JP2008254213A - カッター刃の移動装置、記録装置及び液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】カッター刃と押さえローラの相対位置が可変でき、カッター刃の作用位置を細かく調整できるようにすることで、カッター刃の良好な切れ味を長く持続させ、種々の厚さの被切断材の切断を可能にする。
【解決手段】本発明のカッター刃の移動装置1は被切断材Rに直接作用するカッター刃30と、カッター刃30を保持し、カッター刃30と一体になって移動するカッターホルダ31と、カッターホルダ31の下面から突出して被切断材Rを保持する別体の押さえローラ32と、押さえローラ32を突出方向Aに付勢する付勢手段33と、カッターホルダ31を移動させる移動手段34を備え、前記移動手段34を正逆回転可能なステッピングモータ43と、ステッピングモータ43の回転をカッターホルダ31の移動方向Aの動きに変換する動力変換手段44とを具備する構成にした。
【選択図】図3
【解決手段】本発明のカッター刃の移動装置1は被切断材Rに直接作用するカッター刃30と、カッター刃30を保持し、カッター刃30と一体になって移動するカッターホルダ31と、カッターホルダ31の下面から突出して被切断材Rを保持する別体の押さえローラ32と、押さえローラ32を突出方向Aに付勢する付勢手段33と、カッターホルダ31を移動させる移動手段34を備え、前記移動手段34を正逆回転可能なステッピングモータ43と、ステッピングモータ43の回転をカッターホルダ31の移動方向Aの動きに変換する動力変換手段44とを具備する構成にした。
【選択図】図3
Description
本発明は、被切断材に直接作用して被切断材を切断するカッター刃と、該カッター刃を保持し、カッター刃と一体になって移動するカッターホルダと、該カッターホルダの下面から突出して被切断材を保持する押さえローラと、前記カッターホルダを移動させる移動手段とを備えるカッター刃の移動装置及び該カッター刃の移動装置を具備する記録装置に関する。
更に本発明は、インク等の液体をそのヘッドから吐出(噴射)して被記録材(被液体噴射材)に記録を実行する(液体を付着する)インクジェット式記録装置などの液体噴射装置及び該液体噴射装置に対して設けられるカッター刃の移動装置に関するものである。
ここで液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録材に記録を行うプリンタ、プロッタ、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録材に相当する被液体噴射材に噴射して、前記液体を前記被液体噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
以下、液体噴射装置、記録装置の一例であるインクジェットプリンタを例に採って図8〜図10に基づいて説明する。インクジェットプリンタの中には、A1プラス(ノビ)サイズやB0プラス(ノビ)サイズといって大判サイズの被記録材に対してインクを吐出して記録を実行することができる大型のインクジェットプリンタが存在する。この種の大型のインクジェットプリンタでは、幅が24インチ(約610mm)、36インチ(約914mm)、44インチ(約1118mm)、長さが10m〜45mのロール状に巻かれた用紙やフィルムが被記録材Rとして主に使用されている。
そして、このようにロール状に巻かれた被記録材Rに対して記録が実行された後は、所定の長さで前記被記録材Rを切断して、繰り出された記録済みの被記録材Rと、ロール状に巻かれた記録前の被記録材Rとに分離される。
前記被記録材Rの切断は、インクジェットプリンタに対して備えられているカッター刃の昇降装置と、該カッター刃の昇降装置を被記録材Rの搬送方向と交差する被記録材Rの幅方向Bに往復移動させるキャリッジとによって実行されている。即ち、カッター刃の昇降装置によってカッター刃を被記録材R側に突出させ、カッター刃の先端を被記録材Rに突き刺し、キャリッジによって被記録材Rの幅方向Bに前記カッター刃を往復移動させることによって被記録材Rの切断を行っている。
従来のカッター刃の昇降装置101は、下記の特許文献1や図8〜図10に示すように、被記録材R(以下ロール紙Rともいう)に直接作用して被記録材Rを切断するカッター刃102と、該カッター刃102を保持し、カッター刃102と一体になって昇降移動するカッターホルダ103と、該カッターホルダ103の下面から突出して被切断材Rを保持するカッターホルダ103と一体の2つの押さえローラ104、104と、前記カッターホルダ103を昇降移動させる昇降手段105とを備えている。
また、前記昇降手段105は、コイル106とプランジャ107とを備えるソレノイド108によって構成されている。そして、コイル106から上方に突出しているプランジャ107の基端部を前記カッターホルダ103の上部側方に張り出している係止片109に係止させることによってカッターホルダ103がプランジャ107と一体に昇降移動できるようになっている。
前記カッター刃102は、大判のロール紙Rの切断に使用されていることから、1回の切断に要する切断長さが長いことと、長時間の連続使用や多数回に及ぶ繰返し使用によって刃の摩耗による切れ味の低下が問題になっている。
この場合、ロール紙Rに作用するカッター刃102の作用位置を変更できれば、カッター刃102は良好な切れ味を長く持続することができる。しかし、前記従来の構成のカッター刃の昇降装置101にあっては、上述のように2つの押さえローラ104、104とカッター刃102は、共にカッターホルダ103に対して固定状態で取り付けられていたため、互いの相対位置を変化させることはできなかった。従って、カッター刃102の作用位置を変更するためには、図9(a)〜(c)に示すようにカッターホルダ103に対するカッター刃102の取付け位置をマニュアル操作によって調整するしか方法はなかった。
このことはロール紙Rの厚さが変わった場合にも言える。種々のロール紙Rの厚さに対応するには、ロール紙Rの厚さに応じてカッターホルダ103に対するカッター刃102の取付け位置を面倒なマニュアル操作によって調整しなければならなかった。また、面倒なマニュアル操作でのカッター刃102と取付け位置の調整を行わないとしたら、図10(a)〜(c)に示すように、切断できるロール紙Rの厚さの範囲が狭くなり、例えば図10(c)に示すような厚口のロール紙Rの切断は不可能になってしまう。また、昇降手段105として使用されているソレノイド108は、細かなピッチでの昇降移動には構造上不向きであり、カッター刃102の微妙な作用位置の調整をソレノイド108によって行うことは不可能であった。
特開2003−341163号公報
本発明は、前記問題点の存在を踏まえてなされたものであって、被記録材をその厚みに応じた最適な押さえ力で押さえた状態で切断できるカッター刃の移動装置及び該カッター刃の移動装置を備えた記録装置等を提供することを課題とするものである。
また、カッター刃の作用位置を細かく調整できるようにすることでカッター刃の良好な切れ味を長く持続できるようにし、種々の厚さの被切断材に対応できるようにしたカッター刃の移動装置及び該カッター刃の移動装置を備えた記録装置等を提供することである。
前記課題を解決するために本発明の第1の態様に係るカッター刃の移動装置は、被切断材に直接作用して被切断材を切断するカッター刃と、該カッター刃の近傍に配置されて被切断材を保持する押さえローラと、前記カッター刃と前記押さえローラとを保持するカッターホルダと、該押さえローラを突出方向に付勢する付勢手段と、前記カッターホルダを被切断材に対して接離する方向に移動させる移動手段とを備え、前記移動手段は、正逆回転可能なステッピングモータと、該ステッピングモータの回転方向の動力を前記カッターホルダの移動方向の動力に変換する動力変換手段と、を備えていることを特徴とするものである。
本発明の第1の態様によれば、押さえローラをカッターホルダと別体に設け、該押さえローラを付勢手段によって突出方向に付勢するといった構成を採用したことによって、カッター刃と押さえローラとの相対位置を可変に構成できるようになる。従って、被記録材をその厚みに応じた最適な押さえ力で押さえた状態で切断できる。また移動手段としてステッピングモータとステッピングモータの回転方向の動力をカッターホルダの移動方向の動力に変換する動力変換手段とを具備する構成を採用したことによって、カッター刃の作用位置を細かく調整できるようになる。
本発明の第2の態様に係るカッター刃の移動装置は、前記第1の態様において、前記動力変換手段は、前記ステッピングモータの出力軸に取り付けられるピニオンギヤと、該ピニオンギヤと噛み合い、前記カッターホルダに対して設けられるラックとを備えていることを特徴とするものである。
本発明の第2の態様に係るカッター刃の移動装置は、前記第1の態様において、前記動力変換手段は、前記ステッピングモータの出力軸に取り付けられるピニオンギヤと、該ピニオンギヤと噛み合い、前記カッターホルダに対して設けられるラックとを備えていることを特徴とするものである。
本態様によれば、比較的簡単な構造によって動力変換手段を構成でき、ステッピングモータによる細かなピッチの回転運動がカッターホルダの移動方向における細かなピッチの直線運動に変換されて確実に伝達される。
本発明の第3の態様に係るカッター刃の移動装置は、前記第1または第2の態様において、前記ステッピングモータの回転方向と回転数は制御可能に構成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、ステッピングモータの有する細かなピッチ(回転角度)での回転と迅速な回転方向の切り替えとが有効に発揮されるようになり、カッター刃の作用位置を自動的に調整することができるようになる。
本発明の第4の態様に係るカッター刃の移動装置は、前記第3の態様において、被切断材に作用する前記カッター刃の作用位置はカッター刃の経時的情報に基づいて可変に構成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、例えばカッター刃の使用回数、カッター刃の使用時間あるいはカッター刃の累積切断長等を経時的情報とし、該経時的情報に基づいてカッター刃の作用位置をずらすことで、カッター刃の良好な切れ味を長く持続させることが可能になる。
本発明の第5の態様に係るカッター刃の移動装置は、前記第3の態様において、被切断材に作用する前記カッター刃の作用位置は切断工程中に可変に構成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、被切断材の切断工程中、カッター刃は被切断材の幅方向に往復移動しながら、被切断材の厚さ方向に移動し、カッター刃の作用位置を徐々に変化させることが可能になる。従って、カッター刃を単に被切断材の幅方向に往復移動させるだけの切断形態に比べて、押し切りないし引き切りといった要素が加わった本態様の切断形態の方がカッター刃の切れ味が向上し、美しい切断面が得られるようになる。
本発明の第6の態様に係るカッター刃の移動装置は、前記第3〜5のいずれか一つにおいて、被切断材に作用する前記カッター刃の作用位置はそのままで、前記押さえローラの位置は被切断材の厚さに応じて可変に構成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、被切断材の厚さが増大するのに対応してカッター刃の作用位置はそのままで押さえローラの位置を待避方向に自動的に移動させることが可能になる。また、押さえローラが待避方向に移動すると付勢手段の付勢力が自動的に大きくなるため、押さえローラの押さえ力もこれに対応して大きくなる。
本発明の第7の態様に係るカッター刃の移動装置は、前記第1〜第6のいずれか1つの態様において、前記付勢手段の付勢力は被切断材の厚さに比例して大きくなるように設定されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、薄い被切断材であれば押さえローラの押さえ力は小さくなり、厚い被切断材であれば押さえ力を大きくなるので、被切断材の厚さが増大するのに従って被切断材の保持力を自動的に高めることが可能になり、その厚さに応じた最適な押さえ力で押さえた状態で切断することができる。
本発明の第8の態様に係る記録装置は、被記録材を搬送する搬送手段と、搬送される前記被記録材に記録を実行する記録実行手段と、カッター刃を移動させて前記被記録材を切断する切断手段とを備えた記録装置であって、前記切断手段は、第1〜第7のいずれか1つの態様のカッター刃の移動装置を備えていることを特徴とするものである。
本態様によれば、被記録材をその厚みに応じた最適な押さえ力で押さえた状態で切断できるカッター刃の移動装置を備えた記録装置を実現することができる。また、カッター刃の作用位置を細かく調整できるようにすることでカッター刃の良好な切れ味を長く持続できるようにし、種々の厚さの被切断材に対応できるようにしたカッター刃の移動装置を備えた記録装置を実現することができる。
本発明の第9の態様に係る液体噴射装置は、被液体噴射材を搬送する搬送手段と、搬送される前記被液体噴射材に液体を噴射する液体噴射実行手段と、カッター刃を移動させて前記液体噴射材を切断する切断手段と、を備えた液体噴射装置であって、前記切断手段はカッター刃の移動装置を備え、前記カッター刃の移動装置は、被液体噴射材に直接作用して被液体噴射材を切断するカッター刃と、該カッター刃の近傍に配置されて被液体噴射材を保持するカッターホルダと別体の押さえローラと、前記カッター刃と前記押さえローラとを保持するカッターホルダと、該押さえローラを突出方向に付勢する付勢手段と、前記カッターホルダを被切断材に対して接離する方向に移動させる移動手段とを備え、前記移動手段は、正逆回転可能なステッピングモータと、該ステッピングモータの回転方向の動力を前記カッターホルダの移動方向の動力に変換する動力変換手段と、を備えていることを特徴とするものである。
以下、本願発明に係るカッター刃の移動装置及び該カッター刃の移動装置を備えた液体噴射装置の一例である記録装置について説明する。最初に本願発明の液体噴射装置、そしてその一例である記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンタ100を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。尚、ここで説明するインクジェットプリンタ100は、例えばA3プラス(ノビ)サイズ以上のシート状の大判の被記録材P(以下単票紙Pともいう)や上述したA1プラス(ノビ)サイズやB0プラス(ノビ)サイズといったロール状の大判の被記録材Rに対して記録を実行することができる大型のインクジェットプリンタである。
図1はインクジェットプリンタの外観を示す斜視図、図2はインクジェットプリンタの内部構造の概略を示す側断面図である。図示のインクジェットプリンタ100は、液体噴射装置本体、そして記録装置本体の一例であるプリンタ本体3を備えている。また、該プリンタ本体3の後部寄りの上部には、ロール状に巻かれた被液体噴射材、そして被記録材の一例であるロール紙Rを保持することができる被液体噴射材給送部の一例であるロール紙ホルダ5が設けられている。また、プリンタ本体3の前面の一例として左端寄りの部分には、各色のインクカートリッジCを個別に収容することができる複数のカートリッジスロットを備えたカートリッジホルダ8が設けられている。
また、インクジェットプリンタ100の前面の一例として、右端寄りの部分には各種の操作指令を司る操作パネル9が設けられている。また、プリンタ本体3の内部には前下がり傾斜姿勢で搬送案内板11が設けられており、該搬送案内板11にはロール紙R等をエア吸引によって吸着保持するための吸引口12、12、・・・が多数個設けられている。また、搬送案内板11には、後述する本発明のカッター刃の昇降装置1におけるカッター刃30との干渉を防止するための溝段差23がロール紙Rの幅方向Bに延びるように直線的に形成されている。
ロール紙Rは、該ロール紙Rの中心を貫通するように挿嵌される図示しないスピンドルと共にロール紙ホルダ5に装着されている。ロール紙ホルダ5に装着されているロール紙Rの繰出し始端は下方に向けて延びており、搬送用駆動ローラ19と搬送用従動ローラ20との一対のニップローラによって構成されている搬送用ローラ21による挟圧送り作用によって下方に向けて繰り出される。搬送用ローラ21を通過したロール紙Rの繰出し始端は、下面側が前記搬送案内板11によって支えられると共に、前記吸引口12、12、・・・からのエア吸引によって吸着保持され、搬送案内板11に密着された状態で搬送される。
搬送用ローラ21の下流には、後述する本発明のカッター刃の移動装置1が設けられており、本実施例では、該カッター刃の移動装置1の下流に記録ポジション26が設けられている。尚、カッター刃の移動装置1が記録ポジション26の下流側に設けられる構造も可能である。記録ポジション26の上方には、ロール紙R表面の被記録面に向けて液体の一例であるインクを吐出させて記録を実行する液体噴射ヘッドの一例である記録ヘッド13が設けられている。一方、記録ポジション26の下方には、ロール紙Rの裏面を支持して前記記録ヘッド13の下面との間のギャップPGを規定するプラテン28が設けられている。
記録ヘッド13は、本発明のカッター刃の昇降(移動)装置1と共にキャリッジ10に取り付けられている。キャリッジ10は、ロール紙Rの幅方向Bに直線的に延びるキャリッジガイド14によって摺動自在に支持されており、図示しない駆動手段からの駆動力を受けて図1中、右端側のホームポジションと、図1中、左端側のリターンポジションとの間で往復移動できるようになっている。また、前記記録ヘッド13には、カートリッジホルダ8から延びる各色のインクカートリッジCに対応した複数本のインクチューブ16が接続されている。各インクカートリッジC内のインクは、当該インクカートリッジCに対応したインクチューブ16を通って記録ヘッド13に導かれ、記録ヘッド13下面の図示しない吐出口から勢いよく噴射されるようになっている。
そして、記録ヘッド13からのインクの吐出と、前記搬送用ローラ21によるロール紙Rの搬送方向への送り動作と、キャリッジ10による記録ヘッド13のロール紙Rの幅方向Bへの往復動作とによって、ロール紙Rに対する所望の記録が実行される。また、記録が実行された後のロール紙Rは、記録ポジション26の下流に設けられるガイドローラ27と前記搬送案内板11とによって案内され、所定の切断ポジションに到達させたところで前記搬送用ローラ21による搬送が停止される。そして、本発明のカッター刃の昇降装置1と前記キャリッジ10とが作動を開始してロール紙Rの切断加工が実行され、記録が実行されたロール紙Rは所望の長さに切断されて下流に排紙される。また、前記切断加工によって新たに形成されたロール紙Rの繰出し始端は、次の記録の実行に備えて上方に移動し、記録実行開始位置で停止する。
[実施例]
次に、このようにして構成されるインクジェットプリンタ100に対して適用することができる本発明のカッター刃の移動装置1について図面に基づいて具体的に説明する。尚、以下のこの実施例ではカッター刃の移動方向が昇降方向であるので、具体的にカッター刃の昇降装置と言うことにする。
次に、このようにして構成されるインクジェットプリンタ100に対して適用することができる本発明のカッター刃の移動装置1について図面に基づいて具体的に説明する。尚、以下のこの実施例ではカッター刃の移動方向が昇降方向であるので、具体的にカッター刃の昇降装置と言うことにする。
図3はカッター刃の昇降装置を示す一部を断面で示した斜視図、図4はカッター刃の作用位置を異ならせた各状態のカッター刃の昇降装置を示す一部を断面で示した正面図である。図5は被切断材の厚さを異ならせた各状態のカッター刃の昇降装置を示す一部を断面で示した正面図、図6は切断中にカッター刃の作用位置を異ならせる4種のカッター刃の移動軌跡を示す一部を断面で示した正面図である。また図7は押さえローラの押さえ力と被切断材の厚さとの関係を示すグラフである。
本発明のカッター刃の昇降装置1は、被切断材であるロール紙Rに直接作用してロール紙Rを切断するカッター刃30と、該カッター刃30を保持し、カッター刃30と一体になって昇降移動するカッターホルダ31と、該カッターホルダ31の下面から突出してロール紙Rを保持するカッターホルダ31とは別体の2つの押さえローラ32、32と、これらの押さえローラ32を突出方向Aに付勢する付勢手段の一例である圧縮コイルバネ33と、前記カッターホルダ31を昇降移動させる昇降手段34とを備えている。尚、図面を解りやすくするために、圧縮コイルバネ33はコイルの半分だけが示されている。
前記カッター刃30は、先端部35が尖った2等辺三角形状、そして基端部36が矩形状に形成された平板状の刃物部材である。先端部35には中央の頂点Oを挟んでその左右に刃面37、38が斜めに形成されており、前記頂点Oによってロール紙Rの一部に突き刺さり、この状態でカッター刃30が左右方向に往復移動することによって、前記刃面37、38がロール紙Rの切り口を切り開くように作用してロール紙Rを切断する。また、前記基端部36は、カッターホルダ31によって保持される部分であり、該基端部36を介してカッター刃30はカッターホルダ31と一体化されている。
カッターホルダ31は、正面視門型をしたブロック状の部材で、カッターホルダ31の下面には2つの押さえローラ32と、該押さえローラ32を保持するローラホルダ39と、前記圧縮コイルバネ33及びカッター刃30を収容する収容凹部40が設けられている。また、該収容凹部40の左右には脚部41、41が設けられており、これらの脚部41、41の下端部には、前記ローラホルダ39の抜け止め作用をする鉤状をした突起42、42が内側に突出するように設けられている。
押さえローラ32は、ロール紙Rの表面を押さえながらキャリッジ10の往復移動に伴って回転する円筒状の部材である。押さえローラ32は、ローラホルダ39によって回転自在に保持されており、前記脚部41、41の内壁と前記カッター刃30の側面に摺接して上下動する前記ローラホルダ39と共に昇降方向に移動する。また、押さえローラ32とローラホルダ39は、カッター刃30を挟んで左右に一組ずつ設けられている。また、圧縮コイルバネ33は、カッター刃30に対して外嵌めされるコイル径の大きな1本のバネによって一例として構成されている。そして、当該圧縮コイルバネ33のバネ定数は、図7に示す押さえローラ32による押さえ力Fがロール紙Rの厚さtの大きさに比例して大きくなるような関係を満たすように設定されている。
昇降手段34は、正逆回転可能なステッピングモータ43と、該ステッピングモータ43の回転方向の動力を前記カッターホルダ31の昇降方向の動力に変換する動力変換手段44とを備えている。このうちステッピングモータ43は、1ステップの回転でカッター刃30を突出方向Aと待避方向Cとに、本実施例では最小で約70μmずつ移動させることができる高精度の回転角度の分解能力を有している。また、動力変換手段44としてはラック・ピニオン機構が一例として利用でき、図示の実施例では、前記ステッピングモータ43の出力軸に取り付けられているピニオンギヤ45と、該ピニオンギヤ45と噛み合い、前記カートリッジホルダ8の一例として右側の側面に上下方向に延びるように設けられているラック46とによって動力変換手段44を構成している。
また、本発明のカッター刃の昇降装置1には、前記ステッピングモータ43の回転方向と回転数(ステップ数)とを制御する図示しない制御装置が設けられている。そして、前記ステッピングモータ43の高精度の回転角度の分解能力と前記制御装置とを組み合わせることによって以下に述べるような種々の切断形態を採ることができる。
(1)カッター刃の切れ味が低下してきた時(図4参照)
カッター刃30の刃面37、38がロール紙Rに作用するカッター刃30の作用位置が常に同じであると、カッター刃30の切れ味が低下してきて美しい切断面が形成できなくなる。従って、このような事態になる前にカッター刃30の作用位置を変更し、カッター刃30の切れ味を長く持続させるようにする。
カッター刃30の刃面37、38がロール紙Rに作用するカッター刃30の作用位置が常に同じであると、カッター刃30の切れ味が低下してきて美しい切断面が形成できなくなる。従って、このような事態になる前にカッター刃30の作用位置を変更し、カッター刃30の切れ味を長く持続させるようにする。
具体的には、カッター刃30の使用回数、使用時間あるいは累積切断長等をカウントしておき、これらをカッター刃30の切れ味が低下してきた目安となる経時的情報として位置付け、該経時的情報に基づいてカッター刃30の作用位置を変更する。例えば、当初のカッター刃30の作用位置が図4(a)の位置であった場合には、ステッピングモータ43を正転方向に所定ステップ回転させてカッター刃30を突出方向Aに移動させ、図4(b)の位置にする。また、図4(b)の位置でのカッター刃30の使用を続け、経時的情報が発せられた場合には、前記と同様にして図4(c)の位置にカッター刃30の作用位置を変更する。以下、同様にしてカッター刃30の作用位置を変更して行くと、最終的にカッター刃30の刃面37、38のすべての部分を利用できるようになる。
(2)厚口のロール紙を使用する場合(図5、図10参照)
押さえローラ32とカッター刃30の相対位置が変化しない場合には、図10に示すように押さえローラ32がロール紙Rに当接した位置がカッター刃30の作用位置となる。従って図10(b)(c)に示すようにロール紙Rの厚さが増加した場合には、カッター刃30の刃面37、38が十分にロール紙Rに作用しなくなり、ロール紙Rの良好な切断ができなくなってしまう。
押さえローラ32とカッター刃30の相対位置が変化しない場合には、図10に示すように押さえローラ32がロール紙Rに当接した位置がカッター刃30の作用位置となる。従って図10(b)(c)に示すようにロール紙Rの厚さが増加した場合には、カッター刃30の刃面37、38が十分にロール紙Rに作用しなくなり、ロール紙Rの良好な切断ができなくなってしまう。
本発明では、押さえローラ32とカッター刃30の相対位置が変化できるように構成されており、圧縮コイルバネ33のバネ定数が上述した図7に示す関係を満たすように設定されていることから、種々の厚さのロール紙Rに対応できるようになっている。例えば、通常の厚さのロール紙Rを切断する場合の押さえローラ32の位置とカッター刃30の作用位置が図5(a)で示す位置にあった場合には、ロール紙Rの厚さが増加するに従って図5(b)(c)に示すように、カッター刃30の作用位置はそのままで押さえローラ32、32のみが圧縮コイルバネ33の付勢力に抗して待避方向Cに移動するようになる。
そして、ロール紙Rの厚さtが増加するほど、当該押さえローラ32、32は強い押さえ力Fでロール紙R表面を押圧し保持するようになり、カッター刃30による安定した切断を実現する。また、上述のようにロール紙Rの厚さが変わってもカッター刃30の作用位置はそのままであるから、ロール紙Rの切断はロール紙Rの厚さの違いに影響されることなく良好に行われる。
(3)切断中にカッター刃の作用位置を異ならせる場合(図6参照)
図8に示すソレノイドを使用した従来のカッター刃の昇降装置の場合には不可能であったが、ステッピングモータ43を使用した本発明のカッター刃の昇降装置1にあっては、切断中にカッター刃30の作用位置を異ならせ、押し切りないし引き切りの作用を付加して、カッター刃30の切れ味を一層良好にすることが可能になっている。具体的には、カッター刃30の先端部35における頂点Oの部分をロール紙Rの切断ライン上の任意の位置に突き刺し、ロール紙Rの幅方向Bにカッター刃30を往復移動させる際にステッピングモータ43を正転方向と逆転方向に所定ステップずつ回転させることによってロール紙Rの切断を実行する。
図8に示すソレノイドを使用した従来のカッター刃の昇降装置の場合には不可能であったが、ステッピングモータ43を使用した本発明のカッター刃の昇降装置1にあっては、切断中にカッター刃30の作用位置を異ならせ、押し切りないし引き切りの作用を付加して、カッター刃30の切れ味を一層良好にすることが可能になっている。具体的には、カッター刃30の先端部35における頂点Oの部分をロール紙Rの切断ライン上の任意の位置に突き刺し、ロール紙Rの幅方向Bにカッター刃30を往復移動させる際にステッピングモータ43を正転方向と逆転方向に所定ステップずつ回転させることによってロール紙Rの切断を実行する。
そして、この場合のカッター刃30の移動軌跡としては、図6(a)に示すように突き刺した位置からカッター刃30の作用位置を突出方向Aに直線的に移動させたり、図6(b)に示すように突き刺した位置からカッター刃30の作用位置を逆に待避方向Cに直線的に移動させるようにしたものが採用可能である。また、ステッピングモータ43の正逆転の切り替えを更に細かくすれば、図6(c)に示すような直線的なジグザグ状のカッター刃30の移動軌跡にしたり、図6(d)に示すようなサイン(sign)カーブ状の滑らかなカッター刃30の移動軌跡とすることも可能である。
[他の実施例]
本願発明に係るカッター刃の移動装置1及び該カッター刃の移動装置1を備える記録装置100等は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行なうことも勿論可能である。例えば、本発明のカッター刃の移動装置1は、前述した大型のインクジェットプリンタ100に限らず、A3サイズ以下程度の単票紙PやA3の短辺幅以下程度の幅寸法のロール紙Rへの記録の実行に使用されている小型、中型のインクジェットプリンタ100に適用することが可能である。
本願発明に係るカッター刃の移動装置1及び該カッター刃の移動装置1を備える記録装置100等は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行なうことも勿論可能である。例えば、本発明のカッター刃の移動装置1は、前述した大型のインクジェットプリンタ100に限らず、A3サイズ以下程度の単票紙PやA3の短辺幅以下程度の幅寸法のロール紙Rへの記録の実行に使用されている小型、中型のインクジェットプリンタ100に適用することが可能である。
また、本発明のカッター刃の移動装置1は、インクジェットプリンタ100等の記録装置や他の液体噴射装置に限らず、カッター刃の移動装置を備える種々の装置に適用可能である。また、動力変換手段44は、前述したラック・ピニオン機構に限らず、カム機構やクランク機構等、他の機構を適用することが可能で、付勢手段33も圧縮コイルバネに限らず、板バネやエアダンパ等、種々の付勢手段33が採用可能である。また、カッター刃30の形状も種々の形状が採用でき、例えば円板状のロールカッター形状のカッター刃30を採用することも可能である。
1 カッター刃の移動装置、3 プリンタ本体(記録装置本体)、5 ロール紙ホルダ、8 カートリッジホルダ、9 操作パネル、10 キャリッジ、11 搬送案内板、12 吸引口、13 記録ヘッド、14 キャリッジガイド、16 インクチューブ、19 搬送用駆動ローラ、20 搬送用従動ローラ、21 搬送用ローラ、23 溝段差、26 記録ポジション、27 ガイドローラ、28 プラテン、30 カッター刃、31 カッターホルダ、32 押さえローラ、33 圧縮コイルバネ(付勢手段)、34 昇降手段、35 先端部、36 基端部、37 刃面、38 刃面、39 ローラホルダ、40 収容凹部、41 脚部、42 突起、43 ステッピングモータ、44 動力変換手段、45 ピニオンギヤ、46 ラック、100 インクジェットプリンタ(記録装置)、C インクカートリッジ、P 単票紙(用紙、被記録材)、R ロール紙(被記録材、被切断材)、PG ギャップ、A 突出方向、O 頂点、B 幅方向、C 待避方向、F 押さえ力、t 厚さ
Claims (9)
- 被切断材に直接作用して被切断材を切断するカッター刃と、
該カッター刃の近傍に配置されて被切断材を保持する押さえローラと、
前記カッター刃と前記押さえローラとを保持するカッターホルダと、
該押さえローラを突出方向に付勢する付勢手段と、
前記カッターホルダを被切断材に対して接離する方向に移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段は、
正逆回転可能なステッピングモータと、
該ステッピングモータの回転方向の動力を前記カッターホルダの移動方向の動力に変換する動力変換手段と、
を備えていることを特徴とするカッター刃の移動装置。 - 請求項1に記載のカッター刃の移動装置において、前記動力変換手段は、
前記ステッピングモータの出力軸に取り付けられるピニオンギヤと、
該ピニオンギヤと噛み合い、前記カッターホルダに対して設けられるラックと、
を備えていることを特徴とするカッター刃の移動装置。 - 請求項1または2に記載のカッター刃の移動装置において、前記ステッピングモータの回転方向と回転数は制御可能に構成されていることを特徴とするカッター刃の移動装置。
- 請求項3に記載のカッター刃の移動装置において、被切断材に作用する前記カッター刃の作用位置はカッター刃の経時的情報に基づいて可変に構成されていることを特徴とするカッター刃の移動装置。
- 請求項3に記載のカッター刃の移動装置において、被切断材に作用する前記カッター刃の作用位置は切断工程中に可変に構成されていることを特徴とするカッター刃の移動装置。
- 請求項3〜5のいずれか一項に記載のカッター刃の移動装置において、被切断材に作用する前記カッター刃の作用位置はそのままで、前記押さえローラの位置は被切断材の厚さに応じて可変に構成されていることを特徴とするカッター刃の移動装置。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のカッター刃の移動装置において、前記付勢手段の付勢力は、被切断材の厚さに比例して大きくなるように設定されていることを特徴とするカッター刃の移動装置。
- 被記録材を搬送する搬送手段と、
搬送される前記被記録材に記録を実行する記録実行手段と、
カッター刃を移動させて前記被記録材を切断する切断手段と、を備えた記録装置であって、
前記切断手段は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカッター刃の移動装置を備えていることを特徴とする記録装置。 - 被液体噴射材を搬送する搬送手段と、
搬送される前記被液体噴射材に液体を噴射する液体噴射実行手段と、
カッター刃を移動させて前記液体噴射材を切断する切断手段と、を備えた液体噴射装置であって、
前記切断手段はカッター刃の移動装置を備え、
前記カッター刃の移動装置は、
被液体噴射材に直接作用して被液体噴射材を切断するカッター刃と、
該カッター刃の近傍に配置されて被液体噴射材を保持するカッターホルダと別体の押さえローラと、
前記カッター刃と前記押さえローラとを保持するカッターホルダと、
該押さえローラを突出方向に付勢する付勢手段と、
前記カッターホルダを被切断材に対して接離する方向に移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段は、
正逆回転可能なステッピングモータと、
該ステッピングモータの回転方向の動力を前記カッターホルダの移動方向の動力に変換する動力変換手段と、
を備えていることを特徴とする液体噴射装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007095634A JP2008254213A (ja) | 2007-03-30 | 2007-03-30 | カッター刃の移動装置、記録装置及び液体噴射装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2007095634A JP2008254213A (ja) | 2007-03-30 | 2007-03-30 | カッター刃の移動装置、記録装置及び液体噴射装置 |
Publications (1)
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---|---|
JP2008254213A true JP2008254213A (ja) | 2008-10-23 |
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ID=39978300
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007095634A Pending JP2008254213A (ja) | 2007-03-30 | 2007-03-30 | カッター刃の移動装置、記録装置及び液体噴射装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2008254213A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012250325A (ja) * | 2011-06-03 | 2012-12-20 | Seiko Epson Corp | 駆動装置、これを備えたテープ印刷装置およびステッピングモーターの制御方法 |
WO2019207667A1 (ja) * | 2018-04-25 | 2019-10-31 | 三菱電機株式会社 | プリンター |
-
2007
- 2007-03-30 JP JP2007095634A patent/JP2008254213A/ja active Pending
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JP2012250325A (ja) * | 2011-06-03 | 2012-12-20 | Seiko Epson Corp | 駆動装置、これを備えたテープ印刷装置およびステッピングモーターの制御方法 |
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