JP2008266082A - ガラス管成形用スリーブ及びガラス管の製造方法 - Google Patents

ガラス管成形用スリーブ及びガラス管の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ダンナー法を用いガラス管を生産する際の管内面の失透発生を防止できるガラス管成形用スリーブ、およびダンナー法を用いてガラス管を生産する際の管内面における失透発生を防止できるガラス管の製造方法を提供する。
【解決手段】耐火物製の円筒部に、円筒部と同軸にてブローパイプが円筒部を貫通したガラス管成形用スリーブの円筒部とブローパイプとの間の空間を、隔壁により複数の内部空間に分割し、これらの内部空間に気体を導入し、内部空間の雰囲気を制御可能にする。また耐火物製の円筒部の中心にブローパイプを貫通させたスリーブ上に溶融ガラスを流下させ、スリーブの先端からガラスを連続的に引き出してガラスを管状に成形する際にスリーブの円筒部とブローパイプとの間の中空部にガスを導入し、スリーブ界面に接触するガラスに対し、例えば還元作用を与えてガラス管内面の失透を防止する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ダンナー法を用いてガラス管を成形するために用いるスリーブ及びこのスリーブを用いたガラス管の製造方法に関する。
ガラス管を大量生産する方法として、ダンナー法が従来から幅広く用いられてきた。ダンナー法は、斜め下方向に向けて支持され、軸方向に回転が与えられているスリーブ上に溶融ガラスを導き、このスリーブの周りに溶融ガラスを巻き付け、さらにこのスリーブの斜め下の先端部からガラスを連続的に引き出すことによってガラスを管状又は棒状に成形するものであって、他のガラス管の製造方法に比べ精度よく製造できるという特徴がある。
ダンナー法に用いるスリーブ材としては、アルミナ、ムライト、ジルコン系などの焼成耐火物セラミックスが従来から一般に用いられてきた。近年では、要求品質が特に厳しいガラス管を製造する場合や、ガラス組成が耐火物スリーブ材に対し浸食性であって従来のセラミックス耐火物を用いたのではスリーブの寿命が著しく短くなってしまうなどの場合には、耐火物の一部または全面に白金または白金合金を被覆したスリーブが用いられている。
他方、ガラス管に求められる特性については、エレクトロニクス分野などに用いられる部品として、より高い寸法精度や外観特性が求められるほか、誘電率などの電気特性や、軟化点などの物理特性、あるいは紫外線カットなどに代表される光学特性など、その用途に応じ、さまざまな高度の要求がなされるようになっている。これらのさまざまな特性要求を満たすガラス管を製造し供給するために、これらの特性を満たすガラス組成を得るためのさまざまな研究や開発が鋭意なされてきた。しかしながら、こうして開発されたガラス組成は、ほとんどすべての場合に、従来のガラス組成に比べてダンナー法でガラス管を成形する際に失透が発生しやすくなって、その製造がより難しくなっている。ダンナー法では、成形に適した高精度のチューブを成管するために、スリーブの先端にて成形に適した粘度となるよう、厳密な温度制御をするため、スリーブとの接触時間が長いという特徴がある。従って失透しやすいガラスの製造方法として、ダンナー法はアップドロー法やベロー法と比べると失透を生じ易い製造方法となっている。
特許文献1には、ダンナー法を用いたガラス加工時における泡の発生を抑え、またガラスの粘度を下げるために、スリーブのおかれている雰囲気を調整する方法が記載されている。また特許文献2および3には、管ガラスの内面に発生する失透を防止するための解決方法として、特定のガラス組成を用いる方法、およびスリーブに被覆を設ける方法がそれぞれ記載されている。さらに特許文献3には、成形されるガラス管よりも軟化点が30℃以上高く耐火物との反応生成物を生じないガラスを耐火物スリーブの外表面に被覆し、失透を防止する方法が記載されている。
特開平08−283031号公報 特開平09−012332号公報 特開2005−22882号公報
本発明者らは、上述したようなさまざまな高度の特性要求を満たすガラス管を製造し供給するには、ガラス管を精度よく製造できるダンナー法が重要であって、そのためにはダンナー法における管内面での失透が発生しないようにすることが特に重要であるとの認識のもとに研究を行なった。
管内面に失透が発生すると、その大きさによっては、例えば蛍光ランプなどの製造において大きな欠点となりうる。失透の大きさによっては、管内面に蛍光体を塗布する工程でむらを生じる原因や、塗った後のベーキング工程ではがれ発生の原因となるおそれがある。
上記特許文献1には、ダンナー法におけるスリーブ外側の雰囲気を制御することが記載されている。しかしながら、この雰囲気制御は、成形管の外表面側に作用するものであって、本発明の管内面における失透発生を防止するものではない。
また上記特許文献2には、ダンナー法におけるガラスの失透を防止するために、成形対象である管ガラスの組成を規定することが記載されている。しかしながら、この方法は、特許文献2に規定された組成については、失透がなくなるとしても、その範囲外のガラス、すなわち、上記したさまざまな要求特性を満たす各種ガラス管の製造における失透の問題の解決に役立つものではない。
さらに特許文献3には、失透生成物がガラスと耐火物との反応によって生じる場合に、これを防止する手段が記載されている。しかしながら、耐火物との反応ではなく、ガラス組成の成分の一部によって発生する失透に対しては、適用できるものではない。
従って、高い寸法精度の管ガラスを大量に生産し、また管内面における失透の発生の防止されたガラス管の製造における問題点、すなわち、ダンナ−法を用いて高い寸法精度の管ガラスを大量に生産しようとする際に、ガラス管の内面に発生し、ガラス組成の成分の一部によって発生する失透の防止については、これらの特許文献1〜3には記載もその示唆もない。
本発明は、ダンナー法を用い、さまざまな高度の特性要求を満たし高い寸法精度を有するガラス管を大量に生産し、また管内面における失透の発生を防止することのできるガラス管成形用スリーブを提供し、またダンナー法を用い、さまざまな高度の特性要求を満たし高い寸法精度を有するガラス管を大量に生産し、また管内面における失透の発生を防止することのできるガラス管の製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、種々の実験を行った結果、ダンナー法による管ガラスの製造方法において、スリーブに中空部と中空部にガスを導入する導入管と排気管を設け、その中空部に酸化ガス、または還元性ガスを導く構造のスリーブを構成し、このスリーブを用い、中空構造の少なくとも一部の内部空間の気体成分を制御することにより、スリーブに導入されたこれら酸化または還元ガスがスリーブ材料を通過してスリーブ外表面に達し、このスリーブ界面に接触しているガラスに対し、酸化作用または還元作用を与えることによって、管ガラス内面における失透の発生を抑制し、あるいは防止することができることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明のガラス管成形用スリーブは、耐火物製の円筒部と、円筒部と同軸にて前記円筒部を貫通するブローパイプと、前記円筒部とブローパイプとの間の空間を円筒部の軸と交差する面で複数の内部空間に分割する隔壁と、この隔壁によって区分された複数の内部空間の少なくとも一つの内部空間と連通する導入管および排気管とを有し、
導入管から気体を内部空間に導入することにより、前記内部空間の雰囲気を制御可能としたことを特徴とする。
また、本発明のガラス管の製造方法は、ブローパイプを同軸状に貫入させた耐火物製の円筒部を有し回転するガラス管成形用スリーブ上に溶融ガラスを流下させ、このスリーブの先端からガラスを連続的に引き出して管状に成形するガラス管の製造方法において、スリーブの円筒部とブローパイプとの間の中空部に導入管を介して酸化性または還元性ガスを導入し、スリーブ界面に接触しているガラスに対し酸化作用または還元作用を与えることにより、ガラス管内面に発生する失透を防止することを特徴とする。
本発明によれば、さまざまな高度の特性要求を満たし高い寸法精度を有する管ガラスをダンナー法を用いて生産する際に、管内面における失透の発生を効果的に防止することができる。
次に本発明の実施の形態について具体的に説明することにより、本発明の詳細について述べる。
本発明において、スリーブに用いられる耐火物は、高温のガラスと接触するため浸食が小さい材料、例えばアルミナ、ムライト、ジルコン系などの焼成耐火物、あるいは耐食性が高いZrO2系などのセラミックスを溶射したものを使用することができる。このスリーブに用いられる耐火物の見かけ気孔率が、1%未満であると、中空部に挿入したガスが十分界面まで透過せず、スリーブとガラス界面で起こる酸化、還元効果が十分及ばない可能性があり、また気孔率が30%を超えると、耐火物のガラスに対する侵食性が極端に低下しスリーブ寿命を著しく短命化する。従ってスリーブに用いられる耐火物の見かけ気孔率は1%以上であることが望ましく、3%以上であることがさらに望ましい。またスリーブに用いられる耐火物の見かけ気孔率は30%以下であることが望ましく、25%以下であることがさらに望ましい。
硼珪酸ガラスのような高温で耐火物セラミックスの浸食の大きいガラスを成形する場合には、成形精度や品質を維持するために、スリーブのガラスと接触する一部またはすべての部分に白金材を用いることができる。
この際の白金材料としては、白金、あるいは白金ロジウム合金、あるいは白金−金合金から少なくとも1種を選べばよい。これらを選ぶ条件としては、使用温度やガラスの濡れ性などを適宜考慮する。
白金または白金合金をスリーブの少なくとも一部に使用し、中空部を持つスリーブを形成する方法としては、上記気孔率を有する耐火物に白金板材を加工し被覆する方法のほか、上記耐火物セラミックスに白金または白金合金を溶射加工して被覆する方法がある。また白金部材自身に強度を持たせ、白金材だけで中空構造を形成することも可能である。この場合には、機械的強度を確保するために、白金ロジウム合金、または強化白金、強化白金合金などの材料を使用することが望ましい。
本発明において、各雰囲気調整に用いるガスとして、以下のものが挙げられる。酸化ガスとしては、酸素ガスを含有する通常の大気のほか、中性ガスと混合された酸素ガスが挙げられる。還元性ガスとしてはHガス、COガス、炭化水素ガスが挙げられる。ここに中性ガスとしては、Nガス、CO2ガス、Arガスに代表される不活性ガスが挙げられる。
ガスは気孔率のある耐火物セラミックススリーブを通過するものの、白金を使用した部位では、ガスの通過が妨げられる。そこで白金を使用した部位の界面のガラスに還元作用を及ぼす方法として、水素ガスを含むガスを用いることにした。他のガスは白金を通過することができないが、水素ガスだけは白金を通過し、界面のガラスに還元作用を及ぼすことが可能であることがわかった。また水素ガスを用いて還元作用を起こすには、水素ガス濃度を0.1体積%以上にする必要があることがわかった。
スリーブは高温中で使用されるため、熱膨張などにより実際には耐火物セラミックススリーブと固定具などの金属部材との接合部にはわずかな隙間が生じる。そうすると水素は隙間からリークする大気中の酸素と反応してしまうので、目的とする部分を還元性に維持するには水素を過剰に入れる必要がある。このための好ましい水素濃度は0.2%(体積%)以上である。他方、この場合の水素濃度の上限については、スリーブとの界面のガラスの還元性を維持することが目的であるため、この目的での水素濃度の上限についての制約は特にないが、ダンナー成形におけるスリーブ配置される環境は高温状態であることから、この場にガスを挿入するには、取り扱い上の安全性についての考慮が重要である。水素ガスの爆発限界を避ける必要から、水素濃度は4%以下にすることが望ましい。従ってスリーブ構造体と安全性を加味し、望ましい水素濃度の範囲は0.2%〜4%である。
本発明における雰囲気調整の作用は、特に還元作用側で有効であり、またSiO、B3、CeOを含有するガラスについて特に有効であることが、鋭意研究の結果判明した。CeO含有ガラスは、CeO自体の失透温度が高いのでダンナー成形には不向きなガラスであるものの、失透種をCeOからCeBSiOへと変化させることによって、失透温度を低下させることができるという事実を見いだした。この失透温度を低下させる技術は、CeOを必須とする硼珪酸ガラスに適用できる。
CeOは紫外線の吸収剤としてガラスにはよく用いられるが、CeOを含むガラスは、CeOが析出し失透しやすい。このため、スリーブ上にガラスが滞在する時間が長い上にスリーブ界面に近づくほどガラスの移動速度は遅くなるダンナー法による管成形には、このようなガラスは不向きであった。失透の発生には温度と時間が共に影響を与えるので、ダンナー法を用いた場合の失透はスリーブ界面で最も発生しやすい。
本発明による効果は、SiO−Al−B−(LiO+NaO+KO)−(CaO+MgO+BaO+SrO)−CeO−(SnO+SnO)−(ZrO2+ZnO+Nb)のガラス組成の下記組成域において特に顕著にみられる。
まず、ガラスの網目形成成分であるSiOが80%(質量%)を超えるとガラスの溶融性・成形性が低下し、また55%未満ではガラスの化学的耐久性が低下する。化学的耐久性が低下すると、ウェザリングまたはやけなどの原因となって、蛍光ランプのガラス管に用いた場合には輝度の低下や色むら発生の原因となる。このため、SiOの含有は55〜80%であることが望ましく、またSiOの含有は62〜78%であることがより望ましい。
また、Alの含有はガラスの失透性および化学的耐久性を改善する作用があり、Alの含有が7%を超えると脈理が発生するなど、溶融性が低下する。また、Alの含有が1%未満では分相や失透が発生しやすくなり、ガラスの化学的耐久性も低下する。このため、本発明におけるAlの含有は1〜7%の範囲が望ましく、2〜5%の範囲であることがより望ましい。
また、Bはガラスの溶融性向上および粘度調整のために用いられる成分であるが、揮発性が非常に高く、25%を超えると均質なガラスが得られにくくなる。また、含有量が1%未満では溶融性が著しく低下する。このため、本発明におけるBの含有は5%以上、より望ましくは10%以上であり、さらに望ましくは12%以上である。
また、LiO、NaO、およびKOはガラスの融剤として作用し、ガラスの溶融性を改善するとともに粘度、熱膨張係数の調整に用いられる成分である。これらのそれぞれの量が所要の含有量に満たない場合には、その効果が得られず、他方でそれぞれの含有量が上限値を超える場合には熱膨張係数が大きくなりすぎ、また化学的耐久性が低下する。各成分の含有量は、LiOを0〜3%、NaOを0〜8%、KOを2〜12%とすることが望ましく、これらはいずれか単独を含有させるよりも、2種類または3種類を含有させたほうが、混合アルカリによる絶縁性の向上などの効果が期待できるので望ましい。なお、NaOについては、蛍光ランプの用途では、ランプ点灯中、NaOは水銀と反応し、アマルガムを形成することが知られている。ガラス中の過剰なNaOは、蛍光ランプ中で有効に作用する水銀量を結果として減らすことになるため、水銀使用量削減の環境的観点からも、NaOの上記上限値を超える添加は望ましくなく、より望ましくは0〜4%である。
また、CaO、MgO、BaO、およびSrOはガラスの高温における粘度を下げ、溶融性を向上させる効果を持つ成分であり、必要に応じて合計量で5%まで添加することができる。上限値を超えて添加すると、ガラス状態が不安定となり、失透が生じやすくなる。
また、ZrO2、ZnO、Nbは耐紫外線ソラリゼーション性を高めるために有効な成分であるため、蛍光ランプなどの用途で使用する場合には5%を超えない範囲で必要に応じて添加することができ、5%を超えると失透性が強くなる。
また、CeOは紫外線を強力に吸収する成分であり、本発明に係る必須成分であって、CeOが0.1%未満では紫外線を遮蔽する効果が不十分であり、他方、5%を超えると失透性が高くなるため、これらの間の範囲で含有することが望ましい。
通常ガラス中ではCeイオンはCe3+とCe4+の状態で共存し、Ce3+が316nmにCe4+が243nmに吸収帯を持つ。Ce3+はシャープな吸収を示すのに対し、Ce4+は可視域にかかるブロードな吸収を示すため、添加量が増加すると、ガラスが黄褐色に着色する。可視域の吸収がない無色のガラスで、より高波長側の紫外線である315nm以下の紫外線を効率よく吸収するためには、Ce3+の割合を高める必要がある。SnOにはCe3+の割合を高める効果があるため、SnOを含有することは好ましく、この効果を得るために0.1%以上含有させる。しかし3%を超えると失透性が高くなるため望ましくない。またSnOに代えて、Cや有機化合物を添加し同様の効果を出すことも可能である。この場合はNaSOを清澄剤として併用することで清澄効果を同時にもたらすことができる。本発明のガラス溶融の際に使用するこうした清澄剤は、還元性清澄剤であることが望ましい。本発明の特徴は、紫外線吸収剤として使用するCeOをCe3+イオンの状態にコントロールすることで良好な紫外線吸収特性が得られることであり、酸化性の清澄剤は好ましくない。同様の理由から、酸化剤として働く原料の使用も避けるべきである。具体的には、清澄剤としては、NaClやNaSO+Cが望ましく、Sb、Asの使用は好ましくない。また、アルカリ成分の硝酸塩などは使用すべきではない。
上記組成のガラスは、硼酸とアルカリ金属酸化物を含む硼珪酸ガラスであることから、スリーブ材のガラスと接触する面は浸食性の面からも少なくとも一部は白金で製作されることが望ましい。ガラス接触面が耐火物スリーブの場合は、多かれ少なかれガラスによって耐火物が浸食され、耐火物とガラスの間で不均質ガラスを形成する。これにより管ガラスを成形した際に、管の成形精度が低下するだけでなく、管の内面の真円度が低下し、品質が著しく低下するので好ましくない。
このため、最も浸食の大きいガラスの落ち口部分や寸法精度の大きい影響のある先端部分に白金材が使用されることが望ましく、ガラス接触面をすべて白金、白金合金で製作されることがより望ましい。また白金材料は、白金、あるいは白金ロジウム合金、あるいは白金−金合金でもよく、いずれも水素ガスを透過するため、使用温度やガラスの濡れ性などを考慮して適時選択されるものである。水素ガスは気孔率を持つ焼成耐火物を通過し、白金材を通過してガラス界面まで到達し、界面ガラスの還元作用を維持することができる。
次に挿入する水素含有ガスの効果について詳細に説明する。スリーブ中空部の雰囲気を意図的に調整しない場合には、CeOはガラス中でCe3+とCe4+とが共存する状態にありCeイオンは価数変化が起こりやすい。このため、スリーブの界面のガラスはガラス中のOH基の水素が切り離され、切り離された水素は白金を通過してスリーブ内部に拡散し残った酸素がガラス中のCe3+のセリウムイオンをCe4+に酸化していると考えられる。そしてスリーブ中空部の雰囲気を意図的に調整することによって、これが防止されるものと考えられる。特にこの系のガラス中のセリウムイオンは、Ce4+の状態では着色性を有し、例えば蛍光ランプを作製した場合に、可視域の透過率を低下させる可能性がある。このためCeイオンはあらかじめCe3+の状態にしておくことが望ましい。
本発明ではあらかじめSnOやカーボンなどの還元剤を成分中に添加するとによって還元雰囲気で溶融しガラス中のCe3+の割合を高めておくことを前提にしているが、それだけではダンナー成形のスリーブの界面における酸化反応を抑えるには至らず、スリーブ界面では上記の反応によって酸化状態となり、CeOの失透を発生させやすい条件となる。これを回避するためにスリーブ内部に水素ガスを挿入し、耐火物、及び白金を通過した水素によって界面ガラスは還元状態を維持することができる。スリーブ界面を還元状態に維持した場合には、CeOはできず、CeBSiOが優先的に発生しやすい状態となる。本発明ではCeBSiOの失透を発生させることが目的ではなく、CeBSiOの発生がCeOの管成形における失透発生温度にくらべ、50℃低いことを見出し、こうすることによってダンナー法において管内面に発生する失透を防止でき、より有利な成形ができることがわかった。こうしてガラス組成が同じであっても界面の雰囲気を還元性に維持することにより、実際の管成形における成形粘度と失透温度の重なりを回避することができ管内面に失透を発生することなく、生産を継続できるようになった。
次に、本発明の実施例について、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
(実施例1)
図1は本発明に係るガラス管成形用スリーブの一実施形態を示す模式的断面図である。図1において、スリーブ1は、スリーブシャフト4と、耐火物製円筒部6と、その円筒部6を挟持し、かつ、スリーブシャフト4に固定する耐熱金属製の固定ナット8、固定具9からなり、耐火物製円筒部6、スリーブシャフト4、固定ナット8、および固定具9で囲まれて区画形成される中空部10を有する。ここで、耐火物製円筒部6は、アルミナ、ムライト、ジルコン系などの焼成耐火物からなる。これらの焼成耐火物は、水素、酸素などの気体に対し透過性である。前記中空部10内には、耐火性金属などによって形成されるスリーブ管軸を横断する隔壁20が設けられ、中空部10をスリーブ先端側中空部10aとスリーブ後端側中空部10bとに分割している。
スリーブ1に固定されたスリーブシャフト4は、駆動部5によりスリーブ1の先端が斜下方向になるように支持されて、回転が与えられる。スリーブシャフト4には耐熱鋼が好ましく用いられる。このスリーブシャフト4は、その軸心にブローエア供給孔16を有し、その上部の開口部はブローパイプ17を介してブローエア供給装置(図示せず)に接続されている。さらに固定具9に設けられている環状の凹溝上に複数のベアリング(図示せず)によって回転自在にリング13が取り付けられ気密性が保持された環状の空洞部14を形成している。空洞部14には、スリーブ1の先端側中空部10aと連通するように貫通パイプ(導入管)12aが取り付けられている。空洞部14には、ガス送入パイプ18を介してあらかじめ成分調整されたガスを充填したガスボンベ11が接続されている。また、先端側中空部10aは貫通パイプ(排気管)12bを介して固定具9に設けられた貫通孔15と連通している。
このような構成のガラス管成形装置では、駆動部5によりスリーブシャフト4を介して、固定ナット8と固定具9とにより挟持されスリーブシャフト4に固定された耐火物製円筒部6が軸を中心に回転し、溶融ガラスAは、回転する耐火物製円筒部6の外表面上に供給され、耐火物製円筒部6に巻回されてスリーブ1の先端まで移動し、この後、ブローエア供給装置から送出され、スリーブシャフト4のブローエア供給孔16を通過する空気により中空にされ、固定ナット8部分から引き抜かれて連続的にガラス管に成形される。
以上のような装置構成を用い、本発明に係るガラス管の製造方法を実施することができる。まずガスボンベ11からガス送入パイプ18、空洞部14、および貫通パイプ12aを介してガスをスリーブ1の中空部10に送入する。中空部10にガスが送入されることにより、耐火物製円筒部6内にガスが浸透する。この状態を維持することにより、選択されたガスによってスリーブ界面上の溶融ガラスAに酸化または還元作用を及ぼす。その結果、上述のように溶融ガラスAとスリーブ円筒部6との界面での失透の発生を抑えることができる。
この際、たとえばSiO,B,CeO含有ガラスでガラス管成形する場合には、導入ガスとしてH、CO、炭化水素などの還元性ガスを使用することにより、CeO結晶の析出を防止できる。また、本実施例では、隔壁20によって仕切られたスリーブ先端側中空部10aのみにガス供給することによって、スリーブ上の比較的低温域で析出する失透を効果的に抑制することができるようになった。この方法によれば、スリーブの中空部全体にガス挿入するのに比べ、少ないガス量で効果的に所期の目的が達成される。
なお、ガラス管成形温度に対してスリーブ上の比較的高温域で析出する失透種を抑制するために、前記貫通パイプ(導入管)12aおよび貫通パイプ(排気管)12bをスリーブ後端側中空部10bに連通させ、後端側中空部10bに対してガス供給することも可能である。
(実施例2)
上記実施例1において、環状の空洞部14(ロータリージョイント)を独立して2組設け、一方の空洞部14は、スリーブ1の先端側中空部10aと連通するように貫通パイプ(導入管)12aを取り付け、他方の空洞部14は、スリーブ後端側中空部10bと連通するように貫通パイプ(導入管)12aを取り付け、それぞれに独立した貫通パイプ(排気管)12b、12b’を設けることにより、先端側中空部10aと後端側中空部10bとに異なるガスを導入することが可能になる。たとえば、スリーブ上の比較的低温域で析出する失透を抑制するために、失透温度域に相当する先端側中空部10aには比較的高濃度または高圧のガスを供給し、後端側中空部10bには予防的に比較的低濃度または低圧のガスを供給する使用法が可能であり、また、先端側中空部10aには還元性の高い水素含有ガスを供給し、後端側中空部10bにはCO、炭化水素ガスなどを供給する使用法が可能である。
(実施例3)
図2は、本発明に係るガラス管成形用スリーブの一実施形態を示す模式的断面図である。図2に示すスリーブ1は、実施例1で示した図1のスリーブ1を構成する耐火物製円筒部6のスリーブ先端側外表面に、プラズマ溶射法、火炎溶射法などの方法により白金被覆7を行なったものである。なお、本実施例では白金を用いているが、白金の他、ロジウムおよびそれらの合金からなる群より選択された金属を同様に使用することができる。このようにしてスリーブ先端側外表面に白金被覆することにより、溶融ガラスと耐火物との反応を防止し、耐火物の侵食によるガラス管成形精度の劣化を予防することができる。
また、本実施例においては、白金被覆7が施された部位と被覆されていない部位との境目に相当する中空部10に隔壁20が設けられている。このように構成されたスリーブにおいて、白金被覆部分は水素以外の気体を透過しないため、導入ガスとして水素含有ガスを使用することで、白金被覆7上のガラスに対しても還元作用を与えることができ、上記実施例Aと同様に白金被覆界面においても失透の発生を抑えることができる。
(実施例4)
上記実施例3と同様耐火物製円筒部6のスリーブ先端側外表面に白金被覆7を施したスリーブにおいて、上記実施例Bと同様に環状の空洞部14(ロータリージョイント)を独立して2組設け、一方の空洞部14は、スリーブ1の先端側中空部10aと連通するように貫通パイプ(導入管)12aを取り付け、他方の空洞部14は、スリーブ後端側中空部10bと連通するように貫通パイプ(導入管)12a’を取り付け、それぞれに独立した貫通パイプ(排気管)12b、12b’を設けることにより、白金被覆7が施された部位の中空部と被覆されていない部位の中空部の内部雰囲気を独立して制御することが可能である。
たとえば、白金被覆7が施された先端側中空部10aには透過性のある水素含有ガスを供給し、白金が被覆されていない後端側中空部10bにはCO、炭化水素ガスなどを供給する、といった使用法が可能である。
なお、上記実施例2および4では、スリーブ先端側表面に白金被覆した例を示したが、耐火物の侵食防止、泡欠陥の低減のため、高温の溶融ガラスが流下する部位を白金被覆したスリーブを用いてガラス管を製造することもできる。その場合には上記実施例2および4とは、白金被覆部位を異ならせて、それに対応した導入ガスを選択することもできる。
(実施例5〜11、比較例1〜2)
図3には、この実施例5〜11および比較例1〜2で使用した装置構成を示した模式的断面図を示した。まず、実施例5〜11の原料成分を表1に記載の組成となるように秤量をして混合し、得られた原料混合物をそれぞれ石英ルツボまたは白金ルツボに収容し、電気炉316内にて1500℃で加熱溶融し、十分に攪拌清澄したあと、ブロック状に鋳込み成形を行った。このガラスブロックから泡のない部分を選び、20mm角で厚さ3mmの形状に切り出し、白金との界面側は泡を巻き込まないように鏡面研磨したサンプル312を作製した。
Figure 2008266082
この装置を、中空構造をもつスリーブを模したものにするため、耐火物を加工製作して耐火物内に中空部を持つ構造体315を製作した。構造体315には所定の気孔率を持つ耐火物セラミックスを選定し、この耐火物セラミックスに白金被覆313を行なった。この構造体315の内部にガスを導入する耐熱性金属管314を設けた。この白金被覆耐火物の下部には、内圧が上がり過ぎないようにリーク部を設けておき、50ml/分の流量のガスを中空耐火物内に送り込み、雰囲気調整を行った。
実施例5〜9では、気孔率をもつ耐火物に前記の方法で白金材を被覆したスリーブを用い、また実施例10〜11では白金を被覆せず、気孔率を持つ耐火物セラミックスのスリーブを用いた。
挿入ガスには、あらかじめ所定の濃度に調整されたガスボンベを準備し、このボンベに水素にバランスガスとしてNを選んで加えている。バランスガスは特に窒素である必要はなく、アルゴン、二酸化炭素など、水素と反応しない化学的に安定したガスであればバランスガスとして問題ない。失透の発生条件をなるべく管成形に合わせるために、実際のスリーブ上の温度勾配となるようにサンプルガラスを失透の発生しない温度域である1250℃にいったん温度を上げ1時間保持したのち、それぞれのサンプルガラスをダンナーの成形温度でスリーブ上のガラスを想定した成形の粘度であるlogη=4.0、4.8、5.5(ここにηの単位はdPa・s)それぞれの粘度となる温度まで下げて4時間保持し白金との界面ガラスを顕微鏡にて観察を行って失透の発生を確認した。ここで設定した粘度logη=4.0(ここにηの単位はdPa・s)スリーブの落ち口から中央部を想定し、logη=4.8(ここにηの単位はdPa・s)はスリーブ先端部分のスリーブ上の最も温度低くなる粘度である。logη=5.5(ここにηの単位はdPa・s)の粘性については本来のスリーブ上の成形粘度ではないが、結晶の形態を調査するために意図的に失透を発生させたものである。
実施例において、スリーブ上を想定したlogη=4.0、4.8(ここにηの単位はdPa・s)で処理したサンプルの白金界面にはいずれも失透は観察されず、本来スリーブ上の粘度ではないlogη=5.5においてのみ失透が確認された。発生した失透についてX線回折によって解析を行ったところ、本実施例の条件についてはいずれも失透種はCeBSiOであった。
次に上記実施例に対する比較例1〜2を表2にまとめて示す。これらの比較例は、実施例No.1及びNo.4の組成の同一サンプルガラスから採取したものを用い、雰囲気中の水素濃度が0.1体積%以下の条件下で処理した点以外は同じ処理条件にて失透が発生したものであって、いずれの粘度においても失透が確認された。この失透について、実施例と同様にX線回折にて失透の解析を行ったところ比較例1についてはCeBSiOとCeOの失透が混在、比較例2についてはCeOのみ確認された。
Figure 2008266082
図4は実施例5および比較例2の試料についてのX線回折チャートである。この図から、還元雰囲気にすることにより、界面の失透の形態が変わることがわかる。
上記試験より同じ組成、同じ温度で処理したガラスでもガラスとスリーブ界面の雰囲気を還元性に保持することにより、界面の失透をCeOからCeBSiOへ形態を変化させることによりダンナー法の成管温度で失透を発生しにくくできることが判明した。また水素ガスを使用することによって、水素が内部の気密性を持たせることにより、耐火物を通過し、白金を通過して界面ガラスに対して還元効果をもたらすことが判明した。
(実施例12、比較例3)
図5はこの実施例で使用したダンナー法によるガラス管製造装置について、その基本的な構成を模式的に示した図である。このガラス管製造装置において、スリーブ501は斜下方向に支持され、かつスリーブシャフト502を軸に軸方向に回転駆動装置503によって回転が与えられている。この構成において、スリーブ501上にトラフ504から所定温度で流下する溶融ガラス505を巻きつけ、さらにシャフト502の上部からシャフト502を通じ、先端部からブローエアを供給しつつ管ガラスを連続的に成形する。
この中空部構造を持つスリーブ501は、耐火物で構成された耐火物円筒が、耐熱金属製の押さえカラー506と呼ばれる固定治具とではさみこまれて保持され、中空部を形成している。押さえカラーは、図では省略しているがシャフトの上部よりスプリングによってシャフトと耐火物セラミックスの膨張を逃がすようにして固定されている。
スリーブを固定するスリーブシャフト502はブローエア供給孔507を有し、その上側の開口部はブローパイプを介してブローエア供給器(図には表示せず)に接続されている。
さらに押さえカラー506の上方部にはロータリージョイントと呼ばれる回転自在治具が取り付けられていて、ガス導入管509が回転中、常時スリーブ中空部にガスを供給できる構造を具備している。スリーブの中空部は上記のように内部の雰囲気を制御できるように気密性を保持する構造となっている。
導入管509は例えばSUS310Sに代表される耐熱金属で製作され、使用温度にあわせて材質を選択する。また管の本数は1本に限ることはなく効果的に耐火物を透過して効果的に界面ガラスに酸化還元作用を与えるべく、スリーブ中空部の前方と後方あるいは円周方向に対して複数取り付けることも有効である。
排気管510についても導入管に応じて決められるもので、中空部が正圧を維持するために直径、長さ、排気管の数などを圧力損失を考慮して決定する。
中空部に挿入されたスリーブ耐火物を通過してガスがスリーブ界面のガラスに対して酸化、還元反応を円滑にするために大気圧よりも正圧に制御することが望ましい。
スリーブ内部の雰囲気を調整するように内部には取り付けられたガス導入管の上流部には、ガスを供給するボンベ511が設置される。このボンベ511は一定圧力にする圧力調整器と流量計を具備し一定圧力と一定量のガスを供給できる構造となっている。ガスはあらかじめスリーブ内の目的とする雰囲気を得るために所定の濃度に調整されたボンベを利用すると、安定的なガス供給を行なう上で簡便であることから好ましい。
本発明では、スリーブ中空部の少なくとも一部を雰囲気制御するために、気体成分を制御するための導入管と排気管を持つ構造としている。少なくとも一部としたのは界面ガラスの失透発生域に対して集中して効果的にガスを導入し制御すればよいのであって、中空部すべてを同じ雰囲気にする必要はない。また、目的に応じて雰囲気を酸化、還元雰囲気、中性雰囲気に分けて入れることも可能である。例えば、酸化を強くした場合は、耐熱金属製のシャフトの劣化が大きくなることが予想されるため、界面ガラスの失透が発生するエリアにのみ効率的に酸化ガスを導入して制御し、他の部位についてはシャフトの酸化防止として、還元、あるいは中性ガスを導入制御することも可能である。この場合は後に示すように、スリーブ中空部を耐熱金属製仕切り板などにより仕切りを設け、それぞれのガス量、圧力を調整することによって、個別に雰囲気を制御することができる。
本実施例で使用したダンナースリーブには、24%の気孔率を持つSiO−Al系の高アルミナ(84%)耐火物セラミックスからなる部材を使用し、ガラスの接触する部分全面を、円筒部の肉厚が50mmの耐火物に対して白金肉厚が0.3mmになるように溶射加工を行って、図5の白金被覆508を形成している。この耐火物を軸方向にブローパイプを兼ねたシャフトに固定したダンナースリーブを、マッフルと呼ばれる温度勾配炉中に配置した。
このスリーブを、管ガラス成形装置に取り付け、表3記載の組成のガラスをダンナー法でガラス管に成形した。成形はガラス温度1200℃でスリーブ上に流下させ、スリーブ先端でのガラス温度が、成形に適したlogη=4.8(ここにηの単位はdPa・s)の粘度となるように温度勾配をつけて行った。スリーブ後方のロータリージョイント部に対しては、銅製チューブによって炉から離れたところに設置したボンベからの配管を施している。
スリーブ中に挿入する水素ガスとして、あらかじめ水素濃度が1%でバランスガスとして窒素を入れた混合ガスを充填したボンベを用意した。レギュレーターで圧力を0.2MPaに調整し、流量計で挿入量を毎分1Lの量の混合ガスを、このボンベから連続的にスリーブ中に挿入した。管の寸法として、外径が4mmで内径が3mmとなるようにブロー圧及びスリーブの下流に設置されたドローイングマシンにより引っ張り速度を調整し、管成形を連続的に行った。
こうして実施例12のガラス組成となるように調整されたガラスを溶融炉で溶融し、清澄均質化した。このガラスをトラフよりスリーブ上に流下させ管成形を行った。一方、比較例3は同様のガラスについてスリーブ内にガス導入を行なわず、通常の雰囲気で行ったものである。前記のように同じガラスをスリーブの内部雰囲気が異なる条件で失透を比較した。失透は、管成形されたチューブを1mで切断し連続的に100m分のチューブを採取して10倍のルーペでチューブ内面を観察し、失透の有無を確認して失透発生頻度を調査する方法で行った。表3にその結果を示す。ここに表3の失透頻度の値は、表示した連続稼動経過時間後に観察された1mあたりの失透数である。
Figure 2008266082
このようにして、先の実施例5〜11の結果と同様に、実際のダンナー法による成形において、本発明の方法で成形されたチューブが、従来の方法で成形したものに比べ、失透の発生を著しく低下させることができることが示された。
なお、上記本発明では、スリーブという中空構造を持つ円筒を用いたダンナー法に係る発明であるが、白金や焼成耐火物という炉材を通過してガラス界面に水素を送り込むことによって、CeO結晶の析出ではなく、CeBSiO結晶が析出するようにでき、こうすることによって失透温度を低下させることができる点に大きな特徴があり、その効果が確認された。この方法は、管ガラスに限定されることなく、CeOを含む硼珪酸ガラスにおいて、成形温度と失透温度が重なり失透に対する対策が必要であれば、例えば耐火物や白金を通して界面の失透発生温度を低下することができるためフュージョン法やスリットダウンドロー法のような板成形にも密閉構造で炉壁に水素ガスを提供することにより、失透防止効果が得られる製法にも応用できる。
本発明によれば、ダンナー法を用いて成形する管ガラスとして、たとえCeOのような失透しやすい成分を含有していても、失透がなく良好なものが製造できる。例えばこのガラス管を蛍光ランプのガラス管として用いた場合には、紫外線カットに有効で可視光をよく通すチューブが提供できる。
本発明に係るガラス管成形用スリーブの一実施形態を示す模式的断面図である。 本発明に係るガラス管成形用スリーブの他の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明の実施例で使用した装置構成を模式的に示した断面図である。 実施例1と比較例2のガラス試料のX線回折チャートである。 実施例12で使用したガラス管成形用スリーブの模式的断面図である。
符号の説明
1…スリーブ、4…スリーブシャフト、6…耐火物製円筒部、7…白金被覆、8…固定ナット、9…固定具、10…中空部、10a…スリーブ先端側中空部、10b…スリーブ後端側中空部、12a…貫通パイプ(導入管)、12b…貫通パイプ(排気管)、13…リング、14…空洞部、15…貫通孔、16…ブローエアー供給孔、17…ブローパイプ、20…隔壁、316…電気炉、315…中空部を持つ構造体、314…耐熱性金属管、313…白金被覆、501…スリーブ,502…スリーブシャフト、503…回転駆動装置、504…トラフ、505…溶融ガラス、506…押さえカラー、507…ブローエアー供給孔、508…白金被覆、509…ガス導入管、510…ガス排気管、511…ガスボンベ、A…溶融ガラス。

Claims (16)

  1. 耐火物製の円筒部と、
    前記円筒部と同軸にて前記円筒部に貫入したブローパイプと、
    前記円筒部とブローパイプとの間の空間を前記円筒部の軸と交差する面で複数の内部空間に分割する隔壁と、
    この隔壁によって区分された複数の内部空間の少なくとも一つの内部空間と連通する導入管および排気管と
    を有し、前記導入管から気体を前記内部空間に導入することにより、前記内部空間の雰囲気を制御可能としたことを特徴とするガラス管成形用スリーブ。
  2. 前記隔壁によって区分された複数の内部空間の各々に導入管および排気管を有し、前記複数の内部空間の各々に異なる雰囲気に制御可能にしたことを特徴とする請求項1記載のガラス管成形用スリーブ。
  3. 前記スリーブを構成する耐火物が、見かけ気孔率が1%以上30%以下の耐火物セラミックスからなることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス管成形用スリーブ。
  4. スリーブ外表面のうちガラスと接触する部分の一部または全面が白金または白金合金で覆われていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のガラス管成形用スリーブ。
  5. スリーブ外表面のうちガラスと接触する部分の一部が白金または白金合金で覆われており、前記隔壁が、白金または白金合金で覆われた部分と覆われていない部分との境界部に対応して設けられていることを特徴とする請求項4記載のガラス管成形用スリーブ。
  6. 前記気体が酸化性ガスまたは還元性ガスであり、スリーブを透過した前記気体がスリーブ界面に接触しているガラスに対し酸化作用または還元作用を与えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のガラス管成形用スリーブ。
  7. ブローパイプを同軸状に貫入させた耐火物製の円筒部を有し回転するガラス管成形用スリーブ上に溶融ガラスを流下させ、前記スリーブの先端からガラスを連続的に引き出して管状に成形するガラス管の製造方法において、前記スリーブの前記円筒部とブローパイプとの間の中空部に導入管を介して酸化性または還元性ガスを導入し、スリーブ界面に接触しているガラスに対し酸化性作用または還元性作用を与えることによりガラス管内面に発生する失透を防止することを特徴とするガラス管の製造方法。
  8. 前記スリーブとして請求項1記載のガラス管成形用スリーブを使用し、スリーブ界面に接触しているガラスに失透が生じやすい温度を有する領域に対応した内部空間に対し、酸化性ガスまたは還元性ガスを導入することを特徴とする請求項7記載のガラス管の製造方法。
  9. 前記スリーブとして請求項2記載のガラス管成形用スリーブを使用し、前記隔壁によって区分された内部空間ごとに、導入するガスの種類、濃度、圧力のうち、少なくともいずれかを異ならせることを特徴とする請求項7記載のガラス管の製造方法。
  10. 前記スリーブとして請求項5記載のガラス管成形用スリーブを使用し、スリーブ表面が白金または白金合金で覆われた部分に対応する内部空間には水素を含む還元性ガスを導入し、スリーブ界面に接触しているガラスに対し還元作用を与えることを特徴とする請求項7または9に記載のガラス管の製造方法。
  11. 前記スリーブを構成する耐火物が、見かけ気孔率が1%以上30%以下の耐火物セラミックスからなることを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載のガラス管の製造方法。
  12. スリーブ外表面のうちガラスと接触する部分の一部または全面が白金または白金合金で覆われていることを特徴とする請求項7ないし9または11のいずれかに記載のガラス管の製造方法。
  13. 前記中空部に導入するガスが水素を含む還元性ガスであることを特徴とする請求項7ないし9または11ないし12のいずれかに記載のガラス管の製造方法。
  14. 前記還元性ガスが、0.1体積%以上の水素を含むことを特徴とする請求項13記載のガラス管の製造方法。
  15. ガラス管に成形されるガラスが、SiO、B、およびCeOを含むものであることを特徴とする請求項13または14に記載のガラス管の製造方法。
  16. 前記ガラスが、質量%表記で、SiO55〜80%、Al1〜10%、B1〜25%、LiO+NaO+KO1〜15%、CaO+MgO+BaO+SrO0〜10%、CeO0.1〜5%、SnO+SnO0〜5%、ZrO2 +ZnO+Nb0〜5%を含有することを特徴とする請求項15記載のガラス管の製造方法。
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