JP2011052243A - 脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法 - Google Patents

脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大型構造用鋼として十分なアレスト性を有し、しかも工業的に安定的かつ効率的な製造が可能な、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】適性化された化学成分組成を有する鋼片を950〜1150℃に加熱し、900℃以上の温度で累積圧下率30%以上の粗圧延を行った後、表面温度がAr〜Ar+60℃の範囲で、累積圧下率40%以上の仕上圧延を行い、引き続き、表面がAr以上の温度から、板厚内平均で8℃/s以上の冷却速度で200℃以下の温度となるまで加速冷却を行った後、焼戻し処理を実施するに当たり、加速冷却終了から焼戻し開始までの時間を1時間以内として、板厚内平均で1℃/s以上の昇温速度で400〜650℃まで加熱する。
【選択図】図3

Description

本発明は、脆性き裂伝播停止特性(以下、アレスト性とも言う)に優れた厚手高強度鋼板(以下、厚手高強度高アレスト鋼板または単に高アレスト鋼板とも言う)の製造方法に関し、特に、板厚50mm以上の厚手材(以下、単に厚手材とも言う)で、降伏強度355〜460MPa級でも、Kca=6000N/mm1.5となる温度(以下、アレスト性指標TKca=6000とも言う)が−10℃以下となる、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法に関する。本発明を適用した鋼板は、特に、造船、建築、橋梁、タンク、海洋構造物等の溶接構造物に適用され、また、鋼管、コラム等に加工した二次加工品として流通する場合もある。
近年、鋼構造物の大型化にともない、使用される鋼材の厚手高強度化とともに、安全性確保の観点から脆性き裂伝播停止特性への要求が厳しくなってきている。しかしながら、一般に、鋼材の強度や板厚が大きくなると、アレスト性の確保は急激に困難さを増すことから、鋼構造物への厚手高強度鋼板の適用を阻害する要因となっている。また、これと同時に、需要側の短納期化に対する要望も年々大きくなっていることから、鋼板製造工程における生産性向上が強く望まれている。
鋼材のアレスト性を向上させる冶金学的な要因としては、(i)結晶粒微細化、(ii)Ni添加、(iii)脆化第二相制御、(iv)集合組織制御等が知られている。
(i)の結晶粒を微細化する方法としては、例えば、特許文献1に記載された技術が挙げられる。これは、Ar点以上の未再結晶域で圧下率50%以上の圧延を施した後、700〜750℃の範囲で30〜50%の二相域圧延を行う方法である。また、鋼板の結晶粒を微細化する特殊な方法としては、圧延前または粗圧延終了後に鋼片表面を冷却し、内部との温度差をつけたまま復熱過程で圧延を行い、表層部のフェライト(α)を再結晶によって細粒化させる方法が、例えば、特許文献2、3に記載されている。
(ii)のNi添加については、低温域における交差すべりを助長することで、脆性き裂の伝播を抑制し(例えば、非特許文献1を参照)、マトリクスのアレスト性を向上させるということが報告されている(例えば、非特許文献2を参照)。
(iii)の脆化第二相を制御する方法としては、例えば、特許文献4に記載された技術が挙げられる。これは、母相のα中に脆化相であるマルテンサイトを微細分散させる技術である。
(iv)の集合組織制御に関しては、極低炭素のベイナイト鋼で低温大圧下圧延を行い、圧延面に並行に(211)面を発達させる方法が、例えば、特許文献5に記載されている。
特開平02−129318号公報 特公平06−004903号公報 特開2003−221619号公報 特開昭59−047323号公報 特開2002−241891号公報
田村今男著、「鉄鋼材料強度学」、日刊工業新聞社発行、1969年7月5日、p.125 長谷部、川口、「テーパ形DCB試験によるNi添加鋼板の脆性破壊伝播停止特性について」、鉄と鋼、vol.61(1975)、p.875
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、ミクロ組織がα主体で強度が比較的低く、板厚も20mm程度の低温用鋼を対象としたものである。このため、本発明が対象とするような板厚50mm以上の厚手材に適用する場合には、スラブ厚の観点から、そもそも圧下率確保が困難となり、温度待ち時間が長くなって生産性が著しく低下してしまうという問題がある。
また、特許文献2、3に記載された発明を、本発明が対象とするような厚手材に適用しようとする場合には、復熱過程での圧延の累積圧下率を十分確保する必要があり、生産性を大きく阻害するという問題がある。さらに、粗圧延の圧下率が不十分となり、オーステナイト(γ)が十分に細粒化せず、表層領域直下において粗大なαが生成し、アレスト性が低下してしまうという問題がある。
また、上記(ii)のように、Ni添加によって所望のアレスト性を有する鋼板を製造する場合には、合金コストがかかりすぎるという問題がある。
また、厚手材の板厚中心部では達成しうる冷却速度に限界があるため、特許文献4に記載された発明のように、マルテンサイトを微細に分散させることは困難である。
また、特許文献5に記載された発明は、C量が0.03%以下であるため、製鋼コストが増大するとともに、厚手材に適用した場合には圧延効率が極端に低下してしまい、工業的生産には適さないという問題がある。
上述したように、本発明が対象とする、板厚が50mm以上の厚手材で、降伏強度が355〜460MPa級でもアレスト性指標TKca=6000が−10℃以下となる、大型構造物に適用可能な高アレスト鋼板を、安定的かつ効率的に製造する技術はいまだ確立されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、大型構造用鋼として十分なアレスト性を有し、しかも工業的に安定的かつ効率的な製造が可能な、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決し得る脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法であり、その要旨とするところは次の通りである。
[1] 質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.3〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Nb:0.005〜0.030%、Ti:0.005〜0.030%、Al:0.002〜0.10%、N:0.0010〜0.0080%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を用い、前記鋼片を950〜1150℃に加熱し、900℃以上の温度で累積圧下率30%以上の粗圧延を行った後、表面温度がAr〜Ar+60℃の範囲で、累積圧下率40%以上の仕上圧延を行い、引き続き、表面がAr以上の温度から、板厚内平均で8℃/s以上の冷却速度で200℃以下の温度となるまで加速冷却を行った後、焼戻し処理を実施するに当たり、加速冷却終了から焼戻し開始までの時間を1時間以内として、板厚内平均で1℃/s以上の昇温速度で400〜650℃まで加熱することを特徴とする脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
[2] 前記鋼片が、さらに、質量%で、Cu:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜2.0%、V:0.005〜0.10%、B:0.0002〜0.0030%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記[1]に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
[3] 前記鋼片が、さらに、質量%で、Mg:0.0003〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0030%、REM:0.0005〜0.010%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
本発明の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法によれば、板厚が50mm以上の厚手材で、降伏強度が355〜460MPa級である場合でも、アレスト性指標TKca=6000が−10℃以下となる、大型構造物に適用可能な高アレスト鋼板を、効率的な製造方法によって提供することが可能になることから、産業上の効果は極めて大きい。
本発明に係る脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法の一例を説明するための模式図であり、アレスト性に及ぼす焼戻し前の待機時間の影響を示すグラフである。 本発明に係る脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法の一例を説明するための模式図であり、アレスト性に及ぼす焼戻しの昇温速度の影響を示すグラフである。 本発明に係る脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法の一例を説明するための模式図であり、アレスト性に及ぼす焼戻しの到達温度の影響を示すグラフである。
以下、本発明の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法の実施の形態について説明する。なお、この実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
本発明の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法は、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.3〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Nb:0.005〜0.030%、Ti:0.005〜0.030%、Al:0.002〜0.10%、N:0.0010〜0.0080%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を用い、前記鋼片を950〜1150℃に加熱し、900℃以上の温度で累積圧下率30%以上の粗圧延を行った後、表面温度がAr〜Ar+60℃の範囲で、累積圧下率40%以上の仕上圧延を行い、引き続き、表面がAr以上の温度から、板厚内平均で8℃/s以上の冷却速度で200℃以下の温度となるまで加速冷却を行った後、焼戻し処理を実施するに当たり、加速冷却終了から焼戻し開始までの時間を1時間以内として、板厚内平均で1℃/s以上の昇温速度で400〜650℃まで加熱する方法である。
<製造条件>
以下に、本発明で規定する製造条件について、詳細に説明する。
一般に、鋼板のアレスト特性(脆性き裂伝播停止特性)は、温度勾配型ESSO試験や二重引張試験によって評価される。試験後の破面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ティアリッジと呼ばれる延性破壊部で囲まれたへき開面の単位を「破面単位」と定義した場合、この破面単位が細かいほどアレスト性が向上することが知られている。破面単位を微細化する手段としては、できるだけ低い温度域で累積圧下率を大きくして制御圧延(Controlled Rolling;CR)することが有効とされる。ところが、この方法ではCR開始まで長時間の温度待ちが生じるため、生産性が著しく低下してしまうという問題がある。
そこで、本発明者等は、アレスト性支配因子の一つである脆化相の役割に着目し、圧延・加速冷却後に行われる焼戻しの有効な活用方法について、詳細な実験的検証を行った。すなわち、種々の条件で圧延・冷却した鋼板を用意して、焼戻しの際の昇温速度、到達温度、保持時間に加えて、冷却終了から焼戻し開始までの時間を変化させて、アレスト性の評価を行った。その結果、Ar以上の温度域でCRを行い、加速冷却した後、時間をおかずに急速に焼戻すことによって、効率的にアレスト性を向上しうる事実を知見した。これは、圧延・冷却過程で破面単位に相当する組織サイズを小さくした上で、焼戻し過程で微細な炭化物を析出させることにより、脆性き裂伝播時に、マトリクスとの界面でマイクロクラックを生成させ、主き裂が伝播する際のき裂先端における応力状態を緩和するためと推定される。
また、本発明者等は、冷却から焼戻しまでの時間も析出挙動に影響を及ぼし、その時間が短いほど析出物が均一かつ微細分散して、アレスト性が向上する傾向を見出した。これは、加速冷却後、固溶Cが転位に固着されるまでに一定の時間を要することに起因するものと考えられる。
さらに、鋼板内部に含まれる水素は粒界や介在物近傍に集積し、いわゆる水素性欠陥の原因となることが予想されるが、上記焼戻し方法の適用により、水素集積の時間的余裕を無くさせるとともに、集積のサイトとなる析出物も微細化するため、欠陥を生じさせにくくする効果があると推定される。
さらに、本発明者らは、鋼板のアレスト特性を確保するための焼戻し条件を詳細に検討し、以下の知見を得た。
すなわち、後述の表1に示すような板厚180mmのA鋼片を1120〜1140℃に保持した後、1010〜980℃の間で累積圧下率33%の粗圧延、820〜785℃の間で累積圧下率50%の仕上圧延を行い、810〜782℃から冷却速度14℃/sにて160〜150℃まで加速冷却した後、(a)30分待機後、(b)昇温速度1.5℃/sで、(c)480〜500℃10分間の焼戻し処理を行い、WES 3003に記載されている方法をもとに温度勾配型ESSO試験を行うことを基本試験としつつ、以下の試験を行った。
(i)基本試験のうち、(a)の加速冷却終了から焼戻し開始までの待機時間のみを、30分から種々変化させたところ、図1のグラフに示すような結果が得られた。待機時間が1時間を超えると、図1に示すように、TKca=6000が高温化、すなわちアレスト性が低下してしまう。一方、待機時間が短いほど固溶Cが多く残存するため、下限を設ける必要はない。したがって、加速冷却終了から焼戻し開始までの待機時間は1時間以内とする必要がある。
(ii)基本試験のうち、(b)の焼戻しの際の昇温速度のみを加熱炉を調整し、1.5℃/sから種々変化させたところ、図2のグラフに示すような結果が得られた。昇温速度が1℃/s未満であると、析出物が粗大化して、脆性き裂の伝播をかえって促進してしまい、その結果、図2に示すように、アレスト性が低下する。したがって、焼戻しの際の昇温速度は1℃/s以上とする必要がある。昇温速度の上限については、板厚方向および板内の温度偏差が極端に大きくならない限り、規定する必要はない。このような昇温速度を達成する手段としては、目標温度よりも高温に保持した加熱炉を用いるほか、誘導加熱や通電加熱等が考えられるが、その手段を限定する必要はない。
(iii)基本試験のうち、(c)の焼戻し温度のみを種々変化させたところ、図3のグラフに示すような結果が得られた。400℃未満ではアレスト性に有効な析出物が十分生成せず、650℃超では析出物や組織が粗大化してしまい、いずれも図3に示すように、アレスト性が低下してしまう。したがって、焼戻し温度は400〜650℃の範囲が適している。鋼板が焼戻し温度に到達した後は、温度分布均一化のためにその温度で保持してもよいが、析出物の粗大化を防止するために、10分以下にすることが望ましい。
続いて、本発明におけるその他の製造条件の限定理由について説明する。
「鋼片の再加熱温度」950〜1150℃
本発明では、まず、上記組成を有する鋼片の加熱温度を950〜1150℃とする。
製鋼後の鋼片の再加熱温度が950℃未満だと、合金元素の溶体化が不十分で材質不均一の原因となり、また、1150℃を超えると加熱γ粒径が粗大化してしまい、最終的な組織微細化が困難になるおそれがある。
「粗圧延の条件」温度:900℃以上、累積圧下率:30%以上
本発明においては、粗圧延は900℃以上の温度、30%以上の累積圧下率で行う必要がある。これらの条件を満たさないと、γの再結晶が十分進行せず混粒組織となり、材質不均一の原因となるおそれがある。
「CR(制御圧延)の条件」表面温度:Ar〜Ar+60℃、累積圧下率:40%以上
上記粗圧延に引き続いて行われるCR(制御圧延;仕上圧延)は、組織微細化のために重要な工程であり、不適切な条件で実施すると、上述したような焼戻しを行ってもアレスト性が向上しない。このようなCRは、鋼板の表面温度がAr〜Ar+60℃の範囲で、累積圧下率40%以上で行う必要がある。鋼板表面の温度がArを下回ると、表層部に加工αが生成して硬さが上昇し、アレスト性が低下するとともに、生産性も低くなる。一方、鋼板表面の温度がAr+60℃を超えると、特に板厚中心部のCR効果が不十分となるために組織が粗大化して、アレスト特性が低下してしまう。
また、累積圧下率が40%未満である場合も、微細組織が得られずアレスト特性が低下する。なお、累積圧下率に上限を設ける必要はないが、通常は製品厚と鋳片厚、および粗圧延における累積圧下率の関係から自ずと制限される。
「圧延完了後の加速冷却」
本発明では、上記条件の仕上圧延(CR)完了後、引き続き、鋼板の表面がAr以上の温度から、板厚内平均で8℃/s以上の冷却速度で、200℃以下の温度となるまで加速冷却を行う。冷却速度が8℃/s未満であるか、あるいは冷却停止温度が200℃よりも高いと、強度が不足したり、組織の微細化が不十分となったりするだけでなく、焼戻し工程で必要な固溶C量が不足してしまい、アレスト性の向上が達成できなくなるおそれがある。
「焼戻し処理」
本発明では、上記条件で加速冷却を行った後、上述したように、加速冷却終了から焼戻し開始までの時間を1時間以内として、板厚内平均で1℃/s以上の昇温速度で400〜650℃まで加熱する条件で焼戻し処理を行う。
本発明の製造方法においては、上記条件の焼戻し処理を行うことにより、板厚が50mm以上の厚手材で、降伏強度が355〜460MPa級である場合でも、アレスト性指標TKca=6000が−10℃以下となり、優れたアレスト性を有する厚手高強度鋼板を製造することが可能となる。
<化学成分組成>
以下に本発明における鋼の化学成分についての限定理由を説明する。本発明の製造方法においては、以下に示す各元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を用いて、厚手高強度鋼板を製造する。
なお、以下の説明における各元素の含有量の単位は、特に指定の限り、質量%で表されるものとする。
「C:炭素」0.05〜0.15%、
Cは、安価に鋼板の強度を高めるのに不可欠な元素であるため、0.05%以上を添加する必要がある。一方、Cの添加量が増えると、大入熱HAZ靭性確保が困難となるため、0.15%を上限とする。
「Si:ケイ素」0.03〜0.5%
Siは、安価な脱酸元素であり、マトリクスを固溶強化するため0.03%以上添加するが、0.5%を超えると、溶接性とHAZ靭性を劣化させるため、添加量の上限を0.5%とする。
「Mn:マンガン」0.3〜2.0%
Mnは、母材の強度・靭性を向上させる元素として有効であるため0.3%以上添加するが、過剰添加はHAZ靭性や溶接割れ性を劣化させるため、2.0%を上限とする。また、Mnの含有量は、特に、母材の強度・靭性を確実に確保するためには、0.85〜2.0%とすることがより好ましい。
「P:リン」0.020%以下
「S:硫黄」0.010%以下
P、Sは、含有量が少ないほど望ましいが、これを工業的に低減させるためには多大なコストがかかることから、Pは0.020%、Sは0.010%を上限とする。
「Nb:ニオブ」0.005〜0.030%
Nbは、微量の添加により、組織微細化、変態強化および析出強化に寄与し、母材強度確保に有効な元素であるため0.005%以上添加するが、過剰に添加するとHAZを硬化させ著しく靭性を劣化させるため、0.030%を上限とする。
「Ti:チタン」0.005〜0.030%
Tiは、微量の添加により、組織微細化、析出強化に寄与し、また、微細TiN生成によって母材の強度・靭性、HAZ靭性向上に有効であるため、0.005%以上添加するが、過剰に添加するとHAZ靭性を著しく劣化させるため、0.030%を上限とする。
「Al:アルミニウム」0.002〜0.10%
Alは、重要な脱酸元素であるため、0.002%以上添加するが、過剰に添加すると鋼片の表面品位を損ない、靭性に有害な介在物を形成するため、0.10%を上限とする。
「N:窒素」0.0010〜0.0080%
Nは、Tiと共に窒化物を形成し、HAZ靭性を向上させるため、0.0010%以上添加するが、過剰に添加すると固溶Nによる脆化が生じるため、0.0080%以下に限定する。
本発明の製造方法においては、上記各元素を必須としたうえで、さらに、以下に説明する各元素のうちの1種または2種以上を、選択的に添加することができる。以下、各選択添加元素の含有量の限定理由について説明する。
「Cu:銅」0.05〜1.5%
「Cr:クロム」0.05〜1.0%
「Mo:モリブデン」0.05〜1.0%
Cu、Cr、Moは、いずれも焼入れ性を向上させ、高強度化に有効であるため、0.05%以上添加する。一方、これら各元素の過度の添加はHAZ靭性を低下させるため、Cuは1.5%以下、CrおよびMoは1.0%以下に制限する。
「Ni:ニッケル」0.05〜2.0%
Niは、強度確保とアレスト性、HAZ靭性向上に有効であるため、0.05%以上添加するが、Ni量の増加は鋼片コストを上昇させることから2.0%以下に制限する。
「V:バナジウム」0.005〜0.10%
Vは、析出強化により強度上昇に寄与するため、0.005%以上添加するが、0.10%超を添加するとHAZ靭性を低下させるため、これを上限とする。
「B:ボロン(ホウ素)」0.0002〜0.0030%
Bは、焼入れ性を向上させる元素であり、適量添加により鋼の強度を高めるのに有効であるが、過度の添加は溶接性を損ねるため、その添加量を0.0002〜0.0030%の範囲に制限する。
「Mg:マグネシウム」0.0003〜0.0050%、
「Ca:カルシウム」0.0005〜0.0030%
「REM:希土類元素」0.0005〜0.010%
Mg、Ca、REMは、微細な酸化物や硫化物を形成してHAZ靭性向上に寄与するが、過度の添加は介在物を粗大化させ靭性を低下させる。このため、Mgは0.0003〜0.0050%、Caは0.0005〜0.0030%、REMは0.0005〜0.010%の範囲に制限する。
なお、本発明において説明するREMとは、例えば、La、Ce等の希土類元素のことを言う。
以上説明したような、本発明に係る脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法によれば、化学成分組成が適正範囲とされた鋼片を用い、所定条件で粗圧延〜仕上圧延(CR)〜加速冷却を行った後、加速冷却終了から焼戻し開始までの時間を1時間以内として、板厚内平均で1℃/s以上の昇温速度で400〜650℃まで加熱する条件で焼戻し処理を行うことにより、板厚が50mm以上の厚手材で、降伏強度が355〜460MPa級である場合でも、アレスト性指標TKca=6000が−10℃以下となる、大型構造物に適用可能な高アレスト鋼板を、効率的な製造方法によって提供することが可能になることから、その産業上の効果は計り知れない。
以下、本発明に係る脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
[厚手高強度鋼板の試作]
製鋼工程において溶鋼の脱酸・脱硫と化学成分を制御し、連続鋳造により、下記表1に示す化学成分を有する板厚180〜300mmの鋼片を作製した。そして、下記表2及び表3に示す製造条件で、前記鋼片を再加熱して厚板圧延することで板厚50〜80mmに仕上げ、加速冷却を行い、さらに、必要に応じてオフラインでの焼戻し処理を行い、厚手高強度鋼板を試作した。
[評価試験]
上記方法によって作製した厚手鋼板のサンプルについて、以下のような評価試験を行い、母材強度とアレスト性の試験結果を下記表4に示した。
ここで、降伏強度(YP)および引張強度(TS)については、鋼板の板厚方向中心部から圧延方向と直角の方向に採取した、JIS Z 2201に準拠した4号引張試験片を用いて評価した。
また、アレスト性については、WES 3003に記載されている方法を基に温度勾配型ESSO試験を行い、Kca=6000N/mm1.5を示す温度にて評価した。
本実施例の厚手高強度鋼板の化学成分組成の一覧を表1に示すとともに、鋼板の製造条件の一覧を表2及び表3に示し、また、厚手高強度鋼板の機械的性質の一覧を表4に示す。
Figure 2011052243
Figure 2011052243
Figure 2011052243
Figure 2011052243
[評価結果]
表1に示す鋼A〜Jは鋼の化学成分が適正化された本発明鋼であり、鋼K、Lは化学成分が本発明の規定範囲外とされた比較鋼である。
また、表2〜4に示すNo.1〜15は、化学成分が所定の範囲内であり、かつ所定の条件で製造した本発明例であり、いずれも、YP:355〜460MPa級鋼として十分な強度を有しており、また、アレスト性指標TKca=6000も−10℃以下と良好であることがわかる。
一方、表2〜4に示すNo.16〜30は、化学成分、製造条件のいずれかが本発明の範囲を逸脱している比較例であり、アレスト性が低下していることがわかる。
No.25は加熱温度が高いために、また、No.24は粗圧延の累積圧下率が小さかったために、組織が微細化されず、アレスト性が低下した。
また、No.23は仕上圧延の温度が高いために、また、No.20は累積圧下率が小さかったために、微細組織が得られず、アレスト性が低下した。
また、No.16は、仕上圧延の温度が低下し過ぎたために表層部に加工αが生成し、アレスト性が低下してしまった。
また、No.21は加速冷却の冷却速度が小さいために、また、No.26は冷却停止温度が高かったために、組織と炭化物が粗大化し、十分なアレスト性が得られなかった。
No.17、27は、焼戻し前の待機時間が長過ぎたため、微細炭化物が得られず、アレスト性が低下した。
No.22は、焼戻しの昇温速度が小さかったため、炭化物が粗大化してアレスト性が低下した。
No.18は、焼戻し温度が低過ぎたために十分な炭化物が析出せず、アレスト性が向上しなかった。
No.19、28は、焼戻し温度が高かったために炭化物と組織が粗大化し、アレスト性が低下した。
No.29は、C含有量が多かったために強度が過大となり、アレスト性が低下した。
No.30は、Nb量が多かったために、加熱時に残存した粗大な未固溶Nbの影響でアレスト性が低下した。
以上説明した実施例の結果より、本発明の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法が、板厚が50mm以上の厚手材で、降伏強度が355〜460MPa級である場合でも、アレスト性指標TKca=6000が−10℃以下となる、大型構造物に適用可能な高アレスト鋼板を、効率的な製造方法によって提供することが可能になることが明らかである。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.05〜0.15%、
    Si:0.03〜0.5%、
    Mn:0.3〜2.0%、
    P :0.020%以下、
    S :0.010%以下、
    Nb:0.005〜0.030%、
    Ti:0.005〜0.030%、
    Al:0.002〜0.10%、
    N :0.0010〜0.0080%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を用い、
    前記鋼片を950〜1150℃に加熱し、900℃以上の温度で累積圧下率30%以上の粗圧延を行った後、表面温度がAr〜Ar+60℃の範囲で、累積圧下率40%以上の仕上圧延を行い、
    引き続き、表面がAr以上の温度から、板厚内平均で8℃/s以上の冷却速度で200℃以下の温度となるまで加速冷却を行った後、焼戻し処理を実施するに当たり、加速冷却終了から焼戻し開始までの時間を1時間以内として、板厚内平均で1℃/s以上の昇温速度で400〜650℃まで加熱することを特徴とする脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼片が、さらに、質量%で、
    Cu:0.05〜1.5%、
    Cr:0.05〜1.0%、
    Mo:0.05〜1.0%、
    Ni:0.05〜2.0%、
    V :0.005〜0.10%、
    B :0.0002〜0.0030%
    のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼片が、さらに、質量%で、
    Mg:0.0003〜0.0050%、
    Ca:0.0005〜0.0030%、
    REM:0.0005〜0.010%
    のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
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