JP2008231273A - プリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】半硬化状態の樹脂膜(層)が吸湿することによって起こる品質劣化が、大きく低減したプリント配線板製造用の樹脂組成物、樹脂付銅箔等の提供を目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、当該樹脂組成物は、A成分(エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上)、B成分(架橋可能な官能基を有する線状ポリマー)、C成分(架橋剤)、D成分(イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤)、E成分(臭素化エポキシ樹脂)を含み、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲で含有したことを特徴とするものを採用する。また、この樹脂組成物で樹脂層を形成した樹脂付銅箔等を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】この目的を達成するため、当該樹脂組成物は、A成分(エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上)、B成分(架橋可能な官能基を有する線状ポリマー)、C成分(架橋剤)、D成分(イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤)、E成分(臭素化エポキシ樹脂)を含み、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲で含有したことを特徴とするものを採用する。また、この樹脂組成物で樹脂層を形成した樹脂付銅箔等を提供する。
【選択図】なし
Description
本件出願に係る発明は、プリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物及び樹脂付銅箔並びに樹脂付銅箔の製造方法等に関する。特に、銅張積層板に加工する前であって、樹脂付銅箔の樹脂層が半硬化状態にあるとき、吸湿して樹脂層の性能が劣化する現象を軽減した樹脂付銅箔に関する。
樹脂付銅箔は、プリント配線板製造の分野で、種々の使用目的の下で用いられてきた。例えば、特許文献1には、周辺の銅箔が露出した余白部があるように樹脂を銅箔の表面に形成した樹脂付銅箔を採用して、樹脂付銅箔の裏面での打痕の発生を防止することが開示され。樹脂付銅箔の形態をプレス加工時の打痕の防止に用いている。
また、特許文献2には、ビルドアッププリント配線板でビルドアップ層を形成するため樹脂付銅箔をコア層に積層する製造方法において、積層時コア層IVH近傍の銅箔凹みを抑え、レジスト用ドライフィルムの密着性が良好で気泡の発生が無く、結果として精細パターンが精度良く得ることを目的として、コア層IVHに樹脂付銅箔の樹脂層の樹脂成分を流入させ、影響の無い凹みに抑えるために、必要な厚さの銅箔の樹脂付銅箔を用いることが開示されている。
その他、樹脂付銅箔は、その樹脂層に、骨格材を用いないため耐マイグレーション性に優れ、ガラスクロスを骨格材として用いたプリプレグと異なりクロス目が基板表面に浮き出すのを防止する用途等に用いられてきた。例えば、特許文献3には、高電圧で使用しても絶縁劣化の虞れが無く、しかもコストアップが充分に抑制できるようにしたプリント配線板等の提供を目的として、ガラス繊維基板材と配線層及び配線パターンの間に、ガラス繊維を含んでいない絶縁膜を設け、配線層及び配線パターンがガラス繊維基板材内にあるガラス繊維に接触することがないようにするにあたり、前記ガラス繊維を含まない絶縁膜が、絶縁樹脂付銅箔の絶縁樹脂部分で形成され、前記配線パターンが形成された銅箔層が、この絶縁樹脂付銅箔の銅箔部分で形成されていることを特徴とするプリント配線板を採用することが開示されている。この結果、耐マイグレーション性が向上し、絶縁層と配線層及び配線パターンの接着強度が向上し、高い信頼性と長寿命化を得ることができるとしている。
以上のことから理解できるように、樹脂付銅箔は、プリント配線板の形状起因の欠点を補う用途で使用されてきた。
そして、本件出願人等は、以上のような用途に最適な樹脂付銅箔として、特許文献4に開示の発明を行ってきた。この特許文献4には、ハロゲン元素を含まず、且つ高い難燃性を有し、優れた耐水性、耐熱性、および基材と銅箔との間の良好な引き剥がし強さを有する樹脂付き銅箔を提供を目的として、窒素が5〜25重量%であるエポキシ樹脂硬化剤を含むエポキシ系樹脂と、熱硬化性を有するマレイミド化合物とを含み、ハロゲン元素を含有しない組成を有するものであることを特徴とする樹脂化合物を樹脂付銅箔の樹脂層構成用に用いた。
また、本件出願人等は、特許文献5で、難燃性、樹脂流れ性、耐水性、引き剥がし強さの各特性のトータルバランスに優れたプリント配線板製造用の樹脂付銅箔を提供するため、銅箔の片面に樹脂層を備えた樹脂付銅箔において、当該樹脂層は、a.分子中に架橋可能な官能基を有する高分子ポリマーおよびその架橋剤 5〜30重量部 b.25℃で液体であるエポキシ樹脂 5〜30重量部 c.化3に示す構造を備えた化合物 40〜90重量部の組成の樹脂組成物からなることを特徴とする技術を開示している。
以上の特許文献4及び特許文献5に開示の発明は、プリント配線板に加工して以降の高い難燃性を示し、優れた耐水性、耐熱性等及び基材と銅箔との間の良好な引き剥がし強さを有し、従来の樹脂付銅箔を超える性能を発揮してきた。即ち、特許文献4及び特許文献5に開示の発明で言う優れた耐水性とは、樹脂付銅箔の樹脂層が硬化して以降の耐水性である。
しかしながら、本件出願の発明者等が鋭意研究した結果、プリント配線板に加工して以降の高い耐熱性を確保するためには、樹脂付銅箔の樹脂が硬化する前の品質安定性が、非常に重要であることが判明してきた。そこで、本件発明者等は、樹脂付銅箔の樹脂層が硬化する前であって、樹脂付銅箔の半硬化状態にある樹脂層の品質の安定化が必要となった。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、上述のような問題点を解決することのできる樹脂組成物に想到した。以下、この本件発明の概要に関して述べる。
樹脂組成物: 本件出願に係る樹脂組成物は、半硬化状態における耐吸湿特性を備える樹脂組成物であって、当該樹脂組成物は、当該樹脂組成物は、以下のA成分〜E成分を含み、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲で含有したことを特徴とするプリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物である。
A成分: エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上。
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマー。
C成分: 架橋剤。
D成分: イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤。
E成分: 臭素化エポキシ樹脂
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマー。
C成分: 架橋剤。
D成分: イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤。
E成分: 臭素化エポキシ樹脂
そして、本件出願に係る樹脂組成物を構成する前記B成分である官能基を有する線状ポリマーは、沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤に可溶なポリマー成分を用いることが好ましい。
また、本件出願に係る樹脂組成物を構成する前記E成分である臭素化エポキシ樹脂は、化5に示す構造式を備える分子内に2以上のエポキシ基を備えるテトラブロモビスフェノールA、又は、分子内に2以上のエポキシ基を備えるテトラブロモビスフェノールAからの誘導体として得られる、以下の化6に示す構造式を備える化合物の1種又は2種を混合して用いることが好ましい。
また、本件出願に係る樹脂組成物を構成する前記C成分である架橋剤は、ウレタン系樹脂を用いる事が好ましい。
以上に述べてきた本件出願に係る樹脂組成物は、上述した各成分を、樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部であり、E成分は、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲となるように重量部を定めて混合使用することが好ましい。
更に、以上に述べてきた樹脂組成物には、F成分として多官能エポキシ樹脂を添加することも好ましい。
そして、本件出願に係る樹脂組成物にF成分を添加する場合には、樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、F成分が3重量部〜20重量部であり、E成分は、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲となるようにE成分の重量部を定めて混合使用することが好ましい。
樹脂付銅箔: 本件出願に係る樹脂付銅箔は、銅箔の片面に樹脂層を備えた樹脂付銅箔において、当該樹脂層を上述の樹脂組成物を用いて、5μm〜100μmの厚さの半硬化樹脂膜として形成したことを特徴とするプリント配線板製造用の樹脂付銅箔である。
そして、本件出願に係る樹脂付銅箔において、樹脂付銅箔の製造に用いる銅箔の樹脂層を形成する表面にシランカップリング処理層を備えることが好ましい。
樹脂付銅箔の製造方法: 本件出願に係る樹脂付銅箔の製造方法において、以下の工程a、工程bの手順で樹脂層の形成に用いる樹脂ワニスを調製し、当該樹脂ワニスを銅箔の表面に塗布し、乾燥させることで5μm〜100μmの厚さの半硬化樹脂膜として樹脂付銅箔とすることを特徴とするプリント配線板製造用の樹脂付銅箔の製造方法である。
工程a: A成分(エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上)、B成分(官能基を有する線状ポリマー)、C成分(架橋剤)、D成分(イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤)、E成分(分子内に2以上のエポキシ基を備えるテトラブロモビスフェノールAからの誘導体として得られるエポキシ樹脂)、F成分(多官能エポキシ樹脂)の内、A成分〜E成分を必須成分とし、F成分を必要に応じて添加し、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲となるように各成分を混合して樹脂組成物とする。
工程b: 前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が25wt%〜50wt%の樹脂ワニスとする。
工程b: 前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が25wt%〜50wt%の樹脂ワニスとする。
プリント配線板: 本件出願に係るプリント配線板は、上述の樹脂組成物を用いて絶縁層を構成したことを特徴とするものである。
本件出願に係る樹脂組成物は、半硬化状態の樹脂膜(層)の段階で、耐吸湿性に優れる。その結果、高温多湿の環境に長時間置かれても、硬化後の樹脂層としての品質が劣化しない。従って、この樹脂組成物を用いた樹脂層を備える樹脂付銅箔は、長期保存安定性に優れ、高温多湿の環境に長時間保存されても、樹脂付銅箔としての品質劣化が非常に小さい。よって、この樹脂組成物又は樹脂付銅箔を用いて製造されるプリント配線板は、樹脂層が吸湿劣化したときに発生するソルダーリフロー工程の溶融はんだ温度が負荷されたときのふくれ(ブリスタ)の発生が抑制される。
以下、本件発明を実施するための最良の形態に関して、項目毎に述べることとする。
樹脂組成物の形態: 本件出願に係る樹脂組成物はプリント配線板の絶縁層構成用に用いるものであり、半硬化状態における耐吸湿特性を備える樹脂組成物である。そして、この樹脂組成物は、当該樹脂組成物は、以下のA成分〜E成分を含み、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲で含有したものである。そして、更に、この樹脂組成物は、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲で含有したことを特徴とするものである。
ここで、樹脂組成物は、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲で含有するとしているのは、硬化後の樹脂層としての難燃性を確保する観点からである。当該臭素原子の含有量が12重量%未満の場合には、良好な難燃性を得ることが出来なくなる。一方、当該臭素原子の含有量が18重量%を超えて含有させても、硬化後の樹脂層の難燃性が向上せず、資源の無駄となる。以下、樹脂組成物の構成成分ごとに説明する。
A成分は、所謂ビスフェノール系エポキシ樹脂である。そして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。ここで、ビスフェノール系エポキシ樹脂を選択使用しているのは、25℃で液状のエポキシ樹脂であり、半硬化状態の樹脂層を備える樹脂付銅箔を製造すると、カール現象の抑制効果が顕著に得られるからである。また、硬化後の樹脂膜と銅箔との良好な密着性、及び、凹凸表面の形状に沿った適度なレジンフローを得る事が可能だからである。なお、液状エポキシが高純度の場合には、過冷を受けると常温に戻しても結晶化状態が維持され、外観上は固形に見えるものもある。この場合には、液状に戻して使用することが可能であるため。ここで言う液状エポキシ樹脂に含まれる。更に、ここで25℃という温度を明記したのは、室温付近でという意味を明確にするためである。
そして、エポキシ当量が200を超えると、25℃で半固形状ないしは固形状になるので樹脂組成物の調製も困難で、樹脂付銅箔を製造したときのカール現象の抑制にも寄与できなくなるため好ましくない。なお、ここで言うエポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)である。更に、上述のビスフェノール系エポキシ樹脂であれば、1種を単独で用いても、2種以上を混合で用いても構わない。しかも、2種以上を混合して用いる場合には、その混合比に関しても特段の限定はない。
このビスフェノール系エポキシ樹脂は、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜20重量部の配合割合で用いられる。当該エポキシ樹脂が3重量部未満の場合には、硬化後に脆くなり樹脂割れを生じやすくなる。一方、20重量部を越えると、室温で樹脂面に粘着性を生じるためハンドリング性に欠ける。
B成分は、架橋可能な官能基を有する線状ポリマーである。ここで、架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、水酸基、カルボキシル基等のエポキシ樹脂の硬化反応に寄与する官能基を備えることが好ましい。そして、この架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤に可溶であることが好ましい。ここで言う官能基を有する線状ポリマーを具体的に例示すると、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等である。
この架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜30重量部の配合割合で用いられる。当該エポキシ樹脂が3重量部未満の場合には、樹脂流れが大きくなる。この結果、製造した銅張積層板の端部から樹脂粉の発生が多く見られ、半硬化状態での樹脂層の耐吸湿性も改善出来ない。一方、30重量部を超えても、樹脂流れが小さく、製造した銅張積層板の絶縁層内にボイド等の欠陥を生じやすくなる。
また、ここで言う沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤である。沸点が50℃未満の場合には、加熱による溶剤の気散が著しく、樹脂ワニスの状態から半硬化樹脂とする場合に、良好な半硬化状態が得られにくくなる。一方、沸点が200℃を超える場合には、半硬化状態で溶剤が残りやすい。通常要求される揮発速度を満足せず、工業生産性を満足しない。
C成分は、B成分とエポキシ樹脂との架橋反応を起こさせるための架橋剤である。この架橋剤には、ウレタン系樹脂を使用することが好ましい。この架橋剤は、B成分の混合量に応じて添加されるものであり、本来厳密にその配合割合を明記する必要性はないものと考える。しかしながら、樹脂組成物を100重量部としたとき、10重量部以下の配合割合で用いる事が好ましい。10重量部を超えて、ウレタン系樹脂であるC成分が存在すると、半硬化状態での樹脂層の耐吸湿性が劣化し、硬化後の樹脂層が脆くなるからである。
D成分は、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤である。本件発明に係る樹脂組成物で、半硬化状態の樹脂層の耐吸湿性を向上させるという観点からイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤を選択的に用いる事が好ましい。中でも、以下の化4に示す構造式を備えるイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤を用いる事が好ましい。この化4に示す構造式のイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤を用いることで、半硬化状態の樹脂層の耐吸湿性を顕著に向上でき、長期保存安定性に優れる。なお、エポキシ樹脂に対するエポキシ樹脂硬化剤の添加量は、反応当量から計算するのではなく、実験上得られる最適量を採用することが好ましい。イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化に際して触媒的な働きを行うものであり、硬化反応の初期段階において、エポキシ樹脂の自己重合反応を引き起こす反応開始剤として寄与するからである。
E成分は、臭素化エポキシ樹脂である。臭素化エポキシ樹脂とは、エポキシ骨格の中に臭素を含んだエポキシ樹脂の総称として用いている。そして、本件出願に係る樹脂組成物の臭素原子含有量を、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、臭素原子が12重量%〜18重量%の範囲となるようにすることができる臭素化エポキシ樹脂であれば、いずれの使用も可能である。しかしながら、分子内に2以上のエポキシ基を備えるテトラブロモビスフェノールA又はそのテトラブロモビスフェノールAの誘導体として得られるエポキシ樹脂を用いることが好ましい。数ある臭素化エポキシ樹脂の中でも、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、硬化した後においても、難燃性効果が高く、得られる硬化物の機械物性が高いため好ましい。参考のために、テトラブロモビスフェノールAの構造式を、化5として例示しておく。そして、以下の化6には、テトラブロモビスフェノールAからの誘導体として得られるエポキシ樹脂の一例であるビスフェノール系臭素化エポキシ樹脂の構造式を例示する。
また、E成分の臭素化エポキシ樹脂として、以下の化7に示す構造式を備える化合物も好ましい。化6に示すビスフェノール系臭素化エポキシ樹脂と同様に、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に高い難燃性の付与が可能であるため好ましい。
そして、本件出願に係る樹脂組成物において、E成分に関しては、1種類を単独で用いても、2種類以上の臭素化エポキシ樹脂を混合して用いても構わない。但し、E成分の総量を考慮して、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、臭素原子が12重量%〜18重量%の範囲となるように重量部を定めることが好ましい。臭素化エポキシ樹脂は、その種類によりエポキシ骨格内に含有する臭素原子量が異なるため、E成分の混合割合を、単に重量部として記載することが困難である。そこで、上述のように臭素原子の含有量を記載して、E成分の添加量に代えた。
更に、以上に述べてきた樹脂組成物には、F成分として多官能エポキシ樹脂を添加することも好ましい。ここで言う多官能エポキシ樹脂とは、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等である。そして、このF成分に関しては、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜20重量部の配合割合で用いる事が好ましい。F成分が3重量部未満の場合には、耐熱特性を得ることが出来ない。一方、F成分が20重量部を超えるものとしても、耐熱性はそれ以上に向上しない。
従って、本件出願に係る樹脂組成物にF成分を添加する場合には、樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、F成分が3重量部〜20重量部であり、E成分は、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲となるようにE成分の重量部を定めて混合使用することが好ましい。
樹脂付銅箔の形態: 本件出願に係るプリント配線板製造用の樹脂付銅箔は、銅箔の片面に樹脂層を備えたものである。そして、この樹脂層を上述の樹脂組成物を用いて、5μm〜100μmの厚さの半硬化樹脂膜として形成したものである。このように上述の樹脂組成物を用いて形成した樹脂層は、耐吸湿性に優れる。この結果、当該樹脂付銅箔を、高温多湿の環境下に長く置いたとしても、樹脂層の品質が吸湿劣化する傾向が小さくなる。従って、厳密な保存環境の管理が不必要になり、管理コストの削減が可能になる。
ここで、当該樹脂層の厚さが5μm未満の場合には、内層回路を備える内層コア材の外層に対し、当該樹脂付銅箔を張り合わせるときに、内層回路の形成する凹凸形状との張り合わせが不可能になる。一方、当該樹脂層の厚さが100μmを超えるものとしても問題はないが、塗布して厚い樹脂膜を形成することは困難で生産性に欠ける。しかも、樹脂層を厚くすれば、プリプレグと比較して差異のないものとなり、樹脂付銅箔の形態の製品を採用する意義が没却する。
そして、銅箔には、電解法又は圧延法等の、その製造方法には拘泥せず、あらゆる製造方法の使用が可能である。そして、その厚さに関しても、特段の限定はない。また、この銅箔の樹脂層を形成する面には、粗化処理を施しても、施さなくとも良い。粗化処理があれば、銅箔と樹脂層との密着性は向上する。そして、粗化処理を施さなければ、平坦な表面となるため、ファインピッチ回路の形成能が向上する。更に、当該銅箔の表面には、防錆処理を施しても構わない。防錆処理に関しては、公知の亜鉛、亜鉛系合金等を用いた無機防錆、又は、ベンゾイミダゾール、トリアゾール等の有機単分子被膜による有機防錆等を採用することが可能である。更に、当該銅箔の樹脂層を形成する最表面には、シランカップリング処理層を備えることが好ましい。
また、特に粗化処理していない銅箔表面と樹脂層との濡れ性を改善し、基材樹脂にプレス加工したときの密着性を向上させるため、銅箔表面にシランカップリング剤層を設けることが好ましい。例えば、銅箔の粗化を行わずに、防錆処理を施し、シランカップリング剤処理に、エポキシ官能性シランカップリング剤、オレフィン官能性シラン、アクリル官能性シラン、アミノ官能性シランカップリング剤又はメルカプト官能性シランカップリング剤等種々のものを用いることが可能であり、用途に応じて好適なシランカップリング剤を選択使用することで、引き剥がし強度が0.8kgf/cmを超えるものになる。
ここで用いることの出来るシランカップリング剤を、より具体的に明示しておくことにする。プリント配線板用にプリプレグのガラスクロスに用いられると同様のカップリング剤を中心にビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いることが可能である。
このシランカップリング剤層の形成は、一般的に用いられる浸漬法、シャワーリング法、噴霧法等、特に方法は限定されない。工程設計に合わせて、最も均一に銅箔とシランカップリング剤を含んだ溶液とを接触させ吸着させることのできる方法を任意に採用すれば良いのである。これらのシランカップリング剤は、溶媒としての水に0.5〜10g/lとなるように溶解させて、25℃レベルの温度で用いる。シランカップリング剤は、銅箔の表面に突きだしたOH基と縮合結合することにより、被膜を形成するのであり、いたずらに濃い濃度の溶液を用いても、その効果が著しく増大することはない。従って、本来は、工程の処理速度等に応じて決められるべきものである。但し、0.5g/lを下回る場合は、シランカップリング剤の吸着速度が遅く、一般的な商業ベースの採算に合わず、吸着も不均一なものとなる。また、10g/lを超える濃度であっても、特に吸着速度が速くなることもなく不経済となる。
樹脂付銅箔の製造方法の形態: 本件出願に係る樹脂付銅箔の製造方法は、最初に以下の工程a、工程bの手順で樹脂ワニスを調製する。
工程aでは、上述のA成分(エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上。)、B成分(官能基を有する線状ポリマー)、C成分(架橋剤)、D成分(イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤)、E成分(臭素化エポキシ樹脂)、F成分(多官能エポキシ樹脂)の内、A成分〜D成分を必須成分とし、E成分及びF成分の内の1種又は2種を含み、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲となるように各成分を混合して樹脂組成物とする。このときの各成分の混合順序、混合手段等に特段の限定は無い。従って、公知のあらゆる混合手法を採用することが可能である。そして、これらの各成分に関しては、既に述べているので、ここでの説明は省略する。
また、前記工程aで、必要に応じて適当量の硬化促進剤を混合使用することも好ましい。ここで言う硬化促進剤は、3級アミン、イミダゾール、尿素系硬化促進剤等である。本件発明では、この硬化促進剤の配合割合は、特に限定を設けていない。なぜなら、硬化促進剤は、銅張積層板製造の熱間プレス条件等の生産条件を考慮して、製造者が任意に選択的に添加量を定めるべきものだからである。
工程bでは、前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が30wt%〜50wt%の樹脂ワニスとする。このときの有機溶剤には、上述のように沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤であり、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤を用いることが好ましい。上述したと同様の理由からである。そして、ここで樹脂固形分量を25wt%〜50wt%の樹脂ワニスとする。なお、樹脂固形分量とは、樹脂ワニスを加熱して揮発分を除去したときに残留する固形分量をwt%で表示したものである。ここに示した樹脂固形分量の範囲が、銅箔の表面に塗布したときに、最も膜厚を精度の良いものに制御できる範囲である。樹脂固形分が25wt%未満の場合には、粘度が低すぎて、銅箔表面への塗布直後に流れて膜厚均一性を確保しにくい。これに対して、樹脂固形分が50wt%を越えると、粘度が高くなり、銅箔表面への薄膜形成が困難となる。なお、ここに具体的に挙げた溶剤以外でも、本件発明で用いるすべての樹脂成分を溶解することの出来るものであれば使用が可能である。
以上のようにして得られる樹脂ワニスを、銅箔の片面に塗布する場合には、特に塗布方法に関しては限定されない。しかし、目的とする厚さ分を精度良く塗布しなければならないことを考えれば、形成する膜厚に応じた塗布方法、塗布装置を適宜選択使用すればよい。また、銅箔の表面に樹脂皮膜を形成した後の乾燥は、樹脂溶液の性質に応じて半硬化状態とすることのできる加熱条件を適宜採用すればよい。
このとき乾燥後の半硬化樹脂層として5μm〜100μmの厚さとして、本件発明に係る樹脂付銅箔となる。なお、厚さの限定理由に関しては、上述のとおりである。
プリント配線板の形態: 本件出願に係るプリント配線板は、上述の樹脂組成物を用いて絶縁層を構成したことを特徴とするものである。即ち、本件発明に係る樹脂組成物を樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造する。そして、この樹脂付銅箔を用いて、内層コア配線板に張り合わせて多層銅張積層板として、多層プリント配線板に加工することができる。また、本件発明に係る樹脂組成物を樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスをガラスクロス、ガラス不織布等の骨格材に含浸させプリプレグとして、公知の方法で銅張積層板を製造し、プリント配線板に加工することもできる。即ち、上記樹脂組成物を用いることで、公知のあらゆる製造方法でプリント配線板の製造が可能になる。なお、本件発明に言うプリント配線板とは、所謂片面板、両面板、3層以上の多層板を含むものである。以下、実施例に関して説明する。
この実施例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。
樹脂組成物の調製:以下のA成分〜F成分を混合して、樹脂組成物を100重量%としたときの臭素原子の割合が15.1重量%である樹脂組成物を調製した。
A成分: エポキシ当量が200以下の25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂 (商品名:エポトートYD−128、東都化成社製)/15重量部
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてのポリビニルアセタール樹脂 (商品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/15重量部
C成分: 架橋剤としてのウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリ ウレタン工業社製)/5重量部。
D成分: イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤としての2−フェニル−4−メチル−5− ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名:キュアゾール2P4MHZ、四国化 成工業社製)/3重量部
E成分: 臭素化エポキシ樹脂1(商品名:エピクロン1121N−80M、大日本イン キ化学工業社製)/30重量部
臭素化エポキシ樹脂2(商品名:BREN−304、日本化薬社製)/20重 量部
F成分: 多官能エポキシ樹脂としてのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商 品名:エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製)/12重量部
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてのポリビニルアセタール樹脂 (商品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/15重量部
C成分: 架橋剤としてのウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリ ウレタン工業社製)/5重量部。
D成分: イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤としての2−フェニル−4−メチル−5− ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名:キュアゾール2P4MHZ、四国化 成工業社製)/3重量部
E成分: 臭素化エポキシ樹脂1(商品名:エピクロン1121N−80M、大日本イン キ化学工業社製)/30重量部
臭素化エポキシ樹脂2(商品名:BREN−304、日本化薬社製)/20重 量部
F成分: 多官能エポキシ樹脂としてのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商 品名:エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製)/12重量部
樹脂ワニスの調製: 上記組成の樹脂組成物を、メチルエチルケトンとジメチルホルムアミドとの混合溶剤(混合比:メチルエチルケトン/ジメチルホルムアミド=1/1)に溶解し、樹脂固形分量35%の樹脂ワニスを調製した。
樹脂付銅箔の製造: 上述の樹脂ワニスを、公称厚さ18μmの電解銅箔の粗化面に均一に塗布し、風乾後、140℃×5分間の加熱処理を行い、半硬化状態の樹脂層を備えた樹脂付銅箔を得た。このときの樹脂層の厚さは85μmとした。
吸湿はんだ耐熱性試験:当該樹脂付銅箔を、温度30℃、相対湿度65%の恒温恒湿槽内に、15時間保持して吸湿させた。その後、試験用内層回路を形成した両面プリント配線板を内層コア配線板として用いて、この両面に当該樹脂付銅箔を張り合わせて積層した。この張り合わせは、樹脂付銅箔の樹脂層が、内層コア配線板の表面と接触するように積層配置して、圧力20kgf/cm2、温度170℃×2時間の熱間プレス成形を行い、4層の銅張積層板を製造した。そして、この積層板を、260℃に加熱したはんだバスに浮かべ、ふくれが発生するまでの時間を計測した。その結果を、比較例との対比が可能なように表1に示す。
[比較例1]
この比較例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。
この比較例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。
樹脂組成物の調製:以下のa成分〜g成分を混合して、硬化促進剤を除く樹脂組成物を100重量%としたときの臭素原子の割合が15.4重量%である樹脂組成物を調製した。
a成分: ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYD−128、東都化 成社製)/15重量部
b成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてのポリビニルアセタール樹脂 (商品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/15重量部
c成分: 架橋剤としてのウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリ ウレタン工業社製)/5重量部
d成分: エポキシ樹脂硬化剤(25%ジメチルホルムアミド溶液として調製したジシア ンジアミド(試薬)/3重量部(固形分換算)
e成分: 臭素化エポキシ樹脂1(商品名:エピクロン1121N−80M、大日本イン キ化学工業社製)/30重量部
臭素化エポキシ樹脂1(商品名:BREN−304、日本化薬社製)/20重 量部
f成分: 硬化促進剤(商品名:キュアゾール2E4MZ、四国化成工業社製)/0.5 重量部
g成分: オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−680、 大日本インキ化学工業社製)/12重量部
b成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてのポリビニルアセタール樹脂 (商品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/15重量部
c成分: 架橋剤としてのウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリ ウレタン工業社製)/5重量部
d成分: エポキシ樹脂硬化剤(25%ジメチルホルムアミド溶液として調製したジシア ンジアミド(試薬)/3重量部(固形分換算)
e成分: 臭素化エポキシ樹脂1(商品名:エピクロン1121N−80M、大日本イン キ化学工業社製)/30重量部
臭素化エポキシ樹脂1(商品名:BREN−304、日本化薬社製)/20重 量部
f成分: 硬化促進剤(商品名:キュアゾール2E4MZ、四国化成工業社製)/0.5 重量部
g成分: オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−680、 大日本インキ化学工業社製)/12重量部
以上の成分から理解できるように、実施例の成分と対比するとエポキシ樹脂硬化剤の種類が異なり、且つ、硬化促進剤を用いている点が異なる。
樹脂ワニスの調製: 実施例と同様にして、樹脂固形分量35%の樹脂ワニスを調製した。
樹脂付銅箔の製造: 実施例と同様にして、厚さは85μmの半硬化状態の樹脂層を備えた樹脂付銅箔を得た。
吸湿はんだ耐熱性試験:実施例と同様にして行った。その結果を、実施例との対比が可能なように表1に示す。
[比較例2]
この比較例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。
この比較例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。
樹脂組成物の調製:以下のa成分〜f成分を混合して、硬化促進剤を除く樹脂組成物を100重量%としたときの臭素原子の割合が15.4重量%である樹脂組成物を調製した。
a成分: ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYD−128、東都化 成社製)/15重量部
b成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてポリビニルアセタール樹脂(商 品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/15重量部
c成分: 架橋剤としてウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリウ レタン工業社製)/5重量部
d成分: エポキシ樹脂硬化剤として、ノボラック型フェノール樹脂(商品名:フェノラ イトTD−2131、大日本インキ化学工業社製)/20重量部
e成分: 臭素化エポキシ樹脂1(商品名:エピクロン1121N−80M、大日本イン キ化学工業社製)/25重量部
臭素化エポキシ樹脂2(商品名:BREN−304、日本化薬社製)/20重 量部
f成分: 硬化促進剤(商品名:キュアゾール2E4MZ、四国化成工業社製)/0.5 重量部
b成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてポリビニルアセタール樹脂(商 品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/15重量部
c成分: 架橋剤としてウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリウ レタン工業社製)/5重量部
d成分: エポキシ樹脂硬化剤として、ノボラック型フェノール樹脂(商品名:フェノラ イトTD−2131、大日本インキ化学工業社製)/20重量部
e成分: 臭素化エポキシ樹脂1(商品名:エピクロン1121N−80M、大日本イン キ化学工業社製)/25重量部
臭素化エポキシ樹脂2(商品名:BREN−304、日本化薬社製)/20重 量部
f成分: 硬化促進剤(商品名:キュアゾール2E4MZ、四国化成工業社製)/0.5 重量部
以上の成分から理解できるように、実施例の成分と対比すると、エポキシ樹脂の配合量及びエポキシ樹脂硬化剤の種類が異なり、且つ、硬化促進剤を用いている点が異なる。
樹脂ワニスの調製: 実施例と同様にして、樹脂固形分量35%の樹脂ワニスを調製した。
樹脂付銅箔の製造: 実施例と同様にして、厚さは85μmの半硬化状態の樹脂層を備えた樹脂付銅箔を得た。
吸湿はんだ耐熱性試験:実施例と同様にして行った。その結果を、実施例との対比が可能なように表1に示す。
[実施例と比較例との対比]
実施例の場合の吸湿はんだ耐熱性試験のふくれ発生までの時間は600秒以上である。これに対し、比較例1及び比較例2共にふくれ発生までの時間が300秒以下である。この結果、半硬化状態で吸湿させても、本件発明に係る樹脂組成物の場合の吸湿劣化が小さいことが明らかである。
実施例の場合の吸湿はんだ耐熱性試験のふくれ発生までの時間は600秒以上である。これに対し、比較例1及び比較例2共にふくれ発生までの時間が300秒以下である。この結果、半硬化状態で吸湿させても、本件発明に係る樹脂組成物の場合の吸湿劣化が小さいことが明らかである。
本件出願に係る樹脂組成物は、半硬化状態の樹脂膜(層)の段階で、耐吸湿性に優れ、高温多湿の環境に長時間置かれても、硬化後の樹脂層としての品質が劣化しない。従って、この樹脂組成物を用いて、高品質のプリント配線板製造に用いるプリプレグ又は樹脂付銅箔等の製造が可能である。しかも、この樹脂組成物は、その製造方法に関しても特殊な方法を採用する必要が無く、容易に製造する事が可能である。
そして、多層プリント配線板の薄い内層絶縁層の形成するためには、樹脂付銅箔が用いられる。係る樹脂付銅箔の樹脂層の形成に、上記樹脂組成物を用いることが好ましい。高温多湿の環境に長時間保存されても、長期保存安定性に優れた樹脂付銅箔となるからである。
更に、上記樹脂組成物又は樹脂付銅箔を用いて製造されるプリント配線板は、樹脂層が吸湿劣化したときに発生しやすいふくれ現象(ソルダーブリスタ)の発生が抑制される。従って、プリント配線板品質が大きく向上する。
Claims (11)
- 半硬化状態における耐吸湿特性を備える樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物は、以下のA成分〜E成分を含み、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲で含有したことを特徴とするプリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物。
A成分: エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上。
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマー。
C成分: 架橋剤。
D成分: イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤。
E成分: 臭素化エポキシ樹脂。 - 前記B成分である架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤に可溶なポリマー成分を用いる請求項1に記載のプリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物。
- 前記C成分である架橋剤は、ウレタン系樹脂を用いる請求項1〜請求項3のいずれかに記載のプリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物。
- 樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部であり、
E成分は、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲となるようにE成分の重量部を定めるものである請求項1〜請求項4のいずれかに記載のプリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物。 - F成分として多官能エポキシ樹脂を添加した請求項1〜請求項5のいずれかに記載のプリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物。
- 樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、F成分が3重量部〜20重量部であり、
E成分は、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲となるようにE成分の重量部を定めるものである請求項1〜請求項6のいずれかに記載のプリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物。 - 銅箔の片面に樹脂層を備えた樹脂付銅箔において、
当該樹脂層は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて、5μm〜100μmの厚さの半硬化樹脂膜として形成したことを特徴とするプリント配線板製造用の樹脂付銅箔。 - 前記銅箔の樹脂層を形成する表面にシランカップリング処理層を備える請求項8に記載のプリント配線板製造用の樹脂付銅箔。
- 請求項8又は請求項9に記載のプリント配線板製造用の樹脂付銅箔の製造方法であって、
以下の工程a、工程bの手順で樹脂層の形成に用いる樹脂ワニスを調製し、当該樹脂ワニスを銅箔の表面に塗布し、乾燥させることで5μm〜100μmの厚さの半硬化樹脂膜として樹脂付銅箔とすることを特徴とするプリント配線板製造用の樹脂付銅箔の製造方法。
工程a: A成分(エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上)、B成分(官能基を有する線状ポリマー)、C成分(架橋剤)、D成分(イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤)、E成分(臭素化エポキシ樹脂)、F成分(多官能エポキシ樹脂)の内、A成分〜E成分を必須成分とし、F成分を必要に応じて添加し、樹脂組成物重量を100重量%としたとき臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲となるように各成分を混合して樹脂組成物とする。
工程b: 前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が25wt%〜50wt%の樹脂ワニスとする。 - 請求項1〜請求項7いずれかに記載の樹脂組成物を用いて絶縁層を構成したことを特徴とするプリント配線板。
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JP2007073704A JP2008231273A (ja) | 2007-03-20 | 2007-03-20 | プリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物 |
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