JP2008216077A - 染色組織標本の陽性細胞の自動検出法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】染色された組織標本を撮像し、得られた画像をコンピュータにより処理して染色陽性細胞を検出する方法であって、(1)画像の最も輝度分布の多い濃度を背景濃度として検出して標準化を行う工程、(2)画像の最も高い濃度より低濃度側に閾値を設定し、該一定の閾値まで、高濃度側から低濃度側へ検出閾値を徐々に変動させて、各閾値で初めて検出される陽性細胞像のみを陽性細胞像として選択する工程を含み、前記工程(2)は、(a)検出閾値以上に染色された領域を検出する工程と、(b)検出された領域のうち、一定の大きさの細胞が染色された部分のみを陽性細胞像として選択する工程と、(c)検出された陽性細胞像の数及び重心の座標を記録する工程とを含むことを特徴とする染色された組織標本の陽性細胞の検出方法。
【選択図】なし
Description
Perrotti et al,J.Neuroscience,24(47):10594−10602(2005) Lai et al,J.Neuroscience,25(49):11239−11247(2005)
そこで、本発明者は、染色された組織標本における陽性細胞数を定量解析するにあたり、画像処理工程において一定の閾値以上に染色された領域の検出に加えて、細胞の大きさによる検出を組み合せて染色陽性細胞を検出し、さらに陽性細胞像を擬似カラー化して陽性細胞密度として検出し、さらにその着色像を標準化するとともに、複数の標本を用いて平均値によるマップを作成することにより、領域設定が客観的になるとともに標準化と平均値マップの作成により空間情報を維持した上での定量データが可視化できることを見出し、先に出願した(特願2006−13465)。この方法により、標本の領域設定及び定量がコンピュータにより自動的にでき、かつ複数の標本のデータが同時に解析できるため一点だけのデータでなく空間情報を加味したデータの可視化が可能となった。
しかし、細胞密度が高い領域(>800/mm2)では、細胞の重なりが測定誤差の要因となり、正確に染色陽性細胞を検出できず、細胞密度が高い領域に関して云えば測定した染色陽性細胞の計数値は信頼性の低いものであった(Wada et al., Neuroscience Research, 56: 96-102 2006)。
また、本発明は、前記工程(2)により選択された各閾値における陽性細胞像の計数値を合計して、撮像した組織標本中における陽性細胞の計数値として採用する染色された組織標本の陽性細胞の計数方法を提供するものである。
この際、画像にバックグラウンドの染めムラ等ノイズが認められるときには、予め公知の画像処理ソフトウェア(NIH−image)等を用いて取り除いておくことが好ましい。
ここで、一定の閾値(最終検出閾値)は、実験者の経験から通常判断される閾値でよいが、背景値を基準にその半分から2/3程度(背景値が255の場合は120〜160程度)の濃度とするのが好ましい。
各閾値における陽性細胞の検出は、次のように行われる。
複数の濃度の閾値を元に分析を行うことで、従来の2値化による検出法と比較して、薄い像や細胞密度の高い領域であっても高精度に陽性細胞を自動検出できるので、組織全体で陽性細胞計数を行ったり、複数の個体のデータを合算してグループ比較を行ったりでき、細胞数の微妙な変化も検出可能である。また、本発明の検出法により検出した陽性細胞を特願2006−13465に記載の方法により可視化解析することや、本発明の方法をstereology等を利用した細胞計数、核医学等における粒子解析での定量等へ応用することも可能である。
すなわち、(3)画像を碁盤目状のピクセルに区切り、各ピクセル内の陽性細胞密度を測定する(図7(A))。この陽性細胞密度の計数は、計数ソフトウェアにより自動的に行われる。各ピクセルの大きさは、例えば示した例の場合、200μmブロックによって9等分とすることができる。この操作は、例えば、MATLABソフトウェアに付加することができるimage processing toolboxに含まれるライブラリ関数群によって実現できる。選択領域の重心を計算する関数によって各領域を1点で表すように変換し、この変換データに対してブロックごとに任意の数値演算を行うことが可能な関数によってブロック内の平均値を求めることで陽性細胞密度を計算することができる。
(1)図3−Aに示すように、図の直線下(黄色)に4つの陽性細胞が目視可能である。しかしながら、従来の2値化による検出法では、この4つの細胞を分離検出することは極めて困難である。また、閾値を高濃度側(輝度0側)に設定すれば、グラフ左に示す比較的低濃度に染色された細胞像を検出できず、他方、閾値を低濃度側に設定すれば、グラフ右に示す密集する細胞像が一つに融合されてしまい、個々を検出できない。本発明は、高濃度側より複数設定した閾値においてそれぞれ陽性細胞を検出することで、検出精度の向上を実現している。
(2)神経細胞に特異的な標識蛋白NeuNに対する免疫染色を行った組織標本(マウス脳)に対して本発明を適用し、神経細胞核の自動検出を行った。具体的には、取り込んだ画像から検出した背景値を最高輝度(255)として標準化し、最終検出閾値を140に設定し、閾値20、40、120及び140でそれぞれ陽性細胞を検出した(図3−B)。比較例1として、閾値120でのみ陽性細胞を検出した。
(1)実施例1と同様の組織標本(マウス脳)に対して本発明を適用し、神経細胞核の自動検出を行った。具体的には、標準化された背景値255に対して、最終検出閾値を160に設定し、閾値0、20、40、60、80、100、120、140、160でそれぞれ陽性細胞像を検出した。各閾値では面積2ピクセル以上の像を陽性細胞像と判定した。また、比較例2として、閾値120又は閾値160の各1点のみで陽性細胞像を検出した。
結果を図5A、Bに示す。図中、赤い丸は本発明の検出法によって検出された陽性細胞像を示し、青い丸は従来の2値化(比較例2)によって検出された陽性細胞像を示す。図5から明らかなように、薄い像や細胞が融合して1つになってしまったりした領域においても本発明の検出法により細胞像を分離でき、正確な陽性細胞像のカウントが可能であった。
特願2006−13465に記載の方法を適用して、取り込んだ画像を100×100μmの領域(40×40ピクセル)に区切り、各領域内の陽性細胞密度を計測した。計測した結果は、陽性細胞密度の高い領域を赤〜黄とした擬似カラーとして陽性細胞密度マップとして表示した。
従来の2値化による検出法により検出され作成された陽性細胞密度マップを図6(B)に示し、本発明の検出法によって検出され作成された陽性細胞密度マップを図6(C)に示す。従来の2値化による検出法では、黒三角で示した領域は細胞密度が高いにもかかわらず、正しく認識できなかった(図6(B))。他方、本発明の検出法によれば、従来の方法ではうまく検出できなかった高密度の領域でも個々の細胞が検出できた(図6(C))。結果として、大脳皮質の層構造による神経細胞密度の違いを示す事が可能となった。
Claims (5)
- 染色された組織標本を撮像し、得られた画像をコンピュータにより処理して染色陽性細胞を検出する方法であって、(1)画像の最も輝度分布の多い濃度を背景濃度として検出して標準化を行う工程、(2)画像の最も高い濃度より低濃度側に閾値を設定し、該一定の閾値まで、高濃度側から低濃度側へ検出閾値を徐々に変動させて、各閾値で初めて検出される陽性細胞像のみを陽性細胞像として選択する工程を含み、前記工程(2)は、(a)検出閾値以上に染色された領域を検出する工程と、(b)検出された領域のうち、一定の大きさの細胞が染色された部分のみを陽性細胞像として選択する工程と、(c)検出された陽性細胞像の数及び重心の座標を記録する工程とを含むことを特徴とする染色された組織標本の陽性細胞の検出方法。
- 前記工程(2)により選択された各閾値における陽性細胞像の計数値を合計して、撮像した組織標本中における陽性細胞の計数値として採用する染色された組織標本の陽性細胞の計数方法。
- 請求項1記載の方法により検出された染色陽性細胞を可視化して解析する方法であって、(3)得られた画像を碁盤目状のピクセルに区切り、各ピクセル内の陽性細胞密度を測定する工程、(4)陽性細胞密度に応じた擬似カラーを付し、組織標本全体の着色像を得る工程、(5)組織標本全体の形状を既知の組織標本形状に合わせて標準化を行う工程、及び(6)複数の個体由来の組織標本について前記(1)〜(5)の操作を行い、複数の組織標本についての着色像の平均値マップを得る工程を含む、染色された組織標本の陽性細胞の可視化解析方法。
- さらに、(7)複数の条件の個体群について前記(1)〜(6)の操作を行い、群間の比較を行うことを特徴とする請求項3記載の染色された組織標本の陽性細胞の可視化解析方法。
- さらに、群間比較の結果を、統計的パラメータとして数値化し、各ピクセルに擬似カラーを付すことを特徴とする請求項4記載の染色された組織標本の陽性細胞の可視化解析方法。
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