JP4482360B2 - 塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、塗装焼付硬化性能(BH)、常温遅時効性、成形性を兼ね備えた冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
本発明が係わる冷延鋼板とは、自動車、家庭電気製品、建物などに使用されるものである。そして、表面処理をしない狭義の鋼板と、防錆のために溶融Znめっき、合金化溶融Znめっき、電気Znめっきなどの表面処理を施した広義の鋼板を含む。
本発明による鋼板は、塗装焼付硬化性能を有する鋼板であるので、使用に当たっては今までの鋼板より板厚を減少できること、すなわち軽量化が可能となる。したがって、地球環境保全に寄与できるものと考えられる。
溶鋼の真空脱ガス処理の最近の進歩により、極低炭素鋼の溶製が容易になった現在、良好な加工性を有する極低炭素鋼板の需要は大きい。その中でも、例えば特許文献1などに開示されているTiとNbを複合添加した極低炭素鋼板は、きわめて良好な加工性を有し、塗装焼付硬化(BH)性を兼備し、溶融亜鉛めっき特性にも優れているので、重要な位置をしめつつある。
しかしながら、そのBH量は通常のBH鋼板のレベルを超えるものではなく、さらなるBH量を付与しようとすると常温非時効性が確保できなくなるという欠点を有する。
高BH性と常温遅時効性とを兼ね備えた鋼板に関する技術については、例えば特許文献2がある。これは極低炭素鋼に多量のNbとB、さらにはTiを複合添加して焼鈍後の組織をフェライト相と低温変態生成相との複合組織とし、高r値、高BH、高延性および常温非時効性を兼ね備えた冷延鋼板を得るものである。
しかしながら、この技術には以下のような実操業上の問題点を有することがあきらかとなった。
1)このような多量のNb,BさらにはTiを含有する成分の鋼では、α→γ変態点が低下するわけではなく、複合組織を得るためには極めて高い温度の焼鈍が必須となり、連続焼鈍時に板破断等のトラブルの原因となること、
2)α+γの温度領域がきわめて狭いため、板幅方向に組織が変化し、結果として材質が大きくばらついたり、数℃の焼鈍温度の変化によって複合組織になる場合とならない場合があり、製造がきわめて不安定となる。
また特許文献3には、Nbを添加した極低炭素冷延鋼板において、焼鈍後の冷却速度を制御することによって粒界中の炭素濃度を高めて、高BHと常温遅時効性との両立が可能であることが示されている。しかしながら、これによっても高BHと常温遅時効性とのバランスは十分とは言えない。
さらに従来のBH鋼板では、BHの熱処理条件が170℃−20分であれば所定のBH量を得ることができるが、この条件が160℃−10分や150℃−10分ではBHが低下してしまうという問題がある。
特開昭59−31827号公報 特公平3−2224号公報 特開平7−300623号公報
上述の通り、従来のBH鋼板は安定的な製造が困難であったり、BH量を増加させると同時に常温遅時効性が失われるという欠点を有していた。また、塗装焼付の温度が現状の170℃に対して160℃ないし150℃のような低温になると、十分なBH量が得られないという問題がある。
本発明者らは、このような問題を解決するための技術を特願2002−251536号にて開示しているが、更に塗装焼付硬化性能と常温遅時効性能とのバランスを改善できることを新たに発見した。
本発明は、高BH性と常温遅時効性とを兼ね備え、またBHの温度が低温となっても十分なBH量を有する冷延鋼板と、それを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目標を達成するために鋭意研究を遂行し、以下に述べるような従来にはない知見を得た。
すなわち、固溶Nの残存する鋼にCrとO(酸素)を添加し、さらにPとBとを添加し、冷延後所定の熱処理を施すことにより、従来以上に優れたBHと常温遅時効性を有し、かつ塗装焼付条件が低温短時間となっても高BH性を確保することが可能であることを見いだしたものである。
本発明は、このような思想と新知見に基づいて構築された従来にはない全く新しい鋼板であり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1) 質量%で、
C :0.0005〜0.0040%、 Si:0.8%以下、
Mn:2.2%以下、 S :0.0005〜0.009%、
Cr:0.4〜1.3%、 O :0.0051〜0.020%、
P :0.045〜0.12%、 B :0.0002〜0.0010%、
Al:0.008%以下、 N :0.001〜0.007%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、2%引張変形後170℃にて20分間の熱処理を施すことによって評価されるBH170が50MPa以上で、かつ2%引張変形後160℃にて10分間の熱処理を施すことによって評価されるBH160および2%引張変形後150℃にて10分間の熱処理で評価されるBH150がいずれも45MPa以上であることを特徴とする塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板。
(2) 質量%でさらに、Mo:0.001〜1.0%を含有することを特徴とする(1)記載の塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板。
(3) 質量%でさらに、V,Zr,Ce,Ti,Nb,Mgのうち1種または2種以上を合計で0.001〜0.02%含有することを特徴とする(1)または(2)記載の塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板。
(4) 質量%でさらに、固溶C:0.0020%以下、固溶N:0.0005〜0.004%を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板
) (1)〜()のいずれか1項に記載の化学成分を有するスラブを(Ar3 点−100)℃以上で熱間圧延を行い、90%以下の圧下率で冷間圧延を施し、最高到達温度が750〜920℃となるように焼鈍し、550〜750℃の温度範囲内で15s以上保持することを特徴とする塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。() (1)〜()のいずれか1項に記載の化学成分を有するスラブを(Ar3 点−100)℃以上で熱間圧延を行い、90%以下の圧下率で冷間圧延を施し、最高到達温度が750〜920℃となるように焼鈍し、550〜750℃の温度範囲内で15s以上保持し、ついで150〜450℃で120秒間以上の熱処理を行なうことを特徴とする塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。
) (1)〜()のいずれか1項に記載の化学成分を有するスラブを(Ar3 点−100)℃以上で熱間圧延を行い、90%以下の圧下率で冷間圧延を施し、連続溶融亜鉛めっきラインにて最高到達温度が750〜920℃となるように焼鈍し、550〜750℃の温度範囲内で15s以上保持したのち、亜鉛めっき浴に浸漬することを特徴とする塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた亜鉛めっき冷延鋼板の製造方法。
) 亜鉛めっき浴に浸漬後、460〜550℃で1s以上の熱処理を行うことを特徴とする()記載の塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた亜鉛めっき冷延鋼板の製造方法。
本発明により、高BH性と常温遅時効性とのバランスのとれた鋼板を得ることができる。
本発明において鋼組成および製造条件を上述のように限定する理由について、さらに説明する。
CはBH性の向上には好ましい。しかし、Cを0.0005%未満とするのは製鋼技術上困難でコストアップとなるのでこれを下限とする。一方、C量が0.0040%を超えると成形性の劣化を招くだけでなく、本発明で重要な高BH性と常温非時効性を両立することが困難となるのでこれを上限とする。0.0007%以上0.0025%未満がさらに好ましいCの範囲である。
Siは固溶体強化元素として機能し、安価にかつ成形性を過度に劣化させること無く強度を増加させる働きがあるので、その添加量は狙いとする強度レベルに応じて変化するが、添加量が0.8%超となると表面性状に関わる問題を誘発するのでこれを上限とする。また、溶融亜鉛めっきまたは合金化溶融亜鉛めっきを施す場合には、めっき密着性の低下、合金化反応の遅延による生産性の低下などの問題が生ずるので、0.6%以下とすることが好ましい。自動車のドアやフード等の外板パネルなどの表面品位が特に重要な用途に対しては、0.05%を上限とすることが好ましい。
下限は特に設けないが、0.001%以下とするのは製造コストが高くなるのでこれが実質的な下限である。また、Al量の制御の観点でAl脱酸を行うことが困難な場合には、Siで脱酸することもあり得る。この場合には0.04%以上のSiが含有される。
Mnは固溶体強化元素として有用である他、MnSを形成し熱延時のSによる耳割れを抑制する効果がある。さらにMnは固溶Nに起因する常温時効を抑制する効果を有するので、0.3%以上添加することが好ましい。ただし、深絞り性を必要とする場合には0.15%以下、さらには0.10%未満とすることが好ましい。一方、2.2%を超えると強度が高くなりすぎて延性が低下したり、亜鉛めっきの密着性が阻害されたりするので、これを上限とする。
Sは、0.009%超では熱間割れの原因となったり、加工性を劣化させるのでこれを上限とする。一方で、S量を0.0005%未満とするのは製鋼技術上困難であるので、これを下限とする。
Crは本発明において重要である。0.4%以上のCr添加によって高BH性と耐常温時効性とを両立することが可能となる。NはCよりも拡散速度が大きいため、耐常温時効性を確保することが困難であることが知られている。このため自動車の外板パネル等、外観が重視される部材にはNを活用したBH鋼板は適用されていない。
しかしながらCrを積極的に添加することで、BH性を損なうことなく常温遅時効性を得ることが可能であることを見いだした。これらの元素によって耐常温時効性が向上する機構は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
常温付近では、これらの元素とNとがペアやクラスターを形成し、Nの拡散を抑えるため耐常温時効性が確保されるのに対して、150〜170℃での塗装焼付処理においては、Nがこれらのペアやクラスターから脱出し、転位を固着するため高BH性が発現する。 Crは多すぎるとCr窒化物が析出し、BH性が損なわれることがある。また加工性、めっき密着性、コストの点でも過度の添加は好ましくないので、上限を1.3%とする。0.5〜0.8%がより好ましい範囲である。
O(酸素)も本発明において特に重要な元素である。Oを所定の量に制御することによって上記したCrのBHと常温遅時効性との寄与が大きくなることを発見した。この理由は必ずしも明らかではないが、酸化物の周辺にCrとNが優先的に偏析し、上述したように、Crが常温でNの拡散を抑制する効果を助長しているためと推察される。
O量は、0.003%以上とすることでこのような効果が明確になるため、これを下限とする。一方で、Oが0.020%を超えるとこのような効果が飽和する傾向となるだけでなく、r値や延性等の加工性が劣化するため0.020%を上限とする。0.005〜0.015%がより好ましいOの範囲である。なお、O量の下限値は、本発明の実施例に基づき、0.0051%とする。
Oは通常はFeの酸化物として存在するが、Al,Ce,Zr,Mg,Siなどの酸化物またはそれらの複合酸化物として存在しても構わない。ただし、Al系の酸化物では高BHと常温遅時効性との両立に対する寄与が小さく、また表面性状を劣化させるので極力低減することが望まれる。
また、酸化物の形態やサイズ、分布は特に限定しないが、表面積を大きくする観点で球状が好ましく、その平均直径は1.0μm以下、また製品板の結晶粒界に存在する割合が体積率で20%以下であることが好ましい。これらの要件はいずれもCrとNの偏析に有効なサイトを極力増加させる観点に立つものである。同様の観点から酸化物のみならず、MnS,CaS,CuS等を微細分散させることも有効である。
Pは本発明において重要である。すなわちPを添加することによって、上述のCrおよびO添加による塗装焼付硬化性能と常温遅時効性とのバランス改善効果をさらに助長することを新たに見出した。これは後述のBとの複合添加によって初めて発現する。
Pがこのような効果を有する理由は明らかではないが、結晶粒界にPが偏析することによってBH性に有効なNが結晶粒界に偏析することを妨げ、上述のCrやOによるNへの作用を助長するものと推察される。
このようなPの効果は、0.045%以上の添加によって発現する。ただし、添加量が0.12%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、スポット溶接後の疲労強度が劣悪となったり、降伏強度が増加し過ぎたりしてプレス時に面形状不良を引き起こす。さらに、連続溶融亜鉛めっき時に合金化反応が極めて遅くなり、生産性が低下する。また、2次加工性も劣化する。したがってその上限値を0.12%とする。好ましくは0.05〜0.085%である。
Bも重要である。Bも塗装焼付硬化性能と常温遅時効性とのバランスを改善する効果を有する。これは上述のPによる改善のメカニズムと同様であると推測される。BはPと同時に添加することが必須である。このようなBの効果を発現させるためには0.0002%以上の添加を要する。一方で、Bを0.0010%超としてもこのような効果が飽和するばかりか、B窒化物を形成してBH性を劣化させるのでこれを上限とする。好ましくは0.0004〜0.0008%とする。
Alは脱酸調製剤として使用しても良い。ただし、AlはNと結合してAlNを形成する結果、BH性が低下するので、その添加は製造技術上無理のない範囲で必要最小限にとどめることが望ましい。この観点から冷延鋼板の場合には上限を0.008%以下とする。Al量が0.008%超では、固溶Nを確保するために全N量を多量に添加せねばならず、製造コストや成形性の点で不利である。0.005%未満がより好ましく、0.003%未満がさらに好ましい上限である。
Nは本発明において重要である。すなわち本発明においては、主としてNによって高BH性を達成するものである。したがって0.001%以上の添加が必須である。一方でNが多すぎると常温遅時効性を確保するために過剰のCrを添加しなくてはならなくなったり、加工性が劣化したりするので、0.007%を上限値とする。より好ましくは0.0015〜0.0035%である。
さらに、NはAlと結合してAlNを形成しやすいので、BHに寄与するNを確保するためにN−0.52Al>0%を満たすことが好ましい。より好ましくはN−0.52Al>0.0005%とする。この式は化学量論的にAlよりもN量が多いことが必要条件であることから決められたものである。
Moは、主に固溶強化元素として0.001%以上含有しても良い。また、多量添加では炭窒化物形成による強化も期待できる半面、延性劣化が著しいため、上限を1.0%とした。
Vは、Crの存在下で添加すると常温遅時効性の確保に有効に作用するため、0.001%以上添加することが好ましい。一方、下記のZr,Ce,Ti,Nb,Mgと合わせ、これらの1種又は2種以上の合計で0.02%超の添加は、窒化物の形成を助長するのでこれを上限とする。
Zr,Ce,Ti,Nb,Mgは脱酸元素として有効で、かつ溶鋼中で浮上しにくいために鋼中に酸化物として残存しやすいので、CrやNの偏析サイトとして有効に働く。また、NbやTiには加工性を向上せしめる効果があることは広く知られているので、単独添加の場合それぞれ0.001%以上、望ましくは0.003%以上添加することが好ましい。しかし、添加量が多すぎると窒化物を形成し、固溶Nの確保が困難となるので、前記のVを含めこれらの1種又は2種類以上添加する際も合計で0.02%以下とする。
固溶C量は、0.0020%以下とすることが好ましい。本発明においては、主としてNによって高BH性と常温遅時効性とを確保するので、固溶C量が多すぎると常温遅時効性を確保することが困難となる。固溶Cは0.0015%未満とすることがより好ましく、0%であることが最も好ましい。固溶C量の調整は、全C量を上述の上限以下とすることによって行っても良いし、巻取温度や過時効処理条件によって所定のレベルまで低減しても良い。
固溶Nは、合計で0.0005〜0.004%とすることが好ましい。ここで固溶Nとは単独でFe中に存在するNだけでなく、Cr,Mo,V,Mn,Si,Pなどの置換型固溶元素とペアやクラスターを形成するNも含む。固溶N量は、全N量からAlN,NbN,VN,TiN,BN,ZrNなどの化合物として存在するN量(抽出残査の化学分析から定量)を差し引いた値から求めることができる。また、内部摩擦法やFIM(Field Ion Microscopy)によって求めても良い。
固溶Nが0.0005%未満では十分なBHを得ることができない。また、0.004%を超えてもBH性は向上するが、常温遅時効性を得ることが困難となる。より好ましくは0.0008〜0.0022%である。なお、固溶Nは50%以上がCrとペアを形成しているか、酸化物や析出物の周辺に偏析していることが望ましい。このようなNの存在位置はFIM(Field Ion Microscopy)によって確認することができる。
Caは、脱酸元素として有用であるほか、硫化物の形態制御にも効果を奏するので、0.0005〜0.01%の範囲で添加しても良い。0.0005%未満では効果が十分でなく、0.01%超添加すると加工性が劣化するのでこの範囲とする。
これらを主成分とする鋼に、機械的強度の増加や疲労特性向上などのため、Sn,Cu,Ni,Co,ZnおよびWの1種又は2種以上を、合計で0.001〜1%含有しても構わない。またCe以外のRemを合計で0.1%以下含有しても構わない。
次に、製造条件の限定理由について述べる。
熱間圧延に供するスラブは特に限定するものではない。すなわち、連続鋳造スラブや薄スラブキャスターなどで製造したものであればよい。また、鋳造後に直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直接圧延(CC−DR)のようなプロセスにも適合する。
熱延の仕上げ温度は、(Ar3 −100)℃以上とする。(Ar3 −100)℃未満では、加工性を確保するのが困難であったり板厚精度の問題を生じたりする。Ar3 点以上がより好ましい範囲である。仕上げ温度の上限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、r値を確保するためには1000℃以下とすることが好ましい。
なお、熱延の加熱温度は特に限定するものではないが、固溶Nを確保するために溶解させる必要のある場合には、1150℃以上とすることが望ましい。
熱延後の巻取温度は、750℃以下とすることが好ましい。下限は特に設けないが、良好な加工性を得るためには200℃以上とすることが好ましい。
冷間圧延の圧下率は90%以下とする。90%超とするのは設備への負荷が過大となるだけでなく、製品の機械的性質の異方性が大きくなる。好ましくは86%以下である。圧下率の下限は特に定めないが、加工性を確保するためには30%以上とすることが好ましい。
焼鈍は、最高到達温度を750〜920℃とする。焼鈍温度が750℃未満では、再結晶が完了せず加工性が劣悪となる。一方、焼鈍温度が920℃超では、組織が粗大化したり、加工性の低下を招く。770〜870℃がより好ましい範囲である。
焼鈍後の冷却過程は、本発明において重要である。すなわち、焼鈍後の550〜750℃の温度範囲内で15s以上保持する必要がある。なお、この保持は一定温度で行う必要は無く、550〜750℃の範囲の温度となっている時間が15s以上であればいかなる履歴を経ても構わない。この熱処理によって高BH性と常温遅時効性とに優れた鋼板を製造することが可能となる。上記の熱処理は、600〜700℃で20s以上行うのがより好ましい。
熱処理後の過時効処理は、塗装焼付硬化性能と常温遅時効性をさらに向上せしめるのに有効である。このためには過時効温度を150〜450℃とするのが良く、時間は120s以上とする。過時効処理時間の上限は特に定めないが、長すぎると生産性を低下させるので1000s以下とすることが好ましい。
一方、溶融亜鉛めっきを施す場合には、最高到達温度を750〜920℃とする焼鈍を行った後、550〜750℃の温度範囲内で15s以上保持する。なお、この保持は一定温度で行う必要は無く、550〜750℃の範囲の温度となっている時間が15s以上であればいかなる履歴を経ても構わない。この熱処理によって高BH性と常温遅時効性とに優れた鋼板を製造することが可能となる。この熱処理は、600〜700℃で20s以上行うのがより好ましい。
引き続き亜鉛めっき浴に浸漬する。亜鉛めっき浴温度は420〜500℃である。表面の亜鉛と鋼板の鉄とを合金化させる場合には、めっき浴浸漬後に460〜550℃の温度で1s以上、より好ましくは5s以上の熱処理を施す。加熱時間の上限は特に定めないが、生産性確保の観点から40s以下とすることが好ましい。
これらの条件が常温遅時効性の向上に好適であることの理由は必ずしも明らかではないが、PとBの粒界偏析を助長させ、酸化物の周辺にCrとNが偏析することを促しているものと推測される。
調質圧延は、常温遅時効性のさらなる向上、また形状強制のために圧下率3%以下の範囲で行うのがよい。3%を超えると降伏強度が高くなったり、設備の負荷が大きくなるのでこれを上限とする。
本発明によって得られる冷延鋼板の組織は、フェライトまたはベイナイトを主相とするが、両相が混在していても構わないし、これらにマルテンサイト、酸化物、炭化物、窒化物が存在していても良い。すなわち要求特性に応じて組織を作り分ければ良い。
本発明によって得られる鋼板は、BH170が50MPa以上、BH160およびBH150がいずれも45MPa以上である。BHの上限は特に限定しないが、BH170が150MPa、BH160およびBH150が130MPaを超えると耐常温時効性を確保することが困難となる。なおBH170とは、2%引張変形後170℃にて20分間の熱処理を施すことによって、BH160は2%引張変形後160℃にて10分間の熱処理を施すことによって、さらにBH150は2%引張変形後150℃にて10分間の熱処理で評価されるBHを表す。
常温遅時効性は人工時効後の降伏点伸びによって評価される。本発明によって得られる鋼板は、100℃にて1時間熱処理後の引張試験における降伏点伸びが0.3%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。
次に本発明を実施例にて説明する。
表1の鋼をスラブ加熱温度1220℃、仕上げ温度940℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、3.5mm厚の鋼帯とした。酸洗後、80%の圧下率の冷間圧延を施し0.7mm厚の冷延板とし、ついで連続焼鈍設備にて加熱速度10℃/s、最高到達温度800℃とする焼鈍を行い、その後表2に示すとおり、550〜750℃における保持時間を変化させながら冷却し、また過時効処理温度も変化させた。なお過時効処理時間は180秒一定とした。さらに1.0%の圧下率の調質圧延をし、JIS5号引張試験片を採取しBH、人工時効後の降伏点伸びの測定を行った。
結果を表2に示す。これより明らかなとおり、本発明の化学成分を有する鋼を適正な条件で焼鈍した場合には、高BH性と常温遅時効性とのバランスにおいて優位にあることが分かる。
表1の鋼のうちB,Gをスラブ加熱温度1180℃、仕上げ温度910℃、巻取り温度650℃で熱間圧延し、4.0mm厚の鋼帯とした。酸洗後、80%の圧下率の冷間圧延を施し0.8mm厚の冷延板とし、ついで連続溶融亜鉛めっき設備にて加熱速度14℃/s、最高到達温度820℃とする焼鈍を行い、550〜750℃における保持時間を変化させながら冷却し、460℃の亜鉛浴に浸漬させたのち、15℃/sにて500℃まで再加熱し、15秒間保持を行った。その後、さらに0.8%の圧下率の調質圧延をし、JIS5号引張試験片を採取しBH、人工時効後の降伏点伸びの測定を行った。
結果を表3に示す。これより明らかなとおり、適正な条件で製造した場合には、高BH性と常温時遅効性とを両立することができた。
Figure 0004482360
Figure 0004482360
Figure 0004482360

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C :0.0005〜0.0040%、
    Si:0.8%以下、
    Mn:2.2%以下、
    S :0.0005〜0.009%、
    Cr:0.4〜1.3%、
    O :0.0051〜0.020%、
    P :0.045〜0.12%、
    B :0.0002〜0.0010%、
    Al:0.008%以下、
    N :0.001〜0.007%
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、2%引張変形後170℃にて20分間の熱処理を施すことによって評価されるBH170が50MPa以上で、かつ2%引張変形後160℃にて10分間の熱処理を施すことによって評価されるBH160および2%引張変形後150℃にて10分間の熱処理で評価されるBH150がいずれも45MPa以上であることを特徴とする塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板。
  2. 質量%でさらに、Mo:0.001〜1.0%を含有することを特徴とする請求項1記載の塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板。
  3. 質量%でさらに、V,Zr,Ce,Ti,Nb,Mgのうち1種または2種以上を合計で0.001〜0.02%含有することを特徴とする請求項1または2記載の塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板。
  4. 質量%でさらに、固溶C:0.0020%以下、固溶N:0.0005〜0.004%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化学成分を有するスラブを(Ar3 点−100)℃以上で熱間圧延を行い、90%以下の圧下率で冷間圧延を施し、最高到達温度が750〜920℃となるように焼鈍し、550〜750℃の温度範囲内で15s以上保持することを特徴とする塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化学成分を有するスラブを(Ar3 点−100)℃以上で熱間圧延を行い、90%以下の圧下率で冷間圧延を施し、最高到達温度が750〜920℃となるように焼鈍し、550〜750℃の温度範囲内で15s以上保持し、ついで150〜450℃で120秒間以上の熱処理を行なうことを特徴とする塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化学成分を有するスラブを(Ar3 点−100)℃以上で熱間圧延を行い、90%以下の圧下率で冷間圧延を施し、連続溶融亜鉛めっきラインにて最高到達温度が750〜920℃となるように焼鈍し、550〜750℃の温度範囲内で15s以上保持したのち、亜鉛めっき浴に浸漬することを特徴とする塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた亜鉛めっき冷延鋼板の製造方法。
  8. 亜鉛めっき浴に浸漬後、460〜550℃で1s以上の熱処理を行うことを特徴とする請求項記載の塗装焼付硬化性能と常温遅時効性に優れた亜鉛めっき冷延鋼板の製造方法。
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