JP2008208936A - 電磁クラッチ - Google Patents

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真史 玉井
Kazuhiko Fujita
和彦 藤田
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Abstract

【課題】潤滑剤が、摩擦面に流入し難く、且つ、低コストおよび高い生産性を確保できる電磁クラッチを提供する。
【解決手段】回転シャフト11と、回転シャフト11に固定されたアーマチュア13と、アーマチュア13に対して所定の隙間を有した状態で対向して配置され、回転シャフト11に対して回転可能なロータ22と、ロータ22の外周に配置されたウォームホイール23と、ロータ22の外周に設けられ、アーマチュア13の方向に延在し、さらにアーマチュア13のロータ22への対向面の裏面の方向に屈曲し、アーマチュア13の側面および裏面を覆うカバー部材24とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、電磁クラッチにおける潤滑剤の摩擦面への流入を防止する構造に関する。
磁力によってクラッチの接続/非接続を行う電磁クラッチが知られている。図5に従来技術における電磁クラッチの断面構造の一例を示す。図5に示す電磁クラッチ100は、電磁コイル133に電流を流していない状態において、図示省略したモータによって、ウォームギア125が駆動されると、それがウォームホイール123に伝わり、ロータ122が回転シャフト111およびハウジング132に対して回転する。この際、ロータ122とアーマチュア113との間に隙間があるため、ロータ122は、アーマチュア113に対して空転し、回転シャフト111にロータ122の回転力は伝わらない。この状態が、電磁クラッチ100がOFFの状態である。
上記の状態において、電磁コイル133に電流を流すと、電磁コイル133が作り出す磁場の磁束がロータ122とアーマチュア113を貫き、磁路が形成され、ロータ122にアーマチュア113が磁気的に吸引される。そして、ロータ122とアーマチュア113とが接触し、ロータ122の回転力がアーマチュア113に摩擦力によって伝わり、アーマチュア113がロータ122と共に回転する。この結果、回転シャフト111が回転し、プーリー141からベルト142を介して、回転力が駆動対象に伝達される。この状態が、電磁クラッチ100がONの状態である。
この構成において、ウォームホイール123とウォームギア125の両者が接触する部分(つまり噛み合い部分)は、潤滑のための潤滑剤(油やグリース)が注入されている。この潤滑剤がロータ122とアーマチュア113との間(つまり摩擦面)に流入すると、ロータ122/アーマチュア113間の摩擦力が低下し、回転力の伝達に支障が出るので好ましくない。このため、図示する構造では、外装ケース150の形状を工夫し、外装ケース150の内側とウォームホイール123との間の隙間124a、さらに外装ケース150の内側とロータ122との間の隙間124bを狭くし、潤滑剤が噛み合い部分からロータ122/アーマチュア113間に流入しないようにしている。
潤滑剤がロータ/アーマチュア間に流入しないようにする工夫については、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。文献1には、アーマチュアと一体となったウォームホイールから延在したカバー部材により、アーマチュアの外周方向を覆い、それによりアーマチュアとロータとの間の摩擦面に潤滑剤が侵入しないようにした構成が記載されている。また文献2には、アーマチュア/ロータ間の摩擦面への軸受からの潤滑剤の侵入、すなわち回転シャフト側からアーマチュア/ロータ間の摩擦面への潤滑剤の侵入を防止する目的で、油溜り溝として機能する環状溝を設ける構成が記載されている。
特開2005−321053号(要約書) 特開平10―257783号(要約書)
しかしながら、図5に示す構造では、潤滑剤が注入されている噛み合い部分から摩擦面までの潤滑剤流入経路が短いので、使用環境や長期の使用における信頼性に問題があった。信頼性を高くするには、隙間124aおよび隙間124bの間隔を狭くする(例えば数百μm程度以下)ことが有効であるが、外装ケース150、ウォームホイール123、およびロータ122の寸法精度が厳しくなり、また高い組み立て精度が要求される。このため、部品コストおよび組み立てコストが増大し、また組み立て性が低下(生産効率が低下)する。
また、特許文献1に記載の構成では、徐々に進む潤滑油の移動そのものを止めることはできないので、摩擦面に潤滑剤が侵入しないようにすることは困難となる。つまり、特許文献1に記載の構成では、摩擦面への潤滑剤の侵入を遅らせる効果はあるが、潤滑剤の侵入を防ぐ構造としては十分ではない。また、特許文献2に記載の構成では、外周方向から摩擦面に潤滑剤が侵入する問題には無力である。
このような背景において、本発明は、ウォームホイールとウォームギアとの噛み合い部分に注入された潤滑剤が、摩擦面に流入し難く、且つ、低コストおよび高い生産性を確保できる電磁クラッチを提供することを課題とする。
請求項1に記載の発明は、回転シャフトと、前記回転シャフトに固定されたアーマチュアと、前記アーマチュアに対して所定の隙間を有した状態で対向して配置され、前記回転シャフトに対して回転可能なロータと、前記ロータの外周に配置されたギアと、前記ロータの外周に設けられ、前記アーマチュアの方向に延在し、さらに前記アーマチュアの前記ロータへの対向面の裏面の方向に屈曲し、前記アーマチュアの側面および前記裏面を覆うカバー部材とを備えることを特徴とする電磁クラッチである。
請求項1に記載の発明によれば、アーマチュアの側面(半径方向の外側)、および摩擦面の裏面がロータから延在するカバー部材によって覆われる。このため、ロータの外周に設けられたギアの噛み合い部分に注入された潤滑剤がアーマチュアとロータとの間(つまり摩擦面)に流入することを抑えることができる。すなわち、このカバー部材は、アーマチュアの側面を覆うと共に、さらに摩擦面の裏面に屈曲して延在し、このアーマチュアの裏面を覆うので、潤滑剤の摩擦面への流入経路を屈曲した長い経路とすることができ、そのため潤滑剤の当該摩擦面への流入を抑えることができる。
特にアーマチュアの裏面を覆うカバー部材のアーマチュアに対向しない側の面では、潤滑剤の流入経路が回転軸方向となり、またカバー部材は、ロータと一体で回転するので、その部分に流入する潤滑剤には、外周方向に排除される遠心力が作用する。ロータは、電磁クラッチを構成する部材の中で回転する頻度が最も高いので、この潤滑剤を遠心力によって排除する作用も高い頻度で働く。そのため、潤滑剤がカバー部材の端部を回り込んでアーマチュアの裏面に流入し難い構造とすることができる。
また、外装ケースとロータとの間の隙間寸法の管理が、従来の技術程必要とされないので、部品コストや組み立て精度の点で有利となる。このため、上記優位性に加えて低コストおよび高い組み立て性(高い生産効率)を得ることができる。
なお、屈曲というのは、明確に角が存在する曲がり方であってもそうでない曲がり方(すなわち丸みを帯びた曲がり方)であってもよい。また、潤滑剤としては、グリースやマシン油等の潤滑油の他にシリコーン系の潤滑剤等を利用することもできる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、カバー部材は、アーマチュアおよびロータを構成する材料よりも低い透磁率を有する材料で構成されていることを特徴とする。請求項1に記載されているように、本発明では、カバー部材がアーマチュアの裏面(摩擦面の裏面)を覆っている。したがって、カバー部材がアーマチュアやロータと同様な透磁率を有した材料であると、電磁クラッチON時にカバー部材とアーマチュアの裏面との間に磁路が形成され、それによりカバー部材とアーマチュアとの間にも吸引力が発生する。この吸引力は、アーマチュアとロータとの間の摩擦力を弱める要因となるので、効果的な摩擦力を得る観点から見て好ましくない。
そこで、請求項2に記載の発明では、カバー部材の透磁率をアーマチュアやロータを構成する材料の透磁率よりも小さな値とすることで、電磁クラッチON時にカバー部材とアーマチュアの裏面との間に発生する磁路の磁気抵抗を高め、カバー部材とアーマチュアの裏面との間に働く吸引力を弱くする(あるいは消滅させる)。こうすることで、アーマチュアとロータとの間の摩擦力を弱める要因を取り除き、効果的な摩擦力を得ることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、カバー部材は、非磁性材料により構成されていることを特徴とする。請求項3に記載の発明によれば、カバー部材とアーマチュアの裏面との間に磁路が形成されないようにすることができ、カバー部材とアーマチュアの裏面との間にも働く吸引力を実質的に消滅させることができる。これにより、請求項2に記載の発明と同様の効果を得ることができる。なお、ここで磁性材料というのは、強磁性体および常磁性体のことをいう。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、カバー部材とアーマチュアの裏面との距離は、アーマチュアとロータとの間の所定の隙間の寸法よりも大きいことを特徴とする。請求項4に記載の発明によれば、隙間の寸法を大きくすることで、アーマチュアの裏面(摩擦面の裏面)とカバー部材との間の磁気抵抗を高くすることができるので、アーマチュアとロータとの間の摩擦力を弱める要因を弱めることができる。また、請求項4に記載の発明と請求項2または3に記載の発明とを組み合わせることで、請求項2または3に記載した発明の効果を更に高めることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、ギアは、ウォームホイールであり、カバー部材は、このウォームホイールと一体に成型されていることを特徴とする。請求項5に記載の発明によれば、寸法精度の高度化に要するコストや手間を削減することができる。また、電磁クラッチの組み立て時の手間を増やすことがない。このため、電磁クラッチの低コスト化をさらに追究することができる。
本発明によれば、ギアの噛み合い部分の潤滑剤が、摩擦面に流入し難く、且つ、低コストおよび高い生産性を確保できる電磁クラッチを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
1.第1の実施形態
(第1の実施形態の構成)
図1は、第1の実施形態に係る電磁クラッチの概要を示す断面図である。図2は、第1の実施形態に係る電磁クラッチの分解断面図である。なお、図2では、後述する外装ケース50を省略して図示している。
図1および図2には、電磁クラッチ1が示されている。電磁クラッチ1は、第1動力伝達装置10、第2動力伝達装置20、磁束発生装置30、出力装置40および外装ケース50を備えており、第1動力伝達装置10、第2動力伝達装置20、磁束発生装置30および出力装置40は、外装ケース50に覆われ保護されている。第1動力伝達装置10、第2動力伝達装置20、磁束発生装置30および出力装置40は、同心軸上に配置されており、第1動力伝達装置10および第2動力伝達装置20は、軸Oを中心に回転する。
電磁クラッチ1は、磁束発生装置30の作用により第1動力伝達装置10を第2動力伝達装置20に吸引させ、第2動力伝達装置20を介して第1動力伝達装置10に伝達した回転力を出力装置40に伝達し、さらに駆動対象に伝達する。
第1動力伝達装置10は、出力装置40と第2動力伝達装置20との間に配置され、回転シャフト11、固定部材12およびアーマチュア13を備えている。第1動力伝達装置10は、第2動力伝達装置20に伝達された回転力を出力装置40に伝達する装置である。
回転シャフト11は、棒状の円柱部材であり、第1動力伝達装置10と第2動力伝達装置20が回転する中心軸として機能する。回転シャフト11には、固定部材12を介してアーマチュア13が固定されている。すなわち、回転シャフト11とアーマチュア13とは、同時に回転する。
アーマチュア13は、中央に開口部を形成した複数の円環形状の板状部材を組み合わせた形状で、鉄などの磁性材料で形成されている。アーマチュア13は、磁束発生装置30の作用により第2動力伝達装置20に吸引されて回転力を伝達する。このとき、アーマチュア13と第2動力伝達装置20との接触する面が摩擦面となる。すなわち、第2動力伝達装置20に対向するアーマチュア13の対向面が摩擦面となる。
アーマチュア13は、図示省略した円板形状の板バネによって固定部材12に固定されている。アーマチュア13が、第2動力伝達装置20に吸引されると、この図示省略した板バネが変形し、アーマチュア13が回転シャフト11の軸方向に移動し、第2動力伝達装置20と接触する。そして、吸引力が弱まると、アーマチュア13は、図示省略した板ばねの弾力により第2動力伝達装置20から離れる。
第2動力伝達装置20は、第1動力伝達装置10と磁束発生装置30の間に配置され、ベアリング21、ロータ22、ウォームホイール23およびウォームギア24を備えている。第2動力伝達装置20は、図示省略したモータなどの駆動機構により発生した回転力を第1動力伝達装置10に伝達する。
ボールベアリング21は、回転シャフト11の外側に設けられている。ベアリング21は、回転シャフト11およびロータ22の回転を滑らかにして、摩擦によるエネルギー損失、発熱を低減する。したがって、回転シャフト11には、ベアリング21を介してロータ22が回転自在な状態で軸支されている。
ロータ22は、ベアリング21の外側で、アーマチュア13に対して所定の隙間を有した状態で対向する位置に設けられている。ロータ22は、円環形状の板状部材と円筒部材とを組み合わせた形状で、半径方向の断面において略逆U字形状を有している。ロータ22は、アーマチュア13と同じ磁性材料で形成されている。ロータ22は、ウォームホイール23の回転により回転シャフト11を中心に回転する。また、ロータ22はアーマチュア13とともに磁路を形成し、ロータ22の上面は、アーマチュア13の下面を吸引する。
ウォームホイール23は、ロータ22の外周に設けられ、カバー部材24を備えた円筒状のギアである。ウォームホイール23は、ウォームホイール23の歯がウォームギア25と噛み合っている。このウォームホイール23とウォームギア25とが噛み合っている部分には、潤滑のための潤滑油(グリース)が注入されている。ウォームホイール23には、図示省略したモータの回転軸が接続されており、このモータが回転することで、ウォームホイール23が回転し、それによりロータ22が回転する。
カバー部材24は、ロータ22の外周側で、ウォームホイール23の上方に延在するように、ウォームホイール23と一体に形成されている。カバー部材は、略円筒形状でウォームホイール23からアーマチュア13の方向に向かって略垂直に延在し、ロータ22の側面およびアーマチュア13の側面を覆っている。
また、カバー部材24は、その略円筒形状の上端部分からアーマチュア13の摩擦面の裏面の方向に屈曲し、回転シャフト11方向に向かって延在している。この延在した部分は、略円環形状の部材とされ、この部材がアーマチュア13の裏面を覆っている。このような構造とすることで、潤滑油の摩擦面への流入経路を屈曲した長い経路としている。
また、カバー部材24は、ウォームホイール23と一体に形成されているため、ロータ22とともに回転する。そのため、潤滑油がカバー部材24の略円環形状の上面側に流入したとしても、カバー部材24の外周方向に遠心力が作用し、潤滑油がカバー部材24の中心側の端部を回りこんで摩擦面に流入するのが防止される。ウォームホイール23が回転する頻度は、アーマチュア13に比較して高いので、この作用は効果的に働く。
さらに、カバー部材24は、鋳鉄、真鍮、および樹脂等のアーマチュア13やロータ22を構成する磁性材料よりも磁性の弱い材料、あるいは磁性材料ではない材料で形成されている。すなわち、カバー部材24は、アーマチュア13やロータ22を構成する材料よりも低い透磁率の材料で構成されている。こうすることで、カバー部材24とアーマチュア13とを貫く磁路が形成されないように、あるいは磁路が形成されてもその磁束密度が、アーマチュア13/ロータ22間を貫く磁路の磁束密度より小さなものとなるようにしている。この構成によれば、アーマチュア13とカバー部材24との間に吸引力は発生せず(あるいは発生したとしてもその力は弱く)、アーマチュア13とロータ22との間に働く吸引力を弱めることがないようにすることができる。
さらに、カバー部材24は、カバー部材24の略円環形状の内面(図の下面)、すなわちアーマチュア13の裏面を覆う部分の内面とアーマチュア13の裏面との距離が、アーマチュア13の摩擦面とロータ22の摩擦面との距離よりも長くなる位置に配置されている。すなわち、カバー部材24の略円環形状の部分は、ロータ22よりもアーマチュア13から遠くに配置されている。これにより、アーマチュア13の裏面とカバー部材24との間の磁気抵抗を高くし、仮に磁路が形成されても、その影響がアーマチュア13/ロータ22間の吸引力に及ばないようにしている。
この例では、アーマチュア13の裏面側を覆うカバー部材24の略円環形状部分が、アーマチュア13裏面に平行になる形状とされているが、回転中心に向かって傾斜あるいは湾曲するデザインとすることもできる。また、カバー部材24の略円環形状部分の厚みを変化させることで、その上面を傾斜面や段差構造とすることもできる。
磁束発生装置30は、第2動力伝達装置20の下方に配置され、ベース31、ハウジング32、電磁コイル33およびベアリング34を備えている。磁束発生装置30は、電磁コイル33が磁束を発生させることにより、第1動力伝達装置10のアーマチュア13を第2動力伝達装置20のロータ22に吸引させる装置である。ベース31は、電磁クラッチ1を適当な筐体に固定するための部材である。
ハウジング32は、ベース31の上面に固定されており、略円筒状でかつ半径方向の断面において略L字形状に形成されている。ハウジング32は、アーマチュア13およびロータ22と同じ磁性材料で形成されている。ハウジング32は、ハウジング32とロータ22とに囲まれる空間に電磁コイル33を収納している。
また、ハウジング32は、アーマチュア13およびロータ22とともに、電磁コイル33が発生する磁束についての磁路の一部を構成する。すなわち、磁路は、アーマチュア13、ロータ22およびハウジング32に形成される。この磁路を構成する3個の部材を同じ材料で構成することにより、磁気抵抗を同じにすることができる。
電磁コイル33は、コイル線材が図示省略したボビンに巻きつけられた状態でハウジング32内に固定され、回転シャフト11を軸とした円周方向に略円筒状に配置されている。すなわち、電磁コイル33の中心軸は、回転シャフト11の回転軸と一致する。電磁コイル33は、図示省略した外部電源から電流の供給を受け、磁束を発生させる。この磁束の発生によりロータ22がアーマチュア13を吸引する。
ベアリング34は、ハウジング32の内側およびベース31の外側に設けられており、回転シャフト11の回転を滑らかにして、摩擦によるエネルギー損失、発熱を低減する。したがって、回転シャフト11は、ベアリング34によってハウジング32およびベース31に対して回転自在な状態で軸支されている。
出力装置40は、第1動力伝達装置10の上方に設けられている。すなわち、出力装置40は、回転シャフト11の最上部に設けられている。出力装置40は、プーリー41およびベルト42を備えている。出力装置40は、プーリー41およびベルト42を介して第1伝達装置10に伝達された回転力を駆動対象に伝達する。
プーリー41は、回転シャフト11に固定されており、プーリー41の外周にベルト42が掛けられている。プーリー41は、回転シャフト11が回転することにより回転し、それに伴ってベルト42が回転することで回転力を駆動対象に伝達する。なお、外装ケース50には、ベルト42を外に出すための図示省略した開口が設けられている。
なお、ロータ22の外周に配置されるのは、ウォームホイール23に限られず、スパーギアなどのギアであってもよい。また、潤滑剤も油に限らず、潤滑作用を有する材料であれば、利用することができる。また、カバー部材24の略円環形状の上面側表面に潤滑剤を弾く処理(例えば撥油剤の塗布)を施しても良い。これにより、外周から流入しようとする潤滑油に遠心力が働いた際に、潤滑油が外周方向に振り飛ばされ易くなり、摩擦面への潤滑油の侵入を更に効果的に防ぐことができる。
(第1の実施形態の動作)
以下、図1および図2に示した電磁クラッチ1の動作の一例を説明する。電磁コイル33に電流を流していない状態において、図示省略したモータによって、ウォームギア25が駆動されると、それがウォームホイール23に伝わり、ロータ22が回転シャフト11およびハウジング32に対して回転する。このとき、ロータ22は、ロータ22とアーマチュア13との間に隙間があるため、アーマチュア13に対して空転し、回転シャフト11にロータ22の回転力は伝わらない。この状態が、電磁クラッチ1がOFFの状態である。
上記の状態において、電磁コイル33に電流を流すと、電磁コイル33が作り出す磁場の磁束がロータ22とアーマチュア13を貫き、磁路が形成され、ロータ22にアーマチュア13が磁気的に吸引される。この磁気的な吸引力によって、ロータ22にアーマチュア13が接触し、ロータ22とアーマチュア13との間に摩擦力が発生する。この結果、ロータ22の回転力がアーマチュア13に伝わり、アーマチュア13がロータ22と共に回転し、同時に回転シャフト11が回転する。この回転力が、プーリー41からベルト42を介して、駆動対象に伝達される。この状態が、電磁クラッチ1がONの状態である。
このように電磁クラッチ1がOFFの状態であっても、ONの状態であってもウォームギア25が駆動されるとウォームホイール23は回転する。そのため、ウォームホイール23とウォームギア25とが噛み合っている部分の潤滑油は、飛散する。そして、その飛散した潤滑油は、部材と部材との間に流入する。例えば、カバー部材24と外装ケース50との隙間が、この潤滑油の流入の経路となる。
カバー部材24と外装ケース50との隙間に流入した潤滑油は、カバー部材24の略円環形状部分の上面側に流入する。このとき、潤滑油が摩擦面に流入するには、カバー部材24の円環形状の上面をさらに回転シャフト11の方向に向かって移動しなければならない。しかしながら、摩擦面までの流入経路が長く、さらにカバー部材24の外周方向に向かって遠心力が作用するため、回転軸11の方向に向かって潤滑油が流入しようとしてもカバー部材24の外周方向に潤滑油は押し戻され、潤滑油は摩擦面に流入し難い状態が作り出される。この状態は、ウォームホイールが回転する時に常に発生するので、潤滑油の摩擦面への流入を効果的に防止することができる。
以下、一具体例を挙げて、カバー部材24の形状の優位性について説明する。特許文献1には、アーマチュア/ロータ間の摩擦面への外周方向からの潤滑油の侵入を防止するために、摩擦面の外周方向を覆うカバー部材を設ける構成が記載されている。この構造では、潤滑油のカバー部材の端部(縁)を経由してのカバー部材内側への侵入、さらに潤滑油の摩擦面への侵入を防止する効果は、潤滑油の移動経路を長くした効果により主に得ている。すなわち、特許文献1に記載のカバー部材は、摩擦面の外周方向において、回転軸方向に延在するのみであるから、本発明を利用したカバー部材24のような遠心力を利用した潤滑油の排除作用はほとんど期待できない。したがって、摩擦面への潤滑油の侵入を遅らせる効果、あるいはその傾向を低減する効果が得られるのに止まり、摩擦面への潤滑油の侵入を防止する効果は、限定的なものとなる。
これに対して、図1に示すカバー部材24の形状は、摩擦面の外周方向を覆うと共に、さらにアーマチュア13の裏面方向(摩擦面の裏面の方向)において、その外周方向から内周方向に向かって延在し、アーマチュア13の裏面部分を覆っている。このため、ウォームギア25の部分に封入された潤滑油がカバー部材24の側面に侵入し、さらに図の上部縁部分28に至ったとしても、そこから内周方向(回転シャフト11方向)への潤滑油の移動は、カバー部材24の回転に伴う遠心力によって阻害される。つまり、カバー部材24の回転に伴う遠心力により、カバー部材24の上部縁部分28から内周縁部分29に移動しようとする潤滑油は、外周方向に振り飛ばされ、内周縁部分29方向への移動は、困難となる。この作用により、アーマチュア13とロータ22との間の摩擦面に、潤滑油が侵入することを確実に防止することができる。
また、カバー部材24の構造は、潤滑油の侵入経路を長くすることによる摩擦面への潤滑油侵入防止効果だけに頼らないので、回転シャフト11方向におけるカバー部材24の長さ寸法を短くすることができる。このことは、薄型/低背型の電磁クラッチを得る上で有利となる。一方、文献1に記載されているような、回転シャフト方向のみに延在するカバー部材では、潤滑油の侵入経路を長くすることによる摩擦面への潤滑油侵入防止効果だけに頼ることになるので、潤滑油侵入防止効果を高めるには、その回転シャフト方向への寸法を長くする必要がある。これは、薄型/低背型の電磁クラッチを得るには、不利となる。
このように、本発明を利用した図1に示す電磁クラッチ1は、潤滑油の摩擦面への侵入を防止する効果の点で、特許文献1に記載された構成より優れ、さらに薄型/低背型の電磁クラッチを得るにも有利な構造を有している。
2.第2の実施形態
図3は、第2の実施形態に係るカバー部材の概要を示す断面図である。第2実施形態に係るカバー部材26は、略円環形状の先端部分に折り返し部26aを設けている。そのため、さらに潤滑油が摩擦面に流入し難い構造となっている。
3.第3の実施形態
図4は、第3の実施形態に係るカバー部材の概要を示す断面図である。第2実施形態に係るカバー部材27は、略円環形状の上面に環状溝27aを設けている。そのため、さらに潤滑油が摩擦面に流入し難い構造となっている。なお、図4では、環状溝27aは、一箇所に形成されているが、環状溝27aを略円環形状の上面に複数形成した構成としてもよい。
本発明は、電磁クラッチにおける潤滑剤の摩擦面への流入を防止する構造に利用することができる。
第1の実施形態に係る電磁クラッチの概要を示す断面図である。 第1の実施形態に係る電磁クラッチの分解断面図である。 第2の実施形態に係るカバー部材の概要を示す断面図である。 第3の実施形態に係るカバー部材の概要を示す断面図である。 従来技術における電磁クラッチの概要を示す断面図である。
符号の説明
1…電磁クラッチ、11…回転シャフト、13…アーマチュア、22…ロータ、23…ウォームホイール、24…カバー部材、26…カバー部材、27…カバー部材。

Claims (5)

  1. 回転シャフトと、
    前記回転シャフトに固定されたアーマチュアと、
    前記アーマチュアに対して所定の隙間を有した状態で対向して配置され、前記回転シャフトに対して回転可能なロータと、
    前記ロータの外周に配置されたギアと、
    前記ロータの外周に設けられ、前記アーマチュアの方向に延在し、さらに前記アーマチュアの前記ロータへの対向面の裏面の方向に屈曲し、前記アーマチュアの側面および前記裏面を覆うカバー部材と
    を備えることを特徴とする電磁クラッチ。
  2. 前記カバー部材は、前記アーマチュアおよび前記ロータを構成する材料よりも低い透磁率を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ。
  3. 前記カバー部材は、非磁性材料により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ。
  4. 前記カバー部材と前記アーマチュアの前記裏面との距離は、前記所定の隙間の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
  5. 前記ギアは、ウォームホイールであり、
    前記カバー部材は、前記ウォームホイールと一体に成型されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
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