JP2008240000A - 樋耐火物の熱膨張に対応した樋構造および樋周辺構造 - Google Patents

樋耐火物の熱膨張に対応した樋構造および樋周辺構造 Download PDF

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Masanori Furukawa
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Abstract

【課題】高価で特殊な鋼製樋枠を用いることなく、従来のコンクリート製樋枠を使用でき、かつ、防熱構造を備えた高炉鋳床樋の構造および樋周辺の構造を提供する。
【解決手段】高炉の鋳床に設置される樋において、鉄筋コンクリート製凹型樋枠1内に施工する樋耐火物4または背面充填材3と該樋枠の内壁面との境界2に、粒子充填層、空隙、および可縮性を有する緩衝材のうち、少なくとも一つを設置した樋構造である。また、樋屈曲部において、鉄筋コンクリート製凹型樋枠の屈曲部外周側の樋壁の外側に鉄骨柱を設け、樋壁と鉄骨柱とを水平材または機械的ダンパーにより接続する樋周辺の構造である。さらに、鉄筋コンクリート製凹型樋枠の樋壁上面と鋳床面との間は、鋳床支持柱に横架された下地材に、Z型形状の金物が取り付けられ1枚当たりの幅が1.5〜2mの防熱板を並列して懸架することにより樋ピット側壁を構成した樋周辺の構造である。
【選択図】図1

Description

本発明は、高炉から出銑滓される溶銑や溶滓などの高温流動体が流れる樋における鉄筋コンクリート製の凹型樋枠構造、その周辺に配置される鋳床支持構造、および防熱構造に関するものである。
高炉設備である鋳床には、高炉からの出銑滓により流出する溶銑や溶滓などの高温流動体を取扱うための設備が配置されており、溶銑や溶滓などを比重差により分離して、搬送車などの注入口まで導くために、主樋、溶銑樋、溶滓樋などの樋が構築されている。
図7は、従来の一般的な樋の横断面図である。同図に見られるように、樋は、その上面に高温流動体を流すことから、樋耐火物4および背面充填材3の耐火材と、それらを構造的に支持し、かつその外殻となる鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠(以下、「鉄筋コンクリート製凹型樋枠」とも記す)1により構成されており、各々が隙間のない積層構造となっている。
樋耐火物4は高温流動体に直接接するため、樋耐火物4としては、耐熱性および耐食性に優れた材質からなる耐火材が使われ、背面充填材3には、樋耐火物4の外側と鉄筋コンクリート製凹型樋枠1の内側との間を充填する耐火材であることから、比較的低品質な材料が使われる。樋は性能とコストとのバランスを考慮しながら、これらを組み合わせて厚さなどが決定される。
なお、以下の記載においては、鉄筋コンクリート製凹型樋枠1の垂直部分を「壁」と、また、凹型形状の水平部分を「底」と称することにする。
図8は、従来の一般的な樋とその周辺構造の横断面図である。鋳床構造を鉄骨造とした場合の鉄筋コンクリート製凹型樋枠周辺構造の従来例の多くは、同図に示すように、鋳床支持柱6と鉄筋コンクリート製凹型樋枠1の壁とが一体となる構造により構成されている。また、図9には、従来の別の一般的な樋とその周辺構造の横断面図を示す。鋳床支持柱6と鉄筋コンクリート製凹型樋枠1の壁とが、同図に示されるように設置されているタイプの多くは、鋳床支持柱6の内側と鉄筋コンクリート製凹型樋枠1の壁の外側とが接するように構成されている。
鉄筋コンクリート製凹型樋枠1の壁と鋳床支持梁7との隙間は、従来、図9に示すように鋼板製の防熱板9が鋳床支持柱6に溶接され、防熱板9の相互間についても、継目部分は隙間なく溶接によって接続され、張り付けられている。
前述の図7〜図9に示された樋構造においては、溶銑や溶滓などの高温流動体からの伝導、対流および輻射の各伝熱により高温状況下に曝されることに起因する下記の(1)〜(3)の問題があった。すなわち、
(1)前記の図7に示される構造においては、溶銑や溶滓などの高温流動体からの伝熱により高温になった樋耐火物および背面充填材は、高温流動体の流れる方向(以下、「樋軸方向」とも記す)に大きく熱膨張し、特に樋屈曲部の外側の鉄筋コンクリート製凹型樋枠壁を外側に押出し、屈曲部に亀裂を生じさせ、さらには、外側樋壁を倒壊に至らしめていた。
(2)前述した図8または図9に示される樋構造においては、上記(1)と同様の熱膨張による樋壁の変形により、鋳床支持柱を変形させ、鋳床の支持に支障をきたしていた。
(3)前述した図9に示されるように、鉄筋コンクリート製凹型樋枠の壁と鋳床支持梁との隙間に鋼板製の防熱板が取り付けられている構造においては、溶銑や溶滓などの高温流動体からの輻射熱などによって防熱板が熱膨張し、取り付けられている鋳床支持柱や鋳床支持梁を変形させ、鋳床の支持に支障をきたしていた。
このように、鉄筋コンクリート製凹型樋枠壁の倒壊や鋳床の支持に支障をきたした場合には、これらを緊急に修復する必要がある。したがって、その間の高温流動体の取り扱いは困難となるため、高炉の計画出銑量を維持できなくなっていた。
上記のような樋構造の問題点に対し、例えば特許文献1や特許文献2には、鉄筋コンクリート製凹型樋枠に替えて鋼製の樋枠を採用することにより、鉄筋コンクリート樋枠で発生する問題を解決する手段が開示されている。
特許文献1には、熱膨張に対し上下左右に伸縮自在な接合部を介して壁板と胴縁と支柱を組み上げた鋼製樋壁構造が開示されている。また、特許文献2には、樋流れ方向と直角方向に伸長する複数の角型鋼管を樋底部に設置して樋床を構成した鋼製樋床構造が開示されている。
特開平11−269517号公報(特許請求の範囲および段落[0005]) 特開2003−293018号公報(特許請求の範囲および段落[0021]〜[0032])
本発明は、前述した従来の樋構造および樋周辺の構造の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、高価で特殊な鋼製樋枠を採用することなく、従来の鉄筋コンクリート製凹型樋枠を使用し、コンクリート製樋枠の有する問題に対して、下記の(1)〜(6)に示す技術を提供することにある。すなわち、
(1)樋耐火物および背面充填材を構造的に支持し、かつ、その外殻となる樋枠に鉄筋コンクリートなどの非弾性材料を用いた場合においても、特に樋の屈曲部において、樋耐火物および背面充填材の熱膨張によって面外に押し出す力が鉄筋コンクリート樋枠壁へ伝達するのを遮断し、鉄筋コンクリート樋枠が亀裂などの脆性的破壊を起こして倒壊するのを防止する手段を提供する。
さらに詳しくは、下記の手段を提供することにある。すなわち、
(2)上記(1)にて述べた鉄筋コンクリート製凹型樋枠への熱負荷を軽減し、
(3)上記(1)の鉄筋コンクリート樋枠の脆性的破壊による倒壊の防止が、何らかの要因により一時的に達成できない場合に、鉄筋コンクリート樋枠凹型壁の変位を弾性的に支持し、かつ樋耐火物および背面充填材の温度低下にともなう収縮に追従し、変位を元に戻すことにより、
(4)樋枠の熱膨張による変位などの挙動が鋳床支持柱などの建築構造体に変形などの悪影響を与えることを防止する手段を提供する。
また、
(5)鉄筋コンクリート製凹型樋枠壁の上部と鋳床支持梁との隙間に設置される防熱板の熱膨張による変位などの挙動が鋳床を支持する柱などの建築構造体に変形などの悪影響を与えることを防止し、
(6)上記(5)における鋼板製の防熱板が熱変形によってその機能に支障をきたした場合に、容易にその交換を行うことができる手段を提供する。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、高価で特殊な鋼製樋枠を採用することなく、従来の鉄筋コンクリート製凹型樋枠の有する問題を解決できる樋枠構造、その周辺に配置される鋳床支持構造、および防熱構造に関して研究開発を重ね、下記の(a)〜(f)に示す知見を得て本発明を完成させた。
(a)高炉の鋳床に設置され、溶銑や溶滓などの高温流動体が流れる樋において、鉄筋コンクリート製凹型樋枠内に施工する樋耐火物または背面充填材と樋枠壁面との境界部分に、潰れやすいポーラスな物質、または適度な空隙、あるいは可縮性の高い弾性的物質を挿入する。これにより、樋耐火物および背面充填材が熱膨張した場合にも、上記の各物質または空隙が収縮してその膨張変位を吸収し、鉄筋コンクリート樋壁への応力の伝達を緩和または遮断することができる。
(b)樋耐火物または背面充填材と樋枠壁面との境界部分に前記(a)の各物質および空隙の層を設けることにより、鉄筋コンクリート構造への伝熱を緩和し、熱負荷も軽減することができる。
(c)特に、樋屈曲部外側の鉄筋コンクリート製樋壁外側に鋳床を支持する柱とは別に鉄骨柱を設け、水平材により接続するか、または樋壁を水平方向に支持する機械的ダンパーを設けることにより、下記の効果が得られる。すなわち、鉄筋コンクリート製樋壁に、熱膨張に起因する応力が伝達し、一部の脆性的な亀裂などにより変位した場合においても、樋耐火物および背面充填材の温度下降時の収縮に追従して、その変位を弾性的に押し戻すことができる。また、その後、修復を行わなくても、一部の脆性亀裂などをエキスパンション構造として、樋の外殻としての機能を維持することができる。
(d)鉄筋コンクリート製樋壁外面と鋳床を支持する柱などの建築構造体との間に適度な空隙を設けることにより、鉄筋コンクリート製樋壁に、熱膨張による応力が伝達し、一部の脆性亀裂などにより変位した場合においても、鋳床を支持する柱の変形など、建築構造体への悪影響を回避することができる。
(e)鉄筋コンクリート製凹型樋枠の樋壁上面と鋳床面の間には、鋳床を支持する柱に横架した下地材に、Z型金物を取り付けた防熱板を懸架して樋ピット側壁を構成することにより、防熱板の熱膨張に起因する鋳床支持柱の変形などを防止し、建築構造体への悪影響を防止することができる。
(f)上記(e)のように樋ピット側壁を構成することにより、防熱板自体が熱膨張により変形してその機能を失った場合においても、部分的な交換補修のみにより、しかも容易に対処することができる。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)〜(11)に示す樋構造および樋周辺の構造にある。
(1)高炉の鋳床に設置され、高温流動体が流れる樋において、鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠内に施工する樋耐火物または背面充填材と該鉄筋コンクリート製で横断面が凹型形状の樋枠の内壁面との境界に、粒子充填層、空隙、および可縮性を有する緩衝材のうち、少なくとも一つを設置したことを特徴とする樋構造(以下、「第1発明」とも記す)。
(2)樋屈曲部において、鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠の屈曲部外周側の樋壁の外側に鉄骨柱を設け、樋壁と鉄骨柱とを水平材により接続することを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第2発明」とも記す)。
(3)樋屈曲部において、鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠の屈曲部外周側の樋壁を水平方向に支持する機械的ダンパーを設置したことを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第3発明」とも記す)。
(4)鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠の外面と鋳床を支持する柱との間に空隙を設けて構成したことを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第4発明」とも記す)。
(5)鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠の樋壁上面と鋳床面との間は、鋳床を支持する柱に横架された下地材に、Z型形状の金物が取り付けられ高温流動体が流れる方向の1枚当たりの幅が1.5〜2mの防熱板を並列して懸架することにより樋ピット側壁を構成したことを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第5発明」とも記す)。
(6)樋屈曲部において、前記(1)に記載の構造を有する樋枠の屈曲部外周側の樋壁の外側に鉄骨柱を設け、樋壁と鉄骨柱とを水平材により接続することを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第6発明」とも記す)。
(7)樋屈曲部において、前記(1)に記載の構造を有する樋枠の屈曲部外周側の樋壁を水平方向に支持する機械的ダンパーを設置したことを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第7発明」とも記す)。
(8)前記(4)に記載の樋周辺の構造において、樋枠の樋壁上面と鋳床面との間は、鋳床を支持する柱に横架された下地材に、Z型形状の金物が取り付けられ高温流動体が流れる方向の1枚当たりの幅が1.5〜2mの防熱板を並列して懸架することにより樋ピット側壁を構成したことを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第8発明」とも記す)。
(9)前記(1)、(6)または(7)に記載の樋または樋周辺の構造において、樋枠の外面と鋳床を支持する柱との間に空隙を設けて構成したことを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第9発明」とも記す)。
(10)前記(1)、(6)または(7)に記載の樋または樋周辺の構造において、樋枠の樋壁上面と鋳床面との間は、鋳床を支持する柱に横架された下地材に、Z型形状の金物が取り付けられ高温流動体が流れる方向の1枚当たりの幅が1.5〜2mの防熱板を並列して懸架することにより樋ピット側壁を構成したことを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第10発明」とも記す)。
(11)前記(1)、(6)または(7)に記載の樋または樋周辺の構造において、樋枠の外面と鋳床を支持する柱との間に空隙が設けられるとともに、樋枠の樋壁上面と鋳床面との間は、鋳床を支持する柱に横架された下地材に、Z型形状の金物が取り付けられ高温流動体が流れる方向の1枚当たりの幅が1.5〜2mの防熱板を並列して懸架することにより樋ピット側壁を構成したことを特徴とする樋周辺の構造(以下、「第11発明」とも記す)。
本発明において、「高温流動体」とは、溶銑、溶滓またはこれらの混合物を意味する。
「粒子充填層」とは、鉱滓、バラス、耐火物などの粉体や粒状物または砂などの粒状物からなる充填層を意味する。
「可縮性を有する緩衝材」とは、例えば、炭酸カルシウムを主原料とした発泡ボードやセラミックファイバーまたはセラミックファイバーを成形したボードなどを意味し、温度条件や変位吸収量などにより使い分けることができる。
「Z型形状の金物」とは、防熱板に取り付けられ、柱に横架された下地材に防熱板を懸架するための、側面がZ型形状を有した弾性変形可能な金物を意味する。
本発明に係る樋構造および樋周辺の構造は、下記の効果を奏する。
(1)樋耐火物および背面充填材が熱膨張した場合に、砂などの粒子充填層、空隙、および可縮性を有する緩衝材が収縮することによりその膨張変位を吸収し、鉄筋コンクリート製凹型樋枠壁への応力の伝達を緩和または遮断することができるので、強度は充分でありながら弾性変形能力に乏しい材料である鉄筋コンクリートを樋枠材料として使用することができる。
(2)前記(1)に示す各物質および空隙を設けることにより、鉄筋コンクリート樋枠への熱負荷を軽減でき、コンクリートの熱劣化を防止することができる。
(3)上記構成を採用することにより、樋の熱膨張への対策を完備した極めて製造コストの安価な樋構造を実現できる。また、定期補修工事のコストを低減し、低いランニングコストのもとに維持管理を行うことができる。
(4)樋屈曲部の外周側樋壁の外側に鋳床を支持する柱とは別に鉄骨柱を設け、樋壁との間を水平材により接続するか、または樋壁を水平方向に支持する機械的ダンパーを設けたので、弾性変形能力に乏しい鉄筋コンクリートにより構成された樋枠が脆性亀裂などにより塑性的変位を生じた場合においても、変位を弾性的に復帰させることができる。
(5)前記(4)に示す事態となった場合においても、脆性亀裂などの部分をエキスパンション構造とし、鉄骨柱または機械的ダンパーを弾性支持機構とする別の構造による継続使用が可能となる。したがって、緊急修復の必要がなく、定期修理や計画的修理の期間に必要に応じて当初の構造に復帰させることができるので、計画銑鉄生産量を確保することができる。
(6)鉄筋コンクリート樋壁外面と鋳床を支持する柱などの建築構造体との間には適度な空隙が設けられているので、樋壁が変位しても、鋳床を支持する柱の変形など、建築構造体への悪影響を及ぼさない。それ故、樋の熱膨張による設備上の問題とは無関係に、建築構造体としての機能を維持することができ、また、修復工事における工事量および工事コストを最小限に抑制することができる。
(7)樋ピット側壁は、背面にZ型金物の取り付けられた防熱板を、鋳床を支持する柱に横架した下地材に懸架することによって構成されるので、防熱板の熱膨張が鋳床を支持する柱を変形させるなど、建築構造体に及ぼす悪影響を回避することができる。これにより、防熱板の熱膨張による起因する悪影響とは無関係に、建築構造体としての機能を維持することができる。
本発明は、前記の(1)〜(11)に示されたとおり、樋耐火物の熱膨張に対応した樋構造および樋周辺の構造である。以下に、本発明の実施形態につき、図を参照して説明する。
A.第1発明
図1は本発明(第1発明)に係る樋の横断面の一例を示す図である。同図において、鉄筋コンクリート製凹型樋枠1の内側に施工される樋耐火物4またはその外側に施工される背面充填材3と鉄筋コンクリート製凹型樋枠1の内壁との境界面には、粒子充填層2a、空隙2b、または可縮性を有する緩衝材2cの層が設けられる。この層は単独で設けられてもよいし、少なくとも2つを組み合わせることもできる。組み合わせ方は、樋耐火物4の内面に平行な層からなる互層構造としてもよいし、樋耐火物4の内面に垂直な層を形成し、これを樋耐火物4の内面に平行な方向に重畳させる構造としてもよい。
ここで、粒子充填層とは、前記のとおり、鉱滓、バラス、耐火物などの粉体や粒状体または砂などの粒状体からなる充填層を意味し、また、可縮性の高い緩衝材とは、例えば炭酸カルシウムを主原料とした発泡ボード、セラミックファイバー、セラミックファイバーを成形したボードなどを意味する。そして、これらは、温度条件や変位吸収量などにより使い分けを行うことができる。
なお、通常は鉄筋コンクリート製凹型樋枠1と境界を接するのは背面充填材3であり、上記の層、空隙または緩衝材は鉄筋コンクリート製凹型樋枠1と背面充填材3との境界面に設けられる。しかし、樋の構造により背面充填材3が省略される場合には、上記の層、空隙または緩衝材は鉄筋コンクリート製凹型樋枠1と樋耐火物4との境界面に設ければよい。
B.第2発明
図2は、第2発明に係る樋屈曲部の一例を示す平面図である。上記の粒子充填層、空隙または緩衝材2(具体的には、潰れやすいポーラスな物質2a、空隙2bまたは可縮性の高い弾性物質2c)は、主として同図に示されるような樋の屈曲部外側の樋壁内側に設置されるものであるが、樋形状が複雑であるなど、熱膨張の挙動に不測の要因が多い場合には、樋の全範囲にわたって、樋耐火物4または背面充填材3と樋枠1の内壁との境界面に設置してもよい。なお、図2において、樋屈曲部外側の樋壁の外側には、鉄骨柱13が設けられ、樋壁1との間は水平接続材14により接続されている。
次に、樋枠と背面充填材との境界部の充填材および境界間隔の好ましい態様について説明を加える。
粒子充填層や緩衝材としては、樋枠1や背面充填材3または樋耐火物4の変位への追従性が重視される。この対象材料を選定する際の要素としては、樋耐火物4および背面充填材3の熱膨張が発生したときに、想定される熱膨張代(変位)を鉄筋コンクリート製凹型樋枠1に大きな力を伝えることなく(すなわち、鉄筋コンクリート製樋枠1を押し倒すほどの力を伝えずに)自身が収縮変形することが要求される。つまり、膨張代を吸収する変形歪みを生じた時の材料の応力(反力)が鉄筋コンクリート製樋枠1を塑性変形させる応力よりも小さいことが必要である。
したがって、対象材料としては、ヤング率が鉄筋コンクリートおよび耐火物よりも低く、かつ、熱膨張が停止して変位が戻ったときに、それにも追従できる材料(すなわち、熱膨張による変位量が弾性範囲内である材料)がもっとも好ましい。空隙を設けて対処する場合には、大きな膨張代のケースにおいて、樋の拘束効果が全く無くなることから、別の問題が生じる可能性がある。上記の理由から、粒子充填層または緩衝材などで且つ前記条件を満たす材料を設置するのが好ましい。
また、樋枠の内壁面と樋耐火物または背面充填材との境界部の好ましい間隔は、樋の平面レイアウトにより想定される熱膨張代を考慮して決定される。したがって、間隔は画一的に定められないが、発明者らの検討では30〜50mm程度が好ましい。
図3は、樋屈曲部において、鉄筋コンクリート製樋枠の屈曲部外周側の樋壁の外側に設けられた鉄骨柱と樋壁との間を水平材により接続した第2発明の態様例を示す横断面図である。
同図に示されるとおり、樋屈曲部外周側の樋壁の外側に鉄骨柱13を設け、樋屈曲部外周側の樋壁と鉄骨柱13とを水平接続材14により接続する。鉄筋コンクリート製樋壁1が何らかの要因により、一部の脆性亀裂を生じて塑性的に変位した場合には、鉄骨柱13は水平接続材14を通じてその変位を自身の弾性撓みにより吸収する。さらに、樋耐火物4および背面充填材3の温度が下降した時には、弾性を失った鉄筋コンクリート製凹型樋枠1に代わって弾性材としての役割を演じ、その変位を押し戻す構造となっている。
水平接続材14としては、例えば、鉄筋コンクリート製樋枠の屈曲部外周側の樋壁全体に当接する平面を構成する鉄骨フレームまたは鉄板と、該平面に略垂直に接合され鉄骨柱13に接続される水平支持部材とからなる構造物を採用することができる。
C.第3発明
図4は、樋屈曲部において、鉄筋コンクリート製樋枠の屈曲部外周側の樋壁を水平方向に支持する機械的ダンパーを設置した第3発明の態様例を示す横断面図である。前述の図3における水平接続材14に替えて、機械的ダンパー15やバネなど、弾性的作用を有する機構または材料物質を用いてもよく、想定される膨張代や設置スペースに応じて適切なものを選定すればよい。
D.第4発明
図5は、前記図1に示される樋およびその周辺構造に係る第4発明の態様例を示す横断面図である。同図において、樋は樋受け梁8の上に配置され、鋳床5を構造的に支える鋳床支持柱6および鋳床支持梁7と鉄筋コンクリート製凹型樋枠1の壁の間には適度な隙間10が設けられており、鉄筋コンクリート樋枠1が高温流動体の熱などにより外側に変位しても鋳床支持構造に影響を及ばさない構造となっている。
E.第5発明
図6は、鉄筋コンクリート製樋枠の樋壁上面と鋳床面との間に設けられ、樋ピット壁を構成する防熱板の取付け方法を示す詳細図であり、第5発明に係る態様例に該当する。同図(a)は防熱板を防熱板受け下地材に懸架する前の状態の側面図を、同図(b)は防熱板を同下地材に懸架した状態の側面図を、同図(c)は同図(b)の平面図を表す。詳細には、所定の幅を有する防熱板9の背面に取り付けられたZ型形状の金物11を、同図(a)中の破線および矢印で示すように、鋳床支持柱6間に横架した山形鋼などの下地材12はめ込むことにより、防熱板9を下地材12に並列に懸架し、樋ピット壁面が構成されている。これにより、防熱板9が熱膨張した場合においても、防熱板は膨張に対して拘束されることが少なく、自由度があり、したがって、鋳床支持柱6などに変形による悪影響を及ばさない構造となっている。
また、前記の図6に示された構造を採用したことにより、防熱板9の背面に取り付けたZ型形状の金物11を鋳床支持柱6間に横架した山形鋼などの下地材12に並列に懸架して樋ピットが構成されているので、交換が容易であり、設備保守の面においても有効である。
防熱板の高温流動体が流れる方向の1枚当たりの幅は、1.5〜2mとすることが好ましい。防熱板の幅が2mを超えて大きくなると、交換や補修の場合に、一回の補修範囲が増大し、作業が容易ではなくなるので、並列させて懸架する意義が薄れる。一方、防熱板の幅が1.5m未満では、単位面積当たりの付属金物の増加や補修加工量の増加により補修作業が煩雑となり、補修費が増大するとともに、継目が増大するので構造全体としての防熱性能が低下する。防熱板の幅が上記の範囲内であれば、防熱板自体が変形などによりその機能を失った場合においても、交換補修が容易であり、かつ部分的な交換補修で済むことから、工期の短縮およびコスト低減の面で好ましい。
F.第6発明〜第11発明
さらに、第1発明、第2発明および第3発明の樋構造または樋周辺の構造の1つ以上、ならびに第4発明および第5発明の樋周辺の構造の1つ以上を組み合わせた樋構造または樋周辺の構造に係る発明を適用することにより、前記の各発明に加えてさらに一層大きな効果を得ることができる。
本発明の樋構造および樋周辺の構造によれば、下記の効果が得られる。
(1)樋の熱膨張変位を吸収し、鉄筋コンクリート製凹型樋枠壁への応力の伝達を緩和または遮断することができるので、弾性変形能力に乏しい鉄筋コンクリートを樋枠材料として使用することができ、樋の製造および補修コストを低減することができる。
(2)樋屈曲部の外周側樋壁の外側に鋳床を支持する柱とは別に鉄骨柱を設け、樋壁との間を水平材または機械的ダンパーにより接続するので、樋枠が脆性亀裂を発生し塑性的変位を生じた場合においても、変位を弾性的に復帰させることができる。
(3)鉄筋コンクリート樋壁外面と鋳床支持柱などの建築構造体との間に適度な空隙が設けられているので、建築構造体への悪影響を及ぼさない。
(4)樋ピット側壁は、背面にZ型金物の取り付けられた防熱板を、鋳床を支持する柱に横架した下地材に懸架することによって構成されるので、防熱板の熱膨張が建築構造体に及ぼす悪影響を回避することができる。
これらにより、本発明は、銑鉄生産量の確保および銑鉄コストの低減を重要な使命とする製銑工程における樋および樋周辺の構造として広範に適用できる技術である。
本発明に係る樋の横断面の一例を示す図である。 樋屈曲部の一例を示す平面図である。 樋屈曲部において、鉄筋コンクリート製樋枠の屈曲部外周側の樋壁の外側に設けられた鉄骨柱と樋壁との間を水平材により接続した状況の例を示す横断面図である。 樋屈曲部において、鉄筋コンクリート製樋枠の屈曲部外周側の樋壁を水平方向に支持する機械的ダンパーを設置した状況の例を示す横断面図である。 前記図1に示される本発明の樋およびその周辺構造の一例を示す横断面図である。 鉄筋コンクリート製樋枠の樋壁上面と鋳床面との間に設けられ、樋ピット壁を構成する防熱板の取付け方法を示す詳細図であり、同図(a)は防熱板を防熱板受け下地材に懸架する前の状態の側面図を、同図(b)は防熱板を同下地材に懸架した状態の側面図を、同図(c)は同図(b)の平面図を表す。 従来の一般的な樋の横断面図である。 従来の一般的な樋とその周辺構造の横断面図である。 従来の別の一般的な樋とその周辺構造の横断面図である。
符号の説明
1:鉄筋コンクリート製凹型樋枠、 2:粒子充填層、緩衝材および空隙の総称、 2a:潰れやすいポーラスな物質、 2b:空隙、 2c:可縮性の高い弾性物質、 3:背面充填材、 4:樋耐火物、 5:鋳床スラブ、 6:鋳床支持柱、 7:鋳床支持梁、 8:樋受け梁、 9:防熱板、 10:隙間、 11:Z型形状の金物、 12:防熱板受け下地材、 13:鉄骨柱、 14:水平接続材、 15:機械的ダンパー

Claims (11)

  1. 高炉の鋳床に設置され、高温流動体が流れる樋において、鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠内に施工する樋耐火物または背面充填材と該鉄筋コンクリート製で横断面が凹型形状の樋枠の内壁面との境界に、粒子充填層、空隙、および可縮性を有する緩衝材のうち、少なくとも一つを設置したことを特徴とする樋構造。
  2. 樋屈曲部において、鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠の屈曲部外周側の樋壁の外側に鉄骨柱を設け、樋壁と鉄骨柱とを水平材により接続することを特徴とする樋周辺の構造。
  3. 樋屈曲部において、鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠の屈曲部外周側の樋壁を水平方向に支持する機械的ダンパーを設置したことを特徴とする樋周辺の構造。
  4. 鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠の外面と鋳床を支持する柱との間に空隙を設けて構成したことを特徴とする樋周辺の構造。
  5. 鉄筋コンクリート製でかつ横断面が凹型形状の樋枠の樋壁上面と鋳床面との間は、鋳床を支持する柱に横架された下地材に、Z型形状の金物が取り付けられ高温流動体が流れる方向の1枚当たりの幅が1.5〜2mの防熱板を並列して懸架することにより樋ピット側壁を構成したことを特徴とする樋周辺の構造。
  6. 樋屈曲部において、請求項1に記載の構造を有する樋枠の外周樋壁の外側に鉄骨柱を設け、樋壁と鉄骨柱とを水平材により接続することを特徴とする樋周辺の構造。
  7. 樋屈曲部において、請求項1に記載の構造を有する樋の樋枠の樋壁を水平方向に支持する機械的ダンパーを設置したことを特徴とする樋周辺の構造。
  8. 請求項4に記載の樋周辺の構造において、樋枠の樋壁上面と鋳床面との間は、鋳床を支持する柱に横架された下地材に、Z型形状の金物が取り付けられ高温流動体が流れる方向の1枚当たりの幅が1.5〜2mの防熱板を並列して懸架することにより樋ピット側壁を構成したことを特徴とする樋周辺の構造。
  9. 請求項1、6または7に記載の樋または樋周辺の構造において、樋枠の外面と鋳床を支持する柱との間に空隙を設けて構成したことを特徴とする樋周辺の構造。
  10. 請求項1、6または7に記載の樋または樋周辺の構造において、樋枠の樋壁上面と鋳床面との間は、鋳床を支持する柱に横架された下地材に、Z型形状の金物が取り付けられ高温流動体が流れる方向の1枚当たりの幅が1.5〜2mの防熱板を並列して懸架することにより樋ピット側壁を構成したことを特徴とする樋周辺の構造。
  11. 請求項1、6または7に記載の樋または樋周辺の構造において、樋枠の外面と鋳床を支持する柱との間に空隙が設けられるとともに、樋枠の樋壁上面と鋳床面との間は、鋳床を支持する柱に横架された下地材に、Z型形状の金物が取り付けられ高温流動体が流れる方向の1枚当たりの幅が1.5〜2mの防熱板を並列して懸架することにより樋ピット側壁を構成したことを特徴とする樋周辺の構造。
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