JP2008234860A - 全固体型リチウム二次電池製造方法および全固体型リチウム二次電池 - Google Patents

全固体型リチウム二次電池製造方法および全固体型リチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】不良品の発生率が低い全固体型リチウム二次電池を製造すること。
【解決手段】正極膜3および負極膜5それぞれに接触する集電極のうち、基板1にも接触する集電極を、当該基板1と接触する面と対向するもう一方の面において、少なくともひとつの凹状の窪みを有するように成膜し、集電極が有する凹状の窪みにおいて、正極用もしくは負極用の電極膜を積層する際に、集電極が有する凹状の窪みの周縁部が固体電解質膜4と接触する面と、当該電極膜が固体電解質膜4と接触する面との段差が、固体電解質膜4の膜厚の20%以下となるように電極膜を成膜する。例えば、凹状の窪みを有する正極集電極2を、基板1上に成膜し、当該凹状の窪みにおいて正極膜3を積層する際に、正極集電極2が有する凹状の窪みの周縁部が固体電解質膜4と接触する面と、正極膜3が固体電解質膜4と接触する面との段差が、固体電解質膜4の膜厚の20%以下となるように成膜する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、全固体型リチウム二次電池製造方法および全固体型リチウム二次電池に関する。
従来より、リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム二次電池やニッケル水素二次電池など他の二次電池と比較して、エネルギー密度が大きく、充放電のサイクル特性に優れていることから、小型化、薄型化が進む携帯電話、ノート型パソコン、携帯型音楽プレイヤーなどのモバイル電子機器の電源として広く用いられている。
しかし、可燃性の有機電解液を用いる現状のリチウムイオン二次電池においては、当該有機電解液の漏出を防止するために、強固な電池筐体やアルミラミネート外装体を用いる必要があるために、電池の薄型化には限界がある。このために、今後普及が進むことが予想されるペーパー電子ディスプレイや超薄型のRF−ID(Radio frequency identification)タグなどに、現状のリチウムイオン二次電池を搭載することは非常に困難である。
このようなことから、薄膜作製技術(スパッタ法や真空蒸着法などの乾式プロセスや、ゾルゲル法などの湿式プロセス)を用いて、固体の正極膜、固体電解質膜、固体の負極膜を基板上に積層させ、漏液の問題がなく、広い温度範囲で使用可能な全固体型の二次電池を製造する試みが行われている。例えば、基板として一般的に用いられてきた石英やシリコンウエハに代わって、ポリマーフィルムを基板として用い、薄膜作製技術によって、当該フィルム上に固体の正極膜、固体電解質膜、固体の負極膜を積層させることにより、折り曲げることが可能なフレキシブル電池を製造することができれば、ペーパー電子ディスプレイやRF−IDタグへの応用も広がると予想される。
これまでに、全固体型リチウム二次電池については、数多くの報告がなされている。例えば、非特許文献1では、RF(高周波)スパッタ法を用いて、LiCoO2からなる正極を成膜して電気炉中で熱処理を行った後に、固体電解質膜としてLiPON(Li3PO4-xNx)、負極膜としてリチウム金属を、それぞれRFスパッタ法、真空蒸着法を用いて積層して全固体型薄膜電池を製造し、約0.8mWh/cm2のエネルギー密度と良好な充放電サイクル特性を達成している。
また、特許文献1では、導電性基板上にLiMn2O4正極膜、Li2O-V2O5-SiO2からなる固体電解質膜、リチウムなどの金属負極膜を積層することによって全固体型二次電池を製造し、200回程度の充放電サイクルにおいても放電容量の減衰が小さい、良好な電池性能を実現している。
また、特許文献2では、正極膜、固体電解質膜、負極膜を一つのユニットとする全固体型二次電池を、同一基板上に、複数ユニット製造し、これら複数ユニットを、共通電極膜などを介して、直列あるいは並列に多層積層することによりコンパクトで高い容量を有する電池を実現している。
J. B. Bates, et al., ''Preferred Orientation of Polycrystalline LiCoO2 Films.", Journal of The Electrochemical Society, Vol. 147, No. 1, pp59-70, 2000 特開平10−83838号公報 特許第3531866号公報
ところで、上記した従来の技術は、正極膜、固体電解質膜、負極膜を積層する際に、正極膜と負極膜が接触するために、ショートが引き起こされる場合があることから、不良品が発生する可能性のある全固体型リチウム二次電池の製造方法であるという問題点があった。
ここで、上記した従来の技術は、正極膜、固体電解質膜、負極膜をそれぞれ任意の二次元形状に成膜するために用いるマスクを、積層プロセスごとに交換して全固体型リチウム二次電池を製造する。これにより、正極膜または負極膜を覆うように、大きな面積を有する固体電解質膜を成膜することで、正極膜と負極膜とを分け隔てて、正極膜と負極膜が接触して生じるショートを防止する。例えば、図9の右側の破線で囲った領域にて示すように、正極膜が完全に固体電解質膜に覆われて、負極膜と隔離されるように電池エッジ部が整然とした積層構造となっている場合には、ショートは起こり得ない。なお、図9は、従来技術の問題点を説明するための図である。
しかしながら、基板上に作製された正極集電極膜上に正極膜を積層し、さらに上記と同様に正極膜および負極膜よりも大きな面積を有する固体電解質膜を積層した場合、図9の左側の破線で囲った領域にて示すように、電池エッジ部の段差がある領域において、固体電解質膜が正極膜のエッジ面に回り込むように成膜され、この電池エッジ部において固体電解質膜または負極膜の膜厚が薄くなるので、ショートが引き起こされる場合が多くあることから、不良品が発生する可能性のある全固体型リチウム二次電池の製造方法であるという問題点があった。
また、電池の実効面積を広げるために、正極集電極上に積層された正極膜と同じ面積になるように負極膜を固体電解質膜上に積層すると、固体電解質膜の膜厚が電池エッジ部で薄くなっているためにショートが引き起こされる場合があることから、不良品が発生する可能性のある全固体型リチウム二次電池の製造方法であるという問題点があった。
このように、上記した従来の技術は、ショートが引き起こされて、電圧がゼロになる、電圧を示してもソフトショートにより充放電を行っても電池として作動しないなどの事象が起こり、不良品が発生する可能性のある全固体型リチウム二次電池の製造方法であるという問題点があった。
なお、図9に示すように、基板上に、正極集電極、正極膜、固体電解質膜、負極膜、負極集電極の順に積層して全固体型リチウム二次電池を製造する場合において、上述した問題点があったことを説明したが、基板上に、負極集電極、負極膜、固体電解質膜、正極膜、正極集電極の順に積層して全固体型リチウム二次電池を製造する場合においても、同様の問題点があった。
また、上記した複数ユニットからなる全固体型二次電池を直列あるいは並列に多層積層する技術は、ショートが起こる場合がより多くなることが予想され、不良品が発生する可能性のある全固体型リチウム二次電池の製造方法であるという問題点があった。
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、不良品の発生率が低い全固体型リチウム二次電池製造方法および全固体型リチウム二次電池を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に係る発明は、リチウムイオン導電性の固体からなる固体電解質膜が、リチウムイオンの挿入および脱離が可能な固体からなる正極膜と、リチウム金属もしくはリチウムイオンの吸蔵および放出が可能な固体からなる負極膜とによって挟まれて積層される構成からなる全固体型リチウム二次電池を製造する全固体型リチウム二次電池製造方法であって、前記正極膜および前記負極膜それぞれに接触する集電極のうち、前記全固体型リチウム二次電池が製造される基板にも接触する集電極を、当該基板と接触する面と対向するもう一方の面において、少なくともひとつの凹状の窪みを有するように成膜する集電極成膜工程と、前記集電極成膜工程によって成膜される前記集電極が有する前記凹状の窪みにおいて、前記正極膜または前記負極膜としての電極膜を積層する際に、前記集電極が有する前記凹状の窪みの周縁部が前記固体電解質膜と接触する面と、前記電極膜が前記固体電解質膜と接触する面との段差が、前記固体電解質膜の膜厚の20%以下となるように前記電極膜を成膜する電極膜成膜工程と、を含んだことを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、上記の発明において、前記集電極成膜工程によって成膜される前記集電極が有する前記凹状の窪みの周縁部と、前記電極膜成膜工程によって成膜される前記電極膜の表面とが、連続的に被膜されるように前記固体電解質膜を成膜する固体電解質膜成膜工程をさらに含んだことを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、上記の発明において、前記集電極成膜工程は、前記集電極が有する前記凹状の窪みの開口部中央から俯瞰した場合に、当該凹状の窪みの底面および側面が、当該凹状の窪みの開口部の周辺部によって遮蔽されないように、前記集電極を成膜することを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、上記の発明において、Co、Ni 、Mn、Vの少なくとも1つを含む遷移金属系酸化物を前記正極膜として成膜する正極膜成膜工程をさらに含んだことを特徴とする。
また、請求項5に係る発明は、上記の発明において、前記集電極成膜工程は、前記凹状の窪みの底面部分を除いた側壁部分において、当該側壁部分の最深部または当該凹状の窪みの開口部から一定の深さの部分から、当該凹状の窪みの開口部までの面を、絶縁性物質によって構成するように前記集電極を成膜することを特徴とする。
また、請求項6に係る発明は、上記の発明において、前記正極膜、前記負極膜、前記固体電解質膜、前記正極膜に接触する集電極、および前記負極膜に接触する集電極それぞれにおいて、外気に露出される表面を絶縁性物質からなる保護層により被膜する保護層被膜工程をさらに含むことを特徴とする。
また、請求項7に係る発明は、上記の発明において、請求項1〜6のいずれか一つに記載の全固体型リチウム二次電池製造方法により製造された全固体型リチウム二次電池であることを特徴とする。
請求項1または7の発明によれば、正極膜および負極膜それぞれに接触する集電極のうち、全固体型リチウム二次電池が製造される基板にも接触する集電極を、当該基板と接触する面と対向するもう一方の面において、少なくともひとつの凹状の窪みを有するように成膜し、成膜される集電極が有する凹状の窪みにおいて、正極膜または負極膜としての電極膜を積層する際に、集電極が有する前記凹状の窪みの周縁部が固体電解質膜と接触する面と、電極膜が固体電解質膜と接触する面との段差が、固体電解質膜の膜厚の20%以下となるように電極膜を成膜するので、電池エッジ部でのショートを回避することができ、不良品の発生率を低くすることが可能になる。また、これによって、「電池エッジ部でのショートを回避するために、固体電解質の上に作製する電極膜を、当該固体電解質より小さい面積になるように成膜すると、電池の実効面積が小さくなり、電池のエネルギー密度が減少する結果、非効率的な電池しか製造できない」という問題点を解消でき、エネルギー密度が高い、効率的な全固体型リチウム二次電池を容易に製造することが可能になる。
また、請求項2または7の発明によれば、成膜される集電極が有する凹状の窪みの周縁部と、成膜される電極膜の表面とが、連続的に被膜されるように固体電解質膜を成膜するので、基板上に作製される集電極と電極膜とを固体電解質膜によって密に被膜して電池エッジ部でのショートをさらに回避することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。すなわち、電極膜と集電極との段差に起因する固体電解質膜の膜厚の局所的な不均一などの欠陥を防止して電池エッジ部でのショートをさらに回避することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。
また、請求項3または7の発明によれば、集電極が有する凹状の窪みの開口部中央から俯瞰した場合に、当該凹状の窪みの底面および側面が、当該凹状の窪みの開口部の周辺部によって遮蔽されないように、集電極を成膜するので、集電極が有する凹状の窪みに電極膜を密に均一に積層して電池エッジ部でのショートをさらに回避することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。
また、請求項4または7の発明によれば、Co、Ni 、Mn、Vの少なくとも1つを含む遷移金属系酸化物を正極膜として成膜するので、結晶構造や結晶中の遷移金属イオンの価数状態から判断して、円滑なリチウムイオンの挿入および脱離を実現する材料を用いて正極膜を作製することができ、エネルギー密度が高い、より効率的な全固体型リチウム二次電池を製造することが可能になる。
また、請求項5または7の発明によれば、凹状の窪みの底面部分を除いた側壁部分において、当該側壁部分の最深部または当該凹状の窪みの開口部から一定の深さの部分から、当該凹状の窪みの開口部までの面を、絶縁性物質によって構成するように集電極を成膜するので、基板上に作製される集電極と、固体電解質膜の上に作製される電極膜との間のショートを回避することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。
また、請求項6または7の発明によれば、正極膜、負極膜、固体電解質膜、正極膜に接触する集電極、および負極膜に接触する集電極それぞれにおいて、外気に露出される表面を絶縁性物質からなる保護層により被膜するので、安定性やハンドリング性に優れた電池を製造することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。
以下に添付図面を参照して、この発明に係る全固体型リチウム二次電池製造方法および全固体型リチウム二次電池の実施例を詳細に説明する。なお、以下では、実施例1に係る全固体型リチウム二次電池製造方法および全固体型リチウム二次電池の特性を説明した後に、実施例1と同様に、実施例2に係る全固体型リチウム二次電池製造方法および全固体型リチウム二次電池の特性について説明し、さらに、実施例1に係る全固体型リチウム二次電池の保護層の有用性を、比較例1において説明し、最後に、実施例1に係る全固体型リチウム二次電池の有用性を、実施例1に係る全固体型リチウム二次電池と従来技術に係る全固体型リチウム二次電池との比較例2において説明する。
[実施例1における全固体型リチウム二次電池の製造方法]
まず最初に、図1および図2を用いて、実施例1における全固体型リチウム二次電池製造方法の概要および主たる特徴を具体的に説明する。図1は、実施例1における全固体型リチウム二次電池の構成を説明するための俯瞰図および断面図であり、図2は、実施例1における全固体型リチウム二次電池の正極集電極の成膜から正極膜の成膜にいたる工程を説明するための断面図である。
実施例1における全固体型リチウム二次電池は、リチウムイオン導電性の固体からなる固体電解質膜が、リチウムイオンの挿入および脱離が可能な固体からなる正極膜と、リチウム金属もしくはリチウムイオンの吸蔵および放出が可能な固体からなる負極膜とによって挟まれて積層される構成からなることを概要とし、不良品の発生率が低い製造方法によって製造できることに主たる特徴がある。
この主たる特徴について簡単に説明すると、図1に示すように、まず、石英からなる基板1(15mm×15mm、厚さ0.3mm)上の中央部に、凹状の窪みを有する正極集電極2を作製する。
具体的には、凹状の窪みを有する正極集電極2を、図2の(A)〜(F)に示す工程により作製する。まず、図2の(A)に示すように、基板1の中央部に第一マスク8をセットする。ここで、第一マスク8は、厚さ50μmのマスクであり、正方形 (10mm×10mm)と長方形(2mm×4mm)とが合わさった開口部を有する(図1の俯瞰図における正極集電極2の形状を参照)。なお、長方形(2mm×4mm)の部分における開口部は、正極集電極2における正極端子を形成するために使用されるものである。
続いて、図2の(B)に示すように、第一マスク8がセットされた基板1を、RFマグネトロンスパッタリング装置内に設置して、10-5Paオーダーまで減圧した後、アルゴンガス(1.0Pa)をフローさせながら、Ptターゲットを用い、RF出力:100Wで、膜厚が0.5μmになるようにPt(白金)を成膜する。この状態から、第一マスク8を取り外すことにより、図2の(C)に示すように、正極集電極2の下部構造が得られる。
そして、図2の(D)に示すように、得られた正極集電極2の下部構造の中心部に、第二マスク9 (開口部:7mm×7mm、厚さ:50μm)を、正極集電極2の下部構造と接触するようにセットし、さらに、基板1上において電池材料が成膜されない部分をシールドするために、第三マスク10 (開口部:10mm×10mm、厚さ:約50μm)を、基板1にセットする。
そののち、図2の(E)に示すように、Pt(白金)を、図2の(B)と同一条件で、厚さ0.5μmになるようにスパッタし、正極集電極2の上部構造を作製する。この状態から、第二マスク9と第三マスク10とを取り外すことにより、図2の(F)に示すように、正極集電極2の上部構造が得られ、基板1上に凹状の窪みを有する正極集電極2を作製する。
このように、図2の(A)〜(E)に示す工程により、正極集電極2が有する凹状の窪みの開口部中央から俯瞰した場合に、当該凹状の窪みの底面および側面が、当該凹状の窪みの開口部の周辺部によって遮蔽されない構造になるように、正極集電極2を作製する。
続いて、図2の(G)に示すように、第四マスク11 (開口部:7mm×7mm、厚さ:50μm)を、正極集電極2の上部構造を覆って接触するようにセットする。
そして、図2の(H)に示すように、正極集電極2が有する凹状の窪みに、膜厚が0.5μmとなるように成膜時間を調整して、コバルト酸リチウム(LiCoO2)からなる正極膜3を作製する。ここで、正極集電極2が有する凹状の窪みの周縁部が、後述する固体電解質膜4と接触する面と、正極膜3が、後述する固体電解質膜4と接触する面との段差が小さくなるように、すなわち、膜厚が0.5μmに近い値となるように、正極膜3を作製する。
具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)からなる正極膜3の成膜は、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance、ECR)スパッタ法により、コバルト酸リチウムセラミックターゲットを用い、アルゴンと酸素の流通分圧比を40:1、トータルのガス圧を0.14Paに設定し、マイクロ波出力及びRF出力を、それぞれ800Wおよび500Wに設定した条件で行った。なお、本条件下で作製されたLiCoO2正極膜は、電気炉中での熱処理なしでも高結晶性を有していることを、X線回折法などで確認した。
ここで、上述したように、正極集電極2が有する凹状の窪みの周縁部が、後述する固体電解質膜4と接触する面と、正極膜3が当該固体電解質膜4と接触する面との段差が小さくなるように、正極膜3を成膜するが、さらに、当該段差が、次の段階で作製される固体電解質膜4の厚さ(本実施例では、1μm)の20%以下(本実施例では、0.2μm以下)であることが、電池の不良品の発生率を低下させるために望ましい。これについては、後に詳述する。
なお、上記の条件によって成膜された正極膜3は、正極集電極2が有する凹状の窪みの周縁部よりも若干低く、走査型電子顕微鏡(SEM)による精密な観察の結果、その段差は0.18μmであった。また、凹状の窪みを有する負極集電極を基板1上に作製し、当該凹状の窪みに負極膜を作製する場合も、上記と同様の条件で作製される。
そののち、第四マスク11を取り外すことにより、図2の(I)に示すように、基板1上に成膜された正極集電極2が有する凹状の窪み内に、正極膜3が積層された構造が得られ、得られた構造上に、固体電解質膜4として窒素を含有したリン酸リチウム塩であるLiPON(Li3PO4-xNx)を積層する。
すなわち、中央に四角形(8mm×10mm)の開口部を有したマスク(厚さ:50μm)を正極膜3に接触した状態でセットし、Li3PO4をターゲットとするRFマグネトロンスパッタ法により、窒素を流通させながら、膜厚が1.0μmとなるように成膜して、固体電解質膜4を作製する。ここで、LiPONからなる固体電解質膜4が、正極集電極2が有する凹状の窪み内に作製されたLiCoO2からなる正極膜3と、Ptからなる正極集電極2の凹状の窪みの周縁部とを連続的に被覆するように成膜する。
そして、負極膜5としてリチウム金属膜を積層する。すなわち、固体電解質膜4を作製する際に用いたマスクを取り外し、中央に正方形(7mm×7mm)の開口部を有したマスク(厚さ:50μm)をセットし、リチウムを蒸着源とする真空蒸着法により、膜厚0.5μmのリチウム金属膜を成膜して、負極膜5を作製する。
続いて、負極集電極6として銅金属膜を積層する。すなわち、蒸着源をCuとする真空蒸着法により、膜厚0.5μmの銅金属膜を成膜し、負極端子としても機能する負極集電極6を作製する。
最後に、保護層7として絶縁性を有するパリレン樹脂を積層する。すなわち、中央に正方形(13mm×13mm)の開口部を有したマスク(厚さ:50μm)をセットし、パリレン樹脂を、熱蒸着法により膜厚2.0μmとなるように成膜して、保護層7を作製する。ここで、絶縁性物質からなる保護層7が、正極集電極2、正極膜3、固体電解質膜4、負極膜5、負極集電極6において外気に露出される膜表面を被覆するように成膜する。
このようにして製造する実施例1における全固体型リチウム二次電池は、電池エッジ部でのショートを回避することができ、上記した主たる特徴の通り、不良品の発生率が低い製造方法によって製造できる。
なお、本実施例では、正極集電極2としてPt、負極集電極6としてCuを用いる場合いついて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、リチウムと反応しない若しくは反応性が低い導電性の物質であれば、正極集電極2あるいは負極集電極6として用いることができる。
また、本実施例では、正極集電極2の下部構造として一層のPtを成膜する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、基板1との密着性を向上させるために、正極集電極2の下部構造として、さらに複数層の膜を成膜する場合であってもよい。
また、本実施例では、固体電解質膜4としてLiPONを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、リチウムイオン導電性リチウム含有ガラスやLiTi2(PO4)3などのリチウム含有リン酸塩など、リチウムイオン導電性を有する物質であれば、固体電解質膜4として用いることができる。
また、本実施例では、負極膜5として金属リチウムを用いる場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、カーボンや、シリコン、スズ、または、これらを含む合金やLi4Ti5O12などの金属酸化物といったように、卑電位においてリチウムイオンの吸蔵および放出が可能な物質であれば、負極膜5として用いることができる。
また、本実施例では、保護層7としてパリレン樹脂を用いる場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、パリレンのような高分子樹脂や、チッ化ケイ素のような絶縁性物質、または、高分子樹脂と絶縁性物質の混合物など、耐湿性を有したものであれば、保護層7として用いることができる。
また、本実施例では、凹状の窪みを有する正極集電極2を基板1上に作製する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、凹状の窪みを有する負極集電極6を基板1上に作製し、さらに、当該凹状の窪み内に負極膜5を作製し、この構造の上に、固体電解質膜4、正極膜3、正極集電極2、保護層7を積層する場合であってもよい。
また、本実施例による電池の製造方法は、電極、固体電解質、集電極または保護層の成膜手法によらず適用可能である。しかしながら、正極膜の作製方法としては、組成ずれが起きにくく、成膜条件を適切に設定することで高温での熱処理無しで高結晶性膜を作製できるスパッタ法を用いることがより好ましいが、これに限定されるものではない。
[実施例1における全固体型リチウム二次電池の特性]
次に、図3および図4を用いて、このようにして製造された全固体型リチウム二次電池(図1参照)の特性について説明する。図3は、実施例1における全固体型リチウム二次電池の充放電特性を示す図であり、図4は、実施例1における全固体型リチウム二次電池の放電容量のサイクル依存性を示す図である。
実施例1における全固体型リチウム二次電池の充放電測定を、充放電の電流密度を10μA/cm2とし2.5〜4.3Vの電圧範囲で行った。ここで、測定は、室温において湿度制御しない通常の生活環境下で行った。図3に、20サイクル目の充放電曲線を示す。なお、ここでは、充放電容量は、後述する実施例2との比較を容易におこなうために、電池の有効面積(cm2)に正極の膜厚(μm)を乗じた値で示される正極の単位体積当たりの値(μAh/cm2μm)で示した。
図3に示すように、実施例1における全固体型リチウム二次電池は、平均放電電圧が約3.9Vと高電圧であり、充電容量と放電容量もほぼ一致し、可逆性に優れていることが分かる。
また、図4に示すように、実施例1における全固体型リチウム二次電池は、サイクルとともに若干の放電容量の減少がみられるものの、放電容量は約50μAh/cm2μmと大きな値を示し、安定したサイクル依存性を示す。
さらに、実施例1における全固体型リチウム二次電池の作製条件を検討するために、正極集電極2が有する凹状の窪みの周縁部が固体電解質膜4と接触する面と、正極膜3が当該固体電解質膜4と接触する面との段差が0.10μm〜0.35μmの範囲にある全固体型リチウム二次電池を、スパッタ時間を調整することにより製造した。
製造した全固体型リチウム二次電池の性能を検討した結果、段差が0.2μmを超えると、電池のショートが頻発し、電池の不良品の発生率が著しく高くなることが確認された。すなわち、良好に作動する電池を製造するためには、上記の段差が、固体電解質膜4の厚さ(本実施例では、1μm)の20%以下(本実施例では、0.2μm以下)であることが望ましいことが判明した。
すなわち、上記の測定結果より、基板1上に作製された正極集電極2が有する凹状の窪みの周縁部が固体電解質膜4(LiPON)と接触する面と、正極膜3(LiCoO2)が当該固体電解質膜4と接触する面との段差が、固体電解質膜4の膜厚の20%以下である全固体型リチウム二次電池は、充放電特性や放電容量のサイクル依存性において、優れた電池性能を示すことが明らかとなった。
[実施例1の効果]
上記したように、実施例1によれば、基板1上に作製される正極集電極2を、当該基板1と接触する面と対向するもう一方の面において、少なくともひとつの凹状の窪みを有するように成膜し、成膜される正極集電極2が有する凹状の窪みにおいて、正極膜3を積層する際に、正極集電極2が有する凹状の窪みの周縁部が固体電解質膜4と接触する面と、正極膜3が固体電解質膜4と接触する面との段差が、固体電解質膜4の膜厚の20%以下となるように正極膜3を成膜するので、電池エッジ部でのショートを回避することができ、不良品の発生率を低くすることが可能になる。また、これによって、「電池エッジ部でのショートを回避するために、固体電解質の上に作製する電極膜を、当該固体電解質より小さい面積になるように成膜すると、電池の実効面積が小さくなり、電池のエネルギー密度が減少する結果、非効率的な電池しか製造できない」という問題点を解消でき、エネルギー密度が高い、効率的な全固体型リチウム二次電池を容易に製造することが可能になる。
また、実施例1によれば、正極集電極2が有する凹状の窪みの周縁部と、正極膜3の表面とが、連続的に被膜されるように固体電解質膜4を成膜するので、基板1上に作製される正極集電極2と正極膜3とを固体電解質膜4によって密に被膜して電池エッジ部でのショートをさらに回避することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。すなわち、正極集電極2と正極膜3との段差に起因する固体電解質膜4の膜厚の局所的な不均一などの欠陥を防止して電池エッジ部でのショートをさらに回避することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。
また、実施例1によれば、正極集電極2が有する前記凹状の窪みの開口部中央から俯瞰した場合に、当該凹状の窪みの底面および側面が、当該凹状の窪みの開口部の周辺部によって遮蔽されないように、正極集電極2を成膜するので、正極集電極2が有する凹状の窪みに正極膜3を密に均一に積層して電池エッジ部でのショートをさらに回避することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。
また、実施例1によれば、正極膜3、負極膜5、固体電解質膜4、正極集電極2、および負極集電極6それぞれにおいて、外気に露出される表面を絶縁性物質からなる保護層7により被膜するので、安定性やハンドリング性に優れた電池を製造することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。すなわち、電池の構成要素に大気中の水分により劣化する物質を含む場合、絶縁性有機物および絶縁性無機物質の少なくともひとつからなる保護層7で、外気に露出される電池部分を覆うことにより、耐湿性を付与して優れた耐久性を与えて安定性やハンドリング性に優れた電池を製造することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。
また、凹状の窪みの底面部分を除いた側壁部分において、当該側壁部分の最深部または当該凹状の窪みの開口部から一定の深さの部分から、当該凹状の窪みの開口部までの面を、絶縁性物質によって構成するように正極集電極2を成膜することで、正極集電極2と負極膜5との間のショートを回避することができ、不良品の発生率をより低くすることが可能になる。以下、これについて説明する。
すなわち、他機器との接続を行う端子(図1における正極端子)を作製した上で、正極集電極2に作製された凹状の窪みの底面部分を除いた側壁部分において、側壁部分の最深部または窪みの開口部から一定の深さの部分から窪み開口部までの面を、絶縁性物質で構成することによって、正極集電極2と負極膜5とが接触しショートがおこることを防止することができる。
例えば、正極集電極2の凹状の窪みに正極膜3を作製する場合、図2の(A)〜(C)に示す工程で、正極集電極2の下部構造をPtとし、図2の(D)〜(F)に示す工程で、正極集電極2の上部構造をポリエチレンとすることによって、正極集電極2と負極膜5とが接触しショートがおこることを防止することができる。
あるいは、基板1上に先ずPtなどの導電性膜を作製し、次に、当該導電性膜上にポリエチレンなどの絶縁性膜を蒸着法などにより積層し、絶縁性膜の少なくとも一箇所に、絶縁性膜がその周囲に残存するように導電性膜まで、レーザーやリソグラフィーなどの手法で貫通する穴を開けることにより、凹状の窪みを有する正極集電極2を作製する。この凹状の窪み内に正極膜3を作製することにより、正極集電極2と負極膜5とが接触してショートがおこることを防止することができる。
このように、凹状の窪みを有する正極集電極2の作製法は、作製される膜の平坦性や加工性に優れた手法であればよく、マスクだけでなく、半導体の製造プロセスで用いられるレジストやエッチングの手法などを用いることができる。
上述した実施例1では、正極膜3としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いて製造した全固体型リチウム二次電池について説明したが、実施例2では、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な固体からなる正極膜3として、Co、Ni、Mn、Vの少なくとも1つを含む遷移金属系酸化物である「LiNi0.5Co0.5O2」、「LiMn2O4」、「V2O5」それぞれを用いて製造した、実施例1と同様の構造を有する全固体型リチウム二次電池について説明する。
[実施例2における全固体型リチウム二次電池の製造方法]
「LiNi0.5Co0.5O2」、「LiMn2O4」、「V2O5」それぞれからなる正極膜3は、RFマグネトロンスパッタ法を用いて公知の手法で作製した。膜厚は、すべて0.5μmとし、実施例1と同様にして作製した。他の電池構成要素である、正極集電極2、固体電解質膜4、負極膜5、負極集電極6、保護層7も、実施例1と同様に作製した。
[実施例2における全固体型リチウム二次電池の特性]
次に、図5を用いて、このようにして製造された、実施例2における全固体型リチウム二次電池の特性について説明する。図5は、実施例2における全固体型リチウム二次電池の特性を示す図である。
図5に示すように、実施例2における全固体型リチウム二次電池の特性を調べるために、これら製造した3種類の全固体型リチウム二次電池について、充放電の電流密度を10μA/cm2として充放電試験を行った。なお、用いる正極材料の種類によって、作動電圧が異なるため、それぞれの電池ごとに既報に従って測定を行う電圧範囲を設定した(図5の「測定電圧範囲」参照)。また、測定は、室温で湿度を制御しない通常の環境下で行った。
図5に、これら3種類の実施例2における全固体型リチウム二次電池の充放電試験の結果を、LiCoO2を用いて正極膜3を作製した実施例1における全固体型リチウム二次電池の充放電試験の結果と共に示す。
実施例2で製造した電池は、実施例1で製造した電池と同様に、高い電圧を示すとともに(図5の「平均放電電圧」参照)、40〜70μAh/cm2μmの大きな放電容量を有していることが分かった(図5の「初期放電容量」参照)。また、100サイクルの充放電後においても、いずれも初期放電容量と比較して、約90%の放電容量が維持されており、安定に充放電を行うことができた(図5の「100回目の放電容量」参照)。
すなわち、実施例2における全固体型リチウム二次電池は、実施例1で示したLiCoO2だけでなく、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な、Co、Ni、Mn、Vの少なくとも1つを含む遷移金属系酸化物を正極膜3として用いることによって、優れた電池性能を実現できることを示している。
[実施例2の効果]
上記したように、実施例2によれば、Co、Ni 、Mn、Vの少なくとも1つを含む遷移金属系酸化物を正極膜3として成膜するので、結晶構造や結晶中の遷移金属イオンの価数状態から判断して、円滑なリチウムイオンの挿入および脱離を実現する材料を用いて正極膜3を作製することができ、エネルギー密度が高い、効率的な全固体型リチウム二次電池を容易に製造することが可能になる。
[比較例1]
次に、図6を用いて、電池に実装される保護層7の有用性について説明する。図6は、保護層の有用性について説明するための図である。
まず、電池に実装される保護層7の有用性を検討するために、実施例1における全固体型リチウム二次電池において、保護層7を成膜せずに、正極集電極2、正極膜3、固体電解質膜4、負極膜5、負極集電極6のみで構成される全固体型リチウム二次電池を比較例1における全固体型リチウム二次電池として製造した。
そして、実施例1における全固体型リチウム二次電池(保護層7あり)と、比較例1における全固体型リチウム二次電池(保護層7なし)とについて電池性能をそれぞれ評価した。電池性能の評価は、上述した[実施例1における全固体型リチウム二次電池の特性]と同様に、充放電試験におけるサイクルに伴う放電容量の変化を測定することで行った。なお、充放電試験は、室温で湿度を制御することなく、ほぼ実際の生活環境下で行った。
図6に示すように、実施例1における全固体型リチウム二次電池(保護層7あり)が安定したサイクルを示す(サイクル数に伴う、放電容量の変化が少ない)のに対して、比較例1における全固体型リチウム二次電池(保護層7なし)は、初回の放電容量は、全く同一であるものの、以後のサイクルにおいては、劣化は著しく急激な放電容量の減少がみられた。
この結果は、水分による劣化を防止するために、パリレンのような高分子樹脂、もしくはチッ化ケイ素のような絶縁性物質のいずれか、望ましくは高分子樹脂と絶縁性物質の混合物からなる保護層7で、正極膜3、負極膜5、固体電解質膜4、正極集電極2、および負極集電極6それぞれにおいて外気に露出される表面を覆うことが、不良品の発生率を低くすることに必要であることを示している。
[比較例2]
最後に、本発明による全固体型リチウム二次電池の製造方法により製造された全固体型リチウム二次電池の有効性を、従来一般的に用いられてきた製造方法による全固体型リチウム二次電池との比較を行なうことによって検証した。
まず、実施例1における全固体型リチウム二次電池の比較対象として、図7に示すように、一般的な構造を有する全固体型リチウム二次電池を製造した。なお、図7は、従来技術により製造した全固体型リチウム二次電池の構成を説明するための俯瞰図および断面図である。
図7に示すように、従来技術により製造した全固体型リチウム二次電池は、基板1上に、正極集電極(正極端子)2としてPtを成膜し、正極膜3としてLiCoO2を成膜し、固体電解質膜4としてLiPONを成膜し、負極膜5としてLiを成膜し、負極集電極(負極端子)6としてCuを成膜し、最後に保護層7としてパリレン樹脂を成膜して製造した。負極集電極6(Cu)、正極膜3(LiCoO2)、固体電解質膜4(LiPON)、負極膜5(Li) の成膜方法については、実施例1と同様にして行い、膜厚も同一とした。また、正極集電極2(Pt) は、実施例1における正極集電極の下部構造と同様に、RFマグネトロンスパッタ法で成膜を行った。それぞれの膜面積については、電池エッジ部でのショートを避けるために、正極膜 :0.8cm2、固体電解質膜 :1.1cm2 、負極膜:0.8cm2 とした。また、正極集電極膜および負極集電極膜の膜表面積については、それぞれ0.9cm2および0.8cm2とした。
さらに、電圧が低い、充放電できないなどの電池の不良品の発生率(不良率)を調べるために、実施例1における全固体型リチウム二次電池(図1参照、以下、「実施例1における電池」と記す)および従来技術により製造した全固体型リチウム二次電池(図7参照、以下、「従来の電池」と記す)を、それぞれ30個製造し、電流密度10μA/cm2で2.5〜4.3Vの電圧範囲で充放電サイクル試験を行った。
その結果、「従来の電池」は、二次電池として正常に作動した場合、「実施例1における電池」と同様の電極材料および固体電解質材料を同様の膜厚で成膜しているために、単位体積当たりの放電容量 (μAh/cm2μm) において、「実施例1における電池」と同様の値を示し、充放電を繰り返した場合のサイクル特性においても、「実施例1における電池」と同様の傾向を有していた。しかしながら、多数個の電池を製造した場合に、不良品の発生率に大きな差異が見られた。
図8に、「30個の実施例1における電池」および「30個の従来の電池」における不良品の数を電池の不良要因別にまとめた表を示す。なお、図8は、実施例1における全固体型リチウム二次電池と従来技術により製造した全固体型リチウム二次電池との比較を説明するための図である。
ここで、不良要因については、「(1)低電圧:初期電圧(開回路電圧)が2V以下と極端に低いもの(通常は3V以上)」、「(2)充放電不可:ショートのため全く充放電できないもの」、「(3)サイクル特性不良:図4と比較して、サイクル劣化が著しいもの」、という3つの要因で分別した。図8に示すように、「実施例1における電池」では、不良品の発生率が約3%と低いのに対し、「従来の電池」では、不良品の発生率が約40%と極端に高いことがわかる。
なお、実施例2においてLiNi0.5Co0.5O2 、LiMn2O4 、V2O5 を正極膜3としてそれぞれ用いた全固体型リチウム二次電池についても同様の検討を行ったところ、本発明による構造を有する電池が、「従来の電池」よりも不良品の発生率が著しく低いという、本比較例と同様の結果が得られた。
以上の結果から、本発明による全固体型リチウム二次電池の製造方法は、不良品の発生率が低く、容易で効率的な方法であることが実証された。また、以上の結果から、本発明によれば、製造された電池は非常に高性能であることが明らかであり、今後、電子回路基板上や、シリコンウエハ上、さらにICカードやRF―IDタグに直接、上記実施例と同様にして組み込み型の電池を製造できることを示している。また、上記の全固体型リチウム二次電池は、湾曲や折り曲げても正常に電池として機能することが可能であるので、曲面に貼り付けるシール型電池や、紙のように使用するペーパーディスプレイ用の駆動源としても有望である。
以上のように、本発明に係る全固体型リチウム二次電池製造方法は、固体電解質膜が、正極膜と、負極膜とによって挟まれて積層される構成からなる全固体型リチウム二次電池を製造する場合に有用であり、特に、不良品の発生率が低い全固体型リチウム二次電池を製造することに適し、不良品の発生率が低い全固体型リチウム二次電池を提供する。
実施例1における全固体型リチウム二次電池の構成を説明するための俯瞰図および断面図である。 実施例1における全固体型リチウム二次電池の正極集電極の成膜から正極膜の成膜にいたる工程を説明するための断面図である。 実施例1における全固体型リチウム二次電池の充放電特性を示す図である。 実施例1における全固体型リチウム二次電池の放電容量のサイクル依存性を示す図である。 実施例2における全固体型リチウム二次電池の特性を示す図である。 保護層の有用性について説明するための図である。 従来技術により製造した全固体型リチウム二次電池の構成を説明するための俯瞰図および断面図である。 実施例1における全固体型リチウム二次電池と従来技術により製造した全固体型リチウム二次電池との比較を説明するための図である。 従来技術の問題点を説明するための図である。
符号の説明
1 基板
2 正極集電極(正極端子)
3 正極膜
4 固体電解質膜
5 負極膜
6 負極集電極(負極端子)
7 保護層
8 第一マスク
9 第二マスク
10 第三マスク
11 第四マスク

Claims (7)

  1. リチウムイオン導電性の固体からなる固体電解質膜が、リチウムイオンの挿入および脱離が可能な固体からなる正極膜と、リチウム金属もしくはリチウムイオンの吸蔵および放出が可能な固体からなる負極膜とによって挟まれて積層される構成からなる全固体型リチウム二次電池を製造する全固体型リチウム二次電池製造方法であって、
    前記正極膜および前記負極膜それぞれに接触する集電極のうち、前記全固体型リチウム二次電池が製造される基板にも接触する集電極を、当該基板と接触する面と対向するもう一方の面において、少なくともひとつの凹状の窪みを有するように成膜する集電極成膜工程と、
    前記集電極成膜工程によって成膜される前記集電極が有する前記凹状の窪みにおいて、前記正極膜または前記負極膜としての電極膜を積層する際に、前記集電極が有する前記凹状の窪みの周縁部が前記固体電解質膜と接触する面と、前記電極膜が前記固体電解質膜と接触する面との段差が、前記固体電解質膜の膜厚の20%以下となるように前記電極膜を成膜する電極膜成膜工程と、
    を含んだことを特徴とする全固体型リチウム二次電池製造方法。
  2. 前記集電極成膜工程によって成膜される前記集電極が有する前記凹状の窪みの周縁部と、前記電極膜成膜工程によって成膜される前記電極膜の表面とが、連続的に被膜されるように前記固体電解質膜を成膜する固体電解質膜成膜工程をさらに含んだことを特徴とする請求項1に記載の全固体型リチウム二次電池製造方法。
  3. 前記集電極成膜工程は、前記集電極が有する前記凹状の窪みの開口部中央から俯瞰した場合に、当該凹状の窪みの底面および側面が、当該凹状の窪みの開口部の周辺部によって遮蔽されないように、前記集電極を成膜することを特徴とする請求項1および2に記載の全固体型リチウム二次電池製造方法。
  4. Co、Ni 、Mn、Vの少なくとも1つを含む遷移金属系酸化物を前記正極膜として成膜する正極膜成膜工程をさらに含んだことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の全固体型リチウム二次電池製造方法。
  5. 前記集電極成膜工程は、前記凹状の窪みの底面部分を除いた側壁部分において、当該側壁部分の最深部または当該凹状の窪みの開口部から一定の深さの部分から、当該凹状の窪みの開口部までの面を、絶縁性物質によって構成するように前記集電極を成膜することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の全固体型リチウム二次電池製造方法。
  6. 前記正極膜、前記負極膜、前記固体電解質膜、前記正極膜に接触する集電極、および前記負極膜に接触する集電極それぞれにおいて、外気に露出される表面を絶縁性物質からなる保護層により被膜する保護層被膜工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の全固体型リチウム二次電池製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一つに記載の全固体型リチウム二次電池製造方法により製造されたことを特徴とする全固体型リチウム二次電池。
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