JP2008196021A - 高張力鋼板および高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

高張力鋼板および高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】高い深絞り性を実現するためにはTiおよび/またはNbを含有させることによってIF鋼とする必要があり、一方、高い深絞り性を維持したまま高張力化するためにPを含有させることが有効であるが、そのようにした場合、二次加工脆性が大きく劣化するという問題があり、これを解決する。
【解決手段】質量%で、C:0.0050%以下、Si:0.1%以下、Mn:3.0%以下、P:0.15%以下、S:0.015%以下、sol.Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下およびNd:0.020〜0.33%を含有し、さらにTi:0.10%以下および/またはNb:0.050%以下を下記(1)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする高張力鋼板。
Ti/48+Nb/93>C/12 (1)
ここで、式中の元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表し、Ti=Ti−48(N/14+S/32)であり、Ti<0の場合はTi=0とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、プレス加工等により様々な形状に成形されて用いられる高張力鋼板および高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。本発明は、特に自動車のフェンダー、ドアなどの外板パネルやオイルパンなどの深絞り部品のように非常に高い成形性が要求される部品の素材として好適な高張力鋼板および高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。
鋼中に侵入型で固溶するCやNをTiやNbで炭窒化物として固定し鋼中に固溶していない状態を実現したいわゆるIF鋼は、製品特性に及ぼす製造条件の変動の影響が小さく、深絞り性の高い鋼板を安定して製造することが可能であることから大量に生産されている。
一方、近年、自動車車体は環境の観点から軽量化が進められており、これに伴い、自動車車体に供される鋼板の高張力化が進められている。このような背景の中で、IF鋼にも高張力化が要求されており、IF鋼の高張力化を達成するための手法として、MnやPによる固溶強化が有効であることが知られている。
しかし、IF鋼においてMnは深絞り性の低下を招くためMnのみによる高張力化には限界がある。一方、Pは深絞り性を向上させるとともに高張力化が可能であるのでIF鋼の高張力化に好んで用いられるが、粒界に偏析して耐二次加工脆性の劣化を引き起こす。Pによる高張力化に伴う耐二次加工脆性の劣化を抑制するための手法としてBを含有させることが現在行われている。しかし、Bは深絞り性の低下を招くという問題がある。また、鋼板の更なる高張力化のニーズに対してはBを含有させることのみで耐二次加工脆性を確保することは容易ではない。
本発明は、上記現状の問題点に鑑みてなされたものであり、耐二次加工脆性および深絞り性に優れた高張力鋼板を提供することを課題とする。
具体的には、本発明は、高い深絞り性を実現するためにはTiおよび/またはNbを含有させることによってIF鋼とする必要があり、一方、高い深絞り性を維持したまま高張力化するためにPを含有させることが有効であるが、そのようにした場合、二次加工脆性が大きく劣化するという問題があり、本発明はそのような問題を解決しようとするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下の新たな知見を得た。
(i)Tiおよび/またはNbを含有させて高い深絞り性を実現するとともに、MnやPを含有させることで高張力化したIF鋼において、高張力化に伴う耐二次加工脆性の劣化を抑制するには、所定量のNdを含有させることが極めて有効である。
(ii)さらに耐二次加工脆性を向上させるために必要に応じてBを含有させることができる。
本発明は上記新知見に基づくものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.0050%以下、Si:0.1%以下、Mn:3.0%以下、P:0.15%以下、S:0.015%以下、sol.Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下およびNd:0.020〜0.33%を含有し、さらにTi:0.10%以下および/またはNb:0.050%以下を下記(1)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする高張力鋼板。
Ti/48+Nb/93>C/12 (1)
ここで、式中の元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表し、Ti=Ti−48(N/14+S/32)であり、Ti<0の場合はTi=0とする。
[2]前記Feの一部に代えて、B:0.0001〜0.0030質量%を含有することを特徴とする上記[1]に記載の高張力鋼板。
[3]上記[1]または[2]に記載の高張力鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき被膜を備えることを特徴とする高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明にかかる鋼板は、深絞り性にすぐれた高張力鋼板であって、耐二次加工脆性にも優れた材料であるため、自動車用のフェンダー、ドアなどの外板パネルやオイルパンなどの深絞り部品などの用途に特に適する材料である。また、本発明にかかる鋼板には、各種表面処理を施すことが可能であるが、特に合金化溶融亜鉛めっきを施す場合には、Pによる合金化速度の遅延が抑制されて合金化処理性が向上するため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板用としても優れた効果が発揮される。
本発明において、鋼板の化学組成を上述のように限定した理由をその作用と共に説明する。なお、本明細書では鋼板の化学組成を示す「%」は、「質量%」である。
炭素 <C>
Cは、鋼中に不可避的に含有される不純物元素であり、鋼板の成形性に悪影響を及ぼす。このようなCの悪影響を回避する手段としてTiおよび/またはNbでCを固定することが有効であるが、C含有量の増加に伴いCを固定するために必要なTiおよび/またはNbの含有量も増加して製造コストの上昇を招く。したがってC含有量は少ないほど好ましく、C含有量は0.0050%以下とする。C含有量は少なければ少ないほど好ましいので下限は特に限定する必要はないが、過剰なC含有量の低減は精錬時の脱炭において著しい製造コストの上昇を招く。このような観点から、C含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
ケイ素 <Si>
Siは、鋼中に不可避的に含有される不純物元素であり、表面濃化を起こし酸洗不良、化成処理性の劣化、不めっきの原因となることから許容限度である0.1%をSi含有量の上限と定めた。ただし、化成処理や合金化溶融亜鉛めっきを施す鋼板についてはSi含有量を0.05%以下とすることが好ましい。
マンガン<Mn>
Mnは、固溶強化により鋼板を高張力化する作用を有する。しかし、多量に含有させると、深絞り性の低下を招いたり表面濃化を起こしたりして、酸洗不良や不めっきの原因となる。したがって、Mn含有量を3.0%以下とする。好ましくは1.5%以下である。Mn含有量の下限は特に限定する必要はないが、溶鉄には通常0.01〜0.05%程度のMnが含まれており、それより低Mn化することはコスト上昇を招くため、0.01%以上とすることが好ましく、0.05%以上とすることがさらに好ましい。
リン<P>
Pは、固溶強化により鋼板を高張力化する作用を有する。また、深絞り性を向上させる作用を有するので、Mnと同時に含有させることにより良好な深絞り性を維持したままでさらなる鋼板の高張力化を可能にする。しかし、多量に含有させると耐二次加工脆性を大幅に劣化させる。また、鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっきを施す場合には合金化処理性を劣化させる。したがって、P含有量を0.15%以下とする。好ましくは0.08%以下である。
硫黄<S>
Sは、鋼中に不可避的に含有される不純物元素であるが、Tiと結合してTiSを生成するため、Cを固定するために必要なTi含有量を増加させる。また粒界に偏析して粒界の強度を下げるため、耐二次加工脆性の劣化を招く。したがって、S含有量を0.015%以下とする。好ましくは0.007%以下である。
酸可溶アルミニウム<sol.Al>
鋼の脱酸のためにAlを添加する。十分な脱酸を実現するためにはsol.Alの含有量を0.005%以上とする。一方、sol.Alの含有量が0.10%を超えると鋼が硬質化すると共に伸びが低下する。したがって、sol.Alの含有量を0.005〜0.10%とする。好ましくは、0.02〜0.08%である。
窒素<N>
Nは、鋼中に不可避的に含有される不純物元素であり、Tiと結合してTiNを生成するため、Cを固定するために必要なTi含有量を増加させる。したがって、N含有量を0.0050%以下とする。好ましくは、0.004%以下である。
チタン、ニオブ<Ti、Nb>
TiおよびNbは共に固溶Cを固定して深絞り性を向上させる作用を有する。ただしTiは鋼中で、C以外にもS、Nと結合するため、固溶Cを確実に固定するために、下記式(1)を満足するようにTiおよび/またはNbを含有させる必要がある
Ti/48+Nb/93>C/12 (1)
ここで、式中の元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表し、Ti=Ti−48(N/14+S/32)であり、Ti<0の場合はTi=0とする。
一方、Ti含有量を0.10%超とすると、FeTiPの析出を招き、強度低下の原因となる。また、Nb含有量を0.050%超とすると、再結晶温度の上昇を招き、深絞り性劣化の原因となる。したがって、Ti含有量は0.10%以下、Nb含有量は0.050%以下とする。Ti含有量は0.01%以上であることが好ましく、0.02〜0.08%かつTi/48>N/14とすることがさらに好ましい。また、Nb含有量は0.005%以上であることが好ましく、0.01〜0.03%とすることがさらに好ましい。
ネオジウム<Nd>
NdにはO、S、Pなどの粒界脆化元素の粒界偏析を抑制する作用があり、IF鋼における二次加工脆性は粒界脆化によって引き起こされることから、Ndには耐二次加工脆性を向上させる作用がある。また、鋼板に合金化溶融亜鉛めっきを施す際の合金化処理性は粒界にPが偏析することにより劣化することから、Ndには合金化処理性を向上させる作用もある。したがって、これらの作用による効果を得るためにNd含有量を0.020%以上とする。好ましくは0.05%以上である。一方、Nd含有量を0.33%超とすると熱間加工性が悪くなる。したがってNd含有量は、0.33%以下とする。好ましくは0.30%以下である。
ボロン<B>
Bは、耐二次加工脆性を向上させる作用を有するので、高強度化に伴いより高い耐二次加工脆性が求められた場合など、必要に応じて含有させることができる。含有させる場合、前記作用による効果を確実に得るためにB含有量を0.0001%以上とすることが好ましく、0.0003%以上とすることがさらに好ましい。一方、Bには深絞り性が劣化させる作用も有するため、B含有量は0.0030%以下とすることが好ましく、0.0015%以下とすることがさらに好ましい。
本発明にかかる鋼板には、各種表面処理を施すことが可能であり、例えば耐食性の向上を目的として溶融金属めっきや電気めっきを施すことができる。溶融金属めっきや電気めっきとしては周知のものを適用することができる。例えば、合金化溶融亜鉛めっき、溶融亜鉛系めっき、溶融Al系めっき、溶融Mnめっき、溶融Snめっき、電気亜鉛系合金めっき等である。本発明によれば、特に合金化溶融亜鉛めっきを施す際の合金化処理性が向上することから、合金化溶融亜鉛めっき鋼板として好適である。
本発明にかかる鋼板に溶融金属めっきや電気めっきを施す方法は常法で構わず、特に制限されない。
本発明の作用効果を実施例によってさらに具体的に説明する。
表1に示す化学組成の鋼を溶製し、そのスラブを1250℃で30分加熱した後、仕上げ温度920℃で熱間圧延した。熱間圧延直後に水スプレーにて50℃/sで冷却し、550℃で巻き取った。この熱間圧延鋼板の表面のスケールを除去した後、圧下率82%で冷間圧延を行い板厚1.0mmの冷延鋼板とした。昇温速度10℃/s、均熱850℃×1分、冷却速度−10℃/sの連続焼鈍相当の熱処理を施した後、0.2%の調質圧延を行い焼鈍鋼板とした。
Figure 2008196021
<機械的性質評価>
上記焼鈍板から圧延方向に対し0°、45°、90°のJIS5号試験片を採取して引張試験を行った。このときの平均r値をもって深絞り性を評価した。
また、耐二次加工脆性について評価するために、絞り比2.0で絞り抜いた直径50mmのコニカルカップを作成した。先端角度60度の円錐台状の金型に、種々の温度に冷却したコニカルカップを底面が上になるようにしてかぶせ、その上方1mの高さから質量5kgの錘体をコニカルカップの底面に落下させ、コニカルカップの側壁部分に脆性割れが発生する臨界温度を求め、これをDBTT(延性−脆性遷移温度)と定義し、耐二次加工脆性の指標とした。
<めっき性>
上記冷延鋼板について、縦型溶融めっき試験装置を用いて、水素還元雰囲気中で、均熱温度850℃×1分、低温保持処理温度520℃×1分の焼鈍処理を行い、465℃に冷却した後、Al濃度が0.13質量%の溶融亜鉛めっき浴(浴温465℃)中で1秒間めっきを行った。また、鋼JおよびKを除くめっき後の試験片に対して、500℃の塩浴中で種々の時間加熱する合金化処理を行った。得られた試験片のめっき層をインヒビター含有HClで溶解し、化学分析によりめっき層中のFeを定量した。めっき層中のFe濃度が8%となるまでに要する時間を合金化完了時間と定義し、めっき外観と併せて合金化処理性を評価した。
表2に引張試験結果、DBTTおよびめっき外観、合金化完了時間を示す。
Figure 2008196021
表1に示される結果より以下のことがわかる。すなわち、比較例においてはPの添加によってDBTTは上昇し、耐二次加工脆性は劣化するが、本発明例であるD、E、F、H、I、K鋼はDBTTが低く、耐二次加工脆性に優れている。
また、溶融めっきの合金化反応において、合金化完了時間が短く、Pによる合金化速度の遅延が低減されている。
なお、めっき外観においていずれも不めっきは見られなかった。
以上に説明した如く、この発明によれば、耐二次加工脆性に優れた深絞り用高張力鋼板および高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることが可能であり、自動車車体の軽量化、安全性、特に寒冷地での安全性の向上に大きく貢献できるなど、産業上有用な効果がもたらされる。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.0050%以下、Si:0.1%以下、Mn:3.0%以下、P:0.15%以下、S:0.015%以下、sol.Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下およびNd:0.020〜0.33%を含有し、さらにTi:0.10%以下および/またはNb:0.050%以下を下記(1)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする高張力鋼板。
    Ti/48+Nb/93>C/12 (1)
    ここで、式中の元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表し、Ti=Ti−48(N/14+S/32)であり、Ti<0の場合はTi=0とする。
  2. 前記Feの一部に代えて、B:0.0001〜0.0030質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の高張力鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の高張力鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき被膜を備えることを特徴とする高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS59136425A (ja) * 1983-01-24 1984-08-06 Sumitomo Metal Ind Ltd プレス成形用冷延鋼板の製造法

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