JP2008238188A - ろう付け用複合材およびそれを用いたろう付け製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 NiまたはNi−Crを含む合金層と、TiまたはTi合金層と、Ni−Crを含む合金層との、3層を積層してなる積層構造を備えている。あるいは、基材の表面上に、前記の3層を積層してなる積層構造を備えている。また、NiまたはNi−Crを含む合金層と、TiまたはTi合金層とを一組として、複数組積層した構成とすることも可能である。
【選択図】 図1
Description
あるいは、ステンレス鋼や、ニッケル基およびコバルト合金などの材料からなる部品のろう付け用材として、接合部位の耐食性に優れた各種ニッケルろうに、Ni,Cr,Ni−Cr合金のうちのいずれかの金属粉末を4重量%〜30重量%添加してなるニッケルろう材が提案されている。
また、自己ろう付け性を有するクラッド材として、Ni−Tiクラッド材を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
またその他にも、Ni−Ti−Crろう材(特許文献2参照)、Ni−Cr−Cuろう材(特許文献3参照)等が提案されている。
すなわち、燃料電池用の熱交換器や、排ガス再循環装置における、配管等の主要な接合部位は、高温の熱流体や、腐食性の高い液体もしくはガス等に曝され続けることになるが、そうすると、従来のステンレス基ろう付け用クラッド材では、ろう材として銅を用いていることに起因して、腐食や劣化が生じることが避け難い。
必要とする。このため、製品の生産性が著しく低いという問題があり、延いては製造コストの低廉化が極めて困難である。このような問題は、JIS準拠のニッケルろう材についても同様である。
また、JIS準拠のアモルファスニッケルろう材は、極めて脆いという機械的強度上の性質を有しているので、加工が極めて困難であり、またろう付け工程自体や組み立て工程での取り扱いが煩雑あるいは困難であるという問題がある。
また、Ni−Cr−Cuろう材は、湿潤環境下での耐食性については比較的良好であるが、例えば自動車の排気ガスなどの高温腐食性ガス等に対する耐高温耐食性に関しては十分ではなく、そのような用途には実際上使用できないという問題がある。
またはTi合金層と、Ni−Crを含む合金層との、3層を積層してなるものとしている。これにより、機械的な加工性が良好でなく、かつ化学的反応性が高くて表面に酸化物や窒化物もしくは炭化物を形成しやすいTiまたはTi合金層を、機械的加工性が良好で、かつ化学的反応性が高くないNiまたはNi−Crを含む合金層とNi−Crを含む合金層との間に挟み込んだ積層構造とすることができる。その結果、耐高温・耐酸化性に優れており、かつ加工性およびろう流れ性が良好で生産性の高い、ろう付け用複合材およびそれを用いたろう付け製品を実現することが可能となる。
図1は、本発明の実施の形態に係るろう付け用複合材の、3層積層構造を示す図、図2は、その3層積層構造をステンレス鋼製の基材上に設けた構成の概要を示す図、図3は、図2に示した積層構造の上下(積層順序)を逆にして基材上に設けた場合を示す図である。また図4、図5は、棒状のステンレス鋼製の基材の表面に本実施の形態に係る3層積層構造を設けた場合の一例を示す図である。
この3層の積層構造は、図2、図3に示したように、ステンレス鋼からなる基材1の上に積層してもよい。
但し、この場合には、最外層がNiまたはNi−Crを含む合金層3となるようにし、かつその積層構造のうちの少なくとも1層はNi−Crを含む合金層(Ni−Cr系合金層)を必ず含むようにする。これは、最外層にTiまたはTi合金層2が配置されると、TiまたはTi合金層2の表面が外気やろう付け炉内の酸素・窒素・炭素等と反応して、酸化物や窒化物あるいは炭化物を生じてしまう虞があるためである。また、積層構造のうちの少なくとも1層はNi−Crを含む合金層とすることにより、後述するようなCrの持つ耐酸化性を発揮させることができるようにするためである。
そこで、本発明の実施の形態に係るろう付け用複合材では、反応性の高いTiまたはTi合金層2を、それよりも顕著に反応性が低くて安定的なNiまたはNi−Crを含む合金層1とNi−Crを含む合金層3との間に挟み込んだ(いわゆるサンドイッチ構造にした)構成とすることにより、上記のようなTiまたはTi合金層2が高融点の酸化物・窒化物・炭化物などを形成することを防ぐことができるようにしている。その結果、本発明の実施の形態に係るろう付け用複合材によれば、ろう流れ性の低下や強度低下等を解消することが可能となる。
しかし、本発明の実施の形態に係るろう付け用複合材によれば、そのようなTiまたはTi合金層2を、機械的加工性が良好なNiまたはNi−Crを含む合金層1とNi−Crを含む合金層3との間に挟み込んだ積層構造としているので、このろう付け用複合材全体としての、圧延・プレス・絞り加工などにおける機械的な加工性を良好なものとすることができる。また、そのような機械的な加工に起因したろう付け部位近傍や製品全体の、製品としての品質に悪影響のある反りや歪み等の発生を、抑制ないしは解消することが可能となる。
これは、NiまたはNiを含む合金とTiとを接合させると、そのそれぞれの単体での融点(Ni;1455℃、Ti;1666度)よりも大幅に低い温度(約950℃)で液相が生じ始めるので、例えば従来のNi層とCu層との積層の場合と比較して、融点を大幅に引き下げることが可能となるからである。
これは、ろう付けされた後に、ろう付け部位のCrの濃度が8重量%以上であれば、そのろう付け部位の十分な耐酸化性を得ることができるが、8重量%未満であると耐酸化性
が著しく低下するからである。このような知見は、以下の実施例で詳述するように、本発明者達による実験によって確認されている。
そして、それらのろう付け用複合材等を用いて、実際のろう付け工程とほぼ同様に、熱処理炉中で10−3Paの真空雰囲気を保ちながら、まず900℃に予熱した後、引き続いて1200℃に加熱し、ろう付けの対象としてSUS304製のパイプに対してろう付けを行って、その各実施例および各比較例の各々について、ろう付け特性を評価した。なお、比較例については、加熱温度を1200℃以外に若干変更して設定したものもある。このようにして行った実験の結果を、図6にまとめて示した。
厚さ0.20mmのNi条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.77mmのNi−25重量%Cr条とを、圧延法によってクラッドして、Ni,Ti,Ni−Crの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材(3層積層構造)を、SUS304板の上に置き、さらにその上にSUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.77mmのNi−25重量%Cr条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.20mmのNi条とを、圧延法によってクラッドして、Ni−Cr,Ti,Niの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした(すなわち基材の厚さは除く。以下の各実施例でも同様)。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.32mmのNi条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.56mmのNi−20重量%Cr条とを、圧延法によってクラッドして、Ni,Ti,Ni−Crの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して
、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.15mmのNi条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.88mmのNi−30重量%Cr条とを、圧延法によってクラッドして、Ni,Ti,Ni−Crの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.5mmのNi−25重量%Cr条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.5mmのNi−25重量%Cr条とを、圧延法によってクラッドして、Ni−Cr,Ti,Ni−Crの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.77mmのNi−20重量%Cr条と、厚さ1.0mmのTi−6重量%A1−4重量%V条と、厚さ0.20mmのNi条とを、圧延法によってクラッドして、Ni−Cr,Ti系合金,Niの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
厚さ0.44mmのNi条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.41mmのNi−20重量%Cr条とを、圧延法によってクラッドして、Ni,Ti,Ni−Crの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件のうち加熱温度を1120℃に変更してろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.38mmのNi条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.49mmのNi−20重量%Cr条とを、圧延法によってクラッドして、Ni,Ti,Ni−Crの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件(加熱温度1120℃)でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.38mmのNi条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.38mmのNi条とを、圧延法によってクラッドして、Ni,Ti,Niの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記の実施例で用いたプロセス条件(加熱温度1200℃、圧力10−3P
a)でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.96mmのNi−20重量%Cr条と、厚さ1.0mmのTi条とを、圧延法によってクラッドして、Ti,Ni−Crの2層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その2層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.26mmのNi−40重量%Cr条と、厚さ0.5mmのCu条と、厚さ0.26mmのNi−40重量%Cr条とを、圧延法によってクラッドして、Ni−Cr,Cu,Ni−Crの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件のうち加熱温度を1250℃に変えて、ろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、Cu条を圧延法により張り合わせてCu層を形成し、圧延を繰り返して、そのCu層の厚さを70μmとした。このようして作製した、従来の技術に係るクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置し、上記の実施例で用いたプロセス条件を、加熱温度1120℃、圧力10−1Paに変えて、ろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の片面上に、市販されているような従来の一般的な粉末状のNiろう材(Ni−19重量%Cr−10重量%Si)を合成樹脂バインダで溶いたものを塗布して、従来の技術に係るクラッド材を作製した。そしてそのクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置し、上記の実施例で用いたプロセス条件を、加熱温度1120℃、圧力10−1Paに変えて、ろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
以下であれば良好、5mg/cm2〜10mg/cm2であれば微小、そして10mg/cm2を超えるものについては腐食有りと判定するものとした。
図6によれば、Ni層とTi層とNi−Cr層との3層積層構造であっても、比較例2の構成のように最外層に反応性の高いTi層を配置した場合には、ろうの流れ性が著しく低下するが、本発明による実施例1〜8の構成のように最外層にNi層またはNi−Cr層を配置して、Ti層が露出しないようにした場合には、ろうの流れ性が飛躍的に向上することが確認された。このようなろうの流れ性の向上は、実施例1のような基材を有さない3層積層構造のみの構成であっても、実施例2のような基材上に3層積層構造を形成してなる構成であっても、ほぼ同様に得ることが可能であることが確認された。
また、実施例5の構成のように、Ni−Cr,Ti,Ni−Crという構成にすることで、ろうの混合が、より均一になることが確認できた。
また、実施例6の構成のように、Ti層を、Ti合金層にしても、良好な結果が得られることが確認された。
また、Cu層を含む積層構造の場合には、湿式による耐食性試験結果は良好であったものの、耐酸化性が不十分であることが判明した。
また、従来の技術に係る比較例4の構成では、ろう流れ性については良好な結果が得られたが、耐食性が不十分であり、高腐食環境下での使用に耐えることが不可能であることが確認された。
また、従来の技術に係る比較例5の構成では、ろう流れ性も耐食性も共に良好な結果が得られたものの、粉末ろう材であること、またそのため有機系バインダ等を用いなければならないことに起因して、生産性が著しく低くなることは避け難い。しかし、これとは対照的に、本発明による実施例1〜8の構成の場合には、帯状のソリッドなクラッド材であるから、ろう付け工程での生産性が飛躍的に向上することは明らかである。
2 TiまたはTi合金層
3 Ni−Crを含む合金層
4 基材
Claims (7)
- NiまたはNi−Crを含む合金層と、TiまたはTi合金層と、Ni−Crを含む合金層との、3層を積層してなる積層構造を備えた
ことを特徴とするろう付け用複合材。 - 請求項1記載のろう付け用複合材において、
基材の表面上に、前記3層を積層してなる積層構造を備えた
ことを特徴とするろう付け用複合材。 - 請求項2記載のろう付け用複合材において、
前記基材が、ステンレス鋼である
ことを特徴とするろう付け用複合材。 - 請求項2または3記載のろう付け用複合材において、
前記基材の表裏両面にそれぞれ前記3層を積層してなる
ことを特徴とするろう付け用複合材。 - 請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のろう付け用複合材において、
前記3層にさらに加えて、TiまたはTi合金層と、NiまたはNi−Crを含む合金層とを1組として、この順で1組または複数組を積層して、最外層がNiまたはNi−Crを含む合金層となるようにし、かつ当該積層のうちの少なくとも1層はNi−Crを含む合金層とした
ことを特徴とするろう付け用複合材。 - 請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載のろう付け用複合材において、
前記積層全体のうちに、ろう付け後のろう部にCrが8重量%以上残るような含有量でCrを含有してなる
ことを特徴とするろう付け用複合材。 - 請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載のろう付け用複合材を用いたろう付けによって接合された部位を有する
ことを特徴とするろう付け製品。
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