JP4888200B2 - 高張力溶融亜鉛めっき鋼板と製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献4では、低温媒体中での成形により、耐二次加工脆性が評価されている。成形速度が記載されていないが、試験方法から類推すると、衝突を模擬したような高速ではないと考えられ、車体の衝突を考慮された評価となっていない。また、成形後の試験片に対して行われているが、車体の場合、成形後にさらに塗装焼付け処理が行われるため、異なる評価が必要である。
本発明は、このような新たな知見に基づいて完成したものであって、その要旨は以下のとおりである。
(1)鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える高張力溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板が、質量%で、C:0.035〜0.150%、Si:0.05〜0.60%、Mn:2.0〜4.0%、P:0.015%以下、S:0.0015%未満、sol.Al:0.8%以下、N:0.0031〜0.015%、O:0.0030%以下およびTi:0.005〜0.130%を含有し、Nb含有量が0〜0.130%であり、TiとNbの合計含有量が0.055%以上であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するとともに、フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下で硬質第2相の平均粒径が5.0μm以下である金属組織を有することを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、V:1.0%以下およびB:0.01%以下の群から選ばれる1種又は2種以上を含有する上記(1)の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.050%以下、REM:0.050%以下の群から選ばれる1種又は2種を含有する上記(1)または(2)の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
(4)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1.5%以下、Ni:1.5%以下の群から選ばれる1種又は2種を含有する上記(1)、(2)または(3)の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブに熱間圧延を施し、熱間圧延完了後4秒間以内に冷却を開始し、熱間圧延後10秒間以内に700℃以下の温度域まで冷却し、400℃〜700℃の温度域で巻き取って熱間圧延鋼板となし、前記熱間圧延鋼板を酸洗後30〜80%の圧下率の冷間圧延を施して冷間圧延鋼板となし、前記冷間圧延鋼板を、750〜950℃の温度域に5〜200秒間滞在させ、その後400〜600℃の温度域まで冷却して、400〜600℃の温度域に5〜200秒間滞在させ、次いで溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(6)前記溶融亜鉛めっきを施した後、更に600℃以下の温度域で合金化処理を施すことを特徴とする上記(5)の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(7)上記(5)または(6)の製造方法により得られる高張力溶融亜鉛めっき鋼板に、下式(1)を満足する熱処理を施すことを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
ここで、式中におけるtは熱処理時間(単位:秒)を、Tは熱処理温度(単位:K)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
(1)母材となる鋼板の化学組成
C:0.035〜0.15%
Cは低コストで強度向上に有効な元素である。C含有量が0.035%未満では強度向上の効果が十分ではなく、目的とする強度を確保することが困難となるのでC含有量を0.035%以上とする。好ましくは0.05%以上である。一方、C含有量が0.15%を超えると溶接性が劣化する。このため、C含有量を0.15%以下とする。好ましくは0.13%以下である。
Siは、合金化処理過程において、鋼板粒界から被膜のめっき層中へFeが拡散するのを助長する反面、粒内からめっき層中へFeが拡散するのを抑制し、母材とめっき層との界面の凹凸を増加させることにより、母材の鋼板とめっき層との界面密着強度を増加させる重要な元素である。
Mnは鋼の高強度化に有効な元素である。また、鋼のAc3点を下げ、好適な焼鈍温度範囲を広げる効果も有する。そのため、Mn含有量を2.0%以上とする。一方、過剰な含有は強度・延性バランスを劣化させるので、Mn含有量を4.0%以下とする。望ましいくは、3.0%以下である。
Pは鋼の靭性を劣化させる元素である。このため、Pの含有量を0.015%以下とする。好ましくは0.013%以下である。
Sは鋼の靭性を劣化させる元素であり、その含有量は低い方が好ましい。S含有量が0.0015%超では硫化物の析出が顕著になり靭性を著しく劣化させる。このため、S含有量を0.0015%未満とする。
Alは鋼の脱酸のために含有させる。脱酸効果をより確実に得るには、sol.Al含有量を0.01%以上とすることが好ましい。また、Alは焼鈍時のフェライト変態を促進し、オーステナイト中への元素の濃縮を促進するので、高強度化の役目も果たす。しかし、過剰に含有しても効果が飽和するのでsol.Al含有量を0.8%以下とする。
Nは、一般には不可避的に含有される不純物元素であるが、本発明においては、製鋼時に生成されるTiNを粗大化させ低温靭性を改善させる効果を有する。そのため、N含有量を0.0031%以上とする。一方、過剰に含有させるとTiNの量が過多となり、成形性や靭性の劣化を招くので、N含有量を0.015%以下とする。好ましくは0.0060%以下である。
Oは、不純物元素であり、鋼の靭性を劣化させる元素である。このため、Oの含有量を0.0030%以下とする。好ましくは0.025%以下である。
Tiは、上述したように靭性に悪影響を与えない粗大なTiNを製鋼時に生成させるために必要な元素であり、0.005%以上含有させる。また、Tiは熱間圧延工程以降の工程において、微細な炭化物、窒化物、または炭窒化物を形成させ、鋼板の高強度化に有効である。さらに、Tiは焼鈍中のフェライトの再結晶を抑制する効果を有し、かつオーステナイトへの変態を促進し、焼鈍後の冷却時のフェライト変態を著しく促進させる効果を有する。また、結晶粒径を著しく微細化する効果も有する。このような効果を発現させるためには、TiをNbとの合計で0.055%以上含有させる。また、過剰に含有させても、効果が飽和してコスト増加を招くため、Ti含有量を0.130%以下とする。好ましくは0.10%以下である。
NbはTiとともに、熱間圧延工程以降の工程において、炭化物、窒化物、または炭窒化物を形成させ、鋼板の高強度化に有効な元素である。また、Nbは焼鈍中のフェライトの再結晶を抑制する効果を有し、かつオーステナイトへの変態を促進し、焼鈍後の冷却時のフェライト変態を著しく促進させる効果を有する。さらに、結晶粒径を著しく微細化する効果も有する。このような効果を発現させるためには、NbをTiとの合計で0.055%以上含有させる。また、過剰に含有させても、効果が飽和してコスト増加を招くため、Nb含有量を0.13%以下とする。好ましくは0.10%以下である。
本発明は、Ti、Nbによる析出強化と、Mnによる変態強化により780MPa以上の高強度化を達成することができる。しかし、Mnは鋼板の組織をバンド状にするため、曲げ性が必要となる場合には、Cr、Mo、V、Bを1種又は2種以上含有させてMnの一部を代替することが好ましい。また、さらに高強度化して980MPa以上とする場合にも、Cr、Mo、V、Bを1種又は2種以上含有させることが有効である。
本発明は溶融亜鉛めっきを施すことにより耐食性を兼備させるものであるが、必要に応じて含有させるCuおよび/またはNiは表面に濃化してSiの表面濃化を抑制するため、めっきの濡れ性や合金化処理性を改善する効果を有する。そのためにはCuおよび/またはNiを含有させ、その合計含有量を0.05%以上とすることが好ましい。望ましくは合計含有量で0.10%以上である。それぞれの含有量が1.5%を超えると効果が飽和してコスト増加を招くので、それぞれの含有量は1.5%以下とする。
これらの元素は、硫化物の析出形態を変化させ、曲げ性を改善する作用を有するので、必要に応じて少なくとも1種含有させることができる。過剰に含有させても効果が飽和してコスト増加を招くので、それぞれの含有量を0.050%以下とする。上記作用による効果をより確実を得るには、合計で0.0005%以上含有させることが好ましく、0.0010%以上含有させることがさらに好ましい。
本発明にかかる鋼板の金属組織は次のように規定される。
引張強度が780MPa以上となる領域で、良好な曲げ性を実現するためには、フェライトの平均結晶粒径および硬質第2相の平均粒径をそれぞれ5.0μm以下とする。さらにそれぞれ3.0μm以下とするのが望ましい。
本発明の場合、焼鈍中にオーステナイト粒が微細化(粒径1〜5μm)し、その後の冷却中に微細オーステナイト粒の一部が微細フェライトに変態する。残った微細オーステナイト粒のうち、あるものはベイナイトに、あるものはマルテンサイトに、あるものはマルテンサイト・オーステナイト混合物に変態する。後述する図1のSEM観察組織写真に示すように、それらを「硬質第2相」と総称する。それらの粒径はSEM観察写真から、切断法によって求めることができる。
めっき被膜の化学組成については特に限定しないが、めっき被膜が合金化溶融亜鉛めっきである場合における好適な条件を以下に示す。
被膜となる亜鉛めっき層中のFe含有量が8%未満の場合は、合金化処理後のめっき層の表層部に軟質部位が形成されやすくなり、摺動性が低下して被膜のめっき層が母材の鋼板との界面から剥離することによるフレーク状の剥離が増加する。したがって、Fe含有量は8%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは9.5%以上である。一方、Fe含有量が15%を超えると、鋼板に曲げ加工が施された場合に、曲げ部の内側で合金化溶融亜鉛めっき層が圧縮変形を受けることによるパウダリング剥離量が増加する。このため、Fe含有量は15%以下とする。好ましくは14%以下である。
被膜となる亜鉛めっき層中のAl含有量が0.15%未満の場合は、めっき浴中における合金層の発達の抑制効果が不十分となり、めっき付着量の制御が困難となる。したがって、Al含有量は0.15%以上とする。好ましくは0.20%以上、さらに好ましくは0.25%以上である。一方、Al含有量が0.50%を超える場合は、合金化速度が低下することから通常のライン速度では上記Fe含有量を実現するために合金化処理温度を540℃超とせざるを得なくなる場合があり、後述するように鋼板と合金化溶融亜鉛めっき層との界面密着強度を20MPa以上とすることが困難になる。したがって、Al含有量は0.50%以下とする。好ましくは0.45%以下、さらに好ましくは0.40%以下である。
被膜となる亜鉛めっき層中へは、合金化処理過程において、母材からSi、Mn、P、S、Ti、Nb、Cr、Mo、V、B、Ca、REM等がとりこまれるが、通常の条件で溶融めっきおよび合金化処理した際にめっき層中にとりこまれる範囲内であれば、めっき品質に悪影響を及ぼさないので、問題ない。ここでいう通常のめっき条件とは、後述するように、めっき浴温度が400℃〜500℃で、鋼板の侵入温度が400℃〜500℃、合金化温度が460〜600℃である。
(4)母材となる鋼板の製造条件
本発明にかかる鋼板は、その製造に際しては、熱間圧延、冷間圧延、そして溶融亜鉛めっきを経て製造される。好適な製造条件を以下に示す。
上述のようにした冷却・滞在を経て、溶融亜鉛めっきを行う。冷却・滞在後連続して溶融亜鉛めっきを行ってもよいが、一旦冷却してから再度400〜600℃のめっき温度に加熱してから溶融亜鉛めっきを行ってもよい。
めっき浴中のAl濃度:0.08〜0.20%
めっき浴中のAl濃度が0.08%未満の場合、合金化処理前のめっき浴中において既に過剰のFe−Zn界面合金層が形成されてしまうため、付着量の制御が困難となる。したがって、めっき浴中のAl濃度は0.08%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.09%以上である。
めっき処理に続いて合金化処理を行う場合には、次のような条件で行うことが好ましい。
合金化処理温度が460℃未満であるとζ相の粗大結晶が合金化溶融亜鉛めっき層の表層部に形成されやすく、亜鉛めっき層中のFeの含有量が8%未満となってしまう場合がある。したがって、合金化処理温度を460℃以上とすることが好ましい。さらに好ましくは470℃以上であり、最も好ましくは480℃以上である。
本発明により得られる溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板については、必要により調質圧延を行ってもよく、そのときの調質圧延に関しては特に制限を設けない。圧延荷重の観点から、伸び率を0.5%以下とするのが望ましい。
めっき後の製品表面には、無処理でもよいが、公知のクロム酸処理、リン酸塩処理、樹脂被膜塗布などの後処理を施しても構わない。また、防錆油を塗付してもよく、その塗付に用いる防錆油については、市販の一般的なもので良いが、極圧添加剤であるSやCaを含有した高潤滑性防錆油を塗布しても良い。
高張力溶融亜鉛めっき鋼板に下記式(1)を満足する熱処理を施すと、鋼板の成形性、低温靭性がさらに改善される。上記熱処理は、溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施す場合に、調質圧延の前後いずれか一方に行ってもよく、調質圧延の前後の両方に行ってもよい。調質圧延の前後の両方に行う場合には、調質圧延前の熱処理と調質圧延後の熱処理との合計が下式(1)を満足すればよい。
ここで、式中におけるtは熱処理時間(単位:秒)を、Tは熱処理温度(単位:K)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
機械的性質は、圧延直角方向に採取したJIS Z 2201に規定されている5号試験片を用い、JIS Z 2241に規定の方法でYS、TS、Elを測定した。
(1)試料片の採取
合金化処理後の試料から25mmφの試料片を採取し、0.5vol%インヒビター(商品名:朝日化学製「イビット710N」)を含有する10%HCl水溶液でめっき層を溶解し、これをICP法でめっき層の組成分析に供した。
合金化処理を施したサンプルを長手方向が圧延方向となるように20mm×100mmに裁断し、サンスター(株)製の一液型エポキシ系構造用接着剤(商品名:E−6973)を接着剤として用い、重ね代:12.5mm、接着剤膜厚:200μm、焼付条件:180×20分、引張速度:5mm/分、室温下の条件で長手方向に引張試験を実施した。本試験の界面密着強度は、母材変形も加わるため基板強度の影響を受けるが、今回のようにYPが350MPa以上の母材では、殆ど無視できる。試験の結果、強度が20MPa以上のものを密着強度を良好とし、20MPa未満のものを不良とした。
Claims (7)
- 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える高張力溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板が、質量%で、C:0.035〜0.150%、Si:0.05〜0.60%、Mn:2.0〜4.0%、P:0.015%以下、S:0.0015%未満、sol.Al:0.8%以下、N:0.0031〜0.015%、O:0.0030%以下およびTi:0.005〜0.130%を含有し、Nb含有量が0〜0.130%であり、TiとNbの合計含有量が0.055%以上であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するとともに、フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下で硬質第2相の平均粒径が5.0μm以下である金属組織を有することを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、V:1.0%以下およびB:0.01%以下の群から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.050%以下、REM:0.050%以下の群から選ばれる1種又は2種を含有する請求項1または2に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1.5%以下、Ni:1.5%以下の群から選ばれる1種又は2種を含有する請求項1、2または3に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の化学組成を有するスラブに熱間圧延を施し、熱間圧延完了後4秒間以内に冷却を開始し、熱間圧延後10秒間以内に700℃以下の温度域まで冷却し、400℃〜700℃の温度域で巻き取って熱間圧延鋼板となし、前記熱間圧延鋼板を酸洗後30〜80%の圧下率の冷間圧延を施して冷間圧延鋼板となし、前記冷間圧延鋼板を、750〜950℃の温度域に5〜200秒間滞在させ、その後400〜600℃の温度域まで冷却して、400〜600℃の温度域に5〜200秒間滞在させ、次いで、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記溶融亜鉛めっきを施した後、更に600℃以下の温度域で合金化処理を施す請求項5記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 請求項5または6に記載の製造方法により得られる高張力溶融亜鉛めっき鋼板に、下式(1)を満足する熱処理を施すことを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
t=max[10−10.4+5000/T+log(T/291),5] (1)
ここで、式中におけるtは熱処理時間(単位:秒)を、Tは熱処理温度(単位:K)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
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