JP2008190947A - 関節リウマチ治療用抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定するための方法および組成物 - Google Patents

関節リウマチ治療用抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定するための方法および組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】関節リウマチ患者において、抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定するための方法および組成物を提供する。
【解決手段】関節リウマチ患者由来の生体試料中の配列番号1〜25で表されるポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つの量または存在を測定することを含む、関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定する方法、ならびに、該ポリペプチド、その変異体またはその断片と特異的に結合する抗体あるいはその断片の少なくとも1つを含む、関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定するための組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効の測定方法に関する。
本発明はまた、該測定方法に使用される組成物に関する。
関節リウマチは、自己免疫によって手足を中心とする関節が侵され、関節の痛み・腫れ・こわばり・炎症が全身に広がり、関節の変形が生じ最終的には身体障害にまで至る炎症性自己免疫疾患である。しばしば血管、心臓、肺、皮膚、筋肉、眼球などにも合併症を伴う。主に20〜50歳代の人が発症しやすく、男女の比率は1:4と女性に多い。患者数は日本国内でおよそ70〜100万人であり1年に15,000人が新しく発病しているといわれている。
関節リウマチの原因は現在のところはっきりと解明されておらず、その治療は、薬物療法が主体である。病期を通じて処方されるのは抗リウマチ薬(DMARDs)であり、対症療法的に非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、免疫抑制薬、ステロイド薬なども処方されるが、副作用の強いものも存在する(非特許文献1)。さらに近年では、これら従来の薬剤に加えて、分子レベルでの解析の進歩に伴う「分子デザイン薬」と呼ばれる新薬が実際に臨床応用され始めている。分子デザイン薬ははじめからある機能を担うことを狙ってつくられた薬剤であり、その代表例として抗ヒトTNF−alpha抗体などがある(非特許文献2)。抗ヒトTNF−alpha抗体は、炎症反応を引き起こすサイトカインであるTNF−alphaに対する抗体そのものを薬剤とした「抗体医薬」である。現在このような抗ヒトTNF−alpha抗体は難治性の多くの患者に対して劇的な治療効果を示し、リウマチの診療そのものの姿を目覚ましく変化させつつある(非特許文献3;非特許文献4)。しかしながら、抗ヒトTNF−alpha抗体には患者の体内で徐々に中和抗体の産生が惹起され、徐々に投与効果が少なくなるという知見も得られており、また、患者によって薬効が顕著に現れる患者(responder)とそうでない患者(non-responder)が存在することがわかっている(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。
American College of Rheumatology Ad Hoc Committee on Clinical Guidelines:Guidelines for the management of Rheumatoid Arthritis、Arth and Rhuem、第39巻、p.713−722、1996年 Knightら、1993年、Mol Immunol.、第30巻、p.1443−1453 Mainiら、1999年、Lancet、第354巻、p.1932−1939 Lipskyら、2000年、N Engl J Med、第343巻、p.1594−1602 Elliottら、1993年、Arthritis Rheum、第36巻、p.1681−1690 Elliottら、1994年、Lancet、第344巻、p.1105−1110 Elliottら、1994年、Lancet、第344巻、p.1125−1127
現在行われている関節リウマチの診断法には、幾つかの症状及び検査項目に基づくアメリカリウマチ学会(ACR)の分類基準に基づく診断法があるが、それは医師所見や患者主訴に基づくものであり、客観性に乏しい。また、検査項目としては、C反応性蛋白質上昇、赤血球沈降速度亢進、リウマチ因子陽性、赤血球、白血球数の増減などの項目に基づいた検査法が一般的に行われているが、その診断精度は必ずしも高いものではない。例えば、リウマチ因子は関節リウマチにおいて陽性であることがほとんどだが、関節リウマチ以外の疾患患者においても陽性となり、また高齢となるにつれて健常人においても陽性の頻度は高くなるから、リウマチ因子のみの値をもってリウマチであるとの診断を確定することは出来ないとされている。このように、関節リウマチの診断法1つ取ってみても、その診断が如何に難しいかが判る。
このような状況において、関節リウマチ治療剤の1つである抗ヒトTNF−alpha抗体は、上記のとおり、それがキメラ抗体であるために、患者によっては、顕著な薬効が現れる場合と、該抗体に対する抗体が生成し薬効の顕著な低下が現れる場合があることが知られている。もし関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を確実にかつ客観的に評価するマーカーが見出されるならば、該抗体医薬の薬効の有無を迅速に予測できるため、関節リウマチ患者、特にresponder、において薬剤療法を効果的に進めていくことができ、患者のQOL向上にもつながるはずである。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、上記マーカーを探索するために、関節リウマチ患者において、抗ヒトTNF−alpha抗体投与前と投与後の体液中に含まれる遺伝子、タンパク質、代謝産物などの物質の量的変動を測定した。具体的には、該抗体医薬の投与前後における関節リウマチ患者由来の血清または血漿を比較し、投与後の血清または血漿により多く検出されるタンパク質マーカーを見出した。
したがって、本発明は、以下の特徴を有する。
(1)関節リウマチ患者由来の生体試料中の配列番号1〜25で表されるポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つの量または存在を測定することを含む、関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定する方法。
(2)前記ポリペプチド、その変異体またはその断片の量が、抗ヒトTNF−alpha抗体の投与前と比べ、投与後において増大していることを指標にし、かつ、該量が増大している場合該抗体の薬効があると判定する、(1)に記載の方法。
(3)前記測定が免疫学的方法によるものである、(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記測定が、前記ポリペプチド、その変異体またはその断片と結合可能な物質を用いて行われる、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記結合可能な物質が抗体またはその断片である、(4)に記載の方法。
(6)前記抗体が標識されている、(5)に記載の方法。
(7)前記ポリペプチド、その変異体またはその断片と特異的に結合する抗体またはその断片を用いて、前記試料中の該ポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つを免疫学的に測定し、該ポリペプチド、その変異体またはその断片の量が対照試料のものと比べて増大していることを指標にするか、あるいは該ポリペプチド、その変異体またはその断片の存在を指標にして、関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定することを含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記試料が血液、血漿、血清、関節液または尿である、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記抗体が、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、(5)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(10)配列番号1〜25で表されるポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つと特異的に結合する、抗体もしくはその断片またはそれらの化学修飾誘導体を含む、関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定するための組成物。
(11)前記断片が、少なくとも7個のアミノ酸からなるエピトープを含む、(10)に記載の組成物。
(12)キットの形態である、(10)〜(11)のいずれかに記載の組成物。
(13)(10)〜(12)のいずれかに記載の組成物の、関節リウマチ患者由来の生体試料中の配列番号1〜25で表されるポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つの量または存在をインビトロで検出するための使用方法。
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を有する。
本明細書において「変異体」とは、配列番号1〜25で表されるアミノ酸配列又はその部分配列おいて1以上、好ましくは1もしくは数個、のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは該アミノ酸配列又はその部分配列と約80%以上、約85%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の%同一性を示す変異体を意味する。
ここで、「数個」とは、約10、9、8、7、6、5、4、3又は2個以下の整数を指す。
また、「%同一性」は、上記のBLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて、ギャップを導入して、あるいはギャップを導入しないで、決定することができる(Karlin,S.ら、1993年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第90巻、p.5873-5877;Altschul,S.F.ら、1990年、Journal of Molecular Biology、第215巻、p.403-410;Pearson,W.R.ら、1988年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第85巻、p.2444-2448)。
本明細書において「化学修飾誘導体」は、酵素、蛍光団、放射性同位元素などのラベルによるラベル化誘導体、あるいはアセチル化、グリコシル化、リン酸化、硫酸化などの化学修飾を含む誘導体を意味する。
本明細書において「薬効測定用組成物」とは、抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効の有無や程度を測定するために、直接的又は間接的に使用しうるものをいう。
本明細書において検出・診断対象となる「生体試料」とは、抗ヒトTNF−alpha抗体の投与にともない出現する標的ポリペプチドを含有する、あるいはその含有が疑われる、生体から採取された試料をいう。
本明細書において「特異的に結合する」とは、抗体またはその断片が、本発明の標的ポリペプチド、その変異体またはその断片とのみ抗原-抗体複合体を形成し、他のペプチド性またはポリペプチド性物質とは該複合体を実質的に形成しないことを意味する。ここで、「実質的」とは、程度は小さいが非特異的な複合体形成が起こり得ることを意味する。
本明細書において「エピトープ」とは、本発明の標的ポリペプチド、その変異体またはその断片において、抗原性または免疫原性を有する部分アミノ酸領域(抗原決定基)を指す。エピトープは通常、少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも7アミノ酸または少なくとも8アミノ酸、より好ましくは少なくとも10アミノ酸からなる。
本明細書において「組成物」とは、その構成成分の単なる混合物だけでなく、1つまたは複数の構成成分の個別包装からなる組み合わせ物も包含する。このような組み合わせ物の例がキットである。
本発明は、本発明における抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効測定用マーカーは、関節リウマチ患者の血液などの生体試料中において、抗体投与前に比べて投与後に有意により多く見いだされるため、該マーカーの存在または量を指標にすることによって、例えば血液を用いて、容易に抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効の度合を客観的に測定することができるという格別の作用効果を有する。
以下に本発明をさらに具体的に説明する。
<抗ヒトTNF−alpha抗体薬効測定用マーカー>
本発明の抗ヒトTNF−alpha抗体薬効測定用組成物を使用して抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効をインビトロで測定するためのマーカーは、配列番号1〜25で表されるアミノ酸配列を有すポリペプチド、その変異体またはその断片である。
本発明の配列番号1〜25のポリペプチドを、そのタンパク質番号(RefSeq登録番号)、ならびにタンパク質名とともに下記の表1に示す。これらのポリペプチドは、抗ヒトTNF−alpha抗体を投与された後の関節リウマチ患者の血清または血漿中において、投与前の血清または血漿に比べ有意に高い割合で検出される。
Figure 2008190947
本発明における「抗ヒトTNF−alpha抗体」としては、ヒト生体内のTNF−alphaに対し、高い親和性をもって結合し、その活性を中和する作用を有する抗体が好ましく使用できる。ここで、「高い親和性」とは、ヒトTNF−alphaに対する結合定数Kaが好ましくは少なくとも10−1、より好ましくは少なくとも10−1の親和性を持つことを意味する。また、ヒトTNF−alphaに対する結合特異性が高い抗体がより好ましい。
本発明における「抗ヒトTNF−alpha抗体」としては、ヒト生体内での免疫原性および毒性が低いモノクローナル抗体またはその断片であればよい。このような抗体としては、キメラ型抗体、ヒト化抗体、ヒト型抗体、霊長類化抗体、表面再処理抗体、単鎖抗体などが挙げられる。より好ましくは、インフリキシマブ(Infliximab、商品名:Remicade、Centocor Inc社製)、あるいはこの医薬と同等の生物学的性質(ヒトTNF−alpha機能の抑制)を有する抗体、が用いられる。インフリキシマブは、マウス抗ヒトTNF−alphaマウスIgG1抗体の抗原結合性可変領域と、ヒトIgG1kappa免疫グロブリンの定常領域からなるキメラ型モノクローナル抗体である。
本発明における薬効測定用組成物を使用することにより、抗ヒトTNF−alpha抗体投与に対し、症状・症候の軽減,関節破壊進展の防止,身体機能の改善などの「薬効」を測定することができる。
本発明において抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効測定のための上記標的ポリペプチドはいずれも、関節リウマチ患者において、血液などの生体試料中の該ポリペプチドのレベルが、抗ヒトTNF−alpha抗体の投与前と比べて投与後において有意にまたは格別に高いことによって特徴付けられる。
本発明のポリペプチドは、例えば当業界で慣用の技術である化学合成またはDNA組換え技術によって作製することができる。手順や精製の簡易さの点で、DNA組換え技術の使用が好ましい。
得られたポリヌクレオチドをプローブまたはプライマーとして用いて、周知のcDNAクローニングによって、具体的には、標的である上記遺伝子が発現される関節組織などの生体組織から抽出した全RNAをオリゴdTセルロースカラムで処理して得られるポリA(+)RNAからRT-PCR法によってcDNAライブラリーを作製し、このライブラリーからハイブリダイゼーションスクリーニング、発現スクリーニング、抗体スクリーニングなどのスクリーニングによって、目的のcDNAクローンを得る。必要に応じて、cDNAクローンをさらにPCR法によって増幅することもできる。プローブ又はプライマーは、配列番号1〜11に示されるポリペプチド配列に基づいて15〜100塩基の連続する配列の中から選択し、上記のようにして合成しうる。cDNAクローニング技術は、例えばSambrook,J.& Russel,D.著、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の 第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17に記載されている。
例えば、上記のようにして得られたcDNAクローンを発現ベクターに組み込み、該ベクターによって形質転換又はトランスフェクションされた原核又は真核宿主細胞を培養することによって該細胞又は培養上清から得ることができる。ベクター及び発現系はNovagen社、宝酒造、第一化学薬品、Qiagen社、Stratagene社、Promega社、Roche Diagnositics社、Invitrogen社、Genetics Institute社、Amersham Bioscience社などから入手可能である。宿主細胞としては、細菌などの原核細胞(例えば大腸菌、枯草菌)、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシアエ)、昆虫細胞(例えばSf細胞)、哺乳動物細胞(例えばCOS、CHO、BHK)などを用いることができる。ベクターには、該ポリペプチドをコードするDNAの他に、調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルおよびリボソーム結合部位、複製開始点、ターミネーター、選択マーカーなどを含むことができる。
また、ポリペプチドの精製を容易にするために、標識ペプチドをポリペプチドのC末端またはN末端に結合させた融合ポリペプチドの形態で生成させることもできる。代表的な標識ペプチドには、6〜10残基のヒスチジンリピート、FLAG、mycぺプチド、GFPポリペプチドなどが挙げられるが、標識ペプチドはこれらに限られるものではない。
標識ペプチドを付けずに本発明に係るポリペプチドを生産した場合には、その精製法として例えばイオン交換クロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。またこれに加えて、ゲルろ過や疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、電気泳動、硫安分画、塩析、限外ろ過、透析などを組み合わせる方法でもよい。さらにまた、該ポリペプチドにヒスチジンリピート、FLAG、myc、GFPといった標識ペプチドを付けている場合には、一般に用いられるそれぞれの標識ペプチドに適したアフィニティークロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。この場合、単離・精製が容易となるような発現ベクターを構築するとよい。特にポリペプチドと標識ペプチドとの融合ポリペプチドの形態で発現するように発現ベクターを構築し、遺伝子工学的に当該ポリペプチドを調製すれば、単離・精製も容易である。
本発明における上記ポリペプチドの変異体は、上記定義のとおり、配列番号1〜25で表されるアミノ酸配列又はその部分配列おいて1以上、好ましくは1もしくは数個、のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは該アミノ酸配列又はその部分配列と約80%以上、約85%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の%同一性を示す変異体である。このような変異体には、例えば、ヒトと異なる哺乳動物種のホモログ、同種の哺乳動物(例えば人種)間での多型性変異に基づく変異体などの天然変異体が含まれる。
本発明における上記ポリペプチドの断片は、該ポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも15個、好ましくは少なくとも20個、少なくとも25個、より好ましくは少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基からなり、1個または複数のエピトープを保持する。このような断片は、本発明に関わる抗体またはその断片と免疫特異的に結合することができるものである。上記ポリペプチドが、例えば血液中に存在する場合には、そこに存在するプロテアーゼやペプチダーゼなどの酵素によって切断され断片化されて存在することが想定される。
<抗ヒトTNF−alpha抗体薬効測定用組成物>
本発明はさらに、抗ヒトTNF−alpha抗体薬効測定用マーカーとしての配列番号1〜25で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片を検出するために、これらのポリペプチド、その変異体またはその断片に対する抗体またはその断片を1もしくは複数組み合わせることができる。
そのようなマーカーの組み合わせの例は、配列番号1〜25で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜24で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜23で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜22で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜21で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜20で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜19で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜18で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜17で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜16で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜15で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜14で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜13で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜12で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜11で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜10で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜9で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜8で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜7で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜6で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜5で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜4で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜3で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、配列番号1〜2で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の組み合わせ、などである。更に別の組み合わせの例は、配列番号1〜4で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の少なくとも1つと、配列番号5〜25で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の少なくとも1つとの組み合わせ、配列番号1〜9で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の少なくとも2つの組み合わせ、配列番号1〜4で表わされるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の少なくとも1つと、配列番号22〜25で表されるポリペプチド、それらの変異体、またはそれらの断片に対する抗体またはその断片の少なくとも1つとの組み合わせ、などである。
上記のようにして得られたポリペプチドを認識する抗体は、抗体の抗原結合部位を介して、該ポリペプチドに特異的に結合し得るものである。本発明で使用しうる抗体は、配列番号1〜25のアミノ酸配列を有するポリペプチド、その変異体、またはその断片、あるいはその融合ポリペプチドを1または複数の免疫原として使用して慣用の技術によって作製することができる。これらのポリペプチド、断片、変異体または融合ポリペプチドは、抗体形成を引き出すエピトープを含むが、これらエピトープは、直鎖でもよいし、より高次構造(断続的)でもよい。なお、該エピトープは、当該技術分野に知られるあらゆるエピトープ解析法、例えばファージディスプレイ法、リバースイムノジェネティックス法など、によって同定できる。
本発明で使用しうる抗体は、いずれのタイプ、クラス、サブクラスも含まれるものとする。そのような抗体には、例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、IgY、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2などが含まれる。
さらにまた、本発明に係るポリペプチドによってあらゆる態様の抗体が誘導される。該ポリペプチドの全部もしくは一部またはエピトープが単離されていれば、慣用技術を用いてポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれも作製可能である。方法には例えば、Kennetら(監修),Monoclonal Antibodies,Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses,Ple num Press,New York,1980に挙げられた方法がある。
ポリクローナル抗体は、鳥類(例えば、ニワトリなど)、哺乳動物(例えば、ウサギ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ネズミなど)などの動物に本発明に係るポリペプチドを免疫することによって作製することができる。目的の抗体は、免疫された動物の血液から、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの手法を適宜組み合わせて精製することができる。
モノクローナル抗体は、各ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を、慣用技術によってマウスにおいて産生することを含む手法によって得ることができる。こうしたハイブリドーマ細胞株を産生するための1つの方法は、動物を本発明の酵素ポリペプチドで免疫し、免疫された動物から脾臓細胞を採取し、該脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成し、そして該酵素に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することを含む。モノクローナル抗体は、慣用技術によって回収可能である。
モノクローナルおよびポリクローナル抗体の作製について以下に詳しく説明する。
A.モノクローナル抗体の作製
(1)免疫及び抗体産生細胞の採取
上記のようにして得られた免疫原を、哺乳動物、例えばラット、マウス(例えば近交系マウスのBalb/c)、ウサギなどに投与する。免疫原の1回の投与量は、免疫動物の種類、投与経路などにより適宜決定されるものであるが、動物1匹当たり約50〜200μgとされる。免疫は主として皮下、腹腔内に免疫原を注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、初回免疫後、数日から数週間間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で、2〜10回、好ましくは3〜4回追加免疫を行う。初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)法などにより繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したときは、免疫原を静脈内または腹腔内に注射し、最終免疫とする。そして、最終免疫の日から2〜5日後、好ましくは3日後に、抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞または局所リンパ節細胞が好ましい。
(2)細胞融合
各タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、慣用的技術によって産生し、そして同定することが可能である。こうしたハイブリドーマ細胞株を産生するための1つの方法は、動物を本発明のポリペプチドで免疫し、免疫された動物から脾臓細胞を採取し、該脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成し、そして該酵素に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することを含む。抗体産生細胞と融合させる骨髄腫細胞株としては、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。また株化細胞は、免疫動物と同種系の動物に由来するものが好ましい。骨髄腫細胞株の具体例としては、BALB/cマウス由来のヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT)欠損細胞株であるP3X63-Ag.8株(ATCC TIB9)などが挙げられる。
次に、上記骨髄腫細胞株と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI-1640培地などの動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞と骨髄腫細胞株とを約1:1〜20:1の割合で混合し、細胞融合促進剤の存在下にて融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1500〜4000ダルトンのポリエチレングリコール等を約10〜80%の濃度で使用することができる。また場合によっては、融合効率を高めるために、ジメチルスルホキシドなどの補助剤を併用してもよい。さらに、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞と骨髄腫細胞株とを融合させることもできる。
(3)ハイブリドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を、例えばウシ胎児血清含有RPMI-1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に200万個/ウエル程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。培養温度は、20〜40℃、好ましくは約37℃である。ミエローマ細胞がHGPRT欠損株またはチミジンキナーゼ欠損株のものである場合には、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジンを含む選択培地(HAT培地)を用いることにより、抗体産生能を有する細胞と骨髄腫細胞株のハイブリドーマのみを選択的に培養し、増殖させることができる。その結果、選択培地で培養開始後、約14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウエルに含まれる培養上清の一部を採取し、酵素免疫測定法(EIA:Enzyme Immuno Assay、及びELISA)、放射性免疫測定法(RIA:Radio Immuno Assay)等によって行うことができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立する。ハイブリドーマは、RPMI-1640、DMEM等の基本培地中での培養において安定であり、本発明のポリペプチド性マーカーと特異的に反応するモノクローナル抗体を産生、分泌するものである。
(4)抗体の回収
モノクローナル抗体は、慣用的技術によって回収可能である。すなわち樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法または腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI-1640培地、MEM培地または無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5%CO濃度)で2〜10日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1000万個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水または血清を採取する。
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択して、またはこれらを組み合わせることにより、精製された本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。
B.ポリクローナル抗体の作製
ポリクローナル抗体を作製する場合は、前記と同様に動物を免疫し、最終の免疫日から6〜60日後に、酵素免疫測定法(EIA及びELISA)、放射性免疫測定法(RIA)等で抗体価を測定し、最大の抗体価を示した日に採血し、抗血清を得る。その後は、抗血清中のポリクローナル抗体の反応性をELISA法などで測定する。
また本発明においては、上記抗体の抗原結合断片も使用しうる。慣用的技術によって産生可能な抗原結合断片の例には、FabおよびF(ab’)断片が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子工学技術によって産生可能な抗体断片および誘導体もまた含まれる。そのような抗体には、例えば合成抗体、組換え抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、単鎖抗体などが含まれる。
本発明の抗体は、in vitro及びin vivoのいずれにおいても、本発明において、ポリペプチドまたはその(ポリ)ペプチド断片の存在を検出するためのアッセイに使用可能である。アッセイにおける特異的検出を可能にするために、モノクローナル抗体の使用が好ましいが、ポリクローナル抗体であっても、精製ポリペプチドを結合したアフィニティーカラムに抗体を結合させることを含む、いわゆる吸収法によって、特異抗体を得ることができる。
したがって、本発明の組成物は、配列番号1〜10のポリペプチド、その変異体、またはその断片と特異的に結合可能な抗体またはその断片を少なくとも1つ含む、好ましくは複数種、より好ましくは全ての種類を含むことができる。
本発明の組成物はさらに、配列番号11のポリペプチド、その変異体またはその断片に対する抗体またはその断片を含むことができる。
好ましくは、本発明の組成物はキットの形態である。このようなキットにおいては、上記の各ポリペプチドに特異的に結合可能な抗体またはその断片を、それぞれ別個に、あるいは混合物として、収容する容器を含む。抗体またはその断片は、例えばポリスチレン製などのマルチウエルプレート、ラテックスビーズ、磁性ビーズなどの球状担体などの固相担体上に付着または結合させてもよい。
本発明で使用される抗体またはその断片には、必要に応じてラベル、例えば蛍光団、酵素、放射性同位元素などを結合させてもよいし、あるいは二次抗体にこのようなラベルを結合してもよい。
蛍光団には、例えばフレオロレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、ダンシルクロリドとその誘導体、ウンベリフェロンなどが含まれる。
酵素には、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどが含まれる。
放射性同位元素には、例えばヨウ素(131I、125I、123I、121I)、リン(32P)、イオウ(35S)、金属類(例えば68Ga、67Ga、68Ge、54Mn、99Mo、99Tc、133Xeなど)などが含まれる。
その他のラベルには、例えばルミノールなどの発光物質、ルシフェラーゼ、ルシフェリンなどの生物発光物質などが含まれる。
また、必要に応じて、アビジン-ビオチン系またはストレプトアビジン-ビオチン系を利用することも可能であり、この場合、本発明の抗体またはその断片に例えばビオチンを結合することもできる。
<抗ヒトTNF−alpha抗体薬効の測定>
本発明によれば、上記抗ヒトTNF−alpha抗体薬効測定用マーカーと結合可能な物質を用いて、患者由来の生体試料中の配列番号1〜25で表されるポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つについて、その量または存在を調べることを含む方法によって、抗ヒトTNF−alpha抗体薬効を測定することができる。
本発明の方法では、上記抗ヒトTNF−alpha抗体薬効測定用マーカーの検出は、単一のマーカーでもよいが、好ましくは複数、例えば2以上、3以上、5以上から25以下のマーカーについて行うのがよい。これは、予期せぬ非特異的複合体の検出、言い換えれば誤診、を回避するためである。
本発明の組成物は、抗ヒトTNF−alpha抗体投与による薬効の有無や程度の診断のために有用である。関節リウマチの抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を診断する際には、抗体投与前の組織、体液などの陰性対照との比較を行い、投与後の生体試料中の上記反応性測定マーカーの存在または量を検出し、その存在または量の差が有意であれば、患者について抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効があったと推測できる。
本発明方法で用いられる検体試料としては、例えば関節組織、その周辺組織、関節部細胞、あるいは体液、例えば血液、血清、血漿、関節液、涙、尿などである。患者の生体組織は、バイオプシーなどで採取するか、もしくは手術によって得ることができる。
本発明において、患者とは、ヒトを含む哺乳動物、好ましくはヒトである。
上記薬効測定用マーカーと結合可能な物質は、例えば上記抗体またはその断片、アプタマー、Affibody(Affibody社商標)、それぞれの薬効測定用マーカーの受容体、それぞれの薬効測定用マーカーの特異的作用阻害物質、それぞれの薬効測定用マーカーの特異的作用活性化物質などを含み、好ましくは抗体またはその断片である。
本発明の実施形態において、測定は、慣用の酵素又は蛍光団で必要により標識した抗体又は断片と、組織切片又はホモゲナイズした組織または体液とを接触させる工程、抗原-抗体複合体を定性的に又は定量的に測定する工程を含むことができる。検出は、例えば免疫電顕により標的ポリペプチドの存在とレベルを測定する方法、酵素抗体法(例えばELISA)、蛍光抗体法、放射性免疫測定法、均一法、不均一法、固相法、サンドイッチ法などの慣用法によって標的ポリペプチドの存在またはレベルを測定する方法などによって行うことができる。体液またはリウマチ組織もしくは細胞、関節液、好ましくは血液、において、標的ポリペプチドが存在する場合、あるいは陰性対照と比較して標的ポリペプチドのレベルが有意に高い場合、投与効果があったと決定する。ここで、「有意に」とは、統計学的に有意であることを意味する。
免疫学的方法に代わる測定方法として、質量分析法を用いる方法が含まれる。この方法は、具体的には実施例に記載される手法で行うことができる。すなわち、生物試料、例えば血清または血漿をフィルターでろ過して夾雑物を除き、緩衝液(例えばpH約8)で希釈して約10mg/ml〜約15mg/mlの濃度に調整したのち、タンパク質を除去可能なフィルター(例えば、分子量5万以上のタンパク質を除去可能な中空糸フィルター(参考例(1)に記載)または遠心型平膜フィルター等を通して分子量分画し、画分をプロテアーゼ(例えばトリプシン)で処理してペプチド化し、さらにペプチドを分画し、これを質量分析計(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法またはエレクトロスプレーイオン化法を利用したタイプ)に掛けて、目的のポリペプチド由来の特定ピークの質量/荷電数と強度に基づいて、抗体医薬の投与前後における試料中のポリペプチドの存在量の差異を測定することができる。
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明は、この実施例によって制限されないものとする。
参考例(1)中空糸フィルターの作製
分画分子量約5万の孔径を膜表面に有するポリスルホン中空糸を100本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をガラス管に固定し、ミニモジュールを作成した。該ミニモジュール(モジュールA)は血清または血漿中の高分子量タンパク質の除去に用いられ、その直径は約7mm、長さは約17cmである。同様に低分子量タンパク質の濃縮に用いられるミニモジュール(モジュールB)を分画分子量約3千の孔径の膜を用いて作成した。ミニモジュールは片端に中空糸内腔に連結する入口があり、反対側の端は出口となる。中空糸入口と出口はシリコンチューブによる閉鎖循環系流路であり、この流路内を液体がペリスタルティック方式ポンプに駆動されて循環する。また、中空糸外套のガラス管には、中空糸から漏出してきた液体を排出するポートを備え、1つのモジュールセットが構成される。流路途中にT字のコネクターによって、モジュールを連結し、モジュールA3本と、モジュールB1本をタンデムに連結してひとつの中空糸フィルターとした。この中空糸フィルターを蒸留水にて洗浄し、PBS(0.15mM NaClを含むリン酸緩衝液、pH7.4)水溶液を充填した。分画原料の血清または血漿は該中空糸フィルターの流路入口から注入され、分画・濃縮後に流路出口から排出される。該中空糸フィルターに注入された血清または血漿は、モジュールA毎に分子量約5万で分子篩いがかかり、分子量5万よりも低分子の成分はモジュールBで濃縮され、調製されるようになっている。
実施例(1)抗ヒトTNF−alpha抗体の投与前および投与後の関節リウマチ患者血清または血漿のタンパク質同定
50〜70歳代の関節リウマチ患者10名より、インフリキシマブ(商品名レミケード)投与前、および投与後24時間後の状態において血清またはEDTA添加の血漿成分をそれぞれ得た。血清または血漿をポアサイズ0.22μmのフィルターでろ過して夾雑物質を取り除き、タンパク質濃度50mg/mLとなるように調整した。この血清または血漿をさらに25mM重炭酸アンモニウム溶液(pH8.0)12.5mg/mLに希釈し、参考例(1)に示した中空糸フィルターによって分子量分画を行った。分画後のサンプルをタンパク質の50分の1量のトリプシンで37℃、2〜3時間以上消化し、ペプチド化した。そのペプチドをさらにイオン交換カラム(KYAテクノロジーズ社)によって素通り画分を含めて5分画化した。
その各々の分画を、逆相カラム(KYAテクノロジーズ社)でさらに分画し、溶出されてきたペプチドについて、質量分析計LCQ DECA XP plus(Thermo Finnigan社)を用いて測定した。その測定データを、タンパク質同定ソフトウェアであるMASCOT(Matrix Science)を用いて解析することにより、網羅的にタンパク質同定を行った。その結果、投与前、投与後いずれの成分からも、約200種類のタンパク質が同定された。
実施例(2)関節リウマチ患者の抗ヒトTNF−alpha抗体投与前および投与後の血清または血漿のタンパク質発現比較
上記(1)で同定された血清タンパク質または血漿タンパク質について、抗ヒトTNF−alpha抗体投与前および投与後間で比較を行った。比較はMascot解析においてタンパク質同定に用いられたペプチドの数を基準におこなった。それぞれのタンパク質について、インフリキシマブ投与前に比べ投与後のペプチドの検出数が増加した患者数をNinc、減少した患者数をNdecとし、D=(Ninc−Ndec)/n(n=10)で定義されるスコアDを計算し、D≧0.4を満たすタンパク質を見いだした。これらのタンパク質は、上記表1に示した配列番号1〜21で表されるポリペプチドである。また、Ninc=3かつNdec=0を満たすタンパク質のうち、ペプチドが投与前の全患者において全く検出されなかったタンパク質を見いだした。これらのタンパク質は、上記表1に示した配列番号22〜25で表されるポリペプチドである。これらの配列番号1〜25で表されるポリペプチドは、いわゆる薬効測定用マーカーとして抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効測定において有用である。これらの配列番号1〜25で表されるポリペプチドに対する、RefSeq番号、各患者におけるペプチド同定数、Ninc、Ndec、Dの値をそれぞれ表2に示した。
上記のポリペプチドの少なくとも1つを、例えばその特異抗体を用いて、該ポリペプチドの存在または量を測定することによって、抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定することができる。
Figure 2008190947
本発明は、特異性および感受性に優れた、抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効測定用組成物を提供することができるため、特に製薬および医薬産業上有用である。

Claims (13)

  1. 関節リウマチ患者由来の生体試料中の配列番号1〜25で表されるポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つの量または存在を測定することを含む、関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定する方法。
  2. 前記ポリペプチド、その変異体またはその断片の量が、抗ヒトTNF−alpha抗体の投与前と比べ、投与後において増大していることを指標にし、かつ、該量が増大している場合該抗体の薬効があると判定する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記測定が免疫学的方法によるものである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記測定が、前記ポリペプチド、その変異体またはその断片と結合可能な物質を用いて行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記結合可能な物質が抗体またはその断片である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記抗体が標識されている、請求項5に記載の方法。
  7. 前記ポリペプチド、その変異体またはその断片と特異的に結合する抗体またはその断片を用いて、前記試料中の該ポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つを免疫学的に測定し、該ポリペプチド、その変異体またはその断片の量が対照試料のものと比べて増大していることを指標にするか、あるいは該ポリペプチド、その変異体またはその断片の存在を指標にして、関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定することを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記試料が血液、血漿、血清、関節液または尿である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記抗体が、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 配列番号1〜25で表されるポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つと特異的に結合する、抗体もしくはその断片またはそれらの化学修飾誘導体を含む、関節リウマチに対する抗ヒトTNF−alpha抗体の薬効を測定するための組成物。
  11. 前記断片が、少なくとも7個のアミノ酸からなるエピトープを含む、請求項10に記載の組成物。
  12. キットの形態である、請求項10〜11のいずれか1項に記載の組成物。
  13. 請求項10〜12のいずれか1項に記載の組成物の、関節リウマチ患者由来の生体試料中の配列番号1〜25で表されるポリペプチド、その変異体またはその断片の少なくとも1つの量または存在をインビトロで検出するための使用方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013518257A (ja) * 2010-01-25 2013-05-20 アボット・ラボラトリーズ 複合生体液中のタンパク質の高速特性評価

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