JP2008259494A - (±)−dhmeqの酵素光学分割法および(−)−dhmeqの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明に係る(-)-DHMEQの製造方法は、一般式(I)で表される化合物にBurkholderia cepacia由来のリパーゼを水溶液中で作用させる工程を含む。
腫瘍、転移性腫瘍、炎症性疾患、免疫疾患、アレルギー性疾患、動脈硬化、感染症疾患、リウマチ、糖尿病などのNF-κBの活性化に起因する疾患を予防又は改善するのに有用な、NF-κB阻害作用を示す(-)-DHMEQは、一般式(III)で表される化合物にBurkholderia cepacia由来のリパーゼを水溶液中で作用させることにより製造することができる。
(1−1)(±)-2-アセトキシ-3-(2’-アセトキシ)ベンゾイルアミノ-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-エン-5-オン(ジアセチル体)の調製
(±)-DHMEQ (図1中の化合物(2), 78.8 mg, 0.302 mmol)に無水酢酸 (7 ml)を添加し、80 ℃で3時間30分攪拌した。攪拌後、氷を加えてさらに室温で1時間攪拌した。混合物を酢酸エチル(5 ml)で3回抽出した後、有機相を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後に、有機溶媒を減圧除去することにより、粗生成物 (106.8 mg) を油状物質として得た。粗生成物をヘキサン‐酢酸エチルで再結晶し、ジアセチル体 (図1中の化合物(3), 76.9 mg, 0.223 mmol, mp 135.5-137.5 ℃)を収率73.8%で得た。
1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ = 2.27 (s, 3H), 2.32 (s, 3H), 3.51 (dd, J = 2.0, 3.9 Hz, 1H), 3.92 (dd, J = 2.9, 3.9 Hz, 1H), 5.85 (dd, J = 1.5, 2.9 Hz, 1H), 7.05 (dd, J = 1.5, 2.0 Hz, 1H), 7.12 (dd, J = 1.0, 7.8 Hz, 1H), 7.37 (ddd, J = 1.0, 7.8, 7.8 Hz, 1H), 7.56 (ddd, J = 1.5, 7.8, 7.8 Hz, 1H), 7.69 (dd, J = 1.5, 7.8 Hz, 1H), 7.98 (brs, 1H).
化合物(3)(48.5 mg, 0.140 mmol)を、アセトン(1.2 ml)とリン酸緩衝液(0.2 M, pH 7.0, 0.6 ml)の混合液に溶解した後、Burkholderia cepacia由来のリパーゼ PS-C (アマノエンザイム, 100 mg)を添加し、室温で1日間攪拌した。攪拌後、反応溶液にアセトン(100 ml)を加え、不溶物(酵素)をろ別した。ろ液を濃縮乾固し、残渣を水に懸濁した後、超音波(200 W)で20分間処理してリン酸緩衝液由来の塩を溶解させ、ろ過した。ろ紙上の残渣としてジオール(図1中の化合物(1))とモノアセチル体(図1中の化合物(4))の混合物を得た。この混合物を酢酸エチル(5 ml)に懸濁し、超音波(200 W)で2分間処理した後、ろ過した。ろ紙上の固体物には化合物(1)のみが含まれていたが、ろ液には化合物(1)と化合物(4)との両方が含まれていた。そこで、ろ液をさらに濃縮し、再び酢酸エチル(1.5 ml)に懸濁し、超音波(200 W)で2分間処理した後、固体物と有機相に分離した。固体物および有機相はそれぞれ、純粋な化合物(1)と化合物(4)であった。以上のように酢酸エチルを用いた2回の分別結晶を経て化合物(1)(9.5 mg, 0.036 mmol, 25.7%)を得た。
(1−2)の酵素反応により得られた化合物(1)を、(1−1)に記載の方法に従ってジアセチル化し、HPLC(Chiralcel OD-H, 流速 0.3 ml/min, 純EtOHにより溶出, 295 nmの吸収により検出)により分析したところ、15.2分に単一のピークを示した。また、化合物(2)をジアセチル化した化合物(3)を同様にHPLCで分析したところ、15.2分および20.4分にピークを示した。このことから、15.2分のピークが化合物(1)のジアセチル体であることが明らかとなり、(1−2)の酵素反応で得られた化合物(1)が純粋な(-)-鏡像異性体であることを確認した。
(2−1)(±)-2-プロピオニルオキシ-3-(2’-プロピオニルオキシ)ベンゾイルアミノ-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-エン-5-オン(ジプロピオニル体)の調製
(±)-DHMEQ (図2中の化合物(2), 48.0 mg, 0.184 mmol)に無水プロピオン酸 (3 ml)を添加し、80℃で1時間攪拌した。攪拌後、氷を加えてさらに室温で1時間攪拌した。混合物を酢酸エチル(5 ml)で3回抽出した後、有機相を炭酸水素トリウム飽和水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後に、有機溶媒を減圧除去することにより、粗生成物を得た。粗生成物は油状であったが、無水プロピオン酸を混入していたため、bulb-to-bulb蒸留(0.4 mmHg, 浴温70 ℃)により減圧留去した。その後、無水プロピオン酸がわずかに残存している油状物質をジイソプロピルエーテルで再結晶し、ジプロピオニル体 (図2中の化合物(5), 48.0 mg, 0.129 mmol, mp 104.5-105.0 ℃)を収率70.0%で得た。
1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ = 1.21 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.25 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 2.57 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 2.61 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 3.52 (dd, J = 2.0, 3.9 Hz, 1H), 3.93 (dd, J = 2.9, 3.9 Hz, 1H), 5.87 (dd, J = 1.5, 2.9 Hz, 1H), 7.04 (dd, J = 1.5, 2.0 Hz, 1H), 7.11 (dd, J = 1.0, 7.8 Hz, 1H), 7.36 (ddd, J = 1.0, 7.8, 7.8 Hz, 1H), 7.55 (ddd, J = 1.5, 7.8, 7.8 Hz, 1H), 7.67 (dd, J = 1.5, 7.8 Hz, 1H), 7.96 (brs, 1H).
化合物(5)(48.5 mg, 0.140 mmol)を、アセトン(1.2 ml)とリン酸緩衝液(0.2 M, pH 7.0, 0.6 ml)の混合液に溶解した後、リパーゼ PS-C (100 mg)を添加し、室温で1日間攪拌した。攪拌後、反応溶液にアセトン(100 ml)を加え、不溶物(酵素)をろ別した。ろ液を濃縮乾固し、残渣を水に懸濁した後、超音波(200 W)を20分間照射してリン酸緩衝液由来の塩を溶解させ、ろ過した。ろ紙上の残渣としてジオール(図2中の化合物(1))とモノプロピオニル体(図2中の化合物(6))の混合物を得た。この混合物を酢酸エチル(5 ml)に懸濁し、超音波(200 W)で2分間処理した後、ろ過した。ろ紙上の固体物には化合物(1)のみが含まれていたが、ろ液には化合物(1)と化合物(6)との両方が含まれていた。そこで、ろ液をさらに濃縮し、再び酢酸エチル(1.5 ml)に懸濁し、超音波(200 W)で2分間処理した後、固体物と有機相に分離した。固体物および有機相はそれぞれ、純粋な化合物(1)と化合物(4)であった。以上のように酢酸エチルを用いた2回の分別結晶を経て化合物(1)(3.9 mg, 0.015 mmol, 10.7%)を得た。
(3−1)(±)-2-ヘキサノイルオキシ-3-(2’-ヘキサノイルオキシ)ベンゾイルアミノ-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-エン-5-オン (ジヘキサノイル体)の調製
(3−1−1)
(±)-DHMEQ (図3中の化合物(2), 151.2 mg, 0.579 mmol)をTHF (テトラヒドロフラン;1.25 ml)に懸濁し、無水ヘキサン酸 (0.375 ml)およびDMAP (N,N-ジメチル-4-アミノピリジン;3.0 mg)を添加した。室温で20分間攪拌後、氷を加え、さらに室温で1時間攪拌した。混合物を酢酸エチル(5ml)で2回抽出した後、有機相を塩酸(0.5 M)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後に、有機溶媒を減圧除去することにより、粗生成物として濃い黄色の油状物質(340.0 mg)を得た。この粗生成物を球状シリカゲル (関東37565-84, 17 g)を用いたカラムクロマトグラフィー(ヘキサン / 酢酸エチル = 4 / 1)により精製し、さらにヘキサン−酢酸エチルで再結晶し、ジヘキサノイル体 (図3中の化合物(7), 253.1 mg, 0.553 mmol, mp 86.5-87.5 ℃)を収率89.5 %で得た。
1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ = 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 0.91 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 1.30 (m, 4H), 1.34 (m, 4H), 1.70 (m, 4H), 2.53 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.56 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 3.50 (dd, J = 2.0, 3.9 Hz, 1H), 3.91 (dd, J = 2.9, 3.9 Hz, 1H), 5.85 (dd, J = 1.5, 2.9 Hz, 1H), 7.02(dd, J = 1.5, 2.0 Hz, 1H), 7.10 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.35 (dd, J = 7.8, 7.8 Hz, 1H), 7.54 (ddd, J = 1.5, 7.8, 7.8 Hz, 1H), 7.67 (dd, J = 1.5, 7.8 Hz, 1H), 7.99 (brs, 1H).
(±)-DHMEQ (化合物(2), 10.1 g, 38.7 mmol)をTHF (100 mL)に懸濁し、無水ヘキサン酸 (27 mL, 120 mmol)、及び、DMAP (237 mg, 1.94 mmol)を添加した。室温で30分間攪拌後、蒸留水(150 mL)にて希釈した。混合物を酢酸エチル (100 mL)で2回抽出した後、有機相を塩酸 (0.5 M, 150mL)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液 (150 mL)、飽和食塩水(150 mL)の順に洗い、無水硫酸ナトリウムにて脱水後、濾過した。濾液を減圧濃縮して濃い黄色の油状物質を得た。ジエチルエーテル(40 mL)を加え溶解した後、冷凍庫にて一夜放置して析出した結晶を濾過、ジエチルエーテル洗浄後、減圧乾燥し、白色結晶として(±)-ジヘキサノイル体(化合物(7))の一次晶を13.7 g得た。また母液から回収して二次晶を1.55 g得た。合計で14.9 g (32.6 mmol)を84%収率にて得た。
(3−2−1)
化合物(7)(202.2 mg, 0.442 mmol)を、アセトン(3 ml)とリン酸緩衝液(0.2 M, pH 7.0, 3 ml)の混合液に溶解した後、リパーゼ PS-C (300 mg)を添加し、室温で1日間攪拌した。攪拌後、反応混合物を減圧乾固(1.2 mmHg, 1時間)してからTHF(30 ml)を添加し、超音波(200 W)で10分間処理して反応生成物を溶解した。その後、吸引ろ過によって不溶物(酵素、および緩衝液に由来する無機塩)をろ別した。ろ液を濃縮し、残渣をジイソプロピルエーテル(30 ml)に懸濁した後、超音波で10分間処理してモノヘキサノイル体(図3中の化合物(8))を溶解し、ろ過した。ろ紙上の残渣をTHFに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東37565-84, 3 g, 純THFで溶出)で精製し、化合物(1)(42.0 mg, 0.161 mmol, 36.4%)を得た。
さらに酵素反応において、リパーゼPS-Cに代えて、リパーゼPS-IM(Burkholderia(Pseudomonas) cepacia由来のリパーゼPSを珪藻土に固定したもの;アマノエンザイム社製)を用いた例を示す。
化合物(7)(5.13 g, 11.2 mmol)をアセトン(77 mL)に溶解し、水(77 mL)、アセトン/水(1 : 1, 40 mL)の順に加え撹拌した。リパーゼPS-IM (7.71 g)を添加し、室温で1日間攪拌した。攪拌後、反応混合物をエタノール共沸(100 mL x 5)し、減圧乾固してからTHF(200 mL)を添加し、超音波(200 W)で10分処理して反応生成物を溶解した。その後、吸引濾過によって酵素をろ別した。ろ液を濃縮し、残渣をジイソプロピルエーテル(100 mL)に懸濁した後、超音波で10分間処理してモノヘキサノイル体(図3中の化合物(8))を溶解し、ろ過した。ろ紙上の残渣を真空乾燥させ得られた白色固体をDMSO (12 mL)に溶解し、水(150 mL)に滴下した。析出沈澱をろ過し、ろ紙上の残渣を真空乾燥させ化合物(1) (1.04 g, 3.98 mmol, 35.5%)を得た。
このように、大量スケールでも、非常に効率よく酵素反応を行うことができた。
(3−2−1)及び(3−2−2)の酵素反応により得られた化合物(1)を、実施例1(1−1)に記載の方法に従ってジアセチル化し、HPLC (Chiralcel OD-H, 流速 0.1 ml/min, 純i-PrOHにより溶出, 295 nmの吸収により検出)により分析したところ、65.3分に単一のピークを示した。また、化合物(2)をジアセチル化した化合物(3)を同様にHPLCで分析したところ、65.3分および115.5分にピークを示した。このことから、65.3分のピークが化合物(1)のジアセチル体であることが明らかとなり、(3−2−1)及び(3−2−2)の酵素反応で得られた化合物(1)が純粋な(−)-鏡像異性体であることを確認した。
次に、Burkholderia cepacia由来のリパーゼ PS-Cを、豚すい臓リパーゼ(シグマ)、酵母の一種Candida antarctica由来のリパーゼであるキラザイムL-2(Novo Nordisk)、またはCandida rugosa由来のリパーゼ(名糖産業、OF)に変える他は、実施例3(3−2)に記載の方法と同様に酵素反応を行った。その結果、リパーゼPS-Cを用いた反応では約3時間で反応が完了したのに対し、その他の酵素を用いた反応では、反応が非常に遅く、2日間反応させても大部分の原料(化合物(7))がそのまま残り、モノヘキサノイル体がわずかに生じる程度であることがTLC分析により明らかになった。特に、Candida rugosa由来のリパーゼでは目的とするジオールが全く生成されないことが明らかになった。
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