JP2008248930A - 樹脂製筒形ブラケットとそれを用いた防振マウント組立体 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂製の筒形ブラケットにおいて、空気圧式アクチュエータ用の底金具を組み付けるための特別な工程を要することなく、底金具を採用することによる空気圧式アクチュエータの作動の安定化を図ることが出来る新規な構造の樹脂製筒形ブラケットおよびそれを用いた防振マウント組立体を提供すること。
【解決手段】防振マウント12が嵌め入れられて組み付けられる筒状部102を有する樹脂製筒形ブラケット20において、筒状部102の軸方向下側の開口部には、皿形状を呈して筒状部102の内径よりも小さい外径を有する空気圧式アクチュエータ140用の底金具114を配設すると共に、底金具114には外周側に向かって延び出す連結部117を一体形成して、連結部117を筒状部102の下端部に埋設固着することにより底金具114を筒状部102によって支持せしめた。
【選択図】図1
【解決手段】防振マウント12が嵌め入れられて組み付けられる筒状部102を有する樹脂製筒形ブラケット20において、筒状部102の軸方向下側の開口部には、皿形状を呈して筒状部102の内径よりも小さい外径を有する空気圧式アクチュエータ140用の底金具114を配設すると共に、底金具114には外周側に向かって延び出す連結部117を一体形成して、連結部117を筒状部102の下端部に埋設固着することにより底金具114を筒状部102によって支持せしめた。
【選択図】図1
Description
本発明は、エンジンマウント等の防振マウントに取り付けられて、防振マウントと車両ボデー等の防振対象部材の間に介在せしめられる樹脂製筒形ブラケットとそれを用いた防振マウント組立体に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体として、例えば、防振連結すべき一方の部材に取り付けられる第一の取付部材を、防振連結すべき他方の部材に取り付けられる筒形の第二の取付部材の一方の開口部側に離隔配置して、それら第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で相互に連結した防振マウントが知られている。また、このような防振マウントの一種として、内部に封入された流体の流動作用に基づく防振効果を利用した流体封入式の防振マウントも知られている。流体封入式防振マウントとしては、例えば、防振マウントにおいて、第二の取付部材の軸方向中間部分に仕切部材を支持せしめて、仕切部材を挟んだ軸方向一方の側に壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成されて、振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる受圧室を形成すると共に、仕切部材を挟んだ軸方向他方の側に壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入し、更に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた構造を有している。
さらに、流体の流動作用に基づく防振効果が、オリフィス通路のチューニング周波数域で効果的に発揮される一方で、チューニング周波数域を外れた周波数域の振動に対しては有効に得難いという問題に鑑みて、例えば、特許文献1(特開2003−130126号公報)に示されているように、低周波数域にチューニングされた第一のオリフィス通路と、第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路を備えると共に、入力振動の周波数域に応じて空気圧式アクチュエータを制御することにより、第二のオリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換えて、防振特性を切換え可能とした空気圧切換型の流体封入式防振マウントも提案されている。
また、上述の如き各種構造の防振マウントでは、製造上の理由等から、第二の取付部材がブラケットを介して車両ボデー等の防振連結される部材に取り付けられるようになっている場合がある。例えば、本体ゴム弾性体の耐久性を向上せしめるために、本体ゴム弾性体に対して予圧縮を加える場合には、第二の取付部材に対して八方絞り等の縮径加工を施す方法が知られている。このような縮径加工を施す場合には、防振連結される部材への取付部分が第二の取付部材に対して直接に設けられていると、第二の取付部材に対して縮径加工を施すことが困難となり易い。そこで、特許文献1にも示されているように、第二の取付部材を別体形成された筒形ブラケットに嵌着固定して、筒形ブラケットを防振連結される車両ボデー等の部材に固定することにより、第二の取付部材を筒形ブラケットを介して防振対象部材に組み付けるようにした構造が採用されている。
さらに、このような筒形ブラケットが空気圧切換型の防振マウントに適用される場合には、筒形ブラケットに空気圧式アクチュエータの底金具が設けられる。この底金具は、空気圧式アクチュエータにおける作用空気室の壁部の一部を構成する部材であって、例えば、特許文献1では、金属製の筒形ブラケットの下端部を利用して底金具が一体形成されている。
ところで、従来の筒形ブラケットは、防振マウントの筒形ブラケットへの組付けに際しての変形や破損を防ぐために、特許文献1にも示されているように、高い剛性を容易に得ることが可能な鉄系金属で形成されていた。しかし、近年では、車両の燃費向上や軽量化等を目的として、筒形ブラケットの形成材料として繊維強化樹脂等の合成樹脂材を採用することが検討されている。
しかしながら、このような樹脂製の筒形ブラケットを空気圧式のアクチュエータを備えた切換型の流体封入式防振マウントに対して採用する場合には、空気圧式アクチュエータのベースハウジングを構成する金属製の底金具を筒形ブラケットとは別体で形成して、筒形ブラケットに対してリベット等を用いて後付けで固定する必要がある。それ故、樹脂製の筒形ブラケットを空気圧切換型の防振マウントに適用すると、底金具が筒形ブラケットとは別体とされることによる部品点数の増加や、底金具の筒形ブラケットへの取付工程が特別に必要となること等が問題となり易かった。
また、上述の如き問題を解決する手段として、金属で形成される底金具に替えて合成樹脂材で形成された底部材を採用して、筒形ブラケットと一体成形することも考えられる。しかし、合成樹脂で形成された底部材に対して各部材を組み付けて空気圧式アクチュエータを構成すると、外部から空気圧が及ぼされる作用空気室の壁部の一部を構成する底部材と、他の一部を構成する部材との間に隙間が出来易い。それ故、金属製の底金具を採用した場合における圧入による組付けに比して、作用空気室の外部からの密閉が不完全となって、アクチュエータの安定した作動を実現し難いという問題がある。
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、空気圧式アクチュエータ用の底金具を組み付けるための特別な工程を要することなく、金属製の底金具を採用することによって空気圧式アクチュエータの作動の安定化を図ることが出来る、新規な構造の樹脂製筒形ブラケットを提供することを目的とする。
また、本発明は、樹脂製筒形ブラケットを備えて、空気圧式アクチュエータの安定した作動によって防振マウントの防振特性の切換えを有利に実現することが出来る防振マウント組立体を提供することも目的とする。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明は、防振マウントが嵌め入れられて組み付けられる筒状部を有する樹脂製筒形ブラケットにおいて、前記筒状部の軸方向下側の開口部には皿形状を呈して該筒状部の内径よりも小さい外径を有する空気圧式アクチュエータ用の底金具が配設されていると共に、該底金具には外周側に向かって延び出す連結部が一体形成されており、該連結部が該筒状部の下端部に埋設固着されて支持されていることを特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた樹脂製筒形ブラケットにおいては、ブラケットを樹脂製とすることによって軽量化を実現すると共に、金属製の底金具を空気圧式アクチュエータのベースブラケットとして採用することにより、外部から空気圧が及ぼされる作用空気室を外部から有利に密閉せしめて、目的とする空気圧式アクチュエータの作動を安定して実現することが出来る。
しかも、本発明においては、底金具の連結部が樹脂製筒形ブラケットの成形時にインサートされることにより、金属製の底金具が樹脂製筒形ブラケットに対して一体的に支持されるようになっている。それ故、樹脂製とされた筒形ブラケットに対して金属で形成された底金具を、特別な組付け作業を要することなく、一体的に設けることが出来る。従って、空気圧式アクチュエータ用の底金具を備えた樹脂製筒形ブラケットを、少ない作業工程数で簡単に製造することが出来る。
なお、樹脂製筒形ブラケットの筒状部に支持される底金具は、空気圧式アクチュエータを構成するベースハウジングであって、全体としては皿形状を呈するが、具体的な形状については限定的に解釈されるものではなく、例えば、底壁部の中央部分に貫通孔が形成されて、実質的に円環状となっているようなものも、本発明の底金具として採用することが可能である。
また、本発明に係る樹脂製筒形ブラケットにおいては、防振対象部材に取り付けられる取付脚部が前記筒状部と一体形成されて、該取付脚部が該筒状部の軸方向下端部から外周側に延び出すように形成されており、前記底金具の前記連結部が該筒状部よりも外周側に延び出して該取付脚部に埋設固着されている構造が好適に採用される。
このように連結部を外周側に延び出させて取付脚部に埋設固着せしめることにより、底金具を樹脂製筒形ブラケットに対してより強固に固着せしめることが出来て、空気圧式アクチュエータを安定して目的とする位置に取り付けることが出来る。
なお、取付脚部は、筒状部の下端部において全周に亘って形成されていても良いし、周上の複数箇所において外周側に突出せしめられていても良い。また、連結部は、取付脚部に対して全周に亘って固着されていても良いし、周上の複数箇所において取付脚部にまで至る長さで突出するように形成されていても良い。
また、本発明に係る樹脂製筒形ブラケットにおいては、前記底金具の前記連結部が全周に亘って外周側に延び出すように形成されると共に、該連結部が全周に亘って前記筒状部の下端部に埋設固着されることにより、該筒状部の下側開口部が該底金具で密閉されていても良い。
このように筒状部の下側開口部を底金具で密閉することにより、筒状部の内周側の領域に外部から水や粉塵等の異物が侵入するのを有利に防ぐことが出来て、防振マウントや空気圧式アクチュエータの耐久性の向上を図ることが出来る。
また、筒状部の下側開口部を密閉することにより、筒状部の内周側において底金具よりも上方の領域を利用して、外部に対して密閉されて空気が封入された密封領域を形成することも出来る。これによれば、例えば、該密封領域に封入された空気の圧縮性によるばね作用を利用して、防振マウントの防振特性をチューニングすることも出来得る。
一方、本発明に係る樹脂製筒形ブラケットにおいては、前記底金具の前記連結部を貫通して前記筒状部の内周側における該連結部よりも上側の領域を大気中に連通せしめる大気連通孔を設けた構造を採用しても良い。
このような連通孔を設けることにより、筒状部の内周側において底金具よりも上方の領域が、連通孔を通じて大気中に連通せしめられており、略大気圧に維持されるようになっている。それ故、該底金具よりも上方の領域における空気の圧縮性によるばね作用が、防振マウントの防振特性に影響するのを防ぐことが出来る。
また、本発明に係る樹脂製筒形ブラケットにおいては、前記筒状部の内周面が軸方向上方に行くに従って次第に拡径する上テーパ面を含んで構成されていても良い。
このように筒状部の内周面に上テーパ面を設けることにより、防振マウントの筒形ブラケットへの嵌入れを該上テーパ面の案内作用によって容易に行うことが出来る。
また、本発明は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の樹脂製筒形ブラケットに対して防振マウントが嵌め入れられて構成された防振マウント組立体であって、前記底金具の上方に離隔して配置される出力部材が設けられて、円環板状の弾性隔壁の内周縁部が該出力部材に固着されると共に、該弾性隔壁の外周縁部には環状の嵌着金具が固着されて、該嵌着金具が該底金具に圧入固定されることにより該出力部材と該底金具の間に外部から密閉された作用空気室を有する前記空気圧式アクチュエータが構成されており、該作用空気室に及ぼされる空気圧で該出力部材が駆動変位せしめられることにより前記防振マウントの防振特性が切換え可能とされていることも特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた防振マウント組立体においては、空気圧式アクチュエータにおける作用空気室の壁部を構成する弾性壁部が、該弾性壁部の外周縁部に固着された嵌着金具が底金具に対して圧入されることにより、固定的に嵌め付けられるようになっている。それ故、弾性壁部と底金具の組付けを容易且つ強固に実現することが出来て、作用空気室の密閉性を有利に確保することが出来る。従って、目的とする空気式アクチュエータの作動を安定して実現することが出来て、入力振動に応じて防振マウントの防振特性を効果的に切り換えることが出来る。
また、本発明に係る防振マウント組立体においては、前記防振マウントとして、防振対象部材の一方に取り付けられる第一の取付部材が、前記樹脂製筒形ブラケットに嵌め入れられて防振対象部材の他方に取り付けられる筒状の第二の取付部材の上側開口部に離隔配置せしめられて、それら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で相互に連結される一方、該第二の取付部材で仕切部材が支持されて、該仕切部材を挟んだ一方の側には壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室が形成されると共に、該仕切部材を挟んだ他方の側には壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室が形成されて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されており、更に、それら受圧室と平衡室を相互に連通する第一のオリフィス通路と該第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路が設けられた構造が採用されて、前記空気圧式アクチュエータの前記出力部材が駆動変位せしめられることにより該第二のオリフィス通路が連通状態と遮断状態に切り換えられて該防振マウントの防振特性が切り換えられるようにしても良い。
このような構造の防振マウントを採用して、より高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路の連通状態と遮断状態を、金属製の底金具を採用することで安定した作動を実現出来る空気圧式アクチュエータで切り換えることにより、低周波数域の振動と高周波数域の振動の何れに対しても流体の流動作用に基づく優れた防振効果を有効に得ることが出来る。
また、本発明に係る防振マウント組立体においては、前記防振マウントの外径が前記樹脂製筒形ブラケットの前記筒状部の内径よりも小さくされていると共に、該防振マウントと該筒状部の間に嵌着ゴムが圧縮状態で介在せしめられている構造が好適に採用される。
これによれば、防振マウントの外径を樹脂製筒形ブラケットの筒状部の内径よりも小さくして、防振マウントを筒状部に対して隙間をもって挿し入れることにより、防振マウントのブラケットへの嵌入れに際して、筒形ブラケットに大きな応力が作用せしめられるのを防いで、合成樹脂製とされた筒形ブラケットが破損するのを回避することが出来る。また、防振マウントと筒形ブラケットの間に嵌着ゴムを圧縮状態で介在せしめることにより、防振マウントの筒形ブラケットに対する抜けや軸直角方向での相対変位が有効に防がれるようになっている。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての防振マウント組立体10が示されている。この防振マウント組立体10は、第一の取付部材としての第一の取付金具14と第二の取付部材としての第二の取付金具16が本体ゴム弾性体18で弾性連結された防振マウントとしてのマウント本体12と、樹脂製筒形ブラケットとしての筒形ブラケット20を含んで構成されており、第一の取付金具14が図示しないパワーユニット側に取り付けられる一方、第二の取付金具16が筒形ブラケット20に嵌め入れられて、筒形ブラケット20を介して図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーによって防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、主たる振動入力方向である図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具14は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成された高剛性の部材とされており、略逆円錐台形のブロック形状を有している。また、第一の取付金具14の大径側端面には、軸方向上方に突出するようにして取付ボルト22が一体形成されている。
一方、第二の取付金具16は、全体として大径の略円筒形状を有している。また、第二の取付金具16は、その軸方向上側端部において、環状凹溝としてのくびれ部24を備えている。このくびれ部24は、径方向内方に凹んで周方向に延びており、本実施形態では、第二の取付金具16の全周に亘って略一定の断面形状とされている。特に、かかるくびれ部24の幅方向一方の壁部を構成する第二の取付金具16の軸方向開口部分は、開口部側に向かって次第に拡開するテーパ部26とされており、それによって、くびれ部24の深さが、第二の取付金具16の開口側に行くに従って次第に浅くなっている。
また、第二の取付金具16の軸方向上側の開口縁部であるくびれ部24の開口側端縁部には、径方向外方に向かって広がるフランジ状部28が一体形成されている。更に、このフランジ状部28には、それぞれ外周側に突出する一対の固定片30,30が、径方向一方向で対向位置して一体形成されており、これらの固定片30,30にボルト挿通孔32,32が設けられている。また、フランジ状部28には、周上の一箇所において、外周側に突出する一つの当接片34が一体形成されている。そして、かかる当接片34の軸方向外面に緩衝ゴム36が被着形成されることにより、図示しないパワーユニット側の取付ブラケットが当接せしめられるバウンドストッパが構成されている。
さらに、第二の取付金具16の軸方向中間部分には、軸方向下方に行くに従って次第に小径化する傾斜部38が形成されており、かかる傾斜部38とくびれ部24の間が大径部40とされている一方、傾斜部38よりも軸方向下側が小径部42とされている。また、小径部42側の開口端縁部は、径方向内側に屈曲されたかしめ部とされている。
このような構造とされた第二の取付金具16には、その軸方向上側の開口部側に離隔して、第一の取付金具14が略同一中心軸上に配されている。そして、これら第一の取付金具14と第二の取付金具16の間に本体ゴム弾性体18が配設されており、この本体ゴム弾性体18によって第一の取付金具14と第二の取付金具16が弾性的に連結されている。
本体ゴム弾性体18は、全体として円錐台形状を有しており、第一の取付金具14が小径側端面から挿し込まれるようにして本体ゴム弾性体18に加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体18の大径側端部外周面には、第二の取付金具16の軸方向上側の開口部分が重ね合わされて加硫接着されている。特に本実施形態では、くびれ部24の全体が本体ゴム弾性体18の外周面上に位置せしめられている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体18が、第一の取付金具14と第二の取付金具16を備えた一体加硫成形品とされている。
また、このように第二の取付金具16の開口部が本体ゴム弾性体18の外周面に加硫接着されることにより、第二の取付金具16の軸方向上側の開口部が本体ゴム弾性体18によって流体密に閉塞されている。なお、本体ゴム弾性体18の大径側端面には、すり鉢状の大径凹所44が形成されて、第二の取付金具16内に開口せしめられている。
更にまた、第二の取付金具16の内周面には、シールゴム層46が被着形成されている。このシールゴム層46は、本体ゴム弾性体18と一体形成されており、かかるシールゴム層46によって大径部40と傾斜部38の内周面が略全面に亘って覆われている。また、シールゴム層46が本体ゴム弾性体18の下端部に比して薄肉とされており、シールゴム層46が本体ゴム弾性体18の下端部の外周縁部から下方に向かって延び出していると共に、本体ゴム弾性体18における大径凹所44の開口周縁部には、軸直角方向に広がる段差面48が形成されている。
また、第二の取付金具16の外周面には、嵌着ゴムとしての嵌合ゴム50が被着されている。嵌合ゴム50は、大径の略円筒形状を有するゴム弾性体で形成されており、第二の取付金具16の外周面を軸方向上端部から大径部40の下端部に亘って覆うように被着形成されている。換言すれば、嵌合ゴム50は、第二の取付金具16の軸方向中間部から軸方向上端縁部までを覆うように形成されている。また、嵌合ゴム50は、その下側部分が第二の取付金具16の大径部40の外周面に固着された圧接部52とされていると共に、上側部分がくびれ部24の外周側に形成された凹溝状の部分に充填された厚肉の固着部54とされている。なお、本実施形態において、嵌合ゴム50は、第二の取付金具16のフランジ状部28やくびれ部24等に貫設された貫通孔(図示せず)を通じて本体ゴム弾性体18と一体形成されている。
また、本実施形態では、嵌合ゴム50において大径部40に固着された部分である圧接部52が、くびれ部24に固着された部分である固着部54に比して、外周側に突出せしめられて大径とされており、それら圧接部52と固着部54の境界に円環状の環状段差面56が設けられている。これにより、嵌合ゴム50の外周面が段付きの略円筒形状とされている。
なお、本実施形態では、環状段差面56が、第二の取付金具16において大径部40の上端部から内周側に延び出すくびれ部24の下端部分よりも僅かに軸方向上方に位置するように形成されている。また、本実施形態では、環状段差面56が外周側に行くに従って次第に軸方向下方に向かって傾斜する環状の傾斜面とされている。更に、図中では必ずしも明らかではないが、本実施形態における嵌合ゴム50の圧接部52には、外周面に開口して軸方向で直線的に延びる複数条の溝状部が形成されており、圧接部52の外周面が周方向で凹凸形状とされている。また、嵌合ゴム50の外周面上に、小突起形状で周方向に延びる環状のシールリップを一体形成しても良い。
また、嵌合ゴム50における圧接部52の外径寸法は、後述する筒形ブラケット20における筒状部102の最小の内径寸法よりも大きくされている。なお、本実施形態では、嵌合ゴム50における固着部54の外径寸法が、第二の取付金具16における大径部40の外径寸法と略同じか、僅かに大きくされており、筒形ブラケット20における筒状部102の上側開口部分の内径寸法よりも僅かに小さくされている。
さらに、第二の取付金具16には、その軸方向下方の開口部から仕切部材58と可撓性膜としてのダイヤフラム60が順次挿入されて、第二の取付金具16に対して嵌着固定されている。仕切部材58は、何れも金属材や合成樹脂材等の硬質材で形成された略円板形状を有する上下の仕切板62,64が、軸方向で相互に重ね合わされた構造とされている。ダイヤフラム60は、薄肉ゴム膜によって形成されており、波紋状の弛みをもった略薄肉円板形状を有していると共に、その外周縁部には、円筒形状の支持金具66が加硫接着されている。
そして、これら仕切部材58とダイヤフラム60が、第二の取付金具16に対して順次軸方向に挿入されて、その後、第二の取付金具16に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切部材58と支持金具66の各外周面が第二の取付金具16に対して嵌着固定されている。なお、第二の取付金具16の下端開口部は、かしめ加工されて支持金具66の下端部に係止されている。また、かかる組付状態下、仕切部材58と支持金具66は、相互に軸方向で重ね合わされて、本体ゴム弾性体18の段差面48と第二の取付金具16の下端かしめ部との間で、軸方向に位置決めされている。更にまた、仕切部材58と第二の取付金具16の間には、シールゴム層46が挟圧されていると共に、支持金具66と第二の取付金具16の間には、ダイヤフラム60と一体形成されて支持金具66の外周面に被着されたシールゴム68が挟圧されている。
これにより、仕切部材58の軸方向上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体18で構成された受圧室70が形成されている一方、仕切部材58の軸方向下側には、壁部の一部がダイヤフラム60で構成された平衡室72が形成されている。また、これら受圧室70および平衡室72は、外部空間に対して流体密に仕切られており、それぞれ、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の非圧縮性流体が封入されている。なお、受圧室70や平衡室72への流体の封入は、仕切部材58やダイヤフラム60を、非圧縮性流体中において第二の取付金具16に嵌め入れて、第二の取付金具16に絞り加工を施すこと等によって有利に為され得る。
そして、受圧室70は、第一の取付金具14と第二の取付金具16の間への振動入力時に、本体ゴム弾性体18の弾性変形に基づいて圧力変化が生ぜしめられるようになっている一方、平衡室72は、ダイヤフラム60の変形が容易に生ぜしめられることにより、容積変化が許容されるようになっている。
また、仕切部材58を構成する上仕切板62には、外周縁部を略一定の断面形状で延びる周溝74が、外周面に開口して周方向に所定の長さで形成されている。一方、下仕切板64には、外周縁部を略一定の断面形状で延びる外周溝76が、外周面および軸方向上面に開口して周方向に所定の長さで形成されていると共に、径方向中間部分を略一定の断面形状で延びる内周溝78が、軸方向上面に開口して周方向に所定の長さで形成されている。更に、下仕切板64の中央部分には、下方に開口する円形の凹所80が形成されている。
そして、上下の仕切板62,64が軸方向で重ね合わされると共に、各外周面に第二の取付金具16が嵌着固定されることにより、周溝74と外周溝76が覆蓋されており、仕切部材58には、外周縁部をそれぞれ周方向に所定長さで延びる上下二段の外側流路82,84が形成されている。また、これらの外側流路82,84は、一方の端部において上仕切板62に形成された接続孔86で直列的に接続されていると共に、他方の端部が上下仕切板62,64に形成された連通孔88,90を通じて受圧室70と平衡室72の各一方に連通せしめられている。これにより、仕切部材58の外周部分には、周方向に一周以上の長さで延びて、受圧室70と平衡室72の間での流体流動を許容する第一のオリフィス通路92が形成されている。
また、下仕切板64の内周溝78が上仕切板62で覆蓋されており、以て、仕切部材58の内部には、径方向の中間部分を所定長さで延びる内側流路94が形成されている。また、この内側流路94の一方の端部が、上仕切板62に形成された連通孔96を通じて受圧室70に開口して連通せしめられていると共に、他方の端部が、下仕切板64に形成された連通孔98を通じて凹所80から平衡室72に開口して連通せしめられている。これにより、仕切部材58の径方向中間部分には、周方向に一周以下の長さで延びて、受圧室70と平衡室72の間での流体流動を許容する第二のオリフィス通路100が形成されている。
なお、本実施形態では、第一のオリフィス通路92は、エンジンシェイクに対して有効な防振効果が発揮されるように10Hz前後の低周波数域にチューニングされている一方、第二のオリフィス通路100は、アイドリング振動に対して有効な防振効果が発揮されるように20〜40Hz程度の高周波数域にチューニングされている。
このような構造とされたマウント本体12は、図1に示されているように、筒形ブラケット20に対して固定的に組み付けられている。筒形ブラケット20は、繊維強化樹脂等の硬質な合成樹脂材によって形成されており、図2に示されているように、略円筒形状を呈してマウント本体12が嵌め入れられる筒状部102を備えている。また、筒状部102の下端縁部には、外周側に延び出す取付脚部104が一体形成されている。本実施形態における取付脚部104は、径方向一方向で対向位置して両側に向かって延び出すプレート形状とされている。また、取付脚部104には、それぞれ固定ナット106が固着されている。それらの固定ナット106,106は、その中央孔が取付脚部104を軸方向(板厚方向)に貫通するように配設されている。なお、本実施形態において、筒形ブラケット20の筒状部102の内周面は、軸方向に広がる筒状面とされており、筒状部102の内径が軸方向で略一定とされている。
また、筒状部102の上端縁部には、一対の固定支持片108,108が一体形成されている。この固定支持片108は、一対の取付脚部104,104の対向方向で突出せしめられて軸直角方向に広がる板状とされており、径方向一方向で対向位置する一対の固定支持片108,108が形成されている。また、固定支持片108には、それぞれ固定ボルト110が植設されており、軸方向上方に向かって突出せしめられている。また、筒状部102の上端縁部には、それら一対の固定支持片108,108の対向方向に対して略直交する方向に突出する当接支持片112が一体形成されている。更に、筒形ブラケット20の外周面には、固定支持片108,108および当接支持片112をそれぞれ補強する補強リブが一体形成されている。
また、筒形ブラケット20の筒状部102の下端開口部には、空気圧式アクチュエータ用の底金具としてのベース金具114が配設されている。ベース金具114は、浅底の略皿形状を呈しており、鉄等の金属材で形成された高剛性の部材とされている。更に、ベース金具114は、筒形ブラケット20の筒状部102の内径寸法よりも小さい外径寸法で形成されている。また、本実施形態のベース金具114には、底壁部を貫通する中央孔116が設けられている。中央孔116は、図3に示されているように、長円形状を有しており、ベース金具114の底壁中央部分に形成されている。
さらに、ベース金具114の開口周縁部には、全周に亘って連結部としての連結支持部117が形成されている。連結支持部117は、略円環板形状を呈しており、ベース金具114の開口周縁部において外フランジ状に軸直角方向外方に向かって広がっている。また、連結支持部117の外周縁部径は、筒形ブラケット20の内径よりも大きくされており、連結支持部117が全周に亘って筒形ブラケット20における筒状部102の下端部に埋設固着されている。これにより、本実施形態では、筒状部102の軸方向下側の開口部がベース金具114および連結支持部117によって流体密に閉塞せしめられている。
また、本実施形態では、ベース金具114の開口周縁部において、径方向一方向で突出する一対の固着支持部118,118が形成されている。固着支持部118は、図3に示されているように、軸直角方向に広がる略矩形平板形状を呈しており、連結支持部117の外周縁部から外周側に向かって延び出すように設けられている。そして、この固着支持部118,118は、筒状部102に一体形成された取付脚部104に埋設固着されている。また、固着支持部118の中央部分には、板厚方向(図2中、上下)で貫通する通孔120が形成されており、取付脚部104と一体とされた樹脂材が通孔120に充填されることにより、固着支持部118と取付脚部104がより強固に固着されるようになっている。
このような筒形ブラケット20には、マウント本体12が組み付けられる。マウント本体12は、筒形ブラケット20における筒状部102の上側開口部から嵌め入れられて、第二の取付金具16が、そのフランジ状部28を除く略全体に亘って筒形ブラケット20の筒状部102内に収容された状態で組み込まれている。かかる組付状態下において、第二の取付金具16のフランジ状部28が、筒形ブラケット20の軸方向上端面に対して重ね合わされている。
なお、筒形ブラケット20の筒状部102は、その上端面に対して、第二の取付金具16のフランジ状部28が、十分な面積で重ね合わされ得る肉厚寸法とされている。また、筒状部102の上側開口縁部に設けられた一対の固定支持片108,108と当接支持片112に対して、第二の取付金具16に突設された一対の固定片30,30と当接片34が重ね合わされて下方から支持せしめられるようになっている。
そして、マウント本体12と筒形ブラケット20は、第二の取付金具16の固定片30,30に形成されたボルト挿通孔32,32に対して、固定支持片108,108に植設された固定ボルト110,110が挿通されることにより、径方向で相互に位置決めされている。なお、本実施形態では、門形プレート状の図示しないストッパ金具が該固定ボルト110,110に挿通されており、固定ボルト110,110に螺着される図示しないナットによって、固定片30,30と固定支持片108,108と図示しないストッパ金具が相互に重ね合わされて固定されている。これにより、第二の取付金具16が筒形ブラケット20に対して固定ボルト110,110で固定されるようになっている。
ここにおいて、上述の如くマウント本体12を筒形ブラケット20に嵌め入れるに際しては、第二の取付金具16の筒状部分において最大の外径寸法を有することとなる大径部40の外径寸法が、筒形ブラケット20の筒状部102の内径寸法よりも小さくされている。それ故、筒形ブラケット20に対して大きな応力が及ぼされることが回避されると共に、容易且つ速やかにマウント本体12の筒形ブラケット20への組付作業を行うことが出来る。
また、第二の取付金具16の外径寸法と筒形ブラケット20の内径寸法との差に相当する隙間が、それら両部材16,20間に存在するが、かかる隙間には、第二の取付金具16に被着された嵌合ゴム50が挟圧状態で介在せしめられることから、マウント本体12と筒形ブラケット20がこじり方向や径方向で相対的に変位する等の問題が有効に防がれると共に、嵌合ゴム50の摩擦抵抗等による抜け抗力の確保を有利に実現することが出来る。
特に本実施形態では、嵌合ゴム50が、筒形ブラケット20の筒状部102の軸方向中間部分に対して押し当てられるようになっていると共に、筒形ブラケット20の筒状部102の軸方向上端部分に対して内周側に離隔せしめられている。また、本実施形態では、嵌合ゴム50の圧接部52が筒状部102の内周面に圧接せしめられていると共に、嵌合ゴム50の固着部54が筒状部102の内周面に対して内周側に離隔せしめられている。
また、防振マウント組立体10には、筒形ブラケット20に固着されるベース金具114を利用して、空気圧式アクチュエータ140が設けられている。この空気圧式アクチュエータ140は、ベース金具114に嵌め付けられる底板部材142と弾性隔壁としてのゴム弾性壁144を含んで構成されている。
底板部材142は、略円板形状を呈しており、アルミニウム合金等の金属や硬質の合成樹脂等によって形成されている。また、底板部材142の中央部分には、略逆カップ形状の中央突部146が一体形成されている。更に、中央突部146には、中央部分を外方(軸方向下方)に突出して延びるポート148が一体形成されている。この底板部材142は、中央部分がベース金具114の中央孔116に嵌め付けられると共に、外周縁部がベース金具114の底壁部に重ね合わされて、ベース金具114に対して組み付けられている。
また、ゴム弾性壁144は、全体として円環板形状を有しており、その内周縁部が略逆カップ形状を有する出力部材としての押圧金具150の開口周縁部に加硫接着されている。押圧金具150は、ベース金具114の中央部分においてベース金具114および底板部材142の上方に離隔して配設されている。また、押圧金具150の表面には、その全体に亘って、ゴム弾性壁144と一体形成された被覆ゴム154が被着されている。また、ゴム弾性壁144の外周縁部は、略円環形状の嵌着金具としての嵌着リング152に加硫接着されている。嵌着リング152は、周壁部と底壁部を備えた略L字断面をもって周方向に延びる環状の金具であって、底壁部がゴム弾性壁144の外周縁部に埋設固着されると共に、周壁部の内周面に対してゴム弾性壁144の外周面が加硫接着されている。
そして、嵌着リング152がベース金具114の周壁部に圧入固定されることにより、ベース金具114に対してゴム弾性壁144が固定的に組み付けられている。このようにベース金具114にゴム弾性壁144が組み付けられた状態下において、ゴム弾性壁144の外周縁部が底板部材142の外周縁部に流体密に圧接されており、それによって、底板部材142と押圧金具150の対向面間において、外部空間から隔てられた作用空気室156が形成されている。
また、作用空気室156の中央部分には、コイルスプリング157が収容配置されており、底板部材142と押圧金具150の対向面間に配設されている。このコイルスプリング157は、中央突部146に嵌め付けられて位置決め支持されている。また、コイルスプリング157の付勢力によって、押圧金具150が、常時、ベース金具114から軸方向上方に離隔する方向に付勢されている。
このような空気圧式アクチュエータ140は、その押圧金具150の上底部がダイヤフラム60を挟んで仕切部材58の底部中央に対して対向配置されている。そこにおいて、作用空気室156が大気中に接続せしめられた状態下では、図1に示されているように、押圧金具150がコイルスプリング157の付勢力で上方に向かって弾性的に突出せしめられており、かかる押圧金具150の上底部によって、ダイヤフラム60が凹所80の開口部に押し付けられている。
そして、上述の如き構造とされた防振マウント組立体10は、第一の取付金具14が図示しない取付ブラケットに対して取付ボルト22で固定されると共に、該取付ブラケットが同じく図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられることにより、第一の取付金具14が自動車のパワーユニット側に取り付けられる。一方、第二の取付金具16に外嵌固定された筒形ブラケット20の取付脚部104に設けられた固定ナット106が、自動車におけるサブフレーム等の図示しない車両ボデーに固定されて、筒形ブラケット20が車両ボデー側に取り付けられる。これにより、防振マウント組立体10が、防振連結すべき一方の部材である自動車のパワーユニットと防振連結すべき他方の部材である自動車のボデーに介装されて、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるようになっている。
なお、このような防振マウント組立体10の自動車への装着状態下では、第一の取付金具14と筒形ブラケット20の間に、パワーユニットの分担支持荷重が略軸方向に及ぼされることにより、本体ゴム弾性体18が所定量だけ弾性変形せしめられて、マウント本体12における第一の取付金具14と第二の取付金具16が軸方向で相互に接近方向に所定量だけ変位せしめられた状態とされる。
これにより、外力が及ぼされていない状態では、ダイヤフラム60が仕切部材58の下面から離隔した位置に保持されることとなるが、作用空気室156に大気圧が及ぼされた状態下では、押圧金具150がコイルスプリング157の付勢力に基づいて上方に向かって弾性的に突出せしめられるようになっており、かかる押圧金具150の上底部によって、ダイヤフラム60が凹所80の開口部に押し付けられて、第二のオリフィス通路100が遮断状態に維持されるようになっている。
また、防振マウント組立体10の装着状態下では、空気圧式アクチュエータ140を構成するベース金具114に形成されたポート148に対して空気管路158が接続されており、かかる空気管路158を通じて、作用空気室156が大気中と負圧源160に選択的に接続されるようになっている。即ち、作用空気室156に接続された空気管路158上には、切換弁162が配設されており、かかる切換弁162が、制御装置164で作動制御されて、切換作動されることによって、作用空気室156が大気中と負圧源160に対して、択一的に切り替え接続されるようになっている。
そして、自動車の走行状態に応じて作用空気室156に大気圧と負圧を選択的に及ぼすことにより、第二のオリフィス通路100を連通/遮断制御せしめて、マウント本体12の防振特性を切換変更することが出来るようになっている。即ち、空気圧式アクチュエータ140の作用空気室156に外部から負圧が及ぼされた状態下では、押圧金具150がコイルスプリング157の付勢力に抗して下方に変位せしめられる。それによって、コイルスプリング157の付勢力に基づくダイヤフラム60への押圧力が解除されて、第二のオリフィス通路100が連通状態に維持されるようになっている。なお、押圧金具150の上底部には、下方に突出する緩衝ストッパゴム166が形成されており、負圧吸引による押圧金具150の引き下げ時における押圧金具150の変位量が、緩衝ストッパゴム166の中央突部146への当接で緩衝的に制限されるようになっている。
上述の如き構造とされた本実施形態の防振マウント組立体10においては、空気圧式アクチュエータ140のベース金具114を金属製として、嵌着リング152をベース金具114の周壁部に圧入することで、ゴム弾性壁144がベース金具114に対して嵌め付けられるようになっている。それ故、ゴム弾性壁144がベース金具114に対して強固に位置決め固定されて、ゴム弾性壁144の底板部材142に対する密着状態を有効に実現することが出来る。従って、切換弁162を制御することにより作用空気室156に目的とする圧力を有効に作用せしめることが出来て、空気圧式アクチュエータ140の安定作動を有利に実現することが出来る。
また、樹脂製の筒形ブラケット20を射出成形等する際に、ベース金具114と一体形成された連結支持部117を筒状部102に埋設固着させることにより、金属製の別体部材とされたベース金具114を採用するにあたって、筒状部102への組付けのために特別な工程を要することもない。それ故、筒形ブラケット20の材料として合成樹脂を採用することによる軽量化と、ベース金具114の材料として鉄等の金属を採用することによる作用空気室156の密閉性の確保を両立して実現できる防振マウント組立体10を、少ない製造工程数をもって実現することが出来る。
しかも、本実施形態では、連結支持部117と一体形成された一対の固着支持部118,118が、筒状部102と一体形成された一対の取付脚部104に埋設固着されている。これにより、ベース金具114の筒形ブラケット20への固着強度を向上せしめることが出来て、ベース金具114の筒形ブラケット20への固定を有利に実現することが出来る。
また、本実施形態では、筒状部102の上側開口部が、第二の取付金具16と筒状部102が嵌合ゴム50を介して重ね合わされることにより流体密に閉塞されていると共に、連結支持部117が全周に亘って筒状部102の下端部に固着されており、筒状部102の下側開口部がベース金具114によって流体密に閉塞せしめられている。そして、ダイヤフラム60を挟んで平衡室72と反対側の領域は、外部から密閉されており、空気が封入されている。これにより、振動入力時には、該密閉領域に封入された空気の空気ばね作用によってダイヤフラム60の変形が制限されて、目的とする防振効果が有効に発揮される。
また、本実施形態では、筒状部102の上下開口部が閉塞されていることにより、筒状部102の内周側領域への水や異物の侵入を有利に防ぐことが出来て、耐久性の向上を図ることが出来る。
次に、図4には、本発明の第二の実施形態としての防振マウント組立体168が示されている。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同一の部材乃至は部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
すなわち、本実施形態に係る防振マウント組立体168においては、ベース金具170の連結支持部172に板厚方向で貫通する連通孔としての大気連通孔174が形成されている。この大気連通孔174は、ベース金具170の樹脂製筒形ブラケット20への装着状態下において、連結支持部172の基端部分であって、ベース金具170の周壁部と筒形ブラケット20の筒状部102の径方向間に位置する部分に形成されている。なお、本実施形態では、大気連通孔174が周方向に所定の長さで延びる形状とされていると共に、周方向に離隔して複数の大気連通孔174が形成されている。このような大気連通孔174が設けられていることによって、ベース金具170よりも軸方向上方において、ダイヤフラム60を挟んで平衡室72と反対側に位置する領域が、大気連通孔174を通じて外部に連通せしめられている。これにより、ダイヤフラム60の下側の空間が略大気圧に維持されるようになっている。
このような本実施形態に従う構造とされた防振マウント組立体168においては、ダイヤフラム60の変形が容易に生ぜしめられることから、平衡室72の容積変化が容易に許容されるようになっている。それ故、筒状部102の下側開口部がベース金具114で密閉されている前記第一の実施形態に比して、マウント本体12において柔らかいばね特性を有利に実現することが出来る。
また、図5には、本発明の第三の実施形態としての防振マウント組立体に用いられる樹脂製筒形ブラケット176が示されている。なお、本実施形態において、樹脂製筒形ブラケット176に組み付けられるマウント本体12や空気圧式アクチュエータ140の構造は、前記第一の実施形態と同様であることから、ここでは説明を省略する。
すなわち、本実施形態に係る樹脂製筒形ブラケット176においては、筒状部178の内周面が上テーパ面180を含んで構成されている。上テーパ面180は、軸方向上方に行くに従って次第に外周側に傾斜する傾斜面であって、筒状部178の内周面において、筒状部178の軸方向上側の開口縁部から延びて、ベース金具114における連結支持部117にまで至る領域を構成するように設けられている。これにより、本実施形態における筒形ブラケット176は、その内径寸法が、軸方向上側の開口部に向かって次第に大きくなっている。
なお、本実施形態では、全周に亘って上テーパ面180が設けられているが、周上において部分的に上テーパ面を設けても良い。また、上テーパ面180の軸方向に対する傾斜角度は、特に限定されるものではないが、0.5度以上且つ5度以下とされていることが望ましい。特に本実施形態では、上テーパ面180の傾斜角度が1〜2度に設定されている。蓋し、上テーパ面180の傾斜角度が小さ過ぎると、後述するマウント本体12に対する案内作用が充分に得られ難く、一方、傾斜角度が大き過ぎると、筒形ブラケット176の外径が大きくなってしまい、防振マウント組立体10全体の大型化を招くからである。
このように、樹脂製筒形ブラケット176の筒状部178の内周面形状として、上テーパ面180を含む特定形状を採用することによれば、上テーパ面180の案内作用によって、マウント本体12を筒状部178に対して容易に嵌め入れることが出来て、組付け作業の能率向上を図ることが出来る。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、底金具に設けられる連結部は、前記第一,第二の実施形態のように必ずしも底金具の開口周縁部から外周側に向かって延び出すように形成されている必要は無く、例えば、底金具の周壁部の軸方向中間部分から外周側に延び出すように設けられていても良い。更に、例えば、底金具の周壁部における軸方向の異なる位置において、複数の連結部が外周側に向かって延び出すように設けられていても良い。また、連結部は、必ずしも全周に亘って設けられて筒状部に埋設固着されるようになっていなくても良く、例えば、周上の複数箇所において外周側に突出するように設けられて、筒状部に周上の複数箇所で埋設固着されるようになっていても良い。
また、前記第一, 第二の実施形態では、ベース金具114,170の底壁部の中央を貫通する中央孔116が形成されており、ベース金具114,170が実質的に略円環形状を呈しているが、底金具の具体的な形状は、前記実施形態の記載によって何等限定されるものではない。具体的には、例えば、底壁部が円板形状とされて、中央孔116等の貫通孔を底壁部に有していない、浅底の有底円筒形状を呈する底金具を採用することも出来る。なお、このような底金具を採用する場合には、前記実施形態における底板部材142のようなポート148を備えた別部材を採用することなく、底金具にポート148を形成しても良い。
また、前記第一, 第二の実施形態では、取付脚部104が径方向一方向で対向位置して外周側に突出するプレート状とされていたが、取付脚部は、例えば、全周に亘って外周側に延び出す外フランジ状とされていても良い。更に、このような形状の取付脚部を採用する場合には、例えば、連結部を全周に亘って取付脚部内にまで延び出させて、連結部を全周に亘って筒状部および取付脚部の両方に埋設固着せしめても良い。これによれば、底金具の樹脂製筒形ブラケットへの固着をより強固に実現して、空気圧式アクチュエータの安定した位置決め固定を実現することが出来る。
また、前記第一, 第二の実施形態における底金具としてのベース金具114,170には、径方向一方向で対向する位置に一対の固着支持部118が設けられている。しかしながら、固着支持部118は、三つ以上の複数が設けられていても良いし、固着支持部118がなくても良い。
また、前記第一, 第二の実施形態では、筒形ブラケット20の筒状部102の内周面が軸方向に延びる筒状面とされており、筒状部102の内径寸法が軸方向で略一定とされていたが、筒状部102の内径寸法は必ずしも軸方向で一定でなくても良く、例えば、筒形ブラケット20の成形用金型の抜きテーパ(金型の成形品からの脱型を容易にするために設けられるテーパであって、金型の抜き方向に向かって次第に厚肉乃至は大径となるように設けられる)が形成されて、筒状部102の内径寸法が軸方向上側開口に向かって次第に大きくなるようにされていても良い。これによれば、筒状部102の内周面に付けられたテーパの案内作用によって、マウント本体12の筒形ブラケット20への組付けを容易に行うことが出来る。
また、前記実施形態において示されたマウント本体12の具体的な構造は、あくまでも例示であって、本発明は、空気圧式アクチュエータによって防振特性を切換可能とされた空気圧切換型の各種防振マウントに対して適用可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
10:防振マウント組立体,12:マウント本体,14:第一の取付金具,16:第二の取付金具,18:本体ゴム弾性体,20:筒形ブラケット,50:嵌合ゴム,58:仕切部材,60:ダイヤフラム,70:受圧室,72:平衡室,92:第一のオリフィス通路,100:第二のオリフィス通路,102:筒状部,104:取付脚部,114:ベース金具,117:連結支持部,118:固着支持部,140:空気圧式アクチュエータ,144:ゴム弾性壁,150:押圧金具,152:嵌着リング,156:作用空気室,174:大気連通孔,180:上テーパ面
Claims (8)
- 防振マウントが嵌め入れられて組み付けられる筒状部を有する樹脂製筒形ブラケットにおいて、
前記筒状部の軸方向下側の開口部には皿形状を呈して該筒状部の内径よりも小さい外径を有する空気圧式アクチュエータ用の底金具が配設されていると共に、該底金具には外周側に向かって延び出す連結部が一体形成されており、該連結部が該筒状部の下端部に埋設固着されて支持されていることを特徴とする樹脂製筒形ブラケット。 - 防振対象部材に取り付けられる取付脚部が前記筒状部と一体形成されて、該取付脚部が該筒状部の軸方向下端部から外周側に延び出すように形成されており、前記底金具の前記連結部が該筒状部よりも外周側に延び出して該取付脚部に埋設固着されている請求項1に記載の樹脂製筒形ブラケット。
- 前記底金具の前記連結部が全周に亘って外周側に延び出すように形成されると共に、該連結部が全周に亘って前記筒状部の下端部に埋設固着されることにより、該筒状部の下側開口部が該底金具で密閉されている請求項1又は2に記載の樹脂製筒形ブラケット。
- 前記底金具の前記連結部を貫通して前記筒状部の内周側における該連結部よりも上側の領域を大気中に連通せしめる大気連通孔を設けた請求項1又は2に記載の樹脂製筒形ブラケット。
- 前記筒状部の内周面が軸方向上方に行くに従って次第に拡径する上テーパ面を含んで構成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の樹脂製筒形ブラケット。
- 請求項1乃至5の何れか一項に記載の樹脂製筒形ブラケットに対して防振マウントが嵌め入れられて構成された防振マウント組立体であって、
前記底金具の上方に離隔して配置される出力部材が設けられて、円環板状の弾性隔壁の内周縁部が該出力部材に固着されると共に、該弾性隔壁の外周縁部には環状の嵌着金具が固着されて、該嵌着金具が該底金具に圧入固定されることにより該出力部材と該底金具の間に外部から密閉された作用空気室を有する前記空気圧式アクチュエータが構成されており、該作用空気室に及ぼされる空気圧で該出力部材が駆動変位せしめられることにより前記防振マウントの防振特性が切換え可能とされていることを特徴とする防振マウント組立体。 - 前記防振マウントとして、防振対象部材の一方に取り付けられる第一の取付部材が、前記樹脂製筒形ブラケットに嵌め入れられて防振対象部材の他方に取り付けられる筒状の第二の取付部材の上側開口部に離隔配置せしめられて、それら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で相互に連結される一方、該第二の取付部材で仕切部材が支持されて、該仕切部材を挟んだ一方の側には壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室が形成されると共に、該仕切部材を挟んだ他方の側には壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室が形成されて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されており、更に、それら受圧室と平衡室を相互に連通する第一のオリフィス通路と該第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路が設けられた構造が採用されて、前記空気圧式アクチュエータの前記出力部材が駆動変位せしめられることにより該第二のオリフィス通路が連通状態と遮断状態に切り換えられて該防振マウントの防振特性が切り換えられるようにした請求項6に記載の防振マウント組立体。
- 前記防振マウントの外径が前記樹脂製筒形ブラケットの前記筒状部の内径よりも小さくされていると共に、該防振マウントと該筒状部の間に嵌着ゴムが圧縮状態で介在せしめられている請求項6又は7に記載の防振マウント組立体。
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-
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