JP2008243542A - 有機el装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機溶剤に対する溶解性が低い低分子系の有機EL材料を、液相法を応用することで画素領域に選択的に配するようにした、有機EL装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1電極111と第2電極との間に有機発光層110bを含む有機機能層を有した有機EL装置の製造方法である。第1電極111上に、溶媒132に可溶な分散材を液相法で成膜し、分散材膜130を形成する工程と、分散材膜130上に、溶媒132に不溶な有機発光材料を気相法で成膜し、有機発光材料膜131を形成する工程と、有機発光材料膜131上に溶媒132を配し、分散材膜130を溶媒132中に再溶解させるとともに、有機発光材料膜131を構成する有機発光材料を溶媒132中に分散させて液状層133とする工程と、液状層133を乾燥し、溶媒132を除去して分散材と有機発光材料とを固化し、有機発光層110bを形成する工程と、を備えている。
【選択図】図7

Description

本発明は、有機EL装置の製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子を備えてなる有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)は、低電圧で高輝度の発光が得られるとして注目されている。
ところで、このような有機EL装置における有機発光層を形成する有機EL材料(有機発光材料)としては、大きく分けて高分子系のものと低分子系のものとに分類される。高分子系材料は、有機溶媒に対する溶解性が比較的高く、したがってインクジェット法等の液滴吐出法による選択塗布が可能となり、材料の無駄がなく、また製造が容易であるなどの利点がある。
一方、低分子系材料は、高分子系材料に比べて発光特性に優れているものが多いものの、π共役系の広がりを確保するため剛直な骨格を有するものが多く、したがって有機溶媒に対する溶解性が一般的に低くなっている。特に、金属錯体等の低分子系材料では、有機溶媒に対する溶解性が非常に低くなっている。そのため、低分子系材料の多くは液滴吐出法等のウエットプロセス(液相法)には不向きであり、例えば抵抗加熱による真空蒸着法を用いたドライプロセス(気相法)で成膜されている。
しかしながら、製造コスト等を考えると、前記したように選択塗布(インクジェット法など)が可能である方が有利であり、したがって発光特性の良い低分子系材料を、液相法で成膜することが検討されている。
このような背景のもとに、特許文献1では、低分子系の有機EL材料の溶解性を向上させるため、この有機EL材料にアルキル側鎖等を修飾し、有機溶剤に対する溶解性を高めることで液相法での成膜を可能にした材料が提案されている。
特開2000−281663号公報
しかしながら、溶解性を向上させるため有機EL材料にアルキル側鎖等を導入することは、有機EL材料の熱安定性の低下やキャリア輸送性(導電性)の低下を招き、素子特性、特に寿命を損なう要因になってしまう。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、有機溶剤に対する溶解性が低い低分子系の有機EL材料を、アルキル側鎖等を導入することなく、液相法を応用することで画素領域に選択的に配するようにした、有機EL装置の製造方法を提供することにある。
本発明の有機EL装置の製造方法は、第1電極と第2電極との間に少なくとも有機発光層を含む有機機能層を有した有機EL装置の製造方法であって、前記第1電極上に、溶媒に可溶な分散材を液相法で成膜し、分散材膜を形成する工程と、前記分散材膜上に、前記溶媒に不溶な有機発光材料を気相法で成膜し、有機発光材料膜を形成する工程と、前記有機発光材料膜上に前記溶媒を配し、前記分散材膜を該溶媒中に再溶解させるとともに、前記有機発光材料膜を構成する有機発光材料を該溶媒中に分散させて液状層とする工程と、前記液状層を乾燥し、該液状層中の溶媒を除去して前記分散材と前記有機発光材料とを固化し、有機発光層を形成する工程と、を備えたことを特徴としている。
この有機EL装置の製造方法によれば、例えば低分子系の有機発光材料(有機EL材料)のように溶媒に対する溶解性が低い材料でも、これを気相法で分散材膜上に成膜した後、溶媒で前記分散材膜を再溶解させることにより、前記有機発光材料膜を構成する有機発光材料を該溶媒中に分散させることができる。したがって、その後この溶媒を含む液状層を乾燥し、該液状層中の溶媒を除去して前記分散材と前記有機発光材料とを固化することにより、前記分散材中に前記有機発光材料が分散した有機発光層を形成することができる。
このように、溶媒に対する溶解性が低い有機発光材料を、分散材の再溶解によって該分散材中に分散させることができるので、結果的に液相法を応用して前記有機発光材料を画素領域に選択的に配することができるようになる。
また、このようにして形成された有機発光層は、有機発光材料が分散材中に分散しているので、濃度消光がない良好な発光特性を有するものとなる。
また、前記の有機EL装置の製造方法においては、前記分散材膜を形成する工程の前に前記第1電極上に正孔注入層を形成する工程を有し、前記分散材膜を、前記正孔注入層上に形成するのが好ましい。
このようにすれば、第1電極と有機発光層との間に正孔注入層が介在することにより、第1電極を陽極とすることで有機発光層により良好に正孔が注入されるようになる。
また、前記の有機EL装置の製造方法においては、前記分散材はキャリア輸送性を有しているのが好ましい。
分散材がキャリア輸送性、すなわち正孔輸送性あるいは電子輸送性を有することにより、有機発光層の導電性が良好になる。したがって、第1電極あるいは第2電極から移動してきた正孔あるいは電子を、この有機発光層内でより良好に移動させ、前記有機発光材料に輸送することができる。
また、前記の有機EL装置の製造方法においては、前記第1電極を区画する隔壁部を形成する工程を有し、前記分散材膜を形成する工程は、前記隔壁部で区画された領域の前記第1電極上に分散材膜を形成するのが好ましい。
このようにすれば、隔壁部で区画された領域、すなわち隔壁部内で、分散材の再溶解、発光材料の溶媒中への分散を行うことができる。したがって、隔壁部で囲まれた領域毎に、前記分散材中に前記有機発光材料が分散してなる有機発光層を確実に形成することができる。
また、前記の有機EL装置の製造方法においては、前記有機発光材料膜上に前記溶媒を配する際、該溶媒を液滴吐出法により、前記隔壁部で区画された領域に選択的に配するのが好ましい。
このようにすれば、前記溶媒を前記隔壁部内に、容易にかつ正確に配することができる。
また、前記の有機EL装置の製造方法においては、前記溶媒に不溶な有機発光材料を気相法で成膜し、有機発光材料膜を形成する工程は、マスクを用いた真空蒸着法により、前記分散材膜上に前記有機発光材料を選択的に配することで行うのが好ましい。
マスクを用いた真空蒸着法による選択的な成膜では、マスクの合わせずれを無くすのが困難となる場合が多いが、この方法では、一旦形成した有機発光材料膜を、前記したように後工程において溶媒中に分散させるため、形成した有機発光材料膜についてはその位置ずれが問題とならない。したがって、成膜時のマージンが大きく、これにより真空蒸着法による選択的成膜を容易に行うことができる。
以下、本発明を図面を参照して詳しく説明する。
まず、本発明の有機EL装置の製造方法の説明に先立ち、この方法で製造される有機EL装置の概略構成について説明する。なお、本実施形態では、参照する各図面における各層や各部材については、図面上で認識可能な程度の大きさとするため、それぞれ縮尺を異ならせて記載している。
(有機EL装置)
図1は、本発明の製造方法により製造された有機EL装置の、配線構造を示す等価回路図、図2は、該有機EL装置を模式的に示す平面図、図3は、該有機EL装置の表示領域を模式的に示す要部側断面図である。
図1に示すように、本発明に係る有機EL装置は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ設けられた構成を有している。走査線101及び信号線102の各交点付近には、画素領域Pが設けられている。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
画素領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(陽極;第1電極)111と、この画素電極111と対向電極(陰極;第2電極)12との間に位置する有機機能層110とが設けられている。そして、画素電極111および対向電極12と、これらの間に挟持された有機機能層110とにより、有機EL素子が構成されている。
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、さらに有機機能層110を介して陰極12に電流が流れる。すると、有機機能層110では流れる電流量に応じて発光する。
この有機EL装置は、図3に示すようにガラス等からなる透明な基板2と、前記有機EL素子を基板2上にマトリックス状に配置して形成されたEL素子部11と、EL素子部11上に形成された陰極12とを備えて構成されたものである。
基板2は、図2に示すようにその中央に位置する表示領域2aと、周縁に位置して表示領域2aを囲む非表示領域2cとに区画されている。なお、表示領域2aは、マトリックス状に配置された有機EL素子によって形成された領域であり。
また、非表示領域2cには、前記の電源線103が配設されており、表示領域2aの両側には、前記の走査側駆動回路105、105が配置されている。さらに、走査側駆動回路105、105の両側には、走査側駆動回路105、105に接続する駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。表示領域2aの図示上側には製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行う検査回路106が配置されている。
また、この有機EL装置には、図3に示すように基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機機能層110が形成されたEL素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されている。ここで、この有機EL装置は、有機機能層110から基板2側に発した光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射するとともに、有機機能層110から基板2の反対側に発し光が、陰極12で反射して回路素子部14及び基板2を透過し、基板2の下側(観測者側)に出射する、ボトムエミッション型となっている。なお、前記陰極12として透明な材料を用いれば、陰極側から発光光を出射するトップエミッション型とすることもできる。透明な陰極材料としては、ITO(インジウムスズ酸化物)、Pt、Ir、Ni、Pd等を挙げることができる。
基板2上にはシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成されており、この下地保護膜2c上に、回路素子部14が形成されている。この回路素子部14には、多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が前記下地保護膜2c上に形成されており、この半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bと、チャネル領域141cとが形成されている。
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は、半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bには、これらを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ通じるコンタクトホール145,146が形成されている。
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極(第1電極)111が所定の形状にパターニングされて形成されており、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に通じている。また、他方のコンタクトホール146は電源線103に通じている。このような構成により、回路素子部14には各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
EL素子部11は、各画素電極111を区画してその内部に画素領域を形成する隔壁部112と、該隔壁部112の内部にて前記画素電極111上に形成された有機機能層110とを有して構成されている。隔壁部112は、基板2側に設けられたSiO等からなる無機隔壁112aと、この無機隔壁112aに設けられたアクリル樹脂等からなる有機隔壁112bとによって構成されている。これら隔壁部112および有機機能層110上には、これらを覆って陰極(第2電極)12が設けられている。なお、無機隔壁112aには、画素電極111を露出させる下部開口部が形成されており、有機隔壁112bには、前記の下部開口部に連通する上部開口部が形成されている。
隔壁部112の内部、すなわち前記下部開口部および上部開口部の内部に形成された有機機能層110は、画素電極111上に設けられた正孔注入層110aと、正孔注入層110a上に形成された有機発光層110bとから構成されている。
正孔注入層110aは、有機発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入層110a内部において正孔を輸送する機能を有している。また、有機発光層110bでは、正孔注入層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子とが再結合し、発光するようになっている。したがって、正孔注入層110aを画素電極111と有機発光層110bとの間に設けることにより、有機発光層110bに正孔がより良好に注入されるようになり、有機発光層110bの発光特性が向上する。
ここで、正孔注入層110aの形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルフォン酸との混合物、具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸[PEDOT/PSS]の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオシチオフェンを分散させ、さらにこれを水等に分散させた分散液などが用いられる。
また、有機発光層110bは、分散材中に有機発光材料が分散してなるものである。この有機発光層110bの形成材料としては、有機溶媒と、この有機溶媒に可溶な分散材と、この有機溶媒に不溶な有機発光材料(有機EL材料)とが用いられている。有機溶媒としては、特に限定されることなく種々のものが用いられるが、後述するように有機発光層110bが正孔注入層110a上に形成されることから、この正孔注入層110aを再溶解させないよう、例えば非極性の有機溶媒が好適に用いられ、具体的には、キシレンやシクロヘキシルベンゼンなどが好適に用いられる。
分散材としては、前述したように前記有機溶媒に対して良好な溶解性を有する有機材料が用いられる。その溶解性については、常温で0.1重量%以上溶解するものであればよいが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上溶解するものが用いられる。この分散材としては、キャリア輸送性、すなわち正孔輸送性あるいは電子輸送性を有しているのが好ましく、このようにキャリア輸送性を有することにより、有機発光層110bの導電性を高めることができる。このような分散材としては、例えば正孔輸送性を有するポリ(N−ビニルカルバゾール)[PVK]や、2-(4-tert-Butylphenyl)-5-(4-biphenylyl)-1,3,4-oxadiazol等のオキサジアゾール誘導体等が好適に用いられる。
有機発光材料としては、前述したように前記有機溶媒に対して不溶な、すなわち溶解性が極めて低い有機材料が用いられる。その溶解性については、常温で10重量%以上溶解しないものであればよいが、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下しか溶解しないものが用いられる。このような有機発光材料として具体的には、電子輸送性を有する8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体[Alq3]や、トリス−2−フェニルピリジン−イリジウム[Ir(ppy)3]、さらには、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子系材料が好適に用いられる。
なお、本発明においては、有機発光層110bは単色の発光をなすものであってもよく、また、赤色、緑色、青色の三色の発光をなし、これによってフルカラー表示を可能にするものであってもよい。フルカラー表示を行う場合、前記隔壁部112で区画されてなる領域毎に、赤色発光をなす有機発光層110bと緑色発光をなす有機発光層110bと青色発光をなす有機発光層110bとを適宜に配置し、これら赤・緑・青の発光層を一つの画素とすることにより、フルカラー表示をなすことができる。
陰極12は、EL素子部11の全面に形成されたもので、画素電極111と対になって有機機能層110に電流を流す役割を果たしている。この陰極12は、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とがこの順に積層されて構成されている。アルミニウム層は、発光層110bから発した光を基板2側に反射させる反射膜としても機能するものである。なお、Al膜に代えて、Ag膜、AlとAgの積層膜等を用いることもできる。さらにアルミニウム層上に、SiO、SiO、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けてもよい。
また、発光層110bと陰極12との間にLiF等の電子注入・輸送層を設け、発光効率をより高めるようにしてもよい。
なお、図3に示すEL素子部11上には、図示しないものの封止部が備えられる。この封止部は、例えば基板2の周囲に環状に封止樹脂を塗布し、さらに封止缶によって封止することで形成することができる。前記封止樹脂は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止部は、陰極12またはEL素子部11内に形成された発光層の酸化を防止する目的で設けられる。また、前記封止缶の内側には水、酸素等を吸収するゲッター剤を設け、封止缶の内部に侵入した水又は酸素を吸収できるようにしてもよい。
(有機EL装置の製造方法)
次に、前記有機EL装置を製造方法に基づいて、本発明の有機EL装置を製造方法の一実施形態を説明する。
本実施形態の製造方法は、(1)隔壁部形成工程、(2)隔壁部表面処理工程(撥液化工程)、(3)正孔注入層形成工程、(4)有機発光層形成工程、(5)陰極形成工程及び(6)封止工程等を有する。
(1)隔壁部形成工程
まず、従来と同様にして画素電極111までを形成した基板2を用意し、この基板2の所定位置、すなわち画素電極11を区画する位置に、図4に示すように隔壁部112を形成する。この隔壁部112の形成については、従来と同様に無機隔壁112aを形成し、続いて有機隔壁112bを形成することで行う。
(2)隔壁部表面処理工程
次に、形成した隔壁部112及び画素電極111を表面処理する。具体的には、酸素ガスを用いたOプラズマ処理によって画素電極111表面を親液化し、その後、テトラフルオロメタンを用いたCFプラズマ処理によって隔壁部112表面を撥液化する。
(3)正孔注入層形成工程
次に、前記隔壁部112内の前記画素電極111上に、正孔注入層110aを形成する。
この正孔注入層形成工程では、正孔注入層形成材料として前記PEDOT/PSSを水とN−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンで分散させたインク組成物を用い、これをインクジェット法(液滴吐出法)で前記隔壁部112内に選択的に吐出し、その後乾燥することで正孔注入層110aを形成する。
すなわち、図5に示すようにインクジェットヘッドH1に形成された複数のノズルから前記インク組成物110cを吐出し、隔壁部112内の画素電極111上に配する。その後、このインク組成物110cを乾燥して溶媒を蒸発させ、図6に示すように厚さ50nm程度の正孔注入層110aを形成する。乾燥処理の条件としては、例えば真空乾燥を行った後、大気中にて180℃で10分程度加熱処理を行うものとする。
(4)有機発光層形成工程
次に、前記隔壁部112内の前記正孔注入層110a上に、有機発光層110bを形成する。この有機発光層形成工程は、前記の分散材からなる膜を形成する工程と、前記の有機発光材料からなる膜を形成する工程と、前記の分散材からなる膜を再溶解させる工程と、その後乾燥して有機発光層110bを形成する工程とからなる。
まず、前記隔壁部112内の前記正孔注入層110a上に、前記分散材を有機溶媒に溶解したインク組成物をインクジェット法(液滴吐出法)で吐出し、その後真空乾燥して該インク組成物中の有機溶媒を除去し、図7(a)に示すように厚さ50nm〜数百nm程度の分散材膜130を形成する。本実施形態では、前記インク組成物として、ポリ(N−ビニルカルバゾール)[PVK]をキシレン(沸点140℃)とシクロヘキシルベンゼン(沸点237.5℃)とで溶解したものを用い、これによってポリ(N−ビニルカルバゾール)[PVK]からなる分散材膜130を得る。
次に、前記分散材膜130上に、マスクを用いた真空蒸着法(気相法)によって前記有機発光材料を選択的に成膜し、図7(b)に示すように厚さ3nm程度の有機発光材料膜131を形成する。本実施形態では、有機発光材料として8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体[Alq3]を用いることにより、このAlq3からなる有機発光材料膜131を得る。
ここで、この有機発光材料の真空蒸着では、形成する有機発光材料膜131の膜厚を3nm程度としていることから、この気相法での処理時間が従来に比べ大幅に短くなる。すなわち、低分子系材料によって有機発光層を形成する従来の場合では、真空蒸着法によってこの有機発光層を50nm程度の厚さに成膜するため、この処理に数十分を要してしまい、生産性を損なう一因になっている。これに対して本実施形態では、前記したように有機発光材料膜131の膜厚を3nm程度としていることから、その処理時間が大幅に短くなっている。
また、マスクを用いて有機発光材料を前記分散材膜130上に選択的に配しているものの、ここで形成する有機発光材料膜131については、後述する再溶解工程で溶媒中に分散させてしまうため、その位置ずれや膜の均一性などについてあまり考慮する必要はない。したがって、この有機発光材料膜131の成膜に関しては、成膜時のマージンが大きく、これにより真空蒸着法による選択的成膜を容易に行うことができる。
次いで、図7(c)に示すように前記有機発光材料膜131上に、前記分散材を溶解し、かつ前記有機発光材料を溶解しない有機溶媒132、本実施形態では分散材膜130を形成するためのインク材料に用いたキシレンおよびシクロヘキシルベンゼンからなる混合溶媒を、インクジェット法(液滴吐出法)で選択的に配する。すると、前記有機発光材料膜131は前記有機溶媒132には溶解しないものの、3nm程度と非常に薄いことから、前記有機溶媒132はこれを透過してその下地の分散材膜130に浸透する。このようにして有機溶媒132が分散材膜130に浸透すると、分散材膜130は該溶媒132中に再溶解する。すると、有機発光材料膜131は非常に薄く、その下地側が再溶解して溶液状になっているので、この有機発光材料膜131も膜構造を維持できず、この有機発光材料膜131を構成する有機発光材料は微粉末状になって図7(d)に示すように前記溶媒132中に分散する。これにより、溶媒132は分散材を溶解しかつ有機発光材料を分散させてなる液状層133となる。
その後、前記液状層133を再度真空乾燥処理し、さらに窒素雰囲気にて90℃で30分程度の加熱処理を行うことにより、図7(e)に示すように溶媒132を除去し、分散材中に有機発光材料が分散してなる有機発光層110bを得る。これにより、正孔注入層110aと有機発光層110bとからなる有機機能層110が得られる。
(5)陰極形成工程
次に、前記有機発光層110bおよび隔壁部112の全面を覆って電子注入層として機能するLiF層を厚さ2nm程度に形成し、さらにその上にCa層を厚さ20nm程度、Al層を厚さ200nm程度に順次積層し、これによって図8に示すように陰極12を形成する。
(6)封止工程
その後、エポキシ樹脂系の接着剤、よびガラス基板を用いて封止を行い、有機EL装置を得る。
このようにして得られた有機EL装置を、その画素電極111(第1電極)と陰極12(第2電極)との間に電圧を印加することで発光させたところ、Alq3に由来する緑色の良好な発光が観察された。したがって、本発明によって得られた有機EL装置は良好な発光をなすことが確認された。また、特に発光面についても観察したところ、Alq3の凝集などに由来する不均一な発光が観察されず、したがってAlq3が有機発光層110b中に均一に分散していることが確認された。
このような有機EL装置の製造方法にあっては、Alq3のような低分子系の有機発光材料のように溶媒に対する溶解性が低い材料でも、これを気相法で分散材膜130上に成膜した後、溶媒132で分散材膜130を再溶解させることにより、有機発光材料膜131を構成する有機発光材料を該溶媒132中に分散させることができる。したがって、その後この溶媒132を含む液状層133を乾燥し、該液状層133中の溶媒を除去して分散材と有機発光材料とを固化することにより、分散材中に有機発光材料が均一に分散した有機発光層110bを形成することができる。
このように、溶媒に対する溶解性が低い有機発光材料を、分散材の再溶解によって該分散材中に分散させることができるので、結果的に液相法を応用して前記有機発光材料を画素領域に選択的に配することができるようになり、したがって従来では困難であった低分子系有機発光材料の液相法での成膜が可能となる。
また、このようにして形成された有機発光層110bは、有機発光材料が分散材中に分散しているので、濃度消光がない良好な発光特性を有するものとなる。すなわち、有機発光材料の濃度が高いと有機発光材料の分子間で相互作用が起こり、発光特性が低下するといった濃度消光が起こるものの、本発明による有機発光層110bは有機発光材料が分散材中に分散しているので、有機発光材料の分子間で相互作用がほとんど起こらず、したがって濃度消光が防止されたものとなり、良好な発光特性を有するものとなる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しな範囲で種々の変更が可能である。
例えば、有機発光層110bを形成する際に用いる各材料についても、前記したもの以外に種々のものが使用可能である。具体的には、前記分散材膜130を形成する際のインク材料としては、分散材として(N−ビニルカルバゾール)[PVK]と2-(4-tert-Butylphenyl)-5-(4-biphenylyl)-1,3,4-oxadiazolとを7:3の重量比で混合し、これらをキシレンおよびシクロヘキシルベンゼンからなる混合溶媒に溶解したものを用いることができる。
また、有機発光材料膜131を形成するための有機発光材料としては、トリス−2−フェニルピリジン−イリジウム[Ir(ppy)3]を用いることができる。
そして、これら各材料によって分散材膜130、有機発光材料膜131を形成した後、溶媒132としてキシレンおよびシクロヘキシルベンゼンからなる混合溶媒をインクジェット法(液滴吐出法)で選択的に配し、再溶解を行う。その後、乾燥・加熱処理を行うことにより、有機発光層110bを形成する。
このようにして有機発光層110bを形成しても、得られた有機EL装置は、Ir(ppy)3由来の良好な燐光発光が得られた。したがって、この有機EL装置も良好な発光をなすことが分かった。
(電子機器)
図9は、本発明の方法により製造された有機EL装置を用いた電子機器の一例を示す図である。本例の電子機器は、前述した方法によって製造された図3に示す有機EL装置を表示手段として備えている。ここでは、携帯電話の一例を斜視図で示しており、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は前記の有機EL装置を用いた表示部を示している。このように有機EL装置を表示手段として備える電子機器では、良好な表示特性を得ることができる。
本発明に係る方法により製造された有機EL装置の等価回路図。 図1に示した有機EL装置を模式的に示す平面図。 図1に示した有機EL装置の表示領域を模式的に示す要部側断面図。 実施形態に係る製造方法の工程説明図。 実施形態に係る製造方法の工程説明図。 実施形態に係る製造方法の工程説明図。 (a)〜(e)は実施形態に係る製造方法の工程説明図。 実施形態に係る製造方法の工程説明図。 電子機器の一例を示す斜視構成図。
符号の説明
2…基板、12…陰極(第2電極)、110…有機機能層、110a…正孔注入層、110b…有機発光層、111…画素電極(第1電極)、112…隔壁部、130…分散材膜、131…有機発光材料膜、132…溶媒、133…液状層

Claims (6)

  1. 第1電極と第2電極との間に少なくとも有機発光層を含む有機機能層を有した有機EL装置の製造方法であって、
    前記第1電極上に、溶媒に可溶な分散材を液相法で成膜し、分散材膜を形成する工程と、
    前記分散材膜上に、前記溶媒に不溶な有機発光材料を気相法で成膜し、有機発光材料膜を形成する工程と、
    前記有機発光材料膜上に前記溶媒を配し、前記分散材膜を該溶媒中に再溶解させるとともに、前記有機発光材料膜を構成する有機発光材料を該溶媒中に分散させて液状層とする工程と、
    前記液状層を乾燥し、該液状層中の溶媒を除去して前記分散材と前記有機発光材料とを固化し、有機発光層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
  2. 前記分散材膜を形成する工程の前に前記第1電極上に正孔注入層を形成する工程を有し、前記分散材膜を、前記正孔注入層上に形成することを特徴とする請求項1記載の有機EL装置の製造方法。
  3. 前記分散材はキャリア輸送性を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法。
  4. 前記第1電極を区画する隔壁部を形成する工程を有し、前記分散材膜を形成する工程は、前記隔壁部で区画された領域の前記第1電極上に分散材膜を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
  5. 前記有機発光材料膜上に前記溶媒を配する際、該溶媒を液滴吐出法により、前記隔壁部で区画された領域に選択的に配することを特徴とする請求項4記載の有機EL装置の製造方法。
  6. 前記溶媒に不溶な有機発光材料を気相法で成膜し、有機発光材料膜を形成する工程は、マスクを用いた真空蒸着法により、前記分散材膜上に前記有機発光材料を選択的に配することで行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の有機EL装置の製造方法。
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