本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、映像音響機器の操作部分に使用される多方向スイッチ装置に関し、操作体が中央部に貫通孔を有し、操作体の押圧面が傾斜している場合であっても、高い信頼性を有するとともに、操作違和感がなく、他のスイッチ装置と組み合わせて複合スイッチ装置を構成する場合にも、全体が小型の多方向スイッチ装置を提供することにある。
本発明の多方向スイッチ装置は、樹脂製のパネル部材と、パネル部材の背面側に固定される基板と、基板上に配設される複数の押圧スイッチ素子と、複数の押圧スイッチ素子を選択的に押圧する操作体と、を備える多方向スイッチ装置であって、パネル部材の基体が、基板を固定する基板固定部と、操作体を所定の位置に規制する位置規制爪と、操作体を傾斜させて操作体が押圧する押圧スイッチ素子を選択させる選択規制突起と、を有し、押圧スイッチ素子が、基板に固定する固定部と、接点を形成し弾性を有して移動する作動子と、を有し、操作体が、中央部に中央貫通孔を有する円筒状胴部と、円筒状胴部の前面に一の方向に傾斜して形成される傾斜押圧面と、円筒状胴部の背面側から延接されて位置規制爪ならびに選択規制突起に当接するフランジ部と、フランジ部の背面側に延設されて複数の押圧スイッチ素子の作動子に当接する複数のスイッチ突起部と、を有し、複数の押圧スイッチ素子が、操作体のスイッチ突起部の背面側であって、円筒状胴部の中央貫通孔の中心点に対して90度間隔で4方向に設けられ、かつ、傾斜押圧面の最前端と最後端に対応する2方向を少なくとも含み、位置規制爪が、フランジ部の外周側であって、周方向に隣り合う押圧スイッチ素子の中間であり、かつ、円筒状胴部の中央貫通孔の中心点に対して180度間隔で2方向に設けられて、フランジ部の規制溝に係合し、選択規制突起が、操作体の押圧面およびフランジ部の背面側であって、傾斜押圧面の最前端に対応する押圧スイッチ素子の両側にそれぞれ、少なくとも2カ所設けられている。
好ましくは、本発明の多方向スイッチ装置は、複数の押圧スイッチ素子に対応する押圧位置が形成される操作体の傾斜押圧面において、その一つの押圧位置を押圧された場合に、押圧位置に対応する押圧スイッチ素子に近接する一方の位置規制爪が、操作体のフランジ部と当接して、操作体が押圧により移動する方向を規制し、押圧位置に対応する押圧スイッチ素子に近接しない他方の位置規制爪が、操作体のフランジ部と当接して、押圧位置に対応する押圧スイッチ素子に対して周方向に隣り合う2つの押圧スイッチ素子の作動子およびこれに当接するスイッチ突起部とともに操作体の傾斜の支点を形成する。
好ましくは、本発明の多方向スイッチ装置は、傾斜押圧面の最前端に対応する最前端押圧位置と、最前端押圧位置に対して周方向に隣り合う隣接押圧位置と、が形成される操作体の傾斜押圧面において、最前端押圧位置と隣接押圧位置の中間位置を押圧された場合に、選択規制突起が操作体のフランジ部と当接して操作体の傾斜の支点を形成し、操作体のスイッチ突起部が、最前端押圧位置に対応する押圧スイッチ素子と、隣接押圧位置に対応する押圧スイッチ素子との、いずれか一方を選択的に押圧する。
好ましくは、本発明の多方向スイッチ装置は、複数の押圧スイッチ素子が、操作体の中央貫通孔の中心点に対して上方向、下方向、左方向、および、右方向の4方向に設けられ、位置規制爪が、操作体の中央貫通孔の中心点に対して左斜上方向および右斜下方向の2方向に設けられ、操作体の押圧面が上下方向に傾斜して形成され、押圧面の下方向部が押圧面の最前端を形成し、押圧面の上方向部が押圧面の最後端を形成する。
好ましくは、本発明の複合スイッチ装置は、樹脂製のパネル部材が基体から一体にヒンジを介して延設される複数の可動ボタンを有し、さらに、複数の可動ボタンに対応する複数の押圧スイッチ素子を有する、上記の多方向スイッチ装置を含む複合スイッチ装置であって、複数の可動ボタンのうちの少なくとも1つの可動ボタンが、操作体の円筒状胴部の中央貫通孔から突出するキートップと、可動ボタンの背面側に延設されて押圧スイッチ素子の作動子に当接するスイッチ突起部と、を有し、操作体と可動ボタンとが、離隔している。
また、本発明の映像音響機器は、いずれか上記の多方向スイッチ装置、もしくは、複合スイッチ装置を含む。
以下、本発明の作用について説明する。
本発明の多方向スイッチ装置は、樹脂製のパネル部材と、パネル部材の背面側に固定される基板と、基板上に配設される複数の押圧スイッチ素子と、複数の押圧スイッチ素子を選択的に押圧する操作体と、を備える。このうち、パネル部材の基体は、基板を固定する基板固定部と、操作体を所定の位置に規制する位置規制爪と、操作体を傾斜させて操作体が押圧する押圧スイッチ素子を選択させる選択規制突起と、を有し、押圧スイッチ素子は、基板に固定する固定部と、接点を形成し弾性を有して移動する作動子と、を有する。多方向スイッチ装置を操作する操作者は、操作体の所定の押圧位置を押圧することにより、複数の押圧スイッチ素子のうちの任意の押圧スイッチ素子の接点をオン/オフし、映像音響機器を操作することができる。
また、操作体は、中央部に中央貫通孔を有する円筒状胴部と、円筒状胴部の前面に一の方向に傾斜して形成される傾斜押圧面と、円筒状胴部の背面側から延接されて位置規制爪ならびに選択規制突起に当接するフランジ部と、フランジ部の背面側に延設されて複数の押圧スイッチ素子の作動子に当接する複数のスイッチ突起部と、を有する。そして、複数の押圧スイッチ素子は、操作体のスイッチ突起部の背面側であって、円筒状胴部の中央貫通孔の中心点に対して90度間隔で4方向に設けられ、かつ、傾斜押圧面の最前端と最後端に対応する2方向を少なくとも含む。好ましくは、複数の押圧スイッチ素子は、操作体の中央貫通孔の中心点に対して上方向、下方向、左方向、および、右方向の4方向に設けられ、操作体の押圧面が上下方向に傾斜して形成され、押圧面の下方向部が押圧面の最前端を形成し、押圧面の上方向部が押圧面の最後端を形成する。したがって、操作体(カーソルツマミ)の中央部に中央貫通孔を設け、押圧面を傾斜させるような、意匠性を考慮した多方向スイッチ装置が実現される。
パネル部材の基体から延接される位置規制爪は、フランジ部の外周側であって、周方向に隣り合う押圧スイッチ素子の中間であり、かつ、円筒状胴部の中央貫通孔の中心点に対して180度間隔で2方向に設けられて、フランジ部の規制溝に係合し、選択規制突起が、操作体の押圧面およびフランジ部の背面側であって、傾斜押圧面の最前端に対応する押圧スイッチ素子の両側にそれぞれ、少なくとも2カ所設けられている。また、好ましくは、位置規制爪は、操作体の中央貫通孔の中心点に対して左斜上方向および右斜下方向の2方向に設けられ、太くなった爪状の先端部がフランジ部の前面側へ張り出し、操作体が前面側へ移動するのを規制する。
ここで、複数の押圧スイッチ素子に対応する押圧位置が形成される操作体の傾斜押圧面において、その一つの押圧位置を押圧された場合に、押圧位置に対応する押圧スイッチ素子に近接する一方の位置規制爪が、操作体のフランジ部と当接して、操作体が押圧により移動する方向を規制し、押圧位置に対応する押圧スイッチ素子に近接しない一方の位置規制爪が、操作体のフランジ部と当接して、押圧位置に対応する押圧スイッチ素子に対して周方向に隣り合う2つの押圧スイッチ素子の作動子およびこれに当接するスイッチ突起部とともに操作体の傾斜の支点を形成する。したがって、これらの位置規制爪が操作体を可動的に位置規制するので、操作体の支持固定に所定の面積を必要とするヒンジを採用しなくてもよく、操作体が中央部に貫通孔を有し、操作体の傾斜の支点となる中心軸を操作体の中心に設けることができない場合であっても、多方向スイッチ装置を小型化することができる。
この多方向スイッチ装置では、操作体(カーソルツマミ)に傾斜押圧面が形成されており、操作者が操作して押圧する押圧位置として、傾斜押圧面の最前端に対応する最前端押圧位置と、最前端押圧位置に対して周方向に隣り合う隣接押圧位置と、が形成され、これらの押圧位置に対応した押圧スイッチ素子が配置される。円筒状胴部の前面に一の方向に傾斜して形成される傾斜押圧面とは、円筒状胴部を貫通する中心軸に対して垂直ではない平面によって円筒状胴部を切断した場合に形成される面であり、傾斜押圧面が凹凸を有する場合を含み、前面パネルが傾斜しているときには、これに沿った形状になる場合がある。ただし、最前端押圧位置と隣接押圧位置の中間位置を押圧された場合には、選択規制突起が操作体のフランジ部と当接して操作体の傾斜の支点を形成し、操作体のスイッチ突起部が、最前端押圧位置に対応する押圧スイッチ素子と、隣接押圧位置に対応する押圧スイッチ素子との、いずれか一方を選択的に押圧する。したがって、傾斜押圧面が形成された操作体を備え、意図しない押圧位置に対応する押圧スイッチ素子が押されやすい多方向スイッチ装置であっても、複数の押圧スイッチ素子の同時押しをすることがなく、映像音響機器の意図しない動作を防ぐことができる。
また、好ましくは、本発明の複合スイッチ装置は、上記の多方向スイッチ装置を含み、樹脂製のパネル部材が基体から一体にヒンジを介して延設される複数の可動ボタンを有し、さらに、複数の可動ボタンに対応する複数の押圧スイッチ素子を有する。複数の可動ボタンのうちの少なくとも1つの可動ボタンが、操作体の円筒状胴部の中央貫通孔から突出するキートップと、可動ボタンの背面側に延設されて押圧スイッチ素子の作動子に当接するスイッチ突起部と、を有し、操作体と可動ボタンとが、離隔している。したがって、多方向スイッチ装置の中央にさらに可動ボタンを設ける複合スイッチ装置を構成する場合にも、全体を小型にすることができる。
本発明の多方向スイッチ装置およびこれを用いた映像音響機器は、操作体が中央部に貫通孔を有し、操作体の押圧面が傾斜している場合であっても、高い信頼性を有するとともに、操作違和感がなく、他のスイッチ装置と組み合わせて複合スイッチ装置を構成する場合にも、全体が小型の多方向スイッチ装置とすることができる。
図1は、本発明の好ましい実施形態による映像音響機器1について説明する斜視図である。例えば、映像音響機器1は、直方体状の筐体を有する増幅器付ディスク再生装置であり、その前面側に外観視される前面パネル2と、操作表示部3と、ディスクトレイ4と、回転操作ノブ5と、複数のスイッチ6等と、さらに、複合スイッチ装置100を備え、これらは、樹脂製のパネル部材10を介して取り付けられている。複合スイッチ装置100は、映像音響機器1の機能もしくはパラメータを選択し、また、決定(ENTER)を入力する複合スイッチであり、映像音響機器1を操作するユーザーは、複合スイッチ装置100のいずれかのキートップを手の指で押圧して、パネル部材10の裏側に設けられているタクトスイッチをオンにすることで、映像音響機器1のマイコン(図示しない)にユーザーが意図した動作を実行させる。
前面パネル2は、アルミ合金を押出成形して形成されている。前面パネル2は、映像音響機器のフロントパネルを形成するとともに、その背面側に配置された複合スイッチ装置100を含む内部構成部品を美観のために直接視できないように、その背面に隠す。前面パネル2には、他の部品を取り付け、内部の部品と連結するための貫通孔が設けられる。複合スイッチ装置100は、映像音響機器1を操作しやすいように前面パネル2の下部側に設けられており、前面パネル2の下部側には下端側が前に突出するような傾斜面が形成されている。なお、前面パネル2は、他の金属であってもよく、樹脂による成形品であってもよい。また、映像音響機器1は、金属製もしくは樹脂製のカバー7により後面側を覆われている。なお、本実施例を説明する図において、映像音響機器および複合スイッチ装置100の説明に不要な部分内部構造は、省略されている。
図2は、図1における映像音響機器1の複合スイッチ装置100を含む点線部を、前面視されるべき前面パネル2を除去して拡大した部分拡大図である。また、図3は、複合スイッチ装置100を構成する各部品、つまり、樹脂製のパネル部材10と、パネル部材10の背面側に固定される基板20と、カーソルツマミ30と、をZ軸方向に展開して表した斜視図である。また、図4は、操作体としてのカーソルツマミ30を説明する図であり、図4(a)は正面図であり、図4(b)は側面図である。
複合スイッチ装置100は、後述するカーソルツマミ30を右、上、左、下のいずれかの方向に押圧して機能もしくはパラメータを選択する多方向スイッチ装置と、多方向スイッチ装置の周囲にキートップ50他を配置する押圧スイッチ装置と、および、多方向スイッチ装置の内部にキートップ60を配置する押圧スイッチ装置と、から形成される。具体的には、多方向スイッチ装置のカーソルツマミ30の周囲には、その左斜上にキートップ50を含む押圧スイッチ装置が近接して形成され、同様に、左斜下と、右斜上と、右斜下にも押圧スイッチ装置が近接して形成されている。また、カーソルツマミ30の中央貫通孔31から、ENTERキーを形成するキートップ60が突出するように、押圧スイッチ装置が形成されている。
パネル部材10は、ABS樹脂により成形される部材であり、前面パネル2と連結して前面パネルを形成する基体11を有し、複合スイッチ装置100を構成する各部が一体に樹脂で形成されている。具体的には、樹脂製のパネル部材10の基体11は、その背面側に基板20を固定する(図示しない)基板固定部12と、カーソルツマミ30を所定の位置に規制する位置規制爪13および14と、選択規制突起15および16と、を有している。また、樹脂製のパネル部材10は、基体11から一体にヒンジを介して延設される複数の可動ボタンと、キートップならびにスイッチ突起部を備えている。なお、パネル部材10は、他の樹脂であってもよい。パネル部材10は、前後に分割される凹面型/凸面型からなる金型で成形できることがコスト上も好ましいので、基体11と、ヒンジ、可動ボタンの配置および構成には、工夫を要する。
例えば、カーソルツマミ30の左斜上に配置される可動ボタン51は、前面側にキートップ50が突出し、パネル部材10の基体11からヒンジ52を介して可動的に形成されており、可動ボタン51の背面側にはスイッチ突起部53が延設されている。同様に、可動ボタン61は、カーソルツマミ30の中心から突出するキートップ60を有し、ヒンジ62を介して可動的に形成されており、可動ボタン61の背面側には、スイッチ突起部63が延設されている。また、基体11の可動ボタン61の周囲には、複数の貫通孔が形成されている。
なお、後述する図面において図示するパネル部材10の基板固定部12は、本実施例では、樹脂製のパネル部材10の基体11の背面側に延設されて、基板20の下端を係止する爪状突起12aと、基板20をネジ止めするネジ孔を有するボス状突起12bであり、基板20をパネル部材10に固定する。
位置規制爪13および14は、樹脂製のパネル部材10の基体11の前面側に延設される太い爪状の先端部を有する角柱であり、カーソルツマミ30が配置される位置に対して、左斜上方向および右斜下方向の2方向に、すなわち、円筒状胴部32の中央貫通孔31の中心点Oに対して180度間隔で2方向に設けられる。位置規制爪13および14は、後述するカーソルツマミ30のフランジ部34の外周側に位置し、角柱部がフランジ部34の規制溝35もしくは36にそれぞれ係合する。したがって、位置規制爪13および14は、カーソルツマミ30をX−Y平面における所定の位置に規制し、そして、太くなった爪状の先端部がフランジ部34の前面側に張り出すので、Z軸方向の前方向への移動を規制する。
選択規制突起15および16は、基体11から前面側に短く突出した角柱状の突起であり、後述するように、カーソルツマミ30のフランジ部34に当接して、カーソルツマミ30を傾斜させてカーソルツマミ30が押圧するタクトスイッチ21、23、もしくは、24のいずれかを選択させる。なお、選択規制突起の形状は、角柱状だけでなく、円筒形状などの他の形状の突起でもよい。
パネル部材10の背面側に固定される基板20は、回路を形成する導体を含み、複数のタクトスイッチ21〜26を、その表側に固定している。押圧スイッチ素子としてのタクトスイッチは、後述するように、基板20に固定する固定部と、接点を形成し弾性を有して移動する作動子と、を有する。これらのタクトスイッチは、固定部の端子が基板20の導体にハンダ付けされて固定される。なお、タクトスイッチ21〜24は、複合スイッチ装置100として組み立てられた場合に、カーソルツマミ30の円筒状胴部32の中央貫通孔31の中心点O、つまり、Z軸が通過する点Oに対して90度間隔で4方向に設けられ、具体的には、後述するカーソルツマミ30の押圧位置に対応してZ軸を基準にしてそれぞれ右、上、左、下の方向に配置される。また、タクトスイッチ25は、キートップ50の押圧位置に対応してZ軸を基準にして略左斜上方向に配置され、タクトスイッチ26は、キートップ60の押圧位置に対応してZ軸の近傍位置に配置される。
カーソルツマミ30は、中央部に中央貫通孔31を有する円筒状胴部32と、円筒状胴部32の前面に一の方向に傾斜して形成される傾斜押圧面33と、円筒状胴部32の背面側から延設されるフランジ部34と、フランジ部34の背面側に延設されてタクトスイッチ21〜24の作動子に当接する4つのスイッチ突起部41〜44と、を有し、これらが樹脂で一体に成形されている。スイッチ突起部41〜44は長いリブ状の突起であり、複合スイッチ装置100として組み立てられた場合には、パネル部材10の基体11の貫通孔を貫通してパネル部材10の背面側に位置するタクトスイッチ21〜24の作動子に当接する。
ここで、傾斜押圧面33は、その上下方向に傾斜面を形成しており、傾斜押圧面33の最前端が下方向に、傾斜押圧面33の最後端が上方向に配置されている。つまり、傾斜押圧面33には、Z軸が通過する点Oを基準にしてそれぞれ右、上、左、下の方向に、押圧位置33R、33U、33L、および、33Dが規定され、傾斜押圧面33の最前端に対応する最前端押圧位置は、押圧位置33Dである。複合スイッチ装置100のカーソルツマミ30の押圧位置33R、33U、33L、および、33Dのいずれかをユーザーが押圧すると、カーソルツマミ30は傾斜しながら背面側へ移動し、それぞれ対応するスイッチ突起部41〜44が、タクトスイッチ21〜24の作動子を選択的に押圧する。このように、カーソルツマミ30は、意匠性を考慮して押圧面33を上下方向で傾斜させる多方向スイッチ装置を形成することができる。また、カーソルツマミ30は、中央貫通孔31が形成された円筒状胴部32を有するので、中央貫通孔31からキートップ60が突出するように配置できるので、意匠性を考慮した複合スイッチ装置100を形成することができる。
カーソルツマミ30のフランジ部34は、略六角形状に円筒状胴部32から周囲(X−Y平面)方向に張り出しており、左斜上方向および右斜下方向の2方向(W−W’方向)に形成される規制溝35および36が、パネル部材10の基体11から延設される位置規制爪13および14とそれぞれ係合する。また、フランジ部34は、後述するように、傾斜押圧面33の特定位置を押圧された場合に、背面側でパネル部材10の選択規制突起15および16に当接する。なお、図4(a)では、位置規制爪13および14と、選択規制突起15および16とが、カーソルツマミ30のフランジ部34と相対する位置を、それぞれ点線で記載している。また、フランジ部34から前面側に突出する突起37は、(図示しない)前面パネル2に当接して、カーソルツマミ30が前面側へ移動してその関連部分が破壊するのを防止する。
図5および図6は、カーソルツマミ30がユーザーにより押圧されない場合において、複合スイッチ装置100の動作を説明する部分断面図であり、図5は図4に示す直線Y−Y’における断面図であり、図6は図4に示す直線W−W’における断面図である。つまり、図5および図6は、静止時の複合スイッチ装置100の構成を説明する断面図であり、図5は真横からの断面を、図6はカーソルツマミ30を所定の位置に規制する位置規制爪13および14を横断する断面を、それぞれあらわしている。なお、図5および図6では、ここでの説明に不用な部分、例えば、他のキートップ50、可動スイッチ51、等は、省略している。
カーソルツマミ30がユーザーにより押圧されない場合には、複合スイッチ装置100のカーソルツマミ30は、フランジ部34の規制溝35および36が位置規制爪13および14に当接することで、左右方向(X軸)、上下方向(Y軸)、前後方向(Z軸)に位置規制される。複合スイッチ装置100では、フランジ部34の規制溝35および36と、位置規制爪13および14との間には、左右方向(X軸)および上下方向(Y軸)に所定の隙間(あそび)が形成されるものの、前後方向(Z軸)では、スイッチ突起部41〜44の長さが厳密に設定されて、カーソルツマミ30のスイッチ突起部41〜44がそれぞれタクトスイッチ21〜24の作動子21a〜24aに当接する。
したがって、図6に示すように、静止時の複合スイッチ装置100では、カーソルツマミ30のフランジ部34の規制溝35および36は、タクトスイッチ21〜24の作動子21a〜24aが有する弾性力によって前方側への移動を規制する位置規制爪13および14に圧着させられる。その結果、図5及び図6に示すように、カーソルツマミ30は、傾かない状態でパネル部材10の基体11の位置規制爪13および14に圧着されるので、カーソルツマミ30のスイッチ突起部41〜44は、タクトスイッチ21〜24のいずれの作動子21a〜24aを強く押圧せず、いずれのタクトスイッチの接点もオンにならない。
また、図5および図6は、複合スイッチ装置100を構成するキートップ60および可動ボタン61にも、ユーザーの押圧する力が加わっていない場合を示している。ヒンジ62を介してパネル部材10の基体11から延設される可動ボタン61は、その背面側にスイッチ突起部63を備え、スイッチ突起部63は、タクトスイッチ26の作動子26aに当接しているが、キートップ60にユーザーの押圧力が加わらない限り、作動子26aが有する弾性力が可動ボタン61に作用して、タクトスイッチ26の接点はオンにならない。ここで、キートップ60は、カーソルツマミ30が有する中央貫通孔31を貫通して突出するように配置されているものの、キートップ60および可動ボタン61は、カーソルツマミ30に対して常に離隔している。
図7および図8は、カーソルツマミ30がユーザーにより押圧されて、例えば、傾斜押圧面33の下方向に位置する押圧位置33Dに押圧力Fが加えられた場合において、複合スイッチ装置100の動作を説明する部分断面図である。図7は図4に示す直線Y−Y’における断面図であり、図8は図4に示す直線W−W’における断面図である。つまり、図7および図8は、傾斜押圧面33のある押圧位置が押圧された時の複合スイッチ装置100の構成を説明する断面図であり、図7は図5と同様に真横からの断面を、図8は図6と同様にカーソルツマミ30を所定の位置に規制する位置規制爪13および14を横断する断面を、それぞれあらわしている。なお、図7および図8でも、ここでの説明に不用な部分、例えば、他のキートップ50、可動スイッチ51、等は、省略している。
傾斜押圧面33の下方向に位置する押圧位置33Dに押圧力Fが加えられると、図8に示すように、押圧位置33Dに対応するタクトスイッチ24に近接する位置規制爪14、つまり、中心点Oから見て右斜下方向に位置する位置規制爪14は、カーソルツマミ30のフランジ部34の規制溝36と当接して、カーソルツマミ30が押圧によりZ方向に移動するように規制する。一方で、傾斜押圧面33の下方向に位置する押圧位置33Dに押圧力Fが加えられると、図8に示すように、押圧位置33Dに対応するタクトスイッチ24に近接しない他方の位置規制爪13、つまり、中心点Oから見て左斜上方向に位置する位置規制爪13は、カーソルツマミ30のフランジ部34の規制溝35と当接して、カーソルツマミ30を下方向に傾斜させる支点を形成する。また、下方向に位置する押圧位置33Dに押圧力Fが加えられると、図7に示すように、押圧位置33Dに対応するタクトスイッチ24に対して周方向に隣り合う2つのタクトスイッチ21および23、つまり、カーソルツマミ30の中心に近いX−X’平面に位置するタクトスイッチ21および23は、これらのそれぞれの作動子21aおよび23aに当接するスイッチ突起部41および43とともに、カーソルツマミ30を下方向に傾斜させる支点を形成する。
その結果、下向きの押圧位置33Dに加えられる押圧力Fにより、カーソルツマミ30は下方向に傾斜しながら背面側に移動して、押圧位置33Dに対応するタクトスイッチ24の作動子24aをスイッチ突起部44が押圧して、タクトスイッチ24の接点をオンにする。したがって、ユーザーは、傾斜押圧面33の押圧位置33Dを押圧して、対応するタクトスイッチ24をオンにして、複合スイッチ装置100を含む映像音響機器1に所望の動作をさせることができる。
また、図示しないが、例えば、傾斜押圧面33の左方向に位置する押圧位置33Lに押圧力が加えられると、押圧位置33Lに対応するタクトスイッチ23に近接する位置規制爪13、つまり、中心点Oから見て左斜上方向に位置する位置規制爪13は、カーソルツマミ30のフランジ部34の規制溝35と当接して、カーソルツマミ30が押圧によりZ方向に移動するように規制する。一方で、傾斜押圧面33の左方向に位置する押圧位置33Lに押圧力が加えられると、押圧位置33Lに対応するタクトスイッチ23に近接しない他方の位置規制爪14、つまり、中心点Oから見て右斜下方向に位置する位置規制爪14は、カーソルツマミ30のフランジ部34の規制溝36と当接して、カーソルツマミ30を左方向に傾斜させる支点を形成する。また、左方向に位置する押圧位置33Lに押圧力Fが加えられると、押圧位置33Lに対応するタクトスイッチ23に対して周方向に隣り合う2つのタクトスイッチ22および24、つまり、カーソルツマミ30の中心に近いY−Y’平面に位置するタクトスイッチ22および24は、これらのそれぞれの作動子22aおよび24aに当接するスイッチ突起部42および44とともに、カーソルツマミ30を左方向に傾斜させる支点を形成する。
その結果、左向きの押圧位置33Lに加えられる押圧力Fにより、カーソルツマミ30は左方向に傾斜しながら背面側に移動して、押圧位置33Lに対応するタクトスイッチ23の作動子23aをスイッチ突起部43が押圧して、タクトスイッチ23の接点をオンにする。したがって、ユーザーは、傾斜押圧面33の押圧位置33Lを押圧して、対応するタクトスイッチ23をオンにして、複合スイッチ装置100を含む映像音響機器1に所望の動作をさせることができる。
なお、傾斜押圧面33の上方向に位置する押圧位置33Uに押圧力が加えられる場合についても、傾斜押圧面33の右方向に位置する押圧位置33Rに押圧力が加えられる場合についても、同様であるので説明を省略する。このように、複合スイッチ装置100では、これらの位置規制爪13および14がカーソルツマミ30を可動的に位置規制するので、カーソルツマミ30の支持固定に所定の面積を必要とするヒンジを採用しなくてもよく、多方向スイッチ装置を小型化することができる。また、カーソルツマミ30の支持固定にヒンジを使用しないので、他のキートップ50を有する可動ボタン51を隣接して設けることができ、複合スイッチ装置100としても、小型化できる。
この複合スイッチ装置100では、カーソルツマミ30がその前面に傾斜押圧面33を有するので、ユーザーが前記の所定の押圧位置33R、33U、33L、および、33D以外の傾斜押圧面33を押圧した場合は、たとえZ軸に平行な押圧力を加えた場合であっても、カーソルツマミ30が意図しない方向に傾斜して押し込まれやすい。特に、傾斜押圧面33の最前端に対応する最前端押圧位置である下方向の押圧位置33Dと、これに周方向に隣り合う隣接押圧位置である押圧位置33Rおよび33Lとの中間位置を、例えば、図4(a)における位置33Vをユーザーが押圧するような場合には、ユーザーは下向きの押圧位置33Dに対応するタクトスイッチ24をオンにしたいと意図している場合にもかかわらず、左向きの押圧位置33Lに対応するタクトスイッチ23をも同時にオンにするように、カーソルツマミ30は左方向にも傾斜して押し込まれることになる。
ただし、この複合スイッチ装置100では、傾斜押圧面33の最前端押圧位置33Dに隣接する中間位置、例えば、押圧位置33Dおよび33Lの中間位置である位置33Vを押圧した場合は、カーソルツマミ30が背面側に押し込まれて移動し、樹脂製のパネル部材10の基体11に形成された選択規制突起15が、カーソルツマミ30のフランジ部34と当接してカーソルツマミ30を傾斜させる支点を形成する。カーソルツマミ30は、選択規制突起15を支点として、傾斜押圧面33が押圧される位置に応じて、下方向または左方向のいずれか一方に傾斜する。したがって、カーソルツマミ30のスイッチ突起部(43または44)が、下方向の最前端押圧位置33Dに対応するタクトスイッチ24と、左方向の隣接押圧位置に対応するタクトスイッチ23との、いずれか一方を選択的に押圧し、これらのタクトスイッチを同時押しすることがない。したがって、この複合スイッチ装置100では、ユーザーは、良好な操作感が得られる。
なお、傾斜押圧面33の最前端押圧位置33Dおよび33Rの中間位置を押圧した場合についても、同様に、樹脂製のパネル部材10の基体11に形成された選択規制突起16が、カーソルツマミ30のフランジ部34と当接してカーソルツマミ30を傾斜させる支点を形成する。したがって、カーソルツマミ30のスイッチ突起部(41または44)が、下方向の最前端押圧位置33Dに対応するタクトスイッチ24と、右方向の隣接押圧位置に対応するタクトスイッチ21との、いずれか一方を選択的に押圧し、これらのタクトスイッチを同時押しすることがない。
また、傾斜押圧面33の最後端に対応する最後端押圧位置である上方向の押圧位置33Uと、これに周方向に隣り合う隣接押圧位置である押圧位置33Rおよび33Lとの中間位置をユーザーが押圧するような場合に対応して、カーソルツマミ30のフランジ部34と当接してカーソルツマミ30を傾斜させる支点を形成し、上方向の最前端押圧位置33Uに対応するタクトスイッチ22と、周方向の隣接押圧位置に対応するタクトスイッチ21および23とのいずれかを選択的に押圧させる選択規制突起を、さらに設けてもよい。ただし、傾斜押圧面33の最後端の押圧位置33Uに隣接する範囲では、傾斜押圧面33の方向および押圧力が加わる方向の関係により、カーソルツマミ30が左方向若しくは右方向に著しく傾いて背面側に押し込まれて移動しないので、隣接押圧位置に対応するタクトスイッチ21および23が同時押しされることも少ない。したがって、本実施例のように、傾斜押圧面33の最後端に対応する押圧位置33Uに対応して、さらなる選択規制突起を設けなくてもよい。
また、図7および図8は、図5および図6と同様に、複合スイッチ装置100を構成するキートップ60および可動ボタン61に、ユーザーの押圧する力が加わっていない場合を示している。図示しないが、キートップ60および可動ボタン61にユーザーの押圧する力が加わる場合には、ヒンジ62が弾性的に変形して、可動ボタン61が後方へ傾斜して移動し、可動ボタン61の背面側に延設されるスイッチ突起部63がタクトスイッチ26の作動子26aを押圧し、タクトスイッチ26の接点をオンにする。キートップ60は、カーソルツマミ30が有する中央貫通孔31を貫通して突出するように配置されているものの、キートップ60および可動ボタン61は、カーソルツマミ30に対して常に離隔しているので、カーソルツマミ30を操作してもENTERキーを形成するキートップ60を有する押圧スイッチ装置に影響しない。したがって、傾斜押圧面33が形成されたカーソルツマミ30を備えていても、意図しない押圧位置に対応するタクトスイッチが押されることがないので、映像音響機器の意図しない動作を防ぐことができ、ユーザーは、映像音響機器を操作しやすくなる。
なお、本発明は上記実施例に限定されない。上記の複合スイッチ装置100では、傾斜押圧面33には、Z軸が通過する点Oを基準にしてそれぞれ右、上、左、下に、押圧位置33R、33U、33L、および、33Dを規定し、これらに対応する位置にタクトスイッチ41、42、43および44を配置していたが、傾斜押圧面33の最前端に対応する最前端押圧位置と、傾斜押圧面33の最後端に対応する最前後押圧位置と、に対応するタクトスイッチを配置していれば、例えば、図4(a)に示されるカーソルツマミ30の押圧位置を、点Oを中心にして45度回転させて、右斜上方向と、左斜上方向と、左斜下方向と、右斜下方向と、に配置し、これらに対応する位置および方向にタクトスイッチ41、42、43および44を配置してもよい。
また、カーソルツマミ30の傾斜押圧面33に規定する押圧位置は、Z軸が通過する点Oを基準にしてそれぞれ右、上、左、下に、押圧位置33R、33U、33L、および、33Dの90度間隔で4方向に設けられているが、これらの中間にさらに押圧位置を規定し、例えば、45度間隔で8方向に押圧位置を設けてもよい。その場合は、これらの押圧位置に対応するタクトスイッチをそれぞれ設け、パネル部材10の基体11に形成される位置規制爪が、これらのタクトスイッチうちで周方向に隣り合うタクトスイッチの中間であり、かつ、カーソルツマミ30の中心点Oに対して180度間隔で2方向に設けられていればよい。
また、複合スイッチ装置100は、増幅器付ディスク再生装置、または、AVレシーバー等の映像音響機器の機能を選択・決定するスイッチに限られない。スイッチ素子は、タクトスイッチ以外であっても、オン/オフのポジションを有するスイッチ素子を含んで構成されるスイッチ素子であってもよい。