JP2008191259A - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】定着部材における記録媒体の通過領域と非通過領域の温度差が低減される定着装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】定着ベルト102は、励磁コイル110で発生する磁界により電磁誘導され発熱する発熱層128と、定着設定温度以上で且つ発熱層128の耐熱温度以下であるキュリー温度(180℃)を有する感温層130とを備えている。小サイズの記録用紙Pが連続通紙され定着が行われると、記録用紙Pの非通過領域では定着ベルト102の温度が上昇する。ここで、記録用紙Pの非通過領域における定着ベルト102表面の温度が定着設定温度170℃よりも高く、且つ透磁率変化開始温度180℃を超えた場合、定着ベルト102内の感温層130が常磁性体となり、磁界Hの磁束密度が減少し、発熱層128の発熱量が低減される。これにより、記録媒体Pの非通過領域における温度上昇が低減される。
【選択図】図4

Description

本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
従来、熱源として、通電により磁界を発生するコイルと、磁界の電磁誘導により渦電流が生じて発熱する発熱体とを用いた電磁誘導発熱方式の定着装置がある。
電磁誘導発熱方式を用いた定着装置の第1例として、所定のキュリー温度を有する感温磁性材料で構成され、励磁コイルで発生する磁界の電磁誘導作用で発熱する発熱ローラと、定着ローラとでベルトを懸架し、発熱ローラ内に回転移動可能な導電性部材を配置した定着装置がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の定着装置は、発熱ローラの昇温時には導電性部材を励磁コイルと対向しない位置に移動させ、所定の温度まで上昇したら、導電性部材を励磁コイルと対向する位置に移動させて、特に非通紙部における発熱ローラの温度上昇を防いでいる。
また、電磁誘導発熱方式を用いた定着装置の第2例として、加圧ロール内に配置された誘導加熱コイルと、所定のキュリー温度となるように形成された定着ロールとしての感温磁性パイプと、感温磁性パイプの内部に非接触状態で配置された非磁性材料を有する定着装置がある(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2の定着装置は、感温磁性パイプの温度がキュリー温度より低い場合は、感温磁性パイプに誘導電流が流れて発熱するが、キュリー温度より高い場合は、感温磁性パイプが非磁性体となって磁束が通過し、非磁性材料に誘導電流が流れて温度上昇が止まる。
特許3527442 特開2000−030850
本発明は、定着部材における記録媒体の通過領域と非通過領域の温度差が低減される定着装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
本発明の請求項1に係る定着装置は、磁界を発生する磁界発生手段と、前記磁界発生手段と対向配置され、前記磁界の電磁誘導により発熱する発熱層と、定着設定温度以上で且つ前記定着部材の耐熱温度以下の温度領域に透磁率が連続的に低下し始める透磁率変化開始温度を有し、前記磁界発生手段と反対側の前記発熱層面に接する感温層と、を有する無端状の定着部材と、前記定着部材の内側へ配置された支持体と、前記定着部材を前記支持体へ加圧する加圧回転体と、を備えたことを特徴としている。ここで、透磁率変化開始温度とは、図6の模式図に示すように、透磁率(JIS C2531で測定)が連続的に低下し始める温度であり、磁界の磁束の貫通量が変化し始める点をいう。
本発明の請求項2に係る定着装置は、前記定着部材の内側に、前記磁界の磁束を誘導する非磁性体からなる誘導部材を前記定着部材と非接触で設けたことを特徴としている。
本発明の請求項3に係る定着装置は、前記誘導部材が、前記支持体を支持することを特徴としている。
本発明の請求項4に係る定着装置は、前記加圧回転体との接触部の前記定着部材に、凹部と前記凹部の両側に凸部を形成したことを特徴としている。
本発明の請求項5に係る定着装置は、前記磁界発生手段が所定の周波数の電流を流す通電手段を有し、前記周波数が20kHz以上、前記感温層の抵抗値が70×10−8Ωm以上、及び前記感温層の比透磁率が900以上であることを特徴としている。
本発明の請求項6に係る画像形成装置は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の定着装置と、前記定着装置の前記定着部材の温度を検知する検知手段と、前記検知手段で得られた温度が所定の温度となるように前記磁界発生手段を制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
請求項1の発明は、感温層を有していない場合に比較して、定着部材における記録媒体の通過領域と非通過領域の温度差が低減される定着装置を得ることができる。
請求項2の発明は、本構成を有していない場合に比較して、定着部材の過剰な発熱を抑えることができる。
請求項3の発明は、誘導部材が支持体を支持しない場合に比較して、定着装置の小型化が可能となる。
請求項4の発明は、加圧回転体との接触部の定着部材に凹凸がない場合に比較して、用紙の定着部材からの剥離性が向上する。
請求項5の発明は、本構成を有していない場合に比較して、定着部材の温度が上昇開始から定着可能な温度になるまでの時間を短縮できる。
請求項6の発明は、小サイズの記録媒体と大サイズの記録媒体を混在して連続定着しても、定着部材における記録媒体の通過領域と非通過領域の温度差が低減される画像形成装置を得ることができる。
本発明の定着装置及び画像形成装置の実施形態を図面に基づき説明する。
図1には、画像形成装置としてのプリンタ10が示されている。
プリンタ10において、プリンタ10の本体を構成する筐体12に光走査装置54が固定されており、光走査装置54に隣接する位置に、光走査装置54及びプリンタ10の各部の動作を制御する制御ユニット50が設けられている。
光走査装置54は、図示しない光源から出射された光ビームを回転多面鏡(ポリゴンミラー)で走査し、反射ミラー等の複数の光学部品で反射して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び ブラック(K)の各トナーに対応した光ビーム60Y、60M、60C、60Kを出射するようになっている。
光ビーム60Y、60M、60C、60Kは、それぞれ対応する各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kに導かれる。
プリンタ10の下方側には、記録用紙Pを収納する用紙トレイ14が設けられている。用紙トレイ14の上方には、記録用紙Pの先端部位置を調整する一対のレジストローラ16が設けられている。
プリンタ10の中央部には、画像形成ユニット18が設けられている。画像形成ユニット18は、前述の4つの感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kを備えており、これらが上下一列に並んでいる。
感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの回転方向上流側には、感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面を帯電する帯電ローラ22Y、22M、22C、22Kが設けられている。
また、感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの回転方向下流側には、Y、M、C、Kの各トナーをそれぞれ感光体20Y、20M、20C、20K上に現像する現像器24Y、24M、24C、24Kが設けられている。
一方、感光体ドラム20Y、20Mには第1中間転写体26が接触し、感光体ドラム20C、20Kには第2中間転写体28が接触している。そして、第1中間転写体26、第2中間転写体28には第3中間転写体30が接触している。
第3中間転写体30と対向する位置には、転写ロール32が設けられている。転写ロール32と第3中間転写体30との間を記録用紙Pが搬送され、第3中間転写体30上のトナー画像を記録用紙Pに転写させる。
記録用紙Pが搬送される用紙搬送路34の下流には、定着装置100が設けられている。定着装置100は、定着ベルト102と加圧ロール104を有しており、記録用紙Pを加熱・加圧してトナー画像を記録用紙P上に定着させる。
トナー画像が定着された記録用紙Pは、用紙搬送ロール36でプリンタ10の上部に設けられたトレイ38に排出される。
ここで、プリンタ10の画像形成について説明する。
画像形成が開始されると、各感光体ドラム20Y〜20Kの表面が帯電ローラ22Y〜22Kによって一様に帯電される。
光走査装置54から出力画像に対応した光ビーム60Y〜60Kが、帯電後の感光体ドラム20Y〜20Kの表面に照射され、感光体ドラム20Y〜20K上に各色分解画像に応じた静電潜像が形成される。
この静電潜像に対して、現像装置24Y〜24Kが選択的に各色、すなわちY〜Kのトナーを付与し、感光体ドラム20Y〜20K上にY〜K色のトナー画像が形成される。
その後、マゼンタ用の感光体ドラム20Mから第1中間転写体26にマゼンタのトナー画像が一次転写される。また、イエロー用の感光体ドラム20Yから第1中間転写体26にイエローのトナー画像が一次転写され、第1中間転写体26上で前記マゼンタのトナー画像に重ね合わされる。
一方、同様にブラック用の感光体ドラム20Kから第2中間転写体28にブラックのトナー画像が一次転写される。また、シアン用の感光体ドラム20Cから第2中間転写体28にシアンのトナー画像が一次転写され、第2中間転写体28上で前記ブラックのトナー画像に重ね合わされる。
第1中間転写体26へ一次転写されたマゼンタとイエローのトナー画像は、第3中間転写体30へ二次転写される。一方、第2中間転写体28へ一次転写されたブラックとシアンのトナー画像も、第3中間転写体30へ二次転写される。
ここで先に二次転写されているマゼンタ 、イエローのトナー画像と、シアンおよびブラックのトナー画像とが重ね合わされ、カラー(3色)とブラックのフルカラートナー画像が第3中間転写体30上に形成される。
二次転写されたフルカラートナー画像は、第3中間転写体30と転写ロール32との間のニップ部に達する。そのタイミングに同期して、レジストロール16から記録用紙Pが当該ニップ部分に搬送され、記録用紙P上にフルカラートナー画像が三次転写(最終転写)される。
この記録用紙Pは、その後、定着装置100に送られ、定着ベルト102と加圧ロール104とのニップ部を通過する。その際、定着ベルト102と加圧ロール104とから与えられる熱と圧力との作用により、フルカラートナー画像が記録用紙Pに定着する。定着後、記録用紙Pは用紙搬送ロール36によりトレイ38に排出され、記録用紙Pへのフルカラー画像形成が終了する。
次に、本実施形態に係る定着装置100について説明する。
図2aに示すように、定着装置100は、記録用紙Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体120を備えている。
筐体120の内部には、矢印D方向へ回転する無端状の定着ベルト102が設けられている。定着ベルト102の両端部には図示しないギヤが接着されている。
定着ベルト102の外周面と対向する位置には、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。ボビン108と定着ベルト102との間隔は1〜3mm程度となっている。ボビン108は、定着ベルト102の外周面に倣った略円弧状に形成されており、凸部108Aが突設されている。
ボビン108には、励磁コイル110が、凸部108Aを中心として軸方向(図2aの紙面奥行き方向)に複数回巻き回されている。
励磁コイル110と対向する位置には、ボビン108の円弧状に倣って略円弧状に形成された磁性体コア112が配置され、ボビン108に支持されている。
定着ベルト102の内側には、定着ベルト102と非接触で誘導体114が設けられている。誘導体114と定着ベルト102との間は1.0〜1.5mm離れている。
誘導体114は、非磁性体であるアルミニウムからなり、定着ベルト102と対向する円弧部114Aと、円弧部114Aと一体で形成される柱部114Bとで構成され、両端が定着装置100の図示しない筐体に固定されている。また、誘導体114の円弧部114Aは、定着ベルト102を磁界Hの磁束が貫通した場合に、磁界Hの磁束を誘導する位置に予め配置されている。
誘導体114の柱部114Bの端面には、定着ベルト102を所定の圧力で外側に向けて押圧するための押圧パッド116が固定され支持されている。これにより、誘導体114と押圧パッド116をそれぞれ支持する部材を設ける必要がなく、定着装置100の小型化が可能となっている。
押圧パッド116は、ウレタンゴム又はスポンジ等の弾性を有する部材で構成され、一端面が定着ベルト102の内周面と接触して定着ベルト102を押圧している。
一方、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、定着ベルト102を押圧パッド116に向けて加圧するとともに、図示しないモータ及びギアからなる駆動機構により矢印E方向に回転する加圧ロール104が配置されている。
加圧ロール104は、アルミニウム等の金属からなる芯金106の周囲に、シリコンゴム及びPFAが被覆された構成となっている。また、加圧ロール104は、図示しないソレノイド等の電磁スイッチ、又はカム機構を用いて矢印A、B方向に移動可能となっており、矢印A方向に移動したときは定着ベルト102の外周面と接触して加圧し、矢印B方向に移動したときは定着ベルト102の外周面から離間するようになっている。
ここで、加圧ロール104が定着ベルト102を押圧パッド116側に加圧すると、定着ベルト102と加圧ロール104の接触部(ニップ部)において、定着ベルト102に凹部103が形成され、凹部103の両側に凸部105が形成される。
このニップ部の形状は、トナーTが載った記録用紙Pが通過するときに、定着ベルト102から記録用紙Pを剥離させる方向に湾曲した形状となっている。このため、矢印IN方向から搬送されてきた記録用紙Pは、それ自体の腰の強さでニップ部の形状に倣って矢印OUT方向に排出される。
また、押圧パッド116は、定着ベルト102を加圧ロール104側に押圧するとともに定着ベルト102の内周面に倣って湾曲し、ニップ部の面積を広げている。
定着ベルト102の表面で、励磁コイル110と対向しない領域で且つ記録用紙Pの排出側の領域には、定着ベルト102表面の温度を測定するサーミスタ118が接触して設けられている。サーミスタ118の接触位置は、記録用紙Pのサイズの大小によって測定値が変わらないように、定着ベルトの軸方向(図2の紙面奥行き方向)の略中央部となっている。
サーミスタ118は、定着ベルト102表面から与えられる熱量に応じて抵抗値が変化することで、定着ベルト102表面の温度を計測する。
図3に示すように、サーミスタ118は、配線132を介して、前述の制御ユニット50(図1参照)の内部に設けられた制御回路134に接続されている。また、制御回路134は、配線136を介して通電回路138に接続されており、通電回路138は、配線140、142を介して前述の励磁コイル110に接続されている。
ここで、制御回路134は、サーミスタ118から送られた電気量に基づいて定着ベルト102表面の温度を測定し、この測定温度と予め記憶させてある定着設定温度(本実施形態では170℃)と比較する。そして、測定温度が定着設定温度よりも低い場合は、通電回路138を駆動して励磁コイル110に通電し、磁気回路としての磁界H(図2a参照)を発生させる。一方、測定温度が定着設定温度よりも高い場合は、通電回路138を停止するようになっている。
通電回路138は、制御回路134から送られる電気信号に基づいて駆動又は駆動停止され、配線140、142を介して励磁コイル110に所定の周波数の交流電流を供給(矢印方向)又は供給停止するようになっている。
次に、定着ベルト102の構成について説明する。
定着ベルト102は、図2bに示すように、内側から外側に向けて感温層130、発熱層128、弾性層126、及び離型層124で構成されており、これらが積層され一体となっている。
感温層130は、定着ベルト102の強度を保持するための基層に位置しており、鉄、ニッケル、シリコン、ホウ素、ニオブ、銅、ジルコニウム、コバルト等の金属、又はこれらの合金で構成される金属軟磁性材料が用いられる。本実施形態では、感温層130として鉄−ニッケル合金を用いている。
また、感温層130は、発熱層128(あるいは定着ベルト102)の耐熱温度(熱による変形が始まる温度)以下で、定着装置100の定着設定温度(定着ベルト102で必要とされる定着温度)以上の温度領域に透磁率が連続的に低下し始める透磁率変化開始温度を有するものが用いられる。本実施形態では、耐熱温度240℃、定着設定温度170℃として、透磁率変化開始温度が180℃程度のFe−Ni合金を用いている。
さらに、感温層130は、透磁率変化開始温度より低い温度では強磁性体となり、前述の磁界H(図2a参照)を侵入させる。また、透磁率変化開始温度より高い温度では、磁界Hの磁束貫通量が多くなるようになっている。
ここで、図4aは、感温層130の温度が感温層130の透磁率変化開始温度以下の場合を表しており、図4bは、感温層130の温度が感温層130の透磁率変化開始温度以上の場合を表している。
図4aに示すように、感温層130の温度が透磁率変化開始温度以下の場合は、感温層130が強磁性体であるため、発熱層128を貫通した磁界H1は、感温層130に侵入して閉磁路を形成し、磁界H1を強める。これにより、発熱層128の発熱量を十分得られる。
一方、図4bに示すように、感温層130の温度が透磁率変化開始温度以上の場合は、磁界H2は感温層130を貫通して磁界H2が弱まる。
磁界H2は、感温層130を貫通した後、さらに誘導体114に向かう。磁界H2は、誘導体114に誘導されるものの、誘導体114が非磁性体で磁界H2が貫通されるので、閉磁路を形成しにくくなり、結果的に磁界H2がさらに弱まって、発熱層128の発熱量が低減される。
なお、誘導体114の表面では一部の磁束によって渦電流が生じ、発熱する場合もあるが、定着ベルト102と非接触のため、定着ベルト102の温度を上昇させることはない。
ここで、感温層130の厚さ、透磁率の設計方法について説明する。
感温層130は、定着装置100のウォームアップ時間短縮、定着ベルト102の可撓性、及び感温機能(透磁率変化開始温度を境にして磁束の貫通する程度が変化する機能)の発現のために要求される必要な厚さが存在する。
定着装置100のウォームアップ時間については、使用者の利便性と省エネルギーの観点から10秒以下にすることが要求されてきている。
ここで、10秒以下のウォームアップ時間を実現するために必要な定着ベルト102の熱容量を求めることにした。
熱容量20J/K、75J/Kの2種類の定着ベルトを用いて、電力1.5KVA以内においてそれぞれのウォームアップ時間を測定したところ、それぞれ7秒、30秒となった。この熱容量とウォームアップ時間との関係式から近似式を求め、ウォームアップ時間が10秒となる定着ベルトの熱容量を求めたところ、熱容量は27.1J/K以下にする必要があることが分かった。
定着ベルト102の発熱層128を厚さ10〜15μmの銅、弾性層126を厚さ200μmのシリコンゴム、及び離型層124を厚さ30μmのPFAとした場合、定着ベルト102の熱容量を27.1J/K以下にするためには、鉄−ニッケル合金からなる感温層130を厚さ100μm以下にする必要があることが分かった。
次に、定着ベルト102の可撓性の評価結果について説明する。
定着ベルト102の可撓性評価は、定着ベルト102と加圧ロール104の接触部(ニップ部)において、定着ベルト102に凹部103(図2参照)が形成され、凹部103の両側に凸部(図2参照)が形成される時に、定着ベルトに生じる歪みを測定して評価する。この歪みが小さすぎると記録用紙Pの剥離性能が十分に確保できない。
歪み測定は、定着ベルト102のニップ部内でのベルト変形による外周表面歪みを測定することにより行われる。凹部103では圧縮歪み、凸部105では引っ張り歪みが定着ベルト102に発生する。
歪み測定の一例としては、歪みゲージ(共和電業製)をフレキシブルシートに接着したセンサーにより、外力を与えない状態の定着ベルト102の曲率を基準にして凹部103と凸部105の歪みを測定する。
歪み測定の判定は、定着ベルト102のニップ部内の軸方向すべてに亘って引っ張り歪み≧0.2%、圧縮≧0.2%となれば○、ニップ部内の軸方向の一部でこの条件を満たさない箇所がある場合は△、ニップ部内の軸方向すべてでこの条件を満たさない場合は×として行う。
このようにして、定着ベルト102内の感温層130の厚さを変えながら歪み測定を行ったところ、200μm及び180μmで×、150μm及び125μmで△、100μm及び75μmで○であった。
以上の検討結果により、感温層130の厚さは100μm以下にすると軸方向すべてに亘って所望の定着ベルトのひずみを得られる。。
ここで、感温層130の厚さを100μm以下とするとき、感温機能が発現するためには、磁界が侵入できる深さを示す表皮深さδを100μm以下にする必要がある。
表皮深さδは(1)式で与えられる。
Figure 2008191259




(1)式において、ρは固有抵抗、fは周波数、μrは比透磁率(室温)である。
いま、ρ≧70×10−8Ωm、f≧20kHzを必要条件として、(1)式に基づいてδ≦100μmとなる比透磁率を求めると、少なくとも比透磁率μr≧900が必要となる。なお、固有抵抗ρはJIS K6911の方法で求められる。
以上をふまえて、本実施形態における感温層の厚さは55μmとしている。
一方、発熱層128は、前述の磁界H(図2a参照)を打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料である。また、磁束を貫通させるために表皮深さよりも薄く構成される必要がある。用いられる金属材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン、又はこれらの合金の金属材料を用いることができる。本実施形態では、固有抵抗を2.7×10−8Ωcm以下に小さくして必要な発熱量を効率よく得ること、及び低コストの観点から、発熱層128として銅を用いている。
また、発熱層128の厚さは、定着装置100のウォームアップ時間を短くするためにもできるだけ薄くした方がよく、このため、本実施形態では発熱層128の厚さを10μmとしている。
弾性層126は、優れた弾性と耐熱性が得られる等の観点から、シリコン系ゴム、又はフッ素系ゴムが用いられ、本実施形態ではシリコンゴムを用いている。本実施形態では、弾性層126の厚さを200μmとしている。
離型層124は、記録用紙P上で溶融されたトナーT(図2a参照)との接着力を弱めて、記録用紙Pを定着ベルト102から剥離し易くするために設けられる。優れた表面離型性を得るためには、離型層124として、フッ素樹脂、シリコン樹脂、又はポリイミド樹脂を用いることが用いられ、本実施形態ではPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。離型層124の厚さは30μmとしている。
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
図1〜図3に示すように、前述のプリンタ10の画像形成工程を経て、トナーTが転写された記録用紙Pが定着装置100に送られる。
定着装置100において、前述の制御ユニット50の制御により、定着ベルト102表面の温度が定着設定温度に到達するまでは、加圧ロール104が定着ベルト102表面から離間されており、定着ベルト102表面の温度が定着設定温度に到達すると、加圧ロール104が移動して定着ベルト102表面に接触する。
定着ベルト102表面の温度は、加圧ロール104との接触により一時的に低下するが、発熱層128が継続して発熱することで、定着設定温度に到達する。
このように、定着ベルト102の昇温時に加圧ロール104が接触しておらず、定着ベルト102単体で昇温できるので、定着ベルト102と加圧ロール104とが接触した状態で昇温するよりも、ウォームアップ時間を短くすることができる。
続いて、定着装置100では、加圧ロール104が矢印E方向への回転駆動を開始し、定着ベルト100がそれに従動して矢印D方向へ回転する。このとき、前述の制御回路134からの電気信号に基づいて通電回路138が駆動され、励磁コイル110に交流電流が供給される。
励磁コイル110に交流電流が供給されると、励磁コイル110の周囲に磁気回路としての磁界H(図2a参照)が生成消滅を繰り返す。
そして、図4aに示すように、磁界H1が定着ベルト102の発熱層128を横切ると、磁界H1の変化を妨げる磁界が生じるように発熱層128に渦電流(図示せず)が発生する。
発熱層128は、発熱層128の表皮抵抗、及び発熱層128を流れる渦電流の大きさに比例して発熱し、これによって定着ベルト102が加熱される。
定着ベルト102表面の温度は、図3に示すようにサーミスタ118で検知され、定着設定温度170℃に到達していない場合は、制御回路134が通電回路138を駆動制御して励磁コイル110に所定の周波数の交流電流を通電する。また、定着設定温度に到達している場合は、制御回路134が通電回路138の制御を停止する。
続いて、図2に示すように、定着装置100に送り込まれた記録用紙Pは、発熱層128が発熱して所定の定着設定温度(170℃)となっている定着ベルト102と、加圧ロール104とによって加熱押圧され、トナー画像が記録用紙P表面に定着される。
記録用紙Pは、定着ベルト102と加圧ロール104との間のニップ部から送り出されるとき、それ自体の剛性によってニップ部に沿った方向に直進しようとするため、定着ベルト102から剥離される。
定着装置100から排出された記録用紙Pは、用紙搬送ロール36によりトレイ38に排出される。
ここで、小サイズの記録用紙Pを連続して通紙して定着を行い、続いて大サイズの記録用紙を通紙する場合について説明する。
図5に示すように、定着ベルト102において、小サイズの記録用紙Pが通過する領域をC、大サイズの記録用紙Pが通過する領域をB+C+D、記録用紙Pが通過せず励磁コイル110(図2a参照)が配置されていない領域をA及びEとする。また、感温層130(図2a参照)が無い、もしくは、感温層130の透磁率変化開始温度が170℃〜240℃に存在しない場合の定着ベルトの温度グラフをG1、本実施形態の定着ベルト102の温度グラフをG2とする。
まず、小サイズの記録用紙Pが連続して通紙され定着が行われると、定着ベルト102における記録用紙Pの通過領域Cでは、記録媒体Pに熱量が奪われて定着ベルト102の温度が定着設定温度(170℃)よりも低下する。
制御回路134(図3参照)は、サーミスタ118で検知された温度と定着設定温度の差に基づいて、定着ベルト102の温度を定着設定温度に近づけるように通電回路138を制御し、発熱層128が発熱する。これにより、定着ベルト102の温度が上昇する。
定着ベルト102における記録媒体Pの非通過領域B、D(A、E含む)では、記録媒体に熱量が奪われることがないので、発熱層128の発熱によって温度がさらに上昇する。
ここで、感温層130(図2a参照)が無い、もしくは、感温層130の透磁率変化開始温度が170℃〜240℃に存在しない定着ベルトを用いている場合は、記録媒体Pの非通過領域B、Dにおける温度上昇を低減する手段を有していないため、グラフG1のように、定着ベルト102における記録媒体Pの通過領域Cと非通過領域B、Dの温度差が大きくなる。
記録媒体Pの通過領域Cと非通過領域B、Dの温度差が大きくなると、小サイズの記録用紙Pの後に大サイズの記録用紙Pを定着したときに、記録用紙Pの端部に過剰な熱量が与えられてしまい、トナーTの一部が定着ベルト102側に残ってしまう、いわゆるホットオフセット現象となって、画像の定着むらが生じる。
一方、本実施形態の定着装置100において、記録媒体Pの非通過領域B、Dで温度が上昇し、定着ベルト102表面の温度が定着設定温度170℃よりも高く、且つ透磁率変化開始温度180℃を超えた場合、前述の磁界Hの磁束は、感温層130を貫通するようになり、磁界Hの磁束密度が減少して電磁誘導による渦電流が減少し、記録媒体Pの非通過領域における発熱層128の発熱量が低減される。
これにより、定着ベルト102では、記録媒体Pの非通過領域B、Dにおける温度上昇が低減される。
また、定着ベルト102における記録媒体Pの通過領域Cでは、感温層130の温度が透磁率変化開始温度180℃に到達せず、強磁性体のままとなっているので、発熱層128の発熱量は低減されず、定着設定温度170℃まで温度上昇する。
このようにして、定着ベルト102における記録媒体Pの通過領域Cと非通過領域B、Dの温度差が低減され、温度分布がグラフG2のようになるので、小サイズの記録用紙Pの定着後に大サイズの記録用紙Pを定着しても、大サイズの記録用紙Pの端部で前述のホットオフセット現象が起こりにくく、定着むらを防ぐことができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
プリンタ10は、固体の現像剤を用いる乾式の電子写真方式だけでなく、液体現像剤を用いるものであってもよい。
定着ベルト102の温度の検知手段として、サーミスタ118の代わりに熱電対を用いてもよい。
サーミスタ118の取付け位置は、定着ベルト102の表面に限定されず、定着ベルト102の内周面に取付けてもよい。この場合、定着ベルト102の表面が摩耗しにくくなる。また、サーミスタ118は、加圧ロール104の表面に取付けてもよい。
本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体図である。 (a)本発明の実施形態に係る定着装置の断面図である。(b)本発明の実施形態に係る定着ベルトの断面図である。 本発明の実施形態に係る制御回路及び通電回路の接続図である。 本発明の実施形態に係る定着ベルトを磁界が貫通する状態を示した模式図である。 本発明の実施形態に係る定着ベルトの温度分布を示したグラフである。 透磁率と温度の関係を示した模式図である。
符号の説明
10 プリンタ(画像形成装置)
100 定着装置(定着装置)
102 定着ベルト(定着部材)
103 凹部(凹部)
104 加圧ロール(加圧回転体)
105 凸部(凸部)
110 励磁コイル(磁界発生手段)
114 誘導体(誘導部材)
116 押圧パッド(支持体)
118 サーミスタ(検知手段)
128 発熱層(発熱層)
130 感温層(感温層)
134 制御回路(制御手段)
138 通電回路(通電手段)
146 発熱層(発熱層)
148 定着ベルト(定着部材)
H 磁界
P 記録用紙(記録媒体)
T トナー(現像剤)

Claims (6)

  1. 磁界を発生する磁界発生手段と、
    前記磁界発生手段と対向配置され、前記磁界の電磁誘導により発熱する発熱層と、定着設定温度以上で且つ前記定着部材の耐熱温度以下の温度領域に透磁率が連続的に低下し始める透磁率変化開始温度を有し、前記磁界発生手段と反対側の前記発熱層面に接する感温層と、を有する無端状の定着部材と、
    前記定着部材の内側へ配置された支持体と、
    前記定着部材を前記支持体へ加圧する加圧回転体と、
    を備えたことを特徴とする定着装置。
  2. 前記定着部材の内側に、前記磁界の磁束を誘導する非磁性体からなる誘導部材を前記定着部材と非接触で設けたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記誘導部材が、前記支持体を支持することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記加圧回転体との接触部の前記定着部材に、凹部と前記凹部の両側に凸部を形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
  5. 前記磁界発生手段が所定の周波数の電流を流す通電手段を有し、前記周波数が20kHz以上、前記感温層の抵抗値が70×10−8Ωm以上、及び前記感温層の比透磁率が900以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の定着装置と、
    前記定着装置の前記定着部材の温度を検知する検知手段と、
    前記検知手段で得られた温度が所定の温度となるように前記磁界発生手段を制御する制御手段と、
    を有することを特徴とする画像形成装置。
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