JP2008214646A - 板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた溶接構造用厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.06〜0.20%を含み、Si、Mn、P、S、Alを適正量含む組成を有し、回復または再結晶したフェライト相を体積率で60%以上含み、240HV未満の硬さを有する第二相とからなる組織を有し、さらに板厚中央位置および板厚1/4位置における(200)面の回折強度比が2.0以上または(110)面の回折強度比が2.5以上となる集合組織を有し、かつ{100}面、{110}面、{111}面、{211}面のうちのいずれかの面が、圧延面に対して5°以内に揃ったフェライト粒コロニーの板厚方向厚さを、板厚中央位置および板厚1/4位置において平均で5μm以下とする。これにより、優れた板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性と、優れた靭性とを兼備した鋼板となる。
【選択図】図1
Description
疲労特性は、一般に、疲労亀裂発生特性と、疲労亀裂伝播特性とに分けて評価されている。溶接鋼構造物では、溶接止端部が応力集中部となりやすく、また引張の残留応力も作用するため、溶接止端部が疲労亀裂の発生源となることが多い。このような疲労亀裂発生の防止策として、止端部形状の改善や圧縮の残留応力の導入などの方策が知られている。しかし、溶接鋼構造物には多数の溶接止端部があり、上記した疲労亀裂発生の防止策を実行するには、多くの労力と時間とを必要とし、施工工数の増加や、施工コストの高騰を招き、溶接鋼構造物の製造コストを著しく増大させる。そのため、溶接鋼構造物の耐疲労特性向上対策として、使用される鋼材自体の耐疲労亀裂伝播特性の向上が要望されている。鋼材自体の耐疲労亀裂伝播特性を向上させることにより、疲労亀裂の初期成長が抑制され、鋼構造物の寿命を延長することが可能となる。
疲労亀裂先端の塑性変形挙動がフェライトの結晶方位に大きく依存することは広く知られている。例えば、疲労亀裂が、{100}面が板厚方向に垂直({100}面が板面に平行)な方位を有するフェライト中を板厚方向に伝播する際には、疲労亀裂先端において、様々なすべり系が活動して転位同士の干渉が生じ、亀裂の伝播が抑制される。一方、疲労亀裂が、{111}面が板厚方向に垂直({111}面が板面に平行)なフェライト中を板厚方向に伝播する際には、亀裂先端において活動するすべり系が限定されるため、他のすべり系の干渉を受けることがなく、塑性変形が容易で疲労亀裂が進展し、疲労亀裂の伝播は抑制されず、疲労破壊が進行する。
(イ)板厚方向に垂直な面(板面に平行な面)において、{100}集合組織または{110}集合組織を発達させた組織とする、さらに、
(ロ)板面(圧延面)にほぼ平行な結晶面を共有するフェライト粒の集団(フェライト粒コロニー)の板厚方向の厚さを薄くした組織とする
ことにより、特別に硬さを増加させた硬質な第二相を含まなくとも、優れた板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性を確保でき、優れた靭性と優れた板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性を兼備した厚鋼板とすることができることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)質量%で、C:0.06〜0.20%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.10%以下、S:0.006%以下、Al:0.10%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶接構造用の厚鋼板であって、該厚鋼板の組織を、フェライト相とそれ以外の第二相からなり、平均で150HV未満の硬さを有するフェライト相を組織全体に対する体積率で60%以上含み、前記第二相が240HV未満の硬さを有する相であり、さらに該厚鋼板の板厚中央位置および板厚1/4位置における(200)面のX線回折強度比が2.0以上または(110)面のX線回折強度比が2.5以上で、かつ{100}面、{110}面、{111}面、{211}面のうちのいずれかの面が、圧延面に対して5°以内に揃ったフェライト粒コロニーの板厚方向の厚さが、板厚中央位置および板厚1/4位置において平均で5μm以下である組織とすることを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた溶接構造用厚鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.5%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、B:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする溶接構造用厚鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.10%以下、Nb:0.10%以下、Ti:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする溶接構造用厚鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする溶接構造用厚鋼板。
(5)質量%で、C:0.06〜0.20%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.10%以下、S:0.006%以下、Al:0.10%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、加熱工程と、圧延工程とを施し厚鋼板とする溶接構造用厚鋼板の製造方法であって、前記圧延工程が、少なくとも500℃以上のフェライト単相域またはフェライトの体積率が60%以上となる二相域での累積圧下率が50%以上で、かつ次(1)式
圧延速度S=ln(di/df)/t ‥‥‥(1)
(ここで、di:温間圧延前の板厚(mm)、df:温間圧延後の板厚(mm)、t:温間圧延に要した時間(s))
で定義される圧延速度Sが2.0×10-2/s以下となる圧延を施す温間圧延を含む工程であり、前記鋼素材を、該温間圧延前に、方位差15゜以上の大角境界に囲まれた領域の平均大きさが15μm以下である組織を有するように調整したのち、前記温間圧延を行うことを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(6)質量%で、C:0.06〜0.20%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.10%以下、S:0.006%以下、Al:0.10%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、方位差15゜以上の大角境界に囲まれた領域の平均大きさが15μm以下である組織を有する鋼素材に、500℃以上Ac3変態点未満の温度域の温度に加熱する加熱工程と、ついで、該加熱工程を経た鋼素材に、(Ac3変態点−40℃)以下500℃以上の温度域での累積圧下率が50%以上で、かつ次(1)式
圧延速度S=ln(di/df)/t ‥‥‥(1)
(ここで、di:温間圧延前の板厚(mm)、df:温間圧延後の板厚(mm)、t:温間圧延に要した時間(s))
で定義される圧延速度Sが2.0×10-2/s以下となる温間圧延を行う圧延工程と、を施すことを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(7)質量%で、C:0.06〜0.20%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.10%以下、S:0.006%以下、Al:0.10%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、加熱工程と、圧延工程とを施し厚鋼板とする溶接構造用厚鋼板の製造方法であって、前記加熱工程が、前記鋼素材をAc3変態点以上950℃未満の温度域の温度に加熱する工程であり、前記圧延工程が、900℃未満(Ar3変態点−20℃)以上の温度域での累積圧下率が30%以上である一次圧延と、(Ar3変態点−20℃)未満500℃以上の温度域での累積圧下率が50%以上で、かつ次(1)式
圧延速度S=ln(di/df)/t ‥‥‥(1)
(ここで、di:温間圧延前の板厚(mm)、df:温間圧延後の板厚(mm)、t:温間圧延に要した時間(s))
で定義される圧延速度Sが2.0×10-2/s以下となる温間圧延と、を行う工程であることを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(8)(7)において、前記加熱工程が、前記鋼素材を950〜1180℃の温度域の温度に加熱する工程であり、前記圧延工程が、前記一次圧延前に、1050〜900℃の温度域での累積圧下率が30%以上である前段圧延を行うことを特徴とする溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(9)(7)または(8)において、前記一次圧延と前記温間圧延との間で、1℃/s以上の冷却速度で冷却する加速冷却を施すことを特徴とする溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(10)(8)において、前記前段圧延と前記温間圧延との間で前記一次圧延に代えて、1℃/s以上の冷却速度で冷却する加速冷却を施すことを特徴とする溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(11)(5)ないし(10)のいずれかにおいて、前記圧延工程を施したのち、400℃以上Ac1変態点以下の温度に加熱する焼戻工程を施すことを特徴とする溶接構造用厚鋼板の製造方法。
C:0.06〜0.20%
Cは、固溶してあるいは硬質第二相を生成させることにより鋼の強度を増加させる元素であり、溶接構造用として所望の強度を確保するために含有する必要がある。また、(α+γ)2相域および/またはα単相域での圧延に際し、急激な粒成長や再結晶の進行を防ぎ、所望の{100}または{110}集合組織を発達させ、フェライト粒コロニー厚さの減少を達成するために、Cを0.06%以上含有させる必要がある。Cが0.06%未満では、鋼中のセメンタイト等の炭化物粒子が少ないため、圧延中に急激な粒成長や再結晶が生じ、集合組織の発達が妨げられたり組織が粗大化して靭性が低下する。また、0.20%を超える含有は、溶接性が急激に低下する。このようなことから、Cは0.06〜0.20%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.06〜0.15%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶強化により鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが好ましいが、1.0%を超える含有は、表面性状を損なううえ、靭性が極端に低下する。このため、Siは1.0%以下に限定した。なお、好ましくは0.1〜0.5%である。
Mnは、鋼中では強化元素として作用する元素である。このような効果を得るためには、0.5%以上含有することが望ましいが、2.0%を超える多量の含有は、溶接性を低下させるとともに、材料コストの高騰を招く。このため、Mnは2.0%以下に限定した。なお、好ましくは0.5〜1.8%である。
Pは、不純物元素として含まれ、靭性等に悪影響を及ぼすため、できるだけ低減することが望ましいが、実用上、0.10%までは許容できる。このため、Pは0.10%以下に限定した。なお、好ましくは0.020%以下である。
S:0.006%以下
Sは、鋼中では介在物として存在し、延性、靭性等に悪影響を及ぼすため、できるだけ低減することが望ましいが、実用上、0.006%までは許容できる。このため、Sは0.006%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素であるが、このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.10%を超える含有は、介在物量を増加させるとともに、靭性をも低下させる。このため、Alは0.10%以下に限定した。なお、好ましくは0.05%以下である。
Cu、Ni、Mo、Cr、Bはいずれも、鋼の焼入れ性を高め、強度向上に直接寄与するとともに、靭性をも向上させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果を得るためには、Cu:0.01%以上、Ni:0.01%以上、Mo:0.01%以上、Cr:0.01%以上、B:0.0005%以上、含有することが望ましいが、Cu:1.0%、Ni:1.5%、Mo:1.0%、Cr:1.0%、B:0.010%をそれぞれ超える過度の含有は、靭性、溶接性を低下させる。このため、含有する場合は、Cu:1.0%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1.0%以下、Cr:1.0%以下、B:0.010%以下に、それぞれ限定することが好ましい。
V、Nb、Tiはいずれも、窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、鋼を強化する効果を有する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果を得るためには、V、Nb、Tiを、それぞれ0.003%以上含有することが望ましい。一方、V:0.10%、Nb:0.10%、Ti:0.05%を超えて多量に含有すると、鋳片に割れを生じ、製造コストの高騰を招く。このため、V:0.10%以下、Nb:0.10%以下、Ti:0.05%以下、の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。
Ca、REMはいずれも、介在物の形状制御を介して、延性、靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.001%以上、REM:0.001%以上含有することが好ましいが、Ca:0.010%、REM:0.010%を超える多量の含有は、靭性を低下させる。このため、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下に限定することが好ましい。
本発明厚鋼板は、上記した組成を有しさらに、フェライト相とそれ以外の第二相からなり、平均で150HV未満の硬さを有するフェライト相を組織全体に対する体積率で60%以上含み、第二相が240HV未満の硬さを有する組織を有する。
本発明では、{100}集合組織を発達させるために、鋼素材に、少なくとも(フェライト+オーステナイト)2相域あるいはフェライト単相域で圧延を行う温間圧延を施す。しかし、生成したフェライト相のうち、圧延で加工されて硬化した、加工フェライト相の組織分率が組織全体に対する体積率で40%を超えると、鋼板靭性が顕著に低下する。そのため、優れた鋼板靭性を確保するために、本発明では、回復あるいは再結晶を促進し、加工フェライト相内の転位密度が低減して平均で150HV未満の硬さを有する、回復あるいは再結晶したフェライト相の組織分率を、組織全体に対する体積率で60%以上に限定した。
さらに本発明厚鋼板は、板厚中央位置および板厚1/4位置における(200)面のX線回折強度比が2.0以上または(110)面のX線回折強度比が2.5以上である集合組織を有する。
{100}、{110}などの集合組織が発達した鋼板の圧延方向に平行な断面(L断面)について、EBSP(Electoron Back Scattering Pattern)法で結晶方位分布を解析すると、図1に示すように、圧延面に平行に伸長し、圧延面(板面)にほぼ平行な結晶面を共有するフェライト粒やサブグレインの集団(フェライト粒コロニーという)が認められる。
上記した組成の溶鋼を転炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法でスラブ等の鋼素材とすることが好ましいが、鋼素材の製造方法はこれに限定されるものではない。
得られた鋼素材は、ついで加熱工程と、圧延工程とを施され厚鋼板とされる。
圧延速度S=ln(di/df)/t ‥‥‥(1)
(ここで、di:温間圧延前の板厚(mm)、df:温間圧延後の板厚(mm)、t:温間圧延に要した時間(s))
で定義される圧延速度Sが2.0×10-2/s以下となる圧延とする。
なお、本発明では、上記した組成の鋼素材が、上記した温間圧延直前に、方位差15゜以上の大角境界に囲まれた領域の平均大きさが15μm以下である組織を有するように調整する。平均大きさとは、その領域と等しい面積を有する正方形の一辺長さを指す。このような組織を有する素材(被圧延材)に温間圧延を施すことにより、{100}面、{110}面、{111}面、{211}面のうちのいずれかの面が、圧延面に対して5°以内に揃ったフェライト粒コロニーの板厚方向の厚さを、少なくとも板厚中央位置および板厚1/4位置において平均で5μm以下とすることができる。フェライト粒コロニーの板厚方向の厚さを平均で5μm以下とすることにより、{100}および{110}集合組織の発達による疲労亀裂伝播の抑制効果がさらに顕著となる。フェライト粒コロニーの板厚方向の厚さが5μmを超えて厚くなると、そのような効果は生じなくなる。
また、加熱工程における加熱温度が950℃以上1180℃以下の場合には、圧延工程において、温間圧延の前に、1050〜900℃のオーステナイト再結晶温度域での累積圧下率が30%以上である前段圧延によってある程度オーステナイト粒を細粒化した後、900℃未満(Ar3変態点−20℃)以上のオーステナイト未再結晶温度域での累積圧下率が30%以上である一次圧延を施すことが好ましい。
なお、一次圧延と温間圧延の間で、圧延を中断して、1℃/s以上の冷却速度で冷却する加速冷却を施し、加速冷却を停止したのち、温間圧延を行ってもよい。また、前段圧延と温間圧延との間で、一次圧延に代えて、加速冷却を施してもよい。また、前段圧延と一次圧延との間で、加速冷却を施してもよいことは言うまでもない。圧延途中で、圧延を中断して、加速冷却を施すことにより、結晶粒の成長を防止することができ、温間圧延前の方位差15°以上の大角境界に囲まれる領域の大きさをより微細化でき、温間圧延により所望の集合組織をより容易に形成できるようになる。
なお、表1に各鋼の、Ac1、Ac3、Ar3変態点を併記したが、これら変態点は次の各式により算出した。
−5.7Ti+233Nb−169Al−895B
Ac3(℃)=937−476.5C+56Si−19.7Mn−16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo+124.8V
+136.3Ti−19Nb+198Al+3315B
Ar3(℃)=868−396C+25Si−68Mn−21Cu−36Ni−25Cr−30Mo
(ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ti、Nb、Al、B:各元素の含有量(質量%))
得られた厚鋼板について、組織観察、引張試験、シャルピー衝撃試験、疲労亀裂伝播試験を実施し、組織、強度、靭性、耐疲労亀裂伝播特性を評価した。試験方法は次のとおりとした。
(1)組織観察
得られた厚鋼板から、圧延面に平行に、板状試験片(大きさ:25×25mm)を、測定面が板厚1/4位置および板厚中央位置となるように、採取した。そして、板状試験片の測定面を、600番のエメリー紙研磨により仕上げたのち、電解研磨または化学研磨により測定面の残留歪を除去し、測定用試験片とした。得られた測定用試験片を用いて、X線回折測定を行い、(200)面および(110)面のX線回折強度比を求めた。この各特定面のX線回折強度比は、測定用試験片を用いて得られた各特定面からの回折強度と、粉末試料を用いて作製したランダム方位サンプル材の同一特定面からの回折強度との比である。このX線回折強度比が大きいほど特定の結晶方位が集中した集合組織が発達していることを示す。
(2)引張試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2201の規定に準拠して、引張方向が圧延方向となるように、JIS 1B号引張試験片(平行部:幅25mm×長220mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を求めた。
(3)シャルピー衝撃試験
得られた厚鋼板の板厚中央部から、JIS Z 2242の規定に準拠して、圧延方向(L方向)にVノッチ試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を実施し、0℃における吸収エネルギーvE0(J)、破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。なお、vE0は3本の平均値とした。
(4)疲労亀裂伝播試験
得られた厚鋼板から、疲労亀裂伝播方向が板厚方向となるように、図2に示すASTM E647の規定に準拠して片側切欠引張試験片を採取し、試験した。なお、試験片には予め疲労予亀裂を導入した。試験条件は、周波数:15Hz、応力比0.1とし、ΔK=10MPa√m、15 MPa√mにおける疲労亀裂伝播速度da/dN(m/cycle)を求めた。
得られた結果を表3に示す。
Claims (11)
- 質量%で、
C:0.06〜0.20%、 Si:1.0%以下、
Mn:2.0%以下、 P:0.10%以下、
S:0.006%以下、 Al:0.10%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶接構造用の厚鋼板であって、該厚鋼板の組織を、フェライト相とそれ以外の第二相からなり、平均で150HV未満の硬さを有するフェライト相を組織全体に対する体積率で60%以上含み、前記第二相が平均で240HV未満の硬さを有する相であり、さらに該厚鋼板の板厚中央位置および板厚1/4位置における(200)面のX線回折強度比が2.0以上または(110)面のX線回折強度比が2.5以上で、かつ{100}面、{110}面、{111}面、{211}面のうちのいずれかの面が、圧延面に対して5°以内に揃ったフェライト粒コロニーの板厚方向の厚さが、板厚中央位置および板厚1/4位置において平均で5μm以下である組織とすることを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた溶接構造用厚鋼板。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.5%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、B:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接構造用厚鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.10%以下、Nb:0.10%以下、Ti:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接構造用厚鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の溶接構造用厚鋼板。
- 質量%で、
C:0.06〜0.20%、 Si:1.0%以下、
Mn:2.0%以下、 P:0.10%以下、
S:0.006%以下、 Al:0.10%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、加熱工程と、圧延工程とを施し厚鋼板とする溶接構造用厚鋼板の製造方法であって、前記圧延工程が、少なくとも500℃以上のフェライト単相域またはフェライトの体積率が60%以上となる二相域での累積圧下率が50%以上で、かつ下記(1)式で定義される圧延速度Sが2.0×10-2/s以下となる圧延を施す温間圧延を含む工程であり、前記鋼素材を、該温間圧延前に、方位差15゜以上の大角境界に囲まれた領域の平均大きさが15μm以下である組織を有するように調整したのち、前記温間圧延を行うことを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた溶接構造用厚鋼板の製造方法。
記
圧延速度S=ln(di/df)/t ‥‥‥(1)
ここで、di:前記温間圧延前の板厚(mm)、
df:前記温間圧延後の板厚(mm)、
t:前記温間圧延に要した時間(s) - 質量%で、
C:0.06〜0.20%、 Si:1.0%以下、
Mn:2.0%以下、 P:0.10%以下、
S:0.006%以下、 Al:0.10%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、方位差15゜以上の大角境界に囲まれた領域の平均大きさが15μm以下である組織を有する鋼素材に、500℃以上Ac3変態点未満の温度域の温度に加熱する加熱工程と、ついで、該加熱工程を経た鋼素材に、(Ac3変態点−40℃)以下500℃以上の温度域での累積圧下率が50%以上で、かつ下記(1)式で定義される圧延速度Sが2.0×10-2/s以下となる温間圧延を行う圧延工程と、を施すことを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた溶接構造用厚鋼板の製造方法。
記
圧延速度S=ln(di/df)/t ‥‥‥(1)
ここで、di:前記温間圧延前の板厚(mm)、
df:前記温間圧延後の板厚(mm)、
t:前記温間圧延に要した時間(s) - 質量%で、
C:0.06〜0.20%、 Si:1.0%以下、
Mn:2.0%以下、 P:0.10%以下、
S:0.006%以下、 Al:0.10%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、加熱工程と、圧延工程とを施し厚鋼板とする溶接構造用厚鋼板の製造方法であって、前記加熱工程が、前記鋼素材をAc3変態点以上950℃未満の温度域の温度に加熱する工程であり、前記圧延工程が、900℃未満(Ar3変態点−20℃)以上の温度域での累積圧下率が30%以上である一次圧延と、(Ar3変態点−20℃)未満500℃以上の温度域での累積圧下率が50%以上で、かつ下記(1)式で定義される圧延速度Sが2.0×10-2/s以下となる温間圧延と、を行う工程であることを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた溶接構造用厚鋼板の製造方法。
記
圧延速度S=ln(di/df)/t ‥‥‥(1)
ここで、di:前記温間圧延前の板厚(mm)、
df:前記温間圧延後の板厚(mm)、
t:前記温間圧延に要した時間(s) - 前記加熱工程が、前記鋼素材を950〜1180℃の温度域の温度に加熱する工程であり、前記圧延工程が、前記一次圧延前に、1050〜900℃の温度域での累積圧下率が30%以上である前段圧延を行うことを特徴とする請求項7に記載の溶接構造用厚鋼板の製造方法。
- 前記一次圧延と前記温間圧延との間で、1℃/s以上の冷却速度で冷却する加速冷却を施すことを特徴とする請求項7または8に記載の溶接構造用厚鋼板の製造方法。
- 前記前段圧延と前記温間圧延との間で前記一次圧延に代えて、1℃/s以上の冷却速度で冷却する加速冷却を施すことを特徴とする請求項8に記載の溶接構造用厚鋼板の製造方法。
- 前記圧延工程を施したのち、400℃以上Ac1変態点以下の温度に加熱する焼戻工程を施すことを特徴とする請求項5ないし10のいずれかに記載の溶接構造用厚鋼板の製造方法。
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