮断性に優れる特徴を有する。
但し、本発明の目的の一つである耐久性を損なわない範囲において、主鎖骨格中に炭素−炭素2重結合を少量、好ましくは10重量%以下の範囲で含有することは許容される。
飽和炭化水素系重合体としては、特に限定されず、(i)繰り返し単位としてエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどの炭素数2から6のオレフィン系化合物からなる重合体、(ii)繰り返し単位としてブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物からなる重合体、(iii)前記ジエン系化合物と前記オレフィン系化合物を共重合させた後、水素添加するなどの方法により得られる重合体などがあげられる。このなかでも、イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体は、末端に官能基を導入しやすいこと、分子量を制御しやすいこと、末端官能基の数を調整できることなどから好ましく、イソブチレン系重合体がより好ましい。
イソブチレン系重合体は、繰り返し単位のすべてがイソブチレンから形成されていてもよく、他の化合物との共重合体でもよい。主鎖骨格としてイソブチレン系の共重合体を使用する際は、得られる硬化物のゴム特性が優れることからイソブチレンに由来する繰り返し単位を1分子中に50重量部%以上有するものが好ましく、80重量部%以上有するものがより好ましく、90〜99重量部%以上有する重合体が特に好ましい。
共重合に使用される単量体成分としては、例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエ−テル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類等が挙げられる。このような共重合体成分の具体例としては、例えば1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、イソブチルビニルエ−テル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−ヘキセニルオキシスチレン、p−アリロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
前記水添ポリブタジエン系重合体や他の飽和炭化水素系重合体においても、上記イソブチレン系重合体の場合と同様に、主成分となる単量体単位の他に、他の単量体単位を含有させてもよい。
また、本発明中(A)成分として用いる飽和炭化水素系重合体には、本発明の目的が達成される範囲でブタジエン、イソプレン、1,13−テトラデカジエン、1,9−デカジエン、1,7−オクタジエン、1,5−ヘキサジエンのようなポリエン化合物のごとき重合後2重結合の残るような単量体単位を少量、好ましくは10重量%以下の範囲で含有させてもよい。
また、アルケニル基とは、ヒドロシリル化反応に対して活性のある炭素―炭素2重結合を含む基であれば特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基;、メタクリル基等が挙げられる。これらの中では、ヒドロシリル化反応に対する活性が高いこと、アルケニル基の導入が比較的容易であることなどから、アリル基であることが好ましい。
本発明における(A)成分は、前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基が、飽和炭化水素系重合体の主鎖末端あるいは側鎖に存在してもよく、また、両方に存在してもよい。とくに、アルケニル基が主鎖末端にあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれる飽和炭化水素系重合体成分の有効網目鎖量が多くなるため、高強度で高伸びのゴム状硬化物が得られやすくなるなどの点から好ましい。
前記飽和炭化水素系重合体(A)数平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算値)は、その取り扱いやすさ、硬化後のゴム弾性の点から2,000〜100,000程度であるのが好ましく、一般的には数平均分子量が大きいほど、得られる硬化性組成物の柔軟性は増す傾向にある。
本発明の(A)成分の製造方法としては、特開平3−152164号、特開平7−304969号公報に開示されているような水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させ重合体に不飽和基を導入する方法が上げられる。またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するのにアルケニルフェニルエーテルとフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシランなどと置換反応を行う方法、種々のフェノール類とフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入方法を併用する方法などが挙げられる。さらに米国特許第4316973号、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているような単量体の重合時に不飽和基を導入する方法も可能である。
アルケニル基は、重合体(A)1分子中に平均1個を超える量、好ましくは平均5個以下存在するのがよい。重合体(A)1分子中に含まれるアルケニル基の数が平均1個以下になると、硬化性が不充分になるほか、得られる網目構造が不完全なものとなり、良好な成形体が得られない。また、1分子中に含まれるアルケニル基が多くなると網目構造があまりに密となるため、得られる成形体は硬く脆くなり好ましくない。特に、5個以上になるとその傾向は顕著となる。
本発明の硬化性組成物は(B)成分として、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物を必須成分とする。1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物としては、ヒドロシリル基を有するものであれば特に限定されず、このなかでも原材料の入手が容易なこと、(A)成分への相溶性が良好なことなどから、有機基で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
前記のヒドロシリル基を有する化合物(B)の数平均分子量としては、400〜3,000が好ましく、500〜1,000がより好ましい。数平均分子量400未満の(B)成分の化合物を使用した硬化性組成物は、加熱硬化時に(B)成分が揮発して十分な硬化物が得られなくなる傾向があり、数平均分子量が3,000を超える(B)成分の化合物を使用した硬化性組成物は、十分な硬化速度が得られなくなる傾向がある。
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては特に限定されず、たとえば、下記の構造式等で示される鎖状又は環状の化合物があげられる。
(図1)
(式中、1<b+c≦40、1<b≦20、0<c≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を含有してもよい。)、
(図2)
(式中、0≦d+e≦40、0≦d≦20、0<e≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を含有してもよい。)、又は、
(図3)
(式中、3≦f+g≦20、1<f≦20、0<g≦18である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を含有してもよい。)
(A)成分及び(C)成分との相溶性、又は、分散安定性および硬化速度が比較的良好な(B)成分を具体的に示すと、以下のものが挙げられる。
(図4)
(式中、1<k+l≦20、1<k≦19、0<l≦18であり、Rは炭素数8以上の炭化水素基である。)
好ましい(B)成分の化合物の具体的としては、(A)成分との相溶性確保と、SiH量の調整を目的に、メチルハイドロジェンポリシロキサンを、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステル等により変性した化合物があげられ、一例として、以下の構造式で示される化合物があげられる。
(図5)
(式中、1<p+q≦20、1<p≦19、0<q≦18である。)
本発明における(B)成分であるヒドロシリル基含有化合物の使用量は、(A)成分の重合体中に存在するアルケニル基の量と(B)成分中の化合物中に存在するヒドロシリル基の量の関係において、適宜選択され、このなかでも、 [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5以上であることが好ましく、0.7以上がより好ましい。
[(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5を下回る硬化性組成物は、得られる硬化物が、架橋密度の低い軟質ゴム部分を有するため、粘着性が高くなり、複合成形体を作製するさいの取り扱いが難しくなる傾向がある。また、 [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]が[(A)成分中のアルケニル基の総量]に比較し大過剰の硬化性組成物は、得られる硬化物が三次元の網目骨格を形成するのが困難となり、複合成形体を作製するさいの取り扱いが難しくなる傾向がある。このように(B)成分の使用量については、下限、上限の両方に注意する必要がある。
本発明の硬化性組成物は、(C)成分として、ヒドロシリル化触媒を必須成分とする。ヒドロシリル化触媒としては、特に限定されず、公知のものがあげられ、たとえば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、PtX(ViMeSiOSiMeVi)Pt〔(MeViSiO)z};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh、Pt(PBu};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)、Pt〔P(OBu)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、x、y、zは整数を表す)、Pt(acac)(ただし、acacは、アセチルアセトナトを表す)、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al 、RuCl 、IrCl、FeCl 、AlCl 、PdCl・2HO、NiCl、TiCl 等が挙げられる。
これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。触媒使用量としては特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10−8〜10−1molの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−6〜10−2molの範囲で用いるのがよい。10−8mol未満では、硬化速度が遅く、また硬化性が不安定になる可能性が高い。逆に10−1molを越える場合は、ポットライフの確保が困難となる傾向がある。
本発明の硬化性組成物は、(D)成分として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を必須成分とする。ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは分子内に、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を有する化合物であり、ゴムや樹脂用の酸化防止剤として一般的に使用されるものである。
市販の代表的なヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の、商品名IRGANOX 1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1141、IRGANOX1222、IRGANOX1330、IRGANOX1425、IRGANOX245、IRGANOX259などが挙げられる。
本発明の硬化性組成物は、(E)成分としてイオウ系酸化防止剤を必須成分とする。イオウ系酸化防止剤としては、分子内に硫黄原子を有する化合物であり、ゴムや樹脂用の酸化防止剤として一般的に使用されるものである。
市販の代表的なイオウ系酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、住友化学工業株式会社製の、商品名Sumilizer TPL−R、Sumilizer TPM、Sumilizer TPS、Sumilizer TP−D、Sumilizer TLなどが挙げられる。
これらの(D)成分及び(E)成分は、併用することが必要であり、併用することにより本発明の硬化性組成物から得られる飽和炭化水素系架橋ゴムは、極めて高い耐熱性が発現する。
(D)成分及び(E)成分の使用量としては、(A)成分100重量部に対し0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜15重量部がより好ましく、1〜10重量部が更に好ましい。(D)成分及び(E)成分の使用量が0.1重量部未満の場合、得られる架橋ゴムの耐熱性は不十分となる傾向がある。また、一方、(D)成分及び(E)成分の使用量が20重量部を超える場合、硬化性組成物の硬化性が低下する場合がある。特に(E)成分が硬化性の低下に及ぼす影響が大きく、その使用に際しては、(C)成分であるヒドロシリル化触媒を増量するなど、硬化性を高める工夫が必要となる。
本発明の硬化性組成物は、(F)成分として保存安定性改良剤を含むことが好ましい。保存安定性改良剤は、本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的で使用される。
保存安定性改良剤としては、本発明の(B)成分の保存安定剤として知られている通常の安定剤であって所期の目的を達成するものであれば、特に限定されず、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が好適に用いられる。より具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられる。
また、本発明の(A)〜(D)成分からなる硬化性組成物には、必要に応じて、可塑剤(G)、各種充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤、溶剤、シリコン化合物を適宜添加してもよい。上記充填剤の具体例としては、シリカ微粉末、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウム等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物を得る方法としては、特に制限はないが、(A)〜(E)成分、さらに必要に応じて使用する各種添加剤や充填剤を、プラネタリーミキサーや2軸ディスパなどの回転式ミキサーや、ニーダー、バンパリーミキサー、ロールなどの装置を使用し、混合する方法が挙げられる。
特に充填剤を使用する場合は、(A)成分中に該充填剤を均一に分散、安定化させること、及び硬化性組成物中に含まれる水分をなるべく除去することが重要である。(A)成分中への充填剤の分散が不均一、不安定であれば、組成物の性状が経時で大きく変化する。また、組成物中に水分が多い場合には、硬化反応時に(B)成分と水分との反応で発生するガスの影響により発泡し、架橋ゴム中にボイドが生じる傾向がある。
また、本発明の硬化性組成物から飽和炭化水素系架橋ゴムを得る方法としては、一般的に使用されている加熱硬化型の液状ゴムと同様の方法をとることができる。塗布や注入、スクリーン印刷などのような接着剤やポッティング剤などと同様の取扱や、プレス成形、射出成形、トランスファー成形、押出成形など、ゴム成形体を得る方法を適用できる。中でも、液状シリコーンゴムで適用されている液状射出成形システムに適用した場合には、高い生産性で精密な成形を実現することが可能である。
また、これら各種の取扱方法において、本発明の硬化性組成物は、全ての成分を含む1液形態として扱うことも、(B)成分と(C)成分とが混合しないように全成分を2液に配分した2液形態として扱うことも可能である。前者の場合、室温下でも徐々に反応は進行し得るため、低温下での保管が必要となるが、成形に際して2液を混合するなどの手間が省略できる。また、後者の場合には、成形する際に2液を混合し、泡を含まない状態で塗布、充填、射出できるように工夫が必要となるが、液状組成物の長期保管には有利である。このような2液形態の液状組成物の取り扱いには、液状シリコーン向けに開発された液状射出成形システムに使用されている2液混合吐出装置や、2液形態のウレタン樹脂、エポキシ樹脂に使用されている2液混合吐出装置が使用できる。
本発明の硬化性組成物より得られる耐熱性に優れた飽和炭化水素系架橋ゴムは、極めて高い耐熱性に加え、硬化性、耐薬品性、圧縮永久歪、ガスバリヤー性、制振性等に優れることから、電子機器、OA機器、医療機器、自動車、建築等の各分野で使用されるガスケット、Oリング、キャップ、コネクタ、シール材、キースイッチ、コンタクトラバー、各種ロール、防振ゴム、衝撃吸収材、ダイヤフラム、ポッティング材、接着剤、粘着材など、幅広い用途に有用である。
次に実施例により本発明の硬化性組成物、及びその架橋ゴムを具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(製造例1)
(―Si−O−)繰り返しユニットを平均して7.5個もつメチルハイドロジェンシリコーンに白金触媒存在下全ヒドロシリル基量の0.5当量のα−オレフィンを添加し、1分子中に平均約5.5個のヒドロシリル基を有する化合物(B−1)を得た。この化合物のSi−H基含有量は6mmol/gであった。
(実施例1)
特開平8−127683号公報、製造例1に記載された方法に準じ、(A)成分である分子量約10,000、アリル基数2.0のアリル基末端ポリイソブチレンを得た。この(A)成分100gに、イオウ系酸化防止剤(E)としてSumilizer TP−D(住友化学工業株式会社製)を1.0g、ヒンダードフィノール系酸化防止剤(D)としてIRGANOX1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を1.0g添加し、手混ぜにて混合した。これを120℃に加温して、添加した2種の酸化防止剤を(A)成分に溶解させた。冷却後、この混合物に保存性改良剤(F)としてアセチレンアルコール(日信化学工業社製サーフィノール61)を84μL、ヒドロシリル化触媒(C)として白金ビニルシロキサン錯体触媒(ディーエムスクエアージャパン(株)製、PT−VTSC−3.0X)を140μL加え、手混ぜにて十分混合した。さらに、製造例1で作製した(B)成分である変性メチルハイドロジェンポリシロキサン(B−1)を7.7g加え、手混ぜにて混合した。このようにして得られた液状組成物(1)を脱泡した後、厚さ2mmのスペーサと2枚のプレス板を使用し、180℃、1分間の加熱プレス成形により2mm厚の硬化物シート(1−1)を得た。
(比較例1)
前記実施例1において、ヒンダードフィノール系酸化防止剤(D)(IRGANOX1010)を添加せず、イオウ系酸化防止剤(E)(Sumilizer TP−D)を2.0g添加こと以外は実施例1とし、同様にして硬化物シート(1−2)を得た。
(比較例2)
前記実施例1において、イオウ系酸化防止剤(E)(Sumilizer TP−D)を添加せず、ヒンダードフィノール系酸化防止剤(D)(IRGANOX1010)を2.0g添加したこと以外は実施例1と同様にして、硬化物シート(1−3)を得た。
実施例1、比較例1,2で得られた硬化物シートを熱風乾燥機により150℃に加熱し、硬化物表面の変化を観察することで耐熱性評価を実施した。
(耐熱性評価)
評価方法:得られた硬化物シートからミニダンベル試験片を作製し、150℃熱風乾燥機にて48時間毎のミニダンベル試験片状態を観察した。
評価基準:○・・・外観状殆ど変化ない状態
△・・・強い着色と極一部で軟化現象状態
×・・・強い着色とシート表面に亀裂劣化状態
得られた結果を表1に示す。
表1より明らかなように、イオウ系酸化防止剤(E)とヒンダードフィノール系酸化防止剤(D)を併用した実施例1は、イオウ系酸化防止剤(E)単独使用の比較例1、ヒンダードフィノール系酸化防止剤(D)単独使用の比較例2に比べ耐熱性に優れる事が確認された。
(実施例2)
次に、実施例1で使用したものと同一の(A)成分100gに可塑剤(G)としてPAO−5010(出光石油化学(株)製)を50g、フィラーとして疎水性表面処理シリカ50g、酸化防止剤としてTP−D(住友化学工業株式会社製)を3.0g、IRGANOX1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を1.0g加え、2軸ミキサーにて、加熱減圧下で混練した。これを冷却後、保存性改良剤としてアセチレンアルコール(日信化学工業社製サーフィノール61)を126μL、ヒドロシリル化触媒(C)として白金ビニルシロキサン錯体触媒(ディーエムスクエアージャパン(株)製、PT−VTSC−3.0X)を214μL、製造例1で作製した(B)成分であるヒドロシリル化合物(B−1)11gを順次加え、混合した。
このようにして得られた液状組成物(2)を脱泡した後、厚さ2mmのスペーサと2枚のプレス板を使用し、180℃、1分間の加熱プレス成形により2mm厚の硬化物シート(2−1)を得た。
(比較例3)
前記実施例2において、イオウ系酸化防止剤(E)として(Sumilizer TP−D)を添加せず、ヒンダードフィノール系酸化防止剤(D)(IRGANOX1010)の代りにMark AO−50を3.0g添加し、光安定剤として、(三共製LS−765)を1.5g添加したこと以外は実施例2と同様にして、硬化物シート(2−2)を得た。
実施例2、比較例3で得られた硬化物シートを熱風乾燥機により175℃に加熱し、耐熱試験後の評価サンプルの引張特性を測定する事により耐熱性評価を行った。

耐熱性評価(経時変化)
評価方法:得られた硬化物シートからミニダンベル試験片を作製し、175℃熱風乾燥機にて48時間毎のミニダンベル試験片状態を観察した。
評価基準:○・・・外観状殆ど変化ない状態
△・・・強い着色と極一部で軟化現象状態
×・・・強い着色とシート表面に亀裂劣化状態
得られた評価結果を表2に示す。
表2より明らかなように、イオウ系酸化防止剤(E)とヒンダードフィノール系酸化防止剤(D)を併用した実施例2は、イオウ系酸化防止剤(E)と光安定剤を併用した比較例3に比べ耐熱性に優れる事が確認された。
得られた硬化物シートを熱風乾燥機により175℃に加熱したところ、900時間経過後でも弾性を保っていた。
これら実施例に示されるように、(A)分子中に少なくとも1個を超えるアルケニル基を含有する飽和炭化水素系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤、(C)ヒドロシリル化触媒に加え、酸化防止剤として、(D)ヒンダードフェノ-ル系酸化防止剤、(E)イオウ系酸化防止剤の両成分を必須成分とし使用する本発明の硬化性組成物は、極めて高い耐熱性を有する飽和炭化水素系架橋ゴムを与えることが確認された。

Claims (8)

  1. 下記(A)〜(D)成分からなる硬化性組成物。
    (A)主鎖骨格が飽和炭化水素系重合体分子中からなり、且つ1分子中に1個を超えるアルケニル基を有する有機重合体
    (B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
    (C)ヒドロシリル化触媒
    (D)ヒンダードフェノ-ル系酸化防止剤
    (E)イオウ系酸化防止剤
  2. (F)成分として、更に保存安定性改良剤を含む請求項1記載の硬化性組成物。
  3. (G)成分として、更に可塑剤を含む請求項1〜2のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  4. (A)成分の主鎖骨格である飽和炭化水素系重合体がポリイソブチレン系重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  5. (A)成分の数平均分子量が5,000から20,000である請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  6. (B)成分が、一般式(1)で表されるヒドロシリル基を有する化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
    一般式(1):
    (式中、1<m+n≦40、1<m≦20、0≦n≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を含有してもよい。)
  7. [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  8. (D)成分及び(E)成分を、(A)成分100重量部に対して、それぞれ1重量部以上含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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