JP2008195932A - プロピレン系重合体成形体、その塗装物及び積層体 - Google Patents

プロピレン系重合体成形体、その塗装物及び積層体 Download PDF

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晃太郎 能澤
Yasushi Hiura
▲靖▼ 日浦
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Abstract

【課題】 塗料付着性、接着性、印刷性に優れたプロピレン系重合体のシート等の成形体を提供する。
【解決手段】 2種以上のプロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成される平板状成形体であって、該成形体の成形時の移送方向と平行な断面構造が、1種のプロピレン系重合体からなるアスペクト比Xが2以上の線条体を厚さ1μmあたり1.5本以上有する線条層を少なくとも一層有するプロピレン系重合体成形体及び該成形体の塗装物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系重合体から得られる成形体、その塗装物及び積層体に関する。詳しくは2種以上のプロピレン系重合体により形成されるシート等の成形体であって、特定構造を有し塗料付着性、接着性、印刷性が良好で、しかもこの成形体を加工することにより均質な性質を有する成形品を得ることができるプロピレン系重合体の成形体に関する。
ポリオレフィン系樹脂は成形加工性、耐有機溶剤性に優れ、また安価なことから家電製品の外板、自動車の外装、及び内装部品等に広く用いられている。特に自動車用外装部品の用途においては、軽量化とコストの両面からポリオレフィン系樹脂の利用はますます広まっている。しかし、ポリオレフィン系樹脂は分子構造が非極性のため、他の物質との親和性が乏しく、塗料付着性、接着性、印刷性が著しく劣っている。
これを改善する方法として、極性モノマーをポリプロピレンへグラフト重合したり、その極性モノマーの重合物をブレンドしたりする方法などが知られている(特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4)。しかしながら、上記の性能を発揮させるために、これらの重合物を多量にポリプロピレン中へ含有させようとすると、成形性が低下し分散性が悪くなる。そのため、得られる成形体は塗料付着性、接着性、印刷性などの性質が成形体の場所によりむらがあり、満足するものは得られにくい。
特開昭62−257946号公報 特開平05−039383号公報 特開平07−109437号公報 特開平09−048885号公報
このような状況に鑑み、本発明の課題は、プロピレン系重合体から形成され、従来のポリプロピレン系材料から得られる成形体に比べ塗料付着性、接着性、印刷性が大幅に優れている成形体を提供することにあり、該成形体は、その成形時にフローマークの発生や高分子量体の凝集体に起因するブツが発生せず、かつ全体として均質な構造を有することにより優れた外観を有する成形品である。
本発明者等は、上記課題を解決するために、プロピレン系重合体を含む樹脂組成物の分散形態について研究した結果、所定の物性を有する2種以上のプロピレン系重合体を含む樹脂組成物は成形性に優れており、しかも該樹脂組成物から得られる成形体は、特定の構造を有し、それによって塗料付着性、接着性、印刷性を持つのみならず成形物の場所による性質むらが少ないことを見出し、本発明を達成した。
即ち、本発明の要旨は、2種以上のプロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成される平板状成形体であって、該成形体の成形時の移送方向と平行な断面構造が、1種のプロピレン系重合体からなるアスペクト比Xが2以上の線条体を厚さ1μmあたり1.5本以上有する線条層を少なくとも一層有することを特徴とするプロピレン系重合体成形体、該成形体の塗装物及び積層体に存する。
本発明の2種以上のプロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成されるシート等の平板状成形体は、優れた成形性、塗膜密着性、接着性、印刷性を持ち、しかも該成形体からは場所による性質むらが少ない成形品を提供することが可能であるため、工業的に非常に有用なものである。
以下、本発明をより詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表例であり、これらの内容に限定されるものではない。
<プロピレン系重合体を含む樹脂組成物>
本発明の成形体は、2種以上のプロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成され、その少なくとも1種は官能基を有するプロピレン系重合体であるのが好ましい。該樹脂組成物に使用されるプロピレン系重合体について説明する。
なお、本明細書中、平板状成形体とは、フィルム、シート、薄板などの平面形態を有する成形体を含むものである。
[1]樹脂組成物の配合成分
(A)官能基を有するプロピレン系重合体[以下、(A)成分と言うこともある]
本発明で使用される官能基を有するプロピレン系重合体は、その主鎖におけるプロピレン連鎖部分がステレオブロック構造、即ちアイソタクチックブロックと非晶性ブロックを交互に2以上有する構造を持つことを特徴とする官能基を含有するプロピレン系重合体である。ここで、プロピレン系重合体とは、プロピレンを主要な構成単位とする重合体であり、また、官能基を有するプロピレン系重合体は、プロピレン単位とコモノマーとして官能基(以下、極性基と言うこともある。)を有するモノマー単位をその構造の一部に有しているものである。なお、プロピレン系重合体は、プロピレンと極性基を有するモノマー以外に、エチレンや、炭素数4〜20のα−オレフィンをコモノマーとして含んでいてもよい。プロピレン系重合体のステレオブロック構造は、後述する13C−NMRスペクトルの測定方法により、特定ペンタッドのピーク面積から決められる。
(A)−Iステレオブロック構造を有するプロピレン単独重合体
本発明における極性基含有プロピレン系重合体の主鎖として、ステレオブロック構造を有するプロピレン単独重合体((A)−I成分)が考えられ、該重合体は、プロピレンを
シングルサイト触媒である、メタロセン触媒を用いた重合方法により製造したものが好ましい。ステレオブロック構造を有するプロピレン単独重合体((A)−I成分)は、特
開2004−300192号公報に記載されている重合触媒の調整法、重合の方法等を適宜採用して製造することが出来る。ステレオブロック構造を有するプロピレン単独重合体は、上述のように、主鎖におけるプロピレン連鎖部分が、アイソタクチックブロックと非晶性ブロックを交互に2以上有するステレオブロック構造を持つものであるが、好ましくは、13C−NMRスペクトルによって規定される次の要件(a)を満たすものである。より好ましくは要件(b)をも満たすものである。すなわち
(a) 13C−NMRスペクトルにて、頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際の、21.8ppmをピークトップとするピークの面積をS1とし、かつ、mmmrで表されるペンタッドに帰属される21.5〜21.6ppmをピークトップとするピークの面積をS2としたとき、4+2S1/S2>5であること。
(b) 同様に、19.8ppmから22.2ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピークの面積S1の比率S1/Sが10%以上、90%以下であること。
ケミカルシフトは、頭−尾(head to tail)結合からなるプロピレン単位連鎖部の10種類のペンタッド(mmmm,mmmr,rmmr,mmrr,mmrm,rmrr,rmrm,rrrr,rrrm,mrrm)のうち、メチル分岐の絶対配置がすべて同一である、すなわち、mmmmで表されるプロピレン単位5連鎖の第3単位目のメチル基にもとづくピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとして設定し、これを基準として他の単位5連鎖の第3番単位目のメチル基にもとづくピークのピークトップのケミカルシフトを決定する。この基準では、例えば、その他のプロピレン単位5連鎖の場合、ピークトップのケミカルシフトはおおむね次のようになる。すなわち、mmmr:21.5〜21.7ppm、rmmr:21.3〜21.5ppm、mmrr:21.0〜21.1ppm、mmrmおよびrmrr:20.8〜21.0ppm、rmrm:20.6〜20.8ppm、rrrr:20.3〜20.5ppm、rrrm:20.1〜20.3ppm、mrrm:19.9〜20.1ppmである。なお、これらのペンタッドに由来するピークのケミカルシフトは、NMRの測定条件によって多少の変動があること、および、ピークは必ずしも単一ピーク(single peak)ではなく、微細構造にもとづく複雑な分裂パターン(split pattern)を示すことが多い点に注意して帰属を行う必要がある。
上述の要件(b)は、本発明の極性基含有プロピレン系重合体の、主鎖のアイソタクティシティが不完全であり、全ペンタッド中のmmmmペンタッドの割合が10%以上90%以下であることを表す。このうち、下限としては、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。また、上限としては、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましく、50%以下が最も好ましい。下限値より高いほどべたつき度合いが小さくなる傾向があり、また上限値より低いほど結晶化度が低くなり樹脂分散体の調整が容易になる傾向がある。
一方、要件(a)において、4+2S1/S2>5という関係式は、Waymouthらによりアイソタクチックブロックインデックス(BI)と名づけられた指数(特表平9−510745号公報参照)と密接な関連がある。BIは、重合体のステレオブロック性を表す指標である。より具体的には、BIは、4個以上のプロピレン単位を有するアイソタクチックブロックの平均連鎖長を表し、BI=4+2[mmmm]/[mmmr]で定義される。(J.W.Collete et al.,Macromol.,22,3858(1989);J.C.Randall,J.Polym.Sci.Polym.Phys.Ed., 14,2083(1976))。統計的に完全なアタクチックポリプロピレンの場合、BI=5となる。したがって、BI=4+2[mmmm]/[mmmr]>5は、重合体中に含まれるアイソタクチックブロックの平均連鎖長が、いわゆるアタクチックポリプロピレンといわれているポリプロピレンのそれよりも長いことを意味し、4+2S1/S2>5という要件により、本発明で使用する重合体が、アタクチックポリプロピレンとは異なり、結晶化可能な連鎖長のアイソタクチックブロックを含有することが示されていることとなる。上記BIのうち、好ましくは6以上、より好ましくは7以上であり、通常500以下、好ましくは300以下である。
本発明で使用する((A)−I成分)としてのステレオブロック構造を有するプロピレ
ン単独重合体の分子量は、その重量平均分子量(Mw)がGPCによる測定で、通常、5,000〜500,000、好ましくは10,000〜300,000である。後述するようにGPCの測定は、オルトジクロロベンゼンなどを溶媒とし、ポリスチレンを標準試薬として市販の装置を用いて測定することができる。
(A)−II ステレオブロック構造を有するプロピレンとエチレンや炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体
ステレオブロック構造を有するプロピレンとエチレンや炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体((A)−II成分)は、プロピレンおよびエチレンや炭素数4〜20のα−オレフィンを共重合成分として含有し、プロピレンおよびエチレンや炭素数4〜20のα−オレフィンをシングルサイト触媒である、メタロセン触媒を用いた重合方法により製造したものが好ましい。((A)−II成分)としての共重合体は、特開2003−292700号公報に記載されている重合触媒の調整法、重合の方法等を適宜採用して製造することが出来、主鎖の構造も13C−NMRスペクトルの測定方法により特定することができる。
ステレオブロック構造を有するプロピレンとエチレンや炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体((A)−II成分)に対して13C−NMRスペクトルの測定を行うと、ステレオブロック構造を有するプロピレンの単独重合体((A) −I成分)と異なり、ピークが多すぎるためmmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークトップのケミカルシフトの解析が不可能となる。
そこで、まずプロピレン単独重合体((A)−I成分)を重合して、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークトップのケミカルシフトを解析する。次いで、エチレンや炭素数4〜20のα−オレフィンを加えることを除いて、プロピレン単独重合体を重合したときと同様の重合条件でステレオブロック構造を有するプロピレンとエチレンや炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体を重合する。得られた共重合体のmmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークトップのケミカルシフトを、前記プロピレン単独重合体((A) −I成分)のmmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークトップのケミカルシフトと同様なものとすることで、共重合体のmmmmを定義することとする。
主鎖のアイソタクティシティが不完全であり、全ペンタッド中のmmmmペンタッドの割合(S1/S)が10%以上90%以下であることが好ましい。(S1/S)の下限としては、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。また、上限としては、80%以下が好ましく、75%以下がより好ましい。下限値より高いほどべたつき度合いが小さくなる傾向であり、また上限値より低いほど結晶化度が低くなり樹脂分散体の調整が容易になる傾向がある。
プロピレンとエチレンや炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体におけるプロピレン含量は、40〜95重量%が好ましく、50〜90重量%が更に好ましい。α−オレフィンとしては、具体的にエチレン、ブチレン、ペンテン、ヘプテン、オクテン等が挙げられるが、これらの中、エチレンが好ましい。
上記により、本発明の極性基含有プロピレン系重合体は、アイソタクチックブロックと、立体特異性(stereospecificity)が乱れたシークエンスからなるブロック、すなわち、非晶性ブロックの両者が、主鎖に存在することを意味する。S1とS2を上記の如く規定した範囲となるように制御する方法としては、重合触媒の構造によって制御する方法、重合温度によって制御する方法、モノマー濃度によって制御する方法等を挙げることができる。S1、S2の温度依存性や、モノマー濃度依存性は、使用する触媒によって異なるので一概に言うことはできない。したがって、使用する触媒の性質にもとづいて、これらの条件を制御することが肝要である。なお、重合触媒の構造によって制御する方法については後述する。
本発明における13C−NMRスペクトルの測定方法は、下記の通りである。
試料350〜500mgを、10mmのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させる。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行う。測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン−格子緩和時間のうち最長の値)とする。プロピレン重合体において、メチレン基およびメチン基のスピン格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。なお、定量精度を上げるため、13C核の共鳴周波数として125MHz以上のNMR装置を使用し、20時間以上の積算を行うのが好ましい。
本発明で使用する((A)−II成分)としてのステレオブロック構造を有するプロピレンとエチレンや炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体の分子量は、その重量平均分子量(Mw)がGPCによる測定で、通常、5,000〜500,000、好ましくは10,000〜300,000である。尚、GPCの測定は下記の通りである。
<GPCの測定法>
装置:Waters社製「150CV型」
カラム温度: 135℃
溶媒: オルトジクロロベンゼン
流量: 1.0 ml/min
カラム: 東ソー株式会社製TSKgel GMHXL−L
注入量: 500 μl (濾過処理)
溶液濃度: 1.0 mg/ml
試料調整: オルトジクロロベンゼンを用い、1.0 mg/mlの溶液に調整し135℃で1〜3時間溶解させる。
分子量の算出:標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびポリプロピレンの粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、プロピレン重合体の分子量の算出を行う。なお、粘度式としては、[η] = KMαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38E−4、α=0.70、ポリプロピレンに対しては、K=1.03E−4、α=0.78を使用する。
(ii)官能基(極性基)
本発明における官能基含有プロピレン系重合体は、主鎖が上述のようなステレオブロック構造となっていると同時に、官能基を含有するものである。官能基としては、成形体に塗布される塗料成分に親和性を有する極性官能基であれば任意の官能基が使用できるが、なかでも、カルボキシル基、エステル基、アミド基、イミド基、酸無水物基、水酸基が好適に使用され、特に好ましくは、酸無水物基、水酸基である。
プロピレン系重合体への極性官能基の導入方法には特に制限はなく、従来公知の方法が使用できる。具体的には、極性官能基を有するモノマーをプロピレンと共重合させる方法、有機溶媒の溶液中でプロピレン系重合体と極性官能基を有するモノマーとを、有機過酸化物を開始剤としてグラフト反応させる溶液法、押出機等の溶融混練装置を用いて、極性官能基を有するモノマーをプロピレン系重合体にグラフト反応させる溶融混練法等を挙げることができる。なお、極性官能基の導入については、ここに挙げた手法を組み合わせたり、同一または異なる手法を複数回実施したりしてもよい。
本発明の官能基含有プロピレン系重合体におけるこれら官能基の含有割合は、次式を満たすことが好ましい。
[(プロピレン系重合体中の官能基含有モノマー重量)/(プロピレン系重合体重量)]×100=0.8〜15.0(重量%)
この官能基含有モノマーの割合が0.8重量%未満では塗料との密着性に乏しく、15.0重量%を超えると、官能基含有プロピレン系重合体の分散性が低下するため、プロピレン系重合体樹脂組成物中において塊となって分散する傾向があり、透明性を低下させる原因となりそれぞれ好ましくない。官能基含有モノマーの含有割合は、好ましくは1.5重量%以上、6.0重量%以下である。
なお、グラフト反応により官能基が導入される場合、この官能基含有モノマーの含有割合はグラフト率で表すこともある。ここで、官能基含有モノマーとは、官能基含有モノマーに由来する該モノマー単位を意味する。
(iii)極性官能基の導入
プロピレン系重合体へ官能基を導入する代表的な具体例としては、官能基を有するモノマーをグラフト共重合させる方法が挙げられる。官能基含有モノマーとしてカルボキシル基を有する極性モノマーをグラフト共重合させる場合、極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸およびその酸誘導体並びにモノオレフィンジカルボン酸、その無水物およびそのモノエステル類が挙げられる。
なお、本明細書中「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を表す。
(メタ)アクリル酸およびそのエステル誘導体の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の炭素数6〜12のアリール基またはアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
さらに、他の(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイドの付加物等のヘテロ原子を含有する炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチル等のフッ素原子を含有する炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド等の(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
モノオレフィンジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、クロロマレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、3−メチル−2−ペンテン・二酸、2−メチル−2−ペンテン・二酸、2−ヘキセン・二酸等が挙げられる。また、モノオレフィンジカルボン酸モノアルキルエステルとしては、炭素数1〜12のアルキルアルコールとこれらのジカルボン酸とのモノエステルが挙げられ、アルキルアルコールとしては、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキシルアルコール等が挙げられる。
モノオレフィンジカルボン酸モノアルキルエステルをグラフト共重合単位としてプロピレン系重合体に導入する場合、このモノオレフィンジカルボン酸モノアルキルエステルをプロピレン系重合体にグラフト共重合する方法の他、モノオレフィンジカルボン酸もしくはその無水物を、プロピレン系重合体にグラフト共重合させた後に、アルキルアルコールによりカルボン酸基の1つをエステル化する方法によって得ることができる。
また、アミド基、イミド基、水酸基を含有する極性官能基含有プロピレン系重合体は、上述の如きカルボキシル基を含有させたプロピレン系重合体を、さらにアミンなどで変性することによって製造できる。また、アミノ基と水酸基の両者を有する極性モノマーを用いて、上述のカルボキシル基を含有するプロピレン系重合体を再度変性することにより、水酸基含有プロピレン系重合体を製造することができる。
なお、これらの官能基変換は、従来公知の方法、例えば、エステル基の還元などが使用できる。
プロピレン系重合体と極性基を有するモノマーとの上記グラフト共重合反応に用いられるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤から適宜選択して使用することができ、有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。有機過酸化物としては、ジイソプロピルパーオキシド、ジ(t−ブチル)パーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、クミルヒドロパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカルボナート、ジシクロヘキシルパーオキシカルボナート等が挙げられる。アゾニトリルとしてはアゾビスブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。これらの中で、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシドが好ましい。
有機溶媒を用いて上記グラフト共重合反応を行う場合、その有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素;トリクロロエチレン、パークロルエチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられ、これらの中でも、芳香族炭化水素もしくはハロゲン化炭化水素が好ましく、特にトルエン、キシレン、クロルベンゼンが好ましい。
(iv)分子量
本発明の官能基含有プロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成される平板状成形体は特定の線条層からなる構造を有するが、この成形体の塗装密着性を向上させるためには、該成形体の表面にできるだけ多くの極性官能基を存在させることが好ましい。そのためには、樹脂組成物中の極性基含有プロピレン系重合体の配合量を増やすことが考えられる。一方、従来の結晶化度の高いポリプロピレンに極性基を導入して変性したものは、その変性を高温状態で過酸化物を用いて施さなくてはならないため、変性中にポリプロピレンの主鎖が切断されて低分子量体となりやすく、その結果、シート等の成形時に膜切れ等の不具合が生じやすい。また、低分子量の変性ポリプロピレンを含有する成形シートは延伸性も悪く、延伸後のシートは外観が悪く実用性に欠ける等の問題点が存する。
これに対し本発明では、プロピレン系重合体の樹脂組成物の一成分として、主鎖にステレオブロック構造を有する極性官能基含有プロピレン系重合体を用いるが、そのステレオブロック構造を有するプロピレン重合体主鎖は、低温でも過酸化物を用いた極性基導入による変性が可能であるため、変性中にポリプロピレンの主鎖の切断が起こりにくく、変性後の重合体は分子量が大きい状態で保たれる。そのため、このような極性基含有プロピレン系重合体を用いると、樹脂組成物に配合される他のプロピレン系重合体、例えば結晶性プロピレン系重合体に対する配合量が多くても成形性を低下させず、また、成形シート等は延伸後も外観が良好である。
本発明の官能基含有プロピレン系重合体の主鎖となるプロピレン系重合体の分子量は、通常、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)で5,000〜500,000であることが好ましい。Mwが5,000より小さい場合は、得られた平板状成形体の強度が不足するため、衝撃が加わると破壊が発生しやすく、二次成形時に欠陥が出来やすくなり、500,000を超える場合は分子の運動性が低くなるため塗装時における塗料官能基との反応性に乏しくなる傾向がある。Mwの範囲は、20,000〜300,000、さらに好ましくは20,000〜250,000である。GPCの測定は、前記の通り、オルトジクロロベンゼンなどを溶媒とし、ポリスチレンを標準試料として市販の装置を用い、公知の方法で行うことができる。
また、固有粘度の測定は、JISK7367−3に従うものとする。極性基含有プロピレン系重合体の固有粘度は、135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]が通常3dl/g以上、好ましくは4dl/g以上、より好ましくは5dl/g以上であり、通常15dl/g以下、好ましくは12dl/g以下、より好ましくは10dl/g以下である。固有粘度が3未満の場合、成形時に膜切れが起こりやすくなり、15を超えると分子の運動性が低くなるため塗装時における塗料官能基との反応性に乏しくなる傾向がある。
(v) 結晶性
このように、本発明では、極性基含有プロピレン系重合体の、主鎖となるプロピレン系重合体として結晶性の低い重合体を用いることにより、低温での過酸化物によるグラフト反応を可能にし、官能基導入後の重合体の分子量の低下を防ぐことができる。この低結晶性は、極性基含有プロピレン系重合体のDSCによる融解熱量が50J/g未満であるとき、特に顕著に現れる。
なお、DSCの測定法は以下の通りである。
PERKIN−ELMER社製熱分析システムDSC7を使用し、以下の方法で測定を行った。
試料(約5〜10mg)を、200℃で5分間融解後、10℃/minの速度で−20℃まで降温し、5分間同温度で保持した後に、10℃/minで200℃まで昇温することにより融解曲線を得て、最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点として求めた。融解熱量は、この主吸熱ピークとベースラインとで囲まれる領域の面積から求めた。ところで、融解熱量が小さい場合、ベースラインの変動と真の吸熱ピークとの判別が困難な場合がある。この場合には、上述の降温過程において、結晶化による発熱ピークが存在し、それが吸熱ピークと対応するかどうかを確認する。対応する発熱ピークが存在すれば、結晶融解にもとづく真の吸熱ピークが存在すると判別し、そうでない場合には、ベースラインの変動と判別する。
(B)他のプロピレン系重合体[以下、(B)成分と言うこともある]
本発明の樹脂組成物に含まれる他のプロピレン系重合体としては、特に制限は無く、例えば結晶性プロピレン系重合体が挙げられる。ここで、プロピレン系重合体とは、プロピレンを主要な構成単位とする重合体であり、プロピレン単独重合体や、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィン、特に炭素数2〜20のα−オレフィンとの共重合体、または、これらの混合物である。他のプロピレン系重合体の構造、たとえば、立体規則性、分子量、分子量分布、プロピレン含量等については特に制限はなく、目的に応じて必要な構造を有するものを使用することができる。
結晶性プロピレン系重合体は、DSC測定時の融点Tmが130℃以上であることが好ましい。より好ましくは140℃以上であり、更に好ましくは150℃以上で、最も好ましくは160℃以上である。130℃より高いほど、結晶性が高いため成形体の剛性・耐熱性が向上する。また、結晶性プロピレン系重合体は、DSC測定時の結晶融解熱量ΔHが60J/g以上であることが好ましく、より好ましくは70J/g以上であり、更に好ましくは80J/g以上であり、最も好ましくは90J/g以上である。ΔHが60J/gより大きいほど、結晶性が高いため成形体の剛性・耐熱性が向上する。
本発明の成形体を工業部品に応用する場合、他のプロピレン系重合体としては、一般的には、(i)プロピレン・エチレンブロック共重合体、(ii)プロピレン単独重合体、(iii)プロピレン・エチレンランダム共重合体が好適に用いられる。以下、これらについて、さらに詳しく説明する。
(i)プロピレン・エチレンブロック共重合体
プロピレン・エチレンブロック共重合体としては、アイソタクチックペンタッド分率が0.9以上のプロピレン単独重合体部分と、ガラス転移温度が−30℃以下であり、且つ135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]が3〜15(dl/g)のエチレン・プロピレン共重合体部分を有するものが好ましく用いられる。
プロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率は、0.9以上、1.0以下であって、好ましくは0.950以上、より好ましくは0.980以上、通常0.995以下である。アイソタクチックペンタッド分率が高いほど、一般に、成形体の剛性や耐熱性が向上する。アイソタクチックペンタッド分率とは、13C−NMR を使用する方法で測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。換言すれば、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個接続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。具体的には13C−NMRスペクトルにおけるメチル炭素原子に由来する全吸収ピーク中のmmmmで表されるペンタッドのピークの強度分率として、アイソタクチックペンタッド分率を測定する。
アイソタクチックペンタッド分率が0.9以上のプロピレン単独重合体部分は、立体規則性触媒を用いて製造することができる。立体規則性触媒としては、(a)三塩化チタン系触媒、(b)マグネシウム化合物担持触媒、(c)シングルサイト触媒を例示することができる。三塩化チタン系触媒(a)の代表的な例として、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、さらに各種の電子供与体および電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物ならびにカルボン酸エステルを組み合わせた触媒を挙げることができる。マグネシウム化合物担持触媒(b)の代表的な例としては、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと電子供与体を接触させた固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物ならびにアルコキシシランを組み合わせた触媒を挙げることができる。シングルサイト触媒(c)は、シクロペンタジエニル配位子を有するメタロセン触媒と、シクロペンタジエニル配位子を持たないいわゆるポストメタロセン触媒の二つに大別でき、いずれも、遷移金属錯体と活性化剤との組み合わせからなる触媒である。
プロピレン単独重合体部分のメルトフローレート(MFR)は、通常0.1g/10min以上、好ましくは0.2g/10min以上、より好ましくは0.5g/10min以上であり、通常300g/10min以下、好ましくは250g/10min以下、より好ましくは200g/10min以下である。MFRが0.1未満では、該プロピレン系重合体を含む樹脂組成物の流動性が劣り、300を超えると成形体の耐衝撃性が劣るため、それぞれ好ましくない。なお、プロピレン単独重合体部分のMFRは、JIS K7210条件14に基づき、温度230℃、荷重21.18Nで測定する。プロピレン単独重合体部分のMFRは、プロピレン単独重合体部分の重合時に、重合温度や水素濃度を制御することによって調整することができる。
プロピレン・エチレン共重合体部分は、エチレンとプロピレンを前記した触媒のもとで共重合させることにより製造されるが、その他の共重合モノマーとして、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等の任意のα−オレフィンも使用することができる。最も好ましい共重合体部分は、プロピレン単独重合体部分との相溶性や靭性の観点から、プロピレンとエチレンの共重合体部分である。
このプロピレン・エチレン共重合体部分の135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]は、通常3dl/g以上、好ましくは4dl/g以上、より好ましくは5dl/g以上であり、通常15dl/g以下、好ましくは12dl/g以下、より好ましくは10dl/g以下である。固有粘度が3dl/g未満の場合、共重合体部分そのものの靭性が劣り、15dl/gを超えると共重合体部分の分散性が低下し、それぞれ耐衝撃性の低下要因となる。なお、このプロピレン・エチレン共重合体部分の固有粘度は、重合温度や、共重合体成分を重合する際に添加する水素の添加量を調整することによって制御される。
固有粘度[η]の測定方法は、はJISK7367−3に従うものとする。
また、プロピレン・エチレン共重合体部分は、ガラス転移温度が−30℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が−30℃より高いと、低温での耐衝撃特性が低下するため、特に、低温耐衝撃性が要求される用途においては好ましくない。
なお、プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度は、動的固体粘弾性測定装置により測定する。また、プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度は、エチレンと共重合モノマーとの共重合比によって制御することができる。一般的には、プロピレンとエチレンおよび/またはα−オレフィン(エチレンおよびプロピレンを除く)との共重合比は、重量比で、通常1/99以上、好ましくは10/90以上、さらに好ましくは20/80以上であって、通常99/1以下、好ましくは90/10以下、さらに好ましくは80/20以下である。
このプロピレン・エチレンブロック共重合体は、従来公知の任意の重合方法により製造することができる。例えば、気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、スラリー重合法などを挙げることができ、1つの反応器でバッチ式に重合したり、複数の反応器を組み合わせて連続式に重合したりしてもよい。
(ii)プロピレン単独重合体
プロピレン単独重合体として好ましく用いられるのは、アイソタクチックペンタッド分率0.9以上、MFRが、通常0.1g/10min以上、好ましくは0.2g/10min以上、より好ましくは0.5g/10min以上であって、通常300 g/10min以下、好ましくは250g/10min以下、より好ましくは200g/10min以下のプロピレン単独重合体である。MFRが0.1未満では、該プロピレン系重合体を含む樹脂組成物の流動性が劣り、300を超えると成形体の耐衝撃性が劣るため、それぞれ好ましくない。本重合体を得るための触媒としては、上記(i)プロピレン・エチレンブロック共重合体の項に記載した触媒を使用することができる。MFRの制御方法や製造プロセスについても同様である。
(iii)プロピレン・エチレンランダム共重合体
プロピレン・エチレンランダム共重合体として好ましく用いられるのは、エチレン含量が0.1〜10重量%、MFRが通常0.1g/10min以上、好ましくは0.2g/10min以上、より好ましくは0.5g/10min以上であって、300g/10min以下、好ましくは250g/10min以下、より好ましくは200g/10min以下のプロピレン・エチレンランダム共重合体である。MFRが0.1未満では、該プロピレン系重合体を含む樹脂組成物の流動性が劣り、300を超えると成形体の耐衝撃性が劣るため、それぞれ好ましくない。本重合体を得るための触媒としては、上記(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体の項に記載した触媒を使用することができる。MFRの制御方法についても同様である。なお、プロピレンとエチレン以外に、他の少量のα−オレフィンを共重合しても良い。エチレン含量は、重合槽において、プロピレンとエチレンの比率を変えることによって制御できる。一般的には、エチレン含量は、0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、10重量%以下、好ましくは8重量%以下である。
[2]成分(A)の製造方法
本発明に使用する前記の官能基含有プロピレン系重合体の製造方法は、(i)ステレオブロック構造を有するプロピレン系重合体を製造し、その後官能基を有する極性モノマーにて変性する方法と、(ii)プロピレンと官能基を有する極性モノマーを直接共重合する方法のふたつに大別できるので、以下にそれぞれの方法について説明する。
(i)ステレオブロック構造を有するプロピレン系重合体を製造し、その後該極性モノマーにて変性する方法
本方法における好ましい製法としては、シングルサイト触媒によってプロピレン系重合体を製造し、それを極性モノマーにて変性する方法を挙げることができる。
<重合体の製造>
プロピレン系重合体として、シングルサイト触媒を用いた重合方法によって得られるものが好ましいが、その理由としては、一般にシングルサイト触媒が、リガンドのデザインによりミクロタクティシティを制御できること、分子量分布や立体規則性分布がシャープであること、分子量の制御が容易であることなどが挙げられる。得られる重合体の分子量分布や立体規則性分布がシャープでない場合には、溶解性に差ができ、部分的に不溶なものができる可能性がある。
シングルサイト触媒としては、メタロセン触媒や、いわゆるポストメタロセン触媒が使用できる。ここで、メタロセン触媒とは、シクロペンタジエニル配位子を有する遷移金属化合物を含む触媒であり、ポストメタロセン触媒とは、シクロペンタジエニル配位子を含有せず、窒素、酸素、リンなどのヘテロ原子を有する配位子を含有する遷移金属化合物を含む触媒を指す。これらの触媒は、共触媒、すなわち、これらの遷移金属を活性化することのできる化合物と組み合わせて用いられるのが普通である。シングルサイト触媒のなかでは、メタロセン触媒がミクロタクティシティを精密に制御できる点で好適に用いられる。
プロピレン系重合体製造用のシングルサイト触媒としては、メタロセン化合物([α]成分)と共触媒([β]成分)を必須成分とするメタロセン系触媒が好ましく用いられる。
メタロセン化合物([α]成分)としては、遷移金属含有の架橋基を有するC1−対称性アンサ−メタロセン(ansa−metallocene)が好ましい。非架橋のメタロセンも本発明のプロピレン系重合体の製造に適用可能であるが、一般に、架橋基を有するアンサ−メタロセンの方が熱安定性などに優れているため、特に工業的な見地から好ましい。
メタロセン化合物([α]成分)として用いられる遷移金属含有の架橋基を有するアンサ−メタロセンは、共役5員環配位子を有する架橋された4族遷移金属化合物のC1−対称性を有するメタロセンである。このような遷移金属化合物は公知であり、それをα−オレフィン重合用触媒成分として使用することも知られている。
プロピレン系重合体の製造に好ましく用いられる[α]成分のメタロセン化合物は、下記一般式(I)で表され、かつ、C1−対称性を有する化合物である。また、該一般式で表される複数のメタロセン化合物を混合して用いてもよい。
Q(C64-a2 a)(C54-b3 b)MX11 (I)
一般式(I)において、Qは2つの共役5員環配位子を架橋する結合性基を、Mは周期律表4族遷移金属を、X1及びY1は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基又は炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ケイ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR2及び/又はR3がそれぞれ結合して4〜10員環を形成していてもよい。a及びbは、それぞれ独立して、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。本発明においては、上記一般式(I)で表されるメタロセンがC1−対称性を有していればよいので、C1−対称性が保持されるかぎり、R2とR3は同じであっても良いし、異なっていてもよい。
本発明の特性、即ちステレオブロック構造を有するプロピレン系重合体の製造には、上記一般式(I)で表されるメタロセンの中でも、ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ[ ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウムなどが好適に用いられる。ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン[2−メチルベンゾ[e]インデニル][2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル]}ハフニウム、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン[2−メチルベンゾ[e]インデニル][2−メチル−4−(p−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル]}ハフニウムも好適な触媒である。
本発明において[α]成分メタロセン化合物の共触媒([β]成分)として用いられる助触媒としては、必須成分として(1)有機アルミニウムオキシ化合物、(2)[α]成分の遷移金属と反応して[α]成分をカチオンに交換することが可能なイオン性化合物、(3)ルイス酸、及び(4)ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物又は無機ケイ酸塩、からなる群より選択される一種以上の物質を用いる。
本発明で使用されるプロピレン系重合体の製造で、共触媒[β]成分の他に任意成分[γ]として有機アルミニウム化合物を用いてもよい。このような有機アルミニウム化合物は、一般式、AlR1 m3-m(式中、R1は、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは、水素、ハロゲン、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基、mは0<m≦3の数)で示される化合物である。具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のハロゲン若しくはアルコキシ含有アルキルアルミニウム、又は、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素含有有機アルミニウム化合物である。またこの他、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン等も使用できる。これらのうち、特に好ましいのはトリアルキルアルミニウムである。これら任意成分は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、重合開始後等に、新たに任意成分[γ]を追加してもよい。
プロピレン重合用の触媒は、[α]成分、[β]成分、及び任意の[γ]成分の接触によって得られるが、その接触方法については特に限定がない。この接触は、触媒調製時だけでなく、プロピレンの予備重合時又は重合時に行ってもよい。触媒各成分の接触時、又は接触後にプロピレン重合体、シリカ、アルミナ等の無機酸化物の固体を共存させるか、若しくは接触させてもよい。
触媒各成分の使用量に特に制限はないが、[β]成分として、ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物、又は無機ケイ酸塩を用いる場合は、[β]成分1gあたり[α]成分が0.0001〜10mmol、好ましくは0.001〜5mmolであり、[γ]成分が0〜10,000mmol、好ましくは0.01〜100mmolである。また、[α]成分中の遷移金属と[γ]成分中のアルミニウムの原子比が1:0〜1,000,000、好ましくは、1:0.1〜100,000となるように制御することが、重合活性などの点で好ましい。上記触媒成分については、特開2003−201322号公報に詳しく記載されている。
触媒として、プロピレンや、エチレン、または他のα−オレフィンを予備的に重合し、必要に応じて洗浄したものを使用することもできる。これらの予備重合モノマーは、2種類以上のオレフィンの混合物であってもよい。また、水素を共存させてもよい。この予備重合は窒素等の不活性ガス中、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。プロピレンの重合反応は、プロパン、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化プロピレンの液体の存在下或いは不在下に行われる。これらのうち、上述の不活性炭化水素存在下で重合を行うのが好ましい。
具体的には、[α]成分と[β]成分、又は[α]成分と[β]成分と[γ]成分との存在下に、プロピレン系重合体を製造する。重合温度、重合圧力、及び重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。すなわち、重合温度は、通常20〜150℃、好ましくは0〜100℃、重合圧力は、0.1MPa〜100MPa、好ましくは、0.3MPa〜10MPa、更に好ましくは、0.5MPa〜4MPa、重合時間は、0.1時間〜10時間、好ましくは、0.3時間〜7時間、更に好ましくは0.5時間〜6時間の範囲から選ばれる。
< 変性方法(極性官能基の導入)>
(i)プロピレン系重合体を極性官能基を含有する重合性モノマー(極性モノマー)にて
変性する方法
本発明における極性官能基含有プロピレン系重合体は、予めプロピレン系重合体を製造し、その後該重合体に極性モノマーをグラフト共重合させ、極性官能基を導入する(グラフト変性)方法にて製造される。このようにして得られるグラフト変性した重合体中における極性モノマー、例えばカルボキシル基等を含有する重合性モノマーの含有量は特に制限されないが、成形性、易延伸性、塗装性がバランス良く良好となるように、(プロピレン系重合体中の官能基含有モノマー重量)/(プロピレン系重合体重量)の割合が、通常0.8重量%以上、好ましくは1.5重量%以上であって、通常15.0重量%以下、好ましくは6.0重量%以下となるようにグラフト共重合するのがよい。この極性モノマーの含有割合が0.8重量%未満の場合は、極性官能基含有プロピレン系重合体が塗料との密着性に乏しく、15.0重量%を超えると極性官能基含有プロピレン系重合体がマトリクスとなる結晶性ポリプロピレンとの相溶性が低下し、最表面にある極性官能基含有プロピレン系重合体がポリプロピレンから脱落しやすくなり、いずれも好ましくない。
極性官能基を有する重合性モノマーをグラフト共重合させる方法としては、種々の公知の方法が挙げられる。例えば、プロピレン系重合体を有機溶媒に溶解し、該重合性モノマーおよびラジカル重合開始剤を添加して加熱攪拌することによりグラフト共重合反応を行う方法、実質的に溶媒を使用することなく、プロピレン系重合体、該重合性モノマーおよびラジカル重合開始剤を加熱溶融させて攪拌することによりグラフト共重合反応を行う方法、押出機を用いて、プロピレン系重合体、該重合性モノマーおよびラジカル重合開始剤を溶融混練することによりグラフト共重合反応を行う方法が挙げられる。これらのうち、プロピレン系重合体を有機溶媒に溶解し、重合性モノマーおよびラジカル重合開始剤を添加して加熱攪拌することによりグラフト共重合反応を行う方法が、変性率(グラフト率)の制御が比較的容易であるうえ、変性後に変性重合体を容易に洗浄できるため好ましい。
(ii)プロピレンと極性モノマーを直接共重合する方法
この方法は、プロピレンの重合触媒として、IV族の遷移金属を有する触媒を用いる方法と、V〜VIII族の遷移金属を有する触媒を用いる方法に大別できる。両者に共通して応用可能な方法のひとつは、極性モノマーの極性官能基をマスクして、触媒を被毒しないようにしてプロピレンと共重合する方法である。たとえば、水酸基を有するビニルモノマーに、有機アルミニウム化合物を反応させることによって、水酸基をマスクすることができる。また、別の方法としては、極性モノマーの極性官能基と重合に関わる炭素−炭素二重結合のあいだに、メチレン基のようなスペーサーをいれ、両者の距離を遠くすることによってプロピレンと共重合する方法が挙げられる。また、V〜VIII族の遷移金属を有する触媒を用いる場合には、これらの遷移金属は、比較的極性官能基に対する耐性が強いので、極性官能基をマスクすることなく、直接プロピレンとの共重合が可能な場合がある。
<成形体>
本発明の平板状成形体は2種以上のプロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成される平板状成形体であって、該成形体の成形時の移送方向と平行な断面構造が、1種のプロピレン系重合体からなるアスペクト比Xが2以上の線条体を厚さ1μmあたり1.5本以上有する線条層を有することを特徴とするプロピレン系重合体成形体である。成形体がこの様な線条層を有することにより、塗料付着性、接着性、印刷性が改良されるが、ポリプロピレン系重合体からなる線条体のアスペクト比Xは、通常2以上、好ましくは2.2以上である。また、線条層に含まれる線条体本数が、厚さ1μmあたり1.5本以上、好ましくは2本以上であり、通常6本以下、好ましくは4本以下である。すなわち線条体の本数密度Z/Y(本/μm)が、1.5以上、好ましくは2以上であり、通常6以下、好ましくは4以下である。
本発明において、線条体のアスペクト比及び本数密度は、断面を透過型電子顕微鏡による断面の写真から算出する。
<算出方法>
電子顕微鏡により観察した写真画面を画像処理解析装置(三谷商事株式会社製WinRoof)により、熱可塑性樹脂(変性ステレオブロックポリプロピレン重合体)の分散状態を二値化した。画像処理ソフト(WinRoof)は二値化のしきい値が0(濃い)〜255(薄い)の範囲があり、しきい値を決定するときに面積比で表示される。そこで、二値化のしきい値の決定を濃い側の面積比が、変性ステレオブロックポリプロピレン重合体の仕込み比と同等になるように決めた。MD方向に配向した変性ステレオブロックポリプロピレン重合体からなる黒い筋の線条体の最大長と最小長を測定し、その比X(最大長/最小長)を算出する。
また、線条層の厚さ方向の長さY(μm)における線条体の本数Z(本)を測定し、変性ステレオブロックポリプロピレン重合体からなる黒い筋の線条体の本数密度Z/Yを算出する(本/μm)。この解析を代表的な場所について行い、その平均値を求め、分散構造のインデックスとした。
本発明の成形体においてこの様な線条層が形成される詳細は明らかではなく成形条件にもよるが、樹脂組成物における2種以上のプロピレン系重合体の均一分散性、配合量、成形時における溶融体の流れ挙動変化などによることが推察されるので、これらのプロピレン系重合体は、分散性、相溶性、融点等の熱的特性を考慮して選定される。
樹脂組成物に含まれるプロピレン系重合体及びそれらの組み合わせは所望の成形体に応じ上記した官能基含有プロピレン系重合体[(A)成分]及び他種のプロピレン系重合体[(B)成分]から選ばれるが、その1種が上記の官能基含有ステレオブロックプロピレン系重合体であることにより成形時に該重合体の線条体を好適に形成し得るのである。そして、所望の線条体を、所定本数含む線条層を形成するためには、樹脂組成物中に配合される他種のプロピレン系重合体[(B)成分]は、結晶性のアイソタクチックプロピレン系重合体であるのが、[(A)成分]との分散性が良く好ましい。また結晶性のアイソタクチックプロピレン系重合体を用いることで、積層体の耐熱性や表面の耐傷付き性も向上する。
樹脂組成物中の全プロピレン系重合体に対する官能基含有プロピレン系重合体の割合は、通常5重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、通常95重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。官能基含有プロピレン系重合体の割合が、5重量%未満では所望の線条体を形成することが難しく、形成された成形体の塗装性や接着性等が劣る傾向にあり、また95重量%を超えると成形性や成形体自体の強度、耐熱性等が低下し好ましくない。
また、一般に非相溶性の2成分樹脂組成物において、成分1と成分2の体積及び粘度をそれぞれΦ1、Φ2及びη1、η2とした場合、体積比及び粘度比が式[Φ1/Φ2=η1/η2]を満たすとき相反転を生ずるとされていることから、組成物中の上記(A)成分及び(B)成分の粘度、成形条件による溶融体の挙動を考慮して選定するのが好ましい。
官能基含有プロピレン系重合体[(A)成分]としては、ステレオブロック構造を有するプロピレン系重合体主鎖に極性官能基としてカルボン酸無水物基、水酸基を導入して変性したプロピレン系重合体が好適に使用され、特にカルボン酸無水物基としては無水マレイン酸により、また水酸基としてはエタノールアミン等のアミノ基と水酸基を有するモノマーにより変性した重合体が好ましい。他種のプロピレン系重合体[(B)成分]としては、特に制限は無く、例えば結晶性プロピレン系重合体が挙げられる。
ここで、プロピレン系重合体とは、プロピレンを主要な構成単位とする重合体であり、プロピレン単独重合体や、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィン、特に炭素数2〜20のα−オレフィンとの共重合体、または、これらの混合物である。他種のプロピレン系重合体[(B)成分]の構造、たとえば、立体規則性、分子量、分子量分布、プロピレン含量等については特に制限はなく、目的に応じて必要な構造を有するものを使用することができる。
[3] 成形
本発明の所定の線条層を少なくとも一層有する平板状成形体、例えばシートは、プロピレン系重合体を含む樹脂組成物の各成分を必要に応じドライブレンドし、直接シート製造装置に供給しシートに成形することができる。単層からなる線条層の厚さは、通常2〜100μm、好ましくは20〜70μmとなるように調整される。
成形体として線条層を含む成形体とプロピレンシート等の基材とを積層した積層体を製造する場合には、該線条層を有する成形体とベース層(基材)を積層するが、ベース層は成形体の目的・用途に応じて適宜選択され制限的ではないが、通常100〜5000μmの範囲から選択される。また、積層体は、塗料付着性、接着性等の点からプロピレン系重合体成形体が、その表面下或いは表面下近傍に線条層を有する側と反対側の面で基材に積層されることが好ましい。
本発明におけるシートの製造は、公知の任意の成形方法に従うことができる。例えば、連続的にシートを製造する方法としては、溶融状態の樹脂材料を平板状に押し出し、これを表面が平滑な回転する一対のロールで挟み込みながら連続的に冷却固化と表面への平滑性賦与を行う方法、ロールの代わりに表面が平滑なベルトを1つあるいは2つ用いる方法、一旦表面の平滑性にかまわず平板状に固化させたものを再度加熱した上で表面が平滑なロールやベルトを押し当て、最終的に表面が平滑なシートを得る方法、さらに溶融状態の樹脂材料を円筒状に押し出し周囲から水流や気流によって冷却固化する方法等が挙げられる。
また、非連続的に製造する方法としては、一旦何らかの方法で平板状にした表面が平滑でないシートを、表面が平滑な一対の板の間に置き熱を加えながら板同士を押しつけることによって表面を平滑にする方法、溶融状態の樹脂原料を表面が平滑な一対の板の間に供給し板で圧力を加えながら冷却固化させる方法等が挙げられる。以上に述べた製造方法のうち、品質の安定性や生産性の面からは、表面が平滑なロールやスチールベルトで連続的に成形する方法が好ましく、特に片面もしくは両面からスチールベルトで押さえ込む方法が好ましい。
積層体シートを製造する方法としては、樹脂原料を溶融状態でシート状に押出すと同時に積層し、その後に冷却固化して多層シートとする共押出法、一旦シート状にしたもの同士を溶融樹脂や接着剤等によって張り合わせるラミネーション法、一方のシートに他方を溶融状態で積層した後に直ちに冷却固化し積層シートを得る熱ラミネーション法もしくは押出コーティング法等が挙げられる。
本発明の平板状成形体、例えばシート或いは積層体シートの表面近傍に存する線条層には、必要に応じて、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内で、その他の成分が配合されていてもよい。このようなその他の配合成分としては、着色するための顔料や染料、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、帯電防止剤、ヒンダードアミン等光安定剤、紫外線吸収剤、有機アルミ・タルク等の各種核剤、分散剤、中和剤、発泡剤、銅害防止剤、滑剤、ガスバリア剤、マイカ、熱伝導フィラー、磁性体、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。
本発明のシートや積層シート等の成形体は、各種の熱成形法により所望形状の成形品に加工される。加工のための成形法としては、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、片板熱成形法等を用いることができる。かくして成形された成形品は、その表面近傍の線条層が特定の構造を有することにより、従来の塗装工程では不可欠であったプライマー塗布を省くことができる。すなわち、本発明の成形体を成形加工して得られる成型品には、直接塗料を塗装することができる。
成型品への塗料の塗布方法としては、スプレーによる吹き付け塗装、刷毛塗り、ローラーによる塗布等があるが、いずれの方法も使用可能である。使用できる塗料としては、一般に使用されている塗料、例えば、アクリル系塗料、エポキシ系塗料、ポリエステル系塗料、ウレタン系塗料、メラミン系塗料、アルキド系塗料等が使用できる。いずれの塗料を用いてもベース層(B)のみからなる成形品に比べて塗膜の剥離強度に優れており、工業的有用性は大きい。
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における物性は明細書中に記載の前記方法によって測定した。
また、以下の諸例において、メタロセンの合成工程は全て精製窒素雰囲気下で行い、エ−テルおよびTHFはNa−ベンゾフェノンで乾燥したものを用いた。トルエン及びn−ヘキサンは関東化学から購入した脱水溶媒を用いた。重合工程は、全て精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は、モレキュラーシーブ(MS−4A)で脱水した後に、精製窒素でバブリングして脱気して使用した。プロピレン系重合体の分子量ならびに融点の測定については、本明細書記載の方法で行った。
<分子量の測定>
GPCによる分子量の測定は、以下の方法及び条件で行った。
装置: Waters社製「150CV型」
カラム温度:135℃
溶媒: オルトジクロロベンゼン
流量: 1.0 ml/min
カラム: 東ソー株式会社製TSKgel GMHXL−L
注入量: 500 μl (濾過処理)
溶液濃度: 1.0 mg/ml
試料調整: オルトジクロロベンゼンを用い、1.0 mg/mlの溶液に調整し135℃で1〜3時間溶解させる。
分子量の算出:標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびポリプロピレンの粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、プロピレン重合体の分子量の算出を行う。なお、粘度式としては、[η]=KMαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38E−4、α=0.70、ポリプロピレンに対しては、K=1.03E−4、α=0.78を使用する。
<融点の測定>
DSCの測定法は以下の通りである。
PERKIN−ELMER社製熱分析システムDSC7を使用し、以下の方法で測定を行った。試料(約5〜10mg)を、200℃で5分間融解後、10℃/minの速度で−20℃まで降温し、5分間同温度で保持した後に、10℃/minで200℃まで昇温することにより融解曲線を得て、最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点として求めた。
<固有粘度>
固有粘度[η]の測定方法は、はJISK7367−3に従って行った。
[製造例1]
<ステレオブロックプロピレン系重合体>
(1) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウムの合成
特開2003−201322号に記載の合成方法により配位子および金属錯体の合成を行った。得られた錯体の1H−NMRデータは以下の通りであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.85(s,3H),0.86(s,3H),1.47 (d,J=7.1 Hz,3H), 2.25(s,3H),3.42−3.52(m,1H),5.42 (dd,J=4.7,10.1Hz,1H), 5.80−5.85(m,2H),5.90−5.95(m,1H),6.16−6.20(m,2H),6.65 (d,J=11.4H),6.80−6.85(m,1H),6.98−7.02(m,1H)。
(2) 粘土鉱物の化学処理
1000mL丸底フラスコに、脱塩水(72mL)、硫酸リチウム・1水和物(11g)および硫酸(17g)を採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト (水澤化学社製ベンクレイSL)22gを分散させ、100℃まで昇温し、5時間攪拌を行った。その後、1時間かけて室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1000mL丸底フラスコにて、脱塩水(500mL)にて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を3回繰り返した。最終的に得られたケーキを、窒素雰囲気下200℃で1時間減圧下に乾燥し、化学処理モンモリロナイト(15.6g)を得た。
(3) 触媒調整
(2)で得られた化学処理モンモリロナイト(3g)に、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(0.5mmol/ml)12.0mlを加え、室温で30分間攪拌した。この懸濁液にトルエン(75ml)を加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/ml)を得た。
別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム(0.18mmol、日本アルキルアルミ社製)を採取し、ここで得られた粘土スラリー全量及び製造例1の(1)で得られた錯体(46.7mg,90μmol)のトルエン希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。
(4)プロピレン重合
内容積24リットルの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(13リットル)、トリイソブチルアルミニウム(1.5mmol)及び液体プロピレン(3.2リットル)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、50℃まで昇温し重合時の全圧を0.6MPaで一定に保持しながら、同温度で2時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を全量回収し、溶媒を除去したところ、2.76kgのプロピレン重合体が得られた。
(5) 分析
得られた重合体を13C−NMRスペクトル測定により分析したところ、以下の結果が得られ、ステレオブロック構造を有することが確認された。
13C−NMRによる頭−尾(head to tail)結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.1ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピークの面積S1の比率(S1/S)は42.1%であり、21.5〜21.6ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積S2のSに対する比率(S2/S)は15.9%であった。従って4+2(S1/S2)=9.3となった。
[製造例2]
<無水マレイン酸基含有ステレオブロックプロピレン系重合体1>
温度計、冷却管、及び攪拌機を備えたガラスフラスコ中に、製造例1で得られたステレオブロックプロピレン系重合体200g及びトルエン1800gを仕込み、窒素雰囲気下、系内温度を110℃に昇温し溶解した。続いて、無水マレイン酸を30分おきに20gずつ5回(合計100g)、及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日本油脂(株)製、商品名パーブチルI)を30分おきに5gずつ7回(合計35g)、同温度で滴下した後(無水マレイン酸は2時間かけて滴下、パーブチルIは3時間かけて滴下)、2時間熟成反応を行った。反応終了後、室温付近まで冷却し、反応液を4.0kgのアセトン中に投入し、析出した無水マレイン酸基含有ステレオブロックプロピレン系重合体を濾別した。得られた無水マレイン酸基含有ステレオブロックプロピレン系重合体を、再度2.0kgのアセトン中に投入して精製した後、濾別し真空乾燥した。得られた白色粉末状の変性プロピレン重合体の量は182gであった。
得られた白色粉末状の変性プロピレン重合体20mg取り出し、重水素化o−DCB(オルトジクロロベンゼン)0.65mlに溶解し、5mmφ試料管に入れ100℃で1H−NMRを、ブルカーバイオスピン社製 AV400にて測定した。試料の1H−NMRスペクトルを見ると、0.2ppm〜2.2ppmにポリプロピレンのピーク(a)があり、無水マレイン酸が結合した部分は2.2〜3.2ppmにピーク(b)があった。
重合体中の無水マレイン酸含有量は以下の計算式により求めた。Ixは化学シフト範囲xの積分値を意味する。また、PPについては1ユニットあたり水素6個として計算するため、無水マレイン酸と反応した分の水素を割り戻して計算した。
計算式;
PP:{(Ia+Ib/3)/6}/[{(Ia + Ib /3)/6}+ Ib /3]
無水マレイン酸:(Ib /3)/[{(Ia +Ib /3)/6}+ Ib /3]
本式から求められる、重合体中の無水マレイン酸基を含有するポリプロピレンユニットの含量は2.1モル%であった。無水マレイン酸基を含有するポリプロピレンユニットの含量から無水マレイン酸基成分の含量を求めると、4.7重量%であった。
[製造例3]
<水酸基変性無水マレイン酸基含有ステレオブロックプロピレン系重合体1>
温度計、冷却管、及び攪拌機を備えたガラスフラスコ中に、トルエンを900g、2−アミノエタノールを21g投入し、系内温度を90℃に昇温した。次いで製造例2で得られた無水マレイン酸基含有ステレオブロックプロピレン系重合体1を、10分おきに17gずつ6回(計102g)ガラスフラスコ内に投入した。投入後系内温度を110℃に昇温させ、同温度で2時間熱熟成させた。反応終了後、室温付近まで冷却し、2―ブタノン300g、アセトン1500gを投入し、水酸基変性ポリプロピレン重合体を濾別した。得られた水酸基変性無水マレイン酸基含有ステレオブロックプロピレン系重合体を、再度1.0kgのアセトン中に投入して精製した後、濾別し真空乾燥した。
得られた白色粉末状の重合体20mg取り出し、重水素化o−DCB 0.65mlに溶解し5mmφ試料管に入れ100℃で1H−NMRを、ブルカーバイオスピン社製 AV400にて測定した。試料の1H−NMRスペクトルを見ると、0.2ppm〜2.2ppmにポリプロピレンのピーク(a)があり、無水マレイン酸が結合した部分は2.2〜3.2ppmにピーク(b)があり、水酸基変性無水マレイン酸が結合した部分は3.2〜4.0ppmにピーク(c)があった。
重合体中の無水マレイン酸及び水酸基変性無水マレイン酸含有量は以下の計算式により求めた。また、PPについては1ユニットあたり水素6個として計算するため、無水マレイン酸と反応した分の水素を割り戻して計算した。
計算式;
PP:{(Ia+Ib/3)/6}/[{(Ia +Ib/3)/6}+Ib/3]
無水マレイン酸:(Ib/3−Ic/4)/[{(Ia +Ib/3)/6}+Ib/3]
水酸基変性無水マレイン酸:(Ic/4)/[{(Ia +Ib/3)/6}+Ib/3]
重合体中の無水マレイン基含有ポリプロピレンユニット及び水酸基変性無水マレイン酸基含有ポリプロピレンユニットの含量はそれぞれ0.9モル%及び1.2モル%であった。これらから無水マレイン酸基成分の含量は2.0重量%、水酸基変性無水マレイン酸基成分の含量は3.8重量%であった。
[製造例4]
<水酸基変性無水マレイン酸基含有アイソタクチックプロピレン系重合体>
無水マレイン酸5重量部とアイソタクチックポリプロピレン100重量部をキシレンに溶解し、ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製 商品名 パークミルD)の存在下に反応させて、無水マレイン酸含量4.5重量%の無水マレイン酸変性ポリプロピレンを得た。用いたアイソタクチックポリプロピレンは、数平均分子量15000、密度0.89、末端二重結合量1.6個(炭素数1000あたり)のポリプロピレンである。
次いで、得られたこの無水マレイン酸変性ポリプロピレンと2−アミノエタノールをキシレン中で反応させた後、溶剤を留去して水酸基変性無水マレイン酸基含有アイソタクチックプロピレン系重合体を得た。水酸基変性無水マレイン酸基成分含有量は3.2重量%、無水マレイン酸基成分含有量は1.3重量%であった。
[実施例1〜3、比較例1〜3]
<共押出成形シートの成形>
上記製造例3で得られた「水酸基変性無水マレイン酸基含有ステレオブロックプロピレン系重合体1」及び製造例4で得られた「水酸基変性無水マレイン酸基含有アイソタクチックプロピレン系重合体」の重合体粉末を、それぞれテクノベル社製2軸混練機「KZW15」を使用し、ペレットに造粒した。シート成形はプラコー製3層シートTダイ成形機を用いた。層Aの原料となる表1に記載の配合比でドライブレンドによって混合した混合物、及び層B,層Cの原料となる重合体をそれぞれシート成形機の押出機に供給し、溶融混練しながら共押出成形し、3層構造の積層体シートを製造した。表1に層A/層B/層Cの各層における重合体の配合比(重量比)を示す。層B及び層Cには結晶性ポリプロピレン(商品名:NOVATEC PP FG4 日本ポリプロ社製)を用いた。
結晶性ポリプロピレン「FG4」は、融点ピーク143℃、融解熱量78J/gである。
成形機の設定温度に関しては、押出機は最上流を200℃とし、徐々に設定温度を上げながら先端を220℃とした。以降、途中の接続管、フィードブロック、ダイまで全て220℃とした。溶融重合体の冷却固化は、ロール引取機で行った。ロール内部は、一定温度の水の循環によって冷却される構造となっており、この時の水の温度は全て40℃とした。ロール引取速度を8.4m/分とし、層A/層B/層C=20/100/20(単位:μm)となるように重合体混合物を供給した。
<ラミネート成形シートの成形>
上記製造例3で得られた「水酸基変性無水マレイン酸基含有ステレオブロックプロピレン系重合体1」の重合体粉末を、テクノベル社製2軸混練機「KZW15」を使用しペレットに造粒した。その後、テクノベル社製2軸混練機「KZW15」のダイス先端をフィルムダイス(三鈴エリー社製)に交換した単層シート成形機、及び三鈴エリー社製のフィルム引取機を用いて、ラミネート成形を行った。表1に示す配合比からなる原料の重合体をドライブレンドによって混合し、これを押出機に供給・溶融混練して、単層溶融重合体の押出成形を行った。成形機の設定温度に関しては、ホッパー直下を50℃に設定し、徐々に設定温度を上げながら、先端・Tダイス設定温度を220℃とした。押出成形された単層溶融重合体を、走行速度を8m/分に設定したフィルム引取機のポリプロピレン基材(厚み350μm)上に積層し、ゴムロールと冷却ロールにより圧着した。ダイス直後に設けられる冷却ロールの温度は80℃とした。積層した重合体層(以下ラミ層と表現する)の厚みが20μmとなるように、重合体の供給量と引取速度を制御した。
<共押出成形シートの熱延伸>
厚さ350μmのポリプロピレン基材を、中央に直径160mmの穴を有する2枚の鉄枠(200mm×200mm×6mm)の間に挟み、断熱箱の中に水平にセットする。次に、鉄枠にサンドイッチされたポリプロピレン基材をその上下面から均一に加熱出来るように、その基材の上下に490℃に加熱されたヒーターをスライドさせる(ヒーターは、設置されたポリプロピレン基材から15cm離れたところからポリプロピレン基材を加熱)。鉄枠に挟まれたポリプロピレン基材は、加熱によって一旦、下面ヒーター方向に垂れ下がり、その後、シートの厚み方向に均一に昇温が進むと、基材シートは再び水平となる。ポリプロピレン基材の上下にある490℃に加熱された上下ヒーターを、スライドさせることで取り除いた後、前記層A/層B/層Cからなる共押出成形シートの層C側をポリプロピレン基材に貼り合わせ積層シートを作成する。積層シートを鉄枠上にて上下反転させ、ポリプロピレン基材面を上にして鉄枠にて再度挟み、断熱箱の中に水平にセットする。
次に鉄枠にサンドイッチされた積層シートを均一に加熱出来るように490℃に加熱された上下ヒーターを積層シートの上下面にスライドさせる(上下ヒーターは、設置された積層シート面から15cm離れたところから積層シートを加熱)。鉄枠内の積層シートは、加熱によって一旦、下面ヒーター方向に垂れ下がり、その後、積層シートの厚み方向に均一に昇温が進むと、積層シートは再び水平となる。積層シートの上下にある490℃に加熱された上下ヒーターを、スライドさせることで取り除いた後、得られた溶融積層シートを、一方の先端が直径80mmの半球状の形状を持った深85mmの円筒の内壁周りに密着させながら、積層シートの鉛直上方から加圧空気供給によって押し込むことで延伸させた後、空冷・固化を行った。延伸後の積層シートの厚みは150μmであった。
<ラミネート成形シートの熱延伸>
上記ラミネート成形シートのポリプロピレン基材側を鉛直上面にした状態で、中央に直径160mmの穴を有する2枚の鉄枠(200mm×200mm×6mm)の間に挟み、断熱箱の中に水平にセットする。次に鉄枠にサンドイッチされたラミネート成形シートを均一に加熱出来るように、490℃に加熱された上下ヒーターをラミネート成形シート上下面にスライドさせる(上下ヒーターは、設置されたラミネート成形シート面から15cm離れたところからラミネート成形シートを加熱)。鉄枠内のラミネート成形シートは、加熱によって一旦、下面ヒーター方向に垂れ下がり、その後、シートの厚み方向に均一に昇温が進むと、ラミネート成形シートは再び水平となる。ラミネート成形シートの上下にある490℃に加熱された上下ヒーターを、スライドさせることで取り除き、その後、ラミネート成形シートを、一方の先端が直径80mmの半球状の形状を持った深さ85mmの円筒の内壁周りに密着させながら、ラミネート成形シートの鉛直上方から加圧空気供給によって押し込むことで延伸させた後、空冷・固化を行った。延伸後のシートの厚みは120μmであった。
<塗装方法>
(1)塗料;本実施例で用いた塗料は、自動車メーカー等で一般に用いられている塗料であり、ウレタン系塗料である。塗料として日本油脂社製のウレタン系塗料(ベース塗料:R333(1C0) クリア塗料 主剤:R298−1 硬化剤:H298)を使用した。
(2)塗装方法:試験片の表面をイソプロピルアルコールで脱脂し、剥離強度の測定のためセロハンテープを試験片上半分に貼り付け、エアスプレーガンを用いて、ベース塗料の塗膜厚さが約15μmになるようにスプレー塗装を行い、約5分間自然乾燥させた後、塗膜厚さが全体で約40μmになるようクリア塗料による塗装を行った。その後、約5分間自然乾燥させ、その後90℃で60分間焼き付け乾燥を行った。
<塗膜物性の評価>
塗膜剥離強度(ピール強度)試験
試験片の上半分に塗料が付着しないよう、セロハンテープを貼り付けた。その上から塗装を行い、試験片に20mm巾で縦方向に素地にまで切傷をつけた。その上から、切傷に沿うように幅を20mmに裁断した市販両面粘着テープ(商品名:日東電工(株)社製 両面接着テープNo.500)の片面に紙を貼り付けたものの粘着面を、貼り付けた。粘着テープの端を引張試験機のロードセルに装着し、試験片をクロスヘッドに取り付けて、引張速度300mm/分で180°方向に引き剥がした時の平均負荷(gf)を記録した。試験片から塗膜が剥離せずに両面テープが塗膜から剥離する場合は、最大負荷は数値で表現できないので「ND」としたが、ピール強度は「1300gf/cm以上」となる。
<シートの電子顕微鏡による断面観察の方法>
延伸したシートに関し、該シートの押出成形時の移送方向と平行な断面(即ち、シートのTD方向が法線となるような面)を観察できるように、該移送方向(MD方向)と平行に小片を切り出した。この小片をエポキシ樹脂にて包埋固定後、RuO4染色処理を行い、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察を行った。変性ステレオブロックポリプロピレン重合体は染色により黒く観察され、その存在状態を観察することができる。
上記方法にて、共押出成形シートに対しては層Aを、ラミネート成形シートに対してはラミ層に対し、透過型電子顕微鏡による断面観察を行った。
延伸したシートの電子顕微鏡写真を図1〜図6に示す。図1〜3は実施例1〜3、図4〜6は比較例1〜3である。
<画像解析処理>
電子顕微鏡により観察した写真画面を画像処理解析装置(三谷商事株式会社製WinRoof)により、熱可塑性樹脂(変性ステレオブロックポリプロピレン重合体)の分散状態を二値化した。画像処理ソフト(WinRoof)は二値化のしきい値が0(濃い)〜255(薄い)の範囲があり、しきい値を決定するときに面積比で表示される。そこで、二値化のしきい値の決定を濃い側の面積比が、変性ステレオブロックポリプロピレン重合体の仕込み比と同等になるように決めた。MD方向に配向した変性ステレオブロックポリプロピレン重合体からなる黒い筋の線条体の最大長と最小長を測定し、アスペクト比X(最大長/最小長)を算出した。それと同時に、厚さ方向の長さY(μm)における線条体の本数Z(本)を測定し、変性ステレオブロックポリプロピレン重合体からなる黒い筋の線条体の本数密度Z/Y (本/μm) を算出した。この解析を代表的な場所について行い、その平均値を求め、分散構造のインデックスとした。
表1に示した配合組成・成形法に従い、混合・成形を行った。得られた成形シートを延伸し、ウレタン系塗料にて塗装を施しピール剥離試験を行った。また、モルフォロジー観察も実施した。表1に結果を示す。
FG4:日本ポリプロ社製 NOVATEC PP (商品名)
以上の実施例、比較例から明らかなとおり、層A(もしくはラミ層)が筋状構造を満たしたときは、塗膜密着性が良好になるが、層A(もしくはラミ層)が筋状構造でないときは、塗膜密着性は不良となる。
実施例1の延伸したシート断面の電子顕微鏡写真である。 実施例2の延伸したシート断面の電子顕微鏡写真である。 実施例3の延伸したシート断面の電子顕微鏡写真である。 比較例1の延伸したシート断面の電子顕微鏡写真である。 比較例2の延伸したシート断面の電子顕微鏡写真である。 比較例3の延伸したシート断面の電子顕微鏡写真である。

Claims (12)

  1. 2種以上のプロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成される平板状成形体であって、該成形体の成形時の移送方向と平行な断面構造が、1種のプロピレン系重合体からなるアスペクト比Xが2以上の線条体を厚さ1μmあたり1.5本以上有する線条層を少なくとも1層有することを特徴とするプロピレン系重合体成形体。
  2. プロピレン系重合体の平板状成形体は、片方の表面或いは表面下近傍に線条層を有することを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系重合体成形体。
  3. 2種以上のプロピレン系重合体のうち、少なくとも1種が官能基を有するプロピレン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体成形体。
  4. 樹脂組成物中における官能基を有するプロピレン系重合体の全プロピレン系重合体に対する割合が、5〜95重量%であることを特徴とする請求項3に記載のプロピレン系重合体成形体。
  5. 官能基を有するプロピレン系重合体の主鎖が、アイソタクチックブロックと非晶性ブロックからなるステレオブロック構造を有することを特徴とする請求項3又は4に記載のプロピレン系重合体成形体。
  6. 官能基を有するポリプロピレン系重合体は、その官能基含量が次式を満たすことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のプロピレン系重合体成形体。
    [(プロピレン系重合体中の官能基含有モノマー重量)/(プロピレン系重合体重量)]×100=0.8〜15.0(重量%)
  7. 官能基を有するプロピレン系重合体の官能基含有モノマーは、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のプロピレン系重合体成形体。
  8. 不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体が、(メタ)アクリル酸、モノオレフィンジカルボン酸、及びこれらの誘導体から選ばれることを特徴とする請求項7に記載のプロピレン系重合体成形体。
  9. 2種以上のポリプロピレン系重合体を含む樹脂組成物により形成される平板状成形体は、押出成形により形成された厚さ50μm〜5mmの成形体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロピレン系重合体成形体。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体成形体に、ポリウレタン系塗料組成物を直接塗布して得られることを特徴とするプロピレン系重合体成形体の塗装物。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体成形体とプロピレン系重合体からなる基材とが積層されていることを特徴とする積層体。
  12. プロピレン系重合体成形体は、その片方の表面下或いは表面下近傍に線条層を有する側と反対面で基材に積層されることを特徴とする請求項11に記載の積層体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015098558A (ja) * 2013-11-20 2015-05-28 日本ポリプロ株式会社 押出しラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物および積層体

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