JP2008212846A - 湿式電気集塵装置の流水機構 - Google Patents

Abstract

【課題】運転当初においても集塵板での水膜形成を安定かつ迅速に行うことができ、かつ洗浄水供給量の調節機能が優れた流水機構を提供する。
【解決手段】被処理ガス１４の流路に沿って複数の集塵板１０を配設した湿式電気集塵装置における流水機構であって、各集塵板１０の上縁に沿って配設され下部が開放された筒状体１６と、各筒状体１６内に配設された水噴射管２０とを有している。水噴射管２０に取り付けたスプレーノズル２４から筒状体１６の天井面に向けて洗浄水を噴射し、筒状体１６の内側面に沿って流れ落ちた洗浄水が集塵板１０表面に水膜を形成する。
【選択図】図１

Description

本発明は湿式電気集塵装置の流水機構に係り、特に被処理ガスの流路に沿って複数の集塵板を配設した湿式電気集塵装置における流水機構に関する。

火力発電所など重油や石炭を燃料とするボイラからの排ガスに対しては、乾式電気集塵装置で塵埃を除去した後に、湿式脱硫装置で硫黄酸化物を除去し、最終段の湿式電気集塵装置で排ガス中に残存するミストや塵埃を除去している。湿式電気集塵装置では通常、流水機構として集塵板の上方にスプレーノズルを配設し、スプレーノズルから噴射した洗浄水によって、集塵板に捕集したミストや塵埃を洗い流す。

しかしながら、このような湿式電気集塵装置の流水機構においては、スプレーノズルから噴射した洗浄水の水滴が被処理ガスの気流に巻き込まれ、集塵板の表面に安定した水膜を形成できない問題点がある。特に被処理ガスをケーシングの下部から導入し、上部に排出するようにした上向流式の湿式電気集塵装置においては、被処理ガスの上向流がスプレーノズルから噴射した洗浄水の水滴と真っ向にぶつかる。このため、噴射した洗浄水の水滴の相当量が被処理ガスに同伴してケーシングの上部から排出される現象が顕著になり、集塵板に対する有効な水膜形成をより一層、難しくしている。

特許文献１には、湿式電気集塵装置におけるこのような流水機構の問題点を解決するための方策が開示されている。図８は特許文献１に開示された流水機構の斜視図であり、図９は同じく洗浄水供給部の断面図である。集塵板１の上部には、集塵板１の上端１ａを包み込むようにして保水部２が設けられている。保水部２の下端はブレード３によって開口幅が調整可能な開口部４とされ、この開口部４が集塵板１の表面と狭い隙間を有して集塵板１の上部を挟んでいる。保水部２の上部に接続した給水管５から洗浄水を供給すると、保水部２内に洗浄水が溜まり、この洗浄水が開口部４の集塵板１表面との隙間から流れ落ちて、集塵板１の表面に水膜が形成される。

この特許文献１に記載の流水機構によれば、被処理ガスの気流に余り影響を受けずに集塵板１の表面に安定した水膜を形成することができる。特許文献２にも類似の流水機構が開示されている。
特開２００２−２２４５８８号公報 特開２００１−１９０９８２号公報

しかしながら、特許文献１に記載の流水機構は、運転当初において空状態の保水部２に洗浄水を供給すると、開口部４と集塵板１との部分的な隙間から洗浄水が多量に漏れて、いわゆるジャジャ漏れ状態になる。このため、給水管５からの洗浄水供給量を隙間から漏れる洗浄水よりも十分に多くしても、保水部２に洗浄水が満水状態になるまでに長時間を要し、その間における集塵板１表面の水膜形成が極めて不安定になるという問題点がある。また、この流水機構は洗浄水供給量の調節機能が非常に狭く、例えば保水部２が満水状態となった後でも、給水管５からの洗浄水供給量が何らかの理由で減少して下限値を下まわると保水部２での水面が低下し、終には一部の隙間からのみ洗浄水が流下して、集塵板１の全面に水膜を形成することが困難な事態となる。これらの問題点は、特許文献２に開示された流水機構でも程度の差はあれ同様である。

本発明の目的は、上記従来技術の問題点を改善し、運転当初においても集塵板での水膜形成を安定かつ迅速に行うことができ、かつ洗浄水供給量の調節機能が優れた湿式電気集塵装置の流水機構を提供することにある。

前記目的を達成するために、本発明に係る湿式電気集塵装置の流水機構は、被処理ガスの流路に沿って複数の集塵板を配設した湿式電気集塵装置における流水機構であって、前記各集塵板の上縁に沿って配設され下部が開放された筒状体と、各筒状体内に配置され洗浄水を前記筒状体の天井面に向けて噴射するスプレーノズル群とを具備していることを特徴とする。
また、本発明に係る湿式電気集塵装置の流水機構は、前記集塵板の水平断面が波状とされ、前記筒状体の下部開放口が前記集塵板に合せて波状に形成されたことを特徴とする。

本発明の湿式電気集塵装置の流水機構によれば、筒状体がスプレーノズルから噴射した洗浄水の水滴を被処理ガスの気流から守る防護壁の役割を果たす。このため、従来技術に係るスプレーノズル式のように噴射した洗浄水の水滴が被処理ガスの気流に巻き込まれることがなく、スプレーノズルの取り付け間隔を適正に設計することにより、集塵板の全表面に安定した水膜を形成することができる。特に上向流式の湿式電気集塵装置においては、被処理ガスの上向流がスプレーノズルから噴射した洗浄水の水滴と真っ向にぶつかることがないので有効である。

また、特許文献１や特許文献２に開示された流水機構に比べて、運転当初における集塵板での水膜形成を安定かつ迅速に行うことができる。さらに、運転状況に応じて洗浄水供給量を任意に調節することが容易になる。

図１は本発明に係る湿式電気集塵装置の流水機構の第１実施形態を示す斜視図、図２は第１実施形態の側面図である。図２に示したように湿式電気集塵装置のケーシング内には複数の集塵板１０と放電極１２とが上向流の被処理ガス１４の流路に沿って一定の間隔で交互に配設されている。放電極１２には高電圧が印加され、被処理ガス１４中のミストや塵埃は電気集塵の原理によって、集塵板１０に捕集される。

各集塵板１０の上縁に沿って筒状体１６が配設されている。各筒状体１６は下部が開放されており、この下部開放口１８が集塵板１０表面に対して狭い隙間を有して、集塵板１０の上端を両側から挟んでいる。筒状体１６の中心には水噴射管２０が配設され、水噴射管２０の一端には洗浄水の給水管２２が接続している。水噴射管２０には複数個のスプレーノズル２４がその噴射方向を筒状体１６の天井面に向けて一定間隔で取り付けられている。

上記構成の流水機構によれば、給水管２２に設けた流量調節弁２６を開くと、所望流量の洗浄水が速やかに水噴射管２０内に充満し、各スプレーノズル２４から洗浄水が筒状体１６の天井面に向けて噴射され、筒状体１６の天井面に衝突する。天井面に衝突した洗浄水は、その衝突エネルギによって天井面に拡がった後に、筒状体１６の内側面を経て下部開放口１８に向かって流れ落ちる。この洗浄水は下部開放口１８の位置で集塵板１０表面との間に形成された狭い隙間を通るため、整流された状態で集塵板１０の表面に水膜を形成しながら、集塵板１０に沿って流れ落ちる。

したがって、本実施形態の湿式電気集塵装置の流水機構によれば、従来技術に係るスプレーノズル式のように噴射した洗浄水の水滴が被処理ガスの気流に巻き込まれることがないので、各スプレーノズル２４の取り付け間隔を適正に設計することにより、集塵板１０の全表面に安定した水膜を形成することができる。特に被処理ガス１４をケーシングの下部から導入し、上部に排出するようにした上向流式の湿式電気集塵装置においても、被処理ガス１４の上向流がスプレーノズルから噴射した洗浄水の水滴と真っ向にぶつかることがないので有効である。

また、特許文献１や特許文献２に開示された流水機構に比べて、運転当初における集塵板１０での水膜形成を安定かつ迅速に行うことができる。さらに、給水管２２に設けた流量調節弁２６の開度を変えることによって、運転状況に応じ洗浄水供給量を任意に調節することができる。

図３は本発明に係る湿式電気集塵装置の流水機構の第２実施形態を示す側面図である。図３において図２と同一の符号を付した部材は第１実施形態と同様の機能を有しており、説明を省略する。本実施形態では筒状体１６Ａの下部開放口１８が集塵板１０の上端よりもやや高い位置にある。筒状体１６Ａの内側面を経て下部開放口１８に流下した洗浄水は流速エネルギに基づく慣性力によって集塵板１０に到達し、第１実施形態と同様に集塵板１０表面に水膜を形成する。

図４は本発明に係る湿式電気集塵装置の流水機構の第３実施形態を示す側面図であり、図５は図４のＡ−Ａ矢視図である。図４や図５において図２と同一の符号を付した部材は第１実施形態と同様の機能を有しており、説明を省略する。本実施形態の流水機構は図６の斜視図に示したように、集塵板１０Ａの水平断面が波状である場合に適用される。筒状体１６Ｂの下部開放口１８は図５に示したように、集塵板１０Ａの中心線ａに合せて波状に形成されている。したがって、スプレーノズル２４から筒状体１６Ｂの天井面に向けて噴射された洗浄水は、天井面に拡がった後に筒状体１６Ｂの内側面や下部の張り出し面３０を経て下部開放口１８から波状に形成された集塵板１０Ａに沿って流れ落ちる。なお、図５に示した印ｂは筒状体１６Ｂ内に配置されたスプレーノズル２４の中心位置を示している。

上記各実施形態で示したスプレーノズル２４は洗浄水をコーン状に噴霧する市販品が有効であるが、本発明に係るスプレーノズルはこれに限らない。図７に示したように、スプレーノズルとして水噴射管２０に設けた吹き出し孔を採用することも可能である。この場合には、筒状体の真上の天井面に向けて洗浄水を噴射する吹き出し孔２４Ａに加えて、斜め上の天井面に洗浄水を噴射する吹き出し孔２４Ｂを設けてもよい。

本発明の第１実施形態を示す斜視図である。 第１実施形態の側面図である。 本発明の第２実施形態を示す斜視図である。 本発明の第３実施形態を示す側面図である。 図４のＡ−Ａ矢視図である。 第３実施形態に係る集塵板の斜視図である。 スプレーノズルの変形例を示す断面図である。 特許文献１に開示された流水機構の斜視図である。 特許文献１に開示された流水機構の洗浄水供給部の断面図である。

符号の説明

１０……集塵板、１２……放電極、１４……被処理ガス、１６，１６Ａ，１６Ｂ……筒状体、１８……下部開放口、２０……水噴射管、２２……給水管、２４……スプレーノズル、２４Ａ，２４Ｂ……吹き出し孔、２６……流量調節弁、３０……張り出し面。

Claims (2)

1. 被処理ガスの流路に沿って複数の集塵板を配設した湿式電気集塵装置における流水機構であって、前記各集塵板の上縁に沿って配設され下部が開放された筒状体と、各筒状体内に配置され洗浄水を前記筒状体の天井面に向けて噴射するスプレーノズル群とを具備していることを特徴とする湿式電気集塵装置の流水機構。
2. 前記集塵板の水平断面が波状とされ、前記筒状体の下部開放口が前記集塵板に合せて波状に形成されたことを特徴とする請求項１に記載の湿式電気集塵装置の流水機構。

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