JP4835863B2 - ろう付け用複合材およびそれを用いたろう付け製品 - Google Patents
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Description
あるいは、ステンレス鋼や、ニッケル基およびコバルト合金などの材料からなる部品のろう付け用材として、接合部位の耐食性に優れた各種ニッケルろうに、Ni,Cr,Ni−Cr合金のうちのいずれかの金属粉末を4重量%〜30重量%添加してなるニッケルろう材が提案されている。
また、自己ろう付け性を有するクラッド材として、Ni−Tiクラッド材を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
またその他にも、Ni−Ti−Crろう材(特許文献2参照)、Ni−Cr−Cuろう材(特許文献3参照)等が提案されている。
ところが、このステンレス基ろう付け用クラッド材を、例えば燃料電池用の熱交換器や、排ガス再循環装置(EGR;Exhaust Gas Re−circulation)用クーラののような、いわゆる熱流体を扱う装置における各種部材の接合用に用いる場合、ステンレス基ろう付け用クラッド材では、耐食性が不十分であるため、実際上使用することができないという、致命的な問題がある。
すなわち、燃料電池用の熱交換器や、排ガス再循環装置における、配管等の主要な接合部位は、高温の熱流体や、腐食性の高い液体もしくはガス等に曝され続けることになるが、そうすると、従来のステンレス基ろう付け用クラッド材では、ろう材として銅を用いていることに起因して、腐食や劣化が生じることが避け難い。
また、Ni−Tiクラッド材は、湿潤環境下での良好な耐食性を有しているものの、耐高温・耐酸化性が不十分であるという問題がある。
とに粉末ろう材を添付する作業が必要となり、その接合作業工程が煩雑で、多大な労力を必要とする。このため、製品の生産性が著しく低いという問題があり、延いては製造コストの低廉化が極めて困難である。このような問題は、JIS準拠のニッケルろう材についても同様である。
図1は、本発明の実施の形態に係るろう付け用複合材の、3層積層構造を示す図、図2は、その3層積層構造をステンレス鋼製の基材上に設けた構成の概要を示す図、図3は、図2に示した積層構造の上下(積層順序)を逆にして基材上に設けた場合を示す図である。また図4、図5は、棒状のステンレス鋼製の基材の表面に本実施の形態に係る3層積層構造を設けた場合の一例を示す図である。
この3層の積層構造は、図2、図3に示したように、ステンレス鋼からなる基材4の上に積層してもよい。
これは、最外層にTiまたはTi合金層2が配置されると、TiまたはTi合金層2の表面が外気やろう付け炉内の酸素・窒素・炭素等と反応して、酸化物や窒化物あるいは炭化物を生じてしまう虞があるためである。また、その積層構造のうちの少なくとも1層はFe−Crを含む合金層とすることにより、後述するようなCrの持つ耐酸化性を発揮させることができると共に、Fe−Crの持つエロージョン抑制作用を発揮させることがで
きるようにするためである。
そこで、本発明の実施の形態に係るろう付け用複合材では、反応性の高いTiまたはTi合金層2を、それよりも顕著に反応性が低くて安定的な、Ni−Fe−Crを含む合金層1とFe−Crを含む合金層3との間に挟み込んだ構成としている。このようにすることにより、ろう流れ性の低下や強度低下等を解消することが可能となると共に、ろう付け部位におけるエロージョンの発生を抑止することが可能となる。
しかし、本発明の実施の形態に係るろう付け用複合材によれば、そのようなTiまたはTi合金層2を、機械的加工性が良好な、Ni−Fe−Crを含む合金層1とFe−Crを含む合金層3との間に挟み込んだ積層構造とすることで、このろう付け用複合材全体としての、圧延・プレス・絞り加工などにおける機械的な加工性を良好なものとすることができる。また、そのような機械的な加工に起因したろう付け部位近傍や製品全体の、製品としての品質に悪影響のある反りや歪み等の発生を、抑制ないしは解消することが可能となる。
これは、FeとTiとを接合させると、そのそれぞれの単体での融点(Fe;1538℃、Ti;1666度)よりも大幅に低い温度(約1085℃)で液相が生じ始めるので、例えば従来のNi層とCu層との積層の場合と比較して、融点を大幅に引き下げることが可能となるからである。
ここで、Fe−Crを含む合金層3は、フェライト系ステンレス鋼でもよい。これは、フェライト系ステンレス鋼はクラッドに適した加工性を有しており、かつ汎用性が高くて扱いやすく、材料や加工の低コスト化に寄与することが可能であるなど、工業的な種々の特長を有しているからである。
これは、ろう付けされた後に、ろう付け部位のCrの濃度が8重量%以上であれば、そのろう付け部位の十分な耐酸化性を得ることができるが、8重量%未満であると耐酸化性が急峻に低下する虞があるからである。このような知見は、以下の実施例で詳述するように、本発明者達による実験によって確認されている。
具体的には、上記の実施の形態で説明したような諸構成に適合する範囲内で、材料、厚さを種々変更し、複数種類のろう付け用複合材を、実施例1〜5のろう付け用複合材として作製した。また、それとの比較例として、上記の実施の形態で説明した材料とは異なる種々の材料を用いて、比較例の(および従来技術に係る)ろう付け用複合材を作製した。
そして、それらのろう付け用複合材等を用いて、実際のろう付け工程とほぼ同様に、熱処理炉中で10−3Paの真空雰囲気を保ちながら、まず900℃に予熱した後、引き続いて1200℃に加熱し、ろう付けの対象としてSUS304製のパイプに対してろう付けを行って、その各実施例および各比較例の各々について、ろう付け特性を評価した。なお、比較例については、加熱温度や圧力を上記の値とは若干変更して設定したものもある。このようにして行った実験の結果を、図6にまとめて示す。
厚さ0.45mmのSUS430条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.66mmのSUS304条とを、圧延法によってクラッドし、さらに圧延を繰り返して、その3層積層構造全体の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材(3層積層構造)を、SUS304板の上に置き、さらにその上にSUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
厚さ0.55mmのSUS304条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.55mmのSUS304条とを、圧延法によってクラッドし、さらに圧延を繰り返して、その3層積層構造全体の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材を、SUS304板の上に置き、さらにその上にSUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.66mmのSUS304条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.45mmのSUS430条とを、圧延法によってクラッドし、さらに圧延を繰り返して、その3層積層構造全体の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上にSUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
厚さ0.66mmのSUS304条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.35mmのSUS430条とを、圧延法によってクラッドし、さらに圧延を繰り返して、その3層積層構造全体の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上にSUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
厚さ0.82mmのSUS304条と、厚さ1.0mmのTi−6重量%A1−4重量%V合金条と、厚さ0.67mmのSUS430条とを、圧延法によってクラッドし、さらに圧延を繰り返して、その3層積層構造全体の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上にSUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.40mmのNi条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.40mmのNi条とを、圧延法によってクラッドして、Ni,Ti,Niの3層積層構造を形成した。そしてさらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さ(すなわちSUS304製の基材の厚さを含まず)を70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.84mmのNi条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.38mmのFe条とを、圧延法によってクラッドし、さらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置して、上記のプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.65mmのNi条と、厚さ1.0mmのTi条と、厚さ0.58mmのインバー合金(Fe−36重量%Ni)条とを圧延法によってクラッドし、さらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置し、上記の実施例で用いたプロセス条件を加熱温度1120℃に変えて、ろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.96mmのNi−20重量%Cr合金条と、厚さ1.0mmのTi条とを、圧延法によってクラッドし、さらに圧延を繰り返して、その2層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置し、上記の実施例で用いたプロセス条件でろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、厚さ0.26mmのNi−40重量%Cr合金条と、厚さ0.5mmのCu条と、厚さ0.26mmのNi−40重量%Cr合金条とを、圧延法によってクラッドし、さらに圧延を繰り返して、その3層積層構造の厚さを70μmとした。このようして作製したクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置し、上記の実施例で用いたプロセス条件を加熱温度1250℃に変えて、ろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の上に、Cu条を圧延法により張り合わせてCu層を形成し、圧延を繰り返して、そのCu層の厚さを70μmとした。このようして作製した、従来の技術に係るクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置し、上記の実施例で用いたプロセス条件を、加熱温度1120℃、圧力10−1Paに変えて、ろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
SUS304製の帯状の基材の片面上に、市販されているような従来の一般的な粉末状のNiろう材(Ni−19重量%Cr−10重量%Si)を合成樹脂バインダで溶いたものを塗布して、従来の技術に係るクラッド材を作製した。そしてそのクラッド材の上に、SUS304製のパイプを配置し、上記の実施例で用いたプロセス条件を、加熱温度1120℃、圧力10−1Paに変えて、ろう付け工程を行い、そのろう付け特性を評価した。
後での重量変化量および断面観察によって、酸化の程度を判定した。その具体的な判定基準としては、酸化による重量増加分が5mg/cm2
以下であれば良好、5mg/cm2〜10mg/cm2であれば微小、そして10mg/cm2を超えるものについては腐食有りと判定するものとした。
図6によれば、比較例4の構成のような最外層に反応性の高いTi層を配置した場合には、ろうの流れ性が著しく低下してしまうが、本発明による実施例1〜5の構成の場合には、Ti層が最外層に露出しないようにしたので、ろうの流れ性の飛躍的な向上を達成できることが確認された。このようなろうの流れ性の向上は、実施例1のような基材を有さない3層積層構造のみの構成であっても、実施例3のようなステンレス鋼製の基材上に3層積層構造を形成してなる構成であっても、ほぼ同様に得ることが可能であった。
有機系バインダ等を用いなければならないことなどに起因して、生産性が著しく低くなることは避け難かった。しかし、これとは対照的に、本発明による実施例1〜5の構成の場合には、帯状のソリッドなクラッド材であるから、ろう付け工程での生産性を飛躍的に向上させることができた。
2 TiまたはTi合金層
3 Fe−Crを含む合金層
4 基材
Claims (3)
- オーステナイト系ステンレス鋼であるNi−Fe−Cr合金からなる層と、TiまたはAlを6重量%、Vを4重量%含むTi−Al−V合金からなる層と、フェライト系ステンレス鋼であるFe−Cr合金またはオーステナイト系ステンレス鋼であるNi−Fe−Cr合金からなる層との、3層を積層してなる積層構造を備えた
ことを特徴とするろう付け用複合材。 - 請求項1に記載のろう付け用複合材において、
前記積層全体のうちに、ろう付け後のろう部にCrが8重量%以上残るような含有量でCrを含有してなる
ことを特徴とするろう付け用複合材。 - 請求項1または2に記載のろう付け用複合材を用いたろう付けによって接合された部位を有する
ことを特徴とするろう付け製品。
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