JP2008245638A - ホスホリパーゼd欠失性イネ系統 - Google Patents

ホスホリパーゼd欠失性イネ系統 Download PDF

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Abstract

【課題】ホスホリパーゼDが欠失された新規のイネ系統、ならびにイネ植物においてPLD欠失性遺伝子の有無を判定する方法を提供すること。
【解決手段】ホスホリパーゼD欠失性である、イネ系統(受託番号FERM P−21231)、その後代またはその交雑株が作出される。そのイネ系統が有するホスホリパーゼD欠失性遺伝子が同定され、特定配列に示される塩基配列における2779番目の塩基のグアニンからアデニンへの変異、あるいはそれに相当する位置の塩基のナンセンス変異を検出することを含む方法により、ホスホリパーゼD欠失性遺伝子の有無が判定される。
【選択図】なし

Description

本発明は、ホスホリパーゼD欠失性イネ系統に関する。
籾から籾殻を取り除いて調製された玄米、および玄米を精米して得られた米ヌカは、米を機能性や健康志向の視点からみた場合、風味成分や栄養成分が豊富に存在する重要な画分であるが、デンプン質やタンパク質よりも酸化しやすい脂質が多く含まれている。脂質が酸化されると、玄米および米ヌカの品質、風味などが低下する。
脂質の酸化分解は、ホスホリパーゼD(PLD)が、米ヌカ細胞にあるスフェロゾーム(細胞顆粒)膜のホスホジルコリンを加水分解してスフェロゾーム膜を崩壊させ、スフェロゾーム中に蓄積された中性脂質が細胞質へ漏出することにより生じ、中性脂質がリパーゼにより遊離脂肪酸(FFA)に分解される。このFFAは、米の品質、風味などを低下させる原因となる。特に、精白・搗精や粉食のための製粉工程においては、米ヌカ細胞が破壊されるために、脂質の酸化が進行する。そこで、玄米や米ヌカの脂質の酸化を抑える方法が求められていた。
例えば、脂質の酸化を抑えて米の貯蔵性を高める方法や米ヌカを安定化する方法がいくつか開発されており、(i)米を15℃程度の冷温で保存する方法(多くの貯蔵倉庫で実施されている)、(ii)高温・高圧の水蒸気でヌカを処理することにより脂質分解酵素を不活性化する方法(特許文献1)、(iii)PLD阻害剤の添加により(トウモロコシ等の)老化・劣化を防止する方法(特許文献2)、(iv)ヌカに水とタンパク質分解酵素を加えて脂質分解酵素を不活性化した後に加熱・脱水処理する方法(特許文献3)、(v)FFA量を測定し、高FFA量の場合に更に精白する方法(特許文献4)等を挙げることができる。
しかし、これらの方法や従来行われている方法で米、玄米または米ヌカの劣化を抑制するためには、以下のような施設または技術が必要である。例えば、米の劣化(古米化)を抑えるためには、冷却・保冷施設が必要であり、あるいはFFA量を測定し精白する等の処理を行う必要がある。また、穀粒の劣化を抑制するためにPLDの阻害剤を加えたり、ヌカの劣化を抑えるために加熱やタンパク質分解酵素で脂質分解酵素を不活化する必要がある。これらの処理を行うためには、設備、時間、費用が必要となる。
従って、脂質の酸化分解が抑制されたイネを作出することが望まれている。
例えば特許文献5には、細胞が産生するリン脂質の組成を変化させるため、アンチセンスベクターを用いてPLD遺伝子の発現を抑制したイネを作出したことが開示されている。このイネでは、公知のPLD遺伝子をターゲットとして、宿主細胞中のPLD遺伝子のmRNAと細胞内でハイブリダイズするmRNAをコードする遺伝子をベクターに組込んで導入することにより、PLD遺伝子の発現が直接抑制されている。
特開平11−9207号公報 米国特許第6514914号明細書 特表平8−506720号公報 特開平10−4875号公報 再公表WO97/31106号公報
本発明の課題は、PLDが欠失された新規のイネ系統、ならびにイネ植物においてPLD欠失性遺伝子の有無を判定する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、イネの種子を突然変異原で処理し、その種子を栽培したところ、PLDが欠失された個体を見出し、この個体の後代においてPLD欠失性の遺伝を確認し、PLD欠失性系統として確立することに成功し、そのPLD欠失性イネ系統が有するPLD欠失性遺伝子を同定し、本発明を完成した。
本発明の特徴は、要約すると以下の通りである。
(1)PLD欠失性である、イネ系統(受託番号FERM P−21231)、その後代またはその交雑株。
(2)イネの種子を突然変異原で処理し、その種子を栽培して植物体にし、PLD欠失について植物体をスクリーニングすることを含む、PLD欠失性イネ系統の作出方法。
(3)(1)に記載のイネ系統とイネ野生型株を交配し、その種子を栽培して植物体にし、PLD欠失について植物体をスクリーニングすることを含む、PLD欠失性イネ系統の作出方法。
(4)(1)に記載のイネ系統から得た細胞とイネ野生型株から得た細胞を細胞融合し、得られた融合細胞を培養して植物体に再生し、PLD欠失について植物体をスクリーニングすることを含む、PLD欠失性イネ系統の作出方法。
(5)ホスホリパーゼD欠失が、ホスホリパーゼD遺伝子のナンセンス変異によるものである、(2)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)(1)に記載のPLD欠失性である、イネ系統、その後代またはその交雑株の種子。
(7)(6)に記載の種子由来の米粉。
(8)(6)に記載の種子由来の米飯。
(9)調理米飯である、(8)に記載の米飯。
(10)(6)に記載の種子由来の米油。
(11)(6)に記載の種子から米ヌカを得、その米ヌカを搾ることを含む、米油の歩留まりを向上させる方法。
(12)以下の(a)〜(e)のいずれかである、ホスホリパーゼD欠失性遺伝子。
(a)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換された塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
(b)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換され、かつ該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
(c)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換され、かつ該塩基配列に対して95%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
(d)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換され、かつ該塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
(e)配列番号22に示される塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
(13)(12)に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
(14)(12)に記載の遺伝子を植物細胞に導入して相同組換えを行い、植物を育成することを含む、ホスホリパーゼD欠失性形質転換植物の作出方法。
(15)(13)に記載の組換えベクターを用いてDNAが導入される、(14)に記載の方法。
(16)植物がイネ科植物である、(14)または(15)に記載の方法。
(17)配列番号4に示される塩基配列において、2779番目の塩基のグアニンからアデニンへの変異を検出することを含む、(12)に記載のホスホリパーゼD欠失性遺伝子の有無を判定する方法。
(18)核酸試料について、CAPS法、ドットブロットSNP法、SSCP法、dCAPS法のいずれかの方法によって上記変異を検出する、(17)に記載の方法。
なお、本明細書において、イネ野生型株とは、PLDを有する全てのイネ品種・系統等を含む。
本発明のイネ系統はPLD活性が実質的に欠けていること(本明細書中、「ホスホリパーゼD欠失性」または「PLD欠失性」と称する)から、スフェロゾーム膜の崩壊が少なく、その結果中性脂質の分解が少ない。従って、本発明のイネ系統の種子は、品質を維持したまま長期間の保存が可能であり、PLD阻害剤などを添加しなくても穀粒の劣化を抑制でき、米の貯蔵性の向上と省エネルギー化、低コスト化を推進できる。また、その種子から調製された玄米および米ヌカは、脂質の酸化が抑制され、その米ヌカから米油を製造すれば、歩留まりを向上させることができる。更に、脂質酸化や異臭発生が生じにくい米粉、玄米全粒粉、米油などの製造が可能になる。
また、本発明のPLD欠失性遺伝子を様々な植物に導入することにより、PLD欠失性形質転換植物を作出することができる。
さらに、該遺伝子のナンセンス変異に基づいてPLD欠失性遺伝子の有無を判定することができる。
1.本発明のイネ系統とその作出方法
本発明のイネ系統は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1中央第6)受託番号FERM P−21231のイネ系統、該イネ系統の自家受粉による後代、および該イネ系統を親としてイネ野生型株と交配または細胞融合して得られた交雑株であってかつPLD欠失性であるイネ系統をも含有する。なお、本明細書において、本発明のイネ系統を03−s108ということがある。
受託番号FERM P−21231のイネ系統(03−s108)は、例えば人為的突然変異により作出することができる。
突然変異原処理に用いるイネはとくに限定されない。イネについては様々な品種、系統が開発されているのでそれらを用いることができる。
突然変異原処理は、各種変異原性化学物質(アルキル化剤、核酸塩基アナログ、アジ化ナトリウムなど)で処理することにより、また各種放射線(電磁波、紫外線、X線、γ線、粒子線、中性子線、α線、β線、電子、イオンビームなど)を植物に照射することにより行うことができるが、本発明においてはアジ化ナトリウムを用いることが好ましい。例えばイネの種子を1mMのアジ化ナトリウムの溶液(pH3)に約3〜6時間浸漬すればよい。
アジ化ナトリウム処理後、種子を播種し、育苗する(M1個体)。例えば、M1世代を株別に栽培し、M2世代(種子)を養成して、M2世代種子のPLD欠失について確認し、PLD欠失性突然変異体を選抜する。
PLD欠失についてのスクリーニングは、例えば、SDS電気泳動や抗PLD抗体を用いたウエスタンブロッティング法、酵素活性測定などで行うことができる。例えば、イネの種子の胚芽をSDS、メルカプトエタノール等を加えたタンパク質抽出緩衝液中で摩砕して、湯浴して(100℃、3分間の処理)抽出タンパク質を変性させる。その後、遠心して、上清をサンプルとする。ポリアクリルアミドゲルにサンプルをアプライし、電気泳動を行う。電気泳動後、分離したタンパク質をメンブレンに転写する。ビオチン、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ、RI、フルオレセインなどで標識した抗PLD抗体をメンブレンに適用し、PLDを検出する。また、後述のPLD欠失性遺伝子の有無を判定する方法を用いてもよい。
PLDが検出されなかったM1世代を選抜し、そのM2種子を播種して栽培し、自家受粉によりさらにPLD欠失性の後代を作出することができる。
また、受託番号FERM P−21231のイネ系統と、イネ野生型株、例えばコシヒカリ、ササニシキ、ひとめぼれ、あきたこまち、ヒノヒカリ、きらら397、日本晴、キヌヒカリ、むつほまれ、カサラス、中国183号などを親として交配して栽培するか、あるいは細胞融合して培養して植物体に再生して、PLD欠失についてスクリーニングし、好ましいイネ野生型株が有している他の形質(良食味性、多収性、耐病性、耐乾燥性、耐低温性、耐高温性、耐薬剤性など)を併せ持つ後代を作出することもできる。
交配は、本発明のイネ系統の交配前日の穎花を透かしてみて、葯の先端が穎花の1/2以上に達しているものを除雄の対象とし、他の穎花は切り落としておき、除雄対象の穎花の先端をはさみで切除してピンセットで6本の葯を抜き取り、イネ野生型株の穎花から取り出した葯を除雄した穎花に軽くこすりつけて受粉させて行う(剪穎法)。あるいは、交配前に本発明のイネ系統の開花直前の穂を恒温水槽で43℃に保った温湯に約7分間浸漬し、花粉のみを不稔化し、交配袋をかけ、その日に開花しなかった穎花を切除し、イネ野生型株の穎花から取り出した葯を除雄した穎花に軽くこすりつけて受粉させて行う(温湯除雄法)。
細胞融合は、本発明のイネ系統とイネ野生型株の葯、胚盤などからカルスを誘導し、プロトプラストを作製してポリエチレングリコール(PEG)法、エレクトロポレーション法で融合させる。
カルス誘導培地には、Murashige Skoog(MS)培地またはLinsmaier Skoog(LS)培地に炭素源としてショ糖などのほか、カルス誘導部位に応じて、例えば2mg/mlの2,4−D、またはNAAやIAAなどのオーキシン、カイネチンなどの植物ホルモンを加える。
液体培地に植え継いだ培養細胞を、セルラーゼ、MES、CaCl、マンニトール等を含む酵素液で処理してプロトプラストを単離し、洗浄する。
PEG法による細胞融合は、例えば30%PEG6000溶液をプロトプラスト懸濁液に加え、混合し、例えば30℃、10分間培養後、遠心して上澄みを除去する。1%DMSOを含むアルカリ性洗浄液を加え、遠心して上澄みを除去し、更にプロトプラスト培養用培地を加えて洗浄する。
エレクトロポレーション法による細胞融合は、プロトプラスト懸濁液をキュベットに入れ、例えば1000μF、30msec、500V/cmの電気条件で電圧をかけて融合する。
融合したプロトプラストは、例えばアガロースビーズ法、ナース培養法などにより培養することができる。具体的には、濃度を調整したプロトプラスト液と、アガロースが入ったプロトプラスト培地(pH5.8、無機塩類、MSビタミン、ショ糖、2,4−Dなどを含む)を混合し、アガロースが固まるまで冷却して、例えば1×10個/mlのプロトプラストが入ったアガロースブロックを作製する。アガロースブロックと、プロトプラスト培地、ナース細胞をシャーレに入れ、培養する。
培養約10日後、ナース細胞を取り除いてプロトプラスト培地に植え替える。約2週間後、アガロースブロックをプロトプラスト培地と前培養培地(pH5.8、N6改変培地に、MSビタミン、プロリン、カザミノ酸、2,4−D、ショ糖等を加えたもの)を等量混合した培地に植え替え、さらに2週間後、前培養培地に植え替える。
得られたプロトプラスト由来コロニーを再分化培地(無機要素、ビタミン、鉄、ショ糖、ソルビトールなどを含む)に置床して2週間ごとに移植し、芽が3cm程度になったらホルモンフリー培地(2,4−D無添加のカルス誘導培地)に移植して栽培し、幼植物を馴化培土に移植して植物体を栽培する。
植物体のPLD欠失についてのスクリーニングは、上記方法と同様に行う。
2.本発明のイネ系統の種子から調製される製品
本発明のイネ系統の種子から、例えば米粉、米飯、調理米飯、米油などを調製することができる。
米粉は、玄米、精米などを粒のまま粉砕してもよいし、加熱後粉砕して製造してもよく、特に限定されない。
米飯は、玄米、精米などを通常の方法で炊飯すればよく、ムギを含む麦飯、アズキを含む赤飯なども含まれる。
調理米飯は、調理、調味された米飯であり、例えば、魚介類や肉、野菜などの具を調味料と炊き込んだ加薬飯、五目飯などの炊き込みご飯、具や調味料を炊飯後に混ぜた混ぜご飯、ピラフ、チャーハン、すし飯、粥などを挙げることができる。
米油は、一般的に、米ヌカをヘキサンで抽出し、脱漏、脱ガム、脱酸、脱色等の工程を経て、精製して製造される(油脂・油糧ハンドブック、阿部芳郎監修、幸書房、1988年版参照)。
3.米油の歩留まりを向上させる方法
本発明のイネ系統の種子から得られた米ヌカを米油の原料とすれば、米油の歩留まりを向上させることができる。
米油の生産において従来のイネの種子を原料に用いた場合、米ヌカに含まれる脂質が分解・酸化されることが大きな原因となって、夏場で約15〜20%、冬場で約5〜10%のロスが生じる。本発明のPLD欠失性イネ系統の種子を原料に用いれば、脂質の分解・酸化が抑えられるので、ロスが少なくなる。
4.PLD欠失性遺伝子
本発明のPLD欠失性遺伝子は、ホスホリパーゼD1(PLD1)遺伝子にナンセンス変異が導入された遺伝子である。なお、PLD1遺伝子は、International Rice Genome Sequencing Project (Nature436:793-800,2005)により公開されているイネゲノム情報から、座乗する染色体を明らかにすることができ、イネの第1染色体上の24.0cMの位置にある。さらに具体的には、マーカーRG472とRG246の間にある(図6参照)。
本発明のPLD欠失性遺伝子は、以下の(a)〜(e)
(a)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換された塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
(b)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換され、かつ該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
(c)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換され、かつ該塩基配列に対して95%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
(d)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換され、かつ該塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
(e)配列番号22に示される塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
のいずれかである。
配列番号4に示される塩基配列は、日本晴(イネ品種)のPLD5遺伝子にTos17が挿入された変異系統であるND0052のPLD1遺伝子のDNA配列である。ND0052は、独立行政法人農業生物資源研究所(〒305−8602茨城県つくば市観音台2−1−2)から入手可能である。また、配列番号5に該DNA配列によりコードされるアミノ酸配列を示す。
配列番号4に示される塩基配列の2777〜2779番目の塩基はTGGであり、このコドンはトリプトファンをコードするが、本発明の遺伝子は、該コドン(TGG)から終止コドン(TGA)へのナンセンス突然変異を有しており、PLD欠失性を示す。配列番号4に示される塩基配列によりコードされるアミノ酸配列(配列番号5)において、80番目のアミノ酸が、上記コドン(TGG)によりコードされるトリプトファン(Trp)である。また、本発明のイネ系統03−s108のPLD1遺伝子を配列番号22に示す。配列番号22において、2774〜2776番目の塩基が、上記終止コドン(TGA)に対応する。配列番号22に示される塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を配列番号23に示す。
上記「配列番号4に示される塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列」とは、例えば、配列番号4に示される塩基配列の1〜10個、好ましくは1〜5個の塩基が欠失してもよく、配列番号4に示される塩基配列に1〜10個、好ましくは1〜5個の塩基が付加してもよく、あるいは配列番号4に示される塩基配列の1〜10個、好ましくは1〜5個の塩基が他の塩基に置換してもよいことを意味する。
上記「配列番号4に示される塩基配列に対して95%以上の同一性を有する塩基配列」の「同一性」は、95%以上、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。
上記「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが実質的に形成されない条件をいう。例えば、同一性が高い核酸、すなわち配列番号4に示す塩基配列と95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより同一性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が15〜750mM、好ましくは50〜750mM、より好ましくは300〜750mM、温度が25〜70℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは55〜65℃、ホルムアミド濃度が0〜50%、好ましくは20〜50%、より好ましくは35〜45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件が、通常はナトリウム塩濃度が15〜600mM、好ましくは50〜600mM、より好ましくは300〜600mM、温度が40〜70℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは60〜65℃である。洗浄液には0.1〜0.2%SDSを含むことが好ましい。
上記(b)〜(d)の遺伝子の例としては、配列番号4に示される塩基配列における2048番目の塩基のグアニン(G)からアデニン(A)への置換(配列番号5に示されるアミノ酸配列でいえば17番目のアラニン(Ala)からトレオニン(Thr)への変異)が挙げられるが、これに限定されない。上記置換は、本発明のイネ系統03−s108の配列番号22でいえば2045番目の塩基(アデニン)であり、上記変異は、配列番号23でいえば17番目のトレオニンである。
本発明のPLD欠失性遺伝子は、上記(a)〜(e)のいずれかの遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いて、cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリー等由来の核酸を鋳型としたPCR増幅を行うことにより、核酸断片として得ることができる。また、該遺伝子は、上記ライブラリー等由来の核酸を鋳型とし、該遺伝子の一部であるDNA断片をプローブとしてハイブリダイゼーションを行うことにより、核酸断片として得ることができる。あるいは該遺伝子は、化学合成法等の当該技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、核酸断片として合成することもできる。
また、上記塩基の欠失、付加および置換は、遺伝子を当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。遺伝子に変異を導入するには、例えばKunkel法またはGapped duplex法等により行うことができ、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(Mutan-K(タカラバイオ株式会社)、LA PCR in vitro mutagenesis kit(タカラバイオ株式会社))等を用いて変異を導入できる。
5.組換えベクター
植物の形質転換に用いる組換えベクターは、上記(a)〜(e)のいずれかのPLD欠失性遺伝子を適当なベクターに導入することにより構築することができる。ベクターとしては、特に限定されないが、アグロバクテリウムを介して植物に目的遺伝子を導入することができるpBI系、pPZP系、pSMA系のベクター等が好適に用いられる。特にpBI系のバイナリーベクターまたは中間ベクター系が好適に用いられ、例えばpBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3、pBIG2113等が挙げられる。また、他のベクターとして、植物に遺伝子を直接導入することができるpUC系のベクター、例えばpUC18、pUC19、pUC9等が挙げられる。さらに、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターが挙げられる。
ベクターに目的遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法等が採用される。
バイナリーベクター系プラスミドを用いる場合、上記バイナリーベクターの境界配列(LB、RB間)に、目的遺伝子を挿入し、この組換えベクターを大腸菌中で増殖する。次いで、増幅した組換えベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンスGV3101、C58、LBA4404、EHA101、EHA105あるいはアグロバクテリウム・リゾゲネスLBA1334等に、エレクトロポレーション法等により導入し、該アグロバクテリウムを用いて植物への目的遺伝子の導入を行う。
また、目的遺伝子が形質転換される植物の核DNAに相同組換えされるように、目的遺伝子の両側に、核DNAに存在する遺伝子の配列を組み込んでもよい。さらに、ベクターには目的遺伝子の上流、内部あるいは下流に、プロモーター(カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、イネ由来アクチンプロモーターなど)、エンハンサー(CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域など)、ターミネーター(ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子のターミネーター、CaMV 35S RNA遺伝子のターミネーターなど)、バイナリーベクター系を使用するための複製開始点(TiまたはRiプラスミド由来の複製開始点等)、選択マーカー遺伝子(ハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子など)等を連結することができる。
6.PLD欠失性形質転換植物の作出方法
本発明のPLD欠失性形質転換植物は、上記(a)〜(e)のいずれかの遺伝子または上記組換えベクターを対象植物に導入して相同組換えを行うことにより作出することができる。対象植物としては、PLD欠失性を付与したい植物であれば特に限定されないが、イネ科植物(イネ、トウモロコシ、小麦、大麦など)が好ましく、他に、マメ科植物(大豆、ピーナッツなど)、アブラナ科植物(ナタネなど)が挙げられる。
形質転換の対象とする植物材料としては、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂、葯、花粉等の植物器官・植物組織、これらの切片、未分化のカルス、これを酵素処理して細胞壁を除いたプロトプラスト等の植物培養細胞のいずれであってもよい。また、in planta法の場合、吸水種子や植物体全体を利用できる。
遺伝子または組換えベクターの導入は、公知の方法、例えばアグロバクテリウム法、PEG−リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。アグロバクテリウム法では、プロトプラストを用いる場合、組織片を用いる場合、および植物体そのものを用いる場合(in planta法)がある。プロトプラストを用いる場合は、TiプラスミドまたはRiプラスミドをもつアグロバクテリウム(それぞれAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenes)と共存培養する方法、スフェロプラスト化したアグロバクテリウムと融合する方法(スフェロプラスト法)、組織片を用いる場合は、対象植物の無菌培養葉片(リーフディスク)に感染させる方法やカルス(未分化培養細胞)に感染させる等により行うことができる。また、種子あるいは植物体を用いるin planta法を適用する場合、吸水種子、幼植物(幼苗)、鉢植え植物等へのアグロバクテリウムの直接処理等にて実施可能である。これらの植物形質転換法は、「新版 モデル植物の実験プロトコール 遺伝学的手法からゲノム解析まで(監修 島本功 岡田清孝、秀潤社、2001年)」等の記載に従って行うことができる。
遺伝子が植物体に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、後述のPLD欠失性遺伝子の有無を判定する方法等により行うことができる。あるいは、種々のレポーター遺伝子、例えばベータグルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ(LUC)、Green fluorescent protein(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ベータガラクトシダーゼ(LacZ)等の遺伝子を目的遺伝子の下流域に連結したベクターを作製し、該ベクターを導入したアグロバクテリウムを用いて上記と同様にして植物を形質転換させ、該レポーター遺伝子の発現を測定することによっても確認できる。
PLD欠失性遺伝子が組み込まれた形質転換体を選抜して、植物を育成するにあたり、植物培養細胞を形質転換の対象とした場合は、得られた形質転換細胞から形質転換体を再生させる。再生には、既知の組織培養法を用いればよく、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生については、例えば以下のように行うことができる。
まず、形質転換の対象とする植物材料として植物組織またはプロトプラストを用いた場合、これらを無機要素、ビタミン、炭素源、エネルギー源としての糖類、植物生長調節物質(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノステロイド等の植物ホルモン)等を加えて滅菌したカルス形成用培地中で培養し、不定形に増殖する脱分化したカルスを形成させる(以下「カルス誘導」という)。このように形成されたカルスをオーキシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖(継代培養)させる。
カルス誘導は寒天等の固形培地で行い、継代培養は例えば液体培養で行うと、それぞれの培養を効率よくかつ大量に行うことができる。次に継代培養により増殖したカルスを適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(以下、「再分化誘導」という)、最終的に完全な植物体を再生させる。再分化誘導は、培地におけるオーキシン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成分の種類や量、光、温度等を適切に設定することにより行うことができる。かかる再分化誘導により、不定胚、不定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、さらに完全な植物体へと育成させる。あるいは、完全な植物体になる前の状態(たとえばカプセル化された人工種子、乾燥胚、凍結乾燥細胞および組織等)で貯蔵等を行うこともできる。
本発明のPLD欠失性形質転換植物は、上記(a)〜(e)のいずれかの遺伝子を導入した植物体全体、植物体の一部(例えば葉、花弁、茎、根、花粉等)、植物培養細胞(例えばカルス、プロトプラスト等)、種子のいずれをも包含するものである。また、該植物体の有性生殖または無性生殖により得られる子孫の植物体、およびその子孫植物体の一部、培養細胞、種子も包含するものとする。本発明の形質転換植物は、形質転換植物から種子、プロトプラスト等の繁殖材料を取得し、それを栽培または培養することによって量産することができる。
7.PLD欠失性遺伝子の有無を判定する方法
本発明の上記(a)〜(e)のいずれかのPLD欠失性遺伝子の有無を判定する方法は、イネ科植物において、配列番号4に示される塩基配列において、2779番目の塩基のグアニン(G)からアデニン(A)への変異、あるいはそれに相当する位置の塩基のナンセンス変異を検出することを含む。
核酸試料は、公知の核酸の抽出・精製方法(Murray and Thompson(Nucleic Acid Res.8:4321-4325,1980;またはSambrook, J. et al. (1989):“Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Ed.)” Cold Spring Harbor Laboratory, NYなど)に従って行うことができる。例えば、葉などを粉砕した試料にCTABバッファーを加えインキュベートした後、クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出を行うことにより核酸試料を得る。また、市販の核酸抽出・精製キットを用いてもよい。
配列番号4に示される塩基配列における、2779番目の塩基のグアニン(G)からアデニン(A)への変異などのナンセンス変異の検出は、公知のDNA変異(多型)検出方法を用いればよく、特に限定されないが、例えばCAPS法、ドットブロットSNP法、SSCP法、dCAPS法などが挙げられる。
CAPS(Cleaved Amplified Polymorphic Sequence)法は、DNAの特定の塩基配列部分をPCR(Polymerase Chain Reaction)法で増幅し、増幅産物を制限酵素で切断し、切断されたDNA断片の長さの違いにより変異を検出する方法である(Konieczny and Ausubel Plant J.4:403-410,1993参照)。
ドットブロットSNP法は、DNA含有試料を、ナイロン膜等にドットブロットし、検出用プローブ(DNA変異に対して特異的にハイブリダイズする塩基配列を有するプローブであって適当な標識物質で標識されたプローブ)と、競合用プローブ(DNA変異に対して野生型である塩基配列に対して特異的にハイブリダイズする塩基配列を有するプローブであって標識されていないプローブ)を、検出用プローブに対して競合用プローブが適当に過剰となる割合(例えば検出用プローブ:競合用プローブ=1:1〜10)で適用し、DNA変異を検出する方法である(Shirasawa et al. 2006 Theor Appl Genet 113, 147-155参照)。
SSCP(Singl Strand conformation Polymorphism)法は、DNAの特定の塩基配列部分をPCR法で増幅し、増幅産物を熱変性(加熱、急冷)し、熱変性させた増幅産物をポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、電気泳動における移動度の差異(塩基配列のわずかな違いから生ずる熱変性後のDNA高次構造の変化による)によりDNA変異を検出する方法である(Oritaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA86:2766-2770参照)。
dCAPS(derived CAPS)法は、置換された塩基に近接する領域にプライマーを設計し、かつプライマーの一部の塩基にミスマッチを導入することによって増幅産物内に新たな制限酵素部位を作出する方法である(Neffら、Plant J.14:387-392,1998参照)。
本発明のPLD欠失性遺伝子の有無を判定する方法において、例えばCAPS法を用いる場合、配列番号16および配列番号17のプライマーを用い、PCR法により配列番号4に示される塩基配列の2779番目の塩基のGからAへの置換部分を含むDNA断片を増幅し、得られたDNA断片を制限酵素PsrIで切断し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、染色してバンドを検出し、得られたバンドのパターンを比較して、PLD欠失性遺伝子の有無を判定する。
配列番号4に示される塩基配列の2779番目の塩基のGからAへの変異は、制限酵素PsrIの認識部位「5’...(N)7TA(N)6GTTC(N)12...3’」(配列番号24)の下線を付されたGに起きているので、PsrIは、配列番号4に示される塩基配列の2779番目の塩基のG(PLD欠失性遺伝子ではAに置換されている)を含むDNA断片に用いる制限酵素として好適である。
本発明のPLD欠失性遺伝子の有無を判定する方法において、例えばドットブロットSNP法を用いる場合、配列番号16および配列番号17のプライマーを用い、PCR法により配列番号4に示される塩基配列の2779番目の塩基のGからAへの置換部分を含むDNA断片を増幅し、ナイロン膜にドットブロットする。野生型(PLD遺伝子)検出用プローブとして配列番号18のプローブ、競合用プローブとして配列番号19のプローブを例えば1:5の割合で混合したものを用いてハイブリダイゼーションを行う。また、変異型(PLD欠失性遺伝子)検出用プローブとして配列番号20のプローブ、競合用プローブとして配列番号21のプローブを例えば1:5の割合で混合したものを用いて、ハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーション後、ドットブロットのシグナルを野生型と変異型とで比較し、PLD欠失性遺伝子の有無を判定する。
上記CAPS法によるバンドのパターンやドットブロットSNP法によるシグナルから、野生型ホモ個体、ヘテロ個体、PLD欠失性遺伝子を有するホモ個体を識別できるので、PLD欠失性形質転換植物の選抜を簡易に行うことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
[PLD欠失性イネ系統の作出]
変異原処理するイネの種子として、イネの変異系統ND0052の気乾種子を用いた。
種子から枝梗、不稔粒を除き、変異原液(1mMアジ化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液、pH3.0)を調製して、種子25gに対して200mLの変異原液を加え、25℃で6時間振盪した。種子を水道水で3回洗浄した後、種子を催芽させた。
通常行われている、水稲の苗を育苗する方法で育苗し、苗を1株1本で移植して栽培した。登熟したM1株を、株単位で収穫した。
1株当たりM2種子を2粒ずつ無作為に選び、胚芽を取り出し、SDS電気泳動用の抽出緩衝液で胚芽1粒当たり40μLの割合で磨砕した。磨砕液をサンプルとしてSDS電気泳動を行い、分離したタンパク質をPVDF膜に転写した。PLDの検出は、抗PLD抗体を用いたウエスタンブロッティングで行った。抗体は、日本たばこ産業株式会社の好意により分譲されたものを使用した。ウエスタンブロッティングでPLDが検出できないM1株が見出された場合、更に最大10粒をめどにPLDの有無を検討した。もし、PLDが検出できない粒が合計2粒以上あった場合は、M2種子を播種した。なお、ここでPLDが検出できなかったM1株を03−s108と命名した。
03−s108のM2株を栽培しM3種子を、また03−s108のM3種子を播種・栽培しM4種子を、それぞれ得た。そして、M3種子およびM4種子中のPLDの有無を、抗PLD抗体を用いたウエスタンブロッティングにより検出した(図1および図2、矢印はPLDを示す)。図1において、レーン1、7は日本晴、レーン2〜6は03−s108のM3種子を示す。03−s108のM3種子の場合、10粒解析したが、全ての粒でPLDを検出できなかった。また、図2において、レーン1、4は日本晴、レーン2はND0052、レーン3は03−s108のM4種子を示し、ここでも03-s108のM4種子のPLDを検出できなかった。
以上の結果から、03−s108では玄米中のPLDが欠失しているものと考えられた。03−s108はPLD欠失形質が後代においても確認され、新規なPLD欠失性イネ系統(受託番号FERM P−21231)とした。
[PLD欠失性イネ系統03−s108のPLD酵素活性の測定]
PLD酵素活性の測定は、Uekiら(Plant Cell Physiol.36:903-914,1995)の方法に従って、PLDがホスホジルコリンを分解する機構を指標に評価した。
まず、日本晴、ND0052および03−s108の完熟種子・玄米より、小型精米機パーレストでヌカ・胚芽画分を採取した。これらは、必要な時まで−30℃で保存した。
ヌカ・胚芽画分を所定の緩衝液に懸濁後に磨砕して、粗酵素画分と硫安で分画した画分を得た。粗酵素画分、硫安で分画した画分のタンパク質量は、Bio−Radのタンパク質定量試薬により行った。
ND0052のヌカ・胚芽画分由来の粗酵素画分には日本晴と同程度のPLD活性が認められたが、03−s108ではほとんどPLD活性は認められなかった(表1、図3)。
図3のチューブの番号1、5および7は日本晴、番号2、6および8はND0052、番号3は03−s108のM3種子、番号4は03−s108のM4種子を示す。またチューブの番号1〜4のタンパク質濃度は5mg/ml、番号5〜6は0.05mg/ml、番号7〜8は0.5mg/mlである。
以上の結果は、03−s108の玄米では、PLDがタンパク質としても、また酵素活性としても欠失していることを示しており、03−s108ではPLDが欠失しているものと考えられた。
Figure 2008245638
[PLD欠失性の遺伝的な解析]
PLD欠失性はどのような遺伝的特性により支配されているかを明らかにするために、03−s108にコシヒカリを交配し、そのF2種子中のPLDの有無をウエスタンブロッティングにより解析した。
コシヒカリの種子ではPLDが“有”であるのに対して、03−s108種子では“無”であり、従って表2において、コシヒカリ型は“PLD有り”、03−s108型は“PLD無し”を示す。F2種子では、PLDタンパク質の有:無は96粒:32粒であり、3:1に分離した(表2)。従って、PLDの欠失性は劣性の1遺伝子支配であると考えられた。
Figure 2008245638
F2種子中のPLDタンパク質の有無を調査したタンパク質抽出液より、DNAを抽出した。この抽出したDNAを鋳型にして、PLD5遺伝子へのTos17の挿入の有無を検定するPCRを行った。
プライマーはAGTGATTTTGCGGTTGTTCC(配列番号1)、CATTTTCAAGCAGCAGGTCA(配列番号2)およびGAGAGCATCATCGGTTACATCTTCTC(配列番号3)を用い、PCR条件は、98℃(2分)を1サイクル、[94℃(1分)−60℃(2分)−72℃(2分)]を30サイクル、[72℃(10分)−10℃(この状態で終了休止)]を1サイクル、で行った。PCR産物をアガロースで分離し、PCR産物の移動度からTos17の挿入の有無を解析した。
コシヒカリの種子ではTos17の挿入が“無”であるのに対して、03−s108種子では“有”であった。F2種子では、Tos17挿入の無:ヘテロ:有=36粒:56粒:33粒(χ=1.496、p=0.473)であり、Tos17の挿入は1遺伝子の劣性遺伝子支配であることが明らかになった(表3、表中のTos17(−)はTos17挿入無し、Tos17(±)はTos17の挿入に関してヘテロ、Tos17(+)はTos17挿入有り、を示す)。
Figure 2008245638
次に、上記PCR法により検定されたPLD5遺伝子へのTos17の挿入の有無と、上記ウエスタンブロッティングにより判定されたPLDの有無について、両者の遺伝的な関係を検討した。これら2形質(Tos17の有無/PLDの有無)について無/有:無/無:有/有:有/無が約9:3:3:1に分離したので、Tos17挿入およびPLDタンパク質無しの特性は2つの独立な劣性遺伝子により支配されると推定された。つまり、Tos17の挿入とは無関係にPLDタンパク質の有無が決定されると考えられた(表4、表中のTはTos17挿入無し、tはTos17挿入有り、PはPLD有り、pはPLD無し、を示す)。
Figure 2008245638
[スフェロゾームの顕微鏡観察]
各品種系統(日本晴、ND0052および03−s108)のヌカ・胚芽画分より、スフェロゾーム画分および粗酵素画分を調製した。調製は、高野克己らの方法(日本食品工業学会誌,36:468-474,1987)に従った。
スフェロゾーム画分に粗酵素画分を加え、35℃、処理後0時間、6時間、24時間後に光学顕微鏡を用いて観察した。
図4は、日本晴(パネルA、B、C)および03−s108(パネルD、E、F)のヌカ・胚芽画分より調製したスフェロゾームに、日本晴より調製した粗酵素画分をパネルB、Eのスフェロゾームに添加し、03−s108より調製した粗酵素画分をパネルC、Fのスフェロゾームに添加し、あるいは緩衝液をパネルA、Dをスフェロゾームに添加して、6時間、35℃で振とうしたときのスフェロゾームの構造を示す(光学顕微鏡を用いて200倍で観察)。
日本晴のスフェロゾームでは、粗酵素画分添加時点(処理後0時間)や緩衝液添加の場合(パネルA)でもスフェロゾーム膜の融合が認められた(図4の矢印は融合したスフェロゾームを示す)。緩衝液または粗酵素画分を添加したことによる日本晴スフェロゾーム膜融合の程度は「日本晴粗酵素>>03−s108粗酵素>緩衝液」(パネルB>>パネルC>パネルA)の順であった。
03−s108のスフェロゾームに緩衝液または粗酵素画分を添加した場合も、各添加試料による融合の効果は「日本晴>>03−s108>緩衝液」(パネルE>>パネルF>パネルD)であった。
また、日本晴と03−s108のスフェロゾーム画分に緩衝液を添加した場合、スフェロゾームの融合程度は「日本晴>>03−s108」(パネルA>>パネルD)であった。日本晴と03−s108のスフェロゾーム画分に日本晴の粗酵素画分を添加した場合、スフェロゾーム膜の融合程度は「日本晴>>03−s108」(パネルB>>E)であった。日本晴と03−s108のスフェロゾーム画分に03−s108の粗酵素画分を添加した場合も、スフェロゾーム膜の融合程度は「日本晴>>03−s108」(パネルC>>パネルF)であった。なお、処理後24時間においても、処理後6時間と同様の結果が得られた(データは示さず)。また、日本晴のスフェロゾームとND0052のスフェロゾームの膜の融合に関し、顕著な品種・系統間差は認められなかった。
以上の結果は、PLDを含む日本晴またはND0052の粗酵素画分をスフェロゾーム画分へ添加することにより、PLDがスフェロゾーム膜のホスファチジルコリンを分解し、結果的にスフェロゾーム膜の融合が生じること、日本晴のスフェロゾームにはPLDが吸着している可能性が高いことを示していると考えられた。
[マイクロサテライトマーカーによる連鎖分析]
実施例1でPLD欠失性系統03−s108を見出すために用いられたポリクローナル抗体は、コシヒカリの種子のPLD1タンパク質に対する抗体である。そのPLD1遺伝子はNCBIのアクセッションナンバーAB001920で登録されているので、PLD欠失性の変異がPLD1遺伝子の変異に由来しているかを明らかにするために、コシヒカリと03−s108を交配し、そのF2集団を用いて連鎖分析を行った。
PLD遺伝子を有するコシヒカリ型ホモの種子には、PLDが含まれるため、ウェスタンブロット分析ではシグナルが検出される。それに対し、PLD欠失性遺伝子を有する03−s108型ホモの種子には、PLDは含まれないため、ウェスタンブロット分析ではシグナルが検出されない。また、PLD欠失性遺伝子がヘテロの種子には、PLDが含まれるため、ウェスタンブロット分析ではシグナルが検出されるが、その自殖種子では、コシヒカリ型ホモ、ヘテロ、03−s108型ホモに分離するため、ウェスタンブロット分析でシグナルが検出される種子とシグナルが検出されない種子に分離する。
44個体のF2植物に実ったF3種子の胚芽抽出物をそれぞれ複数用いて、PLDの有無をウェスタンブロット分析で検出することによる後代検定により、F2植物の表現型を決定した。
連鎖分析には、International Rice Genome Sequencing Project(Nature436:793-800,2005)により公開されているマイクロサテライトマーカーのうち、PLD遺伝子の近傍に座乗するRM3453(短腕側から25.0cMに存在)を用いた。44個体のF2植物の葉からMurray and Thompson(Nucleic Acid Res.8:4321-4325,1980)の方法によりDNAを抽出し、これを鋳型としてPCRを行った。プライマーは、CTAAATGACAAAAGATAGCA(配列番号6)およびAAATTCTGACTTGTATGACA(配列番号7)を用いた。PCR条件は94℃(1分)を1サイクル、[94℃(30秒)―55℃(30秒)―72℃(30秒)]を40サイクル、[72℃(10分)―10℃(この状態で終了休止)]を1サイクルで行った。PCR産物を8%のポリアクリルアミドゲル(アクリルアミド:ビス=19:1)で分離し、PCR産物の移動度の差からそれぞれのDNAマーカーの遺伝子型を決定した。
ウェスタンブロット分析の結果、F2植物では、PLD欠失性の表現型がコシヒカリ型ホモ:ヘテロ:03−s108型ホモが12:19:13(χ=0.864,P=0.649)の分離比を示した。
マイクロサテライトマーカーRM3453での分析では、コシヒカリ型ホモ:ヘテロ:03−s108型ホモが13:17:14の分離比を示し、PLD欠失性との組換え個体は4個体だった(図5の星印)。組換え値は、1×4/(44×2)=4.5cMであった。すなわち、PLD欠失性遺伝子は、RM3453の近傍に座乗し、遺伝距離はRM3453から4.5cMであることが明らかになった(図6)。
[PLD欠失性遺伝子の塩基配列の決定]
PLD欠失性がPLD1遺伝子の変異によるものであるかを調査するため、03−s108のPLD遺伝子のエキソン部分の塩基配列を決定した。PLD1遺伝子の長さは約6000塩基であり、1組のプライマー対を用いたPCRでは全長の増幅が困難であるため、PLD遺伝子を4つの領域(PLD−1から4)に分けた。03−s108のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い、それぞれの増幅断片の塩基配列を決定した。プライマーは、PLD−1領域にはCGACGGACAGATACTTCTACCC(配列番号8)とCAAACAAGAAATGGCCAAGC(配列番号9)、PLD−2領域にはGTGTGTGATGTGTGCTTGTGTC(配列番号10)とTGGGTACTGTCGAGTGTCCTAA(配列番号11)、PLD−3領域にはACCTTGGTTAGGGACTCCAATC(配列番号12)とGGGAAGCATGACTTCAACTTAG(配列番号13)、PLD−4領域にはGAAGTCATGCTTCCCTTTACTC(配列番号14)とACGAGCCATAAACAATCACACC(配列番号15)を用いた。さらに、PLD1遺伝子(約6000塩基)の全塩基配列を決定するため、プライマーGGTGTGAGGCTTCAAACCTAG(配列番号25)とAGAGCAAGAGCAAAGACGAGTA(配列番号26)、プライマーCATTTTCCATCACATCAACT(配列番号27)とAAGAAGAAGGGGAGCAGA(配列番号28)、プライマーCGAGGAGGGAGCCAAATCCA(配列番号29)とCTCAGGGGTATCAGGGAACC(配列番号30)、プライマーCTGTGTGTGATGTGTGCTT(配列番号31)とTGAACAATGCTGCCTGAG(配列番号32)、プライマーGGGATGTTCTTTACAATTTCG(配列番号33)とAACAGATGATGAATGCCATGT(配列番号34)、プライマーCTGGCAAAGGAGAACAATG(配列番号35)とCAACAACGCTAAACAGTAG(配列番号36)とTCTTCTGCTCTCTAAATCTG(配列番号37)を用いた。PCR条件は94℃(1分)を1サイクル、[98℃(10秒)―68℃(1分)]を35サイクル、[72℃(3分)―4℃(この状態で終了休止)]を1サイクルで行った。得られたDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)で精製した。これを鋳型としてダイターミネーター法による反応を行い、ABI社製のDNAシークエンサーで塩基配列を決定した。得られた03−s108の塩基配列を配列番号22に示し、該塩基配列によりコードされるアミノ酸を配列番号23に示す。
03−s108の塩基配列(配列番号22)を、ND0052のPLD1の塩基配列(配列番号4)と比較した。なお、ND0052のPLD1の塩基配列は日本晴のPLD1の塩基配列と同じである。
ND0052のPLD1遺伝子の塩基配列(配列番号4)の2779番目の塩基のグアニン(G)が、03−s108ではアデニン(A)に変異していた(配列番号22の2776番目の塩基に該当)。この変異は、第3エキソンのトリプトファンを指定するコドン(TGG)を終止コドン(TGA)へと変異させるナンセンス変異であった。
03−s108では、このナンセンス変異により正常なPLDタンパク質が合成されなくなり、これがPLD欠失性を示す原因となると考えられた。
[PLD欠失性遺伝子の有無を判定する方法]
実施例6により見出されたグアニン(G)からアデニン(A)への変異は、制限酵素PsrIの認識部位(5’...(N)7TA(N)6GTTC(N)12...3’)の1つ目の塩基(下線を付したG)に起きている変異であるため、制限酵素PsrIを用いたCAPS法によって変異の検出を行った。また、任意の一塩基多型を検出できるドットブロットSNP法によっても変異の検出を行った。
(i)CAPS法
PCRにより目的の変異を含むDNA断片を増幅した。プライマーは、CACGTGAGCTCATGTCAACAGTTTG(配列番号16)とGCAGGTAAGCCCTCCCAATATTCG(配列番号17)を用いた。PCR条件は94℃(1分)を1サイクル、[94℃(30秒)―60℃(30秒)―72℃(30秒)]を35サイクル、[72℃(10分)―10℃(この状態で終了休止)]を1サイクルで行った。得られたDNA断片を制限酵素PsrIで切断し、6%のポリアクリルアミドゲルで電気泳動を行った。泳動後、ゲルをエチジウムブロマイドで染色し、ゲルに紫外線を照射してバンドの検出を行った。
CAPS分析の結果、コシヒカリでは切断された177、145、114、82、32bpのサイズのDNA断片を示すバンドが検出されるのに対して、03−s108では切断されない259bpのサイズのDNA断片を示すバンドが検出された(図7)。32個体からなるF2集団を分析した結果、9個体がコシヒカリ型ホモ、12個体が03−s108型ホモ、11個体がヘテロであった。また全ての個体においてホスホリパーゼD遺伝子の遺伝子型とウェスタンブロット分析による表現型が一致した(図7)。
(ii)ドットブロットSNP法
PCRにより目的の変異を含むDNA断片を増幅した。用いたプライマーとPCR条件は、CAPS法と同じである。Shirasawaら(Theor. Appl. Genet.113:147-155)の方法に従い、得られたDNA断片をナイロン膜にドットブロットし、競合プローブを用いたハイブリダイゼーションを行った。コシヒカリ型の対立遺伝子を検出するためのプローブには、5’末端をジゴキシゲニン標識したオリゴヌクレオチド(CCTCGCTGGTATGAGTC(配列番号18))と競合用プローブとして無標識のオリゴヌクレオチド(CCTCGCTGATATGAGTC(配列番号19))を1対5の濃度比で混合したものを用いた。逆に、03−s108型の対立遺伝子を検出するためのプローブには、5’末端をジゴキシゲニン標識したオリゴヌクレオチド(CCTCGCTGATATGAGTC(配列番号20))と競合用プローブとして無標識のオリゴヌクレオチド(CCTCGCTGGTATGAGTC(配列番号21))を1対5の濃度比で混合したものを用いた。ハイブリダイゼーションは42℃で、5×SSC、0.1%Sarcocyl、0.02%SDS、1%Blocking試薬(#1096176、Roche社)のバッファーで行い、洗浄液には42℃の0.5×SSC/0.1%SDSを用いた。
ドットブロットSNP分析の結果、コシヒカリ型の対立遺伝子を検出するプローブでハイブリダイゼーションを行った時には、コシヒカリに特異的なシグナルを得たほか、44個体のF2植物のうち31個体でシグナルを検出した(図8、A1とA5には03−s108、B1とB5にはコシヒカリのDNAをブロットした)。逆に、03−s108型の対立遺伝子を検出するプローブでハイブリダイゼーションを行った時には、03−s108に特異的なシグナルを得たほか、44個体のF2集団のうち31個体でシグナルを検出した(図8)。ヘテロでは、両方のプローブを用いたときにシグナルを検出した。これらの44個体のうち、コシヒカリ型の対立遺伝子を検出するプローブを用いた時にのみシグナルを検出した13個体のF2植物はコシヒカリ型ホモ、03−s108型の対立遺伝子を検出するプローブを用いた時にのみシグナルを検出した13個体のF2植物は03−s108型ホモ、および両方のプローブを用いた時にシグナルを検出した18個体のF2植物はヘテロである。また、全ての個体においてPLD1遺伝子の遺伝子型とウェスタンブロット分析による表現型が一致した(図8)。
(i)および(ii)の結果は、PLD欠失性が配列番号4に示されるPLD1遺伝子のナンセンス変異によるものであることを裏付けた。
本発明のイネ系統のPLDの有無を調べたウエスタンブロッティングを示す。 本発明のイネ系統のPLDの有無を調べたウエスタンブロッティングを示す。 本発明のイネ系統のPLD活性を示す。 パネルA〜Cは、日本晴のスフェロゾーム膜の融合を示す。パネルD〜Fは、03−s108のスフェロゾーム膜の融合を示す。 マイクロサテライトマーカーRM3453によるF2植物の連鎖分析の例を示す。 マイクロサテライトマーカーRM3453を含む連鎖地図を示す。 F2植物のCAPS法による分析の例を示す。 F2植物のドットブロットSNP法による分析の例を示す。

Claims (18)

  1. ホスホリパーゼD欠失性である、イネ系統(受託番号FERM P−21231)、その後代またはその交雑株。
  2. イネの種子を突然変異原で処理し、その種子を栽培して植物体にし、ホスホリパーゼD欠失について植物体をスクリーニングすることを含む、ホスホリパーゼD欠失性イネ系統の作出方法。
  3. 請求項1に記載のイネ系統とイネ野生型株を交配し、その種子を栽培して植物体にし、ホスホリパーゼD欠失について植物体をスクリーニングすることを含む、ホスホリパーゼD欠失性イネ系統の作出方法。
  4. 請求項1に記載のイネ系統から得た細胞とイネ野生型株から得た細胞を細胞融合し、得られた融合細胞を培養して植物体に再生し、ホスホリパーゼD欠失について植物体をスクリーニングすることを含む、ホスホリパーゼD欠失性イネ系統の作出方法。
  5. ホスホリパーゼD欠失が、ホスホリパーゼD遺伝子のナンセンス変異によるものである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 請求項1に記載のホスホリパーゼD欠失性である、イネ系統、その後代またはその交雑株の種子。
  7. 請求項6に記載の種子由来の米粉。
  8. 請求項6に記載の種子由来の米飯。
  9. 調理米飯である、請求項8に記載の米飯。
  10. 請求項6に記載の種子由来の米油。
  11. 請求項6に記載の種子から米ヌカを得、その米ヌカを搾ることを含む、米油の歩留まりを向上させる方法。
  12. 以下の(a)〜(e)のいずれかである、ホスホリパーゼD欠失性遺伝子。
    (a)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換された塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
    (b)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換され、かつ該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
    (c)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換され、かつ該塩基配列に対して95%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
    (d)配列番号4に示される塩基配列において2779番目の塩基のグアニンがアデニンに置換され、かつ該塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
    (e)配列番号22に示される塩基配列からなるDNAを含むホスホリパーゼD欠失性遺伝子
  13. 請求項12に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
  14. 請求項12に記載の遺伝子を植物細胞に導入して相同組換えを行い、植物を育成することを含む、ホスホリパーゼD欠失性形質転換植物の作出方法。
  15. 請求項13に記載の組換えベクターを用いてDNAが導入される、請求項14に記載の方法。
  16. 植物がイネ科植物である、請求項14または15に記載の方法。
  17. イネ科植物において、配列番号4に示される塩基配列における2779番目の塩基のグアニンからアデニンへの変異、あるいはそれに相当する位置の塩基のナンセンス変異を検出することを含む、請求項12に記載のホスホリパーゼD欠失性遺伝子の有無を判定する方法。
  18. 核酸試料について、CAPS法、ドットブロットSNP法、SSCP法、dCAPS法のいずれかの方法によって上記変異を検出する、請求項17に記載の方法。
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