以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1におけるオゾン検知シートの製造方法例について説明する工程図である。先ず、図1(a)に示すように、検知溶液101が収容された容器102を用意する。検知溶液101は、オレンジI(p-(4-Hydroxy-1-naphthylazo)benzenesulfonic acid,sodium salt:C16H11N2NaO4S)からなるアゾ色素(検知成分)と、グリセリン(C3H8O3)からなる保湿剤とが溶解し、かつ塩基を溶解させることでアルカリ性とされた水溶液であり、保湿剤の重量%が20%程度とされたものである。
検知溶液101は、例えば、アルカリ性物質である塩基として水酸化ナトリウムを溶解させてこの濃度を0.1mol/リットルとした水溶液25mlに、0.034gのオレンジIを溶解させ、これに10gのグリセリンと水とを加え、全量を50gとしたものである。オレンジIは、アゾ色素(染料)であり、アルカリ性とした溶液にオレンジIを溶解して作製した検知溶液101は、ローズピンクを呈した水溶液となる。検知溶液101の色は、目視による確認が可能である。
次に、図1(b)に示すように、所定の寸法のシート状担体103を用意する。シート状担体103は、セルロースなどの繊維より構成されたシートであり、例えば、アドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のセルロース濾紙(No.2)である。シート状担体103は、例えば白色であればよい。次いで、用意したシート状担体103を検知溶液101に浸漬し、例えば30秒間浸漬してシート状担体103に検知溶液101を含浸(浸透)させ、図1(c)に示すように、検知溶液101が含浸した含浸シート104が形成された状態とする。この状態は、含浸シート104が、染料であるオレンジIにより染色された状態であるといえる。
この後、含浸シート104を検知溶液101より引き上げ、乾燥窒素中で乾燥させることで含浸シート104に含浸されている水分などの溶媒(媒質)を蒸発させて乾燥させ、図1(d)に示すように、オゾン検知シート(オゾン検知素子)105が形成された状態とする。このように形成されたオゾン検知シート105には、図1(e)に示すように、色素111としてのヒドロキシ基を備えるアゾ色素であるオレンジIが、アルカリ性物質112としての水酸化ナトリウムとともに担持されていることになる。また、オゾン検知シート105には、保湿剤113としてのグリセリンも担持されている。得られたオゾン検知シート105は、ローズピンクを呈した(ローズピンクに染色された)状態となり、この色は、目視による確認が可能である。
上述したように、オゾン検知シートは乾燥させて作製しているが、大気(空気)中の水分の存在により、シート状の担体を構成している繊維の表面には、色素やアルカリ性物質とともに、水分(水の薄い膜)が形成(担持)されているものと考えられる。また、保湿剤の存在により、上述した水分がより多く保持(担持)されるようになるものと考えられる。この状態は、色素およびアルカリ性物質が溶解した水溶液の極薄い膜が、シート状担体を構成している繊維の表面に形成されているものと考えることもできる。
なお、上述した担持とは、色素,アルカリ性物質,及び保湿剤などの物質が、化学的,物理的,又は電気的に担体(基材)と結合または吸着している状態を示す。セルロースなどの繊維より構成されたシートは、繊維の表面が親水性を備えており、水や水溶液および水溶性の物質は吸着しやすい状態となっている。従って、水溶液である検知溶液および水溶性を備える色素やアルカリ性物質は、シートを構成している繊維の表面に付着(吸着)する。このように、繊維より構成されたシートに、色素などが被覆し及び/又は含浸されているような状態を、担持したものとしている。
このようにして製造されたオゾン検知シート105は、オゾンが存在する環境に晒すことで、晒している時間とともにローズピンクの濃度が徐々に薄くなり、最終的に白色の状態に変化する。例えば、オゾン濃度が0.1ppmの環境にオゾン検知シート105を晒して5時間経過すると、白色の状態(もとの濾紙の色)となる。このように、オゾン検知シート105によれば、色の変化によりオゾンの検知が可能であり、また、蓄積的な検出が可能である。この色の変化は、アゾ色素であるオレンジIのオゾンによる分解に応じた退色によるものと考えられる。
ここで、用いることができる色素としては、オレンジIに限らず、オレンジII(p-(2-Hydroxy-1-naphthylazo)benzenesulfonic acid,sodium salt:C16H11N2NaO4S),クロセインオレンジG(6-Hydroxy-5-phenylazo-2-naphthalenesulfonic acid,sodium salt:C16H11N2O4NaS),トロペリオンO(4-(2,4-Dihydroxyphenylazo)benzenesulfonic acid,sodium salt:C12H9N2NaO5S)などの、ベンゼン環もしくはナフタレン環に、アゾ基に隣接して結合するヒドロキシ(−OH)基を備えたアゾ色素(染料)を用いることができる。
また、アシッドアリザリンヴァイオレットN(4-Hydroxy-3-(2-hydroxy-1-naphthylazo)benzenesulfonic acid,sodium salt:C16H11N2NaO5S)及びモーダントブルー13(4-(5-Chloro-2-hydroxyphenylazo)-3,5-dihydroxy-1,7-naphthalene disulfonic acid, disodium salt:C16H9ClN2Na2O9S2)などの、ベンゼン環及びナフタレン環の両方に、アゾ基に隣接して結合する2つのヒドロキシ基を備えたアゾ色素を用いることができる。これらは、アゾ基に対して異なる側においてアゾ基に隣接して結合する2つのヒドロキシ基を備える構成となっている。
また、カルコン(3-Hydroxy-4-(2-hydroxy-1-naphthylazo)-1-naphthalenesulfonic acid,sodium salt:C20H13N2NaO5S)などの、2つのナフタレン環の両方に、アゾ基に隣接して結合するヒドロキシ基を備えたアゾ色素を用いることができる。これも、アゾ基に対して異なる側においてアゾ基に隣接して結合する2つのヒドロキシ基を備える構成となっている。
上述したアゾ色素は、いずれも、ヒドロキシ基及びアゾ基に隣接しない位置に結合する亜硫酸基を備えている。言い換えると、上述したアゾ色素は、いずれも、アゾ基に隣接しない位置に結合する亜硫酸基およびヒドロキシ基を備えている。
加えて、アゾ色素は、ジアゾニウムと芳香環との間で起こるジアゾカップリングで生成するものであり、生成の過程で亜硝酸イオンが用いられるものである。このため、アゾ色素は、NOxなどとはほとんど反応せず、環境測定においては、選択的にオゾンガスを検出することが可能となる。
また、図1に示した製造方法によるオゾン検知シート105によれば、重量%が20程度とされた保湿剤が含まれている検知溶液101を含浸させて形成されていることにより、前述した、オゾンの存在による色の変化(オゾンの検知能力)が、より効果的に発現されるものとなる。保湿剤が含まれている(担持されている)ことにより、オゾン検知シート105における色素とオゾンとの反応が促進されるものと考えられる。ただし、検知溶液における保湿剤の濃度が例えば50%を超えるなど高すぎる場合、乾燥に要する時間が膨大となり、再現性のある検知シートを作製することが困難となる。
この、保湿剤の量と、オゾンの存在によるオゾン検知シートの色の変化との関係について以下に説明する。以下では、検知溶液101における保湿剤の量(含有量)を変えて作製した複数の試料(オゾン検知シート)による比較について説明する。なお、以下では、アルカリ性以外の状態(酸性及び中性の状態)とした条件も含めて説明する。
先ず、0.034gのオレンジIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、水を加えて全量を50gとし、検知溶液A−1を調整(作製)する。保湿剤としてのグリセリンは含まずに作製する。この検知溶液A−1により前述同様にオゾン検知シートA−1を作製する。オゾン検知シートA−1は、ローズピンクを呈した状態に形成される。なお、オレンジIは、図2に示すような分光特性を備え、アルカリ性の場合と酸性の場合とで異なっている。
また、0.034gのオレンジIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン5gに水を加えて50gとし、検知溶液B−1を作製する。この検知溶液B−1により前述同様にオゾン検知シートB−1を作製する。オゾン検知シートB−1は、ローズピンクを呈した状態に形成される。
また、0.034gのオレンジIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gに水を加えて50gとして検知溶液C−1を作製し、この検知溶液C−1により前述同様にオゾン検知シートC−1を作製する。オゾン検知シートC−1は、ローズピンクを呈した状態に形成される。
また、0.034gのオレンジIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン15gに水を加えて全量を50gとした検知溶液D−1を作製し、この検知溶液D−1により前述同様にオゾン検知シートD−1を作製する。オゾン検知シートD−1は、ローズピンクを呈した状態に形成される。
また、0.034gのオレンジIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン20gに水を加えて全量を50gとした検知溶液E−1を作製し、この検知溶液E−1により前述同様にオゾン検知シートE−1を作製する。オゾン検知シートE−1は、ローズピンクを呈した状態に形成される。
また、0.034gのオレンジIと3.0gのクエン酸と保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液F−1を作製し、この検知溶液F−1により前述同様にオゾン検知シートF−1を作製する。オゾン検知シートF−1は、オレンジ色を呈した状態に形成される。オゾン検知シートF−1は、クエン酸を加えて酸性とした試料である。
また、0.034gのオレンジIと保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液G−1を作製し、この検知溶液G−1により前述同様にオゾン検知シートG−1を作製する。オゾン検知シートG−1は、オレンジ色を呈した状態に形成される。この場合、クエン酸や水酸化ナトリウム(塩基)などを加えていなく、アルカリ性にするなどのpHの調整は行っていない。
上述した各試料(オゾン検知シートA−1,B−1,C−1,D−1,E−1,F−1,G−1)について、各々、オゾン濃度が0.1ppmとされて25℃,湿度60%とされた空気が充満している箱の内部に5時間放置することでオゾンガスに曝す試験を行い、この試験の結果の変色状態について、波長525nmにおけるオゾン検知シートの反射率を測定した。オレンジIは、酸性とすると異なる発色を示し、検知シートF−1については、波長480nmの反射率を測定した。なお、箱の容積は200リットルであり、内部オゾン濃度の分析のため2リットル/分で内部空気を吸引し、2リットル/分で所定濃度のオゾンを含んだ空気を供給する。このようにして被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を測定する。また、色の変化については、目視による観察も行う。この試験結果を以下の表1に示す。
表1に示す結果より、保湿剤を含む検知シートB−1から検知シートE−1では、オゾン濃度が0.1ppmと低くても暴露5時間の積算により確実に検知できることがわかる。また、オゾン検知シートを作製するときに用いた検知溶液における保湿剤の量(割合)により、作製された検知シートにおける単位時間あたりの色の変化量が異なることがわかる。保湿剤としてグリセリンを用いる場合、検知溶液における含有量が〜20%の範囲であれば、グリセリンの量が多いほど単位時間あたりの色の変化量が大きくなる。また、検知シートA−1では検知が行えていない結果より、保湿剤を用いていないと、あまり検知が行えないことがわかる。表1の結果より、オレンジIの場合は、検知溶液におけるグリセリンの濃度が、10%〜40%であればよく、20%の場合が最適である。
また、保湿剤を用いていても、検知シートF−1に示すように、酸性状態の検知溶液により検知シートを作製した場合、色の変化が検出されていなくほぼオゾンの検知ができない状態である。また、保湿剤を用いていても、検知シートG−1に示すように、塩基や酸を加えずにpHの調整を行わず、アルカリ性としていない場合、検出される色の変化は小さく、目視では確認できない状態である。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2におけるオゾン検知シートについて説明する。以下では、前述したオレンジIの代わりに、アゾ色素としてオレンジIIを用いた場合について説明する。先ず、0.034gのオレンジIIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、水を加えて全量を50gとし、検知溶液A−2を作製する。保湿剤としてのグリセリンは含まずに作製する。この検知溶液A−2により前述同様にオゾン検知シートA−2を作製する。オゾン検知シートA−2は、オレンジ色を呈した状態に形成される。なお、オレンジIIは、図3に示すような分光特性を備え、アルカリ性の場合と酸性の場合とで、ピーク位置はあまり変わらないが、若干異なっている。
また、0.034gのオレンジIIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン5gと水を加えて50gとし、検知溶液B−2を作製する。この検知溶液B−2により前述同様にオゾン検知シートB−2を作製する。オゾン検知シートB−2は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.034gのオレンジIIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gと水を加えて50gとし、検知溶液C−2を作製する。この検知溶液C−2により前述同様にオゾン検知シートC−2を作製する。オゾン検知シートC−2は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.034gのオレンジIIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン15gと水を加えて50gとし、検知溶液D−2を作製する。この検知溶液D−2により前述同様にオゾン検知シートD−2を作製する。オゾン検知シートD−2は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.034gのオレンジIIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン20gと水を加えて50gとし、検知溶液E−2を作製する。この検知溶液E−2により前述同様にオゾン検知シートE−2を作製する。オゾン検知シートE−2は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.034gのオレンジIIと3.0gのクエン酸と保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液F−2を作製し、この検知溶液F−2により前述同様にオゾン検知シートF−2を作製する。オゾン検知シートF−2は、オレンジ色を呈した状態に形成される。オゾン検知シートF−2は、クエン酸を加えて酸性とした試料である。
また、0.034gのオレンジIIと保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液G−2を作製し、この検知溶液G−2により前述同様にオゾン検知シートG−2を作製する。オゾン検知シートG−2は、オレンジ色を呈した状態に形成される。この場合、クエン酸や水酸化ナトリウム(塩基)などを加えていなく、アルカリ性にするなどのpHの調整は行っていない。
上述した各試料(オゾン検知シートA−2,B−2,C−2,D−2,E−2,F−2,G−2)について、各々、オゾン濃度が0.1ppmとされて25℃,湿度60%とされた空気が充満している箱の内部に5時間放置することでオゾンガスに曝す試験を行い、この試験の結果の変色状態について、波長500nmにおけるオゾン検知シートの反射率を測定した。オレンジIIは、酸性状態としてもスペクトルの極大部分が500nmを含むため、オゾン検知シートF−2についても波長500nmにおける反射率を測定した。なお、箱の容積は200リットルであり、内部オゾン濃度の分析のため2リットル/分で内部空気を吸引し、2リットル/分で所定濃度のオゾンを含んだ空気を供給する。このようにして被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を測定する。また、色の変化については、目視による観察も行う。この試験結果を以下の表2に示す。
表2に示す結果より、保湿剤を含む検知シートC−2及び検知シートD−2では、オゾン濃度が0.1ppmと低くても暴露5時間の積算により確実に検知できることがわかる。また、オゾン検知シートを作製するときに用いた検知溶液における保湿剤の量(割合)により、作製された検知シートにおける単位時間あたりの色の変化量が異なることがわかる。保湿剤としてグリセリンを用いる場合、検知溶液における含有量が〜20%の範囲であれば、グリセリンの量が多いほど単位時間あたりの色の変化量が大きくなる。また、検知シートA−2では検知が行えていない結果より、保湿剤を用いていないと、あまり検知が行えないことがわかる。表2の結果より、オレンジIIの場合は、検知溶液におけるグリセリンの濃度が、20%〜30%であればよく、20%の場合が最適である。
また、検知シートC−2と同濃度に保湿剤を用いていても、検知シートF−2に示すように、酸性状態の検知溶液により検知シートを作製した場合、色の変化が検出されていなくほぼオゾンの検知ができない状態である。また、保湿剤を用いていても、検知シートG−2に示すように、塩基や酸を加えずにpHの調整を行わず、アルカリ性としていない場合、検出される色の変化は小さく、目視では確認できない状態である。
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3におけるオゾン検知シートについて説明する。以下では、前述したオレンジI,オレンジIIの代わりに、アゾ色素としてクロセインオレンジGを用いた場合について説明する。先ず、0.034gのクロセインオレンジGを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、水を加えて全量を50gとし、検知溶液A−3を作製する。保湿剤としてのグリセリンは含まずに作製する。この検知溶液A−3により前述同様にオゾン検知シートA−3を作製する。オゾン検知シートA−3は、オレンジ色を呈した状態に形成される。なお、クロセインオレンジGは、図4に示すような分光特性を備え、アルカリ性の場合と酸性の場合とで同様の特性を備えている。
また、0.034gのクロセインオレンジGを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン5gと水を加えて50gとし、検知溶液B−3を作製する。この検知溶液B−3により前述同様にオゾン検知シートB−3を作製する。オゾン検知シートB−3は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.034gのクロセインオレンジGを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gと水を加えて50gとし、検知溶液C−3を作製する。この検知溶液C−3により前述同様にオゾン検知シートC−3を作製する。オゾン検知シートC−3は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.034gのクロセインオレンジGを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン15gと水を加えて50gとし、検知溶液D−3を作製する。この検知溶液D−3により前述同様にオゾン検知シートD−3を作製する。オゾン検知シートD−3は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.034gのクロセインオレンジGを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン20gと水を加えて50gとし、検知溶液E−3を作製する。この検知溶液E−3により前述同様にオゾン検知シートE−3を作製する。オゾン検知シートE−3は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.034gのクロセインオレンジGと3.0gのクエン酸と保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液F−3を作製し、この検知溶液F−3により前述同様にオゾン検知シートF−3を作製する。オゾン検知シートF−3は、オレンジ色を呈した状態に形成される。オゾン検知シートF−3は、クエン酸を加えて酸性とした試料である。
また、0.034gのクロセインオレンジGと保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液G−3を作製し、この検知溶液G−3により前述同様にオゾン検知シートG−3を作製する。オゾン検知シートG−3は、オレンジ色を呈した状態に形成される。この場合、クエン酸や水酸化ナトリウム(塩基)などを加えていなく、アルカリ性にするなどのpHの調整は行っていない。
上述した各試料(オゾン検知シートA−3,B−3,C−3,D−3,E−3,F−3,G−3)について、各々、オゾン濃度が0.1ppmとされて25℃,湿度60%とされた空気が充満している箱の内部に5時間放置することでオゾンガスに曝す試験を行い、この試験の結果の変色状態について、波長500nmにおけるオゾン検知シートの反射率を測定した。クロセインオレンジGは、酸性状態としてもスペクトルの極大部分が500nmを含むため、オゾン検知シートF−3についても波長500nmにおける反射率を測定した。なお、箱の容積は200リットルであり、内部オゾン濃度の分析のため2リットル/分で内部空気を吸引し、2リットル/分で所定濃度のオゾンを含んだ空気を供給する。このようにして被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を測定する。また、色の変化については、目視による観察も行う。この試験結果を以下の表3に示す。
表3に示す結果より、保湿剤を含む検知シートB−3,検知シートD−3,及び検知シートD−3では、オゾン濃度が0.1ppmと低くても暴露5時間の積算により確実に検知できることがわかる。また、オゾン検知シートを作製するときに用いた検知溶液における保湿剤の量(割合)により、作製された検知シートにおける単位時間あたりの色の変化量が異なることがわかる。保湿剤としてグリセリンを用いる場合、検知溶液における含有量が〜20%の範囲であれば、グリセリンの量が多いほど単位時間あたりの色の変化量が大きくなる。また、検知シートA−3では検知が行えていない結果より、保湿剤を用いていないと、あまり検知が行えないことがわかる。表3の結果より、クロセインオレンジGの場合は、検知溶液におけるグリセリンの濃度が、10%〜30%であればよく、20%の場合が最適である。
また、検知シートC−3と同濃度に保湿剤を用いていても、検知シートF−3に示すように、酸性状態の検知溶液により検知シートを作製した場合、色の変化が検出されていなくほぼオゾンの検知ができない状態である。また、保湿剤を用いていても、検知シートG−3に示すように、塩基や酸を加えずにpHの調整を行わず、アルカリ性としていない場合、検出される色の変化は小さく、目視では確認できない状態である。
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4におけるオゾン検知シートについて説明する。以下では、アゾ色素としてトロペオリンOを用いた場合について説明する。先ず、0.03gのトロペオリンOを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、水を加えて全量を50gとし、検知溶液A−4を作製する。保湿剤としてのグリセリンは含まずに作製する。この検知溶液A−4により前述同様にオゾン検知シートA−4を作製する。オゾン検知シートA−4は、黄色を呈した状態に形成される。なお、トロペオリンOは、図5に示すような分光特性を備え、アルカリ性の場合と酸性の場合とで若干異なっている。
また、0.03gのトロペオリンOを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン5gと水を加えて50gとし、検知溶液B−4を作製する。この検知溶液B−4により前述同様にオゾン検知シートB−4を作製する。オゾン検知シートB−4は、黄色を呈した状態に形成される。
また、0.03gのトロペオリンOを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gと水を加えて50gとし、検知溶液C−4を作製する。この検知溶液C−4により前述同様にオゾン検知シートC−4を作製する。オゾン検知シートC−4は、黄色を呈した状態に形成される。
また、0.03gのトロペオリンOを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン15gと水を加えて50gとし、検知溶液D−4を作製する。この検知溶液D−4により前述同様にオゾン検知シートD−4を作製する。オゾン検知シートD−4は、黄色を呈した状態に形成される。
また、0.03gのトロペオリンOを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン20gと水を加えて50gとし、検知溶液E−4を作製する。この検知溶液E−4により前述同様にオゾン検知シートE−4を作製する。オゾン検知シートE−4は、黄色を呈した状態に形成される。
また、0.03gのトロペオリンOと3.0gのクエン酸と保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液F−4を作製し、この検知溶液F−4により前述同様にオゾン検知シートF−4を作製する。オゾン検知シートF−4は、黄色を呈した状態に形成される。オゾン検知シートF−4は、クエン酸を加えて酸性とした試料である。
また、0.03gのトロペオリンOと保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液G−4を作製し、この検知溶液G−4により前述同様にオゾン検知シートG−4を作製する。オゾン検知シートG−4は、黄色を呈した状態に形成される。この場合、クエン酸や水酸化ナトリウム(塩基)などを加えていなく、アルカリ性にするなどのpHの調整は行っていない。
上述した各試料(オゾン検知シートA−4,B−4,C−4,D−4,E−4,F−4,G−4)について、各々、オゾン濃度が0.1ppmとされて25℃,湿度60%とされた空気が充満している箱の内部に5時間放置することでオゾンガスに曝す試験を行い、この試験の結果の変色状態について、波長440nmにおけるオゾン検知シートの反射率を測定した。トロペオリンOは、酸性とすると異なる発色を示し、検知シートF−4については、波長400nmの反射率を測定した。なお、箱の容積は200リットルであり、内部オゾン濃度の分析のため2リットル/分で内部空気を吸引し、2リットル/分で所定濃度のオゾンを含んだ空気を供給する。このようにして被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を測定する。また、色の変化については、目視による観察も行う。この試験結果を以下の表4に示す。
表4に示す結果より、保湿剤を含む検知シートC−4,検知シートD−4,及び検知シートE−4では、オゾン濃度が0.1ppmと低くても暴露5時間の積算により確実に検知できることがわかる。また、オゾン検知シートを作製するときに用いた検知溶液における保湿剤の量(割合)により、作製された検知シートにおける単位時間あたりの色の変化量が異なることがわかる。保湿剤としてグリセリンを用いる場合、検知溶液における含有量が〜30%の範囲であれば、グリセリンの量が多いほど単位時間あたりの色の変化量が大きくなる。また、検知シートA−4では検知が行えていない結果より、保湿剤を用いていないと、あまり検知が行えないことがわかる。表4の結果より、トロペオリンOの場合は、検知溶液におけるグリセリンの濃度が、20%〜40%であればよく、30%の場合が最適である。
また、検知シートC−4と同濃度に保湿剤を用いていても、検知シートF−4に示すように、酸性状態の検知溶液により検知シートを作製した場合、色の変化が検出されていなくほぼオゾンの検知ができない状態である。また、保湿剤を用いていても、検知シートG−4に示すように、塩基や酸を加えずにpHの調整を行わず、アルカリ性としていない場合、検出される色の変化は小さく、目視では確認できない状態である。
なお、以上に示したオレンジI,オレンジII,クロセインオレンジG,及びトロペオリンOは、ベンゼン環もしくはナフタレン環において、少なくとも1つのヒドロキシ基を備え、また、アゾ基に隣接する亜硫酸基(SO3基)がない。この中で、トロペオリンOは、o−位およびp−位に結合している2つのヒドロキシ基を備え、また、アゾ基に隣接する亜硫酸基(SO3)がない。言い換えると、上記色素は、少なくとも1つのヒドロキシ基を備え、SO3基は、アゾ基に対してo−位以外に結合しているアゾ色素である。なお、ヒドロキシ基は、アゾ基に対してo−位又はp−位に結合している。
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5におけるオゾン検知シートについて説明する。以下では、アゾ色素としてアシッドアリザリンバイオレットNを用いた場合について説明する。先ず、0.035gのアシッドアリザリンバイオレットNを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、水を加えて全量を50gとし、検知溶液A−5を作製する。保湿剤としてのグリセリンは含まずに作製する。この検知溶液A−5により前述同様にオゾン検知シートA−5を作製する。オゾン検知シートA−5は、紫色を呈した状態に形成される。なお、アシッドアリザリンバイオレットNは、図6に示すような分光特性を備え、アルカリ性(pH9以上)の場合と酸性の場合とで異なっている。
また、0.035gのアシッドアリザリンバイオレットNを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン5gと水を加えて50gとし、検知溶液B−5を作製する。この検知溶液B−5により前述同様にオゾン検知シートB−5を作製する。オゾン検知シートB−5は、紫色を呈した状態に形成される。
また、0.035gのアシッドアリザリンバイオレットNを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gと水を加えて50gとし、検知溶液C−5を作製する。この検知溶液C−5により前述同様にオゾン検知シートC−5を作製する。オゾン検知シートC−5は、紫色を呈した状態に形成される。
また、0.035gのアシッドアリザリンバイオレットNを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン15gと水を加えて50gとし、検知溶液D−5を作製する。この検知溶液D−5により前述同様にオゾン検知シートD−5を作製する。オゾン検知シートD−5は、紫色を呈した状態に形成される。
また、0.035gのアシッドアリザリンバイオレットNを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン20gと水を加えて50gとし、検知溶液E−5を作製する。この検知溶液E−5により前述同様にオゾン検知シートE−5を作製する。オゾン検知シートE−5は、紫色を呈した状態に形成される。
また、0.035gのアシッドアリザリンバイオレットNと3.0gのクエン酸と保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液F−5を作製し、この検知溶液F−5により前述同様にオゾン検知シートF−5を作製する。オゾン検知シートF−5は、オレンジ色を呈した状態に形成される。オゾン検知シートF−5は、クエン酸を加えて酸性とした試料である。
また、0.035gのアシッドアリザリンバイオレットNと保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液G−5を作製し、この検知溶液G−5により前述同様にオゾン検知シートG−5を作製する。オゾン検知シートG−5は、紫色を呈した状態に形成される。この場合、クエン酸や水酸化ナトリウム(塩基)などを加えていなく、アルカリ性にするなどのpHの調整は行っていない。
上述した各試料(オゾン検知シートA−5,B−5,C−5,D−5,E−5,F−5,G−5)について、各々、オゾン濃度が0.1ppmとされて25℃,湿度60%とされた空気が充満している箱の内部に5時間放置することでオゾンガスに曝す試験を行い、この試験の結果の変色状態について、波長530nmにおけるオゾン検知シートの反射率を測定した。アシッドアリザリンバイオレットNは、酸性とすると異なる発色を示し、検知シートF−5については、波長510nmの反射率を測定した。なお、箱の容積は200リットルであり、内部オゾン濃度の分析のため2リットル/分で内部空気を吸引し、2リットル/分で所定濃度のオゾンを含んだ空気を供給する。このようにして被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を測定する。また、色の変化については、目視による観察も行う。この試験結果を以下の表5に示す。
表5に示す結果より、保湿剤を含む検知シートB−5,検知シートC−5,及び検知シートD−5では、オゾン濃度が0.1ppmと低くても暴露5時間の積算により確実に検知できることがわかる。また、オゾン検知シートを作製するときに用いた検知溶液における保湿剤の量(割合)により、作製された検知シートにおける単位時間あたりの色の変化量が異なることがわかる。保湿剤としてグリセリンを用いる場合、検知溶液における含有量が〜20%の範囲であれば、グリセリンの量が多いほど単位時間あたりの色の変化量が大きくなる。また、検知シートA−5では検知が行えていない結果より、保湿剤を用いていないと、あまり検知が行えないことがわかる。表5の結果より、アシッドアリザリンバイオレットNの場合は、検知溶液におけるグリセリンの濃度が、10%〜30%であればよく、20%の場合が最適である。
また、検知シートC−5と同濃度に保湿剤を用いていても、検知シートF−5に示すように、酸性状態の検知溶液により検知シートを作製した場合、色の変化が検出されていなくほぼオゾンの検知ができない状態である。これに対し、検知シートG−5に示すように、アルカリ性としていない場合でも、塩基や酸を加えずにpHの調整を行わなければ、保湿剤を用いることで、検知シートC−5の場合と同様にオゾンの検出が可能である。これは、酸性にしていない状態とも言える。
[実施の形態6]
次に、本発明の実施の形態6におけるオゾン検知シートについて説明する。以下では、アシッドアリザリンバイオレットNの代わりに、アゾ色素としてモーダントブルー13を用いた場合について説明する。先ず、0.053gのモーダントブルー13を、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、水を加えて全量を50gとし、検知溶液A−6を作製する。保湿剤としてのグリセリンは含まずに作製する。この検知溶液A−6により前述同様にオゾン検知シートA−6を作製する。オゾン検知シートA−6は、藤色を呈した状態に形成される。なお、モーダントブルー13は、図7に示すような分光特性を備え、アルカリ性の場合と酸性の場合とで異なる。
また、0.053gのモーダントブルー13を、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン5gと水を加えて50gとし、検知溶液B−6を作製する。この検知溶液B−6により前述同様にオゾン検知シートB−6を作製する。オゾン検知シートB−6は、藤色を呈した状態に形成される。
また、0.053gのモーダントブルー13を、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gと水を加えて50gとし、検知溶液C−6を作製する。この検知溶液C−6により前述同様にオゾン検知シートC−6を作製する。オゾン検知シートC−6は、藤色を呈した状態に形成される。
また、0.053gのモーダントブルー13を、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン15gと水を加えて50gとし、検知溶液D−6を作製する。この検知溶液D−6により前述同様にオゾン検知シートD−6を作製する。オゾン検知シートD−6は、藤色を呈した状態に形成される。
また、0.053gのモーダントブルー13を、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン20gと水を加えて50gとし、検知溶液E−6を作製する。この検知溶液E−6により前述同様にオゾン検知シートE−6を作製する。オゾン検知シートE−6は、藤色を呈した状態に形成される。
また、0.053gのモーダントブルー13と3.0gのクエン酸と保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液F−6を作製し、この検知溶液F−6により前述同様にオゾン検知シートF−6を作製する。オゾン検知シートF−6は、赤紫色を呈した状態に形成される。オゾン検知シートF−6は、クエン酸を加えて酸性とした試料である。
また、0.053gのモーダントブルー13と保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液G−6を作製し、この検知溶液G−6により前述同様にオゾン検知シートG−6を作製する。オゾン検知シートG−6は、藤色を呈した状態に形成される。この場合、クエン酸や水酸化ナトリウム(塩基)などを加えていなく、アルカリ性にするなどのpHの調整は行っていない。
上述した各試料(オゾン検知シートA−6,B−6,C−6,D−6,E−6,F−6,G−6)について、各々、オゾン濃度が0.1ppmとされて25℃,湿度60%とされた空気が充満している箱の内部に5時間放置することでオゾンガスに曝す試験を行い、この試験の結果の変色状態について、波長550nmにおけるオゾン検知シートの反射率を測定した。モーダントブルー13は、酸性とすると異なる発色を示し、検知シートF−6については、波長530nmの反射率を測定した。なお、箱の容積は200リットルであり、内部オゾン濃度の分析のため2リットル/分で内部空気を吸引し、2リットル/分で所定濃度のオゾンを含んだ空気を供給する。このようにして被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を測定する。また、色の変化については、目視による観察も行う。この試験結果を以下の表6に示す。
表6に示す結果より、保湿剤を含む検知シートB−6及び検知シートC−6では、オゾン濃度が0.1ppmと低くても暴露5時間の積算により確実に検知できることがわかる。また、オゾン検知シートを作製するときに用いた検知溶液における保湿剤の量(割合)により、作製された検知シートにおける単位時間あたりの色の変化量が異なることがわかる。保湿剤としてグリセリンを用いる場合、検知溶液における含有量が〜20%の範囲であれば、グリセリンの量が多いほど単位時間あたりの色の変化量が大きくなる。また、検知シートA−6では検知が行えていない結果より、保湿剤を用いていないと、あまり検知が行えないことがわかる。表6の結果より、モーダントブルー13の場合は、検知溶液におけるグリセリンの濃度が、10%〜20%であればよく、20%の場合が最適である。
また、検知シートC−6と同濃度に保湿剤を用いていても、検知シートF−6に示すように、酸性状態の検知溶液により検知シートを作製した場合、色の変化があまり検出されていなくほぼオゾンの検知ができない状態である。これに対し、検知シートG−6に示すように、アルカリ性としていない場合でも、塩基や酸を加えずにpHの調整を行わなければ、保湿剤を用いることで、検知シートC−6の場合と同様にオゾンの検出が可能である。これは、酸性にしていない状態とも言える。
なお、以上に示したアシッドアリザリンバイオレットN及びモーダントブルー13はベンゼン環もしくはナフタレン環において、アゾ基に隣接する2つのヒドロキシ基を備え、また、アゾ基に隣接するSO3基がない。言い換えると、上記色素は、アゾ基に対してo−位に2つのヒドロキシ基を備え、SO3基は、アゾ基に対してo−位以外に結合しているアゾ色素である。
[実施の形態7]
次に、本発明の実施の形態7におけるオゾン検知シートについて説明する。以下では、アゾ色素としてカルコンを用いた場合について説明する。先ず、0.08gのカルコンを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、水を加えて全量を50gとし、検知溶液A−7を作製する。カルコンは、アリザリンブルーブラックRとも呼ばれるアゾ色素(アゾ染料)であり,検知溶液A−7は、紺色を呈した水溶液となる。検知溶液A−7の色は、目視による確認が可能である。保湿剤としてのグリセリンは含まずに作製する。この検知溶液A−7により前述同様にオゾン検知シートA−7を作製する。オゾン検知シートA−7は、紺色を呈した状態に形成される。なお、カルコンは、図8に示すような分光特性を備え、アルカリ性の場合と酸性の場合とで異なっている。
また、0.08gのカルコンを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン5gと水を加えて50gとし、検知溶液B−7を作製する。この検知溶液B−7により前述同様にオゾン検知シートB−7を作製する。オゾン検知シートB−7は、紺色を呈した状態に形成される。
また、0.08gのカルコンを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gと水を加えて50gとし、検知溶液C−7を作製する。この検知溶液C−7により前述同様にオゾン検知シートC−7を作製する。オゾン検知シートC−7は、紺色を呈した状態に形成される。
また、0.08gのカルコンを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン15gと水を加えて50gとし、検知溶液D−7を作製する。この検知溶液D−7により前述同様にオゾン検知シートD−7を作製する。オゾン検知シートD−7は、紺色を呈した状態に形成される。
また、0.08gのカルコンを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン20gと水を加えて50gとし、検知溶液E−7を作製する。この検知溶液E−7により前述同様にオゾン検知シートE−7を作製する。オゾン検知シートE−7は、紺色を呈した状態に形成される。
また、0.08gのカルコンを25mlのエタノールに溶解させ、これにクエン酸3.0gとグリセリン10gと水とを加え、全量を50gとした検知溶液F−7を作製する。カルコンは、アルカリ性の水には可溶であるが、中性及び酸性の水にはあまり溶けないが、エタノールを用いることで、中性及び酸性の水に対してカルコンの溶解量を増加させることができる。なお、カルコンのように、2つのナフタレン環を備えるアゾ色素の場合、酸性及び中性では高い水溶性を示さず、アルカリ性とすることで水溶性を示すようになるものが多い。このようにして作製した検知溶液F−7により前述同様にオゾン検知シートF−7を作製する。オゾン検知シートF−7は、藤色を呈した状態に形成される。オゾン検知シートF−7は、クエン酸を加えて酸性とした試料である。
また、0.08gのカルコンを25mlのエタノールに溶解させ、これにグリセリン10gと水とを加え、全量を50gとした検知溶液G−7を作製し、この検知溶液G−7により前述同様にオゾン検知シートG−7を作製する。オゾン検知シートG−7は、紺(紫)色を呈した状態に形成される。この場合、クエン酸や水酸化ナトリウム(塩基)などを加えていなく、アルカリ性にするなどのpHの調整は行っていない。
上述した各試料(オゾン検知シートA−7,B−7,C−7,D−7,E−7,F−7,G−7)について、各々、オゾン濃度が0.1ppmとされて25℃,湿度60%とされた空気が充満している箱の内部に5時間放置することでオゾンガスに曝す試験を行い、この試験の結果の変色状態について、波長650nmにおけるオゾン検知シートの反射率を測定した。カルコンは、酸性とすると異なる発色を示し、検知シートF−7については、波長520nmの反射率を測定した。なお、箱の容積は200リットルであり、内部オゾン濃度の分析のため2リットル/分で内部空気を吸引し、2リットル/分で所定濃度のオゾンを含んだ空気を供給する。このようにして被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を測定する。また、色の変化については、目視による観察も行う。この試験結果を以下の表7に示す。
表7に示す結果より、保湿剤を含む検知シートB−7〜検知シートE−7では、オゾン濃度が0.1ppmと低くても暴露5時間の積算により確実に検知できることがわかる。また、オゾン検知シートを作製するときに用いた検知溶液における保湿剤の量(割合)により、作製された検知シートにおける単位時間あたりの色の変化量が異なることがわかる。保湿剤としてグリセリンを用いる場合、検知溶液における含有量が〜20%の範囲であれば、グリセリンの量が多いほど単位時間あたりの色の変化量が大きくなる。また、検知シートA−7では検知が行えていない結果より、保湿剤を用いていないと、あまり検知が行えないことがわかる。表7の結果より、カルコンの場合は、検知溶液におけるグリセリンの濃度が、10%〜40%であればよく、20%の場合が最適である。
また、検知シートC−7と同濃度に保湿剤を用いていても、検知シートF−7に示すように、酸性状態の検知溶液により検知シートを作製した場合、色の変化が検出されていなくほぼオゾンの検知ができない状態である。これに対し、検知シートG−7に示すように、アルカリ性としていない場合でも、塩基や酸を加えずにpHの調整を行わなければ、保湿剤を用いることで、検知シートC−7の場合と同様にオゾンの検出が可能である。これは、酸性にしていない状態とも言える。
以上に示したカルコンは、2つのナフタレン環において、アゾ基に隣接する2つのヒドロキシ基を備え、また、アゾ基に隣接するSO3基がないアゾ色素である。
なお、上述した実施の形態では、保湿剤としてグリセリンを用いるようにしたが、これに限るものではなく、以下に示すように、エチレングリコール,プロピレングリコールなどを用いることができる。また、前述した色素が溶解する他の保湿剤であってもよい。
次に、比較例について説明する。以下に示す比較例は、アゾ色素ではあるが、前述同様に検知シートを作製しても、オゾンの検出ができない場合を示している。
[比較例1]
次に、比較例1のオゾン検知シートについて説明する。以下では、アゾ色素としてオレンジG(7-Hydroxy-8-(phenylazo)-1,3-naphthalenedisulfonic acid, disodium salt:C20H11N2Na3O10S3)を用いた場合について説明する。先ず、0.044gのオレンジGを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、水を加えて全量を50gとし、検知溶液H−1を作製する。検知溶液H−1は、オレンジ色を呈した水溶液となる。検知溶液H−1の色は、目視による確認が可能である。保湿剤としてのグリセリンは含まずに作製する。この検知溶液H−1により前述同様にオゾン検知シートH−1を作製する。オゾン検知シートH−1は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.044gのオレンジGを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gと水を加えて50gとし、検知溶液I−1を作製する。この検知溶液I−1により前述同様にオゾン検知シートI−1を作製する。オゾン検知シートI−1は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
また、0.044gのオレンジGと3.0gのクエン酸と保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液J−1を作製し、この検知溶液J−1により前述同様にオゾン検知シートJ−1を作製する。オゾン検知シートJ−1は、オレンジ色を呈した状態に形成される。オゾン検知シートJ−1は、クエン酸を加えて酸性とした試料である。
上述した各試料(オゾン検知シートH−1,I−1,J−1)について、各々、オゾン濃度が0.1ppmとされて25℃,湿度60%とされた空気が充満している箱の内部に5時間放置することでオゾンガスに曝す試験を行い、この試験の結果の変色状態について、波長500nmにおけるオゾン検知シートの反射率を測定した。オレンジGの場合、酸性状態としてもスペクトルの極大部分が500nmを含むため、オゾン検知シートJ−1についても波長500nmにおける反射率を測定した。なお、箱の容積は200リットルであり、内部オゾン濃度の分析のため2リットル/分で内部空気を吸引し、2リットル/分で所定濃度のオゾンを含んだ空気を供給する。このようにして被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を測定する。また、色の変化については、目視による観察も行う。この試験結果を以下の表8に示す。
表8に示す結果より、いずれの検知シートにおいても、オゾンによる退色は確認されない。このように、オレンジGを用いる場合では、酸性の場合に限らず、アルカリ性の場合もオゾンの検知ができない。このオレンジGは、アゾ基に隣接して結合するSO3基を備えたアゾ色素である。
[比較例2]
次に、比較例2のオゾン検知シートについて説明する。以下では、アゾ色素としてニューコクシン(7-Hydroxy-8-(4-sulfonato-1-naphthylazo)-1,3-naphthalenedisulfonic acid, trisodium salt:C20H11N2Na3O10S3)を用いた場合について説明する。先ず、0.058gのニューコクシンを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、水を加えて全量を50gとし、検知溶液H−2を作製する。検知溶液H−2は、ローズピンクを呈した水溶液となる。検知溶液H−2の色は、目視による確認が可能である。保湿剤としてのグリセリンは含まずに作製する。この検知溶液H−2により前述同様にオゾン検知シートH−2を作製する。オゾン検知シートH−2は、ローズピンクを呈した状態に形成される。
また、0.058gのニューコクシンを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gと水を加えて50gとし、検知溶液I−2を作製する。この検知溶液I−2により前述同様にオゾン検知シートI−2を作製する。オゾン検知シートI−2は、ローズピンクを呈した状態に形成される。
また、0.058gのニューコクシンと3.0gのクエン酸と保湿剤としてのグリセリン10gとに水を加えて全量を50gとした検知溶液J−2を作製し、この検知溶液J−2により前述同様にオゾン検知シートJ−2を作製する。オゾン検知シートJ−2は、ローズピンクを呈した状態に形成される。オゾン検知シートJ−2は、クエン酸を加えて酸性とした試料である。
上述した各試料(オゾン検知シートH−2,I−2,J−2)について、各々、オゾン濃度が0.1ppmとされて25℃,湿度60%とされた空気が充満している箱の内部に5時間放置することでオゾンガスに曝す試験を行い、この試験の結果の変色状態について、波長525nmにおけるオゾン検知シートの反射率を測定した。ニューコクシンの場合、酸性状態としてもスペクトルの極大部分が525nmを含むため、オゾン検知シートJ−2についても波長525nmにおける反射率を測定した。なお、箱の容積は200リットルであり、内部オゾン濃度の分析のため2リットル/分で内部空気を吸引し、2リットル/分で所定濃度のオゾンを含んだ空気を供給する。このようにして被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を測定する。また、色の変化については、目視による観察も行う。この試験結果を以下の表9に示す。
表9に示す結果より、いずれの検知シートにおいても、オゾンによる退色は確認されない。このように、ニューコクシンを用いる場合では、酸性の場合に限らず、アルカリ性の場合もオゾンの検知ができない。このニューコクシンも、アゾ基に隣接して結合するSO3基を備えたアゾ色素である。このように、アゾ基に隣接して結合するSO3基を備える場合、立体障害により、オゾンが反応しにくい状態になっているものと考えられる。
以上のことより、アゾ基に隣接して結合するSO3基を備えたアゾ色素は、ヒドロキシ基を備えていても、オゾンの検知に用いることができないことがわかる。また、オゾンの検知には、アゾ基に隣接しない位置に結合するSO3基を備えるとともに、アゾ基に隣接する位置もしくはアゾ基に対してp−位に結合する少なくとも1つのヒドロキシ基を備えたアゾ色素であることが必要となる。この中で、アゾ基に対して同じ側においてアゾ基に隣接して結合する2つのヒドロキシ基を備えるアゾ色素であれば、アルカリ性としなくても、酸性としなければ、オゾンの検知に用いることができる。また、これ以外でも、アルカリ性とすることで、オゾンの検知に用いることができる。
ここで、上述したアゾ色素について説明する。本発明のオゾン検知シートにおけるアゾ色素は、以下に示すことにより、アルカリ性とすることでオゾンとの反応が促進されるために、オゾンの検知が可能になるものと考えられる。上述した各アゾ色素は、水酸化ナトリウムなどを用いてアルカリ性とされている状態では、ベンゼン環もしくはナフタレン環に結合しているヒドロキシ基の水素が脱離し、ベンゼン環やナフタレン環に結合する−O-基が存在する状態となる。このような状態とすると、−O-基の部分にオゾンが取り込まれ(引き寄せられ)やすくなるものと考えられる。また、アルカリ性とされている状態では、これらアゾ色素はヒドラゾン型となり、アゾ結合(−N=N−)の部分に−N-基が存在し、この部分にオゾンが取り込まれるようになるものとも考えられる。
本発明のオゾン検知シートにおけるアゾ色素では、上述したようにオゾンが取り込まれることで、取り込まれたオゾンによりベンゼン環(ナフタレン環)が分解されて色素分子の構造と電子状態が変化し、可視領域の光吸収が変化して色(色相)が変化し、上述した色の変化(退色)が起こるものと考えられる。これらのことにより、上記アゾ色素を用いた本発明のオゾン検知シートによれば、オゾン検知を行うことが可能になるものと考えられる。
なお、ベンゼン環やナフタレン環に結合するヒドロキシ基を備えたアゾ色素であっても酸性状態で担持されると、オゾンとはほとんど反応しなくなる。これは、酸性状態では、−O-基が存在しなくなるためと考えられる。オゾンを検知可能とするためには、アゾ色素がオゾンと反応する必要があり、ベンゼン環やナフタレン環に結合する−O-基の存在が重要となる。また、中性状態で一部のアゾ色素においてオゾンと反応して変色(退色)が検出されるものもある。これは、アゾ基に結合するベンゼン環やナフタレン環に結合しているヒドロキシ基の水素と、アゾ基の窒素との間に水素結合が生じ、ヒドロキシ基の酸素がδ−(マイナス)の状態となり、−O-基に近い状態になるためと考えられる。また、中性の状態においても、一部の水素が脱離する場合もあるものと考えられる。
また、これらアゾ色素によれば、よく知られているように耐光性が強く、紫外線の照射に対して強い耐性を備えている。このため、紫外線が照射される環境においても、この影響を受けることが少ない状態で、より高い精度でオゾンの検出が期待できる。前述した、オレンジI,オレンジII,クロセインオレンジG,トロペオリンO,アシッドアリザリンバイオレットN,モーダントブルー13,及びカルコンの中では、後述するように、オレンジIおよびトロペオリンOを色素として用いた場合について、本実施の形態におけるガス検知素子では耐光性が得られた。
始めに、色素としてオレンジIを用いた場合の、本発明におけるオゾン検知シートの日光に対する耐性について説明する。
先ず、0.034gのオレンジIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gに水を加えて50gとし、検知溶液A−8を作製する。この検知溶液A−8にアドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のセルロース濾紙(No.2)を30秒浸漬させることなどにより、前述同様にオゾン検知シートA−8を作製する。オゾン検知シートA−8は、ローズピンクを呈した状態に形成される。
次に、オゾン検知シートA−8に対する比較として次に示す比較シートB−8を作製する。まず、0.045gのインジゴカルミンを3.5gのクエン酸とともに25mリットルの水に溶解し、これに、保湿剤としてのグリセリン15gに水を加えて50gとし、溶液B−8を作製する。この溶液B−8にアドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のセルロース濾紙(No.2)を30秒浸漬させることなどにより、前述同様に比較シートB−8を作製する。比較シートB−8は、青色を呈した状態に形成される。
上述したオゾン検知シートA−8および比較シートB−8について、各々、オゾン濃度が0.03ppmとされ、かつ、日光が照射された状態に暴露して4時間放置する。日光の照射は、平均全天日射が0.45kW/m2、UV−B平均量が0.25W/m2とする。また、各々について、日光の照射がない状態でオゾン濃度が0.03ppmとされた状態に暴露して5時間放置する。また、これらの試験の結果の変色状態について、オゾン検知シートA−8においては波長525nmにおける反射率を暴露前後で測定し、比較シートB−8においては波長620nmにおける波長を暴露前後で測定する。この試験結果を以下の表10に示す。表10には、暴露前後の波長測定結果の差(反射率差)を示す。
表10に示すように、オゾン検知シートA−8では、日光を当てた(照射した)場合と日光を当てない場合とで、暴露前後の反射率差に全く差がない。この反射率差は、オゾンに暴露したことにより発生したものと考えてよい。これに対し、比較シートB−8では、日光を当てた場合と日光を当てない場合とで、暴露前後の反射率に差が発生し、日光を当てた場合の方が、反射率の差が大きい。このことより、比較シートB−8では、日光に暴露したことよる変化(退色)も発生しているものと考えられる。色素としてインジゴカルミンを用いた比較シートB−8では、日光の照射による変化は、オゾンによる変化の約40%である。
次に、色素としてトロペオリンOを用いた場合の日光に対する耐性について説明する。
先ず、0.034gのトロペオリンOを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン15gに水を加えて50gとし、検知溶液A−9を作製する。この検知溶液A−9にアドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のセルロース濾紙(No.2)を30秒浸漬させることなどにより、前述同様にオゾン検知シートA−9を作製する。オゾン検知シートA−9は、オレンジ色を呈した状態に形成される。
次に、オゾン検知シートA−9に対する比較として次に示す比較シートB−9を作製する。まず、0.045gのインジゴカルミンを3.5gのクエン酸とともに25mリットルの水に溶解し、これに、保湿剤としてのグリセリン15gに水を加えて50gとし、溶液B−9を作製する。この溶液B−9にアドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のセルロース濾紙(No.2)を30秒浸漬させることなどにより、前述同様に比較シートB−9を作製する。比較シートB−9は、青色を呈した状態に形成される。
上述したオゾン検知シートA−9および比較シートB−9について、各々、オゾン濃度が0.03ppmとされ、かつ、日光が照射された状態に暴露して4時間放置する。日光の照射は、平均全天日射が0.45kW/m2、UV−B平均量が0.25W/m2とする。また、各々について、日光の照射がない状態でオゾン濃度が0.03ppmとされた状態に暴露して5時間放置する。また、これらの試験の結果の変色状態について、オゾン検知シートA−9においては波長440nmにおける反射率を暴露前後で測定し、比較シートB−9においては波長620nmにおける波長を暴露前後で測定する。この試験結果を以下の表11に示す。表11には、暴露前後の波長測定結果の差(反射率差)を示す。
表11に示すように、オゾン検知シートA−9では、日光を当てた(照射した)場合と日光を当てない場合とで、暴露前後の反射率差に全く差がない。この反射率差は、オゾンに暴露したことにより発生したものと考えてよい。これに対し、比較シートB−9では、日光を当てた場合と日光を当てない場合とで、暴露前後の反射率に差が発生し、日光を当てた場合の方が、反射率の差が大きい。このことより、比較シートB−9では、日光に暴露したことよる変化(退色)も発生しているものと考えられる。色素としてインジゴカルミンを用いた比較シートB−9では、日光の照射による変化は、オゾンによる変化の約40%である。比較シートB−9の結果は、前述した比較シートB−8の結果と同様である。
次に、色素としてオレンジIを用いた場合の人工的に発生させた紫外線に対する耐性について説明する。
先ず、0.034gのオレンジIを、0.1mol/リットルとした水酸化ナトリウム水溶液25mlに溶解させ、保湿剤としてのグリセリン10gに水を加えて50gとし、検知溶液A−10を作製する。この検知溶液A−10にアドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のセルロース濾紙(No.2)を30秒浸漬させることなどにより、前述同様にオゾン検知シートA−10を作製する。オゾン検知シートA−10は、ローズピンクを呈した状態に形成される。これはオゾン検知シートA−8と同様である。
次に、オゾン検知シートA−10に対する比較として次に示す比較シートB−10を作製する。まず、0.045gのインジゴカルミンを3.5gのクエン酸とともに25mリットルの水に溶解し、これに、保湿剤としてのグリセリン15gに水を加えて50gとし、溶液B−10を作製する。この溶液B−10にアドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のセルロース濾紙(No.2)を30秒浸漬させることなどにより、前述同様に比較シートB−10を作製する。比較シートB−10は、青色を呈した状態に形成される。これは、比較シートB−8,B−9と同様である。
上述したオゾン検知シートA−10および比較シートB−10の各々に、人工紫外線光源による紫外線(標準照度;60W/m2)を5分間照射する。この照射(紫外線暴露)の前後における変色の状態について、オゾン検知シートA−10においては波長520nmにおける反射率を照射前後で測定し、比較シートB−10においては波長620nmにおける波長を照射前後で測定する。この試験結果を以下の表12に示す。表12には、照射前後の波長測定結果の差(反射率差)を示す。
表12に示すように、オゾン検知シートA−10では、紫外線照射前後の反射率差が、0.015と非常に低い。これに対し、比較シートB−10では、紫外線照射前後の反射率に差が0.33と大きい。完全に退色した状態の反射率差は0.54であるので、比較シートB−10では、60%の退色が起こっていることになる。同様の、人工紫外線による耐光性をトロペオリンOの場合につい調査すると、反射率差は0,01程度である。また、同様の人工紫外線による耐光性を、オレンジII,クロセインオレンジG,アシッドアリザリンバイオレットN,モーダントブルー13,及びカルコンについて調査すると、反射率差は、0.1〜0.3の範囲であった。
次に、オレンジII,クロセインオレンジG,アシッドアリザリンバイオレットN,モーダントブルー13,及びカルコンとオレンジI,トロペオリンOとについて検討する。
まず、オレンジII,クロセインオレンジG,アシッドアリザリンバイオレットN,モーダントブルー13,及びカルコンは、アゾ基に対してo−位にヒドロキシ基(−OH)が存在しているアゾ色素である。これに対し、オレンジIおよびトロペオリンOは、アゾ基に対してp−位にヒドロキシ基が存在しているアゾ色素である。これらの差により、本実施の形態におけるガス検知素子に適用した場合の上述したような耐光性の差が発生したものと考えられる。
また、オレンジIおよびトロペオリンOなどのように、色素を構成しているアゾ基に結合したベンゼン環において、アゾ基に対してp−位に結合しているヒドロキシ基においては、前述した水素の脱離およびオゾンの取り込みが、o−位の場合に比較してより発生しやすい状態となる。このため、アゾ基に結合したベンゼン環に、アゾ基に対してp−位にヒドロキシ基が結合しているアゾ色素を用いることで、他のアゾ色素の場合に比較して、オゾン検知シートのオゾン検知感度をより高くするとこが可能となるものと考えられる。
なお、上述した実施の形態では、オゾン検知シートに対して測定対象ガスを強制的に通過させてはいないが、ポンプなどを用いて強制的に測定対象ガスを通過させるようにしてもよい。このようにすることで、より短い時間でオゾンの積算量を測定することができる。また、オゾン検知シートのいずれかの面に接着剤を塗布することで、オゾン検知シールとして用いることも可能である。
また、上述では、濾紙を用いるようにしたが、これに限るものではない。通常の紙などの、セルロースの繊維より構成されたシート状のものであれば、シート状担体として利用可能である。また、セルロースに限らず、ナイロンやポリエステルなどの他の繊維より構成されたシート状のもの(不織布など)であっても、シート状担体として利用可能である。特に、繊維の表面が親水性であるとよい。また、シート状担体は、白色であることが好適であるが、これに限るものではない。トロペオリンOなどアゾ色素で染色された状態の色の変化が確認可能であれば、他の色の状態であってもよい。
また、上述では、水溶液がアルカリ性となるアルカリ性物質として、水酸化ナトリウムを用いるようにしたが、これに限るものではない。例えば、水酸化カリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物や、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物などの塩基であっても良い。また、塩であっても、炭酸水素ナトリウムなどの水溶液がアルカリ性となるアルカリ性物質であれば、トロペオリンOなどのヒドロキシ基を備えるアゾ色素(の水溶液)をアルカリ性の状態とすることができる。
101…検知溶液、102…容器、103…シート状担体、104…含浸シート、105…オゾン検知シート、111…色素、112…アルカリ性物質、113…保湿剤。