JP2008189998A - 熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1芯材1および第2芯材2からなる2層構造の芯材5と、この2層構造の芯材5の一面側に配置された第1ろう材3と、この2層構造の芯材5の他面側に配置された第2ろう材4とを備えた熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート10であって、第1芯材1は、Mn、Si、Znを所定量含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、第2芯材2は、Mn、Si、Cuを所定量含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、第1芯材1の厚さが、2層構造の芯材5の厚さの40%以下であり、かつ、20μm以上60μm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
従来、熱交換器においては、軽量化、小型化の取り組みが継続的になされており、熱交換器に使用されるブレージングシートにおいても、板厚をより薄くすることが目標とされている。そのため、従来の材料に比べ、より、ろう付後強度が高く、高耐食性を有する材料が必要とされている。
自動車用熱交換器においては、材料の薄肉化が図られているが、軽量化、小型化およびコストダウンのために、さらなる薄肉化の要請が強まっている。そして、この薄肉化を進めるためには、さらなるろう付後強度の高さと高耐食性が必要とされる。ここで、従来の技術においては、ろう付後強度および耐食性のレベルは向上しているものの、さらなる材料の薄肉化に対応するため、さらに、ろう付後強度が高く、高耐食性であるアルミニウム合金製ブレージングシートの開発が望まれている。
さらに、犠牲陽極層においては、Znを添加することにより犠牲陽極効果を得ているが、犠牲陽極層は強度が低いため、アルミニウム合金製ブレージングシートの高強度化の妨げになるという問題があった。
このような構成によれば、第1芯材および第2芯材の少なくとも一方にMgを添加することで、さらに、ろう付後強度が向上する。
このような構成によれば、第1芯材および第2芯材の少なくとも一方にTiを添加することで、電位が貴であるTiAl系の化合物が層状に分布する。
なお、本材料を熱交換器に使用した際、第1ろう材3は大気側、第2ろう材4は流体(冷媒等)通路側となる。
第1芯材1は、Mn:1.5質量%を超え2.0質量%以下、Si:0.6質量%以上1.5質量%以下、Zn:1.0質量%以上4.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。
Mnは、ろう付後強度を向上させる効果があり、含有量を多くすることで、ろう付後強度を高めることができる。
Mnの含有量が1.5質量%以下では、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、一方、2.0質量%を超えると、粗大な金属間化合物が形成され、成形性の低下および耐食性の低下を起こす。また、Mnは、エロージョンに対する効果もあり、Mnの含有量が1.5質量%以下ではエロージョンの発生が顕著になる。
したがって、Mnの含有量は、1.5質量%を超え2.0質量%以下とする。
Siは、ろう付後強度を向上させる効果があり、特に、MgやMnと共存させると、Al−Mg−Si系金属間化合物、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成して、ろう付後強度をさらに向上させる。
Siの含有量が0.6質量%未満では、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、一方、1.5質量%を超えると、第1芯材1の融点低下と低融点相の増加により、ろう付け時に第1芯材1の溶融が生じ、耐食性が低下する。
したがって、Siの含有量は、0.6質量%以上1.5質量%以下とする。
Znは、ろう付後強度を向上させる効果は小さいが、合金の電位を卑にさせるため、電位が貴な材料と組み合わせた場合、犠牲陽極として作用し、貴な材料を防食する。このため、第1芯材1にはZnを添加する。
Znの含有量が1.0質量%未満では、犠牲防食としての効果が小さく、耐食性が低下し、一方、4.0質量%を超えると、外面にろう付け接合されるフィンやその他部材のフィレット部にZnが濃化し、フィレット部のZn濃度が高くなるため、フィレット部が優先腐食する問題が発生する。
したがって、Znの含有量は、1.0質量%以上4.0質量%以下とする。
第1芯材1の成分は、前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物として、例えば、Fe、Sn、P、Be、B等が考えられる。Feについては0.40質量%以下、他の元素については0.20質量%以下含有しても、本発明の効果を妨げない。
第2芯材2は、Mn:1.5質量%を超え2.0質量%以下、Si:0.6質量%以上1.5質量%以下、Cu:0.3質量%以上1.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。
Mnは、ろう付後強度を向上させる効果があり、含有量を多くすることで、ろう付後強度を高めることができる。
Mnの含有量が1.5質量%以下では、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、一方、2.0質量%を超えると、粗大な金属間化合物が形成され、成形性の低下および耐食性の低下を起こす。また、Mnは、エロージョンに対する効果もあり、Mnの含有量が1.5質量%以下ではエロージョンの発生が顕著になる。
したがって、Mnの含有量は、1.5質量%を超え2.0質量%以下とする。
Siは、ろう付後強度を向上させる効果があり、特に、MgやMnと共存させると、Al−Mg−Si系金属間化合物、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成して、ろう付後強度をさらに向上させる。
Siの含有量が0.6質量%未満では、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、一方、1.5質量%を超えると、第2芯材2の融点低下と低融点相の増加により、ろう付け時に第2芯材2の溶融が生じ、耐食性が低下する。
したがって、Siの含有量は、0.6質量%以上1.5質量%以下とする。
Cuは、ろう付後強度を向上させる効果がある。また、Cuの添加により電位が貴になるため、電位が卑な材料と組み合わせて犠牲陽極効果による防食を利用できるようになる。このため、第2芯材2にはCuを添加する。
Cuの含有量が0.3質量%未満では、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、また、ブレージングシード10における内外面の電位差が小さくなり、耐食性が低下する。一方、1.0質量%を超えると、その効果が飽和する。また、第2芯材2の融点を低下させ、ろう付け時に第2芯材2が溶ける場合があり、耐食性が低下する。さらに、鋳造時の割れ等が発生するため、生産性も低下する。
したがって、Cuの含有量は、0.3質量%以上1.0質量%以下とする。
第2芯材2の成分は、前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物として、例えば、Fe、Sn、P、Be、B等が考えられる。Feについては0.40質量%以下、他の元素については0.20質量%以下含有しても、本発明の効果を妨げない。
Mgは、ろう付後強度を向上させる効果があり、他の元素(Mn、Si)に比べ、ろう付後強度の向上効果が大きい。なお、Mgは、ろう付性を低下させやすいものでもあるが、ろう付性は、許容できる範囲において、フラックス量を増加させること等により確保し、ろう付後強度を優先させてMgを添加することが好ましい。ここで、所定のろう付後強度およびろう付性を考慮する場合、第1芯材1、第2芯材2の両方にMgを添加する必要はなく、どちらか一方だけでもよい。例えば、第2芯材2にMgを添加した場合には、外面側の表面(第1ろう材3の表面)へのMgの拡散量は少なく、フラックス量を軽減することができる。
Mgの含有量が0.05質量%以下では、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、0.30質量%を超えると、ろう付性が低下する。
したがって、Mgの含有量は、0.05質量%を超え0.30質量%以下とする。
Tiの添加により、TiAl系の化合物が層状に分布し、このTiAl系化合物の電位が貴であるため、腐食形態が層状化する効果がある。
Tiの含有量が0.10質量%未満では、層状化の効果が小さく、0.35質量%を超えると、粗大な金属間化合物が形成され、成形性の低下および耐食性の低下を起こす。
したがって、Tiの含有量は、0.10質量%以上0.35質量%以下とする。
第1ろう材3および第2ろう材4は、Al−Si合金であり、Si:7質量%以上13質量%以下が好ましい。Siは、ろう材としての基本成分であり、低融点で、良好な流動性を得るための元素である。
Siの含有量が7質量%未満では、ろう付温度580〜620℃でのAl−Si液相量が少なく、ろう付性が劣りやすくなる。一方、13質量%を超えると、ろう材鋳造時に粗大初晶Siが増大する。そのため、ブレージングシート10にした場合の第1ろう材3と第1芯材1との界面、第2ろう材4と第2芯材2との界面での過剰溶融を生じ、ろう付後強度、耐食性を低下させやすい。
<熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート>
4層材であるブレージングシート10の板厚は、0.10〜0.40mmであることが好ましい。
板厚が0.10mm未満では、板厚が薄く、さらに耐食性が必要となり、また、エロージョンの影響が大きくなることで耐食性が低下し、ブレージングシート製造工程で表面に押し込まれる異物等の影響も大きくなり、穴あきの危険性が高くなる。一方、0.40mmを超えると、板厚が厚いため、熱交換器の軽量化、小型化およびコストダウンのための薄肉化の要請に答えられない。
第1芯材1の厚さは、2層構造の芯材5、すなわち、芯材全体の厚さの40%以下であり、かつ、20μm以上60μm以下の厚さになるように調整する。
第1芯材1は、犠牲陽極として優先溶解(優先腐食)し、第2芯材2を保護する効果がある。このため、芯材全体に対して40%を超える厚さになると、第1芯材1が優先腐食することで、芯材全体が40%を超えて減少することとなるため、残存する板厚が薄くなり、許容できないものとなる。このため、第1芯材1の板厚は、芯材全体の40%以下とする。なお、下限値については、ブレージングシート10の板厚と、ろう材クラッド率(2層構造の芯材5の厚さ)により決まることとなる。
第2芯材2の厚さは、特に規定されるものではなく、前記したブレージングシート10、第1芯材1、以下に説明する第1ろう材3および第2ろう材4の厚さを満足することができる厚さであればよい。
第1ろう材3および第2ろう材4の厚さは、ろう付け前のブレージングシート10の板厚に対して、それぞれ4〜15%の範囲であることが好ましい。これらの厚さが4%未満では、熱間圧延においてクラッドする場合の圧着が難しくなり、生産性が阻害されやすい。一方、15%を超えると、ろう付け時のろうの量が多くなり、ろう付け芯材の浸食が発生したり、ろう付け不良が発生したりしやすくなる。
なお、熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシートの製造方法は、前記方法に限られるものではなく、適宜、必要に応じて変更してもよい。
まず、第1芯材用アルミニウム合金、第2芯材用アルミニウム合金、第1ろう材用アルミニウム合金および第2ろう材用アルミニウム合金を連続鋳造により溶解、鋳造し、面削、均質化熱処理を行い、第1芯材用鋳塊(第1芯材用部材)、第2芯材用鋳塊(第2芯材用部材)、第1ろう材用鋳塊、第2ろう材用鋳塊を得た。また、第1ろう材用鋳塊および第2ろう材用鋳塊については、それぞれ所定厚さに熱間圧延して、第1ろう材用部材、第2ろう材用部材を得た。
なお、表1〜5において、化学成分の単位は質量%である。また、表1〜4の各欄における(−)は、該当する成分を含有していないことを示している。
(腐食試験)
腐食試験は、ろう付熱処理材から幅50mm×長さ60mmのサンプルを切り出し、第1ろう材側が試験面となるように裏面および端面をシールテープによりシールして、CASS試験(塩水噴霧試験:JIS Z 2371)を1000時間実施した。そして、試験後に最も腐食深さが深い部分の残存している板厚を測定した。この試験結果を表6〜8に示す。
材料の耐食性評価の判断基準は、残存にしている板厚の測定結果より、初期の芯材の厚さに対して残存した板厚の割合が70%以上を合格値とした。
ろう付後強度の測定に関しては、ろう付熱処理材から、JIS5号試験片を切り出した後に引張試験を行い、引張強さの測定を行った。この試験結果を表6〜8に示す。
材料のろう付後強度評価の判断基準は、第1芯材および第2芯材の両方にMgを添加した構成の材料では、ろう付けが難しくコスト高となるため、210MPa以上の強度を合格とした。一方、第1芯材および第2芯材の両方ともMgなし、または、いずれか一方にのみMgを添加した構成の材料では、170MPa以上の強度で合格とした。
なお、表7、8において、請求項の発明の構成を満たさないもの等については、数値に下線を引いて示す。
一方、表7、8に示すように、供試材No.13〜80は、本発明の要件のうちのいずれかを満たしていないので、以下のような好ましくない結果が得られた。
以下に、比較例の試験結果について説明する。
め、耐食性が低かった。
れ、耐食性が低下した。また、成形性も低い材料となっていた。No.28は、第2芯材のSi濃度が下限値未満であるため、ろう付後強度が低かった。No.29は、第2芯材のSi濃度が上限値を超えるため、ろう付後強度は高いものの、第2芯材の融点が低く、また、低融点相が増加し、ろう付け時に第2芯材が溶融したため、耐食性が低かった。
め、耐食性が低かった。
No.62は、第1芯材のMg濃度が上限値を超えるため、ろう付後強度および耐食性は高いものの、ろう付性が劣っており、5g/m2のフラックス量ではろう付け接合ができなかった。
2 第2芯材
3 第1ろう材
4 第2ろう材
5 2層構造の芯材
10 熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート
S1a 第1芯材用部材準備工程
S1b 第2芯材用部材準備工程
S1c 第1ろう材用部材準備工程
S1d 第2ろう材用部材準備工程
S2 重ね合わせ工程
S3 熱間圧延工程
S4 粗鈍工程
S5、S7 冷間圧延工程
S6 中間焼鈍工程
S8 仕上げ焼鈍工程
Claims (3)
- 第1芯材および第2芯材からなる2層構造の芯材と、この2層構造の芯材の一面側に配置された第1ろう材と、この2層構造の芯材の他面側に配置された第2ろう材とを備えた熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシートであって、
前記第1芯材は、Mn:1.5質量%を超え2.0質量%以下、Si:0.6質量%以上1.5質量%以下、Zn:1.0質量%以上4.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記第2芯材は、Mn:1.5質量%を超え2.0質量%以下、Si:0.6質量%以上1.5質量%以下、Cu:0.3質量%以上1.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記第1芯材の厚さが、前記2層構造の芯材の厚さの40%以下であり、かつ、20μm以上60μm以下であることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート。 - 前記第1芯材および前記第2芯材の少なくとも一方が、さらに、Mg:0.05質量%を超え0.30質量%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート。
- 前記第1芯材および前記第2芯材の少なくとも一方が、さらに、Ti:0.10質量%以上0.35質量%以下を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート。
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