JP2008248432A - 繊維加工用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温時の保持力が損なわれず、なおかつ耐繊維飛散性を併せ持つ繊維加工用のバインダー樹脂を得る。
【解決手段】(A)ポリマーのガラス転移温度が−45℃〜20℃である、(メタ)アクリル酸エステル系重合体エマルジョン、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンおよび天然ゴムラテックスの群から選ばれた少なくとも1種の水系分散体を主成分とし、かつ表面張力が20〜50mN/mである繊維加工用樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、建築用・自動車部品などに使用される繊維構造物のバインダー用に用いられる繊維加工用樹脂組成物に関する。
各種繊維製品は、多岐に渡る分野に使用され、例えばアスベストを含む各種の製品は、建築・自動車用途の製品としてわが国で長年の間、主に建築物の壁や天井の断熱材などとして重用されてきた。しかし、近年、アスベストの使用は、わが国において禁止されるとともに、既設のアスベストの早期除去が緊急の社会的課題になってきている。このような社会背景により、アスベストの除去作業も進みつつあるが、解体除去時に飛散するアスベスト粉塵は呼吸器障害の要因ともなり、このような粉塵を多量に発生するような繊維に対し、飛散を抑制する目的として繊維加工用樹脂組成物がバインダーの役割として使用されてきた。このような樹脂組成物は、他素材への適用も進められており、例えば自動車部品の用途として、排ガス浄化フィルターと外筒の緩衝材として用いられるセラミック繊維マットに含浸するバインダーとして使用されている。このような内燃機関に用いられる部品は、始動時や停止時に、急速に温度変化するため外筒とフィルターとの間の熱膨張差により、フィルターに圧縮および引張りの応力が発生するという問題があった。このため、特許文献1(特開平10−52626号公報)には、自動車エンジンなど各種内燃機関の排ガス浄化装置において、振動や始動および停止時の熱応力などによるフィルターの損傷やズレを防止する目的として、軸方向に形成された多数の通気孔内の表面に触媒が担持された排ガス浄化フィルターの軸方向一端または両端にリング状の保持部材が接合され、かつ周面に用いる非膨張性繊維マットを提案している。
また、特許文献2(特開平10−288032号公報)には、上記のような非膨張性繊維マットである無機繊維マットに有機バインダーが含浸されたものを使用することが記載されている。このように、自動車部品に使用される際には、繊維飛散防止に加え、該繊維マットの高温下での形態保持性も要求される。
特開平10−52626号公報 特開平10−288032号公報
ところで、上記のような用途に用いられるバインダー樹脂は、その組成としてポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体、スチレン・ブタジエン系共重合体などの水性分散液が挙げられる。また、これらのバインダー樹脂の要求性能として、(1)繊維マットの取扱い時に繊維ファイバーが飛散し作業環境の悪化をもたらすことから、繊維ファイバーの飛散を抑えること、また(2)高温下での使用時における型保持性が損なわれないこと、などが要求され、この2点の特徴を両立させることが要求される。
しかしながら、従来技術でのバインダー樹脂では、片方の性能を向上させると、もう片方の性能が劣化若しくは打ち消されてしまう問題があり、2つの要求性能を満足することはできなかった。
本発明は、高温時の型保持力が損なわれず、なおかつ耐繊維飛散性の効果を併せ持つバインダー樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、(A)ポリマーのガラス転移温度が−45℃〜20℃である、(メタ)アクリル酸エステル系重合体エマルジョン、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンおよび天然ゴムラテックスの群から選ばれた少なくとも1種の水系分散体を主成分とし、かつ表面張力が20〜50mN/mである繊維加工用樹脂組成物に関する。
ここで、(A)成分は、(A)成分を構成するポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が好ましくは5万〜100万である。
また、(A)成分としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体エマルジョンが好ましい。
さらに、本発明の繊維加工用樹脂組成物には、表面張力調整用に、(B)濡れ剤を含んでなるものが好ましい。
ここで、(B)濡れ剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アセチレングリコール類および親水性フッ素系界面活性剤の群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
また、(B)濡れ剤の使用量は、(A)成分(固形分換算)100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部である。
さらに、適用される繊維素材としては、ガラス繊維、セラミックス繊維、ポリエステル繊維が好ましい。
本発明によれば、高温時の保持力が損なわることなく、なおかつ耐繊維飛散性を併せ持つ繊維加工用樹脂組成物を得ることができる。
(A)水系分散体
本発明に用いられる(A)成分は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体エマルジョン、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンおよび天然ゴムラテックスの群から選ばれた少なくとも1種である。この(A)成分は、本発明の繊維加工用樹脂組成物において、ベースゴムとして用いられ、バインダーや、繊維の固着、繊維マットの耐折れ性の役目を果たすものである。
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系重合体エマルジョンは、アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体を主単量体成分とする重合体エマルジョンである。ここで、アクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体は、従来の水性アクリルエマルジョンにも普通に使用されている、アクリル酸およびメタクリル酸の脂肪族、脂環族あるいは芳香族の非置換アルコールとのエステルである。ここで言う非置換とは、炭化水素基以外の基を持たないことを意味する。アクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体の例を挙げると、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸n−ノニル、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸n−ノニル、メタクリル酸イソノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、アクリル 酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどがある。好ましい単量体は、炭素数4〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくはアクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸2−エチルヘキシルであり、特にアクリル酸n−ブチルが好ましい。これらの単量体は、単独で使用することができ、また2種以上混合して使用することもできる。
本発明において、アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体とともに、(メタ)アクリル系重合体エマルジョンを構成しうる他の単量体としては、グリシジル基含有ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、エチレン性不飽和酸単量体、エチレン性不飽和スルホン酸エステル単量体、エチレン性不飽和アルコールまたはそのエステル単量体、エチレン性不飽和エーテル単量体、エチレン性不飽和アミン単量体、エチレン性不飽和シラン単量体、脂肪族共役ジエン系単量体などが挙げられる。
上記グリシジル基含有ビニル系単量体の例には、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテルなどがあり、特にグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
上記芳香族ビニル系単量体の例には、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、α−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−メトキシスチレン、p−アミノスチレン、p−アセトキシスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、α−ビニルナフタレン、1−ビニルナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、2−ビニルフルオレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどがあり、特にスチレンが好ましい。
上記シアン化ビニル系単量体の例には、アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロメタクリロニトリル、α−メトキシメタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどがあり、特にアクリロニトリルが好ましい。
上記エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体の例には、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどがある。
上記エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体の例には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシエチルアクリルアミド、N−ブトキシエチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−n−プロピオキシメチルアクリルアミド、N−n−プロピオキシメチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドなどがある。
上記エチレン性不飽和酸単量体には、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸などが使用される。エチレン性不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などがあり、エチレン性不飽和スルホン酸の例には、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸などがある。エチレン性不飽和酸単量体は、例えばアルカリ金属で中和されていてもよい。また、上記エチレン性不飽和スルホン酸エステル単量体の例には、ビニルスルホン酸アルキル、イソプレンスルホン酸アルキルなどがある。
上記エチレン性不飽和アルコールおよびそのエステルには、アリルアルコール、メタアリルアルコール、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸アリル、カプロン酸メタアリル、ラウリン酸アリル、安息香酸アリル、アルキルスルホン酸ビニル、アルキルスルホン酸アリル、アリールスルホン酸ビニルなどがある。
上記エチレン性不飽和エーテル単量体には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロビルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテルなどがある。
上記エチレン性不飽和アミンには、ビニルジメチルアミン、ビニルジエチルアミン、ビニルジフェニルアミン、アリルジメチルアミン、メタアリルジエチルアミンなどがある。
上記エチレン性不飽和シランには、ビニルトリエチルシランなどがある。
上記脂肪族共役ジエン系単量体には、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、直鎖および側鎖共役ヘキサジエンなどがあり、特に1,3−ブタジエンが好ましい。
上記他の単量体は、単独で使用することができ、また2種以上を併用することもできるが、エチレン性不飽和酸単量体とエチレン性不飽和酸単量体以外の単量体とを併用することが好ましく、特にメタクリル酸とスチレンとを併用することが好ましい。
アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体の全単量体中に占める割合は、10〜100重量%が好ましく、特に好ましくは15〜100重量%がよい。アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体の使用量が10重量%以上であると、耐候性、耐水性、耐熱性が特に向上する。
本発明に用いる(メタ)アクリル酸エステル系重合体エマルジョンは、あらかじめ製造した重合体を溶剤に溶解した重合体溶液、溶液重合によって製造される重合体溶液などを水相に転相する方法によっても製造することができるが、一般的にはアクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体を、場合により他の単量体とともに乳化重合する方法により製造することが好ましい。
また、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスは、例えば、スチレン40〜75重量%、好ましくは50〜70重量%と、ブタジエン60〜25重量%、好ましくは50〜30重量%とを共重合して得られる、ガラス転移温度が−60℃〜−10℃、好ましくは−50℃〜−15℃のSBRラテックスである。このSBRラテックスは、単量体成分中に、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸などを15重量%以下、好ましくは0.5〜10重量%程度共重合することにより、カルボキシ変性されていてもよい。または、(メタ)アクリルアミドなどにて、アミド変性されていてもよい。
さらに、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンは、エチレン10〜40重量%、好ましくは15〜30重量%、酢酸ビニル90〜60重量%、好ましくは85〜70重量%を共重合して得られる、ガラス転移温度が−35℃〜+10℃、好ましくは−30℃〜0℃のエチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンである。
さらに、天然ゴムラテックスとしては、通常の市販の天然ゴムラテックスのほか、スチレンやメチルメタクリレートなどをグラフト重合したグラフト系天然ゴムラテックス、低アンモニア天然ゴムラテックス、水による希釈と遠心分離の作業を繰り返して製造された低(脱)タンパク質天然ゴムラテックスなどが挙げられる。
以上の(A)水系分散体を構成するポリマーのガラス転移温度は、−45℃〜20℃、好ましくは−20〜10℃である。−45℃未満では、繊維マットへのベタツキが生じ、型保持性に悪影響を与える。一方、20℃を超えると、バインダーの役割を果たさなくなり、繊維飛散性が悪化する。
ここで、(A)水系分散体を構成するポリマーのガラス転移温度を本発明の範囲内にするには、低いTgを与えるモノマーと高いTgを与えるモノマーの重量部を調整することにより行う。
また、(A)水系分散体を構成するポリマーの分子量は、該ポリマーをテトラヒドロフランに常温で、24時間浸漬したのち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるテトラヒドロフラン溶解分の重量平均分子量が、5万〜100万、好ましくは5万〜50万である。5万未満では、分子量調整剤が多量に必要となりポリマーそのものの性能が著しく損なわれる。一方、100万を超えると、繊維マットへの含浸性が低下し、型保持性が低下する。
なお、上記重量平均分子量は、分子量調整剤の重量部を調整することにより容易に調整することができる。
以上のベースエマルジョン(ラテックス)である(A)成分は、固形分濃度が好ましくは30〜65重量%、さらに好ましくは40〜55重量%である。30重量%未満では乳化重合に用いるポリマー成分に対する調製水の重量部が非常に大きくなりコストパフォーマンスの面で好ましくない。一方、65重量%を超えると、反応時の除熱がしにくく反応の安定性が失われ異物が発生する要因となる。
(B)濡れ剤
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、特定の表面張力(20〜50mN/m)を有する。本発明の樹脂組成物をこのような表面張力となすには、通常、本発明の樹脂組成物中に(B)濡れ剤を含有させることが好ましい。ここで、(B)濡れ剤とは、(A)水系分散体の繊維表面への表面張力を小さくし、濡れ性を高める作用を有するものであって、このような作用をなすものであれば、特に制限はない。
(B)濡れ剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類などのカチオン性界面活性剤、親水性フッ素系界面活性剤が挙げられ、好ましくはジアルキルスルホコハク酸塩類、アセチレングリコール類、親水性フッ素系界面活性剤が挙げられる。
濡れ剤として用いられる親水性フッ素系界面活性剤は、その種類が特に制限されるというものではなく、これには公知のものが適用できる。
かかる親水性フッ素系界面活性剤としては、1)パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホンアミドアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロアルキルスルホンアミドアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などのアニオン型親水性フッ素系界面活性剤、2)パーフルオロアルキルアミン塩、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩などのカチオン型親水性フッ素系界面活性剤、3)パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイドなどの両性型親水性フッ素系界面活性剤、4)パーフルオロアルキルポリオキシアルキレン誘導体、パーフルオロアルキルアミンポリオキシアルキレン誘導体等のノニオン型親水性フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
以上例示した親水性フッ素系界面活性剤のうちでは、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロアルキルスルホンアミドアルキルリン酸エステル塩が好ましく、なかでも炭素数4〜12の直鎖又は分岐のパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。そして特に、パーフルオロアルキル基として平均繰り返し数2〜4のヘキサフルオロプロペンオリゴマーからなる分岐のパーフルオロアルキル基を有し、かつスルホン酸塩基としてスルホン酸アルカリ金属塩基、スルホン酸有機アンモニウム塩基またはスルホン酸有機ホスホニウム塩基を有するパーフルオロアルキルスルホン酸塩が好ましい。
上記の特に好ましいパーフルオロアルキルスルホン酸塩において、アルカリ金属塩基としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。また、有機アンモニウム塩基としては、1)テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリプロピルエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)・ジメチルアンモニウム、ビス(3−ヒドロキシプロピル)・ジメチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)・メチルアンモニウムなどの、窒素に結合した有機基が全て炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基または炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基であるものが挙げられる。さらに、有機ホスホニウム塩基としては、1)テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリプロピルエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)・ジメチルホスホニウム、ビス(3−ヒドロキシプロピル)・ジメチルホスホニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)・メチルホスホニウムなどの、リンに結合した有機基が全て炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基または炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基であるものが挙げられる。
(B)濡れ剤の使用量は、(A)水系分散体100重量部(固形分換算)に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。0.1重量部未満では、得られる樹脂組成物の表面張力の充分な低減効果がみられない。一方、20重量部を超えると、樹脂組成物に対する濡れ剤の重量部が増大することによりポリマーそのものの性能が著しく低下するとともに発泡が激しくなる。
その他の添加剤
本発明の繊維加工用樹脂組成物には、その他の添加剤として、分散剤、安定剤、消泡剤、充填剤、顔料、老化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、消臭剤、防腐剤などを配合することも可能である。
繊維加工用樹脂組成物の調製
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分とを一方回転攪拌機などを用いた機械的攪拌により混合すればよい。
この際、樹脂組成物の固形分濃度の調整は、調製水の重量部を調整することにより可能である。
このようにして得られる本発明の繊維加工用樹脂組成物の表面張力は、20〜50mN/m、好ましくは20〜40mN/mである。20mN/m未満では、バインダー樹脂がマットを透過し、うまく含浸させることが出来ない。一方、50mN/mを超えると、マット表面や内部においてバインダー樹脂の含浸差が生ずる。
ここで、本発明の樹脂組成物における表面張力は、(B)濡れ剤の配合量により、容易に調整することができる。
本発明の樹脂組成物が適用される繊維マットとしては、ガラス繊維、アルミナ繊維、アルミナ−シリカ系非結晶質セラミックス繊維、アルミノケイ酸塩繊維などのセラミックス繊維のほか、ナイロン繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維が用いられる。好ましくは、ガラス繊維、セラミックス繊維、ポリエステル繊維である。
以上の繊維から、繊維マットを作製するには、まず、短繊維を用いてカーディング法によりウェブを作製し、常法に従い、ニードルパンチして、繊維マット化する。
次いで、この処理前の繊維マットを、本発明の水系の樹脂組成物中に含浸して、熱風乾燥法などの方法を用いて、通常、120〜130℃で10〜20分乾燥して仕上げる。
繊維マットに対する本発明の樹脂組成物の含浸量は、繊維マット100重量部に対し、本発明の樹脂組成物を固形分換算で、通常、1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部程度である。
このようにして、樹脂組成物処理された繊維マットを得る。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に鮮明する。
まず、評価方法および原材料について説明する。
<評価方法>
[ポリマーの重量平均分子量]
バインダー樹脂組成物を構成するポリマーの重量平均分子量は、該ポリマーをテトラヒドロフランにポリマー濃度が固形分換算で0.025〜0.050重量%となるように溶解させ、常温で24時間浸漬したのちに0.45μmのフィルターにより濾過を行い、濾過後に得た検液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、マルチステーションGPC8020)を用いて、テトラヒドロフラン溶解分の重量平均分子量を測定し、評価を行った。
[ガラス転移温度(Tg)]
バインダー樹脂組成物約5gをガラス板に薄く引き伸ばし、25℃で3日間乾燥させることによって、乾燥フィルムを得る。得られた乾燥フィルムを示差走査熱量分析計(TAインスツルメント(株)製の示差走査熱量分析計であるDSC2910型)を使用し、昇温速度=20℃/分、温度範囲−100℃〜+160℃でチッ素雰囲気下で測定した。なお、サンプル量は5〜10mgの条件で測定する。なお、解析は、測定によって得られた示差走査熱量分析の微分曲線の変曲の開始点と終点の中間の温度をTgとして測定し、評価を行った。
[表面張力]
表面張力はバインダー樹脂組成物をASTM−971−50において規定されるデュヌイの白金リング法に従い測定を行い、評価を行った。
[型保持性]
1.バインダー樹脂組成物をポリエステル繊維マット100重量部に対し、固形分換算で8重量部含浸させ、熱風乾燥機で130℃×15分乾燥することにより、バインダー樹脂組成物処理されたポリエステル繊維マットを得る。
2.バインダー樹脂組成物を含浸させたポリエステル繊維マットを長さ300mm幅150mmに裁断し、試験片とする。
3.試験片を熱風乾燥機にて200℃×1分の熱処理を行い、直ちに成型機にかけ成型処理を行う。
4.成型機より試験片を取り出し、1時間以上常温で放冷する。
5.成型された試験片の角度を測定する。
6.成型された試験片を80℃の熱風乾燥機にいれ、24時間後に取り出す。
7.1時間以上放冷した後に成型角度を測定する。
8.上記5.で測定された角度から、上記7.で測定した角度の差が小さいほど保持力として良好である指標となり、5°以内のものを合格とした。
[耐繊維飛散性]
バインダー樹脂組成物を含浸させた繊維マットを用いて、JIS L1023に定める「毛羽立ち試験」による評価を行い、毛羽立ちの判定としてJISに定める判定基準に従う等級判定を行い耐繊維飛散性の判定を実施した。なお、4級・5級のものを合格品とした。
<毛羽立ち判定等級>
5級:試験前後の試料を比較し、パイル形態が前後で殆ど変化のないもの
4級:試験前後の試料を比較し、試験後に僅かな毛羽立ちが認められるもの
3級:試験前後の試料を比較し、試験後に毛羽立ちが試料の同一円上に認められるもの
2級:試験前後の試料を比較し、試験後に毛羽立ちが繊維束状に発生したもの
1級:試験前後の試料を比較し、試験後に毛羽立ちが著しく発生しパイルの原形を留めないもの
<原材料>
(重合性単量体)
・メタクリル酸グリシジル…三菱ガス化学(株)製(以下、「GMA」と略する。)
・アクリル酸…三菱化学(株)製(以下、「AA」と略する。)
・アクリル酸ブチル…和光純薬(株)製:試薬特級(以下、「BA」と略する。)
・メタクリル酸メチル…三菱レイヨン(株)製(以下、「MMA」と略する。)
・スチレン…三菱化学(株)製(以下、「ST」と略する。)
・ブタジエン…三菱化学(株)製(以下、「BD」と略する。)
(重合開始剤)
・過硫酸ナトリウム…和光純薬(株)製:試薬一級
(乳化剤)
・アルキルベンゼンスルフォン酸塩・・・ 花王(株)製ネオペレックスG25
・反応性乳化剤・・・ アデカ(株)製、アデカリアソープSR-1025
(配合原料)
・オルフィン1004E・・・アセチレングリコール系濡れ剤、日信化学工業(株)製
・リカサーフG−30・・・・ジアルキルスルホコハク酸塩系濡れ剤、新日本理化(株)製
(実施例1)
撹拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに、調製水 51重量部に、アルキルベンゼンスルフォン酸塩 0.2重量部を仕込み、65℃に昇温した。また、別途、MMA 45重量部、BA 52重量部、GMA 2重量部、AA 1重量部、アルキルベンゼンスルフォン酸塩 0.95重量部、反応性乳化剤 0.45重量部を調製水 40重量部に乳化分散させ、予備乳化液を調製した。
この予備乳化液を滴下ロートより、上記フラスコに4時間かけて滴下すると共に、重合開始剤として、過硫酸ナトリウム開始剤を10%水溶液として0.4重量部添加し、重合を開始した。65℃の反応温度を4時間維持した後、80℃に昇温して、引き続き2時間反応を継続し、共重合体の水性分散液を得た。このエマルジョン100重量部(固形分)に対しオルフィン1004Eを5重量部配合し、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、保持力、繊維飛散性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
予備乳化液の組成を、MMA 21重量部、BA 76重量部、GMA 2重量部、AA 1重量部とした以外は、実施例1と同様にして重合を行った後、このエマルジョン100重量部(固形分)に対しオルフィン1004Eを4重量部配合し、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。
(実施例3)
予備乳化液の組成を、MMA 33重量部、BA 64重量部、GMA 2重量部、AA 1重量部とした以外は、実施例1と同様にして重合および配合を行い、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。
(実施例4)
予備乳化液の組成を、MMA 39重量部、BA 58重量部、GMA 2重量部、AA 1重量部とした以外は、実施例1と同様にして重合および配合を行い、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。
(実施例5)
予備乳化液の組成を、MMA 39重量部、BA 58重量部、GMA 2重量部、AA 1重量部とした以外は、実施例1と同様にして重合を行った後、このエマルジョン100重量部(固形分)に対しリカサーフG−30を2重量部配合し、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。
(実施例6)
撹拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに、調製水51重量部に、アルキルベンゼンスルフォン酸塩0.2重量部を仕込み、40℃に昇温した。また、別途、予備乳化液の組成をST 60重量部、BD 38重量部、AA 2重量部、アルキルベンゼンスルフォン酸塩 0.95重量部、反応性乳化剤 0.45重量部を調製水 40重量部に乳化分散させ、予備乳化液を調製した。この予備乳化液を滴下ロートより、上記フラスコに4時間かけて滴下すると共に、重合開始剤として、過硫酸ナトリウム開始剤を10%水溶液として0.4重量部添加し、重合を開始した。5℃の反応温度を4時間維持した後、10℃に昇温して、引き続き2時間反応を継続し、共重合体の水性分散液を得た。このラテックス100重量部(固形分)に対しオルフィン1004Eを3重量部配合し、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、保持力、繊維飛散性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例7)
予備乳化液の組成を、ST 50重量部、BD 48重量部、AA 2重量部とした以外は、実施例6と同様にして重合を行った後、このラテックス100重量部(固形分)に対しオルフィン1004Eを5重量部配合し、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。
(実施例8)
予備乳化液の組成を、ST 50重量部、BD 48重量部、AA 2重量部とし、実施例6と同様にして重合を行った後、このラテックス100重量部(固形分)に対しリカコールG−30を2重量部配合し、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。
(比較例1〜2)
従来技術であるアクリル酸エステル系共重合体エマルジョン(日本ゼオン(株)製、Nipol LX−311、固形分濃度=49重量%)を用いた例を比較例1に、従来技術であるSBR系共重合体ラテックス(日本ゼオン(株)製、LX−433C、固形分濃度=50重量%)を用いた例を比較例2として、併せて表1に示す。

(比較例3)
予備乳化液の組成を、MMA 77重量部、BA 20重量部、GMA 2重量部、AA 1重量部とした以外は、実施例1と同様にして重合および配合を行い、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。
(比較例4)
予備乳化液の組成を、MMA 2重量部、BA 95重量部、GMA 2重量部、AA 1重量部とした以外は、実施例1と同様にして重合を行い共重合体の水分散液を得た。このエマルジョン100重量部(固形分)に対しオルフィン1004Eを4重量部配合し、バインダー樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。
Figure 2008248432
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、例えば、排ガス浄化フィルターと外筒の緩衝材として用いられる繊維マットの型保持性を向上させ、また繊維の飛散を防止し、さらに繊維マット装着時の成形性向上などに対し有用である。

Claims (7)

  1. (A)ポリマーのガラス転移温度が−45℃〜20℃である、(メタ)アクリル酸エステル系重合体エマルジョン、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンおよび天然ゴムラテックスの群から選ばれた少なくとも1種の水系分散体を主成分とし、かつ表面張力が20〜50mN/mである繊維加工用樹脂組成物。
  2. (A)成分を構成するポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が5万〜100万である請求項1記載の繊維加工用樹脂組成物。
  3. (A)成分が(メタ)アクリル酸エステル系重合体エマルジョンである請求項1または2記載の繊維加工用樹脂組成物。
  4. 表面張力調整用に、(B)濡れ剤を含んでなる請求項1〜3いずれかに記載の繊維加工用樹脂組成物。
  5. (B)濡れ剤が、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アセチレングリコール類および親水性フッ素系界面活性剤の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4いずれかに記載の繊維加工用樹脂組成物。
  6. (A)成分(固形分換算)100重量部に対し、(B)濡れ剤を0.1〜20重量部含有する請求項1〜5いずれかに記載の繊維加工用樹脂組成物。
  7. 適用される繊維素材がガラス繊維、セラミック繊維、またはポリエステル繊維である請求項1〜6いずれかに記載の繊維加工用樹脂組成物。
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