以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態であるインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ101は、4つのインクジェットヘッド1を有するカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ101には、図中左方に給紙部11が、図中右方に排紙部12がそれぞれ構成されている。
インクジェットプリンタ101の内部には、給紙部11から排紙部12に向かって用紙(被記録媒体)Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙部11のすぐ下流側には、用紙を狭持搬送する一対の送りローラ5a、5bが配置されている。一対の送りローラ5a、5bは、用紙Pを給紙部11から図中右方に送り出すためのものである。用紙搬送経路の中間部には、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7の間に架け渡されるように巻き回されたエンドレスの搬送ベルト8と、搬送ベルト8によって囲まれた領域内においてインクジェットヘッド1と対向する位置に配置されたプラテン15とを含むベルト搬送機構13が設けられている。プラテン15は、インクジェットヘッド1と対向する領域において搬送ベルト8が下方に撓まないように搬送ベルト8を支持するものである。ベルトローラ7と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙部11から送りローラ5a、5bによって送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付けるものである。
図示しない搬送モータがベルトローラ6を回転させることによって、搬送ベルト8が駆動される。これにより、搬送ベルト8が、ニップローラ4によって外周面8aに押さえ付けられた用紙Pを粘着保持しつつ排紙部12に向けて搬送する。
用紙搬送経路に沿う搬送ベルト8のすぐ下流側には、剥離機構14が設けられている。剥離機構14は、搬送ベルト8の外周面8aに粘着されている用紙Pを外周面8aから剥離して、図中左方の右方の排紙部12に向けて送るように構成されている。
4つのインクジェットヘッド1は、4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応して、搬送方向に沿って4つ並べて固定されている。つまり、このインクジェットプリンタ101は、ライン式プリンタである。4つのインクジェットヘッド1は、その下端にヘッド本体2をそれぞれ有している。ヘッド本体2は、搬送方向に直交した方向に長尺な細長い直方体形状となっている。また、ヘッド本体2の底面が外周面8aに対向するインク吐出面2aとなっている。搬送ベルト8によって搬送される用紙Pが4つのヘッド本体2のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙Pの上面すなわち印刷面に向けてインク吐出面2aから各色のインクが吐出されることで、用紙Pの印刷面に所望のカラー画像を形成できるようになっている。
次に、図2を参照しつつインクジェットヘッド1について詳細に説明する。図2は、インクジェットヘッド1の短手方向に沿った断面図である。図2に示すように、インクジェットヘッド1は、流路ユニット9とアクチュエータユニット21とを含むヘッド本体2、ヘッド本体2の上面に配置されていると共にヘッド本体2にインクを供給するリザーバユニット71、一端がアクチュエータユニット21に接続され、ドライバIC52が実装されたCOF(Chip On Film:平型柔軟基板)50、COF50と電気的に接続された制御基板54、並びに、アクチュエータユニット21、リザーバユニット71、COF50及び制御基板54を覆い、外部からインクやインクミストが浸入するのを防ぐためのサイドカバー53及びヘッドカバー55を有している。
リザーバユニット71は、プレート91〜94の4枚のプレートが互いに位置合わせされて積層されたものであり、その内部に、図示しないインク流入流路、インクリザーバ61、及び、10個のインク流出流路62が互いに連通するように形成されている。なお、図2においては、1つのインク流出流路62のみが表れている。インク流入流路は図示しないインクタンクからのインクが流入するものである。インクリザーバ61はインク流入流路及びインク流出流路62と連通しており、インクを一時的に貯溜する。インク流出流路62は、流路ユニット9の上面に形成されたインク供給口105b(図3参照)を介して流路ユニット9と連通している。インクタンクからのインクがインク流入流路を介してインクリザーバ61に流れ込む。インクリザーバ61に流れ込んだインクはインク流出流路62を通過し、インク供給口105bを介して流路ユニット9に供給される。
また、プレート94には、凹部94aが形成されている。プレート94の凹部94aが形成された部分では、流路ユニット9との間に空隙を形成しており、この空隙内に、アクチュエータユニット21が配置されている。
COF50は、その一方端部近傍がアクチュエータユニット21の上面である接合面に接着されている。さらに、COF50は、アクチュエータユニット21の接合面から水平方向に延在した後、上方に向かって直角に湾曲するように折り曲げられ、さらに、サイドカバー53とリザーバユニット71との間を通過するように上方に引き出されている。そして、COF50の他方端部がコネクタ54aを介して制御基板54のコネクタ54aに接続されている。このため、アクチュエータユニット21の接合面における、COF50の折り曲げ部に最も近い位置にある領域に、アクチュエータユニット21からCOF50を剥離する方向にストレスが集中する。
また、COF50のドライバIC52が、リザーバユニット71の側面に貼り付けられたスポンジ82によってサイドカバー53に付勢されている。ドライバIC52は、放熱シート81を介してサイドカバー53の内側面と密着することによってサイドカバー53と熱的に結合されている。これにより、ドライバIC52からの熱がサイドカバー53を介して外部に放熱される。
制御基板54は、COF50のドライバIC52を介してアクチュエータユニット21の駆動を制御するものである。ドライバIC52は、アクチュエータユニット21を駆動する駆動信号を生成する。
サイドカバー53は、流路ユニット9の上面における短手方向両端部近傍から上方に延在するように取り付けられた金属製の板部材である。ヘッドカバー55は、流路ユニット9より上方の空間を封止するようにサイドカバー53の上方に取り付けられている。このように、2つのサイドカバー53とヘッドカバー55とにより囲まれる空間内に、リザーバユニット71、COF50及び制御基板54が配置されている。
次に、図3〜図6を参照しつつ、ヘッド本体2について説明する。図3は、ヘッド本体2の平面図である。図4は、図3の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。なお、図4では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及びノズル108を実線で描いている。図5は、図4に示すV−V線に沿った部分断面図である。図6(a)はアクチュエータユニット21の拡大断面図であり、図6(b)は、図6(a)においてアクチュエータユニット21の表面に配置された個別電極を示す平面図である。
ヘッド本体2は、図3に示すように、流路ユニット9、及び、流路ユニット9の上面9aに固定された4つのアクチュエータユニット21を含んでいる。図4に示すように、流路ユニット9は、圧力室110等を含むインク流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
流路ユニット9は、リザーバユニット71のプレート94とほぼ同じ平面形状を有する直方体形状となっている。流路ユニット9の上面9aには、リザーバユニット71のインク流出流路62(図2参照)に対応して、計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図3及び図4に示すように、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105及びマニホールド流路105から分岐した副マニホールド流路105aが形成されている。流路ユニット9の下面には、図4及び図5に示すように、多数のノズル108がマトリクス状に配置されたインク吐出面2aが形成されている。圧力室110も流路ユニット9におけるアクチュエータユニット21の固定面においてノズル108と同様マトリクス状に多数配列されている。
本実施形態では、等間隔に流路ユニット9の長手方向に並ぶ圧力室110の列が、短手方向に互いに平行に16列配列されている。各圧力室列に含まれる圧力室110の数は、後述のアクチュエータユニット21の外形形状(台形形状)に対応して、その長辺側(下底側)から短辺側(上底側)に向かって次第に少なくなるように配置されている。ノズル108も、これと同様の配置がされている。
流路ユニット9は、図5に示すように、上から順に、キャビティプレート122、ベースプレート123、アパーチャプレート124、サプライプレート125、マニホールドプレート126、127、128、カバープレート129、及び、ノズルプレート130、という9枚のステンレス鋼等の金属プレートから構成されている。これらプレート122〜130は、主走査方向に長尺な矩形状の平面を有する。これらプレート122〜130を互いに位置合わせしつつ積層することによって、流路ユニット9内に、マニホールド流路105から副マニホールド流路105a、そして副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経てノズル108に至る多数の個別インク流路132が形成される。
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。図3〜図5に示すように、リザーバユニット71からインク供給口105bを介して流路ユニット9内に供給されたインクは、マニホールド流路105から副マニホールド流路105aに分岐される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に流れ込み、絞りとして機能するアパーチャ112及び圧力室110を介してノズル108に至る。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図3に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は流路ユニット9の長手方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は流路ユニット9の幅方向(副走査方向)に関して互いにオーバーラップしている。
図6(a)に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シート141〜143から構成されている。最上層の圧電シート141の表面(アクチュエータユニット21の接合面)における圧力室110に対向する位置には、個別電極135が形成されている。最上層の圧電シート141とその下側の圧電シート142との間にはシート全面に形成された共通電極134が介在している。個別電極135は、図6(b)に示すように、圧力室110と相似な略菱形の平面形状を有する。平面視で、個別電極135の大部分は、圧力室110の領域内にある。略菱形の個別電極135における鋭角部の一方は圧力室110の外に延出され、その先端には個別電極135と電気的に接続された円形の個別ランド136が設けられている。また、圧電シート141の表面には、共通電極134と電気的に接続された図示しないCOMランドと検査ランド137(図7及び図9参照)とが形成されている。なお、検査ランド137は、圧電シート141の長辺(台形の下底)に関する各端部近傍において、アクチュエータユニット21の長辺に直交する方向に沿って4つ配列されている。また、各端部近傍に配列された4つの検査ランド137のうちの2つは、多数の個別電極135よりも長辺側の端部に近い位置に配置されている。また、圧電シート141の表面が、後述のようにCOF50が接合される接合面である。
共通電極134は、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極135は、COF50を介してドライバIC52の各出力端子と電気的に接続されており、ドライバIC52からの駆動信号が選択的に供給されるようになっている。
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。圧電シート141はその厚み方向に分極されており、個別電極135を共通電極134と異なる電位にして圧電シート141に対してその分極方向に電界を印加すると、圧電シート141における電界印加部分が圧電効果により歪む活性部として働く。つまり、アクチュエータユニット21において、個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働き、圧力室110の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれている。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、活性部は分極方向に直交する方向(平面方向)に縮む。つまり、アクチュエータユニット21は、圧力室110から離れた上側1枚の圧電シート141を活性部を含む層とし、且つ圧力室110に近い下側2枚の圧電シート142、143を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。図6(a)に示すように、圧電シート141〜143は圧力室110を区画するキャビティプレート122の上面に固定されているため、圧電シート141における電界印加部分とその下方の圧電シート142、143との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電シート141〜143全体が圧力室110側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)する。これにより圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、ノズル108からインク滴が吐出される。
なお、本実施形態においては、予め個別電極135に所定の電位を付与しておき、吐出要求があるごとに一旦個別電極135をグランド電位にした後、所定のタイミングで再び個別電極135に所定の電位を付与するような駆動信号をドライバIC52から出力させる。この場合、個別電極135がグランド電位となるタイミングで圧電シート141〜143が元の状態に戻り、圧力室110の容積は初期状態(予め電圧が印加された状態)と比較して増加し、副マニホールド流路105aから個別インク流路132へとインクが吸い込まれる。その後、再び個別電極135に所定の電位が付与されたタイミングで圧電シート141〜143において活性領域と対向する部分が圧力室110側に凸となるように変形し、圧力室110の容積低下によりインクの圧力が上昇し、ノズル108からインクが吐出される。
次に、図7を参照しつつ、COF50について詳細に説明する。図7は、COF50の平面図である。なお、図7においては、説明の都合上、COF50の長手方向の長さを短くしている。図7に示すように、COF50は、アクチュエータユニット21と実質的に同じ台形の平面外形を有する端子配置領域50aと、端子配置領域50aの長辺から外側に向かって延在している配線領域50bと、制御基板54のコネクタ54aに接続される配線領域50bの端部に配置されたターミナル50cとを含んでいる。
端子配置領域50aは、アクチュエータユニット21の接合面に接合される領域である。端子配置領域50aには、個別電極135の個別ランド136に接合される多数の出力端子58と、共通電極134と電気的に接続されたCOMランド(図示せず)に接合されるグランド端子60と、検査ランド137(図9参照)に接合される8つの検査端子59a〜59dとが配置されている。端子配置領域50aの長辺(台形形状の下底)に関する各端部近傍において、4つの検査端子59a〜59dが、端子配置領域50aにおける長辺側、すなわち配線領域50b側からCOF50の延在方向(COF50の引き出し方向の反対方向)に沿って、検査端子59a→検査端子59b→検査端子59c→検査端子59dの順に配列されている。これら4つの検査端子59a〜59dは、互いに電気的に接続されている。また、各端部近傍に配列された4つの検査端子59a〜59dのうち、端子配置領域50aの長辺側に位置する2つの検査端子59a、59bが、多数の出力端子58よりも長辺側に配置されている。このため、COF50がアクチュエータユニット21の接合面に接合された状態においては、検査端子59a〜59dが、圧電シート141の長辺(台形形状の下底)に関する各端部近傍において、COF50の引き出し方向に沿って4つずつ配列されている。また、計4つの検査端子59a、59bが、アクチュエータユニット21の長辺の両端近傍、且つ、多数の個別電極135よりも当該接合面におけるCOF50の引き出し方向側の端部に近い位置に配置される。
配線領域50bの中央(幅方向に関する中央)には、ドライバIC52が実装されている。また、配線領域50bには、ドライバIC52の図示しない出力端子と出力端子58とを接続する出力配線57aと、ドライバIC52の図示しない制御端子とターミナル50cとを接続する制御配線57bと、端子配置領域50aの長辺に関する各端部近傍に配置された4つの検査端子59a〜59dに電気的に接続された検査配線73とが形成されている。そして、COF50の短手方向の両端近傍には、端子配置領域50a及び配線領域50bの外縁に沿って延在するCOMパターン72が形成されている。端子配置領域50aにおけるCOMパターン72内にグランド端子60が配置されている。
ターミナル50cは、制御基板54のコネクタ54aに接続されるものであり、制御配線57b及びCOMパターン72と接続された多数の端子(図示せず)を有している。
次に、図8〜図10を参照しつつ、ドライバIC52について詳細に説明する。図8は、ドライバIC52の機能ブロック図である。図9は、検査端子59a〜59dと共通電極134との位置関係を説明するための図である。なお、図9(a)は、COF50及びアクチュエータユニット21の部分拡大平面図であり、図9(b)は、COF50がアクチュエータユニット21から剥離していないときのCOF50及びアクチュエータユニット21の部分断面図であり、図9(c)は、COF50がアクチュエータユニット21から剥離したときのCOF50及びアクチュエータユニット21の部分断面図である。図9(b)及び図9(c)においては、4つの検査端子59a〜59dのうち、検査端子59aのみが表れている。図10は、COF50がアクチュエータユニット21から剥離したときの図9(a)に示すX-X線に関する部分断面図である。
図8に示すように、ドライバIC52は、駆動信号出力部(駆動信号出力部材)81と、電気特性計測部(計測手段)82と、剥離判断部(判断手段)83と、通信部84とを有している。駆動信号出力部81は、図示しない上位の装置(例えば、ホストコンピュータ)からの指令に基づいてアクチュエータユニット21を駆動させる駆動信号を出力するものである。駆動信号出力部81が出力した駆動信号は、ドライバIC52の出力端子から出力配線57a及び出力端子58を介して、対応する個別電極135に供給される。
図9(a)及び図9(b)に示すように、COF50がアクチュエータユニット21から剥離していないときは、検査端子59aと共通電極134とが圧電シート141を介して近接しているため、検査端子59aと共通電極134との間の静電容量が10pF程度になる。また、図9(c)に示すように、検査端子59aが検査ランド137から剥離されると、検査端子59aと共通電極134とが近接しなくなるため、検査端子59aと共通電極134との間の静電容量が0pFになる。
図10に示すように、COF50がアクチュエータユニット21から剥離するとき、4つの検査端子59a〜59dが、配線領域50b側から順に、具体的には、検査端子59a→検査端子59b→検査端子59c→検査端子59dの順に検査ランド137から剥離される。このように、COF50がアクチュエータユニット21から剥離する程度によって、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数が変化する。したがって、COF50がアクチュエータユニット21から剥離する程度によって、4つの検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値が変化する。つまり、4つの検査端子59a〜59dが検査ランド137から剥離していないときは、静電容量の合計値が10×4=40pF程度になる。そして、検査端子59aのみが検査ランド137から剥離したときは、静電容量の合計値が3×10=30pF程度となる。さらに検査端子59a、59bまでが検査ランド137から剥離したときは、静電容量の合計値が2×10=20pF程度となる。さらに検査端子59a〜59cまでが検査ランド137から剥離したときは、静電容量の合計値が1×10=10pF程度となる。最後に、全ての検査端子59a〜59dが検査ランド137から剥離したときは、静電容量の合計値が0pFとなる。
電気特性計測部82は、検査端子59a〜59dの電気特性を計測するものであり、静電容量測定回路82aを有している。静電容量測定回路82aは、検査端子59a〜59dの電気特性として、アクチュエータユニット21の長辺の各端部近傍に配置された4つの検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値を測定する。
図11をさらに参照しつつ、静電容量測定回路82aについて説明する。図11は、静電容量測定回路82aの内部構成を示す概略回路図である。静電容量測定回路82aは、一対のインバータ96、97と、A/Dコンバータ98とを有している。インバータ96は、パルス信号が入力されることによって、ドライブ抵抗R1を介して検査端子59aに検査パルス信号を出力するものである。インバータ97は、インバータ96からの検査パルス信号をA/Dコンバータ98に出力するものである。A/Dコンバータ98は、インバータ97からの出力電位をデジタル信号で出力するものである。上述したように、COF50がアクチュエータユニット21から剥離していない場合は、4つの検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値が40pF程度となり、インバータ96からの検査パルス信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が、入力されたパルス信号よりも長くなる。そして、COF50がアクチュエータユニット21から剥離して、検査端子59a→検査端子59b→検査端子59c→検査端子59dの順に検査ランド137から剥離されると、4つの検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値が30pF→20pF→10pF→0pFの順に変化する。この変化に伴って、インバータ96からの検査パルス信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が段階的に短くなり、最終的に静電容量の合計が0pFとなったときに、検査パルス信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が、入力されたパルス信号とほぼ一致する。
A/Dコンバータ98は、インバータ96に入力されるパルス信号が立ち上がって所定時間経過したタイミングで、インバータ97からの出力電位をサンプリングする。このとき、検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値が小さくなるほど、パルスの立ち上がり時間が早くなり、サンプリングした出力電位が高くなる。静電容量測定回路82aは、サンプリングした出力電位を示すデジタル信号を静電容量の合計値に対応する計測結果として剥離判断部83に出力する。
図8及び図9に戻って、剥離判断部83は、静電容量測定回路82aからの計測結果に基づいて、COF50がアクチュエータユニット21からどの程度剥離しているかを判断するものである。具体的には、静電容量測定回路82aからの計測結果(検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値)に基づいて、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断する。なお、この判断は、端子配置領域50aの長辺に関する各端部近傍に配置された4つの検査端子59a〜59d毎に行われる。具体的には、4つの検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値が40pFの場合は検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を0と判断し、静電容量の合計値が30pFの場合は検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を1(検査端子59aのみ剥離)と判断し、静電容量の合計値が20pFの場合は検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を2(検査端子59a、59aのみ剥離)と判断し、静電容量の合計値が10pFの場合は検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を3(検査端子59a〜59cのみ剥離)と判断し、静電容量の合計値が0pFの場合は検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を4(全ての検査端子59a〜59cが剥離)と判断する。
通信部84は、剥離判断部83の判断結果を制御基板54に送信するものである。なお、通信部84の通信先は、後述するインクジェットヘッド1の製造工程においてインクジェットヘッド1の検査を行う検査装置であってもよい。
次に、図12を参照しつつ、インクジェットヘッド1の製造工程に含まれるインクジェットヘッド1の検査工程について説明する。図12は、インクジェットヘッド1の検査工程を示す工程図である。図12に示すように、インクジェットヘッド1の検査工程は、固定工程、接合工程、負荷試験工程、計測工程、判断工程及び管理工程が含まれる。固定工程では、流路ユニット9と、アクチュエータユニット21とを、各圧力室110と対応する個別電極135とがそれぞれ対向するように固定する(図6参照)。その後、接合工程では、アクチュエータユニット21の接合面において、出力端子58と個別ランド136とが接合されるように、且つ、グランド端子60とCOMランドとが接合されるように、且つ、検査端子59a〜59dと検査ランド137とが接合されるように、COF50をアクチュエータユニット21に接合する(図9参照)。この接合工程においては、COF50をアクチュエータユニット21に接合するにあたって、予め決定された、接合時の加熱温度、加熱時間、押圧力などの各種接合条件が適用される。
負荷試験工程では、固定工程及び接合工程が終了したインクジェットヘッド1を、所定ロッド毎に1つ選択し、選択したインクジェットヘッド1に対して負荷試験を行う。この負荷試験は、インクジェットヘッド1の環境温度を急速に変化させるサーマルショック試験であり、COF50とアクチュエータユニット21との接合部に負荷を与えるものである。サーマルショック試験においては、インクジェットヘッド1を気相の試験層内に配置した状態で、試験層内の温度を変化させる。例えば、試験層内の温度を−40℃と100℃との間で各30分ずつ交互に変化させる。これを200サイクルほど繰り返す。なお、気相の試験層の代わりに液層の試験層を用いてもよい。これによると、気相の試験層を用いる場合より、短時間でサーマルショック試験を完了させることができる。
このとき、アクチュエータユニット21を高速駆動させる加速試験を行ってもよい。加速試験においては、アクチュエータユニット21を通常駆動するときの電圧よりも高い電圧でアクチュエータユニット21を駆動する。COF50とアクチュエータユニット21との接合部の信頼性がアレニウス則に従うとともに、アクチュエータユニット21の駆動電圧が高くなるので、アクチュエータユニット21の変位量が大きくなる。これにより、接合部にかかる負荷がより大きくなる。また、アクチュエータユニット21を通常駆動されるときの駆動周期よりも短い駆動周期でアクチュエータユニット21を駆動してもよい。これにより、接合部に与える時間当たりの負荷の回数を多くすることができる。さらには、試験層内を高温多湿条件、例えば、温度を85℃、湿度を85%などに設定することでさらに加速試験にかかる時間を短くすることができる。これらの条件は、インクジェットヘッド1において規定される寿命及び使用される条件をふまえたうえで、最適なものを取捨選択して設定すればよい。
そして、計測工程では、負荷試験工程を経たインクジェットヘッド1のCOF50を制御基板54のコネクタ54aに接続し、電気特性計測部82の静電容量測定回路82aが、検査端子59a〜59dの電気特性、すなわち、本実施形態においては、上述したように、4つの検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値を測定する。最後に、判断工程では、剥離判断部83が、静電容量測定回路82aからの計測結果に基づいて、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断する。これにより、COF50がアクチュエータユニット21からどの程度剥離しているかを把握することができる。
管理工程では、上述した接合工程において適用された各種接合条件と、COF50のアクチュエータユニット21からの剥離具合とを検証し、この検証結果から異常と判断されたインクジェットヘッド1に関する接合工程における各種接合条件の見直しを図る。
上述した計測工程及び判断工程は、インクジェットヘッド1の製造工程のみならず、インクジェットヘッド1またはインクジェットプリンタ101として出荷された後においても、定期的あるいはユーザの指示によって実行することが可能である。この場合、出荷時においては、COF50がアクチュエータユニット21に完全に接合されている場合であっても、経時的な温度変化などにより、COF50がアクチュエータユニット21から徐々に剥離していることを検出することができる。これにより、ユーザは、COF50がアクチュエータユニット21から完全に剥離することによって、インクジェットヘッド1からインク滴が吐出されなくなる前に、メーカに対して修理を依頼するなどの対策をとることができる。なお、インクジェットヘッド1の製造工程においては、上述した電気特性計測部82及び剥離判断部83を備える検査装置を別途準備し、計測工程及び判断工程をこの検査装置を用いて行うようにしてもよい。この場合、インクジェットプリンタ自体が電気特性計測部及び剥離判断部を備えない構成であってもよい。
以上、説明した本実施形態によると、検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値を計測するという簡単な方法で、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断することによって、COF50がアクチュエータユニット21からどの程度剥離しているかを容易に判断することができる。これにより、インクジェットヘッド1を製造するときの接合工程における接合条件を調整するのが容易になり、インクジェットヘッド1の歩留まりを向上させることができる。また、インクジェットヘッド1の製造後においても、インクジェットヘッド1を検査して、COF50がアクチュエータユニット21から剥離して故障に至る可能性があるか否かを容易に判断することができる。これにより、故障に至る可能性のあるインクジェットヘッド1の交換など、事前の対処が可能となる。
また、電気特性計測部82は、検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値を計測すればよいため、電気特性計測部82を簡単な回路構成で実現することができる。
4つの検査端子59a〜59dが、端子配置領域50aの長辺側からCOF50の引き出し方向の反対方向に沿って、検査端子59a→検査端子59b→検査端子59c→検査端子59dの順に配列されているため、COF50がアクチュエータユニット21から剥離するとき、検査端子59a〜59dが、検査端子59a→検査端子59b→検査端子59c→検査端子59dの順で検査ランド137から剥離されることになる。このため、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断することによって、COF50がアクチュエータユニット21からどの程度剥離しているかを正確に判断することができる。
さらに、計4つの検査端子59a及び59bが、アクチュエータユニット21の長辺の両端近傍、且つ、多数の個別電極135よりも当該接合面におけるCOF50の引き出し方向側の端部に近い位置に配置されているため、COF50がアクチュエータユニット21から剥離するのを効率よく抑制することができる。
なお、本実施形態においては、検査ランド137が共通電極134と電気的に接続される構成となっているが、検査ランド137が金属部材である流路ユニット9と電気的に接続される構成であってもよい。この場合、流路ユニット9が図示しないフレームなどを介してグランド電位が付与されていることが好ましい。
また、本実施形態においては、電気特性計測部82は、検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値を計測する構成となっているが、電気特性計測部が、検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量を個別に計測する構成であってもよい。この場合、COFにおいて、各検査端子59a〜59dが互いに電気的に独立した構成にする必要がある。
<変形例>
図13を参照しつつ本実施形態に係る変形例について説明する。図13は、本変形例におけるCOF50の部分拡大平面図である。図13に示すように、COF50において、検査端子59a〜59dに接続された検査配線73aが、検査端子59a〜59dに隣接する個別電極135である検査個別電極135aに接続された出力配線57aに接続されている。これにより、検査端子59a〜59dと検査個別電極135aとが電気的に接続されている。そして、静電容量測定回路82aは、共通電極134と検査端子59a〜59dとの間、及び、共通電極134と検査個別電極135aとの間の各静電容量の合計値を計測する。なお、静電容量測定回路82aのインバータ96は、検査個別電極135aに駆動信号を出力するための駆動回路の一部が用いられている。
本変形例によると、検査個別電極135aに駆動信号を出力するための駆動回路の一部が用いられているため、ドライバIC52の回路規模が大きくなるのを抑制することができる。
なお、本変形例においては、検査個別電極135aに駆動信号を出力するため駆動回路が、検査個別電極135aを含む各個別電極135に対応するアクチュエータユニット21の駆動特性が同じになるように、検査個別電極135aに出力する駆動信号の電流値を、検査個別電極135aを除く他の個別電極135に出力する駆動信号の電流値よりも大きくなるように構成されていることが好ましい。具体的には、検査個別電極135aに駆動信号を出力するため駆動回路のトランジスタのON抵抗を、他の駆動回路よりも小さくする。これによると、アクチュエータユニット21の駆動特性のばらつきを抑制することができる。
<第2実施形態>
次に、図14及び図15を参照しつつ、本発明に係る第2実施形態のインクジェットプリンタについて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部材及び機能部については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。図14は、第2実施形態のインクジェットプリンタが有するドライバIC152の機能ブロック図である。図15は、検査端子59aと共通電極134との位置関係を説明するための図である。図15(a)は、COF150及びアクチュエータユニット21の部分拡大平面図である。図15(b)は、COF150がアクチュエータユニット21から剥離していないときのCOF150及びアクチュエータユニット21の部分断面図である。図15(c)は、COF150がアクチュエータユニット21から剥離したときのCOF150及びアクチュエータユニット21の部分断面図である。なお、図15(b)及び図15(c)においては、4つの検査端子59a〜59dのうち、検査端子59aのみが表れている。図14に示すように、ドライバIC152は、駆動信号出力部81と、電気特性計測部(計測手段)182と、剥離判断部(判断手段)183と、通信部84とを有している。
図14及び図15(a)に示すように、COF150には、対応する検査端子59a〜59dにそれぞれ接続された検査配線173が形成されている。各検査配線173はドライバIC152に独立して接続されている。
図15(a)及び図15(b)に示すように、圧電シート141には、圧電シート141を厚み方向に貫通しつつ共通電極134と検査ランド137とを接続する内部配線134aが形成されている。このため、COF150がアクチュエータユニット21から剥離していないときは、検査端子59aと共通電極134とが、検査ランド137及び内部配線134aを介して電気的に接続され、検査端子59aと共通電極134との間の抵抗値が0.1Ω程度になる。また、図15(c)に示すように、検査端子59aが検査ランド137から剥離されると、検査端子59aと共通電極134との間の抵抗値が∞Ωになる。そして、COF150がアクチュエータユニット21から剥離するとき、4つの検査端子59a〜59dが、配線領域50b側から順に、具体的には、検査端子59a→検査端子59b→検査端子59c→検査端子59dの順に検査ランド137から剥離される。このように、COF50がアクチュエータユニット21から剥離する程度によって、共通電極134との間の抵抗値が∞Ωとなる検査端子59a〜59dの数が変化する(図10参照)。
電気特性計測部182は、各検査端子59a〜59dの電気特性を計測するものであり、抵抗測定回路182aを有している。抵抗測定回路182aは、検査端子59a〜59dの電気特性として、各検査端子59a〜59dと共通電極134との間の抵抗値を測定する。図16をさらに参照しつつ、抵抗測定回路182aについて説明する。
図16は、抵抗測定回路182aの内部構成を示す概略回路図である。なお、図16においては、検査端子59aと共通電極134との間の抵抗値を測定する回路構成のみを示している。他の検査端子59b〜59dと共通電極134との間の抵抗値を測定する回路構成は、図16に示す回路構成と実質的に同じである。抵抗測定回路182aは、一対のインバータ96、97と、コンパレータ198とを有している。インバータ96は、連続パルス信号が入力されることによって、ドライブ抵抗R1を介して検査端子59aに検査信号を出力するものである。インバータ97は、インバータ96からの検査信号をコンパレータ198に出力するものである。コンパレータ198は、インバータ97からの出力電位と、ハイレベルの参照電圧とを比較するものである。上述したように、COF150がアクチュエータユニット21から剥離していない場合、すなわち、検査端子59aが検査ランド137から剥離していない場合は、検査端子59aと共通電極134との間の抵抗値が0.1Ω程度となるため、インバータ96の出力電位が常にローとなり、インバータ97の出力電位が常にハイとなる。一方、検査端子59aが検査ランド137から剥離している場合は、検査端子59aと共通電極134との間の抵抗値が∞Ωとなるため、インバータ96の出力電位が入力された連続パルス信号に合わせてハイレベル及びローレベルの間で変化し、インバータ97の出力電位もハイレベル及びローレベルの間で変化する。
したがって、コンパレータ198は、インバータ97の出力電位と参照電圧とが一致(共にハイレベル)しているときは、検査端子59aと共通電極134との間の抵抗値が0.1Ω程度とする計測結果を剥離判断部183に出力し、インバータ97の出力が参照電圧と一致しなくなったとき、つまり、インバータ97の出力が一度でもローレベルとなったときは、検査端子59aと共通電極134との間の抵抗値が∞Ωとする計測結果を剥離判断部183に出力する。電気特性計測部182は、各検査端子59b〜59dについても、同様の構成で共通電極134との間の抵抗値をそれぞれ計測し、その計測結果を剥離判断部183に出力する。
図14及び図15に戻って、剥離判断部183は、抵抗測定回路182aからの計測結果に基づいて、COF50がアクチュエータユニット21からどの程度剥離しているかを判断するものである。具体的には、抵抗測定回路182aからの計測結果(抵抗値)に基づいて、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断する。すなわち、剥離判断部183は、各検査端子59a〜59dにおいて、抵抗測定回路182aからの計測結果である抵抗値が0.1Ω程度であれば、検査端子59a〜59dが検査ランド137から剥離していないと判断し、抵抗値が∞Ωであれば、検査端子59a〜59dが検査ランド137から剥離したと判断する。これにより、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断する。
以上、剥離状態として抵抗値が∞Ωの場合を説明したが、COF150の接合部に外力が働いたとき、接合部が損傷して部分的な剥離状態となることがある。この場合、抵抗値は、損傷状態に対応した高抵抗状態となる。
剥離判断部183は、接合部がこのような高抵抗状態にあるときにもCOF150が剥離したと判断する。一例として、ドライブ抵抗R1が100Ωで、インバータ96は、24Vで10mAの電流を流すことができるとして説明する。この場合、インバータ97の閾値を2.5Vとして、剥離の有無が決められる。接合部が良好な接続状態(抵抗値:0.1Ω程度)にある場合、インバータ97の出力電圧は1.001Vとなる。インバータ97の閾値は2.5Vであるので、インバータ97の出力はハイレベルとなり、剥離判断部183は接合部が剥離していないと判断する。一方、接合部が損傷して1kΩの抵抗値を持つ場合、インバータ97の出力電圧は10Vとなり、閾値の2.5Vより高くなる。このとき、インバータ97の出力はローレベルとなり、剥離判断部183は接合部が剥離したと判断する。この例の場合、接合部の抵抗が150Ω以上となると、剥離判断部183によって、接合部が剥離したと判断される。
このように、インバータ96の駆動能力とドライブ抵抗とは、アクチュエータユニット21の駆動特性によって決定される。使用電圧範囲と剥離状態に対応する抵抗値を設定し、上記のように閾値を決めることで、完全な剥離状態に加えて、その状態に至る途中状態であっても、接合の異常を検知することができる。
なお、本実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法は、第1実施形態と実質的に同様であるので説明を省略する。
以上、説明した本実施形態によると、各検査端子59a〜59dと共通電極134との間の抵抗値を計測するという簡単な方法で、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断することによって、COF150がアクチュエータユニット21からどの程度剥離しているかを容易に判断することができる。これにより、インクジェットヘッドを製造するときの接合工程における接合条件を調整するのが容易になり、インクジェットヘッドの歩留まりを向上させることができる。また、インクジェットヘッドの製造後においても、インクジェットヘッドを検査して、COF50がアクチュエータユニット21から剥離して故障に至る可能性があるか否かを容易に判断することができる。これにより、故障に至る可能性のあるインクジェットヘッドの交換など、事前の対処が可能となる。
<第3実施形態>
次に、図17を参照しつつ、本発明に係る第3実施形態のインクジェットプリンタについて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部材及び機能部については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。図17は、第3実施形態のインクジェットプリンタが有するドライバIC252及び制御基板254の機能ブロック図である。図17に示すように、ドライバIC252は、駆動信号出力部81と、検査信号出力部285とを有している。また、制御基板254は、電気特性計測部(電気特性計測手段)282と、剥離判断部(判断手段)283とを有している。
図18を参照しつつ検査信号出力部285及び電気特性計測部282について説明する。図18は、検査信号出力部285及び電気特性計測部282の内部構成を示す概略回路図である。図18に示すように、検査信号出力部285は、パルス信号が入力されることによって、ドライブ抵抗R1を介してCOF50における4つの検査端子59a〜59d毎に検査パルス信号を出力するインバータ296を有している。電気特性計測部282は、検査端子59a〜59dの電気特性を計測するものであり、検査端子59a〜59dに検査パルス信号(周波数F、電圧V)を出力したときのインバータ296の消費電力を計測する。また、電気特性計測部282は、計測結果を剥離判断部283に出力する。
図17に戻って、剥離判断部283は、電気特性計測部282からの計測結果(インバータ296の消費電力i)に基づいて、COF50がアクチュエータユニット21からどの程度剥離しているか、すなわち、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断する。なお、この判断は、端子配置領域50aの長辺に関する各端部近傍に配置された4つの検査端子59a〜59d毎に行われる。インバータ296が、検査端子59a〜59dに対して、周波数F、電圧Vの検査パルス信号を出力したとき、インバータ296の消費電力iは、i=FCV2となる。剥離判断部283は、この式に基づいて、消費電力iから4つの検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量Cを算出する。上述したように、COF50がアクチュエータユニット21から剥離して、検査端子59a〜59dが、検査端子59a→検査端子59b→検査端子59c→検査端子59dの順に検査ランド137から剥離されると、4つの検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計値が30pF→20pF→10pF→0pFの順に変化する(図9及び図10参照)。これにより、剥離判断部283は、算出した静電容量Cに基づいて、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断することができる。
また、本実施形態でも、上述の第2実施形態と同様に、電気特性計測部282が計測するインバータ296の消費電力に対して閾値を設定することで、完全な剥離状態に加えて、その状態に至る途中状態であっても、接合の異常を検知することができる。
なお、本実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法は、第1実施形態と実質的に同様であるので説明を省略する。
以上、説明した本実施形態によると、インバータ296の消費電力を計測するという簡単な方法で、検査ランド137から剥離した検査端子59a〜59dの数を判断することによって、COF150がアクチュエータユニット21からどの程度剥離しているかを容易に判断することができる。これにより、インクジェットヘッドを製造するときの接合工程における接合条件を調整するのが容易になり、インクジェットヘッドの歩留まりを向上させることができる。また、インクジェットヘッドの製造後においても、インクジェットヘッドを検査して、COF50がアクチュエータユニット21から剥離して故障に至る可能性があるか否かを容易に判断することができる。これにより、故障に至る可能性のあるインクジェットヘッドの交換など、事前の対処が可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した第1及び第2実施形態においては、4つの検査端子59a〜59dが、端子配置領域50aの長辺側からCOF50、150の引き出し方向の反対方向に沿って、検査端子59a→検査端子59b→検査端子59c→検査端子59dの順に配列される構成であるが、COF50、150におけるアクチュエータユニット21との接合領域内であれば、これら検査端子が任意の位置に配置されてよい。また、検査端子の数も2以上であれば任意の数であってよい。
また、上述した第1及び第2実施形態においては、4つの検査端子59a、59bが、アクチュエータユニット21の長辺の両端近傍、且つ、多数の個別電極135よりも当該接合面におけるCOF50の引き出し方向側の端部に近い位置に配置される構成であるが、上述したように、各検査端子は任意の位置に配置されていてよい。
加えて、上述した第1実施形態においては、アクチュエータユニット21の圧電シート141の表面に検査ランド137が形成されており、COF50の検査端子59a〜59dが検査ランド137に接合される構成となっているが、検査端子59a〜59dが接着剤などにより圧電シート141の表面に直接接合されてもよい。
また、上述した第1実施形態においては、電気特性計測部82が、検査端子59a〜59dと共通電極134との間の静電容量の合計を計測する構成となっており、上述した第2実施形態においては、電気特性計測部182が、各検査端子59a〜59dと共通電極134との間の抵抗値を計測する構成となっているが、電気特性計測部は、検査ランド137からの剥離の有無により変化する検査端子59a〜59dの他の電気特性を計測する構成であってもよい。
また、上述の第2実施形態では、2つのインバータ96、97の組み合わせによって、各検査端子59a〜59dと共通電極134との間の抵抗値から接合部の状態を判断していたが、第3実施形態のように、インバータの消費電力から接合部の状態を判断してもよい。例えば、図19に示すように、インバータ296は、内部配線134aを介して共通電極134に接続された検査端子59に対してハイレベルを出力するように駆動されている。接合部が良好な接合状態であれば、このハイレベル出力に対応した直流電流が電気特性計測部282にも流れる。接合部が剥離状態であれば、電気特性計測部282に電流は流れない。また、接合部が損傷していると、そのときの各検査端子59a〜59dにおける抵抗値に対応した電流が流れる。この場合でも、上述の実施形態と同様に、電気特性計測部282が計測するインバータ296の消費電力に対して閾値を設定することで、完全な剥離状態に加えて、その状態に至る途中状態であっても、接合の異常を検知することができる。
上述した第1及び第2実施形態においては、インクジェットプリンタ101としてインクジェット記録装置が構成されたものであるが、インクジェット記録装置がインクジェットヘッド1単体として構成されたものであってもよい。