JP2008249527A - 磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の簡易抗力評価法 - Google Patents

磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の簡易抗力評価法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、風洞試験効率を大幅に改善すると同時に、磁力支持天秤装置が装備されている風洞では本来不要なはずの模型支持装置や機械式天秤装置を別途装備しなければならないという無駄を省くと共に、合理的な空気力評価ができる手法を提示することにある。
【解決手段】本発明の磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の簡易抗力評価法は、模型に揚力が作用していない状態で水平方向に既知の外力を加え、これと釣合うための抗力コイル電流の関係を求め、これに基づいて水平外力変化に対する抗力コイル電流の変化率(B)を定量的に評価し、重力以外の外力を加えずに模型の姿勢角を変えた時の抗力コイル電流(Idrag)と姿勢角(θ)の関係を求め、模型に作用している重力(mg)から揚力(L)が作用しているときの抗力(D)を提案式に基づいて評価する。
【選択図】図1

Description

本発明は風洞試験における揚力等の気流に直角な方向の力を受ける模型の磁力支持天秤装置(MSBS)を用いた抗力評価に於いて、風洞試験効率を大幅に向上させる抗力評価方法に関する。
風洞試験の重要な試験項目の一つとして、風洞模型に気流の流れ方向に働く抵抗力を測定する抗力測定がある。流体中を移動するときに物体に作用する抗力を僅かでも低減させることができれば、移動に要するエネルギーが少なからず改善されて省エネルギーに貢献することができるので、抗力測定を極力正確に行うことが求められている。しかしながら、磁力支持天秤装置でそれを行う場合、模型内に設けられる磁石の強さは経年変化によって少なからず劣化するので、時間の経過に伴って、当初得られている対応関係が実際の対応関係とは必ずしも一致しなくなるおそれがある。抗力測定においても、経年変化によって、磁石の強さとコイルに流す電流との間の対応関係も異なってくるので、磁力支持天秤装置の抗力較正を行う必要がある。
磁力支持天秤装置は、図11に示されるように風洞模型10を磁気の力で気流中に支持する装置であり、支持干渉のない風洞試験を実現することができる。風洞模型10には磁化された物質、超伝導コイルのような電流を流し続けているコイル、或いは永久磁石等から成る強力な磁石体が搭載される。風洞模型10の磁石体には、風洞の測定部の周りに配置したコイル0乃至9に通電することにより生じた外部磁場との相互磁気作用によって磁気力を受け、風洞模型10を磁気的に浮上支持させることができる。外部磁場は、磁気支持コイルとしてのコイル1〜4とコイル5〜8とから成る風洞内軸方向に所定距離間隔を持った二つの磁気回路、及びその外側に配置され前記二つの磁気回路と直交した同じく磁気支持コイルとしての空芯コイル0,9によって発生される。風洞内気流方向をx軸にとり重力の作用する鉛直方向をz軸、前記x軸とz軸に直交する方向にy軸をとるようにしたとき、一方の磁気回路はz軸方向磁場を発生させる1対のコイル1,3とy軸方向に磁場を発生させる1対のコイル2,4とから構成され、他方の磁気回路はZ方向磁場を発生させる1対のコイル5,7とY方向に磁場を発生させる1対のコイル6,8とから構成される。二つの磁気回路の各コイルに流れる電流を調節することにより、磁気回路内のy−z面内での磁場の強さと方向及びそれらのx軸方向の変化率を連続的に変化させることができる。また、空芯コイル0,9に流れる電流を調節することによりx軸方向磁場の強さのx軸方向で見た変化率を制御でき、都合5軸の制御が可能である。即ち、磁気回路のコイル1〜8は、風洞模型10に働く揚力と縦揺れモーメントとに対抗する磁気力を与える揚力用コイルとして機能し、空芯コイル0,9は風洞模型10に働く抗力に対抗する磁気力を与える抗力対抗用コイルとして機能している。
磁力支持天秤装置の抗力較正は、図12の上段に示すように通常、流れを止めた風洞の中に風洞模型を置き、図12の下段に示すように仮に気流を流したとしたときに気流の流れ方向に生じるであろう抗力Dを何らかの方法で外力として加え、この力に釣り合う磁気力を発生させる抗力コイルに流される抗力コイル電流値Idragを計測し、加えた力Dと抗力コイル電流値Idragとの対応関係を得ることによって可能となる。この対応関係に基づいて、実際に気流を流して行われる風洞試験で磁力支持中の模型に加わる抗力の評価を、釣合い状態での抗力コイルに流される抗力コイル電流値を測定することで行うことができる。
磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の抗力評価では、今までは揚力に相当した力を加えた状態で、気流の状態と模型の姿勢変化毎に抗力と模型の気流方向位置を一定に保つ抗力コイル電流の関係を実験で求める試験(抗力較正試験)が必要であり、様々な風速や姿勢変化をする風洞試験では抗力較正試験の数が増大して試験効率を著しく落としていた。
これに代わる既存の別の方法としては、図13に示すように別途風洞用天秤に模型を設置して、模型の位置姿勢を試験と同じ状態にした上で、風洞試験と同じコイル電流を流して模型に加わる磁気力を測定することにより、これと釣合っている抗力を評価する方法がある。この場合は、磁場の影響が無い天秤装置と模型の位置姿勢を変更できるような模型支持装置を別途装備する必要があり、多大な費用が別途掛かることになる。
従来の抗力較正においては、既知の力を加えるには、風洞模型に与えるための機器の組立、調整、準備等の煩雑な作業が求められること、また、抗力に相当する力を変更するには、3つの重りを交換し、その交換後、再度の釣り合い及び調整が必要であり、風洞模型の動きが停止するまで待つ必要があった。このため、頻繁な抗力較正は現実には困難であり、較正時期の間隔が開き、抗力測定精度自体にも悪影響が出る虞れがあった。そのような状況に鑑み本発明者らは、先に特許文献1「磁力支持天秤装置における抗力較正法」を提示した。この発明の目的は、重りを用いる場合に避けることができなかった、機器の組立、調整、準備、重りの交換等の煩雑な作業をなくし、時間やコストの観点で簡便で効率的に抗力較正を実施することを可能にする磁力支持天秤装置における抗力較正方法を提供することにあり、この発明の抗力較正方法は、抗力と電流との対応関係を較正する抗力較正方法において、前記風洞模型の重さをmgとし、重力のみが作用している前記風洞模型を前記磁力支持天秤装置で釣合い状態に磁力支持したときの前記風洞模型の基準ピッチ角及び前記基準ピッチ角の周りの微小ピッチ角をそれぞれθ,θとしたとき、Fd=mg・tan(θ+θ)/cosθなる式で定められる力Fdを前記風洞模型に作用する前記抗力に相当する力であると見なすことを特徴としたものである。
特願2004−309357号公報 「磁力支持天秤装置における抗力較正方法」平成16年11月4日公開 Goodyer,M.J.:"Southermpton University's Contributions to the Technology of Magnetic Levitation Applied to Wind Tunnel Testing", C. P. Vol. 2, PICAST'1, Dec.1993, pp.1006-1013 Stephens,T., Covert,E.E., Vlajinac,M., Gillian,G.D.: "Recent Developments in a Wind Tunnel Magnetic Balance", AIAA Paper No.72-164,1972 澤田秀夫、須田信一、国益徹也、「AGARD-B模型の6軸制御による磁力支持」、第36期日本航空宇宙学会年会公演会前刷集、April,2005 佐藤衛、他5名「NAL TM−639」1991年
特許文献1に提示した抗力較正方法は、機器の組立、調整、準備、重りの交換等の煩雑な作業をなくし、時間やコストの観点で簡便で効率的に抗力較正を実施することを可能にしたのであるが、模型の姿勢角と揚力が共に変化する場合には、模型姿勢が磁場計測による空気力評価に大きな影響を及ぼすことが判った。
本発明の課題は、風洞試験効率を大幅に改善すると同時に、磁力支持天秤装置が装備されている風洞では本来不要なはずの模型支持装置や機械式天秤装置を別途装備しなければならないという無駄を省いて大幅なコスト削減を達成できると共に、合理的な空気力評価ができる手法を提示することにある。
本発明の磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の簡易抗力評価法は、模型に揚力が作用していない状態で水平方向に既知の外力を加え、これと釣合うための抗力コイル電流の関係を求めるステップと、これに基づいて水平外力変化に対する抗力コイル電流の変化率(B)を定量的に評価し、重力以外の外力を加えずに模型の姿勢角を変えた時の抗力コイル電流(Idrag)と姿勢角(θ)の関係を求めるステップと、模型に作用している重力(mg)から揚力(L)が作用しているときの抗力(D)を次式に基づいて評価するステップとを踏むことを特徴とする。
ここで、Cは姿勢角(θ)変化に対する抗力コイル電流(Idrag)変化の変化率で、上付き添え字は無風時の値を示し、最終的に姿勢角θを一般的な迎角αに置き換えた。
また、本発明の磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の簡易抗力評価法は、好ましい形態として模型に揚力が作用していない状態で水平方向に既知の外力を加える手法には、姿勢角(θ)を0とした状態で所定量の錘を滑車を介してつるすことによって実現するようにした。
本発明の揚力を受ける模型の簡易抗力評価システムは、磁力支持天秤装置において模型に揚力が作用していない状態で水平方向に既知の外力を加える手段と、これと釣合うための抗力コイル電流の関係を求める手段と、これに基づいて水平外力変化に対する抗力コイル電流の変化率(B)を定量的に評価し、重力以外の外力を加えずに模型の姿勢角を変えた時の抗力コイル電流(Idrag)と姿勢角(θ)の関係を求める手段と、模型に作用している重力(mg)から揚力(L)が作用しているときの抗力(D)を上式[数1]に基づいて評価する手段とからなるものとした。
本発明の方法により、抗力と抗力電流の関係を得るために、風速や模型姿勢毎に変化する揚力を評価して新たに模型に加えた上で抗力較正試験を実施する必要が無くなり、試験効率を大幅に改善すると同時に、本来磁力支持天秤装置が装備されている風洞では不要なはずの模型支持装置や機械式天秤装置を別途装備しなければならないという無駄を省け、大幅なコスト削減を達成できる。
また、揚力と同様に模型の横方向に流体力が加わる場合にも同じ効果が働くので、横力が作用する場合にも本方法を適用できる。
本発明の揚力を受ける模型の簡易抗力評価システムは、通常の磁力支持天秤装置に模型に揚力が作用していない状態で水平方向に既知の外力を加える手段と、これと釣合うための抗力コイル電流の関係を求める手段と、これに基づいて水平外力変化に対する抗力コイル電流の変化率(B)を定量的に評価し、重力以外の外力を加えずに模型の姿勢角を変えた時の抗力コイル電流(Idrag)と姿勢角(θ)の関係を求める手段と、模型に作用している重力(mg)から揚力(L)が作用しているときの抗力(D)を上式[数1]に基づいて評価する手段とを付加したものであるから、通常の磁力支持天秤装置に多少の細工とソフトを搭載するだけで、本発明の揚力を受ける模型の簡易抗力評価法を容易に実施出来る。
磁力支持天秤装置(MSBS)の基本原理では、模型の上下方向に力を受けた場合に模型の高さを一定に保つために、この力と反対方向に磁気力を作用させて釣合わせる。磁石と磁場の干渉に伴う磁気力を求める式から、この場合、釣合いに用いた磁気力のおおよそsinθ倍した磁気力が模型の前後方向に働くことになる。(θは模型の姿勢角)この結果、模型前後方向でも、この磁気力と釣合わせるための新たな磁気力を抗力コイル電流を変化させて作用させる必要が生じる。それ故、風洞試験で風速を変えると抗力、揚力の両方の大きさが変わり、模型の気流方向の位置を制御している抗力コイル電流は変化するが、実際の抗力変化がどの程度であったかは、揚力の大きさの変化によって異なることとなる。結局、揚力が異なる毎に、抗力較正試験を実施して抗力を評価しなくてはならない。同様のことは、模型の姿勢角を変えた場合も、揚力と抗力が変化するので、真の抗力変化量を評価するには、揚力が異なる毎に、抗力較正試験を実施して抗力を評価しなくてはならない。
本発明の磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の簡易抗力評価法は、揚力が無いときの抗力較正試験を実施する際、揚力に相当した力を加えた状態で抗力と抗力コイル電流の関係を求めること省き、揚力が無い状態での姿勢変化に伴う抗力コイル電流変化を計測し、これを用いることにより揚力を受ける模型の抗力評価を可能とするもの、すなわち、揚力が作用していない場合の模型姿勢角変化に伴う模型前後方向の磁気力変化を評価することにより、揚力の抗力較正試験への影響を定量的に評価し、揚力が変化した場合でも正しく抗力変化量だけを評価する方法を提案するものである。先ず、図1の上段に示すように模型を水平に支持した状態で水平方向に既知の外力を加え、これと釣合うための抗力コイル電流の関係を求める。この水平外力(F)変化に対する抗力コイル電流(Idrag)変化は図1の右上に示すように直線的で、その変化率(B)は容易に定量的に評価される。図2は実際の試験データをプロットしたグラフで、きれいに直線上に乗っていることが分かる。次に、図1の中段に示すように重力以外の外力を加えずに模型の姿勢角を変えた時の抗力コイル電流と姿勢角の関係を求める。この姿勢角(θ)変化に対する抗力コイル電流(Idrag)変化も図1の右下に示すように直線的となり、その変化率(C)も容易に定量的に評価される。この他に、模型に作用している重力(mg)が判ると、揚力(L)が作用しているときの抗力(D)は先の式[数1]によって評価できることとなる。
次に、この評価方法の原理について詳しく説明をしておく。図3の左はJAXA60cmMSBSのコイルの配置と座標系を示したものである。このように、座標系として、z軸を鉛直上方、x軸を模型長軸方向とし、y軸はこれらと右手系を成す方向に取るとする。
F:力(N)
M:磁気モーメント(Wbm)
:磁石の磁気モーメント(Wbm)
H:磁場強さ(AT/M)
N:モーメント(N・m)
θ:模型の姿勢角の反符号(rad)
ψ:模型の偏揺れ角(rad)
drag:単位電流当たりのx方向磁場強さ成分のx方向勾配量(AT/m/A)
side:単位電流当たりのy方向磁場強さ成分のx方向勾配量(AT/m/A)
lift:単位電流当たりのz方向磁場強さ成分のx方向勾配量(AT/m/A)
roll:単位電流当たりのx方向磁場強さ成分(AT/m/A)
hyaw:単位電流当たりのy方向磁場強さ成分(AT/m/A)
pitch:単位電流当たりのz方向磁場強さ成分(AT/m/A)
drag:x方向磁場強さ成分のx方向勾配量を制御する電流(A)
side:y方向磁場強さ成分のx方向勾配量を制御する電流(A)
lift:z方向磁場強さ成分のx方向勾配量を制御する電流(A)
roll:x方向磁場強さ成分を制御する電流(A)
yaw:y方向磁場強さ成分を制御する電流(A)
pitch:z方向磁場強さ成分を制御する電流(A)
δ:変分量を示す記号
とそれぞれの物理量を符号で示す。括弧内はその単位である。
磁気力の公式から、
ここでは、簡単のため、模型の偏揺れ角ψ=0の場合に限る。よって、縦三分力のみを考えると、
この式は、模型内の基本磁石と周りの磁場との干渉により発生する磁気力のみを扱っている。図3に示す実際のJAXA60cmMSBSでは周りに磁気回路を形成するためのヨークがあり、この影響はこの式の中には入っていない。例えば、磁石をヨークに近づければ、MSBS側で磁場を作り出さなくても、磁石とヨークの間で互いに吸引する力が発生する。これは、磁石から発する磁束が周りのヨーク内を通り再び元に戻る磁気回路において、エネルギーを最小にする作用による力である。このため、この力の性質は
* Z=0の位置では、ヨークが上下対称なため力は発生しない。
* 模型の迎角θに対して、z方向の力の変化は対称である。
* z方向の力の大きさの最大項は前後の上下コイルに流す電流の平均値(Ilift)に比例する。
この作用が存在している証拠として、抗力較正試験の方法で、x方向に荷重を掛けた時の抗力較正係数と、模型を傾けて、傾斜角に対する抗力コイル電流の関係から求めた抗力較正係数が数十%も互いに異なっていることから伺える。
仮に、磁場干渉に伴う力だけでMSBSのコイル電流が決定されるのならば、
である筈であるから、hzzが小さければ、
0=M・cosθ・hxx・Idrag−mg・tanθ
となり、浮揚している模型の重力のtanθ/cosθ分の抗力荷重を受けたものに等価である筈である。しかし、実際には数十%も値が異なる。この原因が磁石から発する磁束が作りだす磁気回路によるものと考えられる。
そこで、この磁気回路の仮定条件に当てはまる効果を取り入れた磁気力の式を以下に書き出す。ここでは、hzzはその大きさが他の項と比べて十分に小さいと仮定する。
制御電流を使って書き出すと、
無風時の状態は
無風時の荷重を掛けた較正試験の状態は
と書き換えられ、θ=0では
無風時にθを変化させると、
よって、
θの大きさが十分小さければ、
以上の3つの較正試験から、以下の係数A,B,Cが決まる。
故に、
AGARAD-B模型では、
A=−0.7082, B= 4.3516, C= 280.6, mg=86.76
となった。
通風時の状態は
であるから、無風時の状態との差を取ると、
故に、
故に、
今回のAGARD−B模型の試験では
である。よって、抗力Dは
となる。この模型の姿勢角θを最終的に通常の模型迎角αで記すと、次式となる。
この式が先の[数1]である。
実際に風洞試験で得られたコイル電流値に近い制御電流を得られるように模型に錘を付けて、空気力の推定結果が正しいか確認する試験を実施した。図3右はそのときの様子を写した写真である。試験は迎角4度と8度の2通りで実施した。揚力とピッチングモーメントは迎角0度の時の力構成試験結果から推定した値になるように模型前後に錘を吊るし、抗力相当分荷重を変化させ、推定値と一致するかどうか調べた。図5が抗力電流と抗力荷重の関係を示している。抗力推定結果が揚力とピッチングモーメントを受けた状態での抗力較正直線上に載ることが確認でき、上式[数21]すなわち、式[数1]の推定法が有効であることが分かる。4度の時も同様に推定値に近い較正試験結果を得ることができた。以降の抗力評価結果では本推定方法を適用した結果を示すことが確認できた。
次に、空気力評価に関する試験結果を紹介する。まず、試験内容について説明すると、姿勢角は一様流に対する角で、姿勢角0度は機体軸が一様流と平行な状態を言う。一様流方向は測定部中心軸と一致しているわけでないので、先ず模型を気流と平行に調整した。用いる模型AGARD-B(図4参照)は上下左右で対称なため、気流に平行な場合は気流中で流体力が作用しない。この性質を利用して、模型迎角と偏揺れ角(ψ,z軸周りの回転角)を変更しても無風時と通風時で、気流に直角方向の力を制御するコイル電流が同じ値に維持される姿勢角にすることで模型を気流に平行にできる。本試験では風速25m/Sの時と無風時を比較して模型の姿勢角を調整した。試験は約1秒間の平均電流を計測する毎に姿勢角を変更していく計測(ここでは「スイープ計測」と呼ぶ。)と、約8秒間に亘り時間履歴を含んだデータを計測し、平均を取る方法(ここでは「各点計測」と呼ぶ。)の2通りで試験した。試験内容を以下の表1に示す。
風速25.2m/S、偏揺れ角ψ=0で模型迎角αを0.3度毎に約−4度から+4度まで一往復させた試験での縦三分力、すなわち抗力係数[C、C=D/qA、q:一様流動圧(Pa)、A:模型の基準面積(m)]、揚力係数[C、C=L/qA]、及び縦揺れモーメント係数[C、C=T/qAc、T:模型頭上げ方向を正とするy軸周りのトルク(N)、c:模型の基準翼弦長(m)]の評価結果は図6に示すとおりであった。また、図7には、この時の横三成分の空力係数の横力係数[C、C=Y/qA、Y:横力(N)]、偏揺れモーメント係数[C、C=T/qAc、T:z軸周りのトルク(N)]、及び横揺れモーメント係数[C、C=T/qAc、T:x軸周りのトルク(N)]変化を示す。横三成分の符号はMSBS座標系に沿った方向の力成分を正として無次元化した。若干ではあるが、迎角αに依存した横力係数Cと偏揺れモーメント係数Cが測定された。その主な原因は横揺れ角(φ)が0.5度程取った状態で迎角αを変化させた為である。
通常の風洞試験(非特許文献4の手法:これはマッハ数が0.4、0.5のものであるためグラフ情報から外挿した推定値)から得られたAGARD-B模型の縦三分力と本試験結果を比較した。この結果を表2に示すが、どれも近い値を示し、MSBSの計測結果の妥当性が確認できた。
次に、偏揺れ角ψを取った場合の空気力評価の試験結果を示す。迎角α=0でψに対する各空力係数を図8に描いた。縦揺れモーメント係数C、横揺れモーメント係数Cはψ変化に対してほぼ零の状態を維持している。Cはψの正負で符号が逆転しているが、この原因は先に言及した横揺れ角φ=0.5度付いた状態でψを変化させたため、ψが負の時に翼の有効迎角が正となり、正の時に負となる為である。抗力係数Cはψ変化に対してほぼ対称な変化を示している。横力係数Cと偏揺れモーメント係数Cは偏揺れ角ψの変化にほぼ比例して変化しており、合理的結果と考える。
図9には偏揺れ角ψを0、2、4度の3通り取った時の迎角α変化に対する抗力係数C変化とψ=0度で大迎角時のCをプロットした。大きなαに対しても、Cは合理的な挙動を示し、ψ=0度での計測合理性は認められる。また、偏揺れ角ψを3通り変えた場合の抗力係数C変化はψが大きくなるにつれてCが全体的に大きくなり、これも合理的挙動である。
図10には偏揺れ角ψ=0,2,4度の3通りの迎角αに対する横揺れモーメント係数Cをプロットした。C自体は小さいが、αに対して規則的変化を示している。この原因は、ψを取ることで主翼の一方の前縁後退角が小さくなり、αの増加に伴いその翼部分の揚力が増加してCが大きくなるためである。
本試験では、迎角と偏揺れ角を変えることにより、縦方向変化だけでなく、横方向変化を含め縦横合計6軸の力成分をMSBSにより計測することが出来た。
以上のとおり、JAXA60cmMSBSの風洞を用いてAGARD-B模型の風洞試験を実施し、最高風速は35m/Sまで行い、迎角は約−8度から+4度まで、偏揺れ角も−3度から+3度まで変化させ、空気力を測定することができた。制御コイルの電流値から空気力を評価し合理的な結果を得た。特に、抗力に比して大きな揚力が発生する模型の抗力評価では、揚力の影響を除く効果的評価法を考案し、その妥当性を空気力と同じ大きさの荷重試験により確認した。
空気力評価結果は他文献と比較し、零迎角時の抗力係数、揚力傾斜、縦揺れモーメント傾斜がほぼ同じ値を示すことを確認した。この結果、JAXA60cmMSBSを用い、有翼模型の試験が可能なことが確認できた。
磁力支持天秤装置を用いた風洞試験用計測システム内の、抗力評価ソフトに本評価方法を組み込むことにより、磁力支持天秤装置を備えた測定部設備に磁場の影響を受け難い天秤と機械的模型支持装置を整備する必要が無くなり、製作コストの大幅な削減が可能となるほか、抗力評価に必要な試験を大幅に少なく出来るので、抗力評価ソフト単体での販売提供も可能となる。
本発明の揚力を受ける模型の簡易抗力評価法を説明する図である。 水平外力と抗力コイル電流の値をプロットしたグラフである。 JAXA60cmMSBSのコイル配置と座標系を示す図と実験中の風洞内の写真である。 AGARD-D模型を示す模型組立図である。 抗力電流と抗力加重の関係を示すグラフである。 風速、偏揺れ角ψを所定値とし模型迎角αを変化させた試験での縦三分力の評価結果を示す図である。 風速、偏揺れ角ψを所定値とし模型迎角αを変化させた試験での横三成分の空力係数の変化を示す図である。 迎角α=0で偏揺れ角ψに対する各空力係数の空気力評価の試験結果を示す。 偏揺れ角ψを複数に設定した時の迎角α変化に対する抗力係数Cの変化を示すグラフである。 偏揺れ角ψを複数に設定した時の迎角αに対する横揺れモーメント係数Cの変化を示すグラフである。 磁力支持天秤MSBSの基本構造を説明する図である。 従来の抗力評価法の1例を説明する図である。 従来の抗力評価法の他の1例を説明する図である。
符号の説明
1,3,5,7 z軸方向磁場発生用コイル
2,4,6,8 y軸方向磁場発生用コイル
9,0 空芯コイル
10 風洞模型

Claims (3)

  1. 模型に揚力が作用していない状態で水平方向に既知の外力を加え、これと釣合うための抗力コイル電流の関係を求めるステップと、これに基づいて水平外力変化に対する抗力コイル電流の変化率(B)を定量的に評価し、重力以外の外力を加えずに模型の姿勢角を変えた時の抗力コイル電流(Idrag)と姿勢角(θ)の関係を求めるステップと、模型に作用している重力(mg)から揚力(L)が作用しているときの抗力(D)を次式に基づいて評価するステップとを踏むことを特徴とする磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の簡易抗力評価法。
    ここで、Cは姿勢角(θ)変化に対する抗力コイル電流(Idrag)変化の変化率で、上付き添え字は無風時の値を示し、姿勢角θを一般的な迎角αに置き換えた。
  2. 模型に揚力が作用していない状態で水平方向に既知の外力を加える手法は、姿勢角(θ)を0とした状態で所定量の錘を滑車を介してつるすことによって実現したものである請求項1に記載の磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の簡易抗力評価法。
  3. 磁力支持天秤装置において模型に揚力が作用していない状態で水平方向に既知の外力を加える手段と、これと釣合うための抗力コイル電流の関係を求める手段と、これに基づいて水平外力変化に対する抗力コイル電流の変化率(B)を定量的に評価し、重力以外の外力を加えずに模型の姿勢角を変えた時の抗力コイル電流(Idrag)と姿勢角(θ)の関係を求める手段と、模型に作用している重力(mg)から揚力(L)が作用しているときの抗力(D)を次式に基づいて評価する手段とからなる揚力を受ける模型の簡易抗力評価システム。
    ここで、Cは姿勢角(θ)変化に対する抗力コイル電流(Idrag)変化の変化率で、上付き添え字は無風時の値を示し、姿勢角θを一般的な迎角αに置き換えた。
JP2007092049A 2007-03-30 2007-03-30 磁力支持天秤装置における揚力を受ける模型の簡易抗力評価法 Withdrawn JP2008249527A (ja)

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