JP5953693B2 - めっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents

めっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、引張り強度980MPa以上を有し、成形性(延性と穴拡げ性)に優れた高張力鋼板に関するものであり、TRIP(Transformation
Induced Plasticity:変態誘起塑性)現象を利用しためっき密着性にも優れる溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法に関するものである。
自動車の車体、部品等の軽量化と安全性とを両立させるために、素材である鋼板の高強度化が進められている。一般に、鋼板を高強度化すると、成形性(延性と穴拡げ性)が損なわれる。従って、自動車用の部材として高強度鋼板を使用するためには、強度と成形性のバランスが必要である。このような要求に対して、これまでに、残留オーステナイトの変態誘起塑性を利用した、いわゆるTRIP鋼板が提案されている(例えば、特許文献1及び2、参照)。しかし、自動車用高強度鋼板は適用される部品によっては耐食性が必要とされ、そのような場合には溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板が適用されているが、TRIP鋼においては、延性向上のためにSiが添加されるため、Siが鋼板表面に濃縮し酸化することにより、溶融亜鉛めっき時に不めっきが発生し易いという問題があった。
特許文献3及び4において、Si添加高強度鋼板につき、Niプレめっきを行い、表層に加工を加え活性化することで、めっきの濡れ性改善と合金化温度の低減が達成できる合金化溶融亜鉛めっき高強度鋼板の製造方法が報告されている。この方法では、原板としてすでに材質を造り込んでいる冷延−焼鈍プロセスで製造した冷延鋼板を使用できる点で新たな溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき付与の手法として期待できる技術である。
特許文献5にはこのNiプレめっきの技術を活用して高伸び型DP鋼(Dual Phase鋼)に合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作製する技術が提案されている。しかしながら、組織中に硬質なマルテンサイトと軟質なフェライトを主相としているため、近年のユーザーニーズを満足させる延性が得られないばかりでなく、ハイテンの成形で必須となる穴拡げ性が低くなる点に課題が残る。
特開昭61-217529号公報 特開平5-59429号公報 特許第2526320号公報 特許第2526322号公報 特開2006-283071号公報
本発明は、上述したような問題点を解決しようとするものであって、焼鈍済みの冷延鋼板を原板としてNiプレめっき法による合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに当たり、めっき密着性、延性及び穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、C、Si、Mn量、熱延、冷延、焼鈍、合金化溶融亜鉛めっき条件について鋭意検討を行い、所用の強度、延性、穴拡げ性、めっき性を得るための方法見出した。本発明で最も重要な点は、Niプレめっき法を最大限活用した高Si添加鋼のめっき濡れ性向上と合金化温度低減、および、この手法の温度工程を活用して3種類のマルテンサイト制御し、所定の容量を出した上で、この組織制御を通じて、安定な残留γを十分に残存させるにある。これによりめっき密着性を劣化させることなく、めっきなしの冷延TRIP材並みの超伸びと優れた穴拡げ性の両立が達成できることを見出した。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)
表面層を厚さ0.1μm以上研削除去された冷延鋼板上にNiを0.2g/m 2 以上2.0g/m 2 以下プレめっきされた冷延鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、
質量%で、
C:0.05%以上、0.4%以下、
Si:0.01%以上、3.0%以下、
Mn:0.1%以上、3.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.05%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.01%以上、2.0%以下、
Si+Al>0.5%
を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
ミクロ組織が、体積分率で主相としてフェライトを40%以上含有し、残留オーステナイトを8%以上、下記に規定する3種類のマルテンサイト[1][2][3]のマルテンサイト[3]を含む2種以上と1%以上のベイナイト及び0〜10%のパーライトを含有し且つ、前記3種類のマルテンサイト[1][2][3]がそれぞれ、体積分率で、
マルテンサイト[1]:0%以上、50%以下
マルテンサイト[2]:0%以上、20%未満
マルテンサイト[3]:1%以上、30%以下、
である鋼板の表面に、Feを7%未満含有し、残部がZn、Alおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有し、
引張強度TS(MPa)、全伸び率EL(%)、穴拡げ率λ(%)としてTS×ELが18000MPa・%以上、TS×λが35000MPa・%以上であり、引張強度980MPa以上有することを特徴とするめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
マルテンサイト[1]:C濃度(CM1)が0.8%未満で、硬さHv1が、
Hv1/(-982.1×CM1 2 +1676×CM1+189)≦0.60
マルテンサイト[2]:C濃度(CM2)が0.8%以上で、硬さHv2が、
Hv2/(-982.1×CM2 2 +1676×CM2+189)≦0.60
マルテンサイト[3]:C濃度(CM3)が0.8%以上で、硬さHv3が、
Hv3/(-982.1×CM3 2 +1676×CM3+189)≧0.80
(2)
表面層を厚さ0.1μm以上研削除去された冷延鋼板上にNiを0.2g/m 2 以上2.0g/m 2 以下プレめっきされた冷延鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、
質量%で、
C:0.05%以上、0.4%以下、
Si:0.01%以上、3.0%以下、
Mn:0.1%以上、3.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.05%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.01%以上、2.0%以下、
Si+Al>0.5%
を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
ミクロ組織が、体積分率で主相としてフェライトを40%以上含有し、残留オーステナイトを8%以上、下記に規定する3種類のマルテンサイト[1][2][3]のマルテンサイト[3]を含む2種以上と1%以上のベイナイト及び0〜10%のパーライトを含有し且つ、前記3種類のマルテンサイト[1][2][3]がそれぞれ、体積分率で、
マルテンサイト[1]:0%以上、50%以下
マルテンサイト[2]:0%以上、20%未満
マルテンサイト[3]:1%以上、30%以下、
である鋼板の表面に、Feを7〜15%含有し、残部がZn、Alおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を有し、
引張強度TS(MPa)、全伸び率EL(%)、穴拡げ率λ(%)としてTS×ELが18000MPa・%以上、TS×λが35000MPa・%以上であり、引張強度980MPa以上有することを特徴とするめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
マルテンサイト[1]:C濃度(CM1)が0.8%未満で、硬さHv1が、
Hv1/(-982.1×CM1 2 +1676×CM1+189)≦0.60
マルテンサイト[2]:C濃度(CM2)が0.8%以上で、硬さHv2が、
Hv2/(-982.1×CM2 2 +1676×CM2+189)≦0.60
マルテンサイト[3]:C濃度(CM3)が0.8%以上で、硬さHv3が、
Hv3/(-982.1×CM3 2 +1676×CM3+189)≧0.80
(3)
さらに、鋼中に質量%で、Cr:0.05%以上、3.0%以下、Mo:0.05%以上、1.0%以下、Ni:0.05%以上、3.0%以下、Cu:0.05%以上、3.0%以下、の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(4)
さらに、鋼中に質量%で、Nb:0.005%以上、0.3%以下、Ti:0.005%以上、0.3%以下、V:0.01%以上、0.5%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(5)
さらに、鋼中に質量%で、B:0.0001%以上、0.1%以下を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(6)
さらに、鋼中に質量%で、Ca:0.0005%以上、0.01%以下、Mg:0.0005%以上、0.01%以下、REM:0.0005%以上、0.01%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(7)
(1)、(3)〜(6)のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、鋳造スラブを直接または一旦冷却した後1100℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下の温度域にて巻き取り、酸洗、圧下率40%以上、70%以下の冷延を施し、730℃以上、900℃以下にて焼鈍し、600℃以上750℃以下の温度まで0.1℃/秒以上、20℃/秒以下の速さでの一次冷却において、(A)焼鈍温度を730℃以上、800℃未満とする、(B)一次冷却停止温度を600℃以上、700℃未満とする、(C)一次冷却の平均速度を0.1℃/秒以上、5.0℃/秒以下とする、の3つの条件(A)(B)(C)のうち、1種または2種以上の条件を満たし、さらにこの温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却して、350℃以上、450℃以下の範囲で120秒以上保持し、冷却した後、鋼板の表面層を厚さ0.1μm以上研削除去し、Niを0.2g/m2以上、2.0g/m2以下プレめっきし、10℃/秒以上の昇温速度でさらにこの温度から(亜鉛めっき浴温度−40)℃以上(亜鉛めっき浴温度+50)℃以下に加熱後、亜鉛めっきすることを特徴とする引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(8)
(2)〜(6)のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、鋳造スラブを直接または一旦冷却した後1100℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下の温度域にて巻き取り、酸洗、圧下率40%以上、70%以下の冷延を施し、730℃以上、900℃以下にて焼鈍し、600℃以上750℃以下の温度まで0.1℃/秒以上、20℃/秒以下の速さでの一次冷却において、(A)焼鈍温度を730℃以上、800℃未満とする、(B)一次冷却停止温度を600℃以上、700℃未満とする、(C)一次冷却の平均速度を0.1℃/秒以上、5.0℃/秒以下とする、の3つの条件(A)(B)(C)のうち、1種または2種以上の条件を満たし、さらにこの温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却して、350℃以上、450℃以下の範囲で120秒以上保持し、冷却した後、鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去し、Niを0.2g/m2以上、2.0g/m2以下プレめっきし、10℃/秒以上の昇温速度でさらにこの温度から(亜鉛めっき浴温度−40)℃以上、(亜鉛めっき浴温度+50)℃以下に加熱後、亜鉛めっきし、470℃以上、600℃以下で10秒以上、40秒以下の合金化加熱処理を行うことを特徴とする引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、980MPa以上の引張強度をもち、めっき密着性と成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができ、産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明の効果を示した、伸びと引張強度の相関図である。 本発明の効果を示した、穴拡げ性と引張強度の相関図である。
まず、本発明における延性及び穴拡げ性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高強度鋼板の成分限定理由について説明する。なお、以下、組成における質量%は単に%と記す。
C:Cは鋼の強度を増加させ、延性を向上させる残留オーステナイトを安定化させる元素として添加されるものである。0.05%未満では980MPa以上の引張強度の確保が困難であり、0.4%を超える過剰の添加は延性、溶接性、靭性などを著しく劣化させる。従って、C有量は0.05%以上、0.4%以下とした。より好ましい範囲は、0.13%超、0.3%未満である。
Si:Siは固溶強化により鋼板の強度を増大させるのに有用な元素である。また、Siはセメンタイトの生成を抑制するため、ベイナイト変態時にオーステナイト中へのCの濃化を促進させる効果をもち、焼鈍後に残留オーステナイトを生成させるのに必須の元素である0.01%未満ではそれらの効果が発現されず、3.0%を超える過剰の添加は熱間圧延で生じるスケールの剥離性を著しく劣化させ、めっきの濡れ性を著しく損なうため、Si含有量は0.01%以上、3.0%以下とした。
Mn:Mnは焼入れ性を高めるために有効な元素である。0.1%未満では焼入れ性を高める効果が十分には発現されず、3.0%を超える過剰の添加は靭性を劣化させる。従って、Mn含有量は0.1%以上、3.0%以下とした。
P:Pは、粒界に偏析して粒界強度を低下させ、靱性を劣化させる不純物元素であり、低減させることが望ましいため、0.04%以下とした。但し、Pの含有量の下限は、現状の精錬技術と製造コストを考慮し、下限を0.001%超とすることが望ましい。
S:Sは、熱間加工性及び靭性を劣化させる不純物元素であり、低減させることが望ましい。したがって、上限を0.05%以下に制限した。穴拡げ要求が高い場合は、0.01%以下とすることが望ましい。但し、必要以上に下げることは精錬コストを高めるばかりで効果が薄いことから、下限を0.0001%超とすることが望ましい。
N:Nは粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させることから、添加量を抑える必要がある。これは、Nが0.01%を超えると、この傾向が顕著となること。加えて、溶接時のブローホール発生の原因になることから少ない方が良い。これより、N含有量の範囲を0.01%以下とした。但し、必要以上に下げることは精錬コストを高めるばかりで効果が薄いことから、下限を0.0001%超とすることが望ましい。
Al:Alは脱酸剤のはたらきをする元素である。また、Siと同様にフェライト安定化元素であり、Siの代替として使用することもできる。0.01%未満ではそれらの効果が発現されず、2.0%を超えて過剰添加すると靭性が劣化するため、Alの含有量を0.01%以上、2.0%以下とした。
Al+Si:AlとSiはフェライト安定化とセメンタイト抑制という同じ働きをする元素である。したがって、AlとSiの合計添加量が重要となってくる。この合計添加量が、0.5%以下であると、フェライト安定化とセメンタイト抑制の働きが弱くなるため、0.5%より多く添加することとした。過剰の添加は効果が飽和するばかりでなく、スケール形成により、表面性状を著しく劣化させること、めっきの濡れ性を著しく損なうことから、上限は3%以下が望ましい。
更に、Cr、Mo、Ni、Cuの1種または2種以上を添加してもよい。これらの元素は、延性及び靭性を向上させる有効な元素である。しかし、Cr、Mo、Ni、Cuの含有量は、過剰に加えると、強度の上昇によって、靭性を損なうことがある。したがって、これらの元素の上限はCr、Ni、Cuを3.0%以下、Moは1.0%以下とした。但し、特に靭性の要求が高い場合、Cr、Ni、Cuともに上限を1.0%以下とすることが望ましい。また、延性及び靭性を向上させるには、Cr量は0.05%以上、Mo量は0.05%以上、Ni量は0.05%以上、Cu量は0.05%以上が必要であり、下限値とした。
更に、Ti、Nb、Vの1種または2種以上を添加してもよい。これらの元素は、微細な炭窒化物を形成する元素であり、結晶粒の粗大化抑制し、強度確保と靭性を高めるのに有効である。強度確保と靭性を高めるためには、Ti、Nbは、0.005%以上、Vは0.01%以上を添加が必要である。しかし、これらの元素を過剰に添加すると析出物が粗大になり、靭性が劣化することがある。したがって、Nb、Tiの添加量は0.3%以下に、Vは0.5%以下にする。
B:更に、Bを添加してもよい。Bは粒界に偏析し、P及びSの粒界偏析を抑制する元素である。また、焼き入れ性を高めるのに有効な元素でもある。しかし、B量が0.1%を超えると、粒界に粗大な析出物を生じて、熱間加工性や靭性を損なうことがある。したがって、Bの含有量を0.1%以下とする。なお、粒界の強化によって、延性、靭性及び熱間加工性を向上させ、焼き入れ性を向上させるためには、0.0001%以上のBの添加が必要である。
更に、Ca、Mg、REMの一種または二種以上を添加してもよい。これらの元素は、硫化物の形態を制御し、Sによる熱間加工性や靭性の劣化の抑制に有効な元素である。しかし、過剰に添加しても効果が飽和するため、上限をCaは0.01%以下、Mgは0.01%以下、REMは0.01%以下とする。靭性を向上させるには、下限をCaは0.0005%以上、Mgは0.0005%以上、REMは0.0005%以上とする。
次に製造条件の限定理由について述べる。
本発明においては、上記の成分からなる鋼を常法で溶製し、鋳造する。得られた鋼片を直接または一旦冷却した後1100℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延する。1100℃未満では、材料の均質化が不十分となる。また、Ar3変態点未満では、フェライト加工組織が残るため、成形性の劣化を引き起こす。更に、酸洗、冷間圧延及び焼鈍を施した後、Niプレめっきを行い、その後、亜鉛めっきまたは、亜鉛めっき後、合金化加熱処理を行う。
熱間圧延における巻取り温度は700℃を超えると、熱延板組織が粗大なフェライト・パーライト組織となり、冷間圧延、焼鈍、亜鉛めっき及び合金加熱処理後の最終的な鋼板の組織が不均一な組織となり、良好な穴拡げ性が得られないので、巻取り温度の上限は700℃にした。より好ましくは、巻取り温度を500℃以下とし、ベイナイト単相とするとよい。巻取り温度の下限は特に規定するものではないが、300℃未満であると熱延板の強度が高くなり冷間圧延に支障をきたす場合があるので、300℃以上であることが望ましい。
冷間圧延は、焼鈍後のミクロ組織を微細化するため、圧下率を40%以上とする。一方、冷間圧延の圧下率は、70%を超えると、加工硬化によって負荷が高くなり、生産性を損なう。したがって、冷間圧延の圧下率は、40%以上、70%以下とする。
冷間圧延後、焼鈍を施す。本発明では、鋼板のミクロ組織を制御するために、焼鈍の加熱温度及び冷却条件が極めて重要である。
冷間圧延後の焼鈍温度は、熱延時に生成したセメンタイトを十分に溶解し、Cが十分に濃化したオーステナイトを確保するために、730以上、900℃以下の範囲にした。焼鈍温度が730℃未満であるとフェライト分率が高くなり、強度確保が難しいほか、軟質相の存在のより穴拡げ性が著しく劣化する。焼鈍温度が900℃を超えると再結晶が進み、粒径が大きくなってしまい、靭性と延性を低下させてしまう。
焼鈍後は、600℃以上、750℃以下の温度まで0.1〜20℃/秒の早さで冷却する。600℃未満、0.1℃/秒未満では、フェライト分率が高くなり、強度確保が難しいほか、穴拡げ性の劣化も起こる。一方で、750℃超、20℃/秒超ではフェライト分率が少なすぎ、延性の劣化の原因となる。加えて、本発明の重要なポイントのひとつである所定のフェライト量を確保するためには、これらの条件を複合的に制御する必要がある。すなわち、(A)焼鈍温度を730℃以上、800℃未満とする、(B)一次冷却停止温度を600℃以上、700℃未満とする、(C)一次冷却の平均速度を0.1℃/秒以上、5℃/秒以下とする、の3つの条件(A)(B)(C)のうち、1種または2種以上の条件を満たすことである。これらの全てを満たさない場合は、最終組織のベイナイトとマルテンサイト、焼戻しマルテンサイトが主相となってしまい、強度と穴拡げには優位であるが、延性が著しく低下してしまう。
この温度から450℃以下の温度まで20℃/秒以上の速度で冷却し、350以上、450℃以下の範囲で120秒以上保持する必要がある。これらの条件のいずれかを逸脱すると、ベイナイト変態が十分に進まず、オーステナイト中へのCの濃化が不十分となり、冷却後に十分な量の残留オーステナイトを得ることができなくなり伸びの低下を招く。なお、亜鉛めっき及び亜鉛めっき後、合金加熱処理後にするためには焼鈍後に十分な量の残留オーステナイトを確保し、合金化加熱処理の冷却過程で一部の残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させる必要がある。また、焼鈍時に生成したスケールを除去するために焼鈍後に酸洗を行ってもよい。また、焼鈍後に形状矯正及び降伏点伸びの消失のために調質圧延を行ってもよい。伸び率が0.2%未満ではその効果が十分でなく、伸び率が2%を超えると降伏比が大幅に増大するとともに伸びが劣化する。従って、伸び率を0.2%以上、2%以下とすることが望ましい。
焼鈍(冷却)した後、鋼板の表面層を厚さ0.1μm以上研削除去し、その後、Niをプレめっきする必要がある。鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去した後にNiをプレめっきすることにより、亜鉛めっき後の合金加熱処理時に、合金化が促進され、合金化処理時の加熱温度を下げることができる。これにより、合金化熱処理時に残留オーステナイトの分解によるセメンタイト生成を抑制でき、穴拡げ性が劣化するのを防ぐことができる。合金化が促進されるメカニズムについては明確ではないが、研削により鋼板表層部に導入される歪の影響により、表面が活性化することが考えられる。鋼板の表面層を研削除去する方法としては、ブラシ研磨、サンドペーパー研磨、機械研磨などの方法を用いればよい。Niプレめっきの方法は電気めっき、浸漬めっき、スプレーめっきのいずれでもよく、めっき量は0.2g/m2以上、2g/m2以下とする。鋼板の表面層を研削除去する量が0.1μm未満である場合やNiプレめっきを行わない場合もしくは、プレめっき量が0.2g/m2未満もしくは2g/m2超の場合には、合金化促進効果が得られず、合金化温度を高くせざるを得ないため前述するように穴拡げ性の劣化を防ぐことができない。より合金化促進効果を得るためには鋼板の表面層を研削除去する量を0.5μm以上とすることが望ましい。
Niをプレめっきした後、10m/min以上50m/min以下にて流動する溶融亜鉛めっき浴にむかって、10℃/秒以上の加熱速度で(亜鉛めっき浴温度-40) ℃から(亜鉛めっき浴温度+50) ℃まで加熱後、上記溶融亜鉛めっき浴中で亜鉛めっきを行う。また、めっき浴は、純亜鉛に加え、Fe、Al、Mg、Mn、Si、Crなどを含有しても構わない。
溶融亜鉛めっき浴内において、不めっきの抑制や合金化の促進のために、浴中で鋼板に対して10m/min以上50m/min以下の流動を与えることで不めっきの防止と、合金化促進が図れることを見出した。スカムは、ZnやAlの酸化膜であり、めっき浴表面に浮遊している。鋼板表面に多量に外部酸化膜が存在している場合、鋼板の浴への浸漬時にスカムが付着し易いため、不めっきが発生し易い。加えて、鋼板に付着したスカムは、不めっきのみならず、合金化も遅延する。この挙動は、SiやMnを多く含む鋼板で特に顕著となる。詳細なメカニズムは不明なものの、鋼板表面に形成するSiやMnの酸化物と、同じく酸化物であるスカムが反応することで、不めっきや合金化遅延を助長しているものと考えられる。10m/min未満では、噴流による不めっき抑制効果が得られないためであり、50m/min以下としたのは、不めっき抑制の効果が飽和するばかりでなく、過大な設備投資はコスト高を招くため、流動の流速を10m/min以上50m/min以下が望ましい。
また、溶融亜鉛めっき浴前までの加熱速度が10℃/sec未満では、鋼板の表面層を研削除去することにより導入された歪が緩和され合金化促進効果が得られなくなる。加熱温度が(亜鉛めっき浴温度-40)℃未満ではめっき時に不めっきを生じやすく、(亜鉛めっき浴温度+50)℃を超えると鋼板の表面層を研削除去することにより導入された歪が緩和され合金化促進効果が得られなくなる。
この後の処理は、合金化処理を行ってもよい。合金化熱処理が470℃未満では合金化が不十分であり、600℃を超えると残留オーステナイトが分解してセメンタイトが生成することにより穴拡げ性が劣化する。合金化時間については、合金化温度とのバランスで決まるが、10〜40秒の範囲が適当である。10秒未満では合金化が進みにくく、40秒を超えると残留オーステナイトが分解してセメンタイトが生じることにより穴拡げ性が劣化する。
亜鉛めっき及び合金化加熱処理の後は、最終的な形状矯正及び降伏点伸びの消失のために調質圧延を行うことが望ましい。伸び率が0.2%未満ではその効果が十分でなく、伸び率が1%を超えると降伏比が大幅に増大するとともに伸びが劣化する。従って、伸び率を0.2〜1%とすることが望ましい。
次にめっき層について説明する。
スポット溶接性や塗装性が望まれる場合には、合金化処理によってこれらの特性を高めることができる。具体的には溶融亜鉛メッキ浴に浸漬した後、合金化処理を施すことで、めっき層中にFeが取り込まれ、塗装性やスポット溶接性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。合金化処理後のFe量が7%未満ではスポット溶接性が不十分となる。一方、Fe量が15%を超えるとめっき層自体の密着性を損ない、加工の際めっき層が破壊・脱落し金型に付着することで、成形時の疵の原因となる。したがって、合金化処理を行う場合のめっき層中Fe量の範囲は7%以上、15%以下とする。
また、合金化処理を行わない場合めっき層中のFe量が7%未満でも、合金化により得られるスポット溶接を除く効果である耐食性と成形性や穴拡げ性は良好である。このとき、Fe量は0%を含む。
めっき付着量については、特に制約は設けないが、耐食性の観点から片面付着量で5g/m2以上であることが望ましい。本発明の溶融Znめっき鋼板上に塗装性、溶接性を改善する目的で上層めっきを施すことや、各種の処理、例えば、クロメート処理、りん酸塩処理、潤滑性向上処理、溶接性向上処理等を施しても、本発明を逸脱するものではない。
次に、本発明の鋼板のミクロ組織について説明する。
本発明の鋼板のミクロ組織は、延性を十分確保するためにフェライト相を主相とした上で、安定な残留オーステナイトを十分確保し、残組織をベイナイトと以下に定める3種のマルテンサイト[1][2][3]とし、更にパーライトを含有してもよい。なお、各組織の含有率は体積分率で示す。
フェライトは、残留オーステナイトを安定化させることに加えて、母材の延性を確保する上で重要な相である。TRIP効果を十分に得るためには、フェライト相を40%以上含むことが必要である。このフェライトは、先の製造方法で述べたとおり、二相焼鈍もしくは、焼鈍後の一次冷却にて制御を行う。しかし、その分率が高くなってしまうと、強度が低下してしまうため、70%未満とすることが望ましい。このフェライト相は強度を高めるために析出や固溶により強化することも可能である。
残留オーステナイトは、変態誘起塑性によって延性、特に一様伸びを高める組織であり、8%以上が必要である。また、加工によってマルテンサイトに変態するため、強度の向上にも寄与する。
3種のマルテンサイト[1][2][3]の分類方法は、硬度とC濃度である。硬度は、マルテンサイト粒内で3点以上ビッカース硬度を測り、その平均ビッカース硬度Hv1〜Hv3を算出する。本発明において、マルテンサイト粒の濃度とはマルテンサイト粒内にセメンタイトが存在した場合、これも合わせた濃度を示す。従って、マルテンサイト粒のC濃度CM1〜CM3は、正確に分解濃度が得られる条件で、精度が保証される測定方法であればどのような測定方法でも構わないが、例えば、FE-SEM付属のEPMAを用いて、0.5μm以下ピッチでC濃度を注意深く測定することによって得ることができる。以上の値を用いて、以下のように分類する。
マルテンサイト[1]:C濃度(CM1)が0.8%未満で、硬さHv1が、
Hv1/(-982.1×CM12+1676×CM1+189)≦0.60 …式1
マルテンサイト[2]:C濃度(CM2)が0.8%以上で、硬さHv2が、
Hv2/(-982.1×CM22+1676×CM2+189)≦0.60 …式2
マルテンサイト[3]:C濃度(CM3)が0.8%以上で、硬さHv3が、
Hv3/(-982.1×CM32+1676×CM3+189)≧0.80 …式3
これらのマルテンサイト[1][2][3]の区別をするために、マルテンサイト中のC量とビッカース硬さの関係式を用いている。式1、2、3の左辺の分母は、C濃度を入れた値がそのC濃度のフレッシュマルテンサイトの硬さを表している。本鋼に含まれているマルテンサイトはその粒内にセメンタイトの析出や、焼戻しによって、フレッシュマルテンサイトの硬さより低くなっている。そこで、分母のフレッシュマルテンサイトであった場合の硬度と、鋼板中のマルテンサイトの硬度との比を取り分類した。
3種のマルテンサイト[1][2][3]とベイナイトは、強度を確保した上で、穴拡げ性を確保するために有効であり、同時に残留オーステナイト相の安定性、分率の制御に有用な役割を担う。引張強度が980MPaを超える高強度鋼板では、これらの組織が有効に作用するため、その和を20%以上とすることが望ましい。強度と加工性の両立が望まれる場合、2種類以上含むことが望ましい。
さらに、3種のマルテンサイト[1][2][3]において、マルテンサイト[1]は、C濃度が低くそれほど硬質でないマルテンサイトもしくは焼戻しマルテンサイトである。この組織は、先に定めた製造方法における、焼鈍後の600℃〜750℃から450℃以下までの冷却により生成したもので、後の350〜450℃の過時効および亜鉛めっき浴への浸漬中、もしくは、合金化中に焼戻された相である。この組織は冷却条件により相分率を容易に制御でき、適度な強度が保てる上、穴拡げ性の劣化が少ないため有効であるが、この組織を50%超としてしまうと、延性を劣化させてしまうので、上限を50%以下とした。高強度材においてこの相の効果を十分に得るためには10%以上あることが望ましい。なお、下限を1%とした。
マルテンサイト[2]は、C濃度が高いが、焼戻しによって軟化したマルテンサイトである。この組織は、焼鈍後の350〜450℃での保持においてベイナイト変態が進み、C濃化した残留オーステナイトが、冷却時にマルテンサイトとなり、溶融亜鉛めっき浴への浸漬中、もしくは、合金化中に焼戻しのみ起こったマルテンサイトである。マルテンサイト[1]と比べて、この組織は強度確保に有効であるが、同相の分率を高めるためには残留オーステナイトの安定性を損ね、延性を劣化させてしまうので、上限を30%以下とした。特に加工性を重視する場合は20%未満が望ましい。高強度材においてこの相の効果を十分に得るためには3%以上あることが望ましい。なお、下限を1%とした。
マルテンサイト[3]は、C濃度が高く、焼戻しがないマルテンサイト、もしくは、焼戻し量が少ないマルテンサイトである。この組織は、先に定めた製造方法における、溶融亜鉛めっき浴への浸漬中、もしくは、合金化中に残留オーステナイト中にセメンタイトが析出し、セメンタイトを除いた残留オーステナイト中のC濃度が低くなり、最終冷却にてマルテンサイトとなったもの、または、350〜450℃の範囲で120秒以上保持した後の冷却時に変態したマルテンサイトが溶融亜鉛めっき浴や合金化処理中に若干焼戻されたものである。この組織は、かなり硬く、強度確保には有利であるが、穴拡げ性を劣化させる上、この分率を高めることは残留オーステナイト分率の低下、不安定化を招くため、穴拡げ、延性とも劣化する。従って、上限を30%以下とする。特に加工性を重視する場合、10%以下が望ましい。また、高強度材においてこの相の効果を十分に得るためには3%以上あることが望ましい。なお、下限を1%とした。
パーライトは、その分率が10%を超えると、靭性や延性を低下させてしまうため、上限を10%以下とした。なお、パーライト相の下限は0%を含む。
以下、実施例により本発明の効果をさらに具体的に説明する。
表1に示す組成の鋼を鋳造し、1200℃以上に再加熱した後、Ar3変態点以上で熱間の仕上げ圧延を終了し、冷却後、300℃から500℃の間で巻取りを行った。なお、表1〜3において、本発明の範囲外について下線を付して示した。熱延鋼板は、40%から70%の範囲で冷間圧延を行い焼鈍を実施した。個々の焼鈍条件を表2に示す。なお、一次冷却後、OA温度までの二次冷却速度はいずれも20℃/秒以上とした。表2に示す条件で、鋼板表面層の研削、Niプレめっきを行い、続いて、浴温460℃にて、亜鉛めっき及び合金化加熱処理を行い、調質圧延を0.2%の伸び率で行った。板厚は1.4mmとした。
得られた溶融亜鉛めっき鋼板の機械的特性、穴拡げ性(λ)、めっき外観、合金化度、めっき密着性を表3に示す。本発明鋼と比較鋼の伸びと引張強度の相関図を図1に示す。本発明鋼と比較鋼の穴拡げ性と引張強度の相関図を図2に示す。機械的特性は引張試験は、JIS Z 2241に準拠して行い、引張試験の応力−歪曲線より、引張強度(TS)、全伸び(EL)を求めた。穴拡げ性は穴拡げ試験を日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001に準拠して行い、穴拡げ率を測定した。加工性の指標としてTSxELとTSxλを用い、TSxELは18000MPa・%以上、TSxλは35000MPa・%以上が成形性が良いと判断した。めっき外観は目視観察により不めっきの有無を判定し、○が不めっきなし、×が不めっきありとした。合金化Fe%とは、めっき層中のFeの%を示している。合金化処理を行った合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、7〜15%が合金化がうまく進んだことを示している。合金化処理を行わない溶融亜鉛めっき鋼板では、7%未満でよい。
表3、図1、図2より、実験No.a1〜h2は本発明例であり、いずれの特性も合格となり、目標とする特性の鋼板が得られている。一方、成分または製造方法が本発明の範囲外である実験No.i〜uは、いずれかの特性が不合格となっている。
Figure 0005953693
Figure 0005953693
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Claims (8)

  1. 表面層を厚さ0.1μm以上研削除去された冷延鋼板上にNiを0.2g/m 2 以上2.0g/m 2 以下プレめっきされた冷延鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、
    質量%で、
    C:0.05%以上、0.4%以下、
    Si:0.01%以上、3.0%以下、
    Mn:0.1%以上、3.0%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.05%以下、
    N:0.01%以下、
    Al:0.01%以上、2.0%以下、
    Si+Al>0.5%
    を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
    ミクロ組織が、体積分率で主相としてフェライトを40%以上含有し、残留オーステナイトを8%以上、下記に規定する3種類のマルテンサイト[1][2][3]のマルテンサイト[3]を含む2種以上と1%以上のベイナイト及び0〜10%のパーライトを含有し且つ、前記3種類のマルテンサイト[1][2][3]がそれぞれ、体積分率で、
    マルテンサイト[1]:0%以上、50%以下
    マルテンサイト[2]:0%以上、20%未満
    マルテンサイト[3]:1%以上、30%以下、
    である鋼板の表面に、Feを7%未満含有し、残部がZn、Alおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有し、
    引張強度TS(MPa)、全伸び率EL(%)、穴拡げ率λ(%)としてTS×ELが18000MPa・%以上、TS×λが35000MPa・%以上であり、引張強度980MPa以上有することを特徴とするめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
    マルテンサイト[1]:C濃度(CM1)が0.8%未満で、硬さHv1が、
    Hv1/(-982.1×CM1 2 +1676×CM1+189)≦0.60
    マルテンサイト[2]:C濃度(CM2)が0.8%以上で、硬さHv2が、
    Hv2/(-982.1×CM2 2 +1676×CM2+189)≦0.60
    マルテンサイト[3]:C濃度(CM3)が0.8%以上で、硬さHv3が、
    Hv3/(-982.1×CM3 2 +1676×CM3+189)≧0.80
  2. 表面層を厚さ0.1μm以上研削除去された冷延鋼板上にNiを0.2g/m 2 以上2.0g/m 2 以下プレめっきされた冷延鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、
    質量%で、
    C:0.05%以上、0.4%以下、
    Si:0.01%以上、3.0%以下、
    Mn:0.1%以上、3.0%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.05%以下、
    N:0.01%以下、
    Al:0.01%以上、2.0%以下、
    Si+Al>0.5%
    を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
    ミクロ組織が、体積分率で主相としてフェライトを40%以上含有し、残留オーステナイトを8%以上、下記に規定する3種類のマルテンサイト[1][2][3]のマルテンサイト[3]を含む2種以上と1%以上のベイナイト及び0〜10%のパーライトを含有し且つ、前記3種類のマルテンサイト[1][2][3]がそれぞれ、体積分率で、
    マルテンサイト[1]:0%以上、50%以下
    マルテンサイト[2]:0%以上、20%未満
    マルテンサイト[3]:1%以上、30%以下、
    である鋼板の表面に、Feを7〜15%含有し、残部がZn、Alおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を有し、
    引張強度TS(MPa)、全伸び率EL(%)、穴拡げ率λ(%)としてTS×ELが18000MPa・%以上、TS×λが35000MPa・%以上であり、引張強度980MPa以上有することを特徴とするめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
    マルテンサイト[1]:C濃度(CM1)が0.8%未満で、硬さHv1が、
    Hv1/(-982.1×CM1 2 +1676×CM1+189)≦0.60
    マルテンサイト[2]:C濃度(CM2)が0.8%以上で、硬さHv2が、
    Hv2/(-982.1×CM2 2 +1676×CM2+189)≦0.60
    マルテンサイト[3]:C濃度(CM3)が0.8%以上で、硬さHv3が、
    Hv3/(-982.1×CM3 2 +1676×CM3+189)≧0.80
  3. さらに、鋼中に質量%で、
    Cr:0.05%以上、3.0%以下、
    Mo:0.05%以上、1.0%以下、
    Ni:0.05%以上、3.0%以下、
    Cu:0.05%以上、3.0%以下、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. さらに、鋼中に質量%で、
    Nb:0.005%以上、0.3%以下、
    Ti:0.005%以上、0.3%以下、
    V:0.01%以上、0.5%以下、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. さらに、鋼中に質量%で、
    B:0.0001%以上、0.1%以下を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. さらに、鋼中に質量%で、
    Ca:0.0005%以上、0.01%以下、
    Mg:0.0005%以上、0.01%以下、
    REM:0.0005%以上、0.01%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  7. 請求項1、3〜6のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    鋳造スラブを直接または一旦冷却した後1100℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下の温度域にて巻き取り、酸洗、圧下率40%以上、70%以下の冷延を施し、730℃以上、900℃以下にて焼鈍し、600℃以上750℃以下の温度まで0.1℃/秒以上、20℃/秒以下の速さでの一次冷却において、(A)焼鈍温度を730℃以上、800℃未満とする、(B)一次冷却停止温度を600℃以上、700℃未満とする、(C)一次冷却の平均速度を0.1℃/秒以上、5.0℃/秒以下とする、の3つの条件(A)(B)(C)のうち、1種または2種以上の条件を満たし、さらにこの温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却して、350℃以上、450℃以下の範囲で120秒以上保持し、冷却した後、鋼板の表面層を厚さ0.1μm以上研削除去し、Niを0.2g/m2以上、2.0g/m2以下プレめっきし、10℃/秒以上の昇温速度でさらにこの温度から(亜鉛めっき浴温度−40)℃以上(亜鉛めっき浴温度+50)℃以下に加熱後、亜鉛めっきすることを特徴とする引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  8. 請求項2〜6のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    鋳造スラブを直接または一旦冷却した後1100℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下の温度域にて巻き取り、酸洗、圧下率40%以上、70%以下の冷延を施し、730℃以上、900℃以下にて焼鈍し、600℃以上750℃以下の温度まで0.1℃/秒以上、20℃/秒以下の速さでの一次冷却において、(A)焼鈍温度を730℃以上、800℃未満とする、(B)一次冷却停止温度を600℃以上、700℃未満とする、(C)一次冷却の平均速度を0.1℃/秒以上、5.0℃/秒以下とする、の3つの条件(A)(B)(C)のうち、1種または2種以上の条件を満たし、さらにこの温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却して、350℃以上、450℃以下の範囲で120秒以上保持し、冷却した後、鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去し、Niを0.2g/m2以上、2.0g/m2以下プレめっきし、10℃/秒以上の昇温速度でさらにこの温度から(亜鉛めっき浴温度−40)℃以上、(亜鉛めっき浴温度+50)℃以下に加熱後、亜鉛めっきし、470℃以上、600℃以下で10秒以上、40秒以下の合金化加熱処理を行うことを特徴とする引張強度980MPa以上有するめっき密着性と成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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