JP2008204895A - 燃料電池用セパレータ用樹脂組成物及び燃料電池用セパレータ - Google Patents

燃料電池用セパレータ用樹脂組成物及び燃料電池用セパレータ Download PDF

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Abstract

【課題】導電性と流動性に優れ、不純物が少ない燃料電池用セパレータ用樹脂組成物、並びに導電性及び寸法精度に優れ、固体電解質の性能低下を招くおそれも無い燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂 、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)炭素材料を必須成分とし、かつ、(D)が全量の35〜85質量%で、該(D)全量の5〜100質量%が平均粒径150〜500μmの高結晶性人造黒鉛であり、(B)100重量部に対し(C)が0.1〜20重量部であることを特徴とする燃料電池用セパレータ用樹脂組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は燃料電池用セパレータ、並びにその成形材料である用樹脂組成物に関する。
例えば図1に概略斜視図で示すように、燃料電池用セパレータ10は、平板部11の両面に所定間隔で複数の隔壁12を立設して形成されている。燃料電池 とするには、多数の燃料電池用セパレータ10を、隔壁12の突出方法(図中、上下方向)に積層する。そして、この積層により、隣接する一対の隔壁12で形成されるチャネル13に反応ガス(水素や酸素)を流通させる構成となっている。燃料電池用セパレータは、樹脂材料と、黒鉛等の導電性材料を含む樹脂組成物を上述したような形状に成形して製造される。
燃料電池用セパレータの成形方法としては、樹脂材料をフェノール樹脂やエポキシ樹脂の熱硬化性樹脂とする上記樹脂組成物を、ガスや冷却水の流路を設けた金型に入れ、これを熱間でプレスする熱圧縮成形により成形したものが一般的であるが、近年では、生産性の向上のために、熱圧縮成形に代わり、射出成形により燃料電池セパレータを製造することが試みられている。例えば、黒鉛材料と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とを含む樹脂組成物をシリンダーから金型内に射出して燃料電池用セパレータを成形する方法が知られている(特許文献1〜3参照)。このような射出成形では、樹脂組成物はランナーと呼ばれる狭い流路を通じて閉じた金型に移送される。樹脂組成物の流動性が低いと、金型の一部に充填できないショートカットが発生したり、充填に高圧が必要なために金型内圧が上昇し、金型が変形して成形体寸法精度の悪化を引き起こすことがある。よって、樹脂組成物を金型に隙間無く充填させ、寸法精度の高い成形体を得るためには、樹脂組成物は高い流動性が必要となる。
一方、樹脂材料としてエポキシ樹脂が広く使用されているが、エポキシ樹脂を硬化させるためは硬化剤及び硬化促進剤が必要であり、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン等の有機ホスフィンが一般に使用されている(特許文献4参照)。しかし、有機ホスフィンを硬化促進剤として用いた樹脂組成物からは、導電性が低い燃料電池用セパレータしか得られず、特に炭素材料として人造黒鉛を使用し、これを硬化促進剤であるトリフェニルホスフィンと併用した場合は導電性が悪化する。また、炭素材料として天然黒鉛を用いた場合は、金属成分の不純物が多く、燃料電池に使用する電解質膜に悪影響を与える場合がある。
そこで、硬化促進剤として尿素化合物を使用することが試みられている(特許文献5〜6参照)。しかしながら、この特許文献5に記載の樹脂組成物は、本発明者らの追試では、材料の流動性が不十分であり、射出成形により成形することが出来なかった。また特許文献6の樹脂組成物では、炭素材料として膨張黒鉛を使用しており、由来の不純物が多く、これにより電解質膜に悪影響を与える可能性がある。
このように、従来技術では導電性と流動性に優れ、不純物が少ない燃料電池用セパレータ用樹脂組成物は得られていない。
特開2003−338294号公報 特開2003−297386号公報 特開2003−242994号公報 特開2003−257447号公報 特開2002−201257号公報 特開2006−252170号公報
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、導電性と流動性に優れ、不純物が少ない燃料電池用セパレータ用樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、導電性及び寸法精度に優れ、固体電解質の性能低下を招くおそれも無い燃料電池用セパレータを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、(A)エポキシ樹脂 、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)炭素材料を必須成分とし、かつ、(D)が全量の35〜85質量%で、該(D)全量の5〜100質量%が平均粒径150〜500μmの高結晶性人造黒鉛であり、(B)100重量部に対し(C)が0.1〜20重量部であり、好ましくは(C)が一般式「X−NH−CO−NYZ(Xは飽和または不飽和アルキル基及びこれらの誘導体、アリール基及びその誘導体から選ばれる一種であり、Y、Zは同一または異なっていても良い飽和もしくは不飽和アルキル基である)」で表される尿素誘導体であることを特徴とする燃料電池用セパレータ用樹脂組成物、並びに前記燃料電池用セパレータ用樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とする燃料電池用セパレータを提供する。
本発明の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物は、硬化促進剤として特定の尿素化合物を用いたため、流動性を低下させることがなく、射出成形が可能であり、また炭素材料が高結晶性人造黒鉛を主成分とするため、導電性に優れ、更に不純物が少なく固体電解質の成果低下を招くおそれもない。従って、本発明の燃料電池用セパレータも寸法精度及び導電性に優れ、更に固体電解質の性能低下を招くことがなく、高性能の燃料電池が得られる。
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という)は、(A)エポキシ樹脂 、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)炭素材料を必須成分とする。
エポキシ樹脂はエポキシ基を2個以上有する化合物であり、従来公知のものを利用することが出来る。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂のビスフェノール型のエポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシンエポサイド、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂の多官能エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられるが挙げられるがこれらに限定されない。上述したエポキシ樹脂のなかでは、耐熱性と強度の高い成形体が得られるため、多官能型エポキシ樹脂が本発明においては好適に使用される。なお,エポキシ当量は好ましくは50以上500以下であり、より好ましくは100以上300以下である。エポキシ当量が低すぎる場合は、成形体が脆くなる。一方、エポキシ当量が高すぎる場合は耐熱性と強度の低い成形体しか得られなくなる。
エポキシ樹脂は、硬化剤と反応することによって、エポキシ硬化物を生成する。硬化剤も各種公知の化合物を使用することができる。例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の脂肪族、脂環式、芳香族のポリアミンまたはその炭酸塩;無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物等の酸無水物;フェノールノボラック、クレゾールノボラックのようなポリフェノール;ポリメルカプタンが挙げられるが、これらに限定されない。複数の硬化剤を併用することもできる。上記の内、ポリアミンやその炭酸塩、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等の硬化剤は、自身がエポキシ化合物と重付加反応してエポキシ硬化物を構成するので、重付加型硬化剤と呼ばれる。重付加型硬化剤の過不足は未反応官能基の残存につながる故、添加量には適正域が存在する。一般に、エポキシ樹脂前駆体のエポキシ基1個当たり0.7〜1.2当量の、特に0.8〜1.1当量の重付加型硬化剤を使用するのが好ましい。これら硬化剤の種類、量と熱硬化性樹脂樹脂の種類、硬化促進剤の種類、量を種々に選択することにより、熱硬化性樹脂樹脂の硬化速度を任意に変化させることができる。当業者であれば、所望の硬化条件に合わせ、熱硬化性樹脂や硬化剤や硬化促進剤の種類及び使用量を決定することは容易であろう。本発明では、硬化剤としてはフェノール性水酸基を2個以上を有する化合物が好ましい。このような化合物としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、アラルキル型フェノールノボラック、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ナフトールノボラック、フェノールジシクロペンタジエン樹脂のような上述したポリフェノールやビスフェノールAが挙げられる。これらフェノール性水酸基を2個以上を有する硬化剤は、耐熱性の高い成形体を得ることが出来る。
硬化促進剤には、上記エポキシ樹脂用として従来公知のものを使用できるが、一般式「X−NH−CO−NYZ(Xは飽和または不飽和アルキル基及びこれらの誘導体、アリール基及びその誘導体から選ばれる一種であり、Y、Zは同一または異なっていても良い飽和もしくは不飽和アルキル基である)」で表される尿素誘導体を用いることが好ましい。中でも、以下に示す一般式(I)〜(III)で表されるアルキル系尿素誘導体が好ましい。
Figure 2008204895
Figure 2008204895
Figure 2008204895
上記各アルキル系尿素誘導体において、R3〜R6の低級アルキル基または低級アルコキシ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基、またはそれに相当するアルコキシ基が好ましい。
上記一般式(I)で表されるアルキル系尿素誘導体の具体例としては、3−フェニル−1、1−尿素、3−(p−クロルフェニル)1、1−尿素、3−(3、4−ジクロルフェニル)−1、1−尿素、3−(o−メチルフェニル)−1、1−尿素、3−(p−メチルフェニル)−1、1−尿素、3−(メトキシフェニル)−1、1−尿素、3−(ニトロフェニル)−1、1−尿素等を挙げることができる。
また、一般式(II)で表されるアルキル系尿素誘導体の具体例としては、1、1’−フェニレンビス(3、3−尿素)、1、1’−(4−メチル−m−フェニレン)−ビス(3、3−尿素)等が挙げられる。
また、一般式(III)で表されるアルキル系尿素誘導体の具体例としては、N,N”−(1,5,5−トリメチル−1,3−シクロヘキサンジル)ビス[N’N’−トリメチルウレア]等が挙げられる。
上記の中でも、下記(1)、(2)、(3)の化合物が特に好ましい。
Figure 2008204895
上記のアルキル系尿素誘導体を含有させることにより、60〜140℃での熱安定性が大幅に向上するため、樹脂組成物の調製に際し均一化のために溶融混練しても、その間に硬化反応が起こらなくなり、成形材料の流動性が大幅に高まる。また、射出成形ではシリンダー内が100℃近辺となるが、上記のようにこのような温度でも硬化せず、即ちシリンダー内では硬化が進行せず、金型に高充填でき、しかも金型内で急速に硬化するため、得られる成形体は高強度となる。このように、本発明の導電性エポキシ樹脂組成物は、射出成形が可能になり、生産性も高まる。
炭素材料は、主成分を炭素原子とする導電性材料であり、具体的には膨張黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、ダイヤモンドライクカーボン、フラーレン、カーボンナノホーン、ハードカーボン、ガラス状カーボンを指すがこれらに限定されない。
このうち天然黒鉛は天然に産出する炭素材料である。そのため、天然物由来の不純物である、鉄分・カルシウム・ナトリウムといった金属成分を多く含むため、これらが燃料電池の電解質膜の劣化を促進する場合があり、本発明の樹脂粗組成物における天然黒鉛比率を高くすることは好ましくない。膨張黒鉛は、天然黒鉛を加工して得られる黒鉛材料であり、その異方性から容易に導電パスを形成し、導電性に優れた組成物を得ることが出来る。しかし、天然物に由来する原料を用いるため、天然黒鉛と同様に金属成分による電解質膜劣化を促進する場合がある。
そこで、本発明では、平均粒径150〜500μmの高結晶性人造黒鉛を炭素材料の主成分とする。炭素材料を全て平均粒径150〜500μmの高結晶性人造黒鉛としてもよく、上述した他の炭素材料と併用しても良い。即ち、全炭素材料における平均粒径150〜500μmの高結晶性人造黒鉛の割合は5〜100質量%、より好ましくは50〜95質量%、更に好ましくは70〜90質量%、特に好ましくは80〜85質量%である。平均粒径150〜500μmの高結晶性人造黒鉛の比率が低い場合は電気抵抗が高くなり、平均粒径150〜500μmの高結晶性人造黒鉛の比率が高すぎる場合は機械的強度が低くなる。
高結晶性人造黒鉛とは、黒鉛面間隔が狭い人造黒鉛を指す。ここで黒鉛面間隔とは黒鉛の結晶状態を表す指標であり、値が小さいほど結晶が発達していることを示す。黒鉛結晶は六角網状平面の形態を採り、結晶が発達しているものは結晶の面方向への広がりが大きく縦方向の積層が密な状態となる。黒鉛面間隔はこの黒鉛結晶の面と面の間隔が平均化されて測定された値である。
黒鉛の完全結晶の結晶面間隔は0.3354nmであるが、結晶面間隔の値が小さい場合、面方向の結晶成長のため黒鉛粒子の異方性が高くなる。黒鉛結晶は六角網状結晶平面に平衡な方向にはよく流れるが、垂直な方向には流れづらい。よって、結晶面が大きいものは導電性が良好となる。黒鉛と樹脂を混合した成形材料についても同様であり、結晶成長した黒鉛を用いたものは導電性が良好となる。よって導電性の観点から結晶面間隔には好ましい範囲が存在する。本発明で好ましい範囲は、0.3354nm以上0.3365nm以下であり、より好ましい範囲は0.3354nm以上0.3362nm以下、さらに好ましい範囲は0.3354nm以上0.3360nm以下である。
尚、黒鉛結晶面間隔の測定方法はXRD(X線回折)により測定され、基底面である002面のピークが確認される角度(2θ)より算出される。具体的にはBraggの式λ = 2d・sinθで計算される。このとき、dが面間隔、θがピーク角度の1/2、λがXRD装置の光学系の波長である。このXRDの測定結果から面間隔を算出する方法は無機材料を扱う当業者であれば容易に類推できる公知の情報である。
このような結晶面間隔を有する黒鉛として、ニードルコークスを焼成した人造黒鉛がある。ニードルコークスは、黒鉛特有の結晶構造である層状結晶構造を部分的に有する、異方性がきわめて強い仮焼コークスであり、粉砕すると、結晶層と垂直方向に細長く割れて細長い針状粒子になるため、ニードルコークスと呼ばれている。ニードルコークスは、黒鉛結晶構造がある程度でき上がっているため易黒鉛化性であり、大電流を通電できる製鋼用向けの黒鉛電極の製造に大量に利用されている。
ニードルコークスの代表的な製法としては次のものがある。芳香族、特に多環芳香族に富むコールタール、コールタールピッチ、または石油系重質油を不純物除去処理してから、 300〜700 ℃の温度でディレードコーカーによりゆっくりコークス化させて、7〜15質量%程度の揮発分を含有するグリーンコークスとした後、これを1000〜1500℃前後の温度で仮焼して、炭素分を98〜99質量%まで高めることにより製造されている。そして、こうして得られたニードルコークスを2000〜3000℃の温度で焼成することで上記の高結晶性人造黒鉛が得られる。
ニードルコークスを黒鉛化する際には、ニードルコークスの形態は限定されない。例えば、適当な形状に成形した状態で黒鉛化して粉砕してもよく、ニードルコークス粉末をそのまま焼成してもよい。ニードルコークス は、揮発分をほとんど含有しない仮焼コークスであるので、黒鉛化温度まで加熱しても融着性を示さない。従って、これを粉砕した後、直ちに焼成することで黒鉛化することができる。バインダーピッチとともにニードルコークスを捏合し、これを押出しや圧縮成形の適当な手段で成形したものを黒鉛化し、それを粉砕してもよい。
また、高結晶性人造黒鉛には、特定範囲の平均粒径を有するものを用いる必要がある。平均粒径が小さすぎる場合は、コンパウンド粘度が高くなり、燃料電池用セパレータの寸法精度を低下させたり、射出成形に必要な流動性を確保できなくなる。一方で、平均粒径が大きすぎる場合は、金型キャビティと黒鉛粒子の干渉のため、金型キャビティ内の厚さの薄い部分を黒鉛粒子が通過できないために、平均粒径が小さすぎる場合と同様に金型に成形材料が充填できない現象(ショートショット)が発生することがある。そこで本発明では、平均粒径が150〜500μmの高結晶性人造黒鉛を用いる。
本発明における平均粒径とはレーザー回折式の粒度分布系で測定される平均粒径を指すものとする。水の液体内に分散している粒子にレーザー光を照射すると、粒子から散乱(回折)光が生じる。その散乱光の強度は、粒径パラメーターと粒子の屈折率に依存する。レーザー回折法はこの散乱光強度の分布を測定し、粒度分布を求める方法である。測定装置としては、例えば島津製作所や堀場製作所から市販されている。
また、ニードルコークスをバインダーピッチとともに押出成形し、これを黒鉛化したものは配向性が強く、電気抵抗の低い成形材料を得ることが出来る。電気製鋼で使用される電極材料として高結晶性黒鉛がよく使われるが、それを切削した際に生じる切削粉を用いることも出来る。こうして得られた高結晶性黒鉛は、必要に応じて粉砕・分級して、上記の粒径の粉末とする。
一般的に市販されている人造黒鉛粉末は平均粒径100μm以下のものが殆どであるが、それらは通常はある粒度分布を有し、粒径100μmを超える粒子も含まれている。よって、市販品の中で平均粒径が最大のものを入手し、それを分級して所望の平均粒径の人造黒鉛を得てもよい。また、市販されている電極材料を粉砕してもよい。
また、高結晶性人造黒鉛は、異方性が極めて強いため板状または針状となるものが多い。このため、高結晶性黒鉛自身の高い導電性に加え、樹脂と混合した際に容易に導電パスを形成し、高導電性の燃料電池用セパレータを得ることが出来る。
樹脂組成物における上記各成分の配合割合は、炭素材料を樹脂組成物全量の35〜85質量%とする必要がある。炭素材料の比率が低すぎる場合は導電性が低下する。一方で、炭素材料の比率が高すぎる場合は強度が低くなり、また、コンパウンドの流動性が低くなるため、射出成形の際に金型内での樹脂組成物の圧力分布が大きくなり、得られる燃料電池用セパレータの寸法精度が悪くなるため好ましくない。また、硬化促進剤は、硬化剤100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の割合で配合される。硬化促進剤の配合量が下限値を下回ると金型内での硬化時間が長くかかり、上限値を上回ると100℃近辺での熱安定性が損なわれる恐れがある。
また、樹脂組成物には、任意成分としてカルナバワックス等の滑剤を添加して、成形加工時に金型や混練機への貼りつきを防止することも可能である。滑剤としてはステアリン酸やモンタン酸ワックスやこれらの金属塩等の使用も可能である。また、導電性を低下させない範囲で、ガラス繊維、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム等の無機充填材や、木粉等の有機充填材、可塑剤を添加することも可能である。
本発明において、樹脂組成物を製造するには溶融混合が好ましい。エポキシ樹脂や硬化剤はある温度以上で軟化する。この軟化する温度は軟化点と呼ばれるが、本発明においては、エポキシ樹脂または硬化剤の何れかの軟化温度以上で、かつ、混合中に硬化反応が進行しない温度に調整した装置で混合すればよい。具体的には、上記に挙げたエポキシ樹脂や硬化剤では50〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましく、80〜90℃が更に好ましい。また、混練時間は30秒〜5分が好ましく、1〜3分がより好ましい。
尚、強い剪断作用が生じる装置であれば、設定温度を軟化温度以下としてもよい。このような装置では剪断発熱により混合物は軟化温度以上となる場合がある。また、エポキシ樹脂または硬化剤の何れかが常温で液状である場合は、常温で混合してもよい。
混合に使用する装置としては種々の慣用の装置を使用することが可能であり、例えば無圧ニーダー、加圧ニーダー、二軸押出機、単軸押出機、バンバリーミキサー、インターミックス、二本ロールミル、三本ロールミル等が挙げられるがこれらに限定されない。また、ドライミックスによって予備混合を行った材料を溶融混合してもよい。
上記の溶融混合は、装置に全成分を一度に投入して混合できるため、製造コスト上有利である。
本発明はまた、上記の樹脂組成物を成形してなる燃料電池用セパレータを提供する。成形方法としては、生産性に優れる射出成形を用いる。射出成形では流動性の高い成形材料を使用する必要があるが、上述のように本発明の脂組成物は、炭素材料が高導電性の高結晶性人造黒鉛を含むため、その含有量が少なくて済み、更に硬化促進剤を少量にしたためシリンダー温度での硬化反応の進行が抑えられ、射出成形が可能となる。以下に、射出成形条件の一例を示す。
シリンダー温度は、ホッパ下からノズルに向かって段階的に高くなるように設定される。ホッパ下の設定温度は好ましくは30℃〜80℃、更に好ましくは40〜60℃である。ホッパ下の温度が高すぎる場合は、射出成形時にシリンダー内で樹脂組成物が逆流して金型のキャビティを充填できない場合がある。また、ホッパ下の温度が低すぎる場合は、スクリューでシリンダーの先端に移送された樹脂組成物が十分に溶融せず、流動性不足により金型のキャビティを充填できない場合がある。一方、ノズル部の温度は好ましくは50〜120℃、更に好ましくは70〜100℃である。ノズル部の温度が高すぎる場合は、シリンダー内でエポキシ樹脂が硬化してシリンダーから樹脂組成物を射出できなくなる場合がある。また、ノズル部の温度が低すぎる場合は、樹脂組成物が十分に溶融せず、流動性不足により金型のキャビティを充填できない場合がある。
金型温度は好ましくは150〜200℃、より好ましくは160〜190℃である。金型温度が低すぎる場合は、導電性エポキシ樹脂組成物の流動性が不足して金型のキャビティを充填できない場合が発生したり、硬化に長時間要する。また、金型温度が高すぎる場合は、金型への射出開始から硬化による流動停止までの時間が短くなるため、金型のキャビティに導電性エポキシ樹脂組成物を充填できなくなる場合がある。
射出圧力は10〜250MPa、硬化時間は20秒〜10分とすることができるが、シリンダー温度や金型温度と同様に、使用するエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤の各種類、燃料電池用セパレータの形状等により適宜条件を設定すればよい。必要に応じて、成形後に切削加工を施すことも可能である。
上述したように、本発明の重要な点は、特定の人造黒鉛の使用とともに、好ましくは特定の硬化促進剤を規定量使用し、これらを溶融混合すること、さらに得られた樹脂組成物を射出成形により成形することにある。以下、特定の人造黒鉛と特定の硬化促進剤により、導電性と流動性に優れた樹脂組成物が得られる理由について、本発明者らの考察結果を示すが、本発明はこの考察に限定されるものではない。
一般的にマトリクス中にフィラーが分散されている場合、同じ体積比率であればフィラーの平均粒径が大きい方がフィラー間の平均距離が大きくなり、また、フィラー表面積の合計が小さくなる。よって、摩擦や凝集力、斥力等のフィラー間相互作用、フィラー表面へのマトリクス成分吸着等のフィラー・マトリクス相互作用が低下し、フィラー充填マトリクス全体の粘度が低くなる。本発明ではフィラーは黒鉛、マトリクスは樹脂を示す。よって、大粒径の黒鉛を使用することで、容易に低粘度の樹脂組成物を得ることができる。
高結晶性人造黒鉛粉末は、一般に粒子に異方性があり、形状は板針や針状粉末であり、剪断作用により容易に割れて細かい粒子となる。よって、燃料電池用セパレータとして使用する場合、コンパウンド作製時の樹脂とともに混練操作や、成形の際の射出成形機シリンダー内でのスクリュー移送、型内充填時に作用する剪断により容易に小粒径化する。このため、黒鉛粒子により生成した導電パスの切断が起こりやすくなる。本発明では大粒径の人造黒鉛を使用することでこれを防止している。
更に、大粒径の人造黒鉛を使用すると、樹脂組成物の粘度が低いため、上述した混練操作や射出成時のせん断応力が低減され、その結果、せん断発熱が起こり難くなる。硬化促進剤の種類により程度は異なるが、発熱が起こると硬化反応が進行するため、更に粘度が高くなり、その結果、せん断発熱量が増大して硬化反応が更に進行するという悪循環をもたらす。
特定の硬化促進剤を規定量用いても、高結晶性人造黒鉛を用いず代わりに低結晶性の人造黒鉛やカーボンブラックを用いた場合、溶融混合時やスクリュー内で硬化しない熱安定性に優れた樹脂組成物を得ることができるが、高結晶性人造黒鉛を用いたときと同様の導電性を得るためには、低結晶性の人造黒鉛やカーボンブラックを大量に添加する必要がある。そのため、樹脂組成物の流動性を向上させる樹脂量が減り、流動性を低下させる炭素材料の使用量が増し、樹脂組成物は流動性が低下して成形性が大幅に悪化する。
また、ドライミックスした場合は、混練よる黒鉛の破砕は起こり難く、導電性に優れる樹脂組成物が得られるが、射出成形するためには粘度が高すぎ、金型に充填することが出来なくなる。これに対し、特定の人造黒鉛と、規定量の特定の硬化促進剤とを併用すると、これらの問題は解決される。特定の硬化促進剤を規定量使用した場合は、樹脂組成物が混練時や射出成形のシリンダー内で想定される100℃以下の低温では硬化反応が進行しがたく、コンパウンドに負荷される剪断力を抑えることが可能となる。剪断力が抑制されると黒鉛の粉砕が最小限に抑えられる。
これに加えて本発明では射出成形に適した、特定範囲の平均粒径の高結晶性人造黒鉛を使用することで、さらに射出成形に必要な流動性を確保し、導電性との両立を図っている。この範囲から外れた黒鉛を用いた場合は整形材料の流動性が不足するため、組成物の樹脂量比率を高くする必要がある。その場合、導電性が不足するため燃料電池用セパレータとして特性上問題のある材料となる。
即ち、特定の硬化促進剤を規定量より多く使用した場合は、高結晶性人造黒鉛が粉砕され導電パスが形成されにくいが、規定量使用することにより高結晶性人造黒鉛は粉砕されず、導電パスが形成されやすくなる。その結果、樹脂組成物中で樹脂量を増すことができるようになり、流動性が上昇して成形体の寸法精度が大幅に向上するとともに、生産性に優れる射出成形が可能になる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明に更に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
(成形材料の作製)
表1に示す配合に従い、材料合計500gを10Lのヘンシェルミキサーで予備混合した後、1Lの加圧ニーダーで、チャンバー温度100℃で5分間混練した。これを粉砕機で粒径約2mmの粒子状に粉砕して成形材料とし、射出成形を行った。表1の配合の単位は質量%である。
尚、平均粒径150μmの人造黒鉛はほとんど市販されておらず、各実施例では平均粒径150μm未満の市販人造黒鉛粉体の70メッシュまたは100メッシュの篩い分け残渣を使用し、各比較例では市販の人造黒鉛粉末をそのまま使用した。また、黒鉛原料の結晶面間隔は、X線回折装置(リガク製 )を用い、ステップ幅0.01deg、スキャン速度0.3sec/stepにて、2θ=25〜30deg付近に観察される最大ピークである002面ピークの2θ位置から、原料黒鉛粉末の結晶面間隔を測定した。また、黒鉛原料の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布系(島津製作所製)を用い、黒鉛粉末の平均粒径を測定した。
また、尿素誘導体2及び尿素誘導体3は、それぞれ以下の化合物である。
Figure 2008204895
(成形体の作製)
射出成形機として型締め力80tの熱硬化性樹脂用成形機(菱屋精工製)を用い、シリンダー温度はホッパ下50℃、ノズルは90℃とし、金型温度は170℃とし、射出速度20mm/sec、硬化時間は60〜180秒、成形圧力は30〜70MPaの範囲で適宜設定した。この射出成形機を用い、成形材料を1辺100mm、厚さ2mmの正方形薄板状の形状に射出成形した。得られた成形体に切断加工を施したものを試験体とした。
(導電性の評価)
図2に示す方法で貫通方向の抵抗を測定し、導電性の評価を行った。試料21を、カーボンペーパー22を介して電極23にセットし、電極間に流した電流(電流計24で測定)とカーボンペーパー間の電圧(電圧計25で測定)から、電気抵抗を計算し、さらにこれに試料面積を掛けて貫通方向の抵抗率とした。結果を表1に併記する。
(100℃における硬化反応進行の測定)
ムービングダイレオメータ(モンサントMDR2000)を用いて、成形材料の100℃における硬化反応の進行に伴うトルク変化を測定した。測定時間は15分とした。トルクが上昇したものは硬化が進行したことを表す。結果を図3〜5並びに表1に併記する。表1には、トルク上昇が確認されないものは「○」、トルク上昇が確認されたものは「△」を熱安定性の欄に記した。
(流動性の評価)
JIS-K-7199に準じ、キャピラリーレオメータ(東洋精機キャピログラフ)を用い、成形材料の硬化反応による粘度上昇が見られる前の170℃、剪断速度1000sec-1の時の粘度を測定した。結果を表1に併記する。
(成形体の寸法精度の測定)
射出成形により得られた1辺100mm、厚さ2mmの正方形薄板状成形体の四隅と中央部の5箇所の厚さを測定し、その最大値と最小値の差を厚さレンジとした。厚さレンジが小さいものが寸法精度良好と判断される。結果を表1に併記する。
(成形体中の不純物の測定)
JIR R7212に準じて、成形体中の灰分を測定した。結果を表1に併記する。
Figure 2008204895
各実施例と比較例は、何れもオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂に硬化剤としてフェノールノボラックを使用している。また、実施例1〜8では硬化促進剤として特定の尿素誘導体を使用しており、炭素材料として平均粒径150μm以上の高結晶性人造黒鉛を用いている。これに対し、実施例9では硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用い、比較例1では平均粒径が150μm未満の高結晶性人造黒鉛を用い、比較例2では平均粒径が150μm未満の通常の人造黒鉛を用い、比較例3では膨張黒鉛を用いた。
その結果、実施例1〜8は100℃におけるトルク変化はほとんど発生していないことから、100℃で硬化反応の進行が非常に遅く、熱安定性に優れている。また、粘度が低く、射出成形により成形体を得ることも容易であり、寸法精度も良好である。これは、熱安定性が高く、混練温度やシリンダー温度で硬化反応進行に伴う増粘が起こりにくく、高結晶性人造黒鉛の混練工程や成形工程での破砕が防がれたためと思われる。更に、電気抵抗が低いことから、燃料電池用セパレータとして使用した場合、発電時の内部抵抗分の電圧ロスに伴う効率低下の懸念が少ない。
硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを使用した実施例9は、熱安定性、電気抵抗が他の実施例に比べてやや劣っているが、15分経過後も初期トルクの1.3倍程度であり、本実施例のような硬化時間180秒以内のハイサイクル射出成形で許容される範囲である。比較例1は、熱安定性に優れており、成形体の電気抵抗も低いが、粘度が高く、射出成形材料としては不適である。比較例2は、熱安定性に優れているが、電気抵抗・粘度とも問題がある。比較例3は、電気抵抗は低いものの粘度が高く、また、灰分量が多く電解質膜にダメージを与える可能性もある。
以上より、本発明により導電性と成形性に優れ、不純物が少ない燃料電池用セパレータが得られることは明らかである。
燃料電池用セパレータの一例を示す斜視図である。 貫通方向の抵抗を測定する方法を説明するための模式図である。 実施例1〜3の成形材料について、硬化反応の進行を評価するためにトルクの時間変化を測定した結果を示すグラフである。 実施例4〜6の成形材料について、硬化反応の進行を評価するためにトルクの時間変化を測定した結果を示すグラフである。 実施例7〜9の成形材料について、硬化反応の進行を評価するためにトルクの時間変化を測定した結果を示すグラフである。 比較例1〜2の成形材料について、硬化反応の進行を評価するためにトルクの時間変化を測定した結果を示すグラフである。
符号の説明
10 燃料電池用セパレータ
11 平板部
12 隔壁
13 チャネル
21 試料
22 カーボンペーパー
23 電極
24 電流計
25 電圧計

Claims (10)

  1. (A)エポキシ樹脂 、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)炭素材料を必須成分とし、かつ、(D)が全量の35〜85質量%で、該(D)全量の5〜100質量%が平均粒径150〜500μmの高結晶性人造黒鉛であり、(B)100重量部に対し(C)が0.1〜20重量部であることを特徴とする燃料電池用セパレータ用樹脂組成物。
  2. (C)が一般式「X−NH−CO−NYZ(Xは飽和または不飽和アルキル基及びこれらの誘導体、アリール基及びその誘導体から選ばれる一種であり、Y、Zは同一または異なっていても良い飽和もしくは不飽和アルキル基である)」で表される尿素誘導体であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物。
  3. (C)硬化促進剤が、一般式(I)、(II)または(III)で表される尿素誘導体であることを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物。
    Figure 2008204895
    Figure 2008204895
    Figure 2008204895
  4. (C)硬化促進剤が、(1)、(2)または(3)で表される尿素誘導体であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物。
    Figure 2008204895
  5. (B)硬化剤が分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか記載の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物。
  6. (A)エポキシ樹脂が多官能エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れか記載の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物。
  7. 高結晶性人造黒鉛の結晶面間隔が0.3354nm以上0.3365nm以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか記載の燃料電池用セパレータの成形材料。
  8. 高結晶性人造黒鉛がニードルコークスを焼成したものであることを特徴とする請求項1〜7の何れか記載の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物の製造方法であって、(A)または(B)の軟化温度以上の温度で、かつ、混合中に硬化反応が進行しない温度にて溶融混練することを特徴とする燃料電池用セパレータ用樹脂組成物の製造方法。
  10. 請求項1〜8の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ用樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
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