JP5720208B2 - 高強度冷延鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

高強度冷延鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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本発明は、高強度冷延鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関し,特に,従来と比較して高い伸びフランジ性と靭性を得ることができる高強度冷延鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
近年、自動車分野においては、衝突時に乗員を保護するような機能の確保、及び、燃費向上を目的とした軽量化を両立させるために、高強度鋼板が適用されている。特に、衝突安全性確保に関しては、その安全意識の高まりに加え、法規制の強化から、これまで低強度の鋼板しか用いられてこなかったような複雑形状を有する部品にまで、高強度鋼板を適用しようとするニーズがある。
一方で、材料の成形性は強度が上昇するのに伴って劣化する。このため、複雑形状を有する部材に高強度鋼板を適用するにあたっては、成形性と高強度の両方を満足する鋼板を製造する必要がある。一口に成形性といっても、自動車部材のような複雑形状を有する部材に適用するに当たっては、例えば、延性、張り出し成形性、曲げ性、穴拡げ性、伸びフランジ性等の異なる成形性を同時に具備することが求められる。
また,材料の強度が上昇すると靭性が低下するため,靱性の向上が求められる。延性や張り出し成形性は、加工硬化指数(n値)と相関があり、n値の高い鋼板は、成形性に優れていることが知られている。例えば、延性や張り出し成形性に優れる鋼板として、鋼板組織がフェライト及びマルテンサイトから成るDP(Dual Phase)鋼板や、鋼板組織中に残留オーステナイトを含むTRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼板がある。
また、曲げ性は、組織の均一性と相関があることが知られており、組織を均一化することで、曲げ性を向上可能であることが示されている(例えば、非特許文献1参照)。このため鋼板組織を析出強化したフェライト単相組織鋼とした鋼板(例えば、非特許文献2参照)や、フェライト及びマルテンサイトより成る複相組織鋼板でありながらも、組織を微細化することで均一性を高めたDP鋼板が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし,DP鋼板は、延性に富むフェライトを主相とし、硬質組織であるマルテンサイトを鋼板組織中に分散させることで、優れた延性を得ているため、穴拡げ加工のような大加工を伴う成形においては、変形能の異なる両組織の界面に微小なマイクロボイドが形成され、穴拡げ性が著しく劣化するという問題を有する。特に、引張最大強度590MPa以上のDP鋼板中に含まれるマルテンサイト体積率は比較的多く、フェライトとマルテンサイト界面も多く存在する。このため、界面に形成したマイクロボイドは容易に連結し、亀裂形成、破断へと至る。このことから、DP鋼板の穴拡げ性は劣位である(例えば、非特許文献3参照)。
また,鋼板組織が、フェライト及び残留オーステナイトより成るTRIP鋼板も同様に穴拡げ性は低い。これは、TRIP鋼板に含まれる残留オーステナイトは、加工を受けるとマルテンサイトへと変態するため,加工を受けた端面近傍はDP鋼板と類似の組織となるためである。
一方、穴拡げ性に優れる鋼板としては、鋼板組織を析出強化したフェライト単相組織とした鋼板や、ベイナイト単相組織とした鋼板が知られている(例えば、特許文献2〜4参照)。
しかし,鋼板組織をベイナイト単相組織とする冷延鋼板は、製造過程において、一旦、オーステナイト単相となる高温まで加熱しなければならず、生産性が悪い。また、ベイナイト組織は転位を多く含む組織であることから、加工性に乏しく、延性や張り出し性を必要とする部材に適用し難いという欠点を有している。
また,析出強化したフェライトの単相組織とした鋼板は、Ti、Nb、MoあるいはV等の炭化物による析出強化を利用して鋼板を高強度化すると共に、セメンタイト等の形成を抑制することで、880MPa以上の高強度と、優れた穴拡げ性の両立が可能なものの、冷延及び焼鈍工程を経る冷延鋼板では、その析出強化が活用し難いという欠点を有する。また、冷間圧延を伴う場合、NbやTiは、再結晶を大幅に遅延することが知られており、優れた延性確保のためには、高温焼鈍が必要となり生産性が悪い。
これら欠点を克服し、延性と穴拡げ性確保を図った鋼板として、例えば、特許文献5及び6に記載の鋼板が知られている。これらは、鋼板組織を、一旦、フェライトとマルテンサイトよりなる複合組織とし、その後、マルテンサイトを焼き戻し軟質化することで、組織強化により得られる強度-延性バランスの向上と穴拡げ性の向上を同時に得ようとするものである。
しかしながら、マルテンサイトの焼き戻しによる硬質組織の軟化により、穴拡げ性や伸びフランジ性の改善が図れたとしても、880MPa以上の高強度鋼板への適用を考えた場合、スポット溶接性が劣化するという課題を有していた。例えば、マルテンサイトを焼き戻すことで硬質組織の軟化が可能であり、穴拡げ性は向上する。しかしながら、同時に、強度低下も引き起こすことから、強度低下を補うためマルテンサイト体積率を増加させねばならず、そのために多量のC添加を行わねばならない。この結果、スポット等の溶接性が劣化する。また、溶融亜鉛めっき設備のように焼き入れと焼き戻しが同時に行えない設備では、一旦、フェライト及びマルテンサイト組織とした後、別途、熱処理をせねばならず生産性に劣る。
また,伸びフランジ性に優れる鋼板としては,フェライトやベイナイト等の微視組織を制御した鋼板が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
また,低温脆性評価に比較的近い特性として,例えば、特許文献8に記載の耐二次加工脆性の評価や、特許文献9に記載の成型後に重錘を落として割れの発生の有無を調べる評価が行われている。
特開2005−105367号公報 特開2003−321733号公報 特開2004−256906号公報 特開平11−279691号公報 特開昭63−293121号公報 特開昭57−137453号公報 特開2002−60898号公報 特開2004−211140号公報 特開2008−255441号公報
CAMP-ISIJ vol.5(1992),p1839 CAMP-ISIJ vol.13(2000),p411 CAMP-ISIJ vol.13(2000),p391
しかし,上記及びその他これまで開示された鋼板は,880MPa以上の引張最大強度、延性,穴拡げ性,曲げ性,伸びフランジ性,スポット溶接性を高いレベルでバランスさせることはできていなかった。
また,上記及びその他これまで開示された鋼板は,伸びフランジ性の評価試験として穴拡げ試験が使用されているが,この試験方法による評価ではその変形状態が必ずしも実際の伸びフランジ成形部の変形状態と一致しておらず,正確な伸びフランジ性の評価がなされていなかった。
更に,こうした成形性,溶接性を高いレベルでバランスさせつつ,低温脆性を考慮した材料開発は行われていない。脆性の評価は、温度とひずみ速度の影響が大きいため,この2つを厳密に制御した試験方法で評価する必要があるが,特許文献8に記載された試験法のひずみ速度は,脆性の評価に十分な速度となっていない.また,特許文献9は,試験前に加熱して焼き戻し処理を行い,マルテンサイトを焼き戻した後に脆性の評価を行っているため,焼き戻しのし易さを評価する試験となっており,鋼板本来の脆性とは異なった性能の評価方法となっている.
本発明は上記の現状に鑑みて,自動車部材として必要不可欠なスポット溶接性をはじめとする溶接性、880MPa以上の引張最大強度、延性,及び穴拡げ性,曲げ性,伸びフランジ性,スポット溶接性,低温脆性を具備する鋼板を提供することを目的とするものである。
本発明者らは,880MPa以上の引張最大強度を持つ高強度鋼板の延性,穴拡げ性,曲げ性,伸びフランジ性,スポット溶接性を高いレベルでバランスさせた上で,低温脆性を向上させる技術について鋭意研究を重ねた。その結果,結晶粒径4μm以下のポリゴナルフェライトを主相とし、結晶粒径3μm以下のベイナイトおよび/またはマルテンサイトを含む鋼板組織とすることで、C添加量を抑えたとしても、880MPa以上の引張最大強度を確保可能なことを見出した。また、本発明者らは,主相を微細なポリゴナルフェライトとすることで、引張変形、プレス成形、穴拡げ試験時の変形を均一化することが可能であり、成形性を大幅に向上させることが可能になることを見出した。更に、本発明者らは,Si,Crの添加量を制御することで、伸びフランジ性を大幅に向上させることが可能となり,Ti,B,Nの添加量を制御することで、低温脆性を大幅に向上させることが可能になることを見出し、本発明に至った.
すなわち、本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)質量%で,C:0.05〜0.15%,Si:0.3〜2.0%,Mn:2.0〜2.6%,Cr:0.3〜2.0%,P:0.03%以下,S:0.02%以下,Al:0.005〜0.1%,Ti:0.005〜0.1%,B:0.002超〜0.01%,N:0.005%以下,O:0.0005〜0.005%、Nb:0.01〜1.0%を含有し,且つ,N,Ti,Si,Crが下記(式1)(式2)を満足し,残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼であり、鋼板組織が結晶粒径4μm以下のポリゴナルフェライトを主相とし、結晶粒径3μm以下のベイナイトおよび/またはマルテンサイトを含み、ポリゴナルフェライトの体積率と、ベイナイトおよび/またはマルテンサイトの体積率との合計が97%以上であり、引張最大強度880MPa以上であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
3.6N<Ti・・・(式1)
1<Si+Cr・・・(式2)
(式1)において、N及びTiは各元素の含有量[質量%]であり、(式2)において、Si及びCrは各元素の含有量[質量%]である。
(2)さらに、鋼中に質量%で、Mo:0.01〜1.0%,Ni:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜1.0%から選ばれる1種又は2種以上を単独あるいは複合で含有することを特徴とする前記(1)に記載の高強度冷延鋼板。
(3)さらに、鋼中に質量%で、V:0.01〜0.1%含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高強度冷延鋼板。
(4)さらに、鋼中に質量%で、Ca、Mg、La、Ce、Y,REMから選ばれる1種または2種以上を合計で0.0001〜0.04%含有することを特徴とする前記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の高強度冷延鋼板。
(5)前記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の片面または両面にAl:0.1〜10質量%,残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(6)前記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の片面または両面にAl:0.05〜0.5質量%,Fe:7〜15質量%,残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明は、880MPa以上の引張最大強度、延性,穴拡げ性,曲げ性,伸びフランジ性,スポット溶接性を高いレベルでバランスさせた上で,低温脆性を大幅に向上させた高強度冷延鋼板,高強度溶融亜鉛めっき鋼板,高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを可能としたものであり,産業の発展に貢献するところが極めて大である。
以下,本発明を詳細に説明する。なお,本発明において%は,特に明記しない限り,質量%を意味する。
Cはベイナイトおよび/またはマルテンサイトを用いて組織強化を行う場合、必須の元素である。Cの含有量が0.05%未満では、880MPa以上の強度確保が難しいことから、下限値を0.05%とした。一方、Cの含有量を0.15%以下とする理由は、Cの含有量が0.15%を超えると、溶接性の劣化が顕著になるためである。特に高い溶接性を必要とする場合には,Cの含有量は0.12%以下とすることが好ましい。
Siは鋼板の加工性、特に伸びを大きく損なうことなく強度を増す元素であるのに加え、セメンタイトに固溶しない事から、粒界での粗大セメンタイトの形成を抑制する。Siの含有量が0.3%未満では、固溶強化による強化が期待できない、あるいは、粒界への粗大セメンタイトの形成が抑制できないことから0.3%以上添加する必要がある。一方で、Siの含有量が2.0%を越えると、残留オーステナイトを過度に増加せしめ、打ち抜きや切断後の穴拡げ性や伸びフランジ性を劣化させる。このことからSiの含有量の上限は2.0%とする必要がある。
Mnは、固溶強化元素であるのと同時に、オーステナイト安定化元素であり、オーステナイトがフェライトへと変態するのを抑制することから極めて重要な元素である。Mnは、特に、フェライトの成長抑制を通じて、フェライトの細粒化に寄与するため重要である。Mnの含有量が2.0%未満では、フェライト変態の速度が速すぎてしまいフェライト粒径を4μm以下にすることが困難であり、880MPa以上のTSが確保出来ない。また、Mnの含有量が2.0%未満では、硬質組織であるマルテンサイトおよび/またはベイナイトによる穴拡げ性劣化が顕著になることから好ましくない。このことから、Mnの含有量の下限値を2.0%とする。一方、Mnを多量に添加すると、P、Sとの共偏析を助長し、加工性の著しい劣化を招くことから、Mnの含有量の上限を2.6%とした。
Crは、強化元素であることに加え、熱延組織制御によるフェライトの微細化をもたらすことから、本発明では、極めて重要な元素である。Crを含有させることにより、熱延組織中に含まれるセメンタイトを均一微細に分散させることが可能であり、冷延焼鈍後の鋼板中に含まれるフェライトの微細化と組織均一化に寄与する。
即ち、冷延-焼鈍後のポリゴナルフェライトを4μm以下と極めて微細にするためには、焼鈍後の冷却過程でのフェライトの成長を抑制するのみならず、再結晶時のフェライト粒径を微細化することが必須である。多くの場合、再結晶後のフェライトを微細化するために、NbやTiを添加することで再結晶フェライトの成長を抑制し微細化する、あるいは、冷延率を増加させ再結晶フェライトの核生成サイトを増加することが試みられてきた。しかしながら、結晶粒を微細化するほどの多量のNbやTi添加は、大幅な再結晶遅延を引き起こし、冷間加工ままの圧延方向に長く伸びた未再結晶フェライトが残存し易く、大幅な延性の劣化が引き起こされる。あるいは、多量のNbやTiを導入したとしても、再結晶時に冷間加工時に導入された転位が再配列し、サブグレインを形成することで再結晶が進行するため、類似の方位を有するフェライトが連続して連なる場合が多い。即ち、細粒化し、高強度化には寄与したとしても、変形は不均一に進むことから、延性の大幅な向上は得難いといった課題がある。
そこで、本発明者等は、熱延板組織の制御に着目し、鋭意検討を進めた。即ち、熱延板内に存在する鉄基炭化物(セメンタイト)を鋼板内に微細に均一分散させることで、フェライトの微細化を図った。具体的には、熱延板中に存在する鉄基炭化物は、焼鈍時にオーステナイトへと変態する。また、高温ではオーステナイトの方が安定であることから、オーステナイトは、加熱や焼鈍時には、フェライトへと変態しない。この結果、形成した再結晶フェライトの成長を、鉄基炭化物から変態したオーステナイトでピン止めすることで、再結晶フェライトの微細化が可能なことを見出した。
鉄基炭化物を微細分散させる手法としては、熱延板組織を焼き戻しマルテンサイトにする、あるいは、下部ベイナイトにすることで、微細分散させることが可能である。しかし、マルテンサイトおよび/またはベイナイトを主体とする組織は、350℃以下の低温で巻き取らねばならず、転位を多く含むことから、熱延板の強度が高すぎてしまい冷間圧延し難いという問題を有していた。
そこで、本発明者等が鋭意検討を行ったところ、詳細な理由は不明なもののCr添加を行うことで、熱間圧延にて高温で巻取りを行ったとしても、鉄基炭化物を微細に均一分散可能なことを見出した。また、焼鈍後の冷却過程でのフェライトの成長抑制を通じて、フェライトの細粒化にも活用可能である。この効果は、Crの含有量が0.3%以上で顕著になることから、下限値を0.3%とした。一方、Crの含有量が2.0%を超えると効果は飽和するため、上限値を2.0%とした。CrはFeに比較し、酸化し易い元素であることから、多量の添加は鋼板表面への酸化物形成を招き、めっき性や化成処理性を阻害する。このため,Crの含有量は1.4%以下であることが望ましい。
また,本発明においては,伸びフランジ性の向上を目的としてSiの含有量とCrの含有量との和(以下「Si+Cr」と記載する場合がある。)を1超とする。Si+Crを1超とすることにより、伸びフランジ性が向上する理由は,SiとCrの相乗効果によりポリゴナルフェライトとベイナイトおよび/またはマルテンサイトとを含む鋼板組織が均一微細となり,変形を均一化するためであると考えられる。
Pは、一般に不可避的不純物として鋼に含まれるが、その含有量が0.03%を超えるとスポット溶接性の劣化が著しいうえ、本発明のような引張最大強度が880MPaを超すような高強度鋼板では靭性とともに冷間圧延性も著しく劣化する。このため、Pの含有量は0.03%以下とする。Pの含有量が少ないほど靭性および加工性は良好となり、0.01%未満とすることが好ましい。一方、Pの含有量を0.001%未満に低減するには精練コストが多大となるので、下限含有量を0.001%とする。強度、加工性とコストのバランスから、Pの含有量は0.003%以上,0.01%未満とすることがより好ましい。
Sも一般に不可避的不純物として鋼に含まれるが、その含有量が0.02%を超えると、圧延方向に伸張したMnSの存在が顕著となり、鋼板の曲げ性に悪影響をおよぼす。このため、Sの含有量は0.02%以下、より好ましくは0.01%以下とする。但し、Sの含有量を低減するためにはコストがかかるため、加工性およびめっき密着性の観点からはSを過度に低減する必要はなく、熱間加工性、耐食性等から必要なレベルにまでSを低減すれば良い。Sの含有量は、望ましくは,0.0003〜0.01%である。
Tiは、再結晶遅延によるフェライト細粒化に寄与することから添加する必要がある。また、Tiは、Bと複合で添加することで、焼鈍後のBのフェライト変態遅延効果を引き出すことから、極めて重要な元素である。具体的には、Tiは、Bに比較し、より強い窒化物形成元素であることから、窒化物を形成し、BNの形成を抑制し、Bのフェライト変態遅延効果を助長することから添加する必要がある。また、Tiは、析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化を通じて、鋼板の強度上昇に寄与することから重要である。Tiの含有量が0.005%未満では、これらの効果が得られないため、下限値を0.005%とした。Tiの含有量が0.1%超であると、フェライトの再結晶を遅延し過ぎてしまい、圧延方向に伸長した未再結晶フェライトが残存することになり、大幅な穴拡げ性の劣化を招くこのことから、上限を0.1%とする。
Bは、焼鈍後のフェライト変態を抑制する。また、Bは、熱間圧延で、仕上げ圧延後の冷却過程での粗大なフェライトの形成を抑制し、鉄基炭化物を均一分散させることから、添加する必要がある。これらの効果は、Bの含有量が0.0003%以上で顕著になり、更に0.002%超で低温靭性が著しく向上する。このため,本発明においては,Bの含有量の下限を0.002%超とする。Bの含有量が0.01%を超えると、これらの効果が飽和するばかりでなく、熱延時の製造製を低下させることから、その上限を0.01%とした。Bは,Pの代わりに粒界に偏析し,Pの粒界偏析による靱性低下を防ぐと考えられるため,Bの含有量はPの1/4以上であることが望ましい。
Alは、フェライト形成を促進し、延性を向上させるので添加しても良い。また、Alは、脱酸材としても活用可能である。しかしながら、過剰な添加はAl系の粗大介在物の個数を増大させ、穴拡げ性の劣化や表面傷の原因になる。このことから、Alの含有量の上限を0.1%とした。Alの含有量の下限は、特に限定しないが、0.005%以下とするのは困難であるのでこれが実質的な下限である。
Nは、粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させることから、添加量を抑える必要がある。Nの含有量が0.005%を超えると、この傾向が顕著となることから、N含有量の範囲を0.005%以下とした。加えて、溶接時のブローホール発生の原因になることからNの含有量は少ない方が良い。また、Ti含有量に比較し、N含有量が極端に多い場合は、BNを形成し、B添加の効果を減じてしまうことから、Nはなるべく少ない方が良い。下限は、特に定めることなく本発明の効果は発揮されるが、N含有量を0.0005%未満とすることは、製造コストの大幅な増加を招くことから、これが実質的な下限である。
なお,本発明においては,B添加の効果を十分に発揮させる目的で,3.6N<Ti(式中のN及びTiは各元素の含有量[質量%]である。)とする。Tiは、Bに比較して、より強い窒化物形成元素であることから、3.6N<Tiとすることで,鋼中のNはTiNを形成し,BNの形成を抑制することが可能となる。
Oは、酸化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させることから、添加量を抑える必要がある。特に、酸素は介在物として存在する場合が多く、打抜き端面、あるいは、切断面に存在すると、端面に切り欠き状の傷や粗大なディンプルを形成して、穴拡げ時や強加工時に、応力集中を招いて亀裂形成の起点となり,大幅な穴拡げ性あるいは曲げ性の劣化をもたらす。Oの含有量が0.005%を超えると、この傾向が顕著となることから、O含有量の上限を0.005%以下とした。Oの含有量を0.0005%と未満とすることは、過度のコスト高を招き経済的に好ましくないことから、これを下限とした。ただし、Oの含有量を0.0005%未満としたとしても、本発明の効果は発揮される。
また,Mo、Ni、Cuも、Mnと同様に、焼鈍後に引き続いて行われる冷却過程でのフェライト変態を遅延することから、添加しても良い。
Niは、強化元素であるとともに、焼鈍後に引き続いて行われる冷却過程でのフェライト変態を遅延し、フェライトの細粒化に寄与することから、添加しても良い。しかし、Niの含有量が0.01%未満ではこれらの効果が得られないため下限値を0.01%とすることが好ましい。Niを1.0%超含有すると大幅なコスト高を招くことから上限を1.0%とすることが好ましい。
Cuは、強化元素であるとともに、焼鈍後に引き続いて行われる冷却過程でのフェライト変態を遅延し、フェライトの細粒化に寄与することから、添加しても良い。しかし、Cuの含有量が0.01%未満ではこれらの効果が得られないため下限値を0.01%とすることが好ましい。逆に、Cuを1.0%超含有すると製造時および熱延時の製造性に悪影響を及ぼすため、上限値を1.0%とすることが好ましい。
Moは、強化元素であるとともに、焼鈍後に引き続いて行われる冷却過程でのフェライト変態を遅延し、フェライトの細粒化に寄与することから、添加しても良い。また、Moは、フェライト再結晶も遅延することから、フェライト粒径低減による細粒強化や穴拡げ性の向上に寄与する。しかし、Moの含有量が0.01%未満ではこれらの効果が得られないため下限値を0.01%とすることが好ましい。Moを1.0%超含有すると大幅なコスト高を招くことから上限を1.0%とすることが好ましい。
また,VやNbも、Tiと同様に再結晶抑制を通じたフェライト微細化に寄与することから添加しても良い。
Vは、析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化を通じて、鋼板の強度上昇や穴拡げ性向上に寄与する。Vの含有量が0.01%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.01%とすることが好ましい。Vを0.1%超含有すると、炭窒化物の析出が多くなり成形性が劣化するため、上限値を0.1%することが好ましい。
Nbは、析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化を通じて、鋼板の強度上昇や穴拡げ性向上に寄与する。Nbの含有量が0.01%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.01%とすることが好ましい。Nbを0.1%超含有すると、炭窒化物の析出が多くなり成形性が劣化するため、上限値を0.1%とすることが好ましい。
Ca、Mg、La,Ce、Y、REMから選ばれる1種または2種以上を合計で0.0001〜0.04%添加できる。Ca、Mg、La,Ce、Y、REMは、脱酸に用いたり、溶鋼中に添加を行うことで、酸化物や硫化物の形態制御やサイズ低下に用いたりすることが可能であり、穴拡げ性や伸びフランジ性の向上に寄与することから添加しても良い。Ca、Mg、La,Ce、Y、REMから選ばれる1種または2種以上を合計で0.0001%以上含有することで、脱酸後の酸化物サイズを低下可能であり、穴拡げ性向上に寄与する。しかしながら、上記1種または2種以上の含有量が合計で0.04%を超えると、成形加工性の悪化の原因となる。そのため、上記1種または2種以上の含有量を合計で0.0001〜0.04%とすることが好ましい。
なお、REMとは、Rare Earth Metalの略であり、ランタノイド系列に属する元素をさす。本発明において、REMやCeはミッシュメタルにて添加されることが多く、LaやCeの他にランタノイド系列の元素を複合で含有する場合がある。不可避不純物として、これらLaやCe以外のランタノイド系列の元素を含んだとしても本発明の効果は発揮される。また、金属LaやCeを添加したとしても本発明の効果は発揮される。
更に本発明においては,鋼板組織が結晶粒径4μm以下のポリゴナルフェライトを主相とし、結晶粒径3μm以下のベイナイトおよび/またはマルテンサイトを含む。
本発明において、ポリゴナルな形態とは、結晶粒のアスペクト比(=圧延方向の結晶粒径/板厚方向の結晶粒径)が2.5以下の結晶粒のことを指し、伸長な形態とは、結晶粒のアスペクト比が2.5超の結晶粒のことを指す。したがって、ポリゴナルフェライトとは、結晶粒のアスペクト比(=圧延方向のフェライト結晶粒径/板厚方向のフェライト結晶粒径)が、2.5以下のフェライト粒のことを指す。圧延方向に垂直な方向よりミクロ組織観察を行い、主相であるフェライトの全体積率のうち70%以上がアスペクト比2.5以下であれば、主相がポリゴナルフェライトであるとした。一方、アスペクト比2.5超のフェライトを伸長フェライトとした。
本発明において、最も重要なことは、主相であるフェライトをポリゴナルフェライトとし、かつ、その結晶粒径を4μm以下に制御することにある。主相であるポリゴナルフェライトの結晶粒径を4μm以下としたのは、C添加量を0.15%以下に抑えながら、880MPa以上の引張最大強度と成形性並びに溶接性を確保するためである。この効果は、ポリゴナルフェライトの結晶粒径が4μm以下となると顕著になることから、4μm以下とし、更に望ましくは、3μm以下とする。一方では、ポリゴナルフェライトの結晶粒径を、0.6μmを下回るような極端な細粒とすることは、経済的な負荷が大きいばかりでなく、均一伸びやn値の減少を招き、張り出し成形性や延性が低下することから好ましくない。このことから、ポリゴナルフェライトの結晶粒径は0.6μm以上とすることが望ましい。また、フェライトの細粒化は、フェライトを強化し、硬質組織との変形能の差を低減して、その界面でのマイクロボイド生成を抑制可能とするものであることから、穴拡げ性や伸びフランジ性の向上をもたらす。
フェライトをポリゴナルフェライトとしたのは、良好な延性を確保するためである。本鋼板は、熱延板を冷間圧延し、焼鈍することで製造されることから、焼鈍の際の再結晶が不十分であると、冷間加工まま圧延方向に伸長したフェライトが残存することになる。これら伸長したフェライトは、転位を多く含む場合が多く、変形能に乏しく、延性を劣化させやすい。そこで、主相であるフェライトは、ポリゴナルフェライトとする必要がある。また、再結晶が十分進んだフェライトであっても、伸長フェライトが同一方向にそって配列していると、引張変形や穴拡げ変形時に粒内の一部や硬質組織と接する界面で変形の局在化を招き易く、マイクロボイドの形成を促進し、曲げ性、穴拡げ性や伸びフランジ性の劣化を招く。このことから、フェライトの形態としては、ポリゴナルな形態が望ましい。
フェライトとしては、焼鈍時に形成する再結晶フェライト、あるいは、冷却過程で生成する変態フェライトが存在するが、本鋼は、鋼板成分と製造条件を厳格に制御していることから、再結晶フェライトであれば鋼板へのTiやNb添加により、変態フェライトであればCrやMn添加により、その成長が抑制される。したがって、再結晶フェライトと変態フェライトのいずれの場合でも微細であり、粒径が4μmを超えないことから、そのいずれであっても構わない。また、転位を多く含むフェライトであっても、鋼板成分、熱延条件並びに焼鈍条件の厳密な制御を行うことで、微細化させており、延性劣化を及ぼさないことから、体積率30%未満であれば存在して構わない。
次に、硬質組織をマルテンサイトおよび/またはベイナイト組織としたのは、880MPa以上の引張最大強度を確保するためである。一般的に、鋼板組織に、粗大なフェライトと、硬質なマルテンサイトおよび/またはベイナイトが存在すると、穴拡げ加工のような大変形を伴う場合、変形の集中、マイクロボイドの形成、及び、亀裂の連結を招き、穴拡げ性や伸びフランジ性を劣化させる。しかしながら、本発明では、主相であるフェライトを4μm以下と極めて微細にすることで変形を均一化させ、変形の局在化を抑制している。この結果、マルテンサイトおよび/またはベイナイトを硬質組織として含有したとしても、穴拡げ性や伸びフランジ性をあまり劣化させることなく、優れた延性と穴拡げ性のバランスを確保することができる。このことから、硬質組織として、マルテンサイトおよび/またはベイナイト組織を含有できる。また、880MPa以上の高強度化を考えた場合、これら硬質組織の活用は不可欠であり、溶接性を劣化させない範囲で、即ち、鋼板のC含有量が0.15%を超えない範囲での、硬質組織を活用することが必要である。
硬質組織であるマルテンサイトおよび/またはベイナイトの結晶粒径を3μm以下としたのは、フェライトが微細であっても、硬質組織が粗大であると、硬質組織周りに不均一な変形が生じ、穴拡げ性や伸びフランジ性を劣化させるためである。マルテンサイトおよび/またはベイナイトの結晶粒径は、好ましくは2μm以下である。
これら硬質組織は、焼鈍時に生成したオーステナイトが、冷却過程でマルテンサイトやベイナイトへと変態することで形成される。その結果、一つの硬質組織の塊(コロニー)であっても、異なる方位を有する複数の微細なラス状、あるいは、塊状のマルテンサイトおよび/またはベイナイトから構成される場合や、単一の方位を有するマルテンサイトおよび/またはベイナイトから構成される場合、あるいは、コロニーの内部に残留オーステナイトを含有する場合があるが、いずれの場合でも構わない。
また、これら硬質組織は、フェライト粒界に存在する場合が多く、穴拡げ性や伸びフランジ性劣化の原因となるマイクロボイドも、フェライトと硬質組織との界面に形成されることから、個々のコロニーサイズが穴拡げ性や伸びフランジ性に及ぼす影響が大きい。そこで、本発明では、硬質組織であるマルテンサイトおよび/またはベイナイトの結晶粒径を、これらコロニーのサイズと定義する。コロニーサイズが、3μm以下であれば、それを構成するマルテンサイトおよび/またはベイナイトラスのサイズは更に小さくなり、場合によっては0.5μm以下のサイズになる場合もある。
硬質組織のコロニーの形態は、ポリゴナルな形態とすることが望ましい。硬質組織のコロニーが圧延方向に伸長した形態や、針状の形態をしていると、界面で不均一な変形を招き、マイクロボイド形成を促進し、穴拡げ性や伸びフランジ性の劣化に繋がる。このことから、硬質組織のコロニーの形態としては、ポリゴナルな形態が望ましい。
また、硬質組織のコロニーは、内部、あるいは、その間に炭化物や残留オーステナイトを含有しても構わない。特に、500〜200℃での滞留や合金化溶融亜鉛めっきラインでの合金化処理のように、焼き戻しに相当する熱処理を受ける場合、マルテンサイトおよび/またはベイナイトの内部や粒界に、セメンタイトをはじめとする鉄基炭化物が生成する場合が多い。あるいは、付加的な熱処理を行わなくとも冷却過程で、マルテンサイトおよび/またはベイナイトの内部や粒界に、セメンタイトをはじめとする鉄基炭化物が形成される場合がある。いずれの場合でも、鉄基炭化物は硬質組織のコロニーの内部に生成することから、コロニーのサイズを超える事はなく、変形の集中及び成形性の劣化を招かない。このことから、硬質組織のコロニーの内部に鉄基炭化物を含んでも良い。加えて、鉄基炭化物の存在は、マルテンサイトおよび/またはベイナイトの硬度を下げることを意味することから、硬質組織と主相であるフェライトとの硬度差が低減し、益々の穴拡げ性の向上が図られる。従って、硬質組織内部に鉄基炭化物が存在することが望ましい。
鋼板組織として、主相はフェライトとする必要がある。これは、延性に富むフェライトを主相とすることで、延性と穴拡げ性とを両立させ,伸びフランジ性を向上させるためである。フェライト体積率が、50%を下回ってしまうと、延性も大幅に低下させてしまう。このことから、フェライト体積率は、50%以上とする必要がある。一方、フェライトの体積率を90%超とすると、880MPa以上の引張最大強度を確保することが難しいことから上限は90%とすることが好ましい。特に優れた延性と穴拡げ性のバランスを得るには、フェライトの体積率を55〜85%とすることが望ましく、更には、60〜80%とすることが望ましい。
一方、硬質組織であるマルテンサイトおよび/またはベイナイトの体積率は、上記と同様の理由から、50%未満とする必要があり、望ましくは、15〜45%であり、更に望ましくは、20〜40%である。
上記ミクロ組織の各相、フェライト、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト、ベイナイト、オーステナイトおよび残部組織の同定、存在位置の観察および面積率の測定は、ナイタール試薬および特開昭59−219473号公報に開示された試薬により鋼板圧延方向断面または圧延方向直角方向断面を腐食して、1000倍の光学顕微鏡観察及び1000〜100000倍の走査型および透過型電子顕微鏡により定量化が可能である。
本発明では、2000倍の走査型電子顕微鏡観察を用い、各20視野を測定し、ポイントカウント法にて体積率を測定した。ただし、本発明では、Ac1未満の温度域で焼鈍した場合のフェライト及び未溶解セメンタイトの混合組織は、フェライト単相組織として取り扱った。これは、鋼板組織が、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトを含まないことから、これら組織による組織強化が得られないため、フェライト単相組織として分類した。
引張最大強度(TS)を880MPa以上としたのは、この強度未満であれば、スポット溶接性を劣化させることなく、即ち、鋼板へのC添加量0.15%以下としながら、強度確保が可能なためである。しかしながら、本発明に係る条件であるフェライト結晶粒径の微細化を満足する限り、引張最大強度(TS)を880MPa以上で、延性、穴拡げ性、伸びフランジ性,曲げ性の向上、溶接性のバランスが優れた鋼板が得られる。
次に、高強度溶融亜鉛めっき鋼板について述べる。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、本発明の高強度冷延鋼板の片面または両面にAl:0.1〜10質量%,残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層が形成されているものである。
溶融亜鉛めっき層においてAlの含有量を0.1〜10質量%に限定した理由は、Alの含有量が10質量%を超えると、Fe−Al合金化反応が進みすぎてめっき密着性の低下が見られるためである。また、Alの含有量を0.1質量%以上に限定した理由は、0.1質量%未満のAl量で通常の溶融めっき処理を行うと,めっき処理時においてZn−Fe合金化反応が進みすぎて、地鉄界面に脆い合金層が発達し、めっき密着性が劣化するためである。
溶融亜鉛めっき層中には、Al、Zn不可避的不純物以外にFe、Sb、Pb、Bi、Mg,Ca、Be、Ti、Cu、Ni、Co、Cr、Mn、P、B、Sn、Zr、Hf、Sr、V、Se、REMを単独あるいは複合で0.5質量%以内で含有しても本発明の効果を損なわず、その量によってはさらに外観が改善される等好ましい場合もある。溶融亜鉛めっきの付着量については特に制約は設けないが、耐食性の観点から20g/m2以上、加工性の観点から350g/m2以下で有ることが望ましい。
次に,高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板について述べる。
本発明の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、本発明の高強度冷延鋼板の片面または両面にAl:0.05〜0.5質量%,Fe:7〜15質量%,残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層が形成されているものである。
本発明において,合金化溶融亜鉛めっき層とは,合金化反応によってZnめっき中に鋼中のFeが拡散しできたFe−Zn合金を主体としためっき層のことである。
Fe組成を7〜15質量%に限定した理由は,7質量%未満だとめっき表面に柔らかいZn−Fe合金が形成されプレス成形性を劣化させるためであり,15質量%を超えると地鉄界面に脆い合金層が発達し過ぎてめっき密着性が劣化するためである。Feの含有量は、望ましくは9〜12質量%である。
また,本発明において合金化溶融亜鉛めっき層のAl組成を0.05〜0.5質量%に限定した理由は,0.05質量%未満では合金化処理時においてZn−Fe合金化が進みすぎ,地鉄界面に脆い合金層が発達しすぎてめっき密着性が劣化するためであり,0.5質量%を超えるとFe−Al−Zn系バリア層が厚く形成され過ぎて合金化処理時において合金化が進まず目的とする鉄含有量のめっきが得られないためである。Alの含有量は、望ましくは0.1〜0.3質量%である。
合金化亜鉛めっき層中には、Pb,Sb,Si,Sn,Mg,Mn,Ni,Cr,Co,Ca,Cu,Li,Ti,Be,Bi,REMの1種または2種以上を含有,あるいは混入してあっても本発明の効果を損なわず,その量によっては耐食性や加工性が改善される等好ましい場合もある。合金化溶融亜鉛めっきの付着量については特に制約は設けないが,耐食性の観点から20g/m以上,経済性の観点から150g/m以下で有ることが望ましい。
以下に、本発明の高強度冷延鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について例を挙げて説明する。
熱間圧延に供するスラブは、上記成分を有するものであればよく、特に限定するものではない。すなわち、連続鋳造スラブや薄スラブキャスターなどで製造したものであればよい。また、鋳造後に直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直接圧延(CC−DR)のようなプロセスにも適合する。
熱延スラブ加熱温度は、鋳造中に析出した粗大なTiやNbの炭窒化物を再溶解させる必要があるので、1200℃以上にする必要がある。スラブ加熱温度の上限は特に定めることなく、本発明の効果は発揮されるが、加熱温度を過度に高温にすることは、経済上好ましくないことから、加熱温度の上限は1300℃未満とすることが望ましい。
次に、例えば、合計で70%以上の圧下率で熱延(粗圧延)を施し、950〜1080℃の温度範囲にて6s以上滞留させる。この70%以上の圧下と引き続く950〜1080℃の温度範囲での滞留は,炭窒化物などを微細に析出させ、仕上げ圧延後のオーステナイト粒径を小さく均一にする目的で行う。圧下率を70%以上とするのは、多量の転位を導入することで、TiやNbの炭窒化合物の析出サイトを増加させ、析出を促進させるためである。圧下率が70%未満であると、顕著な析出物促進効果が得られず、オーステナイト粒径も均一微細にならず、ひいては、冷延焼鈍後のフェライト粒径も微細化せず、穴拡げ性や伸びフランジ性が低下することから好ましくない。上限は特に定めないが、生産性や設備制約の観点から圧下率を90%超とすることは困難であるので、90%以下とすることが望ましい。
粗圧延後に保持温度950℃以上1080℃以下で滞留させる理由は,仕上げ圧延前のTiやNbの炭窒化合物の析出が1000℃近傍で最も速く、この温度から遠ざかるにつれ、オーステナイト域での析出が遅くなり,冷延焼鈍後の穴拡げ性が低下するためである。即ち、1080℃超の保持温度では、炭窒化合物の形成に長時間を要するため,オーステナイトの微細化を行えず、穴拡げ性や伸びフランジ性の向上をもたらさないことから好ましくない。950℃未満の保持温度では、炭窒化合物の析出に長時間を要することから、再結晶オーステナイト粒径を小さくすることが出来ず、穴拡げ性や伸びフランジ性の向上効果が得難いためである。
仕上げ圧延温度の上昇や圧延率(圧下率)低下は、オーステナイトから変態する熱延板組織も不均一としてしまい,穴拡げ性や曲げ性,伸びフランジ性の劣化をもたらすことから好ましくない。
引き続く仕上げ圧延の圧下率は、合計で85%以上とする。圧下率の計算は圧延前の板厚で圧延完了後の板厚を除して100倍すればよい。また仕上げ圧延温度は820〜950℃とする。
仕上げ圧延の圧下率と温度は、組織を微細化し、均一化する観点から決定される。すなわち、圧下率85%未満の仕上げ圧延では組織を十分に微細化することは困難である。また圧下率98%を超える仕上げ圧延は、設備にとって過大な付加となるのでこれを上限とする。90〜94%がより好ましい仕上げ圧延の圧下率である。
仕上げ圧延の温度が820℃未満では、一部フェライト域圧延となり板厚制御が困難となり、製品の材質に悪影響を及ぼすことがあるため、これを下限とする。一方、仕上げ圧延の温度が950℃以上では組織の微細化を図ることが困難となるためこれを上限とする。仕上げ圧延の温度は860〜920℃未満がより好ましい範囲である。
仕上げ圧延後、2s以上空冷してから、水冷を開始する。本発明者等は、鋭意検討した結果、空冷を行うことで、延性と穴拡げ性,伸びフランジ性が向上することを見出した。詳細な理由は不明であるものの、仕上げ圧延で出来た圧延方向に伸長した未再結晶オーステナイトを再結晶させることで、均一な再結晶オーステナイトから変態を行うことが可能となり、熱延板組織が均一化した結果、冷延―焼鈍後の組織もより均一化し、穴拡げ性や曲げ性,伸びフランジ性が向上したものと推察される。2s未満の空冷では、顕著な穴拡げ性や曲げ性,伸びフランジ性の向上が見られないことから、2s以上空冷を行うことが好ましく、4s以上であることがより好ましい。空冷時間の上限は特に設けないが、30s超の空冷は、生産性の低下をもたらすことから好ましくなく、30s以下とすることが望ましい。
仕上げ圧延の後、水冷あるいは空冷を行い400〜630℃の温度範囲で巻き取りを行うことが好ましい。これは、組織中に鉄基炭化物が均一に分散した熱延鋼板とし、冷延−焼鈍後に穴拡げ性や曲げ性,伸びフランジ性を向上させるためである。巻き取り温度が630℃超になると、鋼板組織がフェライト及びパーライト組織となり、焼鈍後の組織が不均一になることから好ましくない。一方、巻き取り温度を400℃未満とすると、熱延板強度が過度に高くなりすぎてしまい、冷延が困難となることから、好ましくない。
なお、熱延時に粗圧延板同士を接合して連続的に仕上げ圧延を行っても良い。また、粗圧延板を一旦巻き取っても構わない。
このようにして製造した熱延鋼板に、酸洗を行う。酸洗は鋼板表面の酸化物の除去が可能であることから、最終製品の高強度冷延鋼板の化成性や、高強度溶融亜鉛めっき鋼板あるいは高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板用の冷延鋼板の溶融めっき性向上のためには重要である。また、酸洗は、一回行っても良いし、複数回に分けて行っても良い。
酸洗した熱延鋼板を圧下率40〜70%で冷間圧延して、連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛めっきラインを通板する。
圧下率が40%未満では、形状を平坦に保つことが困難である。また、最終製品の延性が劣悪となるので圧下率40%を下限とすることが好ましい。一方、圧下率70%を越える冷延は、冷延荷重が大きくなりすぎてしまい冷延が困難となることから、これを上限とすることが好ましい。圧下率は45〜65%がより好ましい範囲である。圧延パスの回数、各パス毎の圧下率については特に規定することなく本発明の効果は発揮される。
連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛めっきラインを通板する場合の加熱速度は、特に、規定することなく本発明の効果である溶接性、延性,穴拡げ性,伸びフランジ性に優れる880MPa以上の引張最大強度を有する鋼板を製造可能である。これは、C、Cr、Ti、B、Mn、Siを複合で添加し、かつ、熱延条件を制御し、熱延板中の鉄基炭化物を微細分散させているためである。
通常、再結晶は、温度が高いほど再結晶フェライトの成長が速く再結晶し易い、あるいは、加熱速度が大きいほど、再結晶フェライトの核生成サイトが多くなる。この結果、加熱速度が大きいほど、フェライトは微細化しやすく、加熱速度も制御する必要がある。しかしながら、本発明の鋼板は、鉄基炭化物を用いた再結晶フェライトの粒径制御を行っていることから、加熱速度の影響は比較的受け難い。
しかしながら、連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛めっきラインを通板する場合の加熱速度が0.1℃/秒を下回ると、極端に生産性が低下することから好ましくない。一方、50℃/秒を超えて過度に加熱速度を増加させることは、過度の設備投資を行わねばならず経済性が劣化することから好ましくない。
高強度冷延鋼板を製造するために、連続焼鈍ラインの焼鈍における最高加熱温度は750〜860℃の範囲であることが好ましい。この理由は、最高加熱温度が750℃未満では、熱延時に形成した鉄基炭化物を十分に溶解させることが出来ず880MPaの強度確保に必要な硬質組織分率を確保できない場合があるためである。また、未溶解の鉄基炭化物は、再結晶フェライトの成長を止めることが出来ないため、フェライトが粗大で、かつ、圧延方向に伸長したものになり、穴拡げ性や曲げ性,伸びフランジ性の大幅な低下を招くことから望ましくない。一方、最高加熱(到達)温度が860℃を超えるような過度の高温での焼鈍は、経済的に好ましくないばかりでなく、焼鈍時のオーステナイト体積率が多すぎてしまい、主相であるフェライトの体積率を50%以上とすることが出来ない場合があり延性に劣る。このことから、焼鈍時の最高到達温度は、750〜860℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、780〜840℃の範囲である。
連続焼鈍ラインの焼鈍の保持時間は、短すぎると未溶解炭化物が残存する可能性が高く、オーステナイト体積率が少なくなるため、10秒以上とすることが望ましい。一方、焼鈍の保持時間が長すぎると、結晶粒が粗大化する可能性が高くなり強度および穴拡げ性,伸びフランジ性が低下するため、その上限は1000秒とすることが好ましい。
焼鈍において最高加熱温度で保持した後、500℃〜200℃まで、平均冷却速度1〜200度/秒間で冷却することが好ましい。冷却方法については、ロール冷却、空冷、水冷およびこれらを併用したいずれの方法でも構わない。
平均冷却速度を1度/秒以上としたのは、冷却過程でのフェライトやパーライト変態を抑制するためである。フェライトの成長抑制のためMnやCrを多量添加し、新たなフェライトの核生成抑制のためにB添加を行ったとしても、その形成を完全に抑制することは出来ず、冷却過程で形成する場合がある。あるいは、600℃近傍であれば、パーライト変態が起こり、硬質組織体積率が大幅に減じてしまう。その結果、硬質組織体積率が小さくなりすぎてしまい、880MPaの引張最大強度が確保できない場合がある。また、フェライト粒径も大きくなることから、穴拡げ性にも劣る。そこで、平均冷却速度1度/秒以上で冷却することが好ましい。
一方、平均冷却速度を大きくしたとしても、材質上なんら問題はないが、過度に冷却速度を上げる事は、製造コスト高を招くこととなるので、上限を200℃/秒とすることが好ましい。
500℃〜200℃まで冷却した後、引き続き500℃〜200℃の温度域で30s以上保持(熱処理)を行っても良い。この温度域で保持を行うことで、冷却過程で形成したマルテンサイトを焼き戻す、あるいは、ベイナイト変態を促進させることが可能であり、硬質組織を軟質化することで益々の穴拡げ性の向上が図られることから行うことが望ましい。保持温度の上限温度が、500℃以上では、硬質組織が柔らかくなりすぎてしまい、C含有量が低い条件では、880MPa以上の強度確保が難しい。このことから、保持温度の上限温度を500℃とした。一方、保持温度が200℃未満の温度では、これら効果が小さいことから下限温度を200℃とした。なお、保持とは、等温保持のみを示すのではなく、この温度域での滞留を意味する。即ち、除冷や除加熱を行っても良い。
500℃〜200℃の温度域での保持時間を30s以上としたのは、30s以上の保持を行うことで、上記焼き戻しやベイナイト変態促進による硬質組織の軟化効果が顕著になるためである。通常、300℃を下回る低温度域でのベイナイト変態の進行は遅く、変態には長時間を要するが、本鋼板は、焼鈍時のオーステナイト粒径を3μm以下と極めて微細にすることで変態の促進を図っており、短時間での組織制御を可能としている。
焼鈍後のスキンパス(調質)圧延の圧下率は、0.1〜1.5%の範囲が好ましい。圧下率が0.1%未満では効果が小さく、制御も困難であることから、これが下限となる。圧下率が1.5%を超えると生産性が著しく低下するのでこれを上限とする。スキンパス圧延は、インラインで行っても良いし、オフラインで行っても良い。また、一度に目的の圧下率のスキンパス圧延を行っても良いし、数回に分けて行っても構わない。
また、焼鈍後の冷延鋼板の化成性を高める目的で、酸洗処理やアルカリ処理等を行っても良い。アルカリ処理や酸洗処理等を行うことで、鋼板の化成性が向上し、塗装性や耐食性が向上する。
高強度溶融亜鉛めっき鋼板および/または高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するために、冷延後に連続溶融亜鉛めっきラインを通板する場合の最高加熱温度も連続焼鈍ラインを通板する場合と同様に750〜860℃とすることが好ましい。
最高加熱温度を750〜860℃の範囲としたのは、750℃未満では、熱延時に形成した炭化物を十分に溶解させることが出来ず880MPaの強度確保に必要な硬質組織分率を確保できない場合があるためである。750℃未満の温度では、フェライトと炭化物(セメンタイト)が共存可能であり、再結晶フェライトは、セメンタイトを乗り越えて成長できる。その結果、750℃未満の温度で焼鈍した場合、フェライトも粗大となり、穴拡げ性や曲げ性の大幅な低下を招くことから望ましくない。また、硬質組織の体積率も低下することから、望ましくない。一方、最高加熱温度が860℃を超えるような過度の高温での焼鈍は、経済的に好ましくないばかりでなく、焼鈍時のオーステナイト体積率が多すぎてしまい、主相であるフェライトの体積率を50%以上とすることが出来ない場合があり延性に劣る。このことから、焼鈍時の最高加熱温度は、750〜860℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、780〜840℃の範囲である。
冷延後に溶融亜鉛めっきラインを通板する場合の焼鈍の保持時間も、連続焼鈍ラインを通板する場合と同様の理由から10秒以上とすることが好ましい。一方、保持時間が長すぎると、結晶粒が粗大化する可能性が高くなり強度および穴拡げ性,伸びフランジ性が低下するため、焼鈍の保持時間の上限は1000秒とすることが好ましい。
最高加熱温度からめっき浴温度まで、平均冷却速度1度/秒以上から200度/秒の冷却速にて、冷却することが好ましい。冷却方法については、ロール冷却、空冷、水冷およびこれらを併用したいずれの方法でも構わない。
最高加熱温度からめっき浴温度までの平均冷却速度を1度/秒以上としたのは、冷却過程でのフェライトやパーライト変態を抑制するためである。フェライトやパーライトの成長抑制のためMnやCrを多量添加し、新たなフェライトの核生成抑制のためにB添加を行ったとしても、その形成を完全に抑制することは出来ず、冷却過程で形成する場合がある。その結果、硬質組織体積率が小さくなりすぎてしまい、880MPaの引張最大強度が確保できない場合がある。そこで、平均冷却速度1度/秒以上で冷却することが好ましい。
一方、平均冷却速度を大きくしたとしても、材質上なんら問題はないが、過度に冷却速度を上げる事は、製造コスト高を招くこととなるので、上限を200度/秒とすることが好ましい。
めっき浴浸漬板温度は、溶融亜鉛めっき浴温度より40℃低い温度以上、溶融亜鉛めっき浴温度より50℃高い温度以下までの温度範囲とすることが望ましい。めっき浴浸漬板温度が(溶融亜鉛めっき浴温度−40)℃を下回ると、めっき浴浸漬進入時の抜熱が大きく、溶融亜鉛の一部が凝固してしまいめっき外観を劣化させる場合がある。このことから、めっき浴浸漬板温度の下限を(溶融亜鉛めっき浴温度−40)℃とする。ただし、めっき浴浸漬前の板温度が(溶融亜鉛めっき浴温度−40)℃を下回った場合には、めっき浴浸漬前に再加熱を行い、板温度を(溶融亜鉛めっき浴温度−40)℃以上としてめっき浴に浸漬させても良い。また、めっき浴浸漬板温度が(溶融亜鉛めっき浴温度+50)℃を超えると、めっき浴温度上昇に伴う操業上の問題を誘発する。また、めっき浴は、純亜鉛に加え、Fe、Al、Mg、Mn、Si、Crなどを含有しても構わない。
また、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するために、溶融亜鉛めっき層の合金化を行う場合には、460℃以上の合金化処理温度で合金化を行うことが好ましい。合金化処理温度が460℃未満であると合金化の進行が遅く、生産性が悪い。上限は特に限定しないが、合金化処理温度が620℃を超えると、合金化が過度に進行しすぎてしまい良好なパウダリング性を得ることが出来ない。このことから、合金化処理温度は、620℃以下とすることが好ましい。特に、本鋼板は、組織制御の観点から、Cr、Si、Mn、Ti、Bを複合で添加しており、500〜620℃での変態抑制効果が極めて強い。このことから、パーライト変態や炭化物析出を特に気にする必要はなく、本発明の効果を安定して得ることができ、材質ばらつきが小さい。
また、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合、200℃〜(溶融亜鉛めっき浴温度+50)℃の温度範囲での30秒以上の付加的な熱処理を、めっき浴浸漬前、あるいは、浸漬後の何れか一方、あるいは、両方で行っても構わない。これは付加的な熱処理を行うことで、硬質組織を焼き戻す、あるいは、ベイナイト変態を促進させて硬質組織をベイナイト主体の組織とすることで、更なる穴拡げ性の向上を図れるためである。
高強度冷延鋼板を製造する場合と同様に、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合、熱処理後には、表面粗度の制御、板形状制御、あるいは、降伏点伸びの抑制を目的として、スキンパス(調質)圧延を行うことが望ましい。スキンパス圧延の圧下率は、0.1〜1.5%の範囲が好ましい。スキンパス圧延の圧下率は、0.1%未満では効果が小さく、制御も困難であることから、これが下限となる。圧下率が1.5%超えると生産性が著しく低下するのでこれを上限とする。スキンパス圧延は、インラインで行っても良いし、オフラインで行っても良い。また、一度に目的の圧下率のスキンパス圧延を行っても良いし、数回に分けて行っても構わない。
また、めっき密着性をさらに向上させるために、焼鈍前に鋼板に、Ni、Cu、Co、Feの単独あるいは複数より成るめっきを施しても本発明を逸脱するものではない。
さらに、めっき前の焼鈍については、「脱脂酸洗後、非酸化雰囲気にて加熱し、H及びNを含む還元雰囲気にて焼鈍後、めっき浴温度近傍まで冷却し、めっき浴に侵漬する」というゼンジマー法や、「焼鈍時の雰囲気を調節し、最初、鋼板表面を酸化させた後、その後還元することによりめっき前の清浄化を行った後にめっき浴に侵漬する」という全還元炉方式、あるいは、「鋼板を脱脂酸洗した後、塩化アンモニウムなどを用いてフラックス処理を行って、めっき浴に侵漬」というフラックス法等があるが、いずれの条件で処理を行ったとしても本発明の効果は発揮できる。
また、めっき前の焼鈍の手法によらず、加熱中の露点を−20℃以上とすることで、めっきの濡れ性やめっきの合金化の際の合金化反応に有利に働く。
なお、本冷延鋼板を電気めっきしても鋼板の有する引張強度、延性及び穴拡げ性を何ら損なうことはない。すなわち、本発明鋼板は電気めっき用素材としても好適である。有機皮膜や上層めっきを行ったとしても、本発明の効果は得られる。
本発明の鋼板は、単なる溶接継ぎ手の強度のみならず、溶接部を含む素材あるいは部品の変形能にも優れている。一般的に、鋼板組織を細粒化し強度確保を行った場合、スポット溶接の際に与えられる熱により、溶融部近傍も加熱されるため、粒径が大きくなり、熱影響部での強度が低下する場合がある。この結果、軟化した溶接部を含む鋼板をプレス成形した場合、軟化部に変形が集中し、破断を生じることから、変形能に劣る。
しかしながら、本鋼は、焼鈍工程でフェライト粒径を制御するために添加したTi、Cr、Mn、B、Nb等の粒成長抑制効果の強い元素を多く含むことから、スポット溶接の際の熱影響部でフェライトの粗大化が生じず、軟化が生じ難い。即ち、本発明の鋼板は、スポット、レーザー、アーク溶接部の継ぎ手強度に優れるのみならず、テーラードブランク材のような溶接部を含む部材のプレス成形性(ここでは、溶接部を含む素材を成形加工したとしても、溶接部あるいは熱影響部で破断が起きないことを意味する。)にも優れる。
また、本発明の成形性と穴拡げ性に優れた高強度高延性冷延鋼板は、通常の製鉄工程である精錬、製鋼、鋳造、熱延、冷延工程を経て製造されることを原則とするが、その一部あるいは全部を省略して製造されるものでも、本発明に係わる条件を満足する限り、本発明の効果を得ることができる。
以下,実施例により本発明を具体的に説明する.
「実施例1」
まず,表1および表2に示す成分を有するスラブを、1230℃に加熱し、圧下率87.5%の粗圧延を行った。その後、950〜1080℃の温度範囲にて10〜12秒保持を行った後、圧延温度900〜920℃,圧下率90%で仕上げ圧延を行った。仕上げ圧延後、4秒空冷を行い、その後水冷を行うことにより510〜550℃の温度範囲で巻き取りを行った。
Figure 0005720208
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熱延板は厚み3mmまで圧延して巻き取り,酸洗後、1.2mmまで冷間圧延を行い、冷延板とした。これらの冷延板を連続焼鈍設備(連続焼鈍ライン)により焼鈍し,試験材を作製した。
焼鈍時の平均加熱速度は、3.6度/秒とし、810〜830℃まで加熱し、90秒間の保持を行った後,平均冷速40〜60度/秒で熱処理温度(300〜340℃)まで冷却し,300〜340℃で120秒保持することで熱処理を行い,室温まで冷却した。連続焼鈍設備の炉内雰囲気は、露点を−40℃以下としたH2を10体積%含むN2ガスとした。
焼鈍後,0.3%の圧下率の調質圧延を行い,JIS5号引張試験片を採取し引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張最大強度(TS)、全伸び(El)を測定した。
なお、本鋼板は、フェライトと硬質組織より成る複合組織鋼板であり、降伏点伸びが出現しない場合が多い。このことから、降伏応力は0.2%オフセット法により測定した。引張試験結果を表4に示す。
高強度と加工性が良いことを両立する鋼板として,引張最大強度880MPa以上,TS×Elが16000(MPa×%)以上となるものを強度-延性バランスが良好な高強度鋼板として評価した。
ミクロ組織の各相、フェライト、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト、ベイナイト、オーステナイトおよび残部組織の同定、存在位置の観察および面積率の測定は、ナイタール試薬および特開昭59−219473号公報に開示された試薬により鋼板圧延方向断面を腐食して、2000倍の走査型電子顕微鏡観察を用い、各20視野を測定し、ポイントカウント法にて体積率を測定した。
主相であるフェライトの形態は,同様に2000倍の走査型電子顕微鏡観察によりアスペクト比を測定し,アスペクト比が2以下のものをポリゴナルフェライトとした。
穴拡げ率(λ)は、直径10mmの円形穴を、クリアランスが12.5%となる条件にて打ち抜き、かえりがダイ側となるようにし、60°円錐ポンチにて成形し、評価した。各条件とも、5回の穴拡げ試験を実施し、その平均値を穴拡げ率とした。
なお、曲げ性に関しても併せて評価した。曲げ性に関しては、圧延方向と垂直方向に100mm、圧延方向に30mmの試験片を採取し、90°曲げの割れ発生限界曲げ半径によって評価した。即ち、ポンチ先端部の曲げ半径を0.5〜3.0mmまで0.5mm刻みで曲げ性を評価し、割れ発生のない最小曲げ半径を限界曲げ半径と定義した。
スポット溶接性は次の条件で評価した。電極(ドーム型):先端径6mmφ、加圧力 4.3kN、溶接電流:散り発生直前の電流(CE)及び(CE―0.5)kA、溶接時間:14サイクル、保持時間:10サイクル。溶接後、JIS Z 3136及びJIS Z 3137に従って、十字引張試験及びせん断引張試験を行った。溶接電流をCEとする溶接を各5回行い、その平均値をそれぞれ、十字引張試験での引張強度(CTS)及びせん断引張試験でのせん断引張強度(TSS)とした。これら値の比(=CTS/TSS)が0.5以上のものを溶接性に優れる高強度鋼板とした。
溶接性は、下記基準に従って評点付けを行い、延性比0.5以上のものを溶接性が良好な鋼板と定義した。
◎:延性比が0.6以上
○:延性比0.5以上〜0.6未満
×:延性比0.5未満
伸びフランジ性は,特開2009−204399号公報に開示されたフランジアップ成形試験方法を使用し評価した。ブランク板は,中央部に直径60mmの穴を打ち抜いた180mm角の板を1/4に切断したものを使用した。打ち抜き時のクリアランスは15%とした。
成形は,肩R5mm,直径106mmのダイ型と肩R10mm,直径100mmの円筒平底ポンチを使用して行い,穴拡げ試験と同様,板厚方向に貫通亀裂が生じるまでの成形高さを評価した。
伸びフランジ性は、下記基準に従って評点付けを行い、フランジアップ成形高さ14mm以上のものを伸びフランジ性が良好な鋼板と定義した。
◎:フランジアップ成形高さ16mm以上
○:フランジアップ成形高さ14mm以上,16mm未満
△:フランジアップ成形高さ12mm以上,14mm未満
×:フランジアップ成形高さ12mm未満
二次加工脆性は,直径90mmのブランク板を直径50mmの円筒でカップに成形した後,冷媒中で開口試験を行い,カップの側壁面に縦割れが発生しない最低温度を測定した。
二次加工脆性は、縦割れが発生しない最低温度が−60℃以下の鋼板を○とした。
低温脆性は,JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験方法を使用し評価した。試験片は,55×10mmに切断したサンプルを8枚重ねてボルトで締結し,重ねた厚み方向に角度45度,深さ2mmのVノッチを付けて作製した。シャルピー衝撃試験は,試験片を20分以上液体窒素に浸漬後、熱伝対にて表面温度を測定し,測定温度に達した時点で試験を実施した。試験後,破面を実態顕微鏡及びSEMで観察し,延性破面率を測定した。
低温脆性は,延性破面率が50%以上となる最低温度が−140℃以下の鋼板を○とした。
結果を表3および表4に示す。
Figure 0005720208
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番号11は,C含有量が本発明範囲外であるため,880MPa以上の強度が確保できず不合格となった。番号12は,C含有量が本発明範囲外であり、Cr、Ti、Bを含まないため,溶接性,伸びフランジ性,二次加工脆性,低温脆性が不合格であった。また,フェライト粒径が本発明外であり,穴拡げ性も低位であった。番号13は,B添加量が本発明範囲外であるため,低温脆性が不合格であった。Bの微量添加は,2次加工脆性には効果を示すが,低温脆性を向上させるためには不十分であった。番号14は,Si,Crの合計添加量が本発明範囲外であるため,伸びフランジ性が不合格であった。
これら以外の本発明品は,成形性,溶接性を高いレベルでバランスさせつつ,高い伸びフランジ性と靭性を得ることができる高強度冷延鋼板であった。
また、本発明鋼の特性を評価したところ、本発明の条件を満足する限り、限界曲げ半径は0.5mmと良好な曲げ性を示した。
「実施例2」
まず,実施例1と同様に表1に示す成分を有するスラブを用いて冷延板とした。これらの冷延板を連続溶融めっき設備(連続溶融亜鉛めっきライン)により焼鈍,溶融亜鉛めっき層を形成し,試験材を作製した。
焼鈍時の平均加熱速度は、3〜5度/秒とし、810〜830℃まで加熱し、60秒間の保持を行った後,平均冷速3〜5度/秒で450℃まで冷却し,浴温450℃の溶融亜鉛めっき浴に3秒浸漬して溶融亜鉛めっきを行った。
めっき後は,N2ガスを吹き付け,付着量を片面70±5g/mに調節した後,10度/秒以上の冷速で冷却を行って,室温まで冷却した。連続溶融めっき設備の炉内雰囲気は、露点を0℃以下としたH2を10体積%含むN2ガスとした。
溶融亜鉛めっき浴は,Alの組成を0.2〜10%に変化させた溶融Zn−Alめっき浴を使用した。
めっきの付着量は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、重量法により測定した。溶融亜鉛めっき層の組成は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、化学分析により測定した。溶融亜鉛めっき層中のAl濃度を表6に示す。
めっき後,実施例1と同様に調質圧延を行い,実施例1と同様にして引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張最大強度(TS)、全伸び(El)を測定し、実施例1と同様に評価した。引張試験結果を表6に示す。
ミクロ組織の各相、フェライト、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト、ベイナイト、オーステナイトおよび残部組織の同定、存在位置の観察および面積率の測定、フェライトの形態、穴拡げ率(λ)、曲げ性、スポット溶接性、伸びフランジ性、二次加工脆性、低温脆性の評価は、実施例1と同様にして行った。結果を表5および表6にあわせて示す。
Figure 0005720208
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表5および表6に示すように、番号31は,C含有量が本発明範囲外であるため,880MPa以上の強度が確保できず不合格となった。番号32は,C含有量が本発明範囲外であり、Cr、Ti、Bを含まないため,溶接性,伸びフランジ性,二次加工脆性,低温脆性が不合格であった。また,フェライト粒径が本発明外であり,穴拡げ性も低位であった。番号33は,B添加量が本発明範囲外であるため,低温脆性が不合格であった。Bの微量添加は,2次加工脆性には効果を示すが,低温脆性を向上させるためには不十分であった。番号34は,Si,Crの合計添加量が本発明範囲外であるため,伸びフランジ性が不合格であった。
これら以外の本発明品は,成形性,溶接性を高いレベルでバランスさせつつ,高い伸びフランジ性と靭性を得ることができる高強度冷延鋼板であった。
また、本発明鋼の特性を評価したところ、本発明の条件を満足する限り、限界曲げ半径は0.5mmと良好な曲げ性を示した。
「実施例3」
まず,実施例1と同様に表1に示す成分を有するスラブを用いて冷延板とした。これらの冷延板を実施例2と同様に連続溶融めっき設備(連続溶融亜鉛めっきライン)により焼鈍,溶融亜鉛めっき層を形成し,合金化処理を行って試験材を作製した。
めっき後は,N2ガスを吹き付け,付着量を片面50±5g/mに調節した後,鋼板を加熱してめっき中にFeを拡散させ,その後,10度/秒以上の冷速で冷却を行って,室温まで冷却した。連続溶融めっき設備の炉内雰囲気は、露点を0℃以下としたH2を10体積%含むN2ガスとした。めっき層合金化の加熱は,誘導加熱方式の加熱設備を使用し,表8に示すFe%となるよう,合金化温度を470〜500℃に調節して行った。
溶融亜鉛めっき浴は,Al濃度からFe濃度を引いた値,有効Al濃度を0.1%とした溶融Zn−Alめっき浴を使用した。
めっきの付着量およびめっき層の組成は、実施例2と同様に測定した。
めっき層中のAlおよびFeの濃度を表8に示す。
めっき後,実施例1と同様に調質圧延を行い,実施例1と同様にして引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張最大強度(TS)、全伸び(El)を測定し、実施例1と同様に評価した。引張試験結果を表8に示す。
ミクロ組織の各相、フェライト、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト、ベイナイト、オーステナイトおよび残部組織の同定、存在位置の観察および面積率の測定、フェライトの形態、穴拡げ率(λ)、曲げ性、スポット溶接性、伸びフランジ性、二次加工脆性、低温脆性の評価は、実施例1と同様にして行った。結果を表7および表8にあわせて示す。
Figure 0005720208
Figure 0005720208
表7および表8に示すように、番号51は,C含有量が本発明範囲外であるため,880MPa以上の強度が確保できず不合格となった。番号52は,C含有量が本発明範囲外であり、Cr、Ti、Bを含まないため,溶接性,伸びフランジ性,二次加工脆性,低温脆性が不合格であった。また,フェライト粒径が本発明外であり,穴拡げ性も低位であった。番号53は,B添加量が本発明範囲外であるため,低温脆性が不合格であった。Bの微量添加は,2次加工脆性には効果を示すが,低温脆性を向上させるためには不十分であった。番号54は,Si,Crの合計添加量が本発明範囲外であるため,伸びフランジ性が不合格であった。
これら以外の本発明品は,成形性,溶接性を高いレベルでバランスさせつつ,高い伸びフランジ性と靭性を得ることができる高強度冷延鋼板であった。
また、本発明鋼の特性を評価したところ、本発明の条件を満足する限り、限界曲げ半径は0.5mmと良好な曲げ性を示した。

Claims (6)

  1. 質量%で,
    C:0.05〜0.15%,
    Si:0.3〜2.0%,
    Mn:2.0〜2.6%,
    Cr:0.3〜2.0%,
    P:0.03%以下,
    S:0.02%以下,
    Al:0.005〜0.1%,
    Ti:0.005〜0.1%,
    B:0.002超〜0.01%,
    N:0.005%以下,
    O:0.0005〜0.005%、
    Nb:0.01〜1.0%を含有し,
    且つ,N,Ti,Si,Crが下記(式1)(式2)を満足し,残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼であり、鋼板組織が結晶粒径4μm以下のポリゴナルフェライトを主相とし、結晶粒径3μm以下のベイナイトおよび/またはマルテンサイトを含み、ポリゴナルフェライトの体積率と、ベイナイトおよび/またはマルテンサイトの体積率との合計が97%以上であり、引張最大強度880MPa以上であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
    3.6N<Ti・・・(式1)
    1<Si+Cr・・・(式2)
    (式1)において、N及びTiは各元素の含有量[質量%]であり、(式2)において、Si及びCrは各元素の含有量[質量%]である。
  2. さらに、鋼中に質量%で、
    Mo:0.01〜1.0%,
    Ni:0.01〜1.0%,
    Cu:0.01〜1.0%
    から選ばれる1種又は2種以上を単独あるいは複合で含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度冷延鋼板。
  3. さらに、鋼中に質量%で、
    V:0.01〜0.1%含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高強度冷延鋼板。
  4. さらに、鋼中に質量%で、Ca、Mg、La、Ce、Y,REMから選ばれる1種または2種以上を合計で0.0001〜0.04%含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の高強度冷延鋼板。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の片面または両面にAl:0.1〜10質量%,残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の片面または両面にAl:0.05〜0.5質量%,Fe:7〜15質量%,残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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