JP5079486B2 - 軒裏天井構造、耐火補強体及び軒裏天井構造の耐火補強方法 - Google Patents
軒裏天井構造、耐火補強体及び軒裏天井構造の耐火補強方法 Download PDFInfo
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Description
また、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)においては、建築基準法により定められる耐火性能以上の耐火性能を住宅に付与することについての規定が盛り込まれる等、住宅に対する耐火性能向上の要請は近年さらに増してきており、軒裏天井の構造についても上記建築基準法で定められている所定時間の耐火性能を凌ぐ耐火性能を付与することが望まれている。
これに対し、耐火性能を向上させるべく、上記軒裏天井板に代えて厚さを増した軒裏天井板を使用することが考えられる。
また、軒裏天井板の重量は一般に大きく、当該軒裏天井板の軒裏への取付けには、建物の施工時に形成される足場の如く軒の桁行き方向に沿って堅固な連続作業床の形成が必須であるところ、既設の建物に対し軒裏天井板の交換するためだけに上述の如き作業床を形成することは、施工性の観点からも費用の観点からも望ましくないという問題があった。
また、本発明は、軒裏天井板の厚さを維持した状態で軒裏の耐火性能を向上させることができる耐火補強材を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、既設の建物の軒裏天井構造の耐火性能を向上させるための耐火性能補強方法において、軒の桁行き方向に沿う連続作業床を不要として脚立等の簡易な足場のみで施工を行うことを可能とすることを目的とする。
(1)建物の軒の裏側に所定の耐火性能を備える軒裏天井板が設けられ、該軒裏天井板の上方に軒裏空間が形成される軒裏天井構造において、
前記軒裏天井板は、軒の裏側の梁間方向に沿って設けられた野縁に懸架され、前記軒裏天井板の上面は、建物の桁行方向きに沿って前記野縁に載置された耐火補強体に覆われて、軒裏天井板と耐火補強体の間に空気層が形成され、前記耐火補強体は、耐火断熱層、熱遮断層、又は吸熱層のいずれか1つの層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成されていることを特徴としている。
(2)また、前記軒の裏側には、さらに軒裏空間に通ずる通気孔が設けられていることを特徴とすることもできる。
(3)また、前記通気孔が加熱により塞がれるように構成されていることを特徴とすることもできる。
なお、軒裏とは、建物の外壁よりも突出する庇の裏側を含むことはもちろん、下階よりも突出して設けられる上階ベランダや上階居室の裏側等、下階よりも上階を突出させて形成される建物の当該下階より見上げることができる上階の裏側や、1階部分をピロティとする建物の当該ピロティの天井部分をも含む。
なお、軒裏天井板は、構成材料や素材によって、30分〜45分程度の耐火性能を有するものが存在する。
ここで、熱の移動について詳述すると、熱移動には、熱伝導、熱対流、熱輻射の3つのプロセスが混在している。そこで、少なくともこれらのうちの1つでも抑制することが可能であれば、全体として熱の移動を抑制させることができ、その結果、耐火性能を維持すべき時間(耐火時間)の延長を図ることができる。
上記耐火補強体の耐火断熱層は、熱伝導を主として抑制することができる層であって、火熱により熱せられた空気が渦巻く空気層の上方に当該耐火断熱層を設けることにより、空気層から軒裏空間に向かう熱の移動を抑制させることができる。この結果、軒裏空間の温度上昇を鈍化させることができる。
さらに、吸熱層は、軒裏空間に進入する熱を適宜吸収するものであって、当該吸熱層を空気層の上方に積層することにより空気層から軒裏空間に伝達される熱の総量が低減され、これによっても空気層から軒裏空間に向かう熱の移動を抑制させることができる。
また、ロックウールを採用することにより、耐火断熱層は可撓性を有することとなってきわめて容易に軒裏天井板の上方に設けることができる。また、軽量であるので、耐火補強体の軽量化を向上させることができる。また、火災状況下ばかりでなく通常の温熱環境下においても断熱性能を発揮することができるので、当該軒裏天井構造を有する住宅の断熱性能の向上にも貢献することができる。
前記熱遮断層がアルミニウム薄膜により形成されると、当該熱遮断層はきわめて薄く且つ軽量に形成され、耐火補強体の軽量化が図られることとなる。また、アルミニウムは、高い熱反射率(一般には97%程度)を有しているので、輻射熱がアルミニウム薄膜に到達する場合であっても、殆どの輻射熱はアルミニウム薄膜表面で反射されることとなり、きわめて僅かな輻射熱がアルミニウム薄膜を貫通するのみである。したがって、アルミニウム薄膜は主として熱輻射を遮断する熱遮断層として好適である。
なお、熱気流とは、火災時に発生する高温度の気流であって、その上昇速度は中心で最大となり、一般に実測値で12m/sec〜14m/sec程度であるとされる(建築大辞典(彰国社、第2版)参照)。
また、アルミニウム薄膜は主として輻射熱を遮断・反射するものであることはもちろん、膜状を維持することにより対流熱も当然に遮断することができる。同様に、亜鉛鉄板や鋼板は主として対流熱を遮断するものであることはもちろん、輻射熱も当然に遮断することができる。
これによれば、吸熱層をきわめて薄く且つ軽量に形成することができ、耐火補強体の軽量化が図られることとなる。また、水酸化アルミニウムは、火災時の高温雰囲気に近接する280℃前後で脱水するので、火災時に伝熱を吸収する層としては好適である。
軒の桁行き方向に沿って所定の耐火性能を有する複数枚の軒裏天井板を敷き並べて軒裏空間を形成する上記の(1)に記載した軒裏天井構造の耐火補強方法であって、
いずれか1枚の軒裏天井板を取り外して開口部を形成し、
該開口部から軒裏空間に向けて可撓性を有し且つ軒裏天井板数枚分に相当する長さを有する耐火補強体を挿入すると共に前記桁行き方向に当該耐火補強体を送り込んで前記軒裏天井板の上方に敷き並べ、その後、前記取り外した軒裏天井板を開口部に再び取り付けることを特徴としている。
上記構成によれば、1枚の軒裏天井板を取り外し及び取り付けだけで当該軒裏天井板を含む複数枚の軒裏天井板により形成される軒裏に耐火補強体を設けることができる。
所定の間隔を空けてさらに1枚の軒裏天井板を取り外して他の開口部を設け、
前記開口部から軒裏空間に向けて前記耐火補強体を挿入すると共に前記桁行き方向に当該耐火補強体を送り込みつつ他の開口部側から当該耐火補強体を引き寄せて前記軒裏天井板の上面に敷き並べることが好ましい。
上記構成によれば、2枚の軒裏天井板を取り外し、その後再び取り付けるだけで当該2枚の軒裏天井板を含む複数枚の軒裏天井板により形成される軒裏に耐火補強体を設けることができる。
また、本発明の耐火補強体によれば、軒裏天井板の厚さを維持した状態で軒裏の耐火性能を向上させることができる。
さらに、本発明の軒裏天井構造の耐火性能補強方法によれば、軒の桁行き方向に沿う連続作業床を不要として脚立等の簡易な足場のみで施工を行うことが可能となる。
なお、図1〜図4については、寄棟屋根を有する住宅に本願発明の軒裏天井構造を採用した第1実施形態についての図面であって、図5及び図6は軒裏天井構造の第2実施形態等であり、図7及び図8については陸屋根を有する住宅に本願発明の軒裏天井構造を採用した第3実施形態についての図面であって、図9〜図12は本願発明に関する実施例の実験についての図面である。
本発明に係る戸建て住宅1は、所謂寄棟屋根を有する住宅1であって、軽量鉄骨を組み合わせて形成される架構1aと、該架構1aに取り付けられて住宅の側面を形成する外壁構造1bと、架構1aに取り付けられて住宅の上面を形成する屋根構造1cとを備えている。
架構1aは、基礎B上に立設される複数の柱材や面材と、これら柱材や面材を連結する梁材とを備えて形成される軸組構造として構成されている。柱材は、鋼製の角パイプや該角パイプの端部に柱頭部材や柱脚部材を取り付けて形成され、面材は、一対の角パイプをブレースや制振フレームにより連結して形成される。梁材は、H型鋼や鋼製の角パイプにより形成されている。
外壁構造1bは、平板状の外壁2と、該外壁2よりも屋内側に設けられる断熱層(図示省略)とを備えている。
外壁2は、平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成される複数の外壁材を並列状に列べて形成されている。各外壁材は、前記架構1aの最外枠を構成する梁に取り付けられる自重受け金具やイナズマプレート等の金物(図示省略)を介して当該梁に支持されている。
上記ALCパネルは、軽量で且つ高い断熱性能を有するため外壁材として好ましく用いることが可能である。
なお、実施形態の説明の便宜上、図1の紙面垂直方向(法線方向)を桁行き方向とし、図1の紙面平行方向を梁間方向と称呼する。
図2に示す如く、当該軒5は、2階部分の外壁2よりも突出して設けられる軒先構造10と、該軒先構造10により包囲される軒裏空間Sを塞ぐ軒裏天井構造30とを備えている。
なお、軒の出寸法は、2000mm以下が好ましく、1000mm以下が最も好ましい。本実施形態においては、軒の出寸法Lは720mmである。
軒先構造10は、屋根を形成する軒屋根11と、該軒屋根11を支持する垂木部材12と、該垂木部材12の先端部に取り付けられたジョイント金物13と、該ジョイント金物13に取り付けられた鼻隠部材14とを備えている。
当該軒屋根11を支持する垂木部材12は、平板状の金属板をプレス加工により断面コ字状の長尺部材として形成されている。また、垂木部材12は、長手方向を梁間方向に向けた状態で所定の間隔を空けて棟から軒に向けて下り傾斜状に複数本架設されている。また、各垂木部材12は、中途部が金物部材k1を介して架構1aを形成する軒桁2bに支持されている。
ジョイント金物13は、垂木部材12の先端部に連結される連結部18と、該連結部18から垂下される垂下部19とを備えている。
また、鼻隠部材14の一方の面(表面)には、屋根板部材17を流れ落ちてくる雨水等を受ける軒樋15が取り付けられている。
ところで、住宅1が密集する都市においては、ある住宅1に火災が発生することにより該住宅1に隣接する隣家に当該火災の火炎が燃え移り(かかる現象を延焼又は類焼という)、これによって隣家まで当該火災に巻き込まれてしまう虞がある。このような隣家への延焼の発端は、外壁2から突出している上述の如き軒5等が火災による火熱に相当時間晒されることにより軒5が燃えてしまうこと等であることが知られており、この種の延焼を防止すべく、軒裏には、所定の耐火性能を備えることが要求されている。
L字状金物31は、長手方向を桁行き方向に一致させた状態で鼻隠部材14の下端部に取り付けられており、該鼻隠部材14の表裏一方の面(本実施形態においては表面)に連結される連結板部37と、該連結板部37の下端から外壁2に向けて水平に突出する水平板部38とを備えている。
外壁取付金物33は、金属板をプレス成形等を施して形成されており、外壁2を支持するZ金物k2にタッピンネジ等を介して連結されるブラケット部43と、該ブラケット部43の先端に形成される軒天保持部46とを備えている。また、ブラケット部43には、平板部に通気孔44aが開設されている。
また、軒先取付金物32の取付部40と外壁取付金物33の連結部48とは同一の高さを有している。また、該高さは軒裏天井板35の厚さと同一又は僅かに大きい。また、該軒先取付金物32の見切り板42の上面と外壁取付金物33の下側の挟持片47の上面とは同一の高さ位置に設定されている。
野縁受け51は、金属板をプレス成形してなる断面コ字状の長尺部材として形成され、平坦状の側面部53の一端に上面部54が屈曲形成されると共に他端に下面部55が屈曲形成されており、該側面部53が外壁取付金物33のブラケット部43にタッピンネジ等を介して取り付けられている。
野縁52は、金属板をプレス成形してなる角筒状に形成されており、梁間方向に沿って設置され、一方の端部が野縁受け51の上下面部54、55及び側面部53の間に嵌り込んだ状態で当該野縁受け51にタッピンネジ等を介して取り付けられると共に、他方の端部がL字状金物31の水平板部38の上面に載置されている。
なお、当該けい酸カルシウム板の厚さは、6mm〜16mmが好ましく、耐火性能の観点からは16mmの厚さを有するものが最も好ましい。
また、上記厚さ16mmの繊維混入けい酸カルシウム板により形成される軒裏天井板35は、35〜45分程度の耐火性能を有するものであって、耐火補強体70は、当該軒裏天井板35の耐火性能を補強して軒裏天井構造30全体の耐火時間の延長を図るものである。
ここで、熱の移動について詳述すると、熱移動には、熱伝導、熱対流、熱輻射の3つのプロセスが混在している。そこで、少なくともこれらのうちの1つでも抑制することが可能であれば、全体として熱の移動を抑制させることができ、その結果、耐火性能を維持すべき時間(耐火時間)の延長を図ることができる。
また、一方で、軒裏空間Sに向かう熱を吸収することができれば、当該軒裏空間Sに向かう熱の総量を減少させることができるので、これによっても軒裏空間Sの温度上昇が抑制される。耐火補強体70にこの様な吸熱効果が付与されれば、軒裏空間Sに至る熱の移動は抑制されることとなる。
これにより、図2に示す如く、軒裏天井板35と耐火補強体70との間に空気層Eが設けられているのである。
耐火補強体70を構成する耐火断熱層71は、熱伝導を主として抑制する層であって、火熱により熱せられた空気が渦巻く空気層Eの上方に当該耐火断熱層71が設けられていることにより、空気層Eから軒裏空間に向かう熱の移動が抑制されることとなるのである。
当該耐火断熱層71としては、密度60kg/m3〜200kg/m3のロックウールを厚さ25mm〜50mmの範囲で用いるのが好ましく、本実施形態においては、厚さ50mmとする密度60kg/m3のロックウール又は厚さ25mmとする密度200kg/m3のロックウールを用いている。
また、耐火補強体70の耐火断熱層71がロックウールに形成されていることにより、該ロックウールを構成する細かい繊維によって対流作用により動き回る空気の移動が妨げられ、これによって高い断熱性能が発揮されている。また、ロックウールは、基材自体の持つ高い耐熱性(熱間収縮温度600℃以上)により、火災時の火熱によっても容易に収縮変形又は溶融することはないので、かかる点からも耐火断熱層71として好適である。
なお、耐火断熱層71としては、ロックウールに限定されず、セラミックファイバーやセラミックボード等の鉱物繊維系素材を主材とする材料を採用可能である。
また、該耐火補強体70は、野縁組立体34上に載置されており、これによって、軒裏天井板35と耐火補強体70との間には、当該軒裏天井板35、耐火補強体70及び野縁組立体34に包囲される空気層Eが形成されている。
なお、当該野縁組立体34による熱橋の影響を低減すべく、野縁受け51の上下面部54、55の間にロックウール等の断熱材を設置することは好ましい。
上記構成によれば、軒裏天井板35、空気層E及び耐火補強体70からなる層構成の厚さは50mm〜130mmが好ましく、他の部材との収まり考慮すると65mm〜100mmの厚さが最も好ましい。
また、軒裏天井板35の重量が13.0kg/m2〜16.0kg/m2程度であるのに対し、耐火補強体70の重量が3.0kg/m2〜5.0kg/m2程度であり、これによって本実施形態の軒裏天井構造30は、軒裏天井板35単体を支持するもの比較しても僅かに重量が増すに過ぎない。このため、該軒裏天井板35単体を支持する建物の躯体構成を変更・改修することなく軒裏天井板35の軒裏への取り付けが可能となっている。
また、上記実施形態の軒裏天井構造30は、各軒裏天井板35を軒裏に取り付ける前に耐火補強体70を野縁組立体34の上面に設置すると共にL字状金物33の水平板部38上にブロック75を設置し、その後、軒裏天井板35を取り付ける施工を行うことで形成可能であり、かかる施工により新築の住宅1の軒5に当初から耐火補強体70を備え付ける構成とすることは可能である。
以下、軒裏天井板35単体を保持する既設の住宅1の軒裏天井構造30に耐火補強体70を設置する方法について、図3を用いて説明する。
図3(a)及び(b)に示す如く、まず、既存の軒裏天井構造30において、軒5の延設方向となる桁行き方向に列べて敷設されている複数枚の軒裏天井板35のうち、いずれか一枚の軒裏天井板35を保持している軒先取付金物32を取り外すと共に、当該軒裏天井板35と野縁組立体34との連結を解除する。ここで、軒先取付金物32と軒裏天井板35及びL字状金物33との連結、或いは軒裏天井板35と野縁組立体34の野縁52との連結は当該軒裏天井板35の下側からタッピンネジ等を介して締結されているので、軒裏天井板35の下方(軒下)から各タッピンネジを取り外すことにより、各部材は容易に連結状態を解除することとなる。
そして、当該軒裏天井板35のみを取り外して、軒下から軒裏に連通可能な開口部P1を形成する。
ここで、ブロック75の設置については、長尺部材等を用いて公知の方法により野縁52の間に設置することとなるが、野縁52の先端部とL字状金物31の連結板部37との間にある程度の隙間があれば、桁行き方向の大きさを軒裏天井板35の桁行き方向の長さの複数枚の長さに相当する大きさに形成し、当該隙間に送り込むことでL字状金物31の水平板部38上に設置することが可能である。
そして、当該開口部P1を基点として桁行き方向に当該耐火補強体70を送り込み、各軒裏天井板35を懸架する野縁組立体34の及びブロック75の上面に耐火補強体70を載置する。ここで、耐火補強体70の桁行き方向の長さは、軒裏天井板35の桁行き方向の長さの複数枚の長さに相当する大きさとされているので、耐火補強体70を開口部P1から送り込むことにより軒裏天井板35の上方は順次耐火補強体70に覆われることとなる。そして、各軒裏天井板35と耐火補強体70との間に空気層Eが形成されることとなる。引き続き耐火補強体70を送り込むことにより、該耐火補強体70を当該開口部P1の上方にも設け、これによって開口部P1を耐火補強体70により覆う。
上記設置方法によれば、軒裏天井板35のみを保持する既存の軒裏天井構造30であっても、1枚の軒裏天井板35を取り外した後再び取り付ける作業を通じて軒裏天井構造30に耐火補強体70を備え付けることができ、これによって、軒裏天井構造30の耐火性能の向上が図られるのである。また、当該設置方法により、耐火補強体70を軒裏天井板35よりも上方に設けることが可能となるので、既存の軒裏天井構造30の意匠性を損なうことなく当該軒裏天井構造30の耐火性能の向上が図られる。
まず、図4(a)又は(b)に示す如く、既存の軒裏天井構造30において、軒5の延設方向となる桁行き方向に列べて敷設されている複数枚の軒裏天井板35のうち、いずれか一枚の軒裏天井板35を保持している軒先取付金物32を取り外すと共に、当該軒裏天井板35と野縁組立体34との連結を解除する。そして、当該軒裏天井板35を取り外して、軒下から軒裏に連通可能な一の開口部P2を形成する。
そして、軒裏空間Sに向けて一の開口部P2からブロック75を挿し入れ、当該一の開口部P2から他の開口部P3に向けてブロック75を送り込む。同時に、他の開口部P3側から当該耐火補強体70を引き寄せ、これによってこれら両開口部P2、P3間のL字状金物33の上面にブロック75を載置する。
その後、図4(d)に示す如く、先ほど取り外した軒裏天井板35及び軒先取付金物32を各開口部P2、P3にそれぞれ再び取り付けると共に、タッピンネジ等を介して各軒裏天井板35を野縁組立体34に懸架させると共に軒先取付金物32、L字状金物31及び外壁取付金物33により挟持させ、作業を完了する。これにより、当該軒裏天井板35の上方にも耐火補強体70及び空気層Eが設けられることとなる。
図5に示す如く、本実施形態は、軒裏天井構造30の層構成は上記第1実施形態と異なるものの、他の構成は上記第1実施形態と同様であるので、軒裏天井構造30の層構成のみについて説明し、それ以外の構成は第1実施形態と同じ符号を付することでその説明を省略する。
耐火断熱層71は、上記第1実施形態と同様にロックウールにより形成されている。なお、当該耐火断熱層71は、60kg/m3のロックウールを厚さは25mm程度としたものを採用することが好ましく、その重量は1.5kg/m2程度である。
熱遮断層72は、熱伝導を除く熱輻射、熱対流を主として遮断するものであって、当該熱遮断層72を耐火断熱層71の上方に設けることにより、空気層から耐火断熱層71を貫通して軒裏空間に向かう熱輻射や当該空気層から耐火断熱層71を通じて熱遮断層72に達する対流熱の軒裏空間への抜けが確実に遮断されることとなり、これによって、空気層から軒裏空間に向かう熱の移動を抑制させることが可能となる。
また、アルミニウムは、きわめて高い熱反射率(一般には97%程度)を有しているので、空気層内の輻射熱がアルミニウム薄膜に到達する場合であっても、殆どの輻射熱はアルミニウム薄膜表面で反射され、きわめて僅かな輻射熱がアルミニウム薄膜を貫通するのみとなり、これによって、空気層から軒裏空間への熱の移動、ひいては軒裏空間の温度上昇の鈍化が図られるのである。
吸熱層73は、熱遮断層72からの伝熱を吸収するものであって、当該吸熱層73により、空気層を介して軒裏空間に伝達される熱の総量が低減され、これによっても軒裏空間の温度上昇の鈍化が図られるのである。
また、軒裏天井板35の重量が13.0kg/m2〜16.0kg/m2程度であるのに対し、耐火補強体70の重量は、上記3層を合計しても3.0kg/m2〜8.0kg/m2程度であり、これによって本実施形態の軒裏天井構造30は、軒裏天井板35単体を支持するもの比較しても僅かに重量が増すに過ぎない。このため、該軒裏天井板35単体を支持する建物の躯体構成を変更・改修することなく耐火補強体70の軒裏への取り付けが可能となっている。
また、本願発明の構成は、上記実施形態に限定されず、上記実施形態以外の構成も採用可能である。
また、上記実施形態のアルミニウム箔は主として輻射熱を遮断・反射するものであることはもちろん、膜状を維持することにより対流熱も当然に遮断することができ、同様に、亜鉛鉄板や鋼板の金属板は主として対流熱を遮断するものであることはもちろん、輻射熱をも当然に遮断することができる。
また、水酸化アルミニウムを吸熱層73として使用するにつき、水酸化アルミニウム粉末を含む塗膜、又は水酸化アルミニウム粉末を接着剤で定着させた定着膜、又は水酸化アルミニウムを含有する紙体、又は水酸化アルミニウム粉末定着樹脂フィルムによって吸熱層73を形成することももちろん可能である。また、当該粉末状の水酸化アルミニウムを不織布等で形成される袋体に封入してなる吸熱袋を吸熱層73として採用することも可能である。
したがって、図6に示す如く、アルミニウム箔からなる熱遮断層72にロックウールからなる耐火断熱層71を積層し、当該耐火断熱層71に亜鉛鉄板からなる熱遮断層72を積層し、さらに、当該熱遮断層72の上面に吸熱袋73aからなる吸熱層73を載置する構成も可能である。
また、亜鉛鉄板からなる熱遮断層72上に吸熱袋73aからなる吸熱層73を載置する構成も採用可能であり、該吸熱層73に代えて火熱膨張材からなる耐火断熱層71を積層する構成も採用可能である。
図7に示す如く、本発明に係る戸建て住宅1は、所謂陸屋根を有する住宅1であって、軽量鉄骨を組み合わせて形成される架構1aと、該架構1aに取り付けられて住宅の側面を形成する外壁構造1bと、架構1aに取り付けられて住宅の上面を形成する屋根構造1cとを備えている。
架構1aは、基礎B上に立設される複数の柱材や面材と、これら柱材や面材を連結する梁材とを備えて形成される軸組構造として構成されている。
外壁構造1bは、平板状の外壁2と、該外壁2よりも屋内側に設けられる断熱層(図示省略)とを備えている。
外壁2は、平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成される複数の外壁材を並列状に並べて形成されている。
また、屋根構造1cは、平板状の軽量気泡コンクリートパネルを水平に敷き並べて形成される所謂陸屋根として形成されており、2階部分の外壁2よりも突出する軒5を備えている。
支持構造20は、一対の柱材の間に架設されて2階部分の外壁2及び屋根板2cを支持する軒桁2bと、該軒桁2bから外壁2の外方に向けて伸びる持出し梁21と、これら持出し梁21の先端同士を連結する軒先桁22とを備えている。これらの梁21及び桁2b、22は、梁間や梁と桁の間にジョイントピース(図示省略)を配備し、当該梁及び桁とジョイントピースとをボルト等により締結することにより連結される。
軒板部材23は、平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成されている。また、軒桁2b及び軒先桁22の上面には剛床金物26が取り付けられており、該剛床金物26と軒板部材23との間にはモルタルが充填されている。また、隣接する軒板部材23の間にはコッター(図示省略)が取り付けられており、これら隣接する軒板部材23はコッター及びモルタルを介して連結されている。
鼻隠部材25は、軒板部材23と同様に平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成されており、一方の面を軒先桁22に対向させた状態で設けられ、上端部及び下端部が金物部材k3を介して軒先桁22に取り付けられている。また、鼻隠部材25の他方の面には、軒樋15が取り付けられている。
軒裏天井構造30は、軒先桁から鼻隠部材25の下端部まで延設される先桁下金物36と、該先桁下金物36の下端部に取り付けられるブラケット金物31aと、該ブラケット金物31aに懸架される軒先取付金物32と、軒桁2bの下端部に取り付けられて外壁2を支持するZ金物k2に連結される外壁取付金物33と、これら軒先取付金物32と外壁取付金物33の間に組まれる野縁組立体34と、軒先取付金物32と外壁取付金物33に亘って架設されると共に野縁組立体34に懸架される軒裏天井板35と、該野縁組立体34上に載置される耐火補強体70とを備えている。また、当該耐火補強体70と軒裏天井板35との間には、これら耐火補強体70、軒裏天井板35及び野縁組立体34により包囲される空気層Eが形成されている。
残りの軒裏天井構造30の各構成については、上記第1実施形態と同様であるので、上記第1実施形態と同様の符号を付してその説明を省略する。
また、当該実施形態は、上記屋根構造Rのみに拘らず、図1に示す如く、住宅1の2階に設けられる張出しベランダDの張出し床の下部構造dに採用することも可能である。かかる構成においては、役物部材24及び鼻隠部材25に代えて、手摺り壁26が取り付けられている。該手摺り壁26は、軒板部材23と同様に平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルにより形成されており、下端部を軒先桁22よりも下方に位置すると共に上端部を2階外壁2の中途部に位置させた状態で取付金物等を介して軒先桁22に取り付けられている。
例えば、上記軒裏天井構造30は、1階をピロティとする住宅1の当該1階部分の天井構造に採用することも可能である。
ところで、本願発明の有効性を確認すべく、本願発明者らは、耐火補強体70及び軒裏天井板35として、以下に示す複数の実施例と比較例とを用いて実験を行った。
<実施例1>
図9及び図10は、耐火補強体を除いて各試験体に共通の構成を示している。図に示す如く、各試験体は、上記第1実施形態の垂木部材12、ジョイント金物13、鼻隠部材14、耐火補強体70を除く軒裏天井構造30を共通して備えており、当該軒裏天井構造30の所定位置に各実施例の耐火補強体70を設ける。なお、比較例においては耐火補強体70を設けない。
当該試験体は、住宅1にて桁行き方向に沿設される軒のうち、互いに等間隔に列ぶ3本の垂木部材12によって規定される部分のみを抽出してモデル化したものであって、軒の出L1を550mm、桁行き方向の長さL2を1000mmとするものが採用されている。また、実施例の軒裏天井板35及び比較例の軒裏天井板35は、梁間方向に427mm、桁行き方向に500mmのものを2枚並べて敷設している。
また、当該試験体には、図9及び図10のa、b、cの位置に熱電対を夫々仕込んでおく。
なお、熱電対a及びbは、標準板Qの一対の平板面のうち、軒裏空間Sに対向している面(表面)の反対側となる面(裏面)に設けられ、熱電対cは軒裏空間Sの中央部に設けられている。
そして、a又はbの平均温度が140℃以上になるまでの時間を耐火時間として計測すると共に、各熱電対の温度上昇の履歴を観察する。
なお、当該火炎の火熱設定は、ISO834に規定される標準火熱曲線に沿うものであって、温度曲線は以下の式1によって規定される。
(試験結果)
図11は、実施例1の試験結果であって、グラフ(イ)は標準耐火曲線、グラフ(ロ)は140℃を示す直線、グラフ(ハ)はaとbの平均温度曲線、(ニ)はcの温度曲線を示している。また、図12は比較例1の試験結果であって、各グラフは図11と同様である。図から明らかなとおり、実施例1の耐火時間は比較例1の耐火時間よりも長く、これによって実施例1の構成は耐火性能の向上に効果的であることが確認される。なお、当該比較例1の耐火時間は35分であるのに対し、実施例1の耐火時間は、73分である。
2 建物本体
3 1階屋根
4 2階屋根
5 軒
6 軒先
10 軒先構造
11 屋根板部材
12 垂木部材
13 ジョイント金物
14 鼻隠部材
30 軒裏天井構造
31 L字状金物
32 軒先取付金物
33 外壁取付金物
34 野縁組立体
35 軒裏天井板
51 野縁
52 野縁受け
70 耐火補強体
71 耐火断熱層
72 熱遮断層
73 吸熱層
75 ブロック
S 軒裏空間
E 空気層
Claims (9)
- 建物の軒の裏側に所定の耐火性能を備える軒裏天井板が設けられ、該軒裏天井板の上方に軒裏空間が形成される軒裏天井構造において、
前記軒裏天井板は、軒の裏側の梁間方向に沿って設けられた野縁に懸架され、
前記軒裏天井板の上面は、建物の桁行方向きに沿って前記野縁に載置された耐火補強体に覆われて、軒裏天井板と耐火補強体の間に空気層が形成され、
前記耐火補強体は、耐火断熱層、熱遮断層、又は吸熱層のいずれか1つの層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成されていることを特徴とする軒裏天井構造。 - 前記軒の裏側には、さらに軒裏空間に通ずる通気孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軒裏天井構造。
- 前記通気孔が加熱により塞がれるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の軒裏天井構造。
- 前記耐火断熱層は、ロックウールにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の軒裏天井構造。
- 前記熱遮断層は、アルミニウム薄膜、亜鉛鉄板又は鋼板により形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の軒裏天井構造。
- 前記吸熱層は、水酸化アルミニウムを主材として形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の軒裏天井構造。
- 所定の耐火性能を備えて建物の軒の裏側に設けられる軒裏天井板の上方に設けられ、耐火断熱層と、熱遮断層と、吸熱層のいずれか1つの層により、又は2つ若しくは全ての層を積層して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐火補強体。
- 軒の桁行き方向に沿って所定の耐火性能を有する複数枚の軒裏天井板を敷き並べて軒裏空間を形成する請求項1に記載した軒裏天井構造の耐火補強方法であって、
いずれか1枚の軒裏天井板を取り外して開口部を形成し、
該開口部から軒裏空間に向けて可撓性を有し且つ軒裏天井板数枚分に相当する長さを有する耐火補強体を挿入すると共に前記桁行き方向に当該耐火補強体を送り込んで前記軒裏天井板の上方に敷き並べ、その後、前記取り外した軒裏天井板を開口部に再び取り付けることを特徴とする軒裏天井構造の耐火補強方法。 - 前記いずれか1枚の軒裏天井板を取り外して前記開口部を形成した後、
所定の間隔を空けてさらに1枚の軒裏天井板を取り外して他の開口部を設け、
前記開口部から軒裏空間に向けて前記耐火補強体を挿入すると共に前記桁行き方向に当該耐火補強体を送り込みつつ他の開口部側から当該耐火補強体を引き寄せて前記軒裏天井板の上面に敷き並べることを特徴とする請求項8に記載の軒裏天井構造の耐火補強方法。
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