JP2008195666A - 2−6シアリル6−スルホ糖鎖に対する抗体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】認識糖鎖が6-スルホ糖鎖であり、かつ認識糖鎖中のシアル酸の結合が2-6結合である抗体を新規に樹立することに成功し、この抗体を用いて癌組織を検査した結果、本発明の抗体は、癌組織に発現する2-6シアリル6-スルホ糖鎖と反応し、2-3シアリル6-スルホ糖鎖とは反応しないことを見出した。
【選択図】 なし
Description
本発明者らがこの研究過程で作成した2-3シアリル6-スルホ糖鎖と特異的に反応するモノクローナル抗体(特許文献1、2、非特許文献1)は、癌や非癌疾患の鑑別に役立つ上に、白血球においては主としてメモリーTリンパ球に発現し、免疫応答の調節に重要な役割を演じることが判明しつつある。
一方、2-6シアリル6-スルホ糖鎖については、Bリンパ球による抗体産生の主要な内因性抑制分子であるSiglec-2(CD22)の特異的リガンド糖鎖であることは、合成糖鎖を用いた試験管内研究から知られていたが(非特許文献2等)、この2-6シアリル6-スルホ糖鎖がヒト由来の各種細胞、とりわけ癌組織で発現していることは、今回の発明者らが発見するまで知られていなかった。
本発明は、2-6結合のシアル酸を有する6-スルホ糖鎖に対する抗体を提供し、あわせて、この抗体を用いた癌の検査手段や治療手段を提供する。
即ち、本発明は、下記一般式
Siaα2→6Galβ1→3/4GlcNAcβ(6-sulfate)−
(式中、Siaαはαシアル酸を表し、Galβはβガラクトースを表し、GlcNAcβはβN-アセチルグルコサミンを表し、Siaα2→6 はSiaαの2 位とGalβの6 位とが結合することを示し、Galβ1→3/4 は、Galβの1 位とGlcNAcβの3 位又は4 位とが結合することを示し、(6-sulfate)はGlcNAcβの6 位に硫酸基が付加していることを示す。)で表される糖鎖(本明細書において、この糖鎖を「2-6シアリル6-スルホ糖鎖」ということもある。)に特異的に反応するモノクローナル抗体である。該モノクローナル抗体としては、一般式Siaα2→3Galβ1→3/4GlcNAcβ(6-sulfate)− (式中、Siaα2→3 はSiaαの2 位とGalβの3 位とが結合することを示し、その他は上記と同義。)で表される糖鎖(本明細書において、この糖鎖を「2-3シアリル6-スルホ糖鎖」ということもある。)には反応しないことが好ましい。
また、本発明は、この糖鎖に特異的に反応する抗体を主成分とする癌、悪性リンパ腫又は免疫疾患の検査薬及び治療薬である。
更に、本発明は、被検者の組織、体液若しくは糞便又はこれらの抽出物に対するこの糖鎖に特異的に反応する抗体の反応性の有無又は反応強度を検査することから成る癌、悪性リンパ腫又は免疫疾患の検査方法である。この抗体に標識を付したプローブを反応させ、この標識を定性的又は定量的に検出してもよい。
Siaα2→6Galβ1→3/4GlcNAcβ(6-sulfate)−
式中、Siaαはαシアル酸を表す。シアル酸は、動物細胞の細胞表面膜や分泌液に含まれるアミノ糖であり、多数の構造がありうるが、例えば、N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)、9-O-アセチルノイラミン酸(9-O-acetyl NeuAc)、N-グリコリルノイラミン酸 (NeuGc)やそのグリコリル型である9-O-acetyl NeuGc、4-O-アセチルノイラミン酸(4-O-Acetyl NeuAc)、4,9-O-ジアセチルノイラミン酸 (4,9-O-diacetyl NeuAc)やそのグリコリル型である 4,9-O-diacetylNeuGcなどが挙げられるほか、4位と9位のみならず、7位や8位がアセチル化されたものも存在し、さらにこれらのdiacetyl型やtriacetyl型も存在しうる。その中で、最も多く存在するのが、N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)である。
Galβはβガラクトースを表し、GlcNAcβはβN-アセチルグルコサミンを表し、Siaα2→6 はSiaαの2 位とGalβの6 位とが結合することを示し、Galβ1→3/4 は、Galβの1 位とGlcNAcβの3 位又は4 位とが結合することを示し、(6-sulfate)はGlcNAcβの6 位に硫酸基が付加していることを示す。
なお、上記一般式は、糖鎖の非還元末端のみを表しており、還元末端側にラクトース、ラクトサミン等の糖鎖が結合していても良く、さらに該糖鎖を介して又は介さずにコレスタノール等の脂質、アルブミン等のタンパク質が結合していても良い。
従って、本発明の方法により癌及び非癌疾患を鑑別することができる。現時点で確認されたものとして悪性リンパ腫、白血病、大腸癌、乳癌等が挙げられるが、これ以外の癌でも鑑別できるものと考えられる。
このような糖鎖を有する抗原は、癌患者から生検あるいは外科手術で得られたがん組織や、それに由来する物質を含む体液(血液、尿、髄液、関節液等)・腹水・糞便などの検体に存在する。またこれらから、この抗原をリン酸緩衝食塩水などで簡単に抽出することが出来る。
また、この抗体としては、ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体等が挙げられ、さらに抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、CDRを含むペプチドなど)、キメラ抗体(ヒト抗体と他の動物抗体とのキメラ抗体等)、ヒト化抗体も本発明の抗体に包含される。
標識化抗体又はその活性フラグメントを調製する場合、使用する標識体としては、放射性同位体(32P、3H、14C、125Iなど)、酵素(β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、補酵素・補欠分子族(FAD、FMN、ATP、ビオチン、ヘムなど)、蛍光色素(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)などのフルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体など)、金属粒子(金、銀、白金など)などを使用することができる。さらに、上記の標識体で標識された抗イムノグロブリン抗体(二次抗体)も本発明の抗体に対する標識体といえる。本発明においては標識体で直接標識された本発明の抗体、及び標識体で標識した二次抗体で間接的に標識された本発明の抗体を総称して「プローブ」という。
抗体又はその活性フラグメントの標識化は、選択した標識剤に適した公知の方法(「続生化学実験 講座5免疫生化学研究法」(株)東京化学同人(1986年発行)第102〜112頁など参照)に従って行えばよい。
本発明の抗体KN343と、本発明者らが作製した2-3シアリル6-スルホ糖鎖を認識する抗体G152(特許文献1、2、非特許文献1)を用いることにより、Bリンパ球が2-3シアリル6-スルホ糖鎖を持たず、2-6シアリル6-スルホ糖鎖だけを持っていることが明らかになった。このため、B細胞にかかわる検査や治療は、2-6シアリル6-スルホ糖鎖に対する抗体でしかできない。B細胞以外にもこのような細胞が存在する可能性はある。
また、人体の中に、2-3シアリル6-スルホ糖鎖とは結合せず、2-6シアリル6-スルホ糖鎖だけに結合するリセプター分子があれば、そのリセプターにかかわる検査や治療は、本発明の2-6シアリル6-スルホ糖鎖に対する抗体でしかできない。例えば、Siglec-2(別名CD22)というリセプターは、まさにそういうリセプターである(実施例6)。このため、Siglec-2(別名CD22)にかかわる検査や治療は、本発明の2-6シアリル6-スルホ糖鎖に対する抗体でしかできない。
製造例1
本製造例では、2-6シアリル6-スルホ糖鎖を持つ細胞を作製した。
HEC-GlcNAc6ST(N-アセチルグルコサミン-6-硫酸基転移酵素。以下単に「6-硫酸基転移酵素」ともいう。)のcDNA(配列番号1)を組み込んだpIRES1neoベクター(pIRESneo-HEC-GlcNAc6ST)を作成し、遺伝子導入試薬Lipofetamin2000(Invitrogen)を用いて、SW480細胞(東北大学医用細胞資源センター)に導入した。導入後、400μg/ml G418含有したDMEM選択メディウムでコロニーを選択し、HEC-GlcNAc6STのプライマー5'-GCAGCATGAGCAGAAACTCAAG3'(配列番号2)及び5'-TCCAGGTAGACAGAAGATCCAG-3'(配列番号3)を用いたRT-PCRを59℃、35cycleの条件で行い、遺伝子発現の確認できた安定発現株を樹立した。
製造例2
本製造例では、2-6シアリル6-スルホ糖鎖に特異的に反応する抗体を作製した。
製造例1で得た6-硫酸基転移酵素遺伝子を導入したヒト培養大腸癌細胞SW480を生細胞のまま抗原としてBALB/cマウス腹腔に初回免疫後2週間でおきに二回免疫(各2×107個)し、最終免疫の3日後に免疫マウスの脾細胞をBALB/c由来の骨髄腫細胞P3U1とポリエチレングリコール法にて融合させ、常法にて約1000クローンのハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマの培養上清を細胞固相化96ウェルプレートを用いてELISAアッセイでスクリーニングを行い、6-硫酸基転移酵素遺伝子を導入した培養細胞と反応し、6-硫酸基転移酵素遺伝子を導入していない元細胞とは反応しない抗体を分泌するハイブリドーマ細胞をスクリーニングした。このハイブリドーマから、2-6シアリル6-スルホ糖鎖に特異的に反応する抗体(以下「KN343」という。)を得た。
本製造例では、対照として、2-3シアリル6-スルホ糖鎖を持つ細胞を作製し、この糖鎖に特異的に反応する抗体を作製した(特許文献1、2、非特許文献1)。
純品糖鎖Siaα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)(SO3 --6)GlcNAcβ(岐阜大学農学部木曽 真教授により合成(Bioorg. Med. Chem., 4:1833-1847, 1996))をSalmonella minnesota strain R595 の菌株に吸着させ、これを抗原としてBALB/c マウス腹腔に初回 5μg (糖脂質量として), 3日後 (10μg), 7日後 (15μg), 12日後(20μg), 17日後(25μg), 31日後(35μg)のスケジュールで免疫し、最終免疫の3日後、免疫マウスの脾細胞を骨髄腫細胞P3U1と融合して製造例2と同様にハイブリドーマを得た。このハイブリドーマ細胞株を用いて常法により上記糖鎖(2-3シアリル6-スルホ糖鎖)に特異的に反応する抗体(以下「G152」という。)を得た。
培養ヒト大腸癌細胞SW480及び製造例1で作製した6-硫酸基転移酵素遺伝子を導入したSW480細胞を用いて、製造例2及び3で得たKN343又はG152(いずれも培養上清を4倍希釈)を一次抗体として4℃30分間反応させ、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で三回洗浄した後、FITC標識抗マウスIg抗体(200倍希釈、Silenus Laboratories)を二次抗体として4℃30分間反応させ、PBSで三回洗浄した後、FACSCAN(ベクトンディッキンソン社)を用いてフローサイトメトリー法にて検出した。硫酸基取り込み阻害剤であるNaClO3 による処理では、亜塩素酸ナトリウム40mM存在下で細胞を7日間培養した。結果を図1に示す。
KN343は、6-硫酸基転移酵素遺伝子を導入した培養細胞(HEC-GlcNAc6ST transfectant)と反応し、6-硫酸基転移酵素遺伝子を導入していない元細胞(Parent)とは反応しない。このことから6-硫酸基を認識していることが明らかである。また6-硫酸基転移酵素遺伝子を導入した培養細胞においても、NaClO3存在下で細胞を培養することによって硫酸基を減少させると(Nature vol.361, 555-557 (1993))、反応性は低下する。対照抗体のG152は、KN343と同じくやはり6-硫酸基を必要とするため、この実験においてはほぼ同じ結果が得られる。
ナマルバ(NAMALWA)細胞(ヒトB細胞系の悪性リンパ腫・白血病細胞、ATCC)の1×106個/1mlのPBS浮遊液をまず0.5% パラホルムアルデヒドで固定し、一回PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)で洗浄後1mlのPBS浮遊液とし、各種のシアリダーゼ、シアル酸転移酵素で処理した。こののち、NAMALWA細胞を、KN343抗体(培養上清を4倍希釈)を一次抗体として4℃30分間反応させ、PBSで三回洗浄した後、FITC標識抗マウスIg抗体(200倍希釈)を二次抗体として4℃で30分間反応させ、PBSで三回洗浄した後、FACSCAN(ベクトンディッキンソン社)を用いてフローサイトメトリー法にて検出した。
シアリダーゼS(シグマ社製)処理は、上記の細胞浮遊液中で酵素の終濃度5U/mlとして37℃で1時間処理したのちに洗浄した。
シアリダーゼA(シグマ社製)処理は、上記の細胞浮遊液中で酵素の終濃度0.05U/mlで37℃、1時間処理したのちに洗浄した。
2-6シアル酸転移酵素(2,6シアリルトランスフェラーゼ)処理は、上記のシアリダーゼA処理後の細胞浮遊液に対して50mg/ml CMP-NeuAc 10μl、35U/ml アルカリフォスファターゼ2μl、7.5 U/ml、10 U/ml 2,6シアリルトランスフェラーゼ(日本たばこ産業株式会社製)1μlを加え、30℃で1時間反応させたのちに洗浄した。
2-3シアル酸転移酵素(2,3シアリルトランスフェラーゼ)処理は、上記のシアリダーゼA処理後の細胞浮遊液に対して50mg/ml CMP-NeuAc 10μl、35U/mlアルカリフォスファターゼ 2μl、7.5U/ml 2,3シアリルトランスフェラーゼ(日本たばこ産業株式会社製)1.5μlを加え、30℃で1時間反応させたのちに洗浄した。
結果を図2に示す。
対照として用いたG152抗体は2-3結合のシアル酸を認識するため、シアリダーゼSによってもシアリダーゼAによっても反応性は消失し、2-6シアル酸転移酵素では反応性の回復は得られず、2-3シアル酸転移酵素によって反応性が回復する。
本製造例では、後記の実施例3で用いる2-6シアリル6-スルホラクトサミン糖鎖含有化合物を作製した。合成経路を図3に示す。図中の番号は各化合物の番号を示す。
6,6'位を異なった保護基で保護したラクトサミン供与体(化合物1)(Tetrahedron Lett 26:3-4(1985) 参照)とガラクトース3位をフリー(OH)としたラクトシルコレスタノール(化合物2)(Tetrahedron Lett 29:4097-100(1988)参照)をハフノセンジクロリド−銀トリフレート(Cp2HfCl2-AgOTf)触媒下、Matsumoto等による方法(Tetrahedron Lett 29:3567-70(1988)参照)により縮合を行い、フタルイミド基のアミノ基への変換、非還元末端ガラクトース6位の脱保護、次いでアミノ基のアジド基への変換を経て、4糖性糖鎖コレスタノール体(化合物3)を得た。
この4糖性糖鎖コレスタノール体(化合物3)とシアリルクロライド供与体(化合物4)(Chem Ber 99:611-17(1966)参照)とを水銀の触媒により縮合させ(adv Carbohydre Chem Biochem 7:209-45(1952)参照)、選択的なグルコサミン6位脱保護を行い、硫酸化を経て、全ての保護基を除去し、目的の2-6シアリル6-スルホラクトサミン糖鎖含有化合物5(β-Cholestanyl O-[Sodium(5-acetamido-3,5-dideoxy-D-glycero-α-D-galacto-2-nonulopyranosyl)onate]-(2→6)-O-(β-D-galactopyranosyl)-(1→4)-O-(2-acetamido-2-deoxy-6-O-sulfo-β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-O-(β-D-galactopyranosyl)-(1→4)-O-β-D-glucopyranoside sodium salt)を得た。この化合物の同定データ(薄層クロマトグラフィー(Rf値)、NMR)は以下の通りである。
C64H106O32N2Na2S MW : 1493.57
500 MHz 1H-NMR(CDCl3:CD3OD:D2O=2:3:1,TMS) δ;
2.023(s, 3 H, NAc) 2.032(s, 3 H, NAc) 2.710(dd, 1 H, J3eq,4=4.4 Hz, J3eq,3ax=12.0 Hz, H-3eeq)
3.250(dd, 1 H, J=8.1, 9.0 Hz) 4.133(d, 1 H, J=1.7 Hz)
4.244(dd, 1 H, J5,6=5.4 Hz, J6,6'=11.0 Hz, H-6c) 4.376(bd, 1 H, H-6'c)
4.414(d, 2 H, J1,2=7.6 Hz, H-1a or H-1b or H-1c or H-1d)
4.450(d, 1 H, J1,2=7.8 Hz, H-1a or H-1b or H-1c or H-1d)
4.740(d, 1 H, J1,2=7.8 Hz, H-1a or H-1b or H-1c or H-1d)
本実施例では、2-6シアリル6-スルホ糖鎖を固定化したプレートを用いて酵素免疫測定(ELISA)を行った。
製造例4で得た2-6シアリル6-スルホラクトサミン糖鎖含有化合物(20 ng/wellを起点として順次倍々希釈)、フォスファチジルコリン(100 ng/well)、コレステロール(50 ng/well)をエタノール溶液として24ウェルプレートの各ウェルに入れ、風乾した後、5%ウシ血清アルブミン(BSA)入りPBSで非特異反応をブロックし、KN343抗体は培養上清を2倍希釈し、抗CD75抗体は精製抗体を20倍希釈したものを50μl加え室温で二時間インキュベーションした後、三回洗浄の後、ペロキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgM抗体(1:1500、Cappel社)を50μl加え室温で一時間インキュベーションし、4回洗浄後通常のペロキシダーゼ発色液(O-phenylene diamine tablet, Sigma社 P-7288 20mgを25 mM クエン酸塩(Citrate), 50 mM Na2HPO4 50 ml に溶かした液に20μlの30% H2O2を使用直前に混じる)にて発色させ、2N H2SO4にて発色を停止してARVO 1420 multilabel counter(Wallac社)を用いて490 nmで吸光度を測定した。結果を図4に示す。
健康人の末梢血をEDTAで抗凝固して採血後、全血のままKN343抗体又はG152抗体(培養上清を10倍希釈)を一次抗体として4℃で30分間反応させ、PBSで三回洗浄した後、FITC標識抗マウスIgM抗体(200倍希釈)及びPhycoerythrin標識抗CD3抗体(Leu4, Becton Dickinson社)あるいは抗CD19抗体(Leu12, Becton Dickinson社)と4℃で30分間反応させて二重染色し、Q-Prep機器とImmunoPrep試薬(ともにCoulter社)を用いて赤血球を溶血、血球を洗浄した後、FACSCAN(ベクトンディッキンソン社)を用いてフローサイトメトリー法にて検出した。結果を図5に示す。
その結果、KN343抗体はCD19陽性のB細胞を強く染色し、CD3陽性のT細胞とはごく弱くしか反応しなかった(図5左)。これに対し、G152抗体は我々が既に以前報告したように、CD19陽性のB細胞とほとんど全く反応せず、CD3陽性のT細胞の一部と反応することがわかった(図5右)。
このことは、ヒトの正常B細胞はKN343抗体の認識糖鎖である2-6シアリル6-スルホ糖鎖を発現するが、G152抗体の認識糖鎖である2-3シアリル6-スルホ糖鎖をほとんど発現していないことを示す。
NAMALWA細胞(上記)及びRaji細胞(ヒトB細胞系の悪性リンパ腫・白血病細胞、ATCC)をウシ胎児血清10%を含む細胞培地RPMI1640で培養して増やし、PBSで洗浄した後、KN343抗体(培養上清を4倍希釈)を一次抗体として4℃で30分間反応させ、PBSで三回洗浄した後、FITC標識抗マウスIg抗体(200倍希釈)を二次抗体として4℃30分間反応させ、PBSで三回洗浄した後、FACSCAN(ベクトンディッキンソン社)を用いてフローサイトメトリー法にて検出した。結果を図6に示す。
KN343抗体は、2-6シアリル6-スルホ糖鎖が悪性リンパ腫・白血病細胞(NAMALWA細胞とRaji細胞)に発現していることが明らかにするとともに、悪性リンパ腫・白血病細胞を検出することができることを示した。
細胞上の2-6シアリル6-スルホ糖鎖に対するSiglec-2 (CD22)とリコンビナントE−セレクチンの結合に対するKN343抗体による阻止を調べた。
Siglec-2(CD22)はBリンパ球の抗体産生抑制分子(negative regulator)であり、2-6シアリル6-スルホ糖鎖に特異的に結合することが知られている(非特許文献2等)。E−セレクチンは、2-3シアリルルイスx糖鎖に結合し、2-6シアリル6-スルホ糖鎖に結合しないことが知られている。
NAMALWA細胞に対するリコンビナントSiglec-2の結合に対して、KN343抗体は阻止作用を示すのに対し、リコンビナントE−セレクチンの結合に対してはKN343抗体は阻止作用を示さない。
即ち、KN343抗体は、2-6シアリル6-スルホ糖鎖がSiglec-2 (CD22)に結合するのを阻止し中和する作用がある。Siglec-2 (CD22)はBリンパ球における抗体産生とIgスイッチ機構を制御する重要な分子であることは近年注目されているので(Science, 298: 2392-2395, 2002)、本抗体は免疫制御にも応用でき、免疫調節剤として有用であると考えられる。
Claims (7)
- 下記一般式
Siaα2→6Galβ1→3/4GlcNAcβ(6-sulfate)−
(式中、Siaαはαシアル酸を表し、Galβはβガラクトースを表し、GlcNAcβはβN-アセチルグルコサミンを表し、Siaα2→6 はSiaαの2 位とGalβの6 位とが結合することを示し、Galβ1→3/4 は、Galβの1 位とGlcNAcβの3 位又は4 位とが結合することを示し、(6-sulfate)はGlcNAcβの6 位に硫酸基が付加していることを示す。)で表される糖鎖に特異的に反応するモノクローナル抗体。 - 下記一般式
Siaα2→3Galβ1→3/4GlcNAcβ(6-sulfate)−
(式中、Siaαはαシアル酸を表し、Galβはβガラクトースを表し、GlcNAcβはβN-アセチルグルコサミンを表し、Siaα2→3 はSiaαの2 位とGalβの3 位とが結合することを示し、Galβ1→3/4 は、Galβの1 位とGlcNAcβの3 位又は4 位とが結合することを示し、(6-sulfate)はGlcNAcβの6 位に硫酸基が付加していることを示す。)で表される糖鎖には反応しない請求項1記載のモノクローナル抗体。 - 請求項1の記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
- 下記一般式
Siaα2→6Galβ1→3/4GlcNAcβ(6-sulfate)−
(式中、Siaαはαシアル酸を表し、Galβはβガラクトースを表し、GlcNAcβはβN-アセチルグルコサミンを表し、Siaα2→6 はSiaαの2 位とGalβの6 位とが結合することを示し、Galβ1→3/4 は、Galβの1 位とGlcNAcβの3 位又は4 位とが結合することを示し、(6-sulfate)はGlcNAcβの6 位に硫酸基が付加していることを示す。)で表される糖鎖を有する抗原に特異的に反応する抗体を主成分とする癌、悪性リンパ腫又は免疫疾患の検査薬又は治療薬。 - 下記一般式
Siaα2→6Galβ1→3/4GlcNAcβ(6-sulfate)−
(式中、Siaαはαシアル酸を表し、Galβはβガラクトースを表し、GlcNAcβはβN-アセチルグルコサミンを表し、Siaα2→6 はSiaαの2 位とGalβの6 位とが結合することを示し、Galβ1→3/4 は、Galβの1 位とGlcNAcβの3 位又は4 位とが結合することを示し、(6-sulfate)はGlcNAcβの6 位に硫酸基が付加していることを示す。)で表される糖鎖を有する抗原に特異的に反応する抗体を有効成分とするCD22機能調節剤。 - 被検者の組織、体液若しくは糞便又はこれらの抽出物に対する抗体の反応性の有無又は反応強度を検査することから成る癌、悪性リンパ腫又は免疫疾患の検査方法であって、該抗体が、下記一般式
Siaα2→6Galβ1→3/4GlcNAcβ(6-sulfate)−
(式中、Siaαはαシアル酸を表し、Galβはβガラクトースを表し、GlcNAcβはβN-アセチルグルコサミンを表し、Siaα2→6 はSiaαの2 位とGalβの6 位とが結合することを示し、Galβ1→3/4 は、Galβの1 位とGlcNAcβの3 位又は4 位とが結合することを示し、(6-sulfate)はGlcNAcβの6 位に硫酸基が付加していることを示す。)で表される糖鎖を有する抗原と特異的に反応することを特徴とする検査方法。 - 前記抗体に標識を付したプローブを反応させ、この標識を定性的又は定量的に検出することから成る請求項6に記載の検査方法。
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