JP2008222620A - 光学活性ヒドラジノケトエステル化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、β−ケトエステルを用いたC−N結合の不斉生成反応を水性溶媒系で行う方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、キラルなホスフィノフェロセン誘導体、及び銀化合物とを混合させて得られる触媒の存在下で、アゾジカルボキシレートとβ−ケトエステル化合物とを、水性溶媒中で反応させることからなる、光学活性α−ヒドラジノ−β−ケトエステル化合物を製造する方法に関する。
【選択図】 なし
Description
また、リチウムエノラートとニトロソ化合物とをキラルなルイス酸触媒の存在下に反応させてC−N結合を生成させる方法も提案されている(特許文献1参照)が、この方法も有機溶媒中で行うものであった。
本発明者らは、β−ケトエステル類とα,β−不飽和ケトンとのミカエル反応をキラルな銀触媒の存在下に水性溶媒中で行う方法を報告してきた(特許文献2参照)。この方法は水性溶媒系によるものであるが、C−C結合を生成させる反応であり、この反応では新たなC−N結合を生成させることはできない。
また、本発明は、前記した方法により製造された光学活性α−ヒドラジノ−β−ケトエステル化合物を還元して、対応する光学活性α−アミノ−β−ケトエステル化合物を製造する方法に関する。
(1) キラルなホスフィノフェロセン誘導体、及び銀化合物とを混合させて得られる触媒の存在下で、アゾジカルボキシレートとβ−ケトエステル化合物とを、水性溶媒中で反応させることからなる、光学活性α−ヒドラジノ−β−ケトエステル化合物を製造する方法。
(2) キラルなホスフィノフェロセン誘導体が、次の一般式(1)
で表されるキラルなホスフィノフェロセン誘導体である前記(1)に記載の方法。
(3) 一般式(1)におけるR1が置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、R2が置換基を有していてもよいアルキル基であり、R3が置換基を有していてもよいアルキル基であり、R4が水素原子である前記(2)に記載の方法。
(4) アゾジカルボキシレートが、次の一般式(2)
で表されるアゾジカルボキシレートである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 一般式(2)におけるR6が、置換基を有していてもよいアルキル基である前記(4)に記載の方法。
(6) β−ケトエステル化合物が、次の一般式(3)、
で表されるβ−ケトエステル化合物である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 一般式(3)におけるR7、及びR8が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基を示すか、R7とR8が一緒になって隣接する炭素原子と共に5〜10員の環を形成するものであり、R9が置換基を有していてもよいアルキル基である前記(6)に記載の方法。
(8) 銀化合物が、AgX
(式中、Xは、OSO3R5(式中、R5は、炭素数が1以上のパーフルオロアルキル基を表す。)、又はClO4、BF4、PF6、SbF6などの強酸の対アニオンを示す。)
で表される銀化合物である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9) 水性溶媒が、水と有機溶媒の混合溶媒である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10) 水性溶媒が、水と有機溶媒の混合溶媒からなる均一系の溶媒である前記(9)に記載の方法。
(11) 前記(1)〜(10)のいずれかに記載された方法により製造された光学活性α−ヒドラジノ−β−ケトエステル化合物を還元して、対応する光学活性α−アミノ−β−ケトエステル化合物を製造する方法。
(12) 一般式(1)で表されるキラルなホスフィノフェロセン誘導体、及び銀化合物とを混合させて得られる触媒の存在下で、一般式(2)で表されるアゾジカルボキシレートと、一般式(3)で表されるβ−ケトエステル化合物とを、水性溶媒中で反応させることからなる、次の一般式(4)、
で表される光学活性α−ヒドラジノ−β−ケトエステル化合物を製造する方法。
本発明のキラルなホスフィノフェロセン誘導体としては、フェロセンの5員環又はその側鎖にホスフィンが2個以上、好ましくは2個結合したものであって、キラリティーを有するものが挙げられる。好ましいキラルなホスフィノフェロセン誘導体としては、フェロセンの一方の5員環に1個のホスフィノ基が結合し、同じ5員環の側鎖にもうひとつのホスフィノ基が結合したキラルなホスフィノフェロセン誘導体が挙げられる。さらに好ましいキラルなホスフィノフェロセン誘導体としては、前記した一般式(1)で表されるキラルなホスフィノフェロセン誘導体が挙げられる。
本発明の一般式(1)で表されるキラルなホスフィノフェロセン誘導体におけるR1、及びR2の「脂肪族炭化水素基」としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2〜30、好ましくは炭素数2〜20、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基;炭素数2〜30、好ましくは炭素数2〜20、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルキニル基;炭素数3〜30、好ましくは炭素数5〜30、炭素数5〜20の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基などが挙げられる。また、「芳香族炭化水素基」としては、炭素数6〜40、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1〜40のアルキル基が結合した、炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアラルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)などが挙げられる。
これらの「脂肪族炭化水素基」及び「芳香族炭化水素基」は本発明の方法における反応に悪影響を与えない各種の置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜15の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキルシリル基、アリールシリル基などが挙げられるが、好ましい置換基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
好ましいR1基としては、フェニル基などの炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。また、好ましいR2基としては、エチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜10のアルキル基、又はシクロヘキシル基などの炭素数5〜20の脂環式炭化水素基が挙げられる。
また、これらの炭化水素基における置換基としては、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;炭化水素基が環状の場合には前記したアルキル基;前記したアルキル基から誘導されるアルコキシ基;前記したアルキル基から誘導されるアルコキシカルボニル基;前記したアルキル基から誘導されるアルキルカルボニルオキシ基;前記したシクロアルキル基から誘導されるシクロアルコキシ基;前記したシクロアルキル基から誘導されるシクロアルコキシカルボニル基;前記したシクロアルキル基から誘導されるシクロアルキルカルボニルオキシ基;前記した炭素環式芳香族基から誘導されるアリールオキシ基;前記した炭素環式芳香族基から誘導されるアリールオキシカルボニル基;前記した炭素環式芳香族基から誘導されるアリールカルボニルオキシ基;前記したアラルキル基から誘導されるアラルキルオキシ基;前記したアラルキル基から誘導されるアラルキルオキシカルボニル基;前記したアラルキル基から誘導されるアラルキルカルボニルオキシ基;シアノ基;ニトロ基などや、場合によっては、前記したアルキル基やアルケニル基やシクロアルキル基などを置換基とすることもできる。
このようなキラルなホスフィノフェロセン誘導体は前記した特許文献7−9にも記載されており、公知の方法で製造又は入手することができる。
前記した一般式(2)で表されるアゾジカルボキシレートにおけるR6の「炭化水素基」としては、前記で説明した炭化水素基が挙げられ、これらの炭化水素基は前記した置換基を有することができる。好ましいR5としては、例えば、置換基を有してもよい炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜15、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の置換基としては、前記で説明した置換基が挙げられる。より好ましいR5としては、tert−ブチル基などの炭素数1〜10の分枝状のアルキル基が挙げられる。
前記した一般式(3)で表されるβ−ケトエステル化合物におけるR7、R8、及びR9の「炭化水素基」としては、前記で説明した炭化水素基が挙げられ、これらの炭化水素基は前記した置換基を有することができる。また、R7、R8、及びR9の「複素環基」としては、1個〜4個、好ましくは1〜3個又は1〜2個の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる異種原子を含有する3〜8員、好ましくは5〜8員の環を有する単環式、多環式、又は縮合環式の複素環基が挙げられる。このような複素環基としては、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピロリル基、2−ピリジル基、2−インドール基、ベンゾイミダゾリル基などが挙げられる。これらの複素環基は前記した炭化水素基において説明してきたような置換基で置換されていてもよい。
前記した一般式(3)で表されるβ−ケトエステル化合物におけるR7とR8が一緒になって隣接する炭素原子と共に単環式、多環式、又は縮合環式の5〜10員の環を形成する場合としては、R7とR8が一緒になって炭素数1〜8、好ましくは炭素数3〜8、炭素数3〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を形成し、隣接する2個の炭素原子と共に3〜10員の脂肪族環式基を形成するものが挙げられる。形成される環は飽和であっても不飽和であってもよいが、好ましくは飽和環が挙げられる。また、このように形成された環にさらに他の環が結合または縮合したものであってもよい。
さらに好ましいβ−ケトエステル化合物としては、次の一般式(5)、
で表されるアルカノンカルボン酸エステル類が挙げられる。
AgX
(式中、Xは、OSO3R5(式中、R5は、炭素数が1以上のパーフルオロアルキル基を表す。)、又はClO4、BF4、PF6、SbF6などの強酸の対アニオンを示す。)
で表される銀化合物が挙げられる。
炭素数が1以上のパーフルオロアルキル基としては、CnF2n+1−基(nは1以上)であり、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基が、挙げられる。好ましいOSO3R5としては、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ基などが挙げられる。
本発明の方法における好ましい銀化合物としては、過塩素酸銀(AgClO4)が挙げられる。
本発明の方法における銀化合物は、前記したような銀化合物とキラルなホスフィノフェロセン誘導体とを、あらかじめ混合して錯体を調製してから、これを触媒として用いてもよいし、あるいは反応系において銀化合物とキラルなホスフィノフェロセン誘導体とを混合して使用するようにしてもよい。触媒としての使用割合については、銀化合物とキラルなホスフィノフェロセン誘導体とをほぼ等モルで使用するのが好ましい。また、原料のβ−ケトエステル化合物に対して、通常は、0.1〜50モル%、好ましくは0.5〜20モル%程度の割合とすることができる。
したがって、本発明は、本発明の方法により製造された光学活性α−ヒドラジノ−β−ケトエステル化合物を還元して、対応する光学活性α−アミノ−β−ケトエステル化合物を製造する方法を提供するものである。
次の反応式で表される試薬を用いて、反応を行った。
生成物のスペクトルデータを次に示す。
1H−NMR (CDCl3) δ:
2.74-1.80 (m, 12H), 2.74-1.80 (m, 12H) 1.45-1.40 (m, 18H),
0.79-0.77 (m, 9H);
13C−NMR (CDCl3) δ:
7.5, 18.77, 26.76, 28.00, 32.20, 35.60, 37.54, 76.14, 81.06,
82.28, 91.16, 91.54, 154.23, 154.57, 155.08, 165.83;
HPLC (Daicel chiralpak ADH, イソプロパノール/ヘキサン=1/99,
流速=1.0mL/分),
tR=17.5分 (主たるピーク),
tR=22.6分 (比較的小さなピーク).
したがって、本発明は、光学活性体を必要とする産業分野、特に光学活性なアミノ酸類を必要とする、医薬品や食品、それらの中間体などのファインケミカル分野において有用であり、産業上の利用可能性を有している。
Claims (11)
- キラルなホスフィノフェロセン誘導体、及び銀化合物とを混合させて得られる触媒の存在下で、アゾジカルボキシレートとβ−ケトエステル化合物とを、水性溶媒中で反応させることからなる、光学活性α−ヒドラジノ−β−ケトエステル化合物を製造する方法。
- 一般式(1)におけるR1が置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、R2が置換基を有していてもよいアルキル基であり、R3が置換基を有していてもよいアルキル基であり、R4が水素原子である請求項2に記載の方法。
- 一般式(2)におけるR6が、置換基を有していてもよいアルキル基である請求項4に記載の方法。
- 一般式(3)におけるR7、及びR8が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基を示すか、R7とR8が一緒になって隣接する炭素原子と共に5〜10員の環を形成するものであり、R9が置換基を有していてもよいアルキル基である請求項6に記載の方法。
- 銀化合物が、AgX
(式中、Xは、OSO3R5(式中、R5は、炭素数が1以上のパーフルオロアルキル基を表す。)、又はClO4、BF4、PF6、SbF6などの強酸の対アニオンを示す。)
で表される銀化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。 - 水性溶媒が、水と有機溶媒の混合溶媒である請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
- 水性溶媒が、水と有機溶媒の混合溶媒からなる均一系の溶媒である請求項9に記載の方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載された方法により製造された光学活性α−ヒドラジノ−β−ケトエステル化合物を還元して、対応する光学活性α−アミノ−β−ケトエステル化合物を製造する方法。
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