JP2008249337A - 放射能絶対測定方法、放射線検出器集合体の検出効率決定方法、及び、放射線測定装置の校正方法 - Google Patents

放射能絶対測定方法、放射線検出器集合体の検出効率決定方法、及び、放射線測定装置の校正方法 Download PDF

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Abstract

【課題】単一の放射線検出器集合体により、放射能絶対値の決定を可能とすると共に、自ら所有する放射線検出器集合体の検出効率(感度)を決定し、更に、放射線測定装置の校正も可能とする。
【解決手段】一崩壊でエネルギの異なる複数の光子を放出する核種の放射能を絶対測定するための放射能絶対測定方法であって、複数の放射線検出器要素から構成される放射線検出器集合体(210、212、412、510、610)を用いて、各放射線検出器要素毎に複数の光子を弁別しながら別々に計数し、更に、光子を検出した放射線検出器要素の識別番号を、光子の入射時刻及び光子の持つエネルギと共に保存し、光子毎の計数率及び複数光子の同時計数率を求め、放射線検出器要素の一部からの光子による信号を遮断することにより、光子毎の計数率及び複数光子の同時計数率を変化させて、検出非効率値と見かけの放射能値の組を複数得て、この検出非効率値と見かけの放射能値の関係を外挿して放射能絶対値を求める。
【選択図】図7

Description

本発明は、放射能絶対測定方法、放射線検出器集合体の検出効率決定方法、及び、放射線(放射能)測定装置(放射線測定装置と総称する)の校正方法に係り、特に、陽電子放射断層撮像(ポジトロン・エミッション・トモグラフィ:PET)装置の校正に用いるのに好適な、一崩壊でエネルギの異なる複数の光子を放出する核種の放射能を絶対測定するための放射能絶対測定方法、該放射能絶対測定方法を利用した放射線検出器集合体の検出効率決定方法、及び、医療診断機器や非破壊検査装置等に用いられる放射線測定装置の校正方法に関する。
PET装置は、陽電子放出核種を利用した核医学イメージング装置で、癌の診断や分子イメージング等に広く応用されている。
陽電子放出核種とは、18Fのように原子核中の陽子数が中性子数に比べて過多であることにより不安定な同位元素であり、β崩壊に伴って陽電子とニュートリノを放出する性質がある。放出された陽電子は電子の反物質であるため、電子と出会うと対消滅して、両者の質量が全てエネルギに転換される。このエネルギは、消滅放射線という高エネルギ電磁波の形で放射される。対消滅の前後で運動量保存則が維持されるため、消滅放射線は主に2本が同時刻にほぼ正反対の方向に放出される。厳密には1本のみの放出や、3本以上が放出される場合も存在するが、その割合は合わせて全体の1%未満であるため、イメージングでは無視できる。2本を放出する場合、それぞれのエネルギは(陽)電子1個の質量分に相当し、約511keVである。
イメージングの原理は消滅放射線の同時計数である。511keVの放射線が対向する2つの放射線検出器でほぼ同時刻に測定された場合、この2つの放射線検出器を結ぶ直線上で陽電子が対消滅した可能性が最も高い。この情報を、図1に示す如く、被検体10の周囲に配置した多くの放射線検出器16を用いて収集し、X線CTと同様な数学的手法によって再構成することにより、被検体10中の陽電子放出核種12の分布を近似する断層画像映像が得られる。図において、14は消滅放射線、18はベッドである。
従って、放射線検出器16に求められる性能は、消滅放射線14の入射位置、エネルギ、入射時刻を、なるべく正確に測定できることである。ここで、ほぼ同時刻とは概ね15ナノ秒(ナノは10-9)以内の時間であり、放射線検出器の時刻決定の精度が高い場合には10ナノ秒以下、あるいは5ナノ秒以下とすることができる。
このPET装置用検出器として、特許文献1に、図2に示すような多数の放射線検出器要素から構成される、深さ方向相互作用位置(DOI)情報を得ることが可能な放射線検出器集合体(DOI検出器とも称する)20が提案されている。図において、21〜24は各層のシンチレータアレイ、26は受光素子である。
PET装置等の内部に装荷されている放射線検出器集合体は測定対象物の放射能を相対測定する装置であり、その検出効率(感度)は、予め放射能値が付与された標準線源で求めるか、あるいは、凡その放射能値が付与された放射線源により、放射線検出器集合体の相対的な検出効率(感度)の経時的変化が求められていた。放射線源には半減期があり、定期的に交換しなければならないが、線源を交換すると、線源の放射能値の精度が悪いことから、PET装置等の内部に装荷されている放射線検出器集合体の検出効率(感度)の測定値も、図3に例示するように変わってしまっていた。従って、PET装置等の内部に装荷されている放射線検出器集合体の検出効率(感度)について精度の向上が求められてきた。
一方、57Co、54Mn、134Cs等、β線やX線、オージェ電子とγ線を放出する放射線源の放射能は、4πβ-γ同時測定装置などの放射線検出器により絶対測定されてきた。あるエネルギの放射線(放射線1)と、あるエネルギの放射線(放射線2)が、ある確率で、一回の崩壊において連続的に線源から放出される場合、放射線1を検出する計数率、放射線2を検出する計数率、及び、放射線1と放射線2を同時に検出する計数率を用いることにより、線源の放射能を絶対測定できることが一般に知られている(同時計数法と称する)(非特許文献1参照)。
従って、放射能を絶対測定する場合、図4に例示する如く、放射線1を検出する放射線検出器(検出器1)と、放射線2を検出する放射線検出器(検出器2)が用いられてきた。ここで、100は線源、110は放射線1としてのβ線やX線、オージェ電子、112は放射線2としてのγ線、120は検出器1としての例えば比例計数管、130と132は検出器2としての例えばNaI(T1)シンチレータ、140は同時計数回路である。
この方法では、比例計数管(120)でβ線(110)を計数し、シンチレータ(130、132)でγ線(112)を計数し、同時計数回路140でβ線とγ線が同時に検出した事象も計数するが、例えば、検出器1によって、放射線2を検出してしまう場合等があり、それらを補正するため、効率外挿法が用いられている(非特許文献1参照)。
この方法は、放射線1を検出する計数率、放射線2を検出する計数率、及び、放射線1と放射線2を同時に検出する計数率から得られる、検出非効率値(=(1−検出効率)/検出効率)と見かけの放射能値を用い、図5に示す如く、この検出非効率値と見かけの放射能値の関係式を得て、検出非効率値が0即ち検出効率100%のときの放射能を絶対値とするものである。
従来、検出非効率値を変化させるためには、線源にフィルムをかぶせたり、線源に微粒子を混合したり、比例計数管の計数ガスを変えたり、あるいは、検出器から得られるパルス波高値のディスクリミネーションレベルを変えたりしていた。
又、125I等の放射線源の放射能を絶対測定する方法としてサムピーク法がある。これは、井戸型NaI(T1)シンチレーション測定装置等に線源を装荷し、図6のようなエネルギスペクトルを得ることで、単光子吸収によるシングルピークの面積と二光子吸収(パイルアップ)によるサムピークの面積から、放射能の絶対値を算出する方法である。
特開2004−279057号公報 ICRU report 52, Particle counting in radioactivity measurements, International Commission on radiation units and measurements, vol.1, 1994
しかしながら、前者の4πβ-γ同時測定装置で絶対測定を行うには、2種類の検出器が必要であった。また、計数率が高いと、検出器において、放射線が複数本同時に検出器に入射して、図6に示す如く、あたかも1本の別の放射線であるが如く検出されてしまう(パイルアップ)ことがある。このため、従来法では、数kBq程度の放射能値を持つ放射線源を測定しており、PET装置に使用されているような高い強度の放射能を絶対測定するのが難しかった。
又、後者のサムピーク法でも、数kBq程度の強度の光子計数率で測定されており、放射線源の強度が高くなると、測定装置が飽和してしまい、癌治療用線源など高強度の放射線源が測定できなかった。
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、1種類の検出器、即ち放射線検出器集合体により高強度の放射能の絶対測定を可能とすることを第1の課題とする。
本発明は、又、放射線検出器集合体の検出効率を決定可能とすることを第2の課題とする。
本発明は、更に、放射線検出器集合体を備えた放射線測定装置を校正可能とすることを第3の課題とする。
本発明は、一崩壊でエネルギの異なる複数の光子を放出する核種の放射能を絶対測定するための放射能絶対測定方法であって、複数の放射線検出器要素から構成される放射線検出器集合体を用いて、各放射線検出器要素毎に複数の光子を弁別しながら別々に計数し、更に、光子を検出した放射線検出器要素の識別番号を、光子の入射時刻及び光子の持つエネルギと共に保存し、光子毎の計数率及び複数光子の同時計数率を求め、放射線検出器要素の一部からの光子による信号を遮断することにより、光子毎の計数率及び複数光子の同時計数率を変化させて、検出非効率値と見かけの放射能値の組を複数得て、これらの検出非効率値と見かけの放射能値の関係を外挿して放射能絶対値を求めるようにして、前記第1の課題を解決したものである。
前記検出非効率値と見かけの放射能値の組は、信号を遮断する放射線検出器要素の部位や個数を変化させて、複数得ることができる。
本発明は、又、前記の方法で決定された放射能絶対値を用いて、放射線検出器集合体の光子の計数率から、放射線検出器集合体の検出効率を求めるようにして、前記第2の課題を解決したものである。
本発明は、又、前記の方法で決定された放射能絶対値を用いて、放射線検出器集合体を備えた放射線測定装置を校正するようにして、前記第3の課題を解決したものである。
前記放射線測定装置は、PET装置であることができる。
又、前記放射線検出器集合体を校正用仲介標準器として作業現場に搬入し、作業現場にある放射線源に放射能絶対値を与え、この放射線源を、作業現場で使用している放射線測定装置で測定して、放射線測定装置の出力と放射能絶対値を関連付けるようにすることができる。
又、放射線源を分注して、放射線検出器集合体用放射線源と放射線測定装置用放射線源に分け、各放射線源の重さを測定し、放射線検出器集合体用放射線源を放射線検出器集合体で測定して、その放射能絶対値を付与し、この放射能絶対値と放射線源の重さから、放射線測定装置用放射線源に放射能絶対値を付与し、該放射線測定装置用放射線源を作業現場の放射線測定装置で測定して、該放射線測定装置の出力値と前記放射線測定装置用放射線源の放射能絶対値を関係付けるようにすることができる。
放射線検出器集合体は、エネルギ分解能を持つ放射線検出器要素からなり、放射線検出器集合体に光子が入射したときの時刻を、光子が入射した時毎に、光子の持つエネルギと共に記録する装置と結合している。これらにより、時刻情報を用いて、光子1の計数率、光子2の計数率、光子1と2の同時計数率を求めることができるので、同時計数法によって放射線源の放射能絶対値を決定できる。又、一つの光子が検出された計数率と、二つの光子が検出された計数率を求めることができるので、サムピーク法により、放射線源の放射能絶対値を決定することもできる。
更に、放射線検出器集合体は多数の放射線検出器要素から構成されており、1つ1つの放射線検出器要素に対する光入射の負荷を分散できるので、より高強度の放射線源の測定にも耐えることができる。
従って、放射線検出器集合体を用いることで、従来は測定できなかった高強度の放射線源に対しても、検出器が飽和することなく、放射能絶対測定が行なえるようになる。特に、従来は放射能値を正確に付与することのできなかった、PET装置等の校正に用いる高い強度の線源や癌治療用シード線源について、放射能絶対測定ができるようになる。従って、線源の品質管理や治療における安全性の向上に大きく寄与できる。
従来、放射線検出器集合体の検出効率を求める場合、予め放射能の付与された線源を放射線検出器集合体近くの所定の場所に設置し、放射線検出器集合体の検出効率を求めていた。しかし、予め放射能の与えられていた標準線源は高価で、且つ、放射能の値も不確かさが大きく、放射線検出器集合体の検出効率の不確かさも大きくなってしまっていた。本発明による方法を用いれば、線源に放射能値が与えられていなくても、その場で放射能絶対値を付与し、且つ検出効率を決定することができるので、従来よりも不確かさを小さくすることができる。又、高価な標準線源を購入したり、標準線源を定期的に校正する必要も無いので、安価に検出効率を決定することができる。
更に、本発明により、放射線検出器集合体を備えたPET装置等で放射能絶対測定ができるので、放射能値の付与されていない線源を用いてPET装置等の検出効率(感度)が決定できる。この際、直接放射能絶対値から検出効率(感度)を得られるので、安定的に精度良く検出効率(感度)が決定できる。
又、放射線検出器集合体を仲介標準器として放射線検出器の校正を行なうと、従来は寿命が短いため、輸送や測定が困難であった放射線源に対して、放射能絶対値を付与し、この放射能絶対値の付与された放射線源を用いて、放射線検出器の校正が、精度良く行なえる。
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図7は、本発明に係る放射線検出器集合体を用いた放射能絶対測定方法及び放射線検出器集合体の検出効率(感度)測定方法を示す第1の実施形態である。図中、200は放射線源、210、212は、例えばDOI検出器である放射線検出器集合体、220は計数装置、240は計算機、250は入力装置、260は表示装置である。
放射線源200からは、複数の光子が放出される。放射線検出器集合体210、212に光子が入射し、計数装置220によって、光子の入射時刻と、光子のエネルギと、光子を検出した検出素子の識別番号が組となって計数され、計算機240の記憶装置に記憶される。入力装置250によって計算機240を操作し、表示装置260により、入力内容や結果が表示される。
光子を計数しながら検出非効率値と見かけの放射能値を計算できるシステムの場合には、計数装置220に、図8のような、アルゴリズムをもつ回路が実装される。即ち、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の識別番号の組が、着目しているエネルギのみを通すエネルギフィルタ221及び222に送られる。ここで、221は光子1のエネルギ範囲を持つものを通し、222は光子2のエネルギ範囲を持つものを通す。223、224は検出素子フィルタであり、ある検出素子からのデータの組は通さない。225は、データの組を一定期間保持し、光子入射時刻に基づいて光子1と光子2が同時に検出されたことを検知する同時事象検知回路である。226、227、228はカウンタであり、決まった時間、226は光子1を計数し、227は光子2を計数し、228は光子1と光子2の同時計数を行う。229は、検出非効率値と見かけの放射能値を算出する回路であり、230は、効率外挿法に基づき、放射能絶対値を算出する回路である。
この回路により、測定しながら放射能計算を行い、光子1の計数率、光子2の計数率、光子1と光子2の同時計数率、検出非効率値、見かけの放射能値、放射能絶対値が、計算機240に送出される。計算機240が省略され、入力装置250及び表示装置260が、直接、計数装置220に接続されていても良い。
一方、計数装置220ではなく計算機240で放射能計算を行う場合は、計算機240に、図9のごときアルゴリズムが実装される。又は、計数装置220から、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータが組になって出力され、計算機240内の記憶装置に一旦記憶した後、検出非効率値、見かけの放射能値そして放射能絶対値を算出するシステムとして、計算機240に図9のようなアルゴリズムを実装することもできる。
具体的には、まず、図9のステップ301で、注目する光子1および光子2のエネルギ範囲を決定する。
次いで、ステップ302で、光子1のエネルギ範囲にある、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組のみの光子の入射時刻順に並んだデータ列1と、光子2のエネルギ範囲にある、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組のみの光子の入射時刻順に並んだデータ列2をつくる。
次いで、ステップ303で、マスクする(計数に入れない)検出素子のパターンを決め、パターンの数だけの光子1の計数、光子2の計数、光子1 と光子2 の同時計数の記憶領域の組を確保する。
次いで、ステップ304で、まだ読み込んでいないデータの組の中で最も入射時刻の古いデータの組を、データ列1又はデータ列2から読み込む。
次いで、ステップ305で、マスクのパターンを1つ選び、そのパターンに対応する光子1の計数、光子2の計数、光子1と光子2の同時計数の記憶領域の組を選ぶ。
次いで、ステップ306に進み、ステップ304で読み込んだデータの組が、マスクされた検出素子以外で検出されたか判別する。
次いで、ステップ307で、データ列1から読み込んだのか判別する。ステップ307の判定結果が「はい」の場合は、ステップ308に進み、ステップ305で選択された記憶領域について光子1を計数する。
次いで、ステップ309で、同時刻(ある時間範囲)入射のデータの組がデータ列2にあるか判別する。ステップ309の判定結果が「はい」の場合は、ステップ310で、同時刻入射のデータの組を読み込み、ステップ305で選択された記憶領域において光子2を計数すると共に、光子1と光子2の同時計数を計数する。
一方、ステップ307の判定結果が「いいえ」の場合は、ステップ311に進み、ステップ305で選択された記憶領域において光子2を計数する。
次いで、ステップ312で、同時刻(ある時間範囲)入射のデータの組がデータ列1にあるか判別する。ステップ312の判定結果が「はい」の場合は、ステップ313に進み、同時刻入射のデータの組を読み込み、ステップ305で選択された記憶領域において光子1を計数すると共に、光子1と光子2の同時計数を計数する。
ステップ310、313終了後、又は、ステップ306の判定結果が「いいえ」の場合は、ステップ314に進み、マスクのパターン全てについて処理したか判別する。ステップ314の判定結果が「はい」の場合は、ステップ315に進み、データの組を全て読み込んだか判別する。ステップ315の判定結果が「はい」の場合は、ステップ316に進み、光子1の計数、光子2の計数、光子1と光子2の同時計数から、非特許文献1に記載されたような方法で、検出非効率値、見かけの放射能値の組を各々のマスクのパターンについて計算する。
次いで、ステップ317で、見かけの放射能値を検出非効率値で外挿して、放射能絶対値を決定する。
以上のように、放射線検出器集合体によって、放射線源の放射能絶対値が計算できるので、これを基に単位時間当たりの放射線検出器集合体に入射する光子の数が計算できる。放射線源から放出される放射線の原子核1崩壊当たりの放出率は、Table of Isotopes,eighth edition,volume I,II,R.B.Firestone and V.S.Shirley,Wiley Interscience(1996)などの核データから参照でき、又、線源の位置と放射線検出器集合体の幾何学的関係による係数、及び、これらの数値と求められた線源の放射能から、放射線検出器集合体に入射する放射線の単位時間当たりの数を計算することができる。放射線検出器集合体の光子の計数率を単位時間当たりの放射線検出器集合体に入射する光子で除することで、放射線検出器集合体の検出効率(感度)が求められる。また、放射線検出器集合体の光子の計数率を単位時間当たりの線源からの光子の発生数で除して検出効率(感度)とすることもあり、こちらも計算可能である。
なお、前記説明では、同時計数法が用いられていたが、サムピーク法を用いることも可能である。サムピーク法の計数装置を図10に、アルゴリズムを図11に示す。
図10において、231は、着目しているエネルギのデータのみを通すエネルギフィルタであり、光子の入射時刻と光子のエネルギのデータの組が入力される。232は同時計数事象判別部であり、ある一定時間データの組を保持し、二光子事象か、単光子事象かを判別する。233は単光子検出のカウンタであり、234は二光子検出のカウンタである。235はサムピーク法による計算回路であり、放射能絶対値を算出する。
又、図11において、ステップ321では、光子の入射時刻と光子のエネルギのデータの組を入射時刻順に並べ替える。ステップ322では、未だ読み込まれてない最も古い時刻の、光子のエネルギ、光子の入射時刻のデータの組を読み込む。ステップ323では、光子のエネルギが、着目しているエネルギ範囲にあるか判別する。ステップ324では、他に同時刻に入射した光子で、着目しているエネルギのものは無いか判別する。判定結果が「はい」の場合、ステップ325で、単一光子検出として計数する。
ステップ324の判定結果が「いいえ」の場合、ステップ326で、同時刻に入射した光子のエネルギ、光子の入射時刻のデータの組を読み込み、二光子検出として計数する。ステップ327では、全てのデータの組を読み込んだか判別する。ステップ328では、サムピーク法により放射能絶対値を算出する。
次に、本発明に係る放射線検出器集合体による、放射線測定装置の校正方法を示す第2の実施形態を図12に示す。図中、400は放射線源、410は多数の、例えばDOI検出器でなる放射線検出器集合体412を備えたPET装置、220は、第1実施形態と同様の計数装置、240は、同じく計算機、250は、同じく入力装置、260は、同じく表示装置である。
本実施形態においては、第1実施形態と同様な方法で放射線源400の放射能絶対値を測定した後、該放射能絶対値を用いて、PET装置410の検出効率(感度)を決定し、校正する。
具体的には、例えば図8又は図9のアルゴリズムを用いて、計数装置220及び計算機240により光子1の計数率、光子2の計数率、光子1光子2の同時計数率から、同時計数法により放射能絶対値を決定する。そして、放射能から単位時間当たりPET装置410に入射する放射線の数を、幾何学的条件、及び、核データTable of Isotopesによる放射線の放出率から算出する。そして、PET装置410の計数率を、単位時間当たりPET装置410に入射する放射線の数で除することにより、検出効率(感度)を決定する。また、PET装置410の計数率を、単位時間当たり放射線源400から放出される光子数で除することにより、検出効率(感度)とすることも可能である。
本実施形態によれば、PET装置410に元々備えられている放射線検出器集合体412を利用して、放射線源400を校正することが可能になる。
次に、本発明に係る放射線検出器集合体による、放射線測定装置の校正方法を示す第3実施形態を図13に示す。図において、500は作業現場の放射線源、510は、校正事業者から送られた、例えばDOI検出器である放射線検出器集合体、520は、作業現場で使用される放射線測定装置である。
作業現場で製造された、あるいは、作業現場で使用されている放射線源500は、放射線検出器集合体510で測定され、放射能絶対値が放射線源500に付与される。この放射能絶対値が付与された放射線源500は、作業現場の放射線測定装置520で測定され、放射線測定装置520の出力値と放射線源500の放射能絶対値が関係付けられる。これにより、放射線測定装置520の校正が行なえる。
次に、本発明に係る放射線検出器集合体による、放射線測定装置の校正方法を示す第4実施形態を図14に示す。図において、600は液状の線源、602、604は分注された線源、610は、例えばDOI検出器でなる放射線検出器集合体、620は、作業現場で使用される放射線測定装置である。
作業現場で製造された、あるいは作業現場で使用されている液体状の放射線源600が分注され、放射線検出器集合体用610の放射線源602と、放射線測定装置620用の放射線源604となる。各放射線源602、604の重さが測定される。
放射線源602は、放射線検出器集合体610で測定され、放射能絶対値が放射線源602に付与される。この放射能絶対値と放射線源の重さから、放射線源604に放射能絶対値が付与され、放射線源604は、作業現場の放射線測定装置620で測定され、放射線測定装置620の出力値と放射線源604の放射能絶対値が関係付けられ、放射線測定装置620が校正される。
図7の構成で、放射線源200として68Ge−68Ga線源、放射線検出器集合体210、212としてDOI検出器を用いた。DOI検出器(210、212)に対して所定の位置に放射線源200を設置した。DOI検出器(210、212)から出力されるスペクトルのうち、511keVのγ線を光子1とし、1077keVのγ線を光子2として、それぞれの計数率を測定すると共に、放射線1と放射線2の同時計数率を測定して、図8、図9に示した同時計数法により、68Ge−68Ga線源(200)の放射能絶対値を決定することができた。
図7の構成で、放射線源200として10MBq程度の癌治療用125Iシード線源、放射線検出器集合体210、212としてDOI検出器を用いた。DOI検出器(210、212)に対して所定の位置に放射線源200を設置し、放射線源200から放出される27〜32keVのX線と35keVのγ線について、これらのDOI検出器(210、212)における単光子検出の計数率、及び、2光子検出の計数率を測定して、図10、図11に示したサムピーク法により、125I線源(200)の放射能絶対値を決定することができた。
放射線検出器集合体の検出効率(感度)の校正法の実施例として、図12の構成で、PET装置410により、68Ge−68Ga線源(400)から放出される光子を検出した。511keVのγ線を光子1とし、1077keVのγ線を光子2とした。図8又は図9のアルゴリズムを用いて、計数装置220及び計算機240により光子1の計数率、光子2の計数率、光子1光子2の同時計数率から、同時計数法により放射能絶対値を決定した。放射能から単位時間当たりPET装置410に入射する放射線の数を、幾何学的条件及び、核データTable of Isotopesによる放射線の放出率から算出した。PET装置410の計数率を、単位時間当たりPET装置410に入射する放射線の数で除することにより、検出効率(感度)を決定できた。
図13の構成で、放射線源500として68Ge−68Ga線源、放射線検出器集合体510としてDOI検出器、放射線測定装置520としてRIキャリブレータを用いた。68Ge−68Ga線源(500)をDOI検出器(510)によって測定し、放射能の絶対値を付与した。RIキャリブレータ(520)でも、68Ge−68Ga線源(500)を測定し、RIキャリブレータ(520)の出力値と68Ge−68Ga線源(500)の放射能値の関係を求めた。これにより、RIキャリブレータ(520)を校正できた。
図14の構成で、放射線源600として201Tl線源、放射線検出器集合体610としてDOI検出器、放射線測定装置620としてRIキャリブレータを用いた。201Tl線源(600)を分注して、DOI検出器用放射線源(602)とRIキャリブレータ用放射線源(604)を製作し、それぞれの放射線源の重さを測定した後、それぞれで測定を行なった。DOI検出器(610)によって放射線源(602)の放射能の絶対値が決定され、分注時の重さから、201Tl線源(600)の放射能濃度を決定した。又、この放射能濃度から、RIキャリブレータ用放射線源(604)の放射能値を求め、RIキャリブレータ(620)の出力値とRIキャリブレータ用放射線源(604)の放射能値の関係を求め、これをもって、RIキャリブレータ(620)を校正できた。
なお、前記実施形態においては、2個又は多数の放射線検出器集合体が用いられていたが、放射線検出器集合体の数は1個でも構わない。又、放射線検出器集合体も、DOI検出器に限定されず、その素子数も限定されない。放射線源や放射線の種類も、前記実施形態に限定されない。
本発明は、放射能絶対測定に用いられる。又、放射線診療装置、非破壊検査装置等の放射線検出器の検出効率(感度)測定に用いられる。更に、医療用放射能測定装置等、放射線測定装置の校正に利用できる。
従来のPET装置の概略構成を示す断面図 従来のDOI検出器の構成例を示す斜視図 従来のPET装置の校正における問題点を示す図 従来の4πβ−γ同時測定装置の一例の構成を示すブロック図 効率外挿による絶対値測定の例を示す図 スペクトルのパイルアップの例を示す図 本発明の第1実施形態を示す図 第1実施形態の計数装置に内蔵される放射能絶対値算出回路の例を示すブロック図 同じく計算機に実装されるアルゴリズムの例を示す流れ図 サムピーク法による放射能絶対値算出回路の例を示すブロック図 同じく計算機に実装されるアルゴリズムの例を示す流れ図 本発明の第2実施形態を示す図 同じく第3実施形態を示す図 同じく第4実施形態を示す図
符号の説明
100、200、400、500、600、602、604…放射線源
210、212、412、510、610…放射線検出器集合体
220…計数装置
240…計算機
410…PET装置
520、620…放射線測定装置

Claims (7)

  1. 一崩壊でエネルギの異なる複数の光子を放出する核種の放射能を絶対測定するための放射能絶対測定方法であって、
    複数の放射線検出器要素から構成される放射線検出器集合体を用いて、各放射線検出器要素毎に複数の光子を弁別しながら別々に計数し、
    更に、光子を検出した放射線検出器要素の識別番号を、光子の入射時刻及び光子の持つエネルギと共に保存し、
    光子毎の計数率及び複数光子の同時計数率を求め、
    放射線検出器要素の一部からの光子による信号を遮断することにより、光子毎の計数率及び複数光子の同時計数率を変化させて、検出非効率値と見かけの放射能値の組を複数得て、
    この検出非効率値と見かけの放射能値の関係を外挿して放射能絶対値を求めることを特徴とする放射能絶対測定方法。
  2. 前記検出非効率値と見かけの放射能値の組を、信号を遮断する放射線検出器要素の部位や個数を変化させて、複数得ることを特徴とする請求項1に記載の放射能絶対測定方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法で決定された放射能絶対値を用いて、放射線検出器集合体の光子の計数率から、放射線検出器集合体の検出効率を求めることを特徴とする放射線検出器集合体の検出効率決定方法。
  4. 請求項1又は2に記載の方法で決定された放射能絶対値を用いて、放射線検出器集合体を備えた放射線測定装置を校正することを特徴とする放射線測定装置の校正方法。
  5. 前記放射線測定装置がPET装置であることを特徴とする請求項4に記載の放射線測定装置の校正方法。
  6. 前記放射線検出器集合体を校正用仲介標準器として作業現場に搬入し、
    作業現場にある放射線源に放射能絶対値を与え、
    この放射線源を、作業現場で使用している放射線測定装置で測定して、該放射線測定装置の出力と放射能絶対値を関連付けることを特徴とする請求項4に記載の放射線測定装置の校正方法。
  7. 放射線源を分注して、放射線検出器集合体用放射線源と放射線測定装置用放射線源に分け、
    各放射線源の重さを測定し、
    放射線検出器集合体用放射線源を放射線検出器集合体で測定して、その放射能絶対値を付与し、
    この放射能絶対値と放射線源の重さから、放射線測定装置用放射線源に放射能絶対値を付与し、
    該放射線測定装置用放射線源を作業現場の放射線測定装置で測定して、該放射線測定装置の出力値と前記放射線測定装置用放射線源の放射能絶対値を関係付けることを特徴とする請求項4に記載の放射線測定装置の校正方法。
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