JP2008260979A - 焼付硬化性鋼板用溶鋼の溶製方法 - Google Patents

焼付硬化性鋼板用溶鋼の溶製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミナ系酸化物の生成をできるだけ抑制しながら、固溶Ti量を高精度で制御し、表面疵の発生率が極めて低いBH鋼板の製造を可能とする溶鋼の溶製方法を提示する。
【解決手段】炭素濃度が0.01質量%以下まで脱炭された溶鋼にTiを添加して脱酸し、Tiと同時に、またはその後Nbを添加し、さらにその後Ce、La、Ndのうちの少なくとも1種類を添加した溶鋼を溶製する方法において、α=[sol.Ti]/[T.Ti]で定義されるαを予定されている操業条件であらかじめ求めておき、[T.Ti]濃度がβ=47.9×[N]/(14×α)で定義されるβの0.9倍以上、1.1倍以下となるようにTiを添加して調整し、さらにγ=[C]−12×[Nb]/92.9で定義されるγが0.0003以上、0.0025未満となるようにNbを添加して調整することを特徴とする焼付硬化性鋼板用溶鋼の溶製方法。
【選択図】図1

Description

本発明はプレス成形後に焼付硬化性と非時効性に優れた鋼板用溶鋼の溶製方法に関する。本発明により溶製された溶鋼から鋳造、圧延等を経て製造された鋼板は、特に自動車用のプレス成形鋼板に使用する際に適するが、その他にも家電製品、建物などプレス成形をして使用される。
焼付硬化性鋼板(以降、「BH鋼板」と記載する場合がある。)は、成形性と耐デント性を兼ね備えた鋼板であり、例えば、自動車のドア、フード等に用いられる。プレス成形時は低降伏点であるため複雑な形状の成形が容易である。一方、成形後の塗装焼付により硬化するため、例えば人が押したり、小石が飛来して凹むことに対する抵抗性(耐デント性)が高い。この焼付硬化性は固溶C濃度の制御によりもたらされる。鋼中に固溶しているCが、プレス成形時に導入された転位に偏析し不動化する、いわゆる歪み時効に起因する。
固溶C量の制御方法として、Ti、Nbの濃度をC、Nの原子当量以下として、例えば10ppm前後の固溶炭素を残す方法が行われている。すなわち、凝固以降にTiやNbが炭窒化物や炭化物を生成するが、これらの生成に関与しない過剰Cにより焼付硬化性が発現される。そのため、微量の過剰Cを最適量残すために、Ti量、すなわち固溶Ti量の高精度の制御が求められる。
従来、Tiをはじめ合金元素の添加は、一般的には強脱酸元素であるAlを添加して十分脱酸した後に行われている。その様な条件下では、Tiは酸化物を生成しないので、添加Ti全量が炭窒化物生成に使われる固溶Ti量と見なせる。
溶鋼の脱酸は、転炉や真空処理容器で精錬された溶鋼中に含まれる多量の溶存酸素を除去する事が目的である。脱酸せずに元素を添加した場合、酸素との親和力の強さに応じて酸化物を生成し浮上除去されるため、添加元素の歩留りが著しく低下し、かつ不安定になる。
脱酸材として、酸素との親和力が強い強脱酸元素であるAlを用いるのが一般的である。しかし、Al脱酸後にアルミナ系酸化物が生成し、凝集合体して粗大なアルミナクラスターとなる。このアルミナクラスターは鋼板製造時に表面疵発生の原因となり薄鋼板の品質を著しく劣化させる。特に、薄鋼板用の低炭素溶鋼では、炭素濃度が低いため精錬後の溶存酸素濃度が高く、その結果脱酸時に生成するアルミナクラスターの量が非常に多い。このため、表面疵の発生率が極めて高く、アルミナ系酸化物の低減対策は大きな課題である。BH鋼板も同様の課題を抱える。
これに対し、特許文献1〜5では、Tiと希土類金属で脱酸する方法(Ti−希土類金属脱酸)が開示されている。これらは、溶鋼をTiで脱酸しTi酸化物を生成した後、希土類元素を添加してTi酸化物を凝集合体しにくい酸化物(Ti−希土類金属複合酸化物)に改質して微細分散させる方法であり、アルミナクラスター起因の鋼板表面疵を防止できることが開示されている。また、特許文献6では、溶鋼にAlを添加して予備脱酸してアルミナ系酸化物を十分浮上除去した後に、Ti−希土類金属脱酸する方法が開示されている。
特開2002−88412号公報 特開2003−49218号公報 特開2003−268435号公報 特開2005−60734号公報 特開2005−139492号公報 特開2006−225727号公報
特許文献1〜5はアルミナ系酸化物を生成させないためにAl脱酸を行わず、Ti添加により溶存酸素を低下させている。また、特許文献6は予備脱酸はAl脱酸で行うが、アルミナクラスターを十分に浮上除去させて低減した後に最終的にTi脱酸を行って溶存酸素を低下させている。この様に、特許文献1〜6のTi添加の目的は溶存酸素の低下、すなわち脱酸である。
一方、前述したように、BH鋼板ではTiを合金元素として添加し、凝固以降に、炭窒化物等の析出物を生成し材質制御に利用する。析出物を生成するのは、酸化物を生成していない、固溶Tiである。焼付硬化量を適切に制御するためには固溶Ti量の制御が重要である。しかし、特許文献1〜6はTiによる脱酸に関するものであるため、BH鋼板用溶鋼の溶製に重要な固溶Ti量の制御についての記述はない。
そのため、特許文献1〜6のTi−希土類金属脱酸技術を用いてBH鋼板用溶鋼を溶製しようとすると、固溶Ti量の制御が著しく困難である。
その理由は、固溶Ti量の分析結果が溶製操業時間内に判明しないこと、およびTi−希土類金属脱酸ではTiが酸化物を生成することが挙げられる。
すなわち、一般的に溶製操業時間内に分析結果が判明するのは、酸化物を生成したTi濃度(以降、「insol.Ti」と記載する場合がある。)と固溶Ti濃度(以降、「sol.Ti」と記載する場合がある。)の合計であるトータルTi濃度(以降、「T.Ti」と記載する場合がある。)であり、「sol.Ti」は溶製操業時間内に分析を完了することが不可能であるため、「sol.Ti」を所望の範囲に制御することは困難であった。
また、Ti−希土類金属脱酸の場合には、Tiが酸化物を生成する際のT.Ti量と固溶Ti量の関係が不明確であったため、T.Tiの分析値を基にした固溶Ti量の制御ができず、その結果、Ti−希土類金属脱酸をBH鋼板用溶鋼の溶製に適用することができなかった。
一方、従来のAl脱酸を十分に行った後にTi添加を行う場合は、Al脱酸で溶鋼中の溶存酸素が十分に低下するため、Ti酸化物はほとんど生成しない。したがって、T.Ti量を固溶Ti量と見なして良いため、溶製操業時間内に判明する分析値に基づきT.Ti量を調整すれば良いが、前述の通り、Al脱酸時に生成するアルミナクラスターの量が非常に多いため、表面疵の発生率が極めて高く、BH鋼板用溶鋼の溶製に適用することができなかった。
本発明は、アルミナ系酸化物の生成をできるだけ抑制しながら、固溶Ti量を高精度で制御し、表面疵の発生率が極めて低いBH鋼板の製造を可能とする溶鋼の溶製方法を提示することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を要旨とする。
(1)炭素濃度が0.01質量%以下まで脱炭された溶鋼にTiを添加して脱酸し、Tiと同時に、またはその後Nbを添加し、さらにその後Ce、La、Ndのうちの少なくとも1種類を添加した溶鋼を溶製する方法において、[式1]で定義されるαを予定されている操業条件であらかじめ求めておき、[N]濃度の分析値に基づいて[式2]で定義されるβを求め、このβの値の0.9倍以上、1.1倍以下の範囲内の[T.Ti]濃度となるようにTiを添加して調整し、さらに溶鋼の[Nb]濃度を[C]濃度の分析値に基づいて[式3]で定義されるγが0.0003以上、0.0025未満となるようにNbを添加して調整することを特徴とする焼付硬化性鋼板用溶鋼の溶製方法。
α=[sol.Ti]/[T.Ti] …[式1]
β=47.9×[N]/(14×α) …[式2]
γ=[C]−12×[Nb]/92.9 …[式3]
[sol.Ti]:溶鋼中の酸可溶Ti濃度(質量%)
[T.Ti]:溶鋼中のトータルTi濃度(質量%)
[N]:溶鋼中のN濃度(質量%)
[C]:溶鋼中のC濃度(質量%)
[Nb]:溶鋼中のNb濃度(質量%)
(2)αが0.70以上、0.97以下であることを特徴とする(1)に記載の焼付硬化性鋼板用溶鋼の溶製方法。
本発明により、アルミナ系酸化物の生成を抑制しながら、固溶Ti量を高精度で制御し、表面疵の発生率が極めて低く、所定のBH量が得られるBH鋼板用溶鋼の溶製が可能となる。
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の溶製方法は、特許文献1〜6に開示されたTi−希土類金属脱酸に対して、本発明者らが新たに見出した固溶Ti量の制御手段を適用することにより、焼付硬化性鋼板用溶鋼の溶製を可能としたものである。
この固溶Ti量の制御手段の基本思想は、Ti−希土類金属脱酸を行った場合には、Ti添加から溶製完了(希土類金属元素を添加し、溶鋼撹拌を完了する時点)まで通常の操業ばらつき範囲内で同等の、具体的には分単位の設定時間に対し±25秒の範囲で操業を行う限り、[sol.Ti]/[T.Ti]の比率が一定値に安定していることを利用することにある。そのため、[T.Ti]の分析値を基に[sol.Ti]濃度を推定することができる。
本発明者らは、[T.Ti]の分析値を基に固溶Ti濃度を推定するための手段を見出すために、Ti−希土類金属脱酸において、[T.Ti]と[sol.Ti]の関係を様々な操業条件の下で鋭意調査した。[T.Ti]はスパーク放電発光分光分析法(JIS G1253)で分析した。[sol.Ti]は酸可溶Ti濃度を測定した。酸可溶Ti濃度は、酸に溶解したTi量を測定するものであり、固溶Tiは酸に溶解し、Ti酸化物は酸に溶解しないことを利用した分析方法である。ここで、酸とは、例えば塩酸1、硝酸1、水2の割合(質量比)で混合した混酸が例示できる。この様な酸を用いて、酸に可溶なTiと、酸に溶解しないTi酸化物とに分別でき、酸可溶Ti濃度が測定できる。
その結果、[T.Ti]=0.002〜0.10質量%の広範囲にわたり、[sol.Ti]と[T.Ti]の比率が非常に精度良く一定値に安定することを見出した。図1に、Ti添加から希土類金属を添加するまでの8分間(Nb添加はTi添加から1分後)溶鋼を撹拌した後に、希土類金属元素を添加し、更に4分間溶鋼撹拌した場合の[sol.Ti]と[T.Ti]の関係を示す。このグラフの傾きが[式1]で定義したαである。図1の調査条件では、α=0.79であった。
α=[sol.Ti]/[T.Ti] …[式1]
但し、[sol.Ti]:溶鋼中の酸可溶Ti濃度(質量%)、
[T.Ti]:溶鋼中のトータルTi濃度(質量%)
別の実験では、Ti添加から希土類金属元素添加までの溶鋼撹拌時間および希土類金属元素添加後の溶鋼撹拌時間をそれぞれ8分、4分のまま変えずに、NbをTi添加から2分、または4分で添加したが、αの値は0.79のままであった。このことは、Ti添加から希土類金属元素および希土類金属元素添加後の溶鋼撹拌時間が同一であれば、Ti添加後のNb添加時間を変えても、αの値が変わらないことが確認されている。
また、Ti添加から希土類金属元素添加までの撹拌時間を2分、その後の撹拌時間を2分に短縮した場合も、[sol.Ti]と[T.Ti]は図1と類似の直線関係を示すことを確かめた。しかし、酸化物の浮上率が低くなった結果、αの値は0.52に低下した。
さらに、Ti添加から希土類金属元素添加までの撹拌時間を15分、希土類金属元素添加後の撹拌時間を7分に増やした場合も、図1と類似の直線関係を示し、この場合のαは0.97であった。これは、酸化物の浮上率が高くなった結果、[insol.Ti]が減少したためである。
なお、上記の撹拌時間は分単位で表示しているが、実際の撹拌時間としては±25秒のばらつきを含んでいる。このばらつき範囲内であれば、[sol.Ti]と[T.Ti]の直線関係が保たれることがわかった。
上記の実験は、溶鋼鍋の容量は300トン、タンディッシュ容量は60トン、上堰と下堰1ヶ所ずつ配置した2段堰タンディッシュを用いて、溶鋼撹拌時間を変更して行ったものである。
以上の通り、同一の操業条件であれば、[sol.Ti]と[T.Ti]は直線関係を示すことを、新たに知見した。
この様に、同一の操業条件であれば、[sol.Ti]と[T.Ti]の比率αが精度良く一定値に安定している理由は、Ti−希土類金属脱酸の結果生じるTi酸化物と希土類金属酸化物が複合した、Ti−希土類金属複合酸化物が凝集合体しにくいため、[T.Ti]ひいてはTi添加量の広い範囲にわたり、酸化物の粒径分布が相似であり、その結果、酸化物の浮上率が一定であることに起因すると推定される。[T.Ti]濃度に応じて、酸化物量は増減するが、アルミナとは異なり凝集合体し難いため粗大化の進行が極めて遅く、粒径分布の経時変化がほとんど無い。従って、粒径分布がほぼ相似のまま保たれ、粒径に応じて一定比率の酸化物が浮上除去されるものと考えられる。これは、Ti−希土類金属脱酸特有の関係である。
ただし、酸化物の浮上に影響する操業条件が大きく変化した場合は、酸化物の浮上比率が変化するため、αは変化する。具体的な項目としては例えば、Ti添加後からCe、La、Ndのうち少なくとも1種類の希土類金属を添加するまでの容器内溶鋼の撹拌時間、希土類金属添加後の容器内溶鋼の撹拌時間などである。
酸化物浮上に影響する操業条件が同等の範囲にあればαは一定値で安定する。同等の操業条件とは、Ti添加から溶製完了(希土類金属元素を添加し、所定時間の溶鋼撹拌を完了する時点)までの間で、通常の操業ばらつき範囲内で同等と見なせる操業条件を意味する。例えば、Ti添加後からCe、La、Ndのうち少なくとも1種類の希土類金属を添加するまでの容器内溶鋼の撹拌時間は、通常数分から十数分で分単位で設定するが、狙い時間に対し±25秒の範囲内であれば、αがほぼ一定の数値であることが実験的に確認されているため、同等とみなす。
また、上記の攪拌時間のばらつきの範囲は小さい方が良いため、±20秒以下が好ましく、±15秒以下がより好ましく、±10秒以下がさらにより好ましい。
また、操業ばらつきのほかに、酸化物の浮上に影響する条件として、設備条件がある。こちらは、同一設備を用いている限りでは条件が固定される点で、操業ばらつきと相違する。酸化物の浮上に影響する設備条件として、例えば、タンディッシュ内の堰構造やタンディッシュ容量が挙げられる。本発明者は、タンディッシュ内に堰がある場合と、無い場合ではタンディッシュ内の溶鋼流動が大きく異なり、そのため酸化物の浮上挙動が大きく異なる結果、αの値は変化することも確認している。また、堰の数や配置によっても変化することも、併せて確認している。従って、それぞれ使用する設備条件に応じて、αをあらかじめ求めておく必要がある。
次に、このαの求め方について説明する。同一設備を用いて同一の操業条件において、Ti添加量のみを変化させて、上述した様に、同等と見なせる通常の操業ばらつき範囲内の鋳造直前の溶鋼(一般的にはタンディッシュ内溶鋼)を採取し、[sol.Ti]と[T.Ti]を分析し、回帰直線を求めれば、この直線の傾きから、この操業条件におけるαを求めることが出来る。αを求めるためには[T.Ti]が異なる最低2点の分析値が必要であるが、精度を高める観点から、好ましくは10点以上が、そして、なるべく広い[T.Ti]範囲で分析することが好ましい。10点以上あれば、αに加えて、同一の[T.Ti]に対する[sol.Ti]のばらつき範囲も明らかにできるためである。
αの数値は、操業条件により変化するが、本発明者らの知見によれば、0.70以上、0.97以下とする事が好ましい。αが0.70未満では、[insol.Ti]、すなわち酸化物が多いため、Al脱酸時に比べ著しく軽微であり、製品上、問題になるほどではないが、表面疵が発生しやすくなるためである。一方、Ti添加後の溶鋼撹拌時間を長時間化するなどして、酸化物の浮上除去を進めても、浮上除去速度が次第に低下し除去効率が著しく低下する。従って、現実的な除去効果の観点から、0.97以下とすることが好ましい。
次に、凝固以降に酸可溶TiがNと結合してTiNを生成し、NbがCと結合してNbCを生成する。ここで、微量の過剰Cを最適量残すことで、焼付硬化性が発現される。
まず、酸可溶TiがNと結合してTiNを適切に生成させることについて説明する。
鋼中Nを全てTiNとして固定するためには、鋼中[N]と当量の[sol.Ti]を添加することが必要である。[式2]で定義したβは、鋼中の[N]と当量の[sol.Ti]を添加するための[T.Ti]の狙い値を、上述のαを用いて算出する式である。
β=47.9×[N]/(14×α) …[式2]
但し、[N]:溶鋼中のN濃度(質量%)
[式2]の47.9はTiの、14はNの原子量であり、鋼中[N]を固定するために必要な当量の[sol.Ti]は、47.9×[N]/14で算出できる。その[sol.Ti]を[T.Ti]に換算するのが分母のαである。
上述の通り、一定の操業条件におけるαをあらかじめ求めておけば、対象とする脱炭溶鋼について、溶製操業時間内の分析でTiを添加するまでに判明した[N]の数値を用いてβを算出し、βに一致させる様にTiを添加して[T.Ti]を制御、調整すればよい。
Nの分析は不活性ガス融解−熱伝導法(JIS G1228)によって測定可能である。
実際には、本発明者らが行った実験結果に基づき、材質が十分に満足される条件として、材質の許容範囲を考慮し、溶鋼の[T.Ti]をβの0.9倍以上、1.1倍以下の範囲とした。0.9倍未満では、強度が高くなりすぎ管理基準を超えてしまうほか、加工時に顕著なストレッチャーストレインが生じる。1.1倍未満では焼付硬化量が不足する。
以上、α、βについて設定の考え方を説明したが、上述したように、αが一定比率に保たれるのは、Ti−希土類金属元素脱酸の結果、生成するTi−希土類金属複合酸化物が凝集合体しにくいことに由来する。ここで、本発明では希土類金属元素を、Tiよりも脱酸力が強力な、すなわちTi酸化物を改質する効果が高い「Ce、La、Nd」に限定する。(以降、便宜上「希土類金属元素」と記載することがある。)
その様な酸化物を生成させるために、炭素濃度を0.01質量%以下まで脱炭した後、該溶鋼にTiを添加して脱酸し、その後、Ce、La、Ndのうちの少なくとも1種類を、好ましくは0.001質量%以上添加し、Ti−希土類金属複合酸化物を生成する。Ti−希土類金属複合酸化物中には、Ti酸化物と、希土類金属酸化物としてCe酸化物、La酸化物、Nd酸化物の少なくとも1種類を含有することが必要である。
ちなみに、Tiを添加してから、前記の希土類金属元素を添加するまでの時間は、2〜20分程度が例示できる。
溶鋼中にはAlを添加しないのが好ましいが、必要な場合には0.01質量%以下のAlを添加しても本発明の効果は損なわれない。このAl濃度範囲であれば、Ti−希土類金属元素脱酸の結果生成する酸化物の凝集合体しにくい性質が損なわれないためである。
また、凝固以降にNbがCと結合してNbCを生成するが、これらの生成に関与しない過剰Cを最適量残すことにより焼付硬化性が発現される。
[式3]で定義したγは、Nbで固定しきれない過剰の固溶C濃度である。
γ=[C]−12×[Nb]/92.9 …[式3]
但し、[C]:溶鋼中のC濃度(質量%)
[Nb]:溶鋼中のNb濃度(質量%)
[式3]の12はCの、92.9はNbの原子量であり、12×[Nb]/92.9で、Nbに固定されるC濃度が算出される。鋼中の全C濃度[C]から、Nbに固定されるC濃度を差し引いたγが、焼付硬化性を発現する固溶C濃度となる。
このγが0.0003未満では焼付硬化量が不足し下限値に達しない。また、0.0025質量%以上では、加工時に顕著なストレッチャーストレインが生じ、外観を損なう。このため、γを0.0003質量%以上、0.0025質量%未満の範囲とする。
従って、対象とする脱炭溶鋼について、溶製操業時間内にNbを添加するまでに判明した[C]の分析結果に応じて、γを上記の範囲内となる様にNbを添加して、[Nb]を制御、調整すればよい。[C]は、JIS G1211の附属書5に定める燃焼−赤外線吸収法(2)(鋼中微量域)により測定すれば良い。
ちなみに、Nbを添加するタイミングは、上記のTiを添加するタイミングと同時でも良く、またTiを添加した後でも良い。ここで、Tiを添加した後にNbを添加する場合、Tiを添加してからNbを添加するまでの時間は、1〜10分程度が例示できる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明について説明する。転炉での精錬と還流式真空脱ガス装置での処理により炭素濃度を0.005質量%以下とした取鍋内溶鋼300トンをTiで脱酸した。
Ti添加から1分後にNbを添加し、その後に希土類金属を添加し、希土類金属元素濃度を0.0005から0.0050質量%の間とした。Ti添加から希土類金属添加までの撹拌時間を撹拌時間Aとし、希土類金属添加後の撹拌時間を撹拌時間Bとして、表1に示す組合わせで真空脱ガス装置で溶鋼を撹拌した。
表1は、実施例の設備を用いて予め調査した、Tiを添加してから希土類金属を添加するまでの溶鋼撹拌時間(撹拌時間A)、および、希土類金属添加後の溶鋼撹拌時間(撹拌時間B)と、式(1)で定義したαの関係の調査結果を示す表である。
Figure 2008260979
この溶鋼を、容量60トンのタンディッシュに注入し、厚み250mm、幅1800mmの鋳型に注入し連続鋳造しスラブを製造した。
撹拌時間A、および撹拌時間Bを変更した場合に、タンディッシュ内溶鋼の[sol.Ti]と「insol.Ti」の比率αが変化することが判っており、種々の組み合わせの場合のαを事前に測定した。この結果を表1に示す。これを用いてαを変更する事が可能となるが、設備条件が変更になれば数値は変化するので、設備条件ごとにこの関係を予め調査した。一般に、撹拌時間A、Bを長くするほど、酸化物が浮上するため、[inol.Ti]が減少しαは向上した。撹拌時間AはTiの均一混合とともに、Ti脱酸の結果生成するTi酸化物の浮上に有効である。撹拌時間Bは、希土類元素の均一混合とともに、撹拌時間Aで浮上しきれなかった比較的粗大な酸化物の浮上に有効である。今回の実施例では、αは0.52から0.97の間で変更した。
鋳造したスラブを8500mm長さで切断し1コイル単位とし、常法により熱間圧延、冷間圧延し、0.7mm厚の冷延鋼板とした。
鋼板の表面品質については、冷間圧延後の検査ラインで目視観察を行い、1コイル当たりに発生する表面欠陥を評価した。表面欠陥が無い場合を○、見つかった場合を×とした。
材質評価については、冷延鋼板を切断後、圧下率1.0%でスキンパス圧延を行ってから、JIS5号引張試験片を採取し、圧延方向に2%の引張歪みを付加した2%予歪材に、170℃×20分の塗装焼付相当の熱処理を実施してから再度引張試験を行った。再引張試験時の上降伏応力と2%変形時の応力の差を焼付硬化量(BH量)として測定するとともに、再引張試験時のストレッチャーストレインの発生有無を観察した。目標BH量を15MPa以上とし、かつストレッチャーストレインが発生しないことを評価基準とした。つまり、BH量が15MPa以上であり、かつストレッチャーストレインが発生しない場合を「○」とし、BH量が15MPa未満であったり、BH量が15MPa以上でもストレッチャーストレインが発生した場合は「×」とした。
本発明の実施例と比較例の溶製条件と、鋼板の表面品質と材質の評価結果を表2に示す。No.1から5が比較例、No.6から10が本発明例である。
Figure 2008260979
No.1から5は、Ti−希土類金属脱酸を行ったため、顕著な表面欠陥は発生せず、表面品質評価は○であったが、材質評価が以下の理由で×であった。No.1と2は、[T.Ti]がβの0.9倍未満であったため、TiによるNの固定が不十分で再引張試験時にストレッチャーストレインが生じた。そのため材質評価が×であった。No.3は、γが0.0003質量%未満であったため、そして、No.4は[T.Ti]がβの1.1倍を超えてTiが過剰となったため、BH量が不足し、材質評価が×であった。No.5は、γが0.0025質量%以上となっており、BH量は目標値を超えたが、再引張試験時にストレッチャーストレインが生じたため、材質評価が×であった。
一方、本発明例であるNo.6から10は、本発明の要件を全て満たしており、表面品質評価、材質評価とも○であった。
[T.Ti]と[sol.Ti]の関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 炭素濃度が0.01質量%以下まで脱炭された溶鋼にTiを添加して脱酸し、Tiと同時に、またはその後Nbを添加し、さらにその後Ce、La、Ndのうちの少なくとも1種類を添加した溶鋼を溶製する方法において、[式1]で定義されるαを予定されている操業条件であらかじめ求めておき、[N]濃度の分析値に基づいて[式2]で定義されるβを求め、このβの値の0.9倍以上、1.1倍以下の範囲内の[T.Ti]濃度となるようにTiを添加して調整し、さらに溶鋼の[Nb]濃度を[C]濃度の分析値に基づいて[式3]で定義されるγが0.0003以上、0.0025未満となるようにNbを添加して調整することを特徴とする焼付硬化性鋼板用溶鋼の溶製方法。
    α=[sol.Ti]/[T.Ti] …[式1]
    β=47.9×[N]/(14×α) …[式2]
    γ=[C]−12×[Nb]/92.9 …[式3]
    [sol.Ti]:溶鋼中の酸可溶Ti濃度(質量%)
    [T.Ti]:溶鋼中のトータルTi濃度(質量%)
    [N]:溶鋼中のN濃度(質量%)
    [C]:溶鋼中のC濃度(質量%)
    [Nb]:溶鋼中のNb濃度(質量%)
  2. αが0.70以上、0.97以下であることを特徴とする請求項1に記載の焼付硬化性鋼板用溶鋼の溶製方法。
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