JP2008266268A - ネコエリスロポエチンの製造方法。 - Google Patents

ネコエリスロポエチンの製造方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】精製収率が高く、高純度で取得可能なネコエリスロポエチンの製造方法を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明は、動物細胞CHO細胞により生産したネコエリスロポエチンを含む細胞培養上清を、銅キレートカラムにを用いて精製する工程を含むネコエリスロポエチンの製造方法に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、動物細胞を用いて発現させ、カラムクロマトグラフィーにより精製するネコエリスロポエチンの製造方法、及び該製造方法で製造されたネコエリスロポエチンに関する。
エリスロポエチン(以下、本明細書において「EPO」と記載することがある。)は、赤血球産生を促進するホルモンで、主に腎臓において生産される。ヒトEPOは192残基のアミノ酸で構成されており、その内27残基がシグナルペプチド、165残基が成熟タンパク質のアミノ酸配列からなり、N型結合糖鎖およびO型結合糖鎖修飾を受けた分子量約34,000Daの糖タンパク質である。EPOは、組織が低酸素ストレスを受けた際に骨髄中の原始前駆細胞が前赤芽球に変換されるのを促進し、もって赤血球の産生を増大させる作用を有する。EPO cDNAクローニングは、ヒト以外にも、マウス、ラット、イヌ、ネコなどで行われている(非特許文献1)。
ヒトで報告のある慢性腎不全、化学療法剤又は外科手術によって引き起こされる貧血は、コンパニオンアニマルであるイヌおよびネコにおいても見られ、これらの動物の死亡および能力障害の主な原因となっている。現在、イヌやネコの輸血などに際して、さらにほとんどのネコの慢性腎疾患および感染症(FeLV感染)による貧血症状に対して、利用可能な唯一の方法は、組換えヒトエリスロポエチンの投与である。この動物種が異なるヒトEPOの投薬は、イヌ、ネコの生活の質を改善するものの、2つの欠点を有するとされている。まず第一の欠点は、ネコに対するヒトEPOの活性は、ネコEPOに比べて低下することが予想され、目的の治療効果を得るためには大量の投与を余儀なくされることである。第二の欠点は、ヒト由来EPOを投与されたイヌ、ネコは、その投与によって中和抗体が発現し、この抗体により投与したEPOの有効性が減弱し、またイヌ、ネコ本来のEPOと交叉反応して貧血を悪化させる(非特許文献1)。これらの問題を解決する手段として、イヌ、ネコのEPO製剤が得られれば、これらの免疫学的な問題は克服され、ヒトEPO製剤投与による諸問題は解決される可能性がある。
現在、ネコの慢性腎疾患や感染症による貧血治療に対して使用されている組換えヒトEPO製剤は、動物細胞(CHO細胞)で製造されている。一般に、培養上清中からのタンパク質の回収には、クロマトグラフィー技術が用いられる。従来一般に用いられているものとしては、イオン交換クロマトグラフィー、キレートクロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどが挙げられる。イオン交換クロマトグラフィーは、異なった電荷を有するタンパク質からなる溶液が、異なったイオン強度の溶出液による溶出によって分離される方法である。キレートクロマトグラフィーは、固定化金属イオンアフィニティー担体とタンパク質がキレート形成により固定化された金属イオンに対する親和性を利用して分離する方法である。タンパク質のヒスチジンやシステインはキレートを形成している金属と複合体を形成し、カラムに吸着する。ヒトEPOは、陰イオン交換担体および逆相クロマトグラフィー(HPLC)の組合わせにより精製されているが、精製収率は30-50%である(特許文献1、特許文献2)。また、他の報告として、ヒト尿から、イオン交換クロマトグラフィー、エタノール沈殿、ゲル濾過、ハイドロキシアパタイト等の7つのステップからなる方法により、精製収率21%でヒトEPOを精製する方法が報告されている(非特許文献2)。しかし、ネコEPOについては、これまでに精製・単離に関する報告はない。
特公平7−72923号公報 特公平6−98018号公報 ヴェンら:「ブラッド(Blood)」、82巻、p1507(1993) ミヤケら:「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.B.C)」、252巻,p5558(1977)
上記のように、ネコでは慢性腎疾患や感染症により貧血症例が多いのにも関わらず、その治療には組換えヒトEPO製剤が使用されており、異種タンパク質投与による中和抗体出現のための作用減弱などの諸問題がある。組換えヒトEPO製剤に代わり、ネコEPO製剤があれば、費用の面・薬効の面でも飼い主の負担は軽減されるともに、投薬されたネコのQOLも向上する可能性がある。そこで、動物細胞、中でもCHO細胞を用いて生産された組換えネコEPOの製造方法として、報告されているヒトEPOの精製法を用いて、CHO細胞で生産された組換え型ネコEPOの精製を検討したが、精製収率が低いという結果であった。本発明は、精製収率が高く、高純度ネコEPOを取得可能な製造方法を得ることを目的とする。
本発明者らは、動物細胞を培養することにより得られたネコEPOを、ヒトEPOの精製において報告のある方法を一切使用することなく、銅キレート担体を用いて精製することにより、不純物の除去効率が大幅に改善し、高純度な組換え型ネコEPOを得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
〔1〕動物細胞を培養して培養上清中にネコエリスロポエチンを発現させる工程、及び発現させたネコエリスロポエチンを銅キレート担体を用いて精製する工程とを含むネコエリスロポエチンの製造方法。
〔2〕ネコエリスロポエチンを陰イオン交換担体を用いて精製する工程を含む〔1〕に記載のネコエリスロポエチンの製造方法。
〔3〕陰イオン交換担体がジエチルアミノエチル基を有する陰イオン交換担体である〔2〕に記載のネコエリスロポエチンの製造方法。
〔4〕動物細胞がCHO細胞である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のネコエリスロポエチンの製造方法。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法により製造されたネコエリスロポエチン。
〔6〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法により製造されたネコエリスロポエチンを含む動物用医薬。
本発明により、組換え型の高純度なネコエリスロポエチンを得ることが可能になる。本発明により得られるネコエリスロポエチンは、動物用医薬品、例えばネコの慢性腎不全、化学療法剤又は外科手術によって引き起こされる貧血に対する治療薬として有用である。
本発明は、動物細胞を培養して培養上清中にネコエリスロポエチンを発現させる工程、及び発現させたネコエリスロポエチンを銅キレート担体を用いて精製する工程とを含むネコエリスロポエチンの製造方法である。
本発明のネコエリスロポエチンの製造方法において、動物細胞を培養して培養上清中へネコエリスロポエチンを発現させることは、以下のように行うことができる、
ネコEPOをコードするDNAを組み込んだプラスミドは、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、ネコの虚血状態のネコ腎臓を処理して得られる細胞からポリ(A)RNAを抽出した後、cDNAを合成し、ネコEPOをコードする遺伝子配列を元にしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと略す)を行うことによって、ネコEPOをコードする遺伝子を得ることができる。
上記ネコの細胞よりRNAを抽出する方法としては、グアニジン・チオシアネート処理後CsCl密度勾配遠心を行うグアニジン・チオシアネート−塩化セシウム法(チルインら:バイオケミストリー(Biochemistry)、18、5294(1979))バナジウム複合体を用いてリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤で処理したのちフェノール抽出を行う方法、グアニジン・チオシアネート−ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン塩酸法、グアニジン・チオシアネート−フェノール・クロロホルム法、グアニジン・チオシアネートで処理したのち塩化リチウムで処理してRNAを沈殿させる方法などの中から適当な方法を選んで行うことができる。
また、塩化リチウム/尿素法、グアニジン・イソチオシアネート法、オリゴdTセルロース法などによりmRNAを単離し、得られたmRNAから通常の方法、Gublerらの方法(ガブラーら:ジーン(Gene).25,236−269(1983))、H.Okayamaらの方法(オカヤマら:モレキュラーセルバイオロジー(Mol.Cell.Biol),2,161,(1982)&3,280,(1983))などによりネコEPOcDNAを合成することができる。mRNAからcDNAを合成するには、例えばトリ骨芽球ウイルス(AMV)などの逆転写酵素などを用いる方法のほか、一部プライマーを用いてDNAポリメラーゼなどを用いる方法を組み合わせてもよいが、市販の合成あるいはクローニング用キットを用いるのが便利である。
以上のようにして得られたcDNAを鋳型として、ネコEPOをコードする遺伝子の塩基配列を基にし、かつベクターに組込みが可能なように適切な制限酵素サイトを付加したプライマーを設計し、PCRを行うことによって、ネコEPOをコードするDNAを得ることができる。次に、後述するように、調製したネコEPOcDNAを適当な発現ベクターに組込み、これを用いて動物細胞に形質転換し、形質転換体をスクリーニング、培養することによりネコEPOを生産することが可能である。
動物細胞に導入したネコEPO遺伝子を増幅するために、マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ酵素(mdhfr)をコードする遺伝子を同時に導入する方法を用いることができる。ネコEPO遺伝子とマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ酵素遺伝子の両遺伝子が導入された動物細胞の培養液中にメトトレキセート(MTX)を段階的に添加していくことで、動物細胞内のmdhfrの発現量が向上するとともに、目的の遺伝子であるネコEPO遺伝子が増幅され、結果的にネコEPO発現量が向上する。
ここで用いるマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ酵素(mdhfr)をコードしている遺伝子は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、マウス細胞、たとえばマウスTK細胞からポリ(A)RNAを抽出した後、cDNAを合成し、mdhfrをコードする遺伝子配列を元にしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと略す)を行うことによって、mdhfrをコードする遺伝子を得ることができる。上記マウス細胞よりRNAを抽出する方法としては、グアニジン・チオシアネート処理後CsCl密度勾配遠心を行うグアニジン・チオシアネート−塩化セシウム法(チルインら:バイオケミストリー(Biochemistry)、18、5294(1979))バナジウム複合体を用いてリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤で処理したのちフェノール抽出を行う方法、グアニジン・チオシアネート−ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン塩酸法、グアニジン・チオシアネート−フェノール・クロロホルム法、グアニジン・チオシアネートで処理したのち塩化リチウムで処理してRNAを沈殿させる方法などの中から適当な方法を選んで行うことができる。
さらに、塩化リチウム/尿素法、グアニジン・イソチオシアネート法、オリゴdTセルロース法などによりmRNAを単離し、得られたmRNAから通常の方法、例えば Gublerらの方法(ガブラーら:ジーン(Gene).25,236−269(1983))、H.Okayamaらの方法(オカヤマら:モレキュラーセルバイオロジー(Mol.Cell.Biol),2,161,(1982)&3,280,(1983))などによりcDNAを合成する。得られたmRNAからcDNAを合成するには基本的にはトリ骨芽球ウイルス(AMV)などの逆転写酵素などを用いるほか一部プライマーを用いてDNAポリメラーゼなどを用いる方法を組み合わせてよいが、市販の合成あるいはクローニング用キットを用いるのが便利である。このcDNAを鋳型としてmdhfrをコードする遺伝子の塩基配列を基にし、かつベクターに組込みが可能なように適切な制限酵素サイトを付加したプライマーを設計してPCRを行うことによってmdhfrをコードするDNAを得ることができる。次に、調製したmdhfrcDNAを適当な発現ベクターに組込むかまたはネコEPOcDNAを含むベクター内に導入し、これを用いて動物細胞に形質転換し、形質転換体のスクリーニングに使用し、培養することによりネコEPOの高生産が可能になる。
本発明において、ネコEPOを発現させる動物細胞としては、ほ乳類細胞、例えばCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)、COS細胞、ミエローマ細胞、BHK細胞、HeLa細胞、Vero細胞などが挙げられる。これらのうち、CHO細胞が好ましく用いられる。CHO細胞としては、DHFR遺伝子を欠損したCHO細胞であるCHO/dhfr-細胞やCHO K-1細胞を好適に使用することができる。具体的には、ネコEPOのタンパク質の発現はチャイニーズハムスター卵巣細胞のDHFR-(CHO/dhfr-)株を用いることができる。CHO/dhfr−細胞は、構造遺伝子の突然変異によりジヒドロ葉酸レダクターゼ酵素(DHFR)を欠如しており、このため培地中にグリシン、ヒポキサンチン、チミジンの存在を要求する(ウルラシブら:プロシーディング・オブ・ナショナルアカデミー・オブ・サインス.77,4461−4469(1980))。
本発明において、動物細胞を培養に用いる培地としては、各種血清(例えばウシ胎児血清)を加えたHamF10培地、Ham F12培地、ダルベッコMEM培地、RPMI-1640培地、MEM-α培地(以上 インビトロジェン社製)およびこれらの混合培地が用いられる。培地には必要によりグルタミン0.5〜5mM、抗生物質(ペニシリン(25U/mL)、ストレプトマイシン(25μg/mL),G418(0.3mg/mL))などを適宜加える。
動物細胞の培養には、種々の培養ビン、ディッシュ、ローラーボトル、スピナーフラスコ、ジャーファーメンターなどを用いることができる。通常種細胞濃度5×104〜1×106cells/mLとし、培養温度30〜40度で、2〜10日間培養を行うと、各細胞濃度に応じ、ネコエリスロポエチンが主に細胞外に分泌される。
本発明において、ネコEPOを発現させるために用いる発現ベクターとしては、プラスミド、ウイルスベクターなどを用いることができる。発現ベクターに組込まれるプロモーターは、宿主である動物細胞により、SV40初期、後期、hCMVなど最終的に活性型のネコEPOを得られるものであればよい。マーカー遺伝子は、アミノグリコシド3’ホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子やジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子などが用いられる。選択用添加物質として、G-418,メトトレキセートが例示される。
動物細胞への形質転換は、公知の方法、例えばリン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、リポフェクチン法などの沈殿法、プロトプラストポリエチレン法、エレクトロポレーション法などが利用できる。
本発明のネコエリスロポエチンの製造方法において、上記のようにして動物細胞を培養して培養上清中に得られたネコエリスロポエチンは、銅キレート担体を用いて精製される。
銅キレート担体は、銅キレートを形成するのに適当なリガンドが結合されているセファロースなどの担体に銅イオンを接触させて調製された、銅イオンをキレート結合させた担体である。タンパク質を構成するアミノ酸は、キレート形成している銅イオンと複合体を形成するため、銅キレート担体にタンパク質を接触させることにより担体に吸着する。しかし、この担体への吸着はpHに依存し、またキレート形成するアミノ酸(主にヒスチジン、システイン)が糖鎖などでマスクされると銅キレート担体に結合しない場合もある。この性質を利用し、目的タンパク質を含む動物細胞の培養液や精製された溶液中の不純物すべてを銅キレートに吸着させ、特別な塩溶液を通液することなく、目的タンパク質の高純度化が可能になる。逆に、予め目的タンパク質のみを銅キレートに吸着させ、塩の使用により、イオン強度を上げることで、溶出させ高純度化することも可能である。
本発明においてネコエリスロポエチンの精製に使用される銅キレート担体としては、アガロース、セルロース、セファロース、合成ポリマーゲルなどに、銅キレートを形成するリガンド、例えばイミノジ酢酸などを親水性のスペーサーを介して、導入したものが挙げられる。好ましくは、イミノジ酢酸を導入したハイトラップキレーティング(アマシャム社製)やキレーティングセファロースファーストフロー(アマシャム社製)などが用いられる。
銅キレート担体は、例えば次のようにして作製することができる。まず、上述した担体を精製水で予め平衡化しておき、0.1M硫酸銅水溶液を通液させる。その後に再度精製水を通液して余分な銅を除去し、精製に使用する平衡化緩衝液を通液する。以上のようにして作製した銅キレート担体を、本発明のネコEPOの精製に用いることができる。
本発明の製造方法では、ネコエリスロポエチンを含む溶液(培養上清)を銅キレート担体に接触させ、ネコエリスロポエチンはフロースルー画分で回収する方法が好ましく採用される。
銅キレート担体を用いた精製操作における、溶出剤の組成、液量などは特に限定されるものではなく、最適な分離条件は存在する夾雑タンパク質、ネコエリスロポエチン各成分の量、およびカラムの寸法などに応じて適宜決定される。好ましくは、次の条件を適用することができる。すなわち、20〜100mLの銅キレート担体を用い、これを100〜500mLの10mM Tris緩衝液で平衡化する。次に、ネコEPOを含む溶液を通液した後、再度40〜125mLの10mM Tris緩衝液を通液することで、ネコEPOを精製することができる。
本発明のネコエリスロポエチンの製造方法においては、銅キレート担体を用いる精製工程に加えて、陰イオン交換担体(アニオン交換担体)を用いる精製工程を組合わせることで、目的のネコエリスロポエチンをさらに高純度化することが可能になる。
陰イオン交換担体としては、アガロース、セルロース、セファロース、合成ポリマーゲルなどに、親水性のスペーサーを介して、化学的に安定なエーテル結合によってジエチルアミノエチル基やクオータナリーアンモニウム基を導入したものが挙げられる。好ましくは、ジエチルアミノエチル基を有する陰イオン(アニオン)交換担体、例えばDEAEセファロース(登録商標)(アマシャム社製)などが用いられる。本発明の方法では、ネコエリスロポエチンを含む溶液を陰イオン交換担体であるDEAEセファロースに接触させ、担体への吸着物を溶出剤で溶出させる方法が好ましく採用される。
陰イオン交換担体としてDEAEセファロースを用いた精製は、まずpHを下げてネコEPOの等電点に近づることで不純物を効果的に除去し、次にイオン強度を上げること、すなわち塩などの溶出剤による溶出を行うことで、純度の高いネコエリスロポエチンを含む画分を溶出させることが好ましい。溶出剤としては、例えば塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどが挙げられる。目的のネコEPOの溶出は、溶出剤の濃度に依存し、溶出剤の濃度を変化させることにより、DEAEセファロースに吸着したタンパク質を個々に分離・分画することができる。
陰イオン交換担体を用いた精製操作における、溶出剤の組成、液量などは特に限定されるものではなく、最適な分離条件は存在する夾雑タンパク質、ネコEPOタンパク質の量、およびカラムの寸法などに応じて適宜決定される。好ましくは、次の条件を適用することができる。すなわち、5mL〜20mLのDEAEセファロースを用い、これを50mL〜200mLの10mM Tris緩衝液で平衡化する。次に、ネコEPOを含む溶液を通液し、再度50mL〜200mLの10mM Tris緩衝液で平衡化する。次に、0.5M NaClを含む10mM Tris緩衝液を溶出剤として、塩濃度を段階的に上げて担体に吸着したネコEPOを溶出させる。溶出剤は、20mL〜100mLを通液する。
また、陰イオン交換担体による精製は、銅キレート担体による精製工程の後に実施しても、前に実施してもよいが、銅キレート担体による精製工程の後に実施することが好ましい。
上記の銅キレート担体を用いて精製する工程、陰イオン交換担体を用いて精製する工程を含め、本発明のネコエリスロポエチンを精製する工程においては、ネコエリスロポエチンを含む溶液(培養上清)やカラムクロマトで使用する溶出液に、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、ラウロイルザルコシン酸ナトリウム等のイオン系界面活性剤又はHCO60、Tween80等の非イオン系界面活性剤が挙げられ、これらの中でもTween80等の非イオン系界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤の添加量としては、ネコEPO上清液中又は溶出液中に0.005重量%〜1重量%の範囲とすることが可能である。具体的には、界面活性剤としてTween80を用い、添加量0.01重量%の濃度とすることが好ましい。
本発明のネコエリスロポエチンの製造方法においては、さらにタンデンシャルウルトラフィルトレーションの工程を加えてもよく、これにより目的のネコEPOタンパク質のさらなる高純度化が可能になる。タンデンシャルウルトラフィルトレーションは、主に限外ろか膜(UF膜)を用いたタンパク質の濃縮やバッファー交換を行う工程をさし、膜表面に対し溶液を平行に流すことによってファルリング(膜の目詰まり)を抑制し、安定で短時間での濾過工程を可能にする。UF膜としては、材質がポリエーテルスルホンや再生セルロースなどの膜を用いることができる。また、UF膜の分子量サイズは、目的となるタンパク質の分子量サイズに合わせて選択することができ、本発明のネコEPOタンパク質の場合は1000-100000が好ましい。UF膜としては、具体的にはYM-10(ミリポア社製)などが好ましいものとして挙げられる。
本発明において、精製されたネコEPOの純度の確認は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行うことができる。例えば、精製により得られたネコEPOを含む溶液10〜100μg をHPLCに導入したとき、得られた検量線から全てのピークの面積値におけるネコEPO以外の不純物のピーク面積値の割合を算出し、純度100%から不純物の割合を差し引いた値をネコEPOの純度とすることができる。具体的には、以下のようにして純度を確認することができる。すなわち、ネコEPOを含む溶液をC4樹脂カラム(VYDAC社製)を用いたHPLCに供し担体に接触させる。HPLCの測定条件は、流速1mL/min で通液し、0〜80%エタノール/10mMTris-HCl(pH7)のグラジエント溶出を行い、230nmのUVで吸光度測定を行う。この条件において、ネコEPOのピークはリテンションタイム50-60min、エタノール濃度約66-80%に見られる。なお、HPLC操作における、溶出剤の組成、液量などは特に限定されるものではなく、最適な分離条件は存在する夾雑タンパク質、ネコエリスロポエチン各成分の量、およびカラムの寸法などに応じて適宜決定される。
本発明により得られたネコEPOの分子量は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により測定することができる。還元条件下、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動により決定すると、本発明により得られたネコEPOの分子量が約30〜35kDであることを確認することができる。
ネコEPOの比活性は、本発明によって得られたネコEPOの比活性は、例えば以下のように算出することができる。すなわち、ヒトEPO ELISA kit(R & D system社製)に添付の方法に従い、キット中のヒトEPO国際標準品をスタンダードとして用いて、溶液中のネコEPOの活性値(U/mL)を算出する。次に、ネコEPO溶液のタンパク質の定量をBCA protein assay(PIERCE社製)を用いて行い、ネコEPOタンパク質濃度(mg/L)の算出を行う。得られた活性値(U/mL)をネコEPOタンパク質濃度(mg/L)で除した数値の商を比活性値とすることができる。すなわち、比活性値は、溶液あたりのネコEPOの活性値(U/mL)を、溶液あたりのネコEPOタンパク質濃度(mg/L)で除した値として求められる。
ここで、ネコEPOタンパク質の比活性は、ネコEPOタンパク質1mgあたりの生理活性の強さを意味する。比活性は、タンパク質の精製の度合い、すなわちネコEPOタンパク質の純度の指標となりうる。ネコEPOの比活性を求めるために用いられる生理活性としては、in vitroにおけるヒトTF細胞による細胞増殖活性や赤血球前駆細胞の細胞増殖活性を用いることができる。例えば、ヒトTF細胞による細胞増殖活性は、「J.Cell.Physiol 1989 140 pp323-334」に記載の方法を適用することができる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
参考例1 ネコEPO遺伝子の取得
(1)ネコcDNAの調製
一過性に低酸素状態にしたネコから腎臓を抽出し、メスにて適切な大きさ(直径2cm2程度)に切開し、10%FBSを含むMEM培地(インビトロジェン社製)を含む容器に入れ、同じ培地にて3回洗浄を行った。皮膚組織など不要な部分をさらに取り除き、ハサミで細かくし、滅菌三角フラスコに入れ0.1%コラゲナーゼtypeI溶液(シグマ社)を細切組織が完全に浸かる程度加え、さらに0.001%DNase(宝酒造(株)製)を添加し、37℃で2時間ゆっくり撹拌した。次に、ステンレス製細胞コレクターを通し、組織片を取り除いた。コレクターのメッシュを通過した細胞浮遊液を900rpm,5分間遠心して上清を取り除き、10%FBSを含むMEM培地で懸濁し、ピペッティングを行い、再度遠心し、細胞の沈殿とした。この操作を3回繰り返し、ネコ腎臓細胞とした。得られたネコ腎臓細胞をISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて総RNAを調製した。得られたRNAを1mM EDTAを含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH7.5)(以下、「TE」と略することがある。)に溶解し、70℃で5分間処理した後、1M LiClを含むTEを同量加えた。0.5M LiClを含むTEで平衡化したオリゴdTセルロースカラムにRNA溶液をアプライし、同緩衝液にて洗浄した。さらに0.3M LiClを含むTEにて洗浄後、0.01% SDSを含む2mM EDTA(pH7.0)で吸着したポリ(A)RNAを溶出した。こうして得られたポリ(A)RNAを用いて一本鎖cDNAを合成した。すなわち、滅菌した0.5mlのミクロ遠心チューブに5μgのポリ(A)RNAと0.5μgのオリゴdTプライマー(12−18mer)を入れ、ジエチルピロカルボネート処理滅菌水を加えて12μlにし、70℃で10分間インキュベートしたのち氷中に1分間つけた。これに200mM トリス塩酸(pH8.4),500mM KCl溶液を2μl,25mM MgCl を2μl,10mM dNTPを1μlおよび0.1M DTTを2μlそれぞれ加え、42℃で5分間インキュベートしたのち、200ユニットのGibcoBRL社製SuperScript II RTを1μl加え、42℃でさらに50分間インキュベートしてcDNA合成反応を行った。さらに70℃で15分間インキュベートして反応を停止し、氷上に5分間置いた。この反応液に1μlのE.coli RNaseH(2units/ml)を加え、37℃で20分間インキュベートした。
(2)ネコEPO遺伝子の取得
ネコEPOのN末端およびC末端の塩基配列をもとに、配列番号2及び配列番号3の塩基配列で表される2種類のプライマーをDNAシンセサイザーにて合成した。上記(1)のネコ腎臓細胞より得られたcDNAを0.5mlのミクロ遠心チューブに2μl添加し、各プライマーを20pmol,20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgCl、25mM KCl,100μg/ml ゼラチン、50μM各dNTP、4単位 TaqDNAポリメラーゼとなるように各試薬を加え、全量100μlとした。DNAの変性条件を94℃,1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃、3分とする各条件でPerkin−Elmer Cetus社製のDNAサーマルサイクラーを用い、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約550bpのDNA断片を常法に従って調製した。
このDNA断片をInvitrogen社製のT−Vectorに宝酒造(株)製のDNA Ligation Kit Ver.1を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次に、このプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同じ条件のPCRによって確認後、蛍光DNAシーケンサー(パーキンエルマー社製DNAシーケンサー373S)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社製のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、得られたDNA断片が、ネコEPOをコードする配列番号1に示す塩基配列であることを確認した。
参考例2 マウスdhfr遺伝子の取得
(1)マウスcDNAの調製
マウスTK細胞を10%FBSを含むRPMI1640(インビトロジェン社製)を用いて、37℃で5%CO2存在下培養し、2×106cellsに調製した。次にこの細胞ををISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて総RNAを調製した。得られたRNAを1mM EDTAを含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH7.5)(以下TEと略する。)に溶解し、70℃で5分間処理した後、1M LiClを含むTEを同量加えた。0.5M LiClを含むTEで平衡化したオリゴdTセルロースカラムにRNA溶液をアプライし、同緩衝液にて洗浄した。さらに0.3M LiClを含むTEにて洗浄後、0.01% SDSを含む2mM EDTA(pH7.0)で吸着したポリ(A)RNAを溶出した。こうして得られたポリ(A)RNAを用いて一本鎖cDNAを合成した。すなわち、滅菌した0.5mlのミクロ遠心チューブに5μgのポリ(A)RNAと0.5μgのオリゴdTプライマー(12−18mer)を入れ、ジエチルピロカルボネート処理滅菌水を加えて12μlにし、70℃で10分間インキュベートしたのち氷中に1分間つけた。これに200mM トリス塩酸(pH8.4),500mM KCl溶液を2μl,25mM MgCl を2μl,10mM dNTPを1μlおよび0.1M DTTを2μlそれぞれ加え、42℃で5分間インキュベートしたのち、200ユニットのGibcoBRL社製SuperScript II RTを1μl加え、42℃でさらに50分間インキュベートしてcDNA合成反応を行った。さらに70℃で15分間インキュベートして反応を停止し、氷上に5分間置いた。この反応液に1μlのE.coli RNaseH(2units/ml)を加え、37℃で20分間インキュベートした。
(2)マウスdhfr遺伝子の取得
マウスdhfrのN末端およびC末端の塩基配列をもとに、配列番号4及び配列番号5の塩基配列で表される2種類のプライマーをDNAシンセサイザーにて合成した。上記(1)のネコ腎臓細胞より得られたcDNAを0.5mlのミクロ遠心チューブに2μl添加し、各プライマーを20pmol,20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgCl、25mM KCl,100μg/ml ゼラチン、50μM各dNTP、4単位 TaqDNAポリメラーゼとなるように各試薬を加え、全量100μlとした。DNAの変性条件を94℃,1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃、3分とする各条件でPerkin−Elmer Cetus社製のDNAサーマルサイクラーを用い、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約550bpのDNA断片を常法に従って調製した。
このDNA断片をInvitrogen社製のT−Vectorに宝酒造(株)製のDNA Ligation Kit Ver.1を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同じ条件のPCRによって確認後、蛍光DNAシーケンサー(パーキンエルマー社製DNAシーケンサー373S)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社製のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、得られたDNA断片がマウスdhfrをコードする配列番号6に示す塩基配列であることを確認した。
実施例1 CHO細胞によるネコEPOの発現
(1)発現用遺伝子ベクターへのネコEPO遺伝子の組込み
配列番号1に示すネコEPOをコードする塩基配列のN末側およびC末端の塩基配列をもとに、配列番号7及び配列番号8の塩基配列で表される2種類のプライマーをDNAシンセサイザーにて合成した。参考例1(2)で得られたネコEPOcDNAを鋳型とし、PCRによる遺伝子の増幅を行った。すなわち、0.5mlのミクロ遠心チューブにネコEPOcDNA2μlを添加し、各プライマーを20pmol,20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgCl、25mM KCl,100μg/ml ゼラチン、50μM各dNTP、4単位 TaqDNAポリメラーゼとなるように各試薬を加え、全量100μlとした。DNAの変性条件を94℃,1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃、3分とする各条件でPerkin−Elmer Cetus社製のDNAサーマルサイクラーを用い、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約550bpのDNA断片を常法に従って調製した。
このDNA断片をInvitrogen社製のT−Vectorに宝酒造(株)製のDNA Ligation Kit Ver.1を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次に、このプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同じ条件のPCRによって確認後、蛍光DNAシーケンサー(パーキンエルマー社製DNAシーケンサー373S)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社製のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、得られたDNA断片がネコEPOをコードする配列であることを確認した。
動物細胞発現用遺伝子ベクターpcDNA3.1(インビトロジェン社製)及び上記で調製したネコEPO遺伝子をEcoRI、Xho I処理した。次に、1%アガロースゲルにより電気泳動を行い、常法により目的の遺伝子の切り出しを行った。得られた遺伝子断片をgeneclean II kit(フナコシ社製)により抽出し、DNA ligation kit ver II(宝酒造(株)社製)により16℃、30分の条件下pcDNA3.1とネコEPO遺伝子の連結を行った。次に、連結した遺伝子をDH5αコンピテントセル(TOYOBO社製)に常法により形質転換を行った。得られた形質転換体から、アルカリ法によりネコEPO遺伝子断片を含む動物細胞発現用遺伝子ベクターDNAを調製した。
(2)発現用遺伝子ベクターへのマウスdhfr遺伝子の組込み
配列番号6に示したマウスdhfrをコードする塩基配列のN末側およびC末端の塩基配列をもとに、配列番号9及び配列番号10の塩基配列で表される2種類のプライマーをDNAシンセサイザーにて合成した。参考例1(2)で得られたマウスdhfr cDNAを鋳型とし、PCRによる遺伝子の増幅を行った。すなわち、0.5mlのミクロ遠心チューブにマウスdhfr cDNA2μlを添加し、各プライマーを20pmol,20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgCl、25mM KCl,100μg/ml ゼラチン、50μM各dNTP、4単位 TaqDNAポリメラーゼとなるように各試薬を加え、全量100μlとした。DNAの変性条件を94℃,1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃、3分とする各条件でPerkin−Elmer Cetus社製のDNAサーマルサイクラーを用い、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約550bpのDNA断片を常法に従って調製した。
このDNA断片をInvitrogen社製のT−Vectorに宝酒造(株)製のDNA Ligation Kit Ver.1を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同じ条件のPCRによって確認後、蛍光DNAシーケンサー(パーキンエルマー社製DNAシーケンサー373S)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社製のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、得られたDNA断片がマウスdhfrをコードする配列であることを確認した。
動物細胞発現用遺伝子ベクターpSV40neo(ATCC製)及び上記で調製したマウスdhfr遺伝子をHind III、Bgl II処理した。次に、1%アガロースゲルにより電気泳動を行い、常法により目的の遺伝子の切り出しを行った。得られた遺伝子断片をgeneclean II kit(フナコシ社製)により抽出し、DNA ligation kit ver II(宝酒造(株)社製)により16℃、30分の条件下pSV40neoとマウスdhfr遺伝子の連結を行った。次に、連結した遺伝子をDH5αコンピテントセル(TOYOBO社製)に常法により形質転換を行った。得られた形質転換体から、アルカリ法によりマウスdhfr遺伝子断片を含む動物細胞発現用遺伝子ベクターDNAを調製した。
(3)CHO細胞へのネコEPO遺伝子およびマウスdhfr遺伝子のトランスフェクション
ネコEPO遺伝子およびマウスdhfr遺伝子をそれぞれ含む発現用遺伝子ベクターDNAをそれぞれ100μg,10μgを調製し、CHO/dhfr-細胞1×107cells/750μL DMEM/F12培地を調製したものと混合した。室温で30分静置し、エレクトロポレーション装置(バイオラッド社製)に設置し、330μF,400Vで通電した。5分間静置後、氷上でさらに10分静置し、10%FBS、ヒポキサンチン、チミジンを含むIMDM培地(インビトロジェン社製)10ccに懸濁し、10cmシャーレにまいた。37℃、5%CO2条件下2日間培養し、細胞を遠心操作により回収し、10%FBS、0.3mg/mLG-418を含むIMDM培地(インビトロジェン社製)10ccに懸濁し、100μL/wellの割合で96穴プレートに処理した。3日毎に10%FBS、0.3mg/mL G-418を含むIMDM培地で交換し、15日間培養を行った。15日後、顕微鏡観察を行い、生存している細胞を選択し、コロニー単離を行った。
(4)メトトレキセートによる遺伝子増幅
上記(3)で得られたクローンを10%FBS、0.3mg/mLG-418を含むIMDM培地(インビトロジェン社製)で増殖させ、2×105cells/10cc/10cmシャーレを準備し、最終濃度5nMメトトレキセート(MTX)を添加した。3日毎に5nM MTXを含む上記培地と交換し、10-15日間培養を継続し、細胞が生存していてコロニーを形成しているものについて、細胞を回収し、2×105cells/10cc/10cmシャーレを準備し、最終濃度50nMメトトレキセート(MTX)を添加した。同様の方法で、500n MMTXまで処理を行い、細胞の生存が確認できる2クローンを選別した。
ここで作製したネコEPOをコードするDNA及びマウスdhfrをコードするDNAを含む組換えCHO細胞を、それぞれ「rFeEPO/CHO1」および「rFeEPO/CHO2」とした。
(5)陽性クローンの遺伝子挿入確認
上記(4)で得られたクローンを10%FBS、0.3mg/mLG-418を含むIMDM培地(インビトロジェン社製)で増殖させ、1×106cellsに調製した。次に、この細胞ををISOGEN(ニッポンジーン社)を用いて総RNAを調製した。得られたRNAを1mM EDTAを含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH7.5)(TE)に溶解し、70℃で5分間処理した後、1M LiClを含むTEを同量加えた。0.5M LiClを含むTEで平衡化したオリゴdTセルロースカラムにRNA溶液をアプライし、同緩衝液にて洗浄した。さらに0.3M LiClを含むTEにて洗浄後、0.01% SDSを含む2mM EDTA(pH7.0)で吸着したポリ(A)RNAを溶出した。こうして得られたポリ(A)RNAを用いて一本鎖cDNAを合成した。すなわち、滅菌した0.5mlのミクロ遠心チューブに5μgのポリ(A)RNAと0.5μgのオリゴdTプライマー(12−18mer)を入れ、ジエチルピロカルボネート処理滅菌水を加えて12μlにし、70℃で10分間インキュベートしたのち氷中に1分間つけた。これに200mM トリス塩酸(pH8.4),500mM KCl溶液を2μl,25mM MgClを2μl,10mM dNTPを1μlおよび0.1M DTTを2μlそれぞれ加え、42℃で5分間インキュベートしたのち、200ユニットのGibcoBRL社製SuperScript II RTを1μl加え、42℃でさらに50分間インキュベートしてcDNA合成反応を行った。さらに70℃で15分間インキュベートして反応を停止し、氷上に5分間置いた。この反応液に1μlのE.coli RNaseH(2units/ml)を加え、37℃で20分間インキュベートした。
(6)ネコEPO遺伝子の確認
配列番号2及び配列番号3の塩基配列で表される2種類のプライマーを用いて、上記(5)のDNAを0.5mlのミクロ遠心チューブに2μl添加し、各プライマーを20pmol,20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgCl 、25mM KCl,100μg/ml ゼラチン、50μM各dNTP、4単位 TaqDNAポリメラーゼとなるように各試薬を加え、全量100μlとした。DNAの変性条件を94℃,1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃、3分とするの各条件でPerkin−Elmer Cetus社製のDNAサーマルサイクラーを用い、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約550bpであることを確認し、そのDNA断片を常法に従って調製した。
このDNA断片をInvitrogen社製のT−Vectorに宝酒造(株)製のDNA Ligation Kit Ver.1を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次に、このプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同じ条件のPCRによって確認後、蛍光DNAシーケンサー(パーキンエルマー社製DNAシーケンサー373S)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社製のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、得られたDNA断片がネコEPOをコードする配列であることを確認した。
(7)マウスdhfr遺伝子の確認
配列番号4及び配列番号5の塩基配列で表される2種類のプライマーを用いて、上記(5)のcDNAを0.5mlのミクロ遠心チューブに2μl添加し、各プライマーを20pmol,20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgCl、25mM KCl,100μg/ml ゼラチン、50μM各dNTP、4単位 TaqDNAポリメラーゼとなるように各試薬を加え、全量100μlとする。DNAの変性条件を94℃,1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃、3分とする各条件でPerkin−Elmer Cetus社製のDNAサーマルサイクラーを用い、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約550bpであることを確認し、そのDNA断片を常法に従って調製した。
このDNA断片をInvitrogen社製のT−Vectorに宝酒造(株)製のDNA Ligation Kit Ver.1を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同じ条件のPCRによって確認後、蛍光DNAシーケンサー(パーキンエルマー社製DNAシーケンサー373S)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社製のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、得られたDNA断片がマウスdhfrをコードする配列であることを確認した。
(8)rFeEPO/CHO1およびrFeEPO/CHO2のネコEPOの生産
rFeEPO/CHO1またはrFeEPO/CHO2を150cm2フラスコにて10%FBS、0.3mg/mL G-418を含むIMDM培地(インビトロジェン社製)で増殖させトリプシン処理により細胞を回収し、三角フラスコに接種した。10%FBS,L−グルタミンを含むMEMおよびHam’sF12の50-50混合液(インビトロジェン社製)下で、37℃、5%CO2条件下、100rpmで5日間培養した。次に、培養した細胞を回収し、遠心操作により培養液を除いた。無血清培地CHO-SFM培地(インビトロジェン社製)で2〜3回懸濁し、三角フラスコで培養した細胞を無血清培地CHO-SFM培地(インビトロジェン社製)100mLを添加し、5%CO2存在下、100rpmで7日間培養した。7日間培養し得られた培養上清を回収した。
実施例2 ネコEPOの検出
実施例1で得られた培養上清中のネコEPOをウエスタンブロッティング法によって検出した。培養上清をアトー(株)製のパジェル中、SDS−PAGEに供した。その後、アトー(株)製のクリアブロットメンブランに常法に従ってブロッティング後、メンブランを、抗ヒトEPOポリクローナル抗体を含むウサギ血清を含むブロックエース(大日本製薬(株)製)溶液に6時間反応させ、0.02%Tween20を含むPBSにて3回洗浄し、さらにペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(バイオラット(株)製)を含むブロックエース溶液に6時間反応させ、同様に洗浄した後、コニカ(株)製のコニカイムノステインHRP1000にて発色を行った。その結果、rFeEPO/CHO1およびrFeEPO/CHO2ともに約30〜35kDのバンドを検出した。
ヒトEPO ELISA kit(R & D system社製)を用いて、培養液中のネコEPOの定量を行った。その結果、ネコEPOの生産速度は800〜1200U/106 cells/48hであった。ネコEPOの推定分子量がおよそ30〜35kDaであり、ヒトEPO ELISA kitによる測定の結果、EPOの定量が可能であったことから、実施例1の培養上清中にネコEPOが発現したものと考えられる。
実施例3 CHO細胞生産ネコEPOの精製
1.限外濾過法による濃縮・バッファー交換
実施例1で得られたネコEPOを含む細胞培養上清を、限外ろ過装置(ミリポア社製)により、分子量10000以下の物質の除去およびHCO60を含む10mM Tris緩衝液(pH7)にバッファー置換を行い、30倍濃縮を行った。限外ろかに使用した膜は、YM10(ミリポア社製、分子量10000カット)を使用した。
SDS−PAGEの結果、図1(左)のレーン1,2に示すようにイムノブロッティングにおいて、ネコEPOのバンドを確認できた。
2.陰イオン交換カラムクロマトグラフィー
次に、HCO60を含む10mMTris緩衝液(pH7)で平衡化した陰イオン(アニオン)交換担体であるDEAEセファロース(アマシャム社製)を用意し、濃縮したネコEPOを含む溶液を導入した。十分にカラムの洗浄を行った後、HCO60を含む10mM Tris-AcOH緩衝液(pH6)、HCO60を含む10mM Tris-AcOH緩衝液(pH5)を通液し、カラム内のpHを低下させて不純物を除去した。次に、pH5に達したところで、50mM NaCl/10mM Tris-AcOH(pH5)/0.01%HCO60、100mM NaCl/10mM Tris-AcOH(pH5)/0.01%HCO60、200mM NaCl/10mM Tris-HCl(pH5)/0.01%HCO60、500mM NaCl/10mM Tris-AcOH(pH5)/0.01%HCO60 で段階的に溶出させ、200mM NaCl/10mM Tris-AcOH(pH5)/0.01%HCO60の画分を次の銅キレートカラムクロマトグラフィーに供した。
本操作における活性回収率をヒトEPO ELISA kitによる測定した結果、約50-70%であった。また、SDS−PAGEの結果、図1のレーン3に示すようにイムノブロッティング・銀染色において、ネコEPOのバンドを確認できた。
3.銅キレートカラムクロマトグラフィー
次に、上記2の精製フラクションを、銅イオンをキレート結合させた銅キレーティングセファロースファーストフロー(アマシャム社製)を予めHCO60を含む10mMTris緩衝液(pH5)で平衡化させた後、通液した。さらにHCO60を含む10mM Tris-AcOH緩衝液(pH5)でカラムに通液したところ、ネコEPO以外の高分子量不純物が除去され、これらのフロースルーを回収した。
本操作における活性回収率をヒトEPO ELISA kitによる測定した結果、70-80%であった。また、SDS−PAGEの結果、図1のレーン4に示すようにイムノブロッティング・銀染色において、ネコEPOのバンドを確認できた。
4.ゲル濾過
最後に、上記3の精製フラクションを、セファクリルS-200(アマシャム社製)のカラムに導入し脱塩操作を行った。このカラムは、pH6.8〜7.0の20mMクエン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム/0.01%HCO60で展開した。
5.得られたネコEPOの純度、精製収率および比活性
上記1〜4の操作の結果得られたネコEPOサンプルをSDS−PAGEを行い、図1のレーン5に示すように銀染色によるゲル染色において、ネコEPOの単一化を確認した。また、イメージアナライザー(Bio-Rad社製)により染色したゲルを用いた純度検定を行った結果、90%の純度を確認することができた。さらに、得られたネコEPOサンプルをC4樹脂カラム(VYDAC社製)に供した。測定条件は、流速1mL/minで通液し、0〜80%エタノール/10mM Tris-HCl(pH7)のグラジエント溶出を行い、230nmのUV吸光度測定を行った。その結果、リテンションタイム50-60min、約66-80%エタノールの画分に溶出が見られ、得られたネコEPOの純度は約90%であった。
さらに、上記1〜4の操作の結果得られたネコEPOの最終的な精製収率をヒトEPO ELISA kitによる測定した結果、35-50%であった。また、ゲル濾過精製溶液のタンパク定量をBCA protein assay(PIERCE社製)を用いて定量した結果、比活性は約100000U/mgであった。また、エンドトキシン含量は0.9ng/mg蛋白量であった。
以上、本実施例3によって得られたネコEPOの純度、精製収率および比活性を、後述する比較例1と比較すると、純度は同等であったものの、精製収率は35-50%、比活性は約100000U/mgであり、比較例1の精製収率10-20%、比活性値50000-60000U/mgと比べて、顕著に向上した。
実施例4 CHO細胞生産ネコEPOの精製
1.限外濾過法による濃縮・バッファー交換
実施例1で得られたネコEPOを含む細胞培養上清を、限外ろ過装置(ミリポア社製)により、分子量10000以下の物質の除去およびHCO60を含む10mM Tris緩衝液(pH5)にバッファー置換を行い、30倍濃縮を行った。限外ろかに使用した膜は、YM10(ミリポア社製、分子量10000カット)を使用した。
2.銅キレートカラムクロマトグラフィー
銅イオンをキレート結合させた銅キレーティングセファロースファーストフロー(アマシャム社製)を予めHCO60を含む10mM Tris緩衝液(pH5)で平衡化させた後、上記1の溶液を通液した。さらにHCO60を含む10mM Tris-AcOH緩衝液(pH5)でカラムに通液したところ、ネコEPOを含むフロースルーを回収した。
本操作における活性回収率をヒトEPO ELISA kitによる測定した結果、70-80%であった。
3.陰イオン交換カラムクロマトグラフィー
次に、HCO60を含む10mM Tris緩衝液(pH7)で平衡化した陰イオン(アニオン)交換担体であるDEAEセファロース(アマシャム社製)を用意し、上記2のネコEPOを含む溶液を導入した。十分にカラムの洗浄を行った後、HCO60を含む10mM Tris-AcOH緩衝液(pH6)、HCO60を含む10mM Tris-AcOH緩衝液(pH5)を通液し、カラム内のpHを低下させて不純物を除去した。次にpH5に達したところで、50mM NaCl/10mM Tris-AcOH(pH5)/0.01%HCO60、100mM NaCl/10mM Tris-AcOH(pH5)/0.01%HCO60、200mM NaCl/10mM Tris-HCl(pH5)/0.01%HCO60、500mM NaCl/10mM Tris-AcOH(pH5)/0.01%HCO60で段階的に溶出させ、200mM NaCl/10mM Tris-AcOH(pH5)/0.01%HCO60の画分を次のゲル濾過に供した。
本操作における活性回収率をヒトEPO ELISA kitによる測定した結果、約50-70%であった。
4.ゲル濾過
最後に、上記3の精製フラクションを、セファクリルS-200(アマシャム社製)のカラムに導入し脱塩操作を行った。このカラムは、pH6.8〜7.0の20mMクエン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム/0.01%HCO60で展開した。
5.得られたネコEPOの純度、精製収率および比活性
上記1〜4の操作の結果得られたネコEPOサンプルをSDS−PAGEを行い、銀染色によるゲル染色を行い、ネコEPOの単一化を確認した。また、イメージアナライザー(Bio-Rad社製)により染色したゲルを用いた純度検定を行った結果、90%の純度を確認することができた。さらに、得られたネコEPOサンプルをC4樹脂カラム(VYDAC社製)に供した。測定条件は、流速1mL/minで通液し、0〜80%エタノール/10mM Tris-HCl(pH7)のグラジエント溶出を行い、230nmのUV吸光度測定を行った。その結果、リテンションタイム50-60min、約66〜80%エタノールの画分に溶出が見られ、得られたネコEPOの純度は約90%であった。
さらに、上記1〜4の操作の結果得られたネコEPOの最終的な精製収率をヒトEPO ELISA kitによる測定した結果、35-50%であった。また、ゲル濾過精製溶液のタンパク定量をBCA protein assay(PIERCE社製)を用いて定量した結果、比活性は約100000U/mgであった。また、エンドトキシン含量は0.9ng/mg蛋白量であった。
以上、本実施例4によって得られたネコEPOの純度、精製収率および比活性について、後で述べる比較例1と比較すると、純度は同等であったものの、精製収率は35-50%、比活性は約100000U/mgであり、比較例1の精製収率10-20%、比活性値50000-60000U/mgと比べて、顕著に向上した。
実施例5 ネコEPOの活性測定
実施例3または4で製造されたネコEPOの活性測定は、ヒトEPOの活性測定法を適応し、TF−1細胞(ATCCより入手)を用いて以下のようにして行った。
TF−1細胞をRPMI1640/10%FBS培地に懸濁し、2×105cells/mLに調製し、96穴microplateに100μL添加した。さらに標準品として、ヒトEPOの10U、5U、1U、0.5U、0.1U、0Uをそれぞれ10μL、実施例3または4で得られたネコEPO精製サンプルの原液、10倍希釈液、100倍希釈液、1000倍希釈液それぞれを10μL添加し、5%CO2、37℃条件下、24時間培養し、cell counting kit-8を用いて細胞増殖の程度を測定した。すなわち、kitのWST-8を各穴10μLずつ添加し、1時間培養後、ELISA Plate reader(アマシャム社製)により吸光度A450を測定した。
標準品として用いたヒトEPOの各添加量(10U、5U、1U、0.5U、0.1U、0U)における吸光度A450をプロットしたグラフを検量用に用いて、実施例3または4で得られたネコEPO精製液×1000、×100希釈液の吸光度から、各ネコEPO精製液中のネコEPO含有量を定量した。その結果、実施例3または実施例4で得られたネコEPO精製液中のネコEPOの含有量は、いずれも2000〜3000U/mLであった。また、濃度依存的なTF-1細胞の増殖が確認できた。すなわち、ネコEPOの活性が確認できた。
比較例1 CHO細胞生産ヒトEPO精製方法における陰イオン交換カラムクロマトグラフィー法の適応
本比較例では、実施例3で得られたネコEPOを含む細胞培養上清を、銅キレート担体を用いる精製工程(実施例3の3.、実施例4の2.)を行わずに、限外ろ過、陰イオン交換担体及び逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製した。
実施例3で得られたネコEPOを含む細胞培養上清を、限外ろ過装置(ミリポア社製)により、分子量10000以下の物質の除去およびHCO60を含む10mMTris緩衝液(pH7)にバッファー置換を行い、30倍濃縮を行った。限外ろかに使用した膜は、YM10(ミリポア社製、分子量10000カット)を使用した。
次に、HCO60を含む10mMTris緩衝液(pH7)で平衡化した陰イオン(アニオン)交換担体であるDEAEセファロース(アマシャム社製)を用意し、濃縮したネコEPOを含む溶液を導入した。十分にカラムの洗浄を行った後、5mM酢酸/1mMグリシン/6M尿素を含む緩衝液(pH4.5)で4倍洗浄した。さらに、25mM NaCl/10mM Tris/0.01%HCO60を含む溶液により洗浄し、100mM NaCl/10mM Tris(pH7)/0.01%HCO60、200mM NaCl/10mM Tris-HCl(pH7)/0.01%HCO60、400mM NaCl/10mM Tris-HCl(pH7)/0.01%HCO60、500mM NaCl/10mM Tris-HCl(pH7)/0.01%HCO60で段階的に溶出させ、抗ヒトEPO抗体を用いたイムノブロッティングを行ったところ、200〜500mM NaCl画分にバンドが見られ、本操作による活性回収率は20-30%であった。
次に、得られた精製フラクションを逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に適用し、C4基質(VYDAC 214TP-B)で充填して密閉したカラムにロードした。0.45×10mmのカラムで、流速1mL/minの条件下、10mM Tris(pH7)から80%エタノール/10mM Tris(pH7)までの直線勾配で溶出した。UV230nmで測定し、溶出液を用いて抗ヒトEPO抗体を用いたイムノブロッティングを行ったところ、約66〜80%エタノールの溶出画分でネコEPOバンドを検出し、純度は約90%であった。また、培養液から上記の操作の結果得られたネコEPOの最終的な精製収率をヒトEPO ELISA kitによる測定した結果、10-20%であった。さらに、得られた精製品のタンパク定量をBCA protein assay(PIERCE社製)を用いて定量した結果、比活性は約50000-60000U/mgであった。また、エンドトキシン含量は0.9ng/mg蛋白量であった。本操作による活性回収率は50-60%であった。なお、ヒトEPO(フナコシ社製)を上記と同様HPLCに導入し、エタノール勾配による溶出を行ったところ、50-65%エタノールで溶出された。
図1は、実施例3の各カラムクロマト工程における精製液をSDS-PAGEによる電気泳動を行い、イムノブロッティング(左)及び銀染色法(右)により染色した結果を示す図である。

Claims (6)

  1. 動物細胞を培養して培養上清中にネコエリスロポエチンを発現させる工程、及び発現させたネコエリスロポエチンを銅キレート担体を用いて精製する工程とを含むネコエリスロポエチンの製造方法。
  2. ネコエリスロポエチンを陰イオン交換担体を用いて精製する工程を含む請求項1に記載のネコエリスロポエチンの製造方法。
  3. 陰イオン交換担体がジエチルアミノエチル基を有する陰イオン交換担体である請求項2に記載のネコエリスロポエチンの製造方法。
  4. 動物細胞がCHO細胞である請求項1〜3のいずれかに記載のネコエリスロポエチンの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造されたネコエリスロポエチン。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造されたネコエリスロポエチンを含む動物用医薬。
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