JP2008212149A - 特定の飼料を給与することを特徴とする家畜の飼育方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】牛等の反芻動物における、効率的な共役リノール酸の増加手段を確立すること。【解決手段】エゴマ種子、エゴマ油、ゴーヤ種子、ゴーヤ種子油、亜麻仁種子、及び、亜麻仁種子油からなる群から選ばれる1種以上を、牛等の反芻動物に給与して、当該反芻動物を飼育することを特徴とする飼育方法、及び、当該飼育方法に基づく飼料用組成物等、を提供することにより、牛等の反芻動物の筋肉部等における共役リノール酸を、効率的に増加させることが可能であることを見出した。
【選択図】 なし

Description

本願発明は、牛、羊、山羊等の、家畜として用いる反芻動物に対して、特定の飼料の給与を特徴とする、反芻動物の飼育方法に関する発明であり、さらに、当該飼育方法による成果物に関する発明でもある。
反芻動物に特徴的な脂肪酸である共役リノール酸(以下、CLAともいう)におけるガン予防効果が報告され、その後CLA(t10c12)における脂肪蓄積抑制効果が報告されている。
反芻動物のうち、日本国内において最も馴染みのある家畜は牛であるが、近年人気のいわゆるサシの入った牛精肉は、穀物系の餌を多く含んだ肥育飼料で飼育するためか、CLA含有量が減少する傾向が認められている。
反芻動物における共役リノール酸を増加させる技術としては、例えば、特許文献1、2に開示の技術が挙げられる。特許文献1においては、反芻動物に直接、共役リノール酸を給与する技術が開示されており、特許文献2においては、ハイ・オイル・コーン(HOL)の胚芽を添加した飼料を給与することにより、反芻動物における共役リノール酸を増加させる技術が開示されている。
特表平10−508189号公報 特開2002−65174号公報
しかしながら、特許文献1に開示の共役リノール酸の直接投与では、天然物由来の共役リノール酸ではコスト高となり、合成品では、コストの問題と共に安全性に関しての考慮が必要となる。
また、特許文献2に開示されているように、HOLの胚芽の脂肪酸組成として、リノール酸の比率が高いことが知られているが、HOLに含まれるリノール酸を反芻動物の第一胃の歯叢によって、共役リノール酸に変換する方法は効率に問題がある。
そこで、本発明の課題は、HOLとは別ルートの効率的な反芻動物における共役リノール酸の増加手段を確立することにある。
本発明者は、上記の課題の解決に向けて検討を重ねた結果、反芻動物においては、αリノレン酸を豊富に含む素材を飼料とすることにより、効率的に反芻動物における共役リノール酸量を増加させることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、第1に、エゴマ種子、エゴマ油、ゴーヤ種子、ゴーヤ種子油、亜麻仁種子、及び、亜麻仁種子油からなる群から選ばれる1種以上(高αリノレン酸植物素材ともいう)を反芻動物に給与して、当該反芻動物を飼育することを特徴とする、反芻動物の飼育方法(以下、本飼育方法ともいう)を提供する発明である。
第2に、本発明は、本飼育方法を行う際に用いる、高αリノレン酸植物素材と肥育用飼料素材を含有する飼料用組成物(以下、本飼料用組成物ともいう)を提供する発明である。
第3に、本発明は、本飼育方法により飼育された反芻動物、当該反芻動物からの食用肉の製造方法、動物乳の製造方法、さらには、本飼育方法による反芻動物における共役リノール酸の増加方法を提供する発明である。
本発明は、いずれも、αリノレン酸を豊富に含有する植物素材、すなわち、αリノレン酸の含有比が、他の脂肪酸よりも多い高αリノレン酸植物素材を、牛等の反芻動物に対して給与することにより、コストを抑えて、かつ、通常の栄養分と同様の当該動物の消化・吸収系を経て、αリノレン酸から変換された共役リノール酸が、当該動物の肉(筋間脂肪を含む骨格筋)に効率的に取り込まれることを見出すことによって完成された発明である。
本発明により、牛等の反芻動物における共役リノール酸の産生を促進することが可能な飼育方法と飼料用組成物が提供される。また、当該反芻動物、当該反芻動物からの食用肉や乳の製造方法、さらには、当該反芻動物における共役リノール酸の産生促進方法、が提供される。
[本飼育方法]
本飼育方法は、高αリノレン酸植物素材を飼料として給与することを主要な特徴とする、牛等の反芻動物の飼育方法である。
高αリノレン酸植物素材である、エゴマ種子、エゴマ種子油、ゴーヤ種子、ゴーヤ種子油、亜麻仁種子、又は、亜麻仁種子油は、いずれも含有脂肪酸におけるαリノレン酸含有率が、他の脂肪酸よりも高い素材である。高αリノレン酸植物素材の含有脂肪酸におけるαリノレン酸含有率は、12質量%以上が好適であり、特に好適には、20質量%以上である。
特に、エゴマ種子又はエゴマ種子油は、本飼料用組成物において含有させる高αリノレン酸成分として好適である。エゴマは一年生のシソ科植物で、東アジアでは、食べ物として栽培されている植物である。エゴマ種子の含有油分には、約60質量%ものαリノレン酸が含有されていることが知られている。本飼育方法において、添加をするエゴマ種子は、エゴマ種子そのものであってもよく、当該種子に対して熱処理等を加えたものであってもよい。また、非熱処理又は熱処理の当該種子の粉砕物であってもよい。また、エゴマ油とは、エゴマ種子に対して搾油工程を経て得られたエゴマ油であってもよい。下記表1にて、エゴマ種子の組成を、中国産と日本産についてそれぞれ記載し、表2にて、エゴマ種子の脂肪酸組成を、同じくそれぞれ記載した。
Figure 2008212149
Figure 2008212149
本飼育方法における高αリノレン酸植物素材の給与量は、当該植物素材におけるαリノレン酸の含有量等にも影響を受け、必要に応じて給与量を選択することが可能である。特に、高αリノレン酸植物素材は、αリノレン酸をはじめとする油脂を主体として含有するので、過剰に給与すると消化不良や下痢を引き起こす可能性を考慮する必要がある。また、高αリノレン酸植物素材の配合量が少なすぎると、十分な共役リノール酸の産生促進を行うことが困難となる。
例えば、上記のエゴマ種子等の高αリノレン酸植物素材の場合、給与単位の全飼料に対して1〜5質量%が好適であり、2〜3質量%の範囲が特に好適である。なお、本発明において、「給与単位」とは、1回に給与する飼料の全量(質量)を意味するものとする。例えば、朝に、牛等の反芻動物に対して、飼料の給与をする場合には、その朝食における飼料の全量を意味するものである。
基本的には、本飼育方法において給与する飼料には、肥育用飼料(濃厚飼料)素材が混入される。肥育用飼料素材としては、例えば、穀類(とうもろこし、イネ、小麦、大麦、燕麦等)、油かす、ぬか類、製造かす類(糖蜜、ピートパルプ、ビールかす等)、動物質飼料(脱脂粉乳等)を配合することが可能であるが、これらの濃厚飼料の主要成分となり得る飼料素材は過度に配合を行うと、本発明の効果である、反芻動物における共役リノール酸の産生を抑制してしまう傾向に留意すべきである。具体的には、本飼育方法における、これらの肥育用飼料素材の配合量は、好適には、給与単位の全飼料に対して4〜60質量%の割合が好適であり、特に好適には同4〜40質量%の割合で、上記の高αリノレン酸植物素材と共に給与を行うことができる。この好適な限度内の肥育用飼料素材の配合では、牛等の反芻動物において本飼料用組成物の給与による共役リノール酸の産生を実質的に阻害しない。なお、さらに詳細には、反芻動物の第一胃の中の共役リノール酸を生成する菌叢の活動が、上記の濃厚飼料素材の配合内容に応じて、活発化又は停滞化する傾向がある。特に、糟糠類と穀類の比率が関係していると考えられる。なお、糟糠類とは、ふすま、コーングルテンフィード、米糠、麦糠、大豆皮等である。給与飼料中に糟糠類を配合しないことも可能であるが、配合することが好適かつ現実的である。当該配合範囲は、肥育前期では、穀類1質量に対して、糟糠類0.6〜0.9質量程度が好適であり、肥育後期では、穀類1質量に対して、糟糠類0.1〜0.3質量程度が好適である。
本飼育方法においては、上述した高αリノレン酸植物素材と肥育用飼料素材と共に、牧草飼料を組み合わせて給与を行うことが好適である。牧草飼料は、通常、牧草飼料として用いられているものであれば、特に限定されずに、本発明においても用いることができる。例えば、オーチャードグラス、チモシー、イタリアンライグラス等のイネ科牧草、及び、アルファルファ、クローバー等のマメ科牧草を例示することができる。牧草飼料の給与量は適宜選択することが可能であり、特に限定されるものではないが、給与単位の全飼料に対して40〜70質量%が好適であり、 同60〜70質量%が特に好適である。なお、本飼育方法においても、わら等を、本発明の効果を損なわない限りにおいて給与することが可能である。
本飼育方法の対象となる反芻動物としては、牛(肉用牛、搾乳用牛)、山羊、羊、等が挙げられるが、牛、特に、肉用牛であることが好適である。肉用牛に対して本飼育方法を行うことにより、共役リノール酸に富み、今後のヘルシー志向に沿った牛肉を得ることが可能となる。例えば、日本短角種に対して本飼育方法を行うことにより、共役リノール酸に富んだ、より健康的な赤身肉を得ることが可能である。
本飼育方法における飼料の給与においては、高αリノレン酸植物素材と肥育用飼料素材を混合した組成物を予め調製又は購入しておいて、これを、給与時に他の飼料と同時に反芻動物に与えることが、効率的である。すなわち、本飼料用組成物は、高αリノレン酸植物素材と肥育用飼料素材を含有するものである。通常、給与されるべき高αリノレン酸植物素材の全てが本飼料用組成物に含有されていることにより、使用者が、高αリノレン酸植物素材を別個に入手する手間を省くことが可能である。肥育用飼料素材は、給与する肥育用飼料素材の一部又は全部を、本飼育用組成物に配合することが可能である。通常は、給与する肥育用飼料素材の75〜98質量%を本飼育用組成物に配合することが想定されるが、これに限定されるものではない。
本飼育方法における飼料の反芻動物への給与方法は、高αリノレン酸植物素材を必ず用いる以外は、通常の飼料の給与方法に準じて行うことができる。具体的には、実施例において、その例を開示する。
また、本飼育方法を反芻動物に対して施し、当該反芻動物を屠殺して、当該反芻動物の筋肉又は内臓を分離して食用肉とすることができる。このようにして製造された食用肉は、共役リノール酸に富んでおり、人間のヘルシー志向にマッチしている。また、当該反芻動物の雌に対して搾乳を行うことにより、共役リノール酸に富んだ動物乳を得ることができる。当該動物乳は、牛乳等として飲用乳とすることが可能であり、バターやチーズ等の乳加工製品とすることも可能である。
以上述べたように、本飼育方法にて、反芻動物を飼育することにより、当該反芻動物における共役リノール酸を増加させることが可能となる。
以下に、本発明の実施例を開示し、本発明を具体的に説明する。本実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例]
αリノレン酸を牛に給与すると、第一胃内微生物によって、αリノレン酸が共役リノール酸に変換されて血中に移行し、体内の脂肪組織にとり込まれる。日本短角種を用いて、αリノレン酸を多く含むエゴマ種子を給与することによって、牛肉(筋間脂肪を含む骨格筋)に共役リノール酸を蓄積させることができれば、低脂肪で機能性脂肪酸に富む、健康によい「機能性ビーフ」を作出することが可能である。本実施例では、エゴマ種子を配合した飼料の給与により、日本短角種の牛肉(筋間脂肪を含む骨格筋)に共役リノール酸を蓄積させることを目的とする。
試験方法
被肥育牛(日本短角種 6頭、8ヶ月齢、去勢雄)の肥育試験を下記スケジュールにて行った(図1))。なお、肥育とは、牛8ヶ月齢〜22ヶ月齢の期間であり、下記のエゴマ種子の給与期間以外は、前期と後期を通じて下記の配合飼料を用いた、通常行われている牛肥育の給与スケジュールに従った飼料の給与を行った。
試験1):5日間のエゴマ種子給与(エゴマ種子300g/日)による血中共役リノール酸含有量の変化(肥育前期)の検討
試験2):15日間のエゴマ種子給与(エゴマ種子150g/日)による血中共役リノール酸含有量の変化(肥育前期)の検討
試験3):15日間のエゴマ種子給与(エゴマ種子150g/日)による血中共役リノール酸含有量の変化(肥育後期)の検討
試験4):30日間の肥育仕上げ期のエゴマ種子給与(エゴマ種子150g/日)による、血中共役リノール酸含有量の変化(肥育後期)、並びに、牛肉(筋間脂肪を含む骨格筋)及び皮下脂肪における、共役リノール酸の蓄積量の変化の検討
[試験1]肥育前期
(1)試験期間(5日間2005年5月16日〜5月23日)
(2)飼料
下記の飼料を1日量として常法により牛に給与した。
実験区(3頭)→[エゴマ種子(生)300g+肥育前期用濃厚飼料(明治飼糧:白鳥ビーフ前期)1kg)]、肥育前期用濃厚飼料(明治飼糧:白鳥ビーフ前期)4kg、牧草(チモシー)7kg:[ ]内に示す飼料は、その中に表示された内容の飼料を混合して調製した混合飼料、すなわち、本飼料用組成物であり、[ ]外に示す飼料は、[ ]内に示した混合飼料とは分離して与えた飼料である(この実施例の欄の表示において同様である)。
対照区(3頭)→肥育前期用濃厚飼料(明治飼糧:白鳥ビーフ前期)5kg、牧草(チモシー)7kg
肥育前期用濃厚飼料(明治飼糧:白鳥ビーフ前期)の配合組成](飼料全体に対する質量%にて示す)
配合物 配合量(質量%)
穀類(とうもろこし、ライ麦、大麦、マイロ、乾熱処理圧ぺん大豆) 41
糟糠類(ふすま、コーングルテンフィード、米糠、大豆皮) 31
植物性油粕類(大豆油粕、菜種油粕、コーングルテンミール) 12
その他 16
(アルファルファ、ビートバルブ、糖蜜、炭酸カルシウム、食塩、リン酸カルシウム、ビタミン類(A,D3,E))
上記配合物からなる濃厚飼料の内容成分は以下のごとくである。
配合成分 配合量(質量%)
粗蛋白質 15以上
粗脂肪 2以上
粗繊維 14以上
粗灰分 12以下
カルシウム 0.4以上
りん 0.4以上
可消化養分総量(TDN) 68以上
ビタミン類(A,D3,E)) 微適量
(3)採血
採血は、ヘパリン採血(真空採血管1本)/頭(遠心分離後、血漿を採取)を行って、血漿中の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィー法にて測定した(以下、同様である)。
結果を、図2(図2−1、−2)に示す。この結果に示すように、5日間のエゴマ種子の給与により、エゴマ種子に多量に含まれるαリノレン酸(C18:3(n・3))の血中含有量が増加し、共役リノール酸の血中含有量も、試験終了時点で増加傾向にあった。その他の脂肪酸(リノール酸等)については血中含有量に変動は認められなかった。また、血漿中のトリグリセリドの経時的変化を図3に示す。なお、この図2〜後述する図6−1、及び、図6−2の上から4つのグラフの縦軸は、血中の脂肪酸組成(質量%)又はトリグリセリドの量(mg/100 ml)を示し、横軸は実験日数を示している。
[試験2]肥育前期
(1)試験期間(15日間:2005年7月5日〜7月22日)
(2)飼料
下記の飼料を1日量として常法により牛に給与した。
実験区(3頭)→[エゴマ種子150g、肥育前期用濃厚飼料(明治飼糧:白鳥ビーフ前期)0.5kg]、肥育前期用濃厚飼料(明治飼糧:白鳥ビーフ前期)4.5kg、牧草(チモシー)7kg
対照区(3頭)→肥育前期用濃厚飼料(明治飼糧:白鳥ビーフ前期)5kg、牧草(チモシー)7kg
結果を図4(図4−1、−2)に示す。15日間のエゴマ種子の給与により、給与6日目以降の共役リノール酸とαリノレン酸の血中含有量が有意に増加し、リノール酸の血中含有量が有意に低下した。試験開始15日目におけるエゴマ給与実験区での共役リノール酸含有量は、対照区の3.6倍であった。アラキドン酸(C20:4(N-6))とエイコサペンタエン酸(C20:5(N-3):EPA)の血中含有量は、給与10日目に有意な上昇が認められた。その他の脂肪酸については、血中含有量に変化は認められなかった。図4−1の共役リノール酸の中で、15日以降エゴマの給与を停止すると、その2日後には共役リノール酸が低下し、元に戻った。また、αリノレン酸の含有量も減少した。
[試験3] 肥育後期
(1)試験期間(15日間:2005年11月22日〜12月9日)
(2)飼料
下記の飼料を1日量として常法により牛に給与した。
実験区(3頭)→[エゴマ種子150g、濃厚飼料後期用(明治飼糧:白鳥ビーフ後期72)0.5kg]、濃厚飼料後期用濃厚飼料後期用(明治飼糧:白鳥ビーフ後期72)6.5kg、牧草(チモシー、稲ワラ)5kg
対照区(3頭)→濃厚飼料後期用(明治飼糧:白鳥ビーフ後期72)7kg、牧草(チモシー)5kg、稲ワラ
肥育前期用濃厚飼料(明治飼糧:白鳥ビーフ前期)の配合組成](飼料全体に対する質量%にて示す)
配合物 配合量(質量%)
穀類(とうもろこし、ライ麦、大麦、マイロ) 74
糟糠類(ふすま、コーングルテンフィード、米糠、麦糠、大豆皮) 15
植物性油粕類(大豆油粕) 8
その他 3
(糖蜜、炭酸カルシウム、アルファルファミール、食塩、リン酸カルシウム)
上記配合物からなる濃厚飼料の内容成分は以下のごとくである。
配合成分 配合量(質量%)
粗蛋白質 12以上
粗脂肪 2以上
粗繊維 8以下
粗灰分 8以下
カルシウム 0.4以上
りん 0.3以上
可消化養分総量(TDN) 72以上
結果を図5(図5−1、−2)に示す。濃厚飼料を、肥育後期用に変更して実施した今回のエゴマ種子の給与試験においても、共役リノール酸の血中濃度が、給与6日目から10日目にかけて有意に増加した。エゴマ種子に多く含まれるαリノレン酸(C18:3 n-3)の濃度も有意に高く推移した。血中トリグリセリド量は有意に低く推移した。
前回の試験で、血中濃度が有意に減少したリノール酸(c18:2 n-6)には変化が認められず、パルミトレイン酸(C16:1)とオレイン酸(C18:1)がエゴマ種子を給与した実験区で低い傾向、アラキジン酸(C20:0)で高い傾向にあった。試験期間を通じて、パルミトレイン酸(C 16:1)、リノール酸(C18:2 n-6)、γリノレン酸(C18:3 n-6)の割合が前回よりも低い傾向にあった。
今回の試験において、脂肪酸組成の変化の中にこれまでと異なる動きが認められたのは、濃厚飼料を肥育前期用から肥育後期用に変更した影響と考えられる。
[試験4]肥育後期
(1)試験期間(30日間:2006年1月13日〜2月13日)
(2)飼料
実験区(3頭)→[エゴマ種子150g、濃厚飼料後期用(明治飼糧:白鳥ビーフ後期72)0.5kg]、濃厚飼料後期用(明治飼糧:白鳥ビーフ後期72)6.5kg、稲ワラ2kg
対照区(3頭)→濃厚飼料後期用(明治飼糧:白鳥ビーフ後期72)7kg、稲ワラ2kgを1日量として常法により給与した。
結果を図6(図6−1、−2)に示す。本試験においては、エゴマ種子の給与により、共役リノール酸とαリノレン酸の血中含有量が有意に増加した。一方、オレイン酸(C18:1)含有量は有意に減少した。その他の脂肪酸に大きな変化は認められなかった。
試験4の期間満了時の被験牛のリブロース肉を得て、冷蔵3日目の当該リブロース部分肉から、牛肉(筋間脂肪を含む骨格筋)及び皮下脂肪を採取し、脂肪酸組成を分析したところ、エゴマ種子給与によって、牛肉中のαリノレン酸等の脂肪酸組成に有意な変化が認められ、また共役リノール酸も増加した(有意水準1%で検定した場合p<0.1)。この結果は、図6−2の下から4つの棒グラフに示されている。当該4グラフにおいて、縦軸は個別の脂肪酸組成(質量%)を、横軸は脂肪酸の種類を示している。当該4グラフのうち、上側の2つのグラフは、牛肉における脂肪酸組成を示しており、下側の2つのグラフは、皮下脂肪における脂肪酸組成を示している。
17ヶ月齢以降(試験2の直後)から給与した肥育後期用飼料(濃厚飼料後期用(明治飼糧:白鳥ビーフ後期72))は、肥育仕上げ期であり、試験1〜2にて用いた前期用飼料と原料の配合が異なる。また、本試験では、牧草を稲ワラに切り替えた。試験4において、エゴマ種子の給与によって血中における共役リノール酸含有量の有意な増加がもたらされ、牛肉への共役リノール酸の蓄積向上への効果が確認された。
以上の試験において、日本短角種牛へのエゴマ種子の給与は、血中脂肪酸組成を変化させ、共役リノール酸やαリノレン酸等の機能性脂肪酸の割合を有意に上昇させた。その効果は、肥育後期よりも肥育前期の時に大きく、これは給与した濃厚飼料の成分と量の違いに起因する。
本試験において、日本短角種牛へのエゴマ種子給与は、血中の共役リノール酸の含有量を高め、この生成された共役リノール酸は牛肉中に蓄積されることが明らかとなった。しかし、共役リノール酸の牛肉蓄積量は、その血中量と必ずしも一致しない。このことは、肥育前期から後期への飼養条件による変化、具体的には、肥育飼料における糟糠類と穀類の比率の変化が考えられる。下記表3にて、前記濃厚飼料と後期濃厚飼料における、各配合素材の配合比率を開示する。なお、配合量は、濃厚用飼料全体に対する質量%である。
Figure 2008212149
肥育試験のスケジュールを記載した図面である。 試験1の結果を示す図面である。 試験1の結果を示す図面である。 血漿中のトリグリセリド濃度の変化を示した図面である。 試験2の結果を示す図面である。 試験2の結果を示す図面である。 試験3の結果を示す図面である。 試験3の結果を示す図面である。 試験4の結果を示す図面である。 試験4の結果を示す図面である。

Claims (16)

  1. エゴマ種子、エゴマ油、ゴーヤ種子、ゴーヤ種子油、亜麻仁種子、及び、亜麻仁種子油からなる群から選ばれる1種以上を反芻動物に給与して、当該反芻動物を飼育することを特徴とする、反芻動物の飼育方法。
  2. 前記反芻動物の飼育方法において、エゴマ種子、エゴマ油、ゴーヤ種子、ゴーヤ種子油、亜麻仁種子、及び、亜麻仁種子油からなる群から選ばれる1種以上を、給与単位の全飼料に対して1〜5質量%の割合にて、反芻動物に給与することを特徴とする、請求項1記載の反芻動物の飼育方法。
  3. 請求項1記載の反芻動物の飼育方法において、エゴマ種子、エゴマ油、ゴーヤ種子、ゴーヤ種子油、亜麻仁種子、及び、亜麻仁種子油からなる群から選ばれる1種以上の給与量が、給与単位の全飼料に対して2〜3質量%の割合である、請求項1記載の反芻動物の飼育方法。
  4. 前記反芻動物の飼育方法において、肥育用飼料素材を、給与単位の全飼料に対して4〜60質量%の割合にて、反芻動物に給与することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の反芻動物の飼育方法。
  5. 前記反芻動物の飼育方法において、肥育用飼料素材を、給与単位の全飼料に対して4〜40質量%の割合にて、反芻動物に給与することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の反芻動物の飼育方法。
  6. 前記反芻動物の飼育方法において、牧草飼料を、給与単位の全飼料に対して40〜70質量%の割合にて、反芻動物に給与することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の反芻動物の飼育方法。
  7. 前記反芻動物の飼育方法において、牧草飼料を、給与単位の全飼料に対して60〜70質量%の割合にて、反芻動物に給与することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の反芻動物の飼育方法。
  8. 前記反芻動物の飼育方法において、エゴマ種子、エゴマ油、ゴーヤ種子、ゴーヤ種子油、亜麻仁種子、及び、亜麻仁種子油からなる群から選ばれる1種以上、並びに、肥育用飼料素材の一部又は全部を含有する、飼料用組成物として給与されることを特徴とする、請求項1〜7記載の反芻動物の飼育方法。
  9. 前記飼育方法において、反芻動物が牛であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の反芻動物の飼育方法。
  10. 牛が肉用牛であることを特徴とする、請求項9記載の反芻動物の飼育方法。
  11. 肉用牛が日本短角種であることを特徴とする、請求項10記載の反芻動物の飼育方法。
  12. 請求項8記載の反芻動物の飼育方法において用いる、エゴマ種子、エゴマ油、ゴーヤ種子、ゴーヤ種子油、亜麻仁種子、及び、亜麻仁種子油からなる群から選ばれる1種以上、並びに、肥育用飼料素材の一部又は全部を含有することを特徴とする、飼料用組成物。
  13. 請求項1〜11のいずれかに記載の反芻動物の飼育方法により飼育されたことを特徴とする反芻動物。
  14. 請求項13に記載の反芻動物を屠殺し、当該反芻動物の筋肉又は内臓を分離して食用肉とすることを特徴とする、食用肉の製造方法。
  15. 請求項13に記載の反芻動物(雌)に対して搾乳を行なって当該動物乳を得ることを特徴とする、動物乳の製造方法。
  16. 請求項1〜11のいずれかに記載の反芻動物の飼育方法にて、反芻動物を飼育することにより、当該反芻動物における共役リノール酸を増加させることを特徴とする、反芻動物における共役リノール酸の増加方法。
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