JP2008247742A - 1,6−ヘキサンジオールの精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シクロヘキサンの酸化反応液から得られるカルボン酸をエステル化し、水素化分解して得られる1,6−ヘキサンジオールの精製方法において、蒸留分離が困難なエステル化合物を1,6−ヘキサンジオールから容易に除去し、エステル価の低い1,6−ヘキサンジオールを取得することができ、且つプロセス液の融点が低く、即ち、より高い収率で1,6−ヘキサンジオールを取得することができ、且つハンドリングがより容易な1,6−ヘキサンジオールの精製方法を提供することを課題とする。
【解決手段】上記1,6−ヘキサンジオールを含む混合物を、水酸化カリウム水溶液で鹸化し、水素化未反応のエステル化合物をカリウム塩とし、次いで低沸成分を蒸留により留去し、次いで、得られた釜残を更に蒸留により該カリウム塩を含む高沸物を釜残として除去し、塔頂から1,6−ヘキサンジオールを得る本願発明によって上記課題は解決される。
【選択図】 なし

Description

この発明は、ポリウレタン、ポリエステル、UV硬化型樹脂等の原料に利用される有用な1,6−ヘキサンジオールの精製方法に関する。
1,6−ヘキサンジオールの製造法としては、シクロヘキサンの酸化反応液から得られるカルボン酸含有混合物を、低級のモノアルコール又はジオールによりエステル化し、得られたエステル混合物を水素化して1,6−ヘキサンジオールを得る製造方法が工業化されている。具体的には、シクロヘキサンの酸化反応で生成するアジピン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸等のカルボン酸類を水抽出し、メタノール、ブタノール、1,6−ヘキサンジオール等でエステル化し、ついでこのエステル化物を水素化触媒の存在下、水素化して1,6−ヘキサンジオールを生成させ、1,6−ヘキサンジオールを蒸留分離する製造方法である(特許文献1)。ここで、原料であるカルボン酸混合物は、シクロヘキサン酸化反応の廃棄副生物であり、環境保護の観点からも推奨されるべき製造方法である。
しかしながら、この1,6−ヘキサンジオールの製造方法においては、1,6−ヘキサンジオールと蒸留分離が困難なエステル化合物が1,6−ヘキサンジオールの蒸留分離時に同伴するという問題があった。具体的には、エステル混合物を水素化して得られる1,6−ヘキサンジオールを含む混合液に含まれる水素化未反応のエステル化合物が、モノエステル、或いは1,6−ヘキサンジオール等のジオール、アルコール類とのエステル交換体重合物として存在し、このエステル交換体重合物、及び蒸留操作中にモノエステルと、1,6−ヘキサンジオール等のジオールやアルコール類が重合して形成された重合物の一部から、熱分解によりラクトン化合物が形成され、1,6−ヘキサンジオールに同伴するという問題があった。1,6−ヘキサンジオールに同伴するラクトン化合物は、1,6−ヘキサンジオールの水酸基とエステル交換反応を起こし水酸基価を低下させる為、上記のような高分子材料の原料としての品質という観点から好ましくない不純物である。この解決方法として、エステル混合物を水素化分解して得られる1,6−ヘキサンジオールを含む混合物を水酸化ナトリウム水溶液で鹸化し、水素化未反応のエステル化合物をナトリウム塩とし、低沸成分を蒸留により留去し、次いで、得られた釜残を蒸留してナトリウム塩を含む高沸物を釜残として除去し、塔頂からエステル価の低い1,6−ヘキサンジオールを含む混合物を得て、この混合物を更に蒸留する事により蒸留分離が困難なエステル化合物(ラクトン化合物)を含まない1,6−ヘキサンジオールを得る方法が開示されている(特許文献2)。
しかしながら前記の1,6−ヘキサンジオールの精製方法においては、ナトリウム塩を含む蒸留塔底物の融点が、蒸留塔底物に含まれる1,6−ヘキサンジオールの濃度に反比例して、即ち1,6−ヘキサンジオールの取得率(留出率)に比例して高くなり、ナトリウム塩を含む高沸釜残のハンドリングが困難になる為、蒸留塔底物に1,6−ヘキサンジオールを同伴させて、釜残の融点を下げる必要があった。
この為、1,6−ヘキサンジオールの収率が低くなり、1,6−ヘキサンジオールの生産性、運転操作のいずれの視点からも工業的に満足できる方法ではなかった。
特公昭53−33567号公報 特公平6−99344号公報
本発明の課題は、前記の1,6−ヘキサンジオールの精製方法において、蒸留分離が困難なエステル化合物を1,6−ヘキサンジオールから容易に除去し、エステル価の低い1,6−ヘキサンジオールを取得することができ、且つ蒸留時の蒸留塔底物の融点が低く、高い収率で1,6−ヘキサンジオールを効率良く取得することができ、ハンドリングも容易な1,6−ヘキサンジオールの精製方法を提供することである。
本発明の方法は、シクロヘキサンの酸化反応液から抽出して得られるオリゴマーを含んだカルボン酸をエステル化し、水素化して得られる1,6−ヘキサンジオールを含む混合物を、水酸化カリウム水溶液で鹸化し、水素化混合物に含まれる水素化未反応のエステル化合物をカリウム塩とし、その鹸化後の混合物から低沸成分を蒸留により留去し、得られた釜残を次いで蒸留によりカリウム塩を含む高沸物を釜残として除去し、塔頂からエステル価の低い1,6−ヘキサンジオールを含む水素化混合物を得ることを特徴とする1,6−ヘキサンジオールの精製方法に関する。
シクロヘキサンの酸化反応液から抽出、分離して得られるカルボン酸含有混合物を、低級のモノアルコール又はジオールによりエステル化し、水素化分解して得られる1,6−ヘキサンジオールを含む混合物を、水酸化カリウム水溶液で鹸化し、1,6−ヘキサンジオールを含む水素化混合物に含まれる水素化未反応のエステル化合物をカリウム塩とし、低沸成分を留去し、次いで、得られた釜残を蒸留によりカリウム塩を含む高沸物を釜残として除去し、塔頂から1,6−ヘキサンジオールを得る本発明により、蒸留分離が困難なエステル化合物を1,6−ヘキサンジオールから容易に除去して、エステル価の低い1,6−ヘキサンジオールを取得することができることはもとより、蒸留塔底物の融点を低く抑え、簡便に、効率良く1,6−ヘキサンジオールを取得できる。
以下、この発明の方法について詳しく説明する。
この発明の1,6−ヘキサンジオールは、シクロヘキサンの酸化により副生するカルボン酸混合物をアルコール類でエステル化して得られたエステル化混合物を水素化し、これを精製する事で得られる。
本発明で使用されるカルボン酸含有混合物は,シクロヘキサノール、シクロヘキサノンの製造を目的にしたシクロヘキサンの液相酸化反応液からシクロヘキサノール、シクロヘキサノンを分離し回収されるカルボン酸等を含有した混合物である。例えば、特許文献1に記載されているように、シクロヘキサンを、触媒の存在下、100〜200℃の温度下、および、2〜20kg/cmGの圧力下に分子状酸素等で酸化し、その酸化反応液からシクロヘキサノン、シクロヘキサノールを分離し、副生する種々のカルボン酸(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等のカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類)及びそのオリゴマー等を含む混合物として得られる。分離方法としては、例えば、シクロヘキサンの酸化反応液を水抽出する方法や、シクロヘキサンの酸化反応液を水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で鹸化し、その水層を分離し、種々のカルボン酸ナトリウム塩を含有するアルカリ液を得、これを硫酸等でpHが3以下になるように調整することで芒硝とカルボン酸類を生成させ、その液から分離された水層の芒硝水溶液から前述の種々のカルボン酸を、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン酸メチルなどのエステル類、ブチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類などの有機溶媒で抽出する方法が挙げられる。次いで、カルボン酸混合物を含む層を、10〜250℃、好ましくは20〜200℃の温度、1〜900mmHG、好ましくは2〜800mmHGの圧力下蒸留することにより、水及び有機溶媒を留去し、濃縮前に比べ1/50〜1/2重量倍、好ましくは1/20〜1/3重量倍の量にまでする。本発明で使用されるカルボン酸含有混合物の成分の組成には特に制限はないが、通常、水や有機溶媒を除いた重量比で、、アジピン酸5〜30重量%、ヒドロキシカプロン酸1〜10重量%、オリゴマー30〜70重量%である。
上記のカルボン酸混合物は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール等炭素数1〜8個の低級モノアルコール、又はエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等炭素数2〜8個のジオール等の存在下、150〜300℃の温度、減圧、常圧又は加圧下でエステル化するか、有利には硫酸、燐酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、ヘテロポリ酸等の均一系触媒、或いはZrO−SO、TiO−SO、Fe−SO、SiO−ZrO、SiO−Ga、TiO−Al、TiO−ZrO、SiO−Al、ゼオライト、カオリン、モンモリロナイト、TiO−SnO、ZrO−WO、SiO−WO、TiO−WO、SiO−TiO、SiO担持フッ素化スルホン化樹脂等の固体触媒存在下、50〜200℃の温度で、減圧、常圧又は加圧下でエステル化し、その生成物から蒸留によりアジピン酸エステル、オキシカプロン酸エステルなどを主成分とするエステル化混合物が取得される。固体触媒を使用する場合、反応は固定床方式、或いは懸濁床方式のいずれでも行うことができる。カルボン酸混合物(水や有機溶媒を除いた重量)に対するアルコールの混合比は0.5〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
エステル化の反応時間は0.2〜10時間、好ましくは0.5〜5時間である。この発明において、前記エステル化混合物は、アジピン酸エステル、オキシカプロン酸エステルを、約10〜80重量%、特に30〜70重量%含有し、その酸価が約0.01〜50mgKOH/g、特に0.01〜10mgKOH/gであることが好ましい。
前述のエステル化混合物を水素化する方法は、定法により行うことができるが、特に、水素化触媒の存在下、150〜400℃、好ましくは200〜300℃の温度、200〜500kg/cmG、好ましくは250〜350kg/cmGの水素圧で行うことが好ましい。前記の水素化触媒としては、CuO・Cr、CuO・ZnO、CuO・ZnO・Al、CuO・SiO、CuO・Fe・Al、CuO・ZrO等の水素化反応に活性を発現する公知のCu含有触媒が好適に用いられ、その形態としては、粉末状又はタブレット状でも良く、その使用量は、カルボン酸化合物をエステル化して得られたエステル化物の液状混合物(溶媒を除いた重量)に対して0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜5重量%である。反応は固定床方式、或いは懸濁床方式のいずれによっても行うことができる。得られた水素化混合物は、1,6−ヘキサンジオールを約40重量%以上、特に約50重量%以上含有していることが好ましく、そのエステル価は1〜100mgKOH/g、特に1〜50mgKOH/gであることが好ましい。
前述の水素化混合物に、濃度約1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%の水酸化カリウム水溶液を、カリウムと1,6−ヘキサンジオールを含む水素化混合物エステル価とのモル比が0.1〜2、好ましくは0.2〜1になるよう添加し、水素化混合物中のエステル化合物を50〜160℃、好ましくは80〜150℃の温度、常圧もしくは加圧下、好ましくは1〜15kg/cmの圧力下、5〜200分、好ましくは10〜80分の滞留時間で鹸化し、鹸化後の液からメタノールなどの低級アルコールや鹸化剤に含まれる水などの低沸物を、40℃〜130℃、好ましくは60〜100℃の塔頂温度、100〜250℃、好ましくは150〜240℃の塔底温度、50〜800mmHGの圧力下で蒸留して除去し、次いでその缶液から、薄膜蒸発器等の蒸留塔により、60〜130℃の塔頂温度、150〜280℃の塔底温度、5〜30mmHgの圧力下で鹸化後の液に含まれるカルボン酸カリウム塩を含む高沸物を塔底から除去しつつ、塔頂から1,6−ヘキサンジオールを含む水素化混合物を留出させることでエステル価が0.5以下の1,6−ヘキサンジオールが得られる。
[実施例1]
(水素化混合物)
シクロヘキサンの酸化反応液から水抽出し、脱水して得られるカルボン酸混合物を1,6−ヘキサンジオールを含む液でエステル化し、水素化して得られる、1,6−ヘキサンジオールを含む混合物を原料に用いた。この組成は、水1.5重量%、1−ヘキサノール0.7重量%、δ−バレロラクトン0.1重量%、ε−カプロラクトン0.7重量%、1,4−ブタンジオール0.8重量%、1,5−ペンタンジオール8.1重量%、シス−1,4−シクロヘキサンジオール0.5重量%、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール0.5重量%、1,6−ヘキサンジオール55.4重量%、不明成分31.7重量%であり、エステル価は29.4mgKOH/gであった。
(水素化混合物の鹸化反応)
鹸化剤として50重量%の水酸化カリウム水溶液を使用した。前述の水素化混合物原料に対し、カリウムと水素化混合物のエステル価のモル比が1.0になるように水酸化カリウム水溶液を添加し、大気圧、120℃の温度、1時間の滞留時間の条件下、水素化未反応のエステル成分の鹸化を行った。
(鹸化後の液の蒸留)
前述の鹸化反応で得られた混合物の蒸留を、50Φスミス式薄膜蒸発器(加熱面積0.034m 攪拌翼回転数450rpm)を使用して行った。鹸化混合液の送液流量が9cc/分、圧力10mmHgの条件にて、マントルヒーターの加熱温度で濃縮率を制御し、濃縮率を変えて釜残を取得した。取得した釜残の融点を測定し、1,6−ヘキサンジオールの取得率(留出率)と釜残の融点を求め、表1に示した。
Figure 2008247742
[比較例1]
(水素化混合物)
実施例1と同様のものを用いた。
(水素化混合物の鹸化反応)
鹸化剤としては50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を使用した。前述の水素化混合物原料に対し、ナトリウムと水素化混合物のエステル価のモル比が1.0になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加し、大気圧、120℃の温度、1時間の滞留時間の条件下、水素化未反応のエステル成分の鹸化を行った。
(鹸化後の液の蒸留)
前述の鹸化反応で得られた混合物の蒸留は、50Φスミス式薄膜蒸発器(加熱面積0.034m、攪拌翼回転数450rpm)を使用して行った。鹸化混合液の送液流量が9cc/分、圧力10mmHgの条件にて、マントルヒーターの加熱温度で濃縮率を制御し、濃縮率を変えて釜残を取得した。取得した釜残の融点を測定し、1,6−ヘキサンジオールの取得率(留出率)と釜残の融点の関係を表2に示した。
Figure 2008247742
[図1]
Figure 2008247742
図1より、シクロヘキサンの酸化反応液から水抽出し、脱水して得られるオリゴマーを含んだカルボン酸を1,6−ヘキサンジオールを含む液でエステル化し、水素化して得られる混合物を用いた場合、1,6−ヘキサンジオール取得率(留出率)当たりの釜残の融点が、水酸化ナトリウムで鹸化したものよりも水酸化カリウムで鹸化したものの方が低くなった。このことから、鹸化剤に水酸化カリウムを用いると、水酸化ナトリウムを用いた場合に比べ、同じ1,6−ヘキサンジオールの蒸留取得率で釜残の融点を低くすることができ、ハンドリングが容易になる。また水酸化カリウムを用いると、水酸化ナトリウムを用いた場合に比べ、同じ釜残融点で1,6−ヘキサンジオールをより多く留出させることができる為、より高い収率で1,6−ヘキサンジオール取得することが可能になる。
[実施例2]
(水素化混合物)
シクロヘキサンの酸化反応液から水抽出し、脱水して得られるカルボン酸混合物をメタノールでエステル化し、高沸成分を蒸留により除去し、エステルを水素化して得られる、1,6−ヘキサンジオールを含む混合物を原料に用いた。この組成は、水1.0重量%、テトラヒドロフラン0.1重量%、メタノール23.4重量%、1−ヘキサノール0.2重量%、ε−カプロラクトン0.1重量%、1,4−ブタンジオール0.8重量%、1,5−ペンタンジオール7.1重量%、シス−1,4−シクロヘキサンジオール0.1重量%、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール0.1重量%、1,6−ヘキサンジオール54.9重量%、不明成分12.2住慮湯%であり、エステル価は17.9mgKOH/gであった。
(水素化混合物の鹸化反応)
鹸化剤としては50重量%の水酸化カリウム水溶液を使用した。前述の水素化混合物原料に対し、カリウムと水素化混合物のエステル価のモル比が1.0になるように水酸化カリウム水溶液を添加し、大気圧、120℃の温度、1時間の滞留時間の条件下、水素化未反応のエステル成分の鹸化を行った。
(鹸化後の液の蒸留)
前述の鹸化反応で得られた混合物の蒸留は、50Φスミス式薄膜蒸発器(加熱面積0.034m 攪拌翼回転数450rpm)を使用して行った。鹸化混合液の送液流量が9cc/分、圧力10mmHgの条件にて、マントルヒーターの加熱温度で濃縮率を制御し、濃縮率を変えて釜残を取得した。取得した釜残の融点を測定し、1,6−ヘキサンジオールの取得率(留出率)と釜残の融点を求め、表3に示した。
Figure 2008247742
[比較例2]
(水素化混合物)
実施例2と同様のものを用いた。
(水素化混合物の鹸化反応)
鹸化剤としては50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を使用した。前述の水素化混合物原料に対し、ナトリウムと水素化混合物のエステル価のモル比が1.0になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加し、大気圧、120℃の温度、1時間の滞留時間の条件下、水素化未反応のエステル成分の鹸化を行った。
(鹸化後の液の蒸留)
前述の鹸化反応で得られた混合物の蒸留は、50Φスミス式薄膜蒸発器(加熱面積0.034m 攪拌翼回転数450rpm)を使用して行った。鹸化混合液の送液流量が9cc/分、圧力10mmHgの条件にて、マントルヒーターの加熱温度で濃縮率を制御し、濃縮率を変えて釜残を取得した。取得した釜残の融点を測定し、1,6−ヘキサンジオールの取得率(留出率)と釜残の融点の関係を表4に示した。
Figure 2008247742
[図2]
Figure 2008247742
図2より、シクロヘキサンの酸化反応液から水抽出し、脱水して得られるオリゴマーを含んだカルボン酸をメタノールでエステル化し、高沸成分を蒸留により除去し、エステルを水素化して得られる混合物を原料にした場合、1,6−ヘキサンジオール取得率(留出率)当たりの釜残融点が、水酸化ナトリウムで鹸化したものよりも水酸化カリウムで鹸化したものの方が低くなった。このことから鹸化剤に水酸化カリウムを用いると、水酸化ナトリウムを用いた場合に比べ、同じ1,6−ヘキサンジオールの蒸留取得率で釜残の融点を低くすることができ、ハンドリングが容易になる。また水酸化カリウムを用いると、水酸化ナトリウムを用いた場合に比べ、同じ釜残融点で1,6−ヘキサンジオールをより多く留出させることができる為、より高い収率で1,6−ヘキサンジオール取得することが可能になる。

Claims (1)

  1. シクロヘキサンの酸化反応液から抽出して得られるカルボン酸含有混合物を、低級アルコールでエステル化し、水素化することにより得られる1,6−ヘキサンジオールを含む水素化混合物を水酸化カリウム水溶液で鹸化し、その液から低級アルコールや鹸化剤に含まれる水を含む低沸成分を蒸留により留去し、次いで、得られた釜残を蒸留してカルボン酸カリウム塩を含む高沸物を釜残として除去し、塔頂から1,6−ヘキサンジオールを得る1,6−ヘキサンジオールの精製方法。
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