JP2008213240A - アルミナ質セラミックス焼結体の製造方法およびアルミナ質セラミックス焼結体 - Google Patents

アルミナ質セラミックス焼結体の製造方法およびアルミナ質セラミックス焼結体 Download PDF

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裕司 堀田
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敏宏 磯部
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杵鞭  義明
Koji Watari
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Abstract


【課題】高い強度を有し、かつ良好な熱的・化学的安定性、優れた絶縁性、耐食性、耐摩耗性を有するアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法とその方法によって得られる高強度のアルミナ質セラミックス焼結体を提供すること。
【解決手段】本発明は、原料粉末を非粉砕媒体型のミル処理によって溶媒に分散させてスラリーとし、このスラリーを用いて鋳込み成形により成形体を得て、次いでこの成形体を焼成することを特徴とするアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法と、該方法によって得られるアルミナ質セラミックス焼結体である。非粉砕媒体型のミル処理は、例えば、高圧の高速スラリー流を相互に衝突させる又は固定壁に衝突させる方式である。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミナ質セラミックス焼結体の製造方法および該製造方法によって得られるアルミナ質セラミックス焼結体に関する。より詳しくは、原料粉末を非粉砕媒体型のミル処理して得られるスラリーを鋳込み成形し、得られた成形体を焼成するアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法、および該製造方法によって得られるアルミナ質セラミックス焼結体に関する。
アルミナ質セラミックス焼結体は、金属材料に比べ、硬度、熱的・化学的安定性、絶縁性、低誘電損失、耐食性、耐摩耗性に優れている。特に、アルミナ原料は低価格であることや化学的安定性に優れているため、その焼結体は構造部材、耐食性部材、切削工具、軸受、透光性材料、IC基盤や静電チャック等の工業材料に広く使用されている。一方で、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニアなどの他のセラミックス材料に比べ、強度や靱性が低いため、製品の破損を起こしやすいといった問題点がある。
このような問題の解決法として、従来から材料の複合化による方法と製造プロセスの改良による方法が提案されている。材料の複合化による方法として、例えば、多結晶セラミックスのマトリックス粒子内に、該マトリックスの焼結温度よりも高い融点を有する金属相を有する複合セラミックス焼結体や、高強度のジルコニアや希土類アルミン酸塩を分散させた複合セラミックス焼結体が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。このような複合材料では、セラミックスの高強度化が望めるものの、熱的・化学的安定性、絶縁性、耐食性、耐摩耗性といったアルミナが本来有している優れた性質は損なわれることとなる。
製造プロセスの改良による方法としては、ホットプレス法や熱間静水圧プレス法やパルス通電焼結法が広く知られている。これらの方法では原料粉体を圧縮しながら加熱するため、一般に微粉体の嵩が高く、高密度の成形体を得ることが困難な数nm〜数十nmの粉体を原料に用いることができるというメリットもあるが(例えば特許文献4参照)、これらの方法では加圧方向に対して垂直に粒子が配向し、微構造的な不均質を生じやすく、また焼結できる形状も円板などの板状の薄いものや棒状など単純なものに限られる等の欠点を有している。また、高圧・高温下で処理を行うために製造コストが高く、また安全性にかかるコスト高の問題がある。
一方、鋳込み成形法は、複雑な形状や大型成形に適し、安価に行えるといったメリットを有することから、諸産業分野において広く用いられている。この鋳込み成形法では、原料粉末の泥しょう(スラリー)を作製し、それを鋳込み型に流し込んで成形を行う。そのスラリーは、一般にはボールメディアなどの粉砕媒体を用いたボールミル法を用いて製造される。しかし、この方法によって得たスラリーでは、メディアの衝突による原料粉末の損傷によって、スラリー中の粒子が再凝集を引き起こし易いことが知られている。そのため、原料粉末の分散が不十分・不均一となり、鋳込み成形後の成形体に密度ムラや欠陥を生じやすく、焼成後も不均質な焼成体となることから、高強度セラミックスの作製には不適当とされてきた。しかしながら、近年のより複雑な部品をより高精度に製造するというネットシェイプ化への期待から、鋳込み成形法での高強度化が切望されている。
この成形後の密度ムラや欠陥を減少させるためには、原料のセラミック粉末をスラリー中に均一に分散させ、鋳込み成形過程でその粒子を密にパッキングさせることが必要である。セラミック粒子を溶媒中へ均一に分散させるためには、溶媒のpHを調整したり、分散剤を添加して、メディアと呼ばれる粉砕媒体を用いたボールミルで混合するのが一般的である。しかし、ボールミルを用いた場合には、大きな質量を有するメディアの衝突で原料粉末の結晶及び表面構造が損傷を受け、表面エネルギーが増大し、これが原料粉末の再凝集の原因となっている。このため、セラミック粉末の均一で且つ安定な分散、スラリー化が困難であり、成形後の密度ムラや欠陥を生ずる。
また、スラリー中に原料のセラミック粒子が均一分散していない場合、鋳込み成形過程において、粒子がカードハウス構造をとりやすくなり、成形体密度が低下する。成形体密度が低い場合、成形体を緻密化させるには高温で焼成する必要があるが、高温での焼成は異常粒成長の原因となるため、強度低下の原因となり好ましくない。
実際、原料粉末としてアルミナ粉末を使用したスラリーから鋳込み成形を経て成形体を得て、これを焼結したアルミナ質セラミックス焼結体の強度は、400から500MPa程度であることが報告されている(非特許文献1)。アルミナ材料の高強度焼結体を得るために熱間静水圧プレス法が用いられ、およそ750MPaの強度特性が得られている(非特許文献2)。しかしながら、この方法は大型装置で、高圧・高温で処理を行うために製造コストを引き上げるだけでなく、鋳込み成形とは異なり大型部材を製造することは困難である。
更に、粉砕媒体を用いたボールミルで原料粉末を混合する粉砕媒体型の場合には、メディア同士の衝突等により、メディアの摩耗粉が不純物としてスラリー中に混入する。混入量は多ければ1質量%にもなり、この様な多量の不純物の存在は焼結の妨げとなり、欠陥の原因となる。従来のスラリー調製法は、上記のような粉砕媒体型以外にも、撹拌型、摩粉型、及び超音波型等の作製方法があるが、いずれの方法も過剰なエネルギーによる原料粉末表面の損傷やこれによる再凝集等は避けられない問題であり、また、少なからず不純物の混入があった。更に、従来のスラリー作製方法は、どれもその処理に数時間から数日を必要とする等、経済的、環境的な面においても問題を有している。
特開2003−277133号公報 特開平5−39535号公報 特開平10−114568号公報 特開2003−34572号公報 特開2006−248876号公報 R.G.Murano、"Evaluation material properties for a sintered α-alumina", J. Am. Ceram. Soc., 80, 1919-1928 (1997) H.Mizuta, K.Oda, Y.Shibasaki, M.Maeda, M.Machida,K.Ohshima, "Preparation of high-strength and translucent alumina by hot isostatic pressing", J. Am. Ceram. Soc., 75, 469-473 (1992)
本発明は、以上のようなセラミックス焼結体の製造に関する種々の問題点を解決し、高い強度を有し、かつ良好な熱的・化学的安定性、優れた絶縁性、耐食性、耐摩耗性を損なうことなく維持するアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法とその方法によって得られる高強度のアルミナ質セラミックス焼結体を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、非粉砕媒体型のミル処理によって原料粉末を溶媒中に分散させて得た成形体を用いて焼結することにより優れた性質を有するアルミナ質セラミックス焼結体が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の内容をその要旨とするものである。
(1)原料粉末を非粉砕媒体型のミル処理によって溶媒に分散させてスラリーとし、このスラリーを用いて鋳込み成形により成形体を得て、次いでこの成形体を焼成することを特徴とする、アルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
(2)非粉砕型のミル処理が湿式ジェットミル処理であることを特徴とする、前記(1)に記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
(3)原料粉末がアルミナ粉末であり、溶媒が水であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
(4)湿式ジェットミル処理が、高圧の高速スラリー流を相互に衝突させる方式、又は固定壁に衝突させる方式であることを特徴とする、前記(2)に記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
(5)湿式ジェットミル処理のスラリー流の圧力が10MPa以上であることを特徴とする、前記(1)乃至(4)のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
(6)原料粉末の平均粒子径が0.05〜5μmであることを特徴とする、前記(1)乃至(5)のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
(7)スラリー中の次式で表される原料粉末の体積混入率(体積%)が10〜60体積%であることを特徴とする、前記(1)乃至(6)のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
(8)非粉砕媒体型のミル処理によって得られるスラリーが、見かけ粘度が1〜40mPa・sであり、単位時間当たりの見かけ粘度の変化量が0.1〜10mPa・sであることを特徴とする、前記(1)乃至(7)のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
(9)成形体の焼結温度が1350〜1600℃であることを特徴とする、前記(1)乃至(8)のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
(10)前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の方法によって製造されたものであるアルミナ質セラミックス焼結体。
(11)焼結体における構成粒子の平均粒径が5μm以下であり、相対密度が95%以上であることを特徴とする前記(10)に記載のアルミナ質セラミックス焼結体。
(12)焼結体の構成粒子の平均粒径が、原料粉末の平均粒子径の2倍以下であることを特徴とする前記(10)又は(11)に記載のアルミナ質セラミックス焼結体。
(13)JIS R1601により測定した強度が550MPa以上であることを特徴とする前記(10)乃至(12)のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体。
本発明の方法によれば、原料粉末の溶媒中への混合・分散にあたってメディア等の粉砕媒体を使用しないので、原料粉末の粉砕前の表面状態が損なわれることなく、もとの結晶性及び表面構造を保有した状態であるため、溶媒中へ粉末が分散したスラリーの再凝集が抑制される。その結果、得られるスラリーが低粘度で低チクソトロピー性を有したものとなり、かつ濃厚で安定なスラリーが得られる。また、メディア等の粉砕媒体を使用しないので磨耗粉等の不純物の混入がなく、均一に一次粒子に解砕・分散される。このようなスラリーを用いるので、鋳込み成形を行う際に原料粒子を密にパッキングさせることができる。このようにして得られた成形体を焼成することによって、高い強度を有し、高純度で密度のムラがなく、かつ良好な熱的・化学的安定性、優れた絶縁性、耐食性、耐摩耗性を有する本発明のアルミナ質セラミックス焼結体を得ることができる。
以下に本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明は、原料のセラミック粉末を非粉砕媒体型のミル処理によってスラリー中に溶媒の種類にかかわらず均質に分散させ、鋳込み成形の過程でセラミック粒子を密にパッキングさせることができることと、得られたスラリーを鋳込み成形し、高密度かつ密度ムラや欠陥の少ない成形体を得ることと、その成形体を常圧焼成することで、高強度アルミナセラミックス得ることを特徴とするものであり、セラミックスの製造プロセスにおいて高品質且つ信頼性の高い材料の創製及び省エネルギー・工程時間の短縮に大きく貢献するものである。
まず、本発明の方法においては、セラミックスの原料粉末を非粉砕媒体型のミル処理によって溶媒中に混合し、均一に分散させて、溶媒中に原料粉末が分散したスラリーを調製する。
本発明で用いられる非粉砕媒体型のミル処理は、粉砕媒体を使用することなく流体の衝突エネルギーなどを利用して原料粉末を溶媒中に均一に混合、分散する分散方式である。このような非粉砕媒体型のミル処理としては、例えば湿式ジェットミル処理が揚げられる。この湿式ジェットミル処理では、例えば、耐圧容器内に密封状態で配置されたノズルへスラリーを高圧で圧送し、当該スラリーの対向流を相互に衝突・合流させる工程を採用し、処理液同士の衝突及び/又は処理液と流路壁などの固定壁との衝突で、スラリー中の粉末を微粒化して、乳化、分散、及び混合させるものである。このほかにも、任意の方法で処理溶液を高速流とし、高速流によって生じる乱流、剪断流、及びキャビテーション効果を有効に活用し、処理溶液中の被処理物である原料粉末を、混合、分散、及び解砕する方法も挙げられる。
この様な非粉砕媒体型のミル処理を行う装置としては、例えば、湿式ジェットミルとして市販されている、バルププレートによる高速噴射を利用したタイプ、スリット状に形成した流路内で高速衝突させるタイプ、90°位相させて連通せしめた夫々一文字の流路内で高速衝突を起こさせるタイプ、同一ノズル内で流体同士の衝突回数を複数回発生させるタイプ、対向するオリフィスから非球面構造の部屋へ噴出させて衝突させるタイプ、あるいは液相ジェット流を高速で衝突させるタイプ等が挙げられる。
これらの装置は、それぞれ装置タイプの特性により、混合、分散、及び解砕効果に多少の差を生じるが、前述したボールミルのような従来の粉砕メディアを用いる媒体型分散機をはじめとする分散装置を用いた場合に比べると、飛躍的に高い効率で安定なスラリーを得ることができる。従って、本発明で使用する湿式ジェットミルのタイプは、特に制限されないが、望ましくは高速・高圧の被処理物スラリー同士を正面から衝突させる方式が最も好ましい。
本発明におけるこの湿式ジェットミル処理は、その処理液に作用する処理圧力が10MPa以上で200MPa程度まで、好ましくは50〜200MPa、より好ましくは100〜200MPaの高圧の流体として、上記の湿式ジェットミル処理装置等を用いて処理する。この湿式ジェットミル処理において、処理回数は特に制限されるものではなく、所望の特性を有するスラリーが得られるまで何回も処理を繰り返すことができるが、通常は、1〜10回の処理が行われる。
本発明に使用する原料粉末は、アルミナ成分含有するアルミナ質セラミック粉末であれば良く、アルミナ粉末が最も好ましく、このほかにも、アルミナに焼結助剤を混合したものなども使用することができる。原料粉末の平均粒子径は0.05〜5μmのものが好ましく、0.1〜1μmのものがより好ましい。
スラリー中に含まれる原料粉末の粒子径や粒度分布に特に制限はないが、好適な平均粒子径は0.05〜5μmで、さらに好適には0.1〜1μmである。5μm以上である場合、分散性には優れるが、焼成温度が高くなり強度の低下を招くことになる。0.05μm以下である場合、スラリー中の原料粉末濃度が20体積%以上で一次粒子に解砕することができなくなるため、密度ムラの少ない成形体の作製が困難となる。
スラリー中に含まれる溶媒は、水、アルコール類、ケトン類、油類、及びアミン類等の従来から広く用いられているものを使用することができ、特に制限はないが、環境負荷の観点から、水(蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等)が好適である。
スラリー中に含まれる原料粉末の好適な濃度は、次の式で表されるセラミックス原料の体積混入率( 体積% ) が10〜60体積%である。
この体積混入率が10体積%以下ではスラリー粘度は低下するが、鋳込み成形における着肉厚さが小さくなるため製造上好ましくない。60体積%以上では、非粉砕媒体型のミル処理が可能な流動性を有したスラリーの作製が行えないため好ましくない。好適には、原料粉末を、20〜50体積%の範囲で含有するスラリーが用いられる。また、本発明の効果を損なわない限り、原料粉末の他に、得られる成形体のために、公知の添加剤、例えば、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリエチレンイミン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子添加剤をスラリー中に配合することは差し支えない。
このようにして非粉砕媒体型のミル処理によって原料粉末を溶媒中に分散させたスラリー中では、アルミナ質粉末などの原料粉末はほぼ一次粒子に解砕され、分散前の表面状態が壊れることなく、もとの結晶性及び表面構造を保有する粉体が均一に分散して含有されている。これらの特性に基づいて、粘度が低く、再凝集性を示さない、鋳込み成形に適したスラリーが形成される。
次に、このようにして得られた原料粉末を溶媒中に分散させたスラリーを鋳込み成形を行って焼成のための成形体を作る。鋳込み成形には、公知の鋳型、例えば、石膏型、吸水性樹脂型、多孔質型等を使用することができ、特に限定されるものではない。また、鋳込み方法も、例えば、排泥鋳込み、固形鋳込み、振動鋳込み、加圧鋳込み、減圧鋳込み、及び遠心鋳込み等の公知の鋳込み方法が採用でき、特に制限はない。
成形体の乾燥後の相対密度は60%以上であり、65〜70%であることがより望ましい。60%以下の場合、焼成時の収縮率が大きくなり、密度ムラや内部応力が発生し、強度の低下を招くこととなる。また、成形体を緻密化させるためには高温で焼成する必要となり、高温で焼成を行うと焼結体の構成結晶が成長し、焼結体の強度低下の原因となる。
なお、ここでいう相対密度とは、JIS R1634で定められるアルキメデス法で測定したかさ密度を理論密度で除することによって求められる値である。
次に、この成形体を焼成して本発明のアルミナ質セラミックス焼結体とする。成形体の焼成温度は、1300〜1600℃が好適であり、1400〜1500℃がより好適である。焼結温度が1300℃より低いと焼結体が緻密化せず、また1600℃より高いと焼結体の構成結晶が成長し、強度低下の原因となる。また、アルミナの特性を損なわない限り、従来用いられている焼結を促進するための焼結助剤を混入させてもよい。この焼結助剤は、粉体結晶内の空格子を増加させ、拡散し易くし、焼結速度を促進し、また低温で液相を生じさせ、粘性流動機構により焼結を促進するものであり、例えば酸化マグネシウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化イットリウム等の酸化物を用いることができる。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例:本発明品の製造
アルミナ粉末(平均一次粒子径:約570nm、AKP-20、住友化学製)に、添加剤としてポリアクリル酸アンモニウム(A-6114,東亜合成製)を0.144重量%と蒸留水を70体積%添加し、混合した。このスラリー中に含まれる原料粉末の体積混入率は30体積%であった。得られたスラリーを200MPaで1回の処理条件で湿式ジェットミル処理し、アルミナ粉末分散スラリーとした。得られたスラリーをセッコウ型に鋳込み、100×100×10mmの板状の成形体を得た。その後、この成形体を1300℃、1350℃、1400℃、1450℃、1500℃、1550及び1600℃の各温度で、それぞれ2時間加熱し焼結体を得た。
比較例:比較対照品の製造
実施例と同じアルミナ粉末(平均一次粒子径:約570nm、AKP-20、住友化学製)に、ポリアクリル酸アンモニウム(A-6114,東亜合成株式会社製)を0.144重量%と蒸留水を70体積%添加し、混合した。同様に、このスラリー中に含まれる原料粉末の体積混入率は30体積%であった。得られたスラリーを直径10mmφのアルミナボールを用いたボールミルで24時間混合し、アルミナ粉末分散スラリーとした。得られたスラリーをセッコウ型に鋳込み、100×100×10mmの板状の成形体を得た。その後、この成形体を1300℃、1350℃、1400℃、1450℃、1500℃、1550及び1600℃の各温度で2時間加熱し焼結体を得た。
性能評価1:スラリーの粘度
実施例の湿式ジェットミル処理して得たスラリー及び比較例のボールミル処理して得たスラリーの粘度を測定した。スラリーの粘度は振動式粘度計を用いて評価した。
実施例で鋳込みに用いたスラリーの粘度は、調製直後は約7mPa・sであり、3時間以上経過しても一定であった。一方、比較例で調製したスラリーは、調製直後から粘度の急激な上昇が見られ、10分経過後に約70mPa・s、30分経過後に約90mPa・sであった。
性能評価2:焼結体の相対密度
実施例と比較例の方法で得た焼結体について、それぞれの焼成温度での焼結体の相対密度を求めた。焼結体の相対密度は、JIS R1634で定めるアルキメデス法で測定した密度を理論密度で除することで求めた。その結果を図1に示す。
実施例と比較例の焼成前の成形体の密度はそれぞれ67.6%と59.6%であり、1300℃以下では焼結体の密度に変化は見られなかった。初期の成形体の密度の違いはスラリーの分散性によるものであり、湿式ジェットミル処理を用いて分散を行った方がより均一且つ均質な分散性の高いスラリーが作製できることが確認できた。また、いずれも焼成温度が1350℃から密度の上昇が見られたが、比較例のものでは、1550℃以上で焼成しないと95%以上にならないのに対し、実施例のものでは1450℃と比較例に比べ、低い温度で緻密化した焼結体が得られた。
性能評価3:電子顕微鏡による構造観察
実施例と比較例の方法で得た焼結体について、走査型電子顕微鏡によってその微細構造の観察を行った。その電子顕微鏡写真を図2に示す。
実施例の方法では、1450℃で焼成した焼結体は、0.3〜1μmのアルミナ粒子から構成され、インターセプト法で求めた平均粒径は0.6μmとなり、原料粒子がほとんど粒成長することなく緻密化していることがわかった。1500℃で焼成した場合、緻密化はさらに進み、気孔等の欠陥はないものの、平均粒径が1.1μmと上昇していた。しかし、異常粒成長は確認されず、均一な組織であった。
一方、比較例の方法では、1450℃で焼成した焼結体は、多くの気孔が見られ緻密さが完全でない。また、粒径が0.5〜3μmと、分布が広くなっていることから、成形時に他粒子と多く接触している粒子は粒成長し、他粒子との接触が少ない粒子は粒成長しないという密度ムラの存在が確認できる。1500℃で焼成した焼結体は、1450℃で焼成したものに比べ、気孔は若干減少したが、完全に消失していない。アルミナ粒子は粒成長し、約2μmとなり、部分的に針状の粒子が確認され、異常粒成長の前兆が見られた。
性能評価4:焼結体の強度
実施例と比較例の方法で得た焼結体について、それぞれ1450℃と1500℃で焼成した焼結体の強度を、成形密度、相対密度とともに表1に示す。焼結体の強度は、JISR1601に基づいた3点曲げ強度試験で評価した。
実施例において1450℃で焼成した焼結体は、高密度かつ粒径が小さいという理想的な微構造を有するため、3点曲げ強度は733±36MPaと高い値を示した。また、均一・均質な組織であったことから、個体間のばらつきがとても小さかった。1500℃で焼成した場合、粒径が増大したことにより、若干の強度の低下が見られたものの、568±92MPaと高い値を示した。
一方、比較例においては、図2に示すような欠陥の多い組織であるため、強度は低く、1450℃で焼成した焼結体は474±96MPaと低い値であった。また、組織が不均一であるため、個体間のばらつきが大きかった。1500℃で焼成した場合は、組織の不均一さが改善されぬまま、粒成長したため、強度がさらに低下した。
上記のように、焼結体の強度は成形体の組織を強く反映するため、本発明の方法よって作製する均一分散スラリーは、成形体を構成するセラミック粒子を密に充填させ、均質な高強度セラミックスの製造に極めて有効である。また、本実施例で示したアルミナに関しては、高コストである熱間静水圧プレス法と同程度の機械的強度を本発明によって得ることが可能であった。
本発明の方法で得られるセラミックス焼結体は、高い強度を有し、高純度で密度のムラがなく、かつ良好な熱的・化学的安定性、優れた絶縁性、耐食性、耐摩耗性を有するため、構造部材、耐食性部材、切削工具、軸受、透光性材料等、様々な用途で用いられる。また、本発明のセラミックス焼結体の製造方法は、鋳込み成形法に適応可能であることから大型部材や複雑形状の部材の製造にも適しているため、従来用いられてきた構造部材に比べ、格段に信頼性が高いものが得られる。さらに、高強度化により、部材の薄肉化も可能となるため、コストの面でも有効である。
実施例および比較例の方法で製造した焼結体の焼成温度とその密度の関係を示すグラフである。 実施例および比較例の方法で製造した焼結体の微構造を示す電子顕微鏡写真である。

Claims (13)

  1. 原料粉末を非粉砕型のミル処理によって溶媒に分散させてスラリーとし、このスラリーを用いて鋳込み成形により成形体を得て、次いでこの成形体を焼成することを特徴とする、アルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
  2. 非粉砕型のミル処理が湿式ジェットミル処理であることを特徴とする、請求項1に記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
  3. 原料粉末がアルミナ粉末であり、溶媒が水であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
  4. 湿式ジェットミル処理が、高圧の高速スラリー流を相互に衝突させる方式、又は固定壁に衝突させる方式であることを特徴とする、請求項2に記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
  5. 湿式ジェットミル処理のスラリー流の圧力が10MPa以上であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
  6. 原料粉末の平均粒子径が0.05〜5μmであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
  7. スラリー中の次式で表される原料粉末の体積混入率(体積%)が10〜60体積%であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
  8. 非粉砕媒体型のミル処理によって得られるスラリーが、見かけ粘度が1〜40mPa・sであり、単位時間当たりの見かけ粘度の変化量が0.1〜10mPa・sであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
  9. 成形体の焼結温度が1350〜1600℃であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体の製造方法。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の方法によって製造されたものであるアルミナ質セラミックス焼結体。
  11. 焼結体における構成粒子の平均粒径が5μm以下であり、相対密度が95%以上であることを特徴とする請求項10に記載のアルミナ質セラミックス焼結体。
  12. 焼結体の構成粒子の平均粒径が、原料粉末の平均粒子径の2倍以下であることを特徴とする請求項10又は11に記載のアルミナ質セラミックス焼結体。
  13. JIS R1601により測定した強度が550MPa以上であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載のアルミナ質セラミックス焼結体。
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