感光体上色重ね方式では上述したように、2色目以降の現像で感光体上にトナー層がある場合の現像工程(例えば1色目)と感光体上にトナー層がない場合の現像工程(例えば2次色での2色目)とでは、現像されるトナー付着量が大きく異なるといった問題が存在する。このため、例えば2次色など、異なる2色のトナー層を感光体上で重ねる場合、2色目として感光体上にトナー層が形成されることを考慮して2色目のトナーが必要量だけ付着可能となるように、1色目として感光体上に形成するトナー層のトナー付着量を調整して形成することが望ましい(1色目の現像では、最大の現像能力に対して少なめにトナーを付着させる)。もしそのようにせずに、1色目のトナー像のトナー付着量を多くしてしまうと2色目のトナー像のトナー付着量が極端に減ってしまい、狙いの色相の色を再現することができないといった問題が生じてしまう。
このとき、2色目のトナー像形成を考慮して、1色目のトナー付着量を少なめに形成する手法としては、前掲した特許文献1、2に近い方法を考えることができる。つまり、2色目のトナー像を重ねる領域では、1色目のトナー像を形成する際のトナー量が少なくなるように、レーザービームの露光量を小さくして露光を行なうといった方法である。しかしながら、このような方法は、すでに説明したように書込位置精度に対して厳しい精度が要求される。
これとは異なる方法として、1色目のトナー付着量を少なめに設定する方法としては、画像処理工程の擬似中間調処理工程の前段での画像データを加工する方法がある。電子写真方式を始めとするハードコピー機器での擬似中間調処理工程では、一般的には階調処理が面積階調によって行なわれる。この面積階調の手法は、複数の画素を使用して画像濃度を面積的に変調して、擬似的に中間調の画像を表示する(トナー付着領域と非付着領域との比率を変化させることで、低濃度〜中濃度〜高濃度を再現することができる)。このため、擬似中間調処理工程の前段での画像データを加工することでトナーの付着量を少なめに設定する手法は、面積階調による階調処理の場合にはトナー付着領域の比率を小さくして白地領域の割合を増やすことによって行なわれる。
しかしながら、こうした白地領域を生じさせることによりトナー付着量をコントロールする手法では、発明者らの検討によるとトナー像からの反射光に白色光が混入することになるため、高彩度の色(鮮やかな色)を再現することができない。
本発明は上記した問題点に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、感光体上色重ね方式での画像形成装置において、(1)書込位精度への要求が厳しくなく、(2)トナー像からの反射光に白色光が混入せず、高彩度の色を再現する画像形成装置および画像形成方法を提供することにある。
本発明者らの検討によると、擬似中間調処理工程の前段での画像データを加工する方法では、2色のトナー像の重ね合わせを行なう場合には1色目のトナー付着量と2色目のトナー付着量は、トナー像の重ね合わせを行わず、それぞれを単独で使用する場合にくらべて、少なくなってしまう。このため、感光体上色重ね方式においてトナー像の重ね合わせを行なわないときのトナー付着量が、従来の感光体色重ねを行なわない方式(例えば中間転写方式)での単色のトナー付着量と、同等である場合(最大の現像能力が同程度である場合)には、感光体上色重ね方式での2色以上の重ね合わせ時のトナー付着量は、従来方式での2色以上の重ね合わせ時のトナー付着量にくらべて少なくなってしまう。つまり、2次色・3次色などの多色を行なう場合のトナー付着量を比較した場合、本発明が採用しようとする感光体上色重ね方式、擬似中間調処理工程の前段での画像データを加工する方式は、トナー付着量が少なくなるために不利である。こうした2次色・3次色でのトナー付着量が少ないといった問題は、色再現範囲が狭いことを意味するため、鮮やかな出力画像を行なうことができず使用者にとっての価値の低下につながる。
このような問題に対して、2次色・3次色でのトナー付着量不足といった問題が起きないようにするためには、感光体色重ね方式での単色のトナー付着量を多い条件に設定しておく必要がある(高い現像能力を確保する必要がある)。しかしながら、上述したように感光体色重ね方式では、感光体ドラムと現像装置とが非接触であることが要求される(非接触となることで現像能力は低下し、トナー付着量は減ってしまう傾向にある)といった背景もあり、高い現像能力を得るためには、従来に比べてきわめて大きな現像ポテンシャルが必要となる。このことは、感光体の帯電電位、現像バイアスなどを従来に比べて高く設定しなければならず、電源装置のコストアップや、感光体ドラムの寿命低下といった問題を引き起こす。
本発明の他の目的は、このような現像ポテンシャルが高くなってしまうといった問題を解決し、2次色・3次色のトナー付着量不足に伴う色再現範囲の低下、といった問題を両立して解決することが可能な、感光体上色重ね方式の画像形成装置および画像形成方法を提供することにある。
本発明は、複数色の画像データを擬似中間調データへ変換する擬似中間調処理手段と、感光体の周囲に配置された複数の画像形成手段とを有し、前記擬似中間調データに基づいた複数色のトナー画像を前記感光体上に重ね合わせて画像を形成する画像形成装置において、前記擬似中間調処理手段は、1つの画素について3値以上の量子化数によって擬似中間調処理を行い、かつ、高濃度側領域では全ての画素を平均的に成長させる成長順とした擬似中間調処理であることを最も主要な特徴とする。
請求項1の画像形成装置では、擬似中間調処理装置において、1つの画素について3値以上の量子化数によって擬似中間調処理を行い(多値の量子化)、高濃度側領域では全ての画素を平均的に成長させる成長順(全ての画素を均一に成長させる)とすることを特徴としている。
請求項1では、感光体上色重ね方式を実現化する。感光体上色重ね方式は、プリント速度を落とすことなく使用する感光体が1つで済み、さらに中間転写体が不要であるといった特徴があるため、部品点数が低減され省資源化に寄与することができる。つまり、請求項1は省資源化に貢献することができる。
また、請求項1では、感光体色重ね方式において大きな技術課題である「2色目以降の現像において、感光体上にトナー層がある領域とトナー層がない領域とで、現像されるトナーの付着量が大きく異なる」といった問題に対して、従来とは異なる方法で解決を行なっている。この結果、請求項1では、感光体色重ね方式において、色再現範囲が狭くならず、また狙いの色を再現することが可能であり、高画質の画像出力を実現する。このことを以下で詳しく説明する。
請求項1では、画像処理工程での擬似中間調処理工程の前段での画像データを加工することでトナー付着量の制御を行なっている。つまり、個々の画素ごとにトナー付着量の制御を行なっているのではなく、一定の領域を単位として領域内のトナー付着量を制御する方法である。したがって、特許文献1のように画素単位で制御を行なう方法とは異なるため、従来技術での問題であった「異なる色間の書込位置精度に厳しい精度が要求される」といった問題が、請求項1の構成では発生しない。請求項1では、一定の領域内のトナー付着量を制御しているため、この一定領域(通常は肉眼では識別できないサイズで150〜200μm)が重なる程度の精度で十分である。つまり、請求項1では、異なる色間での書込位置精度を厳しくする必要がないといった利点を有する画像形成装置を実現することができる。
さらに、請求項1のように、擬似中間調処理の前段での画像データを加工してトナー付着量を制御する方法では、基本的にはトナー付着領域と非付着量域との比率をかえることで、一定の領域内のトナー付着量をコントロールすることになる。つまり、トナー付着量を少なくすることは、トナー付着領域の比率を小さくして白地領域の割合を増やすことによって行なわれることになる。しかしながら、こうした白地領域を生じさせてトナー付着量を少なくする方法では、トナー像からの反射光に白色光(白地領域からの反射光)が混入することになるため、高彩度の色を再現することができない。
このような問題に対して、請求項1では、「高濃度側領域では全ての画素を平均的に成長させる成長順(全ての画素を均一に成長させる)とした、擬似中間調処理を行う」方法を採る。このように請求項1では、高濃度側領域で全画素を平均的に成長させる成長順となるように擬似中間調処理を行うため、高濃度側領域において白地部を発生させることなく、一定領域内のトナー付着量を制御する(少なくする)ことが可能になる。このため、高彩度の色が再現できないといった従来の問題を解決することができる。
請求項2の場合も、請求項1と同じ論理で、従来技術の問題点であった「(1)書込位置精度への要求が厳しくなってしまう、(2)トナー像からの反射光に白色光が混入することにより高彩度の色を再現することができない」といった問題を解決することができる。
さらに、請求項2では、低濃度側領域においては1画素ごとに中間レベルまで成長させる成長順(中間レベルまで深さ方向に、つまり1画素毎にレベルを上げるように、優先的に成長させる)としてあるため、低濃度側領域において階調性に優れた出力画像を得ることができる。電子写真方式の画像形成装置では、低濃度側領域(ハイライト領域)においては、なるべく1画素毎に深さ方向に優先的に成長させた方が、トナーが付着しやすくなり、階調再現性がよいといった特徴がある。請求項2では、このような特徴を踏襲しながら、上述した「高濃度側領域において白地部を発生させることがない」といった特徴を両立して実現することができる。
さらに加えて、本発明のように複数色のトナー像を感光体上に重ねて現像する、感光体色重ね方式の画像形成装置では、ベタ画像などの高濃度画像に相当するトナー像が感光体上に形成されたところに、低濃度のトナー像を重ねて形成しようとした場合には、こうした低濃度のトナー像が再現されにくいため、カラー階調性(例えば、マゼンタ色からブルーへの階調が滑らかに再現されること)が劣化するという現象が発生する(すでに形成されているトナー像が、後から重ねるトナー像の現像を妨げる方向に作用するため)。こうした感光体上色重ね方式に特有な現象に対しても、請求項2のような構成にすることで利点が得られる。つまり、低濃度側領域(ハイライト領域)においてなるべく1画素毎に深さ方向に優先的に成長させることで、トナー像上に対する低濃度トナー像の現像性が改善し、カラー階調再現性が向上する。このため、請求項2では、感光体色重ね方式に特有に発生するカラー階調性の劣化の防止と「高濃度側領域において白地部を発生させない」といった特徴を実現することができる。
請求項3の場合も、請求項1と同じ論理で、従来技術の問題点であった「(1)書込位置精度への要求が厳しくなってしまう、(2)トナー像からの反射光に白色光が混入することにより高彩度の色を再現することができない」といった問題を解決することができる。
請求項3においても、「低濃度側領域では1画素ごとに量子化数の中間レベルまで成長させる成長順(中間レベルまで深さ方向に優先的に成長させる)とし、高濃度側領域では全ての画素を平均的に成長させる成長順(全ての画素を均一に成長させる)とした、擬似中間調処理とする」が、請求項3では、このような擬似中間調処理をディザ法と呼ばれる方法によって行なうことが特徴である。
ディザ法は、擬似中間調処理方法の中では計算過程が比較的単純であるため、処理系への計算負荷が小さく、高速での階調処理が可能である。このため実際の画像形成装置に搭載した場合には、ハードウエアやソフトウエアの規模が大きくならず、必要となるメモリなども小規模で済むため、低コストの画像形成装置を実現することができる。つまり、請求項3の画像形成装置では、低コストの画像形成装置を実現に寄与する。
また、電子写真方式の画像形成装置には、孤立1ドットの再現性・安定性が乏しいといった特徴がある。ディザ法による擬似中間調処理法は、こうしたドットの安定性に乏しい電子写真方式には非常に適した方法である。ドットの安定再現性に乏しい電子写真方式に対してたとえば誤差拡散法などの擬似中間調処理方法を適用した場合には、粒状性が悪かったり、筋ムラが目立ったりして、画像品質が低下してしまう。一方、電子写真方式に対してディザ法を適用した場合には、こうした問題が発生せず、高品質の出力画像を得ることができる。このため、ディザ法による擬似中間調処理法は、電子写真方式の画像形成装置において重要な技術であると考えられる。請求項3では、電子写真方式の画像形成装置において、高品質(粒状性が良好であり、筋ムラが目立つことのない)の画像の出力に寄与する。
請求項4の場合も、請求項1と同じ論理で、従来技術の問題点であった「(1)書込位置精度への要求が厳しくなってしまう、(2)トナー像からの反射光に白色光が混入することにより高彩度の色を再現することができない」といった問題を解決することができる。
また、請求項4も、請求項3と同じく、擬似中間調処理はディザ法である。このため、請求項3と同じく、低コストの画像形成装置の実現に寄与する。
この他、請求項4は、「1画素ごとに中間レベルまで成長させる低濃度領域においては、ドット状(網点状)のパターンで擬似中間調処理を行う」ことが特徴である。ドット状のパターンで擬似中間調処理を行うことで、各網点の周囲長を短くすることができるようになる。このことは、濃度の安定性に優れるといった特徴を持つ。この理由を簡単に説明すると次のようになる。環境変動をはじめとする変動要因によって網点に付着するトナーの量が増減するが、このときトナー付着領域がどの程度広がるかといったことが、一番大きな画像の濃度変動の原因となる(付着量そのものの変化よりも、付着領域が広がってしまうことが、変動の原因となる)。
トナー付着領域の広がり易さは、各網点の周囲長の長さに比例することになるため、各網点の形状をドット形状とした場合に最も周囲長が短く、濃度変動が起こり難いといった特徴をもつようになる。つまり、請求項4は、さまざまな変動要因に対して、濃度変動が起こり難いといった特徴を持つようになる。請求項4の画像形成装置は、変動要因に対して濃度変動が起こり難く、安定した画像の出力が可能な画像形成装置の実現に寄与する。
請求項5の場合も、請求項1と同じ論理で、従来技術の問題点であった「(1)書込位置精度への要求が厳しくなってしまう、(2)トナー像からの反射光に白色光が混入することにより高彩度の色を再現することができない」といった問題を解決することができる。
また、請求項5も、請求項3と同じく、擬似中間調処理はディザ法である。このため、請求項3と同じく、低コストの画像形成装置の実現に寄与する。
この他、請求項5は、「1画素ごとに中間レベルまで成長させる低濃度領域においては、ライン状のパターンで擬似中間調処理を行う」ことが特徴である。ライン状のパターンで擬似中間調処理を行うことで、複数のトナー像を重ね合わせた場合に、色モアレが発生し難いといった特徴を持つ。このようにライン状のパターンで擬似中間調処理を行った場合には、周期構造の周波数成分は1方向にしか存在しない。このため、複数色のトナー像を重ね合わせた場合に、周波数成分を離して配置できるような周期構造の組み合わせを選択しやすい。この結果、周期構造の干渉によって生じる色モアレ(異なる色のトナー像の干渉によって生じるモアレ)が、視覚的に目立ちにくく干渉周期を細かくすることができるようになり、実質的に色モアレのない出力画像を得ることができる。つまり、請求項5の画像形成装置は、色モアレのない(目立ちにくい)出力画像を得ることが可能な画像形成装置の実現に寄与する。
請求項6の場合も、請求項1と同じ論理で、従来技術の問題点であった「(1)書込位置精度への要求が厳しくなってしまう、(2)トナー像からの反射光に白色光が混入することにより高彩度の色を再現することができない」といった問題を解決することができる。
また請求項6では、トナー担持体上のトナーが非静止状態で保持されるためトナーとトナー担持体との付着力が非常に小さい。このため、現像領域にトナーが十分に搬送される条件であれば、感光体上にトナーが付着した状態での感光体電位が、現像バイアスと等しくなった時点で現像が終了する。つまり、請求項6の構成では、小さな現像バイアスであっても、十分なトナー付着量を得ることができる。
「発明が解決しようとする課題」の項に記載したように、本発明が対象としている感光体上色重ね方式では、感光体上にトナー層が形成された状態では、その上にさらにトナー層を重ねるためには大きな現像バイアスが必要になる。このため、2次色・3次色といった多層を必要とする色を表現するためには、現像バイアスが大きくなってしまう。つまり、2次色・3次色において色再現範囲が狭くならないようにするためには、こうした色でトナーの付着量を低下させないことが必要であり、このことが感光体上色重ね方式での現像バイアスの増加を引き起こす。
従来の中間転写方式などの色重ね方式では、1次色と2次色・3次色とでは、それぞれを構成する単色については同じ現像バイアスで同じ付着量のトナー得ることができた。したがって、必要となる現像バイアスを大きくする必要はなく、現像バイアスが大きくなるといった問題はなかった。
これに対して、感光体上色重ね方式では、トナー層を積層していくにしたがって現像バイアスを大きくする必要があり、2次色・3次色といったトナー層を積層して再現する色については、現像バイアスを大きくしなければならず、これにより、現像担持体から感光体ドラムへ放電が発生することから、現像装置の絶縁性を高めなければならない。
これに対して、請求項6では、上述したようにトナー担持体上のトナーが非静止状態で保持される構成のため、単色で必要となる現像バイアスを小さくすることができる。このため、感光体上色重ね方式に適用することで、感光体上色重ね方式での現像バイアスが大きくなるという問題を解決することができる。
請求項7の画像形成装置では、トナー担持体が所定の間隔で並べて配置された複数の電極に多相の電圧が印加され、この複数の電極間に形成される搬送電界によってトナーを担持しつつ、感光体との対向領域に搬送するように構成されることを特徴としている。
請求項7の画像形成装置でも、請求項1と同じく従来技術の問題点であった「(1)書込位置精度への要求が厳しくなってしまう、(2)トナー像からの反射光に白色光が混入することにより高彩度の色を再現することができない」といった問題を解決することができる。
これに加えて請求項7では、上述した請求項7に特有の構成により、トナーをトナー担持部材上で非静止に保持することができるため、トナーとトナー保持部材との間の付着力を小さくして保持することが可能となる。このため、感光体上色重ね方式に好適なトナー担持部材と感光体とを非接触に配置して現像を行なう非接触現像を実現し、さらに低現像バイアスでの現像を実現することができる。
さらに、請求項7では、トナー担持体そのものが静止しているため、現像装置としては駆動する部分が少ない。駆動部分が多い場合にはその部分が摩擦されるため、この摩擦部分から現像装置内のトナーが漏れやすい。これに対して、請求項7の構成では、トナー漏れにより装置内の汚染や画像への付着といったトラブルが起こり難い画像形成装置を実現できる。また、トナー担持体が駆動しない構成であることから、感光体とトナー担持体との距離を一定に維持しやすく、メカ設計を行う上で設計自由度が大きい。
請求項8の画像形成装置では、トナー担持体が所定の間隔で並べて配置された複数の電極に対して多相の電圧が印加されるとともに、このトナー担持体自体の表面が移動するように構成されており、この複数の電極間に形成される搬送電界によってトナーを担持しつつ移送するように構成するとともにトナー担持体自体の表面の移動に伴って、トナー担持体上のトナーを感光体との対向領域に搬送するように構成したことを特徴としている。
請求項8の画像形成装置では、請求項1と同じく従来技術の問題点であった「(1)書込位置精度への要求が厳しくなってしまう、(2)トナー像からの反射光に白色光が混入することにより高彩度の色を再現することができない」といった問題を解決することができる。
これに加えて請求項8では、上述した請求項7に特有の構成により、トナーをトナー担持部材上で非静止状態に保持することができるため、トナーとトナー保持部材との間の付着力を小さくして保持することが可能となる。このため、感光体上色重ね方式に好適なトナー担持部材と感光体とを非接触に配置して現像を行う非接触現像を実現し、さらに低電位での現像を実現することができる。
また、請求項8では、請求項7とは異なりトナー担持体は表面を移動可能に構成している。このため、トナー担持体の感光体と対向する部分を変化させるような対応が可能となる。つまり、感光体に対向している部分に異常が生じたような場合であっても、この部分を移動させることで正常な部分を感光体に対向させることができる。このため、頻繁にトナー担持体を交換する必要が無くなる。
請求項9の画像形成装置では、トナー担持体が所定の間隔で並べて配置された複数の電極に電圧が印加されるとともに、このトナー担持体自体の表面が移動するように構成されており、この複数の電極間に形成される振動電界によってトナーを非静止状態で担持するように構成されるとともにトナー担持体自体の表面の移動にともなって、トナー担持体上のトナーを感光体との対向領域に搬送するように構成したことを特徴としている。
請求項9の画像形成装置では、請求項1と同じく従来技術の問題点であった「(1)書込位置精度への要求が厳しくなってしまう、(2)トナー像からの反射光に白色光が混入することにより高彩度の色を再現することができない」といった問題を解決することができる。
これに加えて請求項9では、上述した請求項6、7と同じように、トナーをトナー担持部材上で非静止に保持することができるため、トナーとトナー保持部材との間の付着力を小さくして保持することが可能となる。このため、トナー担持部材と感光体とを非接触に配置して現像を行う非接触現像を実現し、さらに低電位での現像を実現することができる。
また、請求項9では、請求項7、8とは異なり、トナー担持体に配置される複数の電極間に形成される電界によって、トナーの搬送を行わず同じ位置で往復運動を繰り返すように構成する。このためトナーはトナー担持体の表面に非静止状態で保持されているが、平均(時間平均)的にはトナー担持体上の同じ位置にとどまっている。そして、トナーの現像領域への移送はトナー担持体の表面が移動することで行なわれる。
請求項9では、トナー担持体上に保持したトナーの搬送は行なわず、往復運動を繰り返すだけであるため、トナー担持体上に異物が付着するなどのトラブルによって、トナーがうまく搬送できない(異物にトラップされて異物より下流側にトナーを搬送することができない)といったような問題が根本的に発生しない。つまり、トナー担持体に対する異物付着に対してタフな画像形成装置を実現する。また、トナー担持体上のトナーを搬送した場合には、搬送可能なトナー量が比較的狭い範囲内に制限されてしまうのに対して(搬送量を多くすると搬送が途中で止まってしまう)、請求項9では比較的広い範囲のトナー量をトナー担持体の表面に保持することができる。
請求項9では、トナー担持体への異物の影響を受け難く、トナー搬送量を比較的自由に設定することが可能な画像形成装置を実現することができる。
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。
実施例1:
図1は、実施例1のフルカラー画像形成装置を示す。実施例1は、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー像を、感光体上で重ね合わせることによりカラー画像を形成する画像形成装置である。
図1の装置では、ベルト感光体1がほぼ中央に配置されている。また、このベルト感光体1の周回方向(矢示方向)に沿って上流側から下流側に、MYCK4色の帯電装置2M、2Y、2C、2Kと現像装置4M、4Y、4C、4Kが配置されている。帯電装置2Mではベルト感光体1を一様に帯電させ、書き込み装置3によってベルト感光体1を光走査することでベルト感光体1上にマゼンタ色の静電潜像を形成し、この静電潜像を現像装置4Mによってマゼンタ色トナー像を感光体ベルト1上に形成する。YCK色についてもマゼンタ色と同様にトナー像をベルト感光体1上に重ねて形成する。この重ね合わせトナー像は、転写前帯電装置5で電荷調整を行なった後、転写装置6において感光体ベルト1から転写材である記録用紙7へと一括して(MCYK4色のトナー像が全て同時に)転写される。記録用紙7へと転写されたトナー像は定着装置8において熱定着され、記録用紙7上の画像となる。
ベルト感光体1は、ベルト状の導電性基体上にUL(アンダーレイヤー)層、電荷発生層、電荷輸送層を積層した積層型感光体である。ベルト感光体1は図1のように画像形成装置の中央に配置されており、矢印方向に周回移動している。実施例1ではベルト感光体の周速を100mm/secとしている。
帯電装置2M〜2Kは4つとも同じ構成の帯電装置であり、いわゆるスコロトロン帯電器である。実施例1では、この帯電装置2M〜2Kのグリッド電圧を制御することで、ベルト感光体の表面を−400Vに均一帯電する。
書き込み装置3は、レーザダイオード(LD)素子から光変調を施されたレーザー光がベルト感光体1の表面上で結像するように光学素子を配置した構成となっている。このレーザー光によってベルト感光体1上を走査することで、所望する画像に対応した静電潜像をベルト感光体1上に形成する。実施例1ではレーザダイオードは波長が780nmのLD素子を使用している。現像装置4については、詳細を後述する。
転写前帯電装置5も、帯電装置2と同じスコロトロン帯電器であり、ベルト感光体1上に重ね合わされたトナー像を−400Vになるように帯電する。転写装置6は、ローラ形状の導電性弾性ローラであり記録用紙7への転写時には記録用紙裏面からベルト感光体1に対して押し当てられるように配置されている。この転写装置である弾性ローラには転写バイアスとして定電流制御(40μA)されたバイアスが印加されている。記録用紙7は用紙バンク(不図示)から搬送手段によって搬送された後に、レジストローラ10で所定のタイミングを取り、転写装置6へと搬送される。転写装置6では、上述したようにベルト感光体上のトナー像(4色分のトナー像)が記録用紙7上の所望の位置に転写される。定着装置8は、トナー像が転写された記録用紙7を加熱・加圧することによって、トナー像が記録用紙上に定着され、機外へと排出される。
図2は、実施例1の現像装置を示す。実施例1の現像装置は、MYCK4色が同一構成であるため、そのうちの1色について説明する。
図2の現像装置は、ケーシング41内に、現像領域にトナーを搬送電界によって搬送するローラ状に形成したトナー担持体42と、このトナー担持体42に対向し、トナー担持体42に対してトナーを供給するトナー供給手段であるトナー供給ローラ43と、このトナー供給ローラ43に対してトナーの補給を行うトナー補給装置45から構成され、ケーシング41内の一部がトナーを収容するトナー収容部44となるように構成されている。
トナー担持体42はベルト感光体1に対して非接触に対向して配置される。実施例1ではトナー担持体42とベルト感光体1との距離(ギャップ)を0.20mmに設定した。トナー担持体42の構成の詳細は後述する。トナー担持体42はφ10の円筒形状であり、静止した状態で配置される。トナー担持体42では、後述する供給ローラ43から供給されたトナーを、トナー担持体表面に形成される搬送電界により現像領域まで搬送することで、トナー像を現像する。
トナー供給ローラ43は、図2のようにトナー担持体42に対して現像領域のほぼ反対側で非接触に対向して配置される。実施例1ではトナー供給ローラ43とトナー担持体42との距離(ギャップ)を0.20mmに設定した。トナー供給ローラ43はφ12の円筒形状であり、図示しない駆動手段によって回転している。実施例1では回転数326rpmに設定した。またトナー供給ローラ43とトナー担持体42との間には、1.3kVの電位差を設けることで、トナー供給ローラ43からトナー担持体42へトナーを供給している。
トナー規制部材46は、トナー供給ローラ43上に付着させるトナー量が一定になるようにすると共に、この部分でトナーがトナー供給ローラ43およびトナー規制部材46と摩擦されることでトナーが所定の帯電量に帯電される。
トナー補給装置45は、トナー供給ローラ上43のトナーが消費されて少なくなった場合には、トナー補給装置45を駆動してトナー収容部44に収容されているトナーをトナー供給ローラ43側に補給する。
次に、実施例1で使用するトナーについて説明する。実施例1では使用するトナーは重合法によって作製した、いわゆる重合トナーであり、トナーの粒径は、体積平均粒径が5.5μmとなるように製造した(トナー粒径の測定は、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器「コールターカウンターTAII」を用い、アパーチャー径100μmで測定した)。ほぼ同一の製法により、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーについて作製している。なお、上記した記載は本発明のトナーの仕様を限定するものではなく、上記作製方法のほか、分散重合法あるいは粉砕法などによって作製したトナーであっても構わない。
実施例1ではこのような現像装置の構成により、トナー担持体42の表面に、付着量0.7mg/cm^2のトナー量を付着させることができた。このようにトナー担持体42上に供給したトナーを現像領域に搬送して、感光体上に形成された静電潜像の現像を行う。
図3は、実施例1のトナー担持体の概略図である。実施例1のトナー担持体42は、粉体であるトナーTを搬送、ホッピング(現像)、回収するための電界を発生する複数の電極421を表面に有する。このトナー担持体42の各電極421に対しては駆動回路424から所要の電界を発生させるためのn相(ここでは3相とする)の異なる駆動波形Va〜Vcが印加される。
この駆動波形Va〜Vcを与えた電極421の間に形成される搬送電界によって、トナーTを前述のベルト感光体1の近傍まで移送し、ベルト感光体1の潜像にトナーTを付着させてトナー像を形成し、現像で使用しなかったトナーTをトナー担持体側に回収する。
また、トナー担持体42の各電極421に対しては、現像領域においては、ベルト感光体1上の潜像の画像部に対してはトナーTがベルト感光体1側に向かい、非画像部に対してはトナーTがベルト感光体1と反対側(トナー担持体側)に向かう方向の電界を形成して、トナーTを潜像に付着させて現像を行うようにしてある。これにより、現像領域ではベルト感光体1上の潜像にトナーが付着して可視像化され、現像に寄与しなかったトナーはベルト感光体1の回転方向(移動方向)下流側で回収される。
図3における、トナー担持体42の支持基板422としては、ガラス基板、樹脂基板或いはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、或いは、SUSなどの導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。実施例1では、膜厚0.1mmのポリイミドフィルムを使用した。
電極421は、支持基板422上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成する。これらの複数の電極421のトナー進行方向における幅Lは移動させるトナーの平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、電極421のトナー進行方向の間隔Rも移動させるトナーの平均粒径の1倍以上20倍以下としている。実施例1では、電極421は電極材料としてAlを使用し、2μmの膜厚で形成した。また上記の幅L(電極421のピッチ)は50μmとした。
表面保護層423としては、例えばSiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜10μm、好ましくは厚さ0.5〜3μmで成膜して形成している。また、無機ナイトライド化合物、例えばSiN、Bn、Wなどを用いることができる。実施例1では、SiO2を使用して、膜厚3μmで形成した。
次に、このように構成したトナー担持体におけるトナーの静電搬送の原理について説明する。トナー担持体42の複数の電極421に対してn相(実施例1では3相)の駆動波形を印加することにより、複数の電極421によって移相電界(進行波電界)が発生し、トナー担持体上の帯電したトナーは反発力及び/又は吸引力を受けて移送方向にホッピングと搬送を含んで移動する。
例えば、トナー担持体42の複数の電極421に対して図4に示すようにグランドG(0V)と負(−)の電圧との間で変化する3相のパルス状駆動波形(駆動信号)A(A相)、B(B相)、C(C相)を、タイミングをずらして印加する。
このとき、図5に示すように、トナー担持体42上に負帯電トナーTがあり、トナー担持体42の連続した複数の電極421に図5に丸付き数字1で示すように、それぞれ「−」、「−」、「G」、「−」、「−」が印加されたとすると、負帯電トナーTは「G」の電極421上(中央の電極)に位置する。
次のタイミングで複数の電極421には、丸付き数字2に示すようにそれぞれ「G」、「−」、「G」、「G」、「−」が印加され、負帯電トナーTには図5で左側の「−」の電極421との間で反発力が、右側の「G」の電極421との間で吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは右側の「G」の電極421側に移動する。さらに、次のタイミングで複数の電極421には丸付き数字3に示すように、それぞれ「G」、「−」、「−」、「G」、「−」が印加され、負帯電トナーTは右側に1ずれた「G」の電極421側に移動する。
このように複数の電極421に電圧の変化する複相の駆動波形を印加することで、トナー担持体42上には進行波電界が発生し、この進行波電界の進行方向に負帯電トナーTは搬送及びホッピングを行いながら移動する。なお、正帯電トナーの場合には駆動波形の変化パターンを逆にすることで同様に同方向に移動する。
駆動回路424(図4の424)の構成について図6を参照して説明する。この駆動回路424は、パルス信号を生成出力するパスル信号発生回路4241と、このパルス信号発生回路4241からのパルス信号を入力して駆動波形Va、Vb、Vcを生成出力する波形増幅器4242a、4242b、4242cとを有する。
パルス信号発生回路4241は、例えばロジックレベルの入力パルスを受けて、各120°に位相シフトした1組み(3つで1組み)パルスで、次段の波形増幅器4242a〜4242cに含まれるスイッチング手段、例えばトランジスタを駆動して100〜500Vのスイッチングを行うことができるレベルの出力電圧10〜15Vのパルス信号を生成して出力する。
実施例1では、トナー担持体42の3相の電極に対して、図7に示すような駆動電圧を印加した。この波形は、ピーク間電圧300Vであって、いわゆるデューティー比が50%の交流成分に、−300Vの直流成分を重畳した電圧波形である。また、実施例1では、667Hzの周波数で駆動している。現像領域でトナーによる潜像の現像のきっかけとなる現像バイアスは、ここでは上記の駆動電圧の時間平均値であると考える。つまり実施例1では、現像バイアスは−300Vとなる。
このような波形の駆動電圧をトナー担持体42に印加することで、トナーをトナー担持体42によって現像領域に搬送することができ、さらに、現像領域においてもトナーを画像領域に付着させることができる。
このように、実施例1では、トナー担持体上のトナーは、電極に印加された駆動電圧によって、現像領域へと搬送されるため、非静止状態に保持された状態になっている。また、実施例1では、上記したようにトナー担持体上にはトナーが0.7mg/cm^2の付着量で担持されている。現像領域では、上記したようにトナー担持体には現像バイアスとして−300Vが印加されているため、画像領域にはトナーが付着する。このとき画像領域の感光体上のトナー付着量は、0.7mg/cm^2となっていた。
トナー担持体上を搬送されるトナーは、トナー担持体の電極ピッチが150μm(50μmピッチの3層電極のため)、駆動電圧の周波数が667kHzであるため、移動速度は100mm/secである。トナー担持体上のトナー量は、0.7mg/cm^2であるので、トナー担持体上のトナー搬送量は、7mg/(cm・sec)となっている。
これに対して、現像領域通過後の感光体上のトナー付着量は上述したように0.7mg/cm^2、感光体の線速は100mm/secであるので、画像領域ではトナー担持体上に保持されている全てのトナーが感光体側に移動したことになる。つまり、実施例1の構成では、感光体上に現像されるトナーの付着量が、トナー担持体上に保持されるトナー量によって規制された状態が実現されている。
以上説明したように、実施例1では、感光体上色重ねを行なう際に既に感光体上に形成されているトナー像を乱すことがないよう、感光体とトナー担持体とが非接触に対向している、非接触現像となっている。また、実施例1では、トナー担持体上でトナーを非静止状態で保持するという特徴があるため、実施例1では低電位現像バイアス(現像バイアスの平均値は、−300V)にもかかわらず、感光体上のトナー付着量0.7mg/cm^2といった十分な付着量を確保することができる。
次に、後述する画像処理装置によって作成された出力用画像データに対応して動作するレーザー光学ユニットの動作を説明する(図1を参照)。
ビデオ信号処理部12では後述する画像処理装置11によって作成される出力画像用データ(画像処理の結果)を受け取り、発光点(LD:レーザーダイオード)の個数分のデータをラインメモリ上に記憶し、ポリゴンミラーの回転に同期した信号(いわゆる同期信号)に合せて、各画素に対応する上記ラインメモリ上のデータを所定のタイミング(画素クロック)で、PWM制御部へ出力する(なお、実施例1では、発光点の数は、各色ともに1つである)。PWM制御部では、このデータがパルス幅変調(PWM)信号へと変換され、LDドライバへ出力される。LDドライバでは、このパルス幅変調信号に対応して所定の光量でLD素子(LDアレイ)を光変調駆動する。実施例1では、各色成分の出力用画像データに対応して、パルス幅変調(PWM)制御を行い、レーザーの光変調駆動を行う。
LDからの発光光は、コリーメートレンズにおいて平行光を形成し、アパーチャーにより所望のビーム径に対応する光束に切り取られる。アパーチャー通過後の光束はシリンドリカルレンズを通過し、ポリゴンミラーへと入射される。ポリゴンミラーで反射された光束は、走査レンズ(f−θレンズ)によって集光されて、折り返しミラーで折り返した後に、上述の感光体位置上で結像する。
実施例1では、LDによる光書込みを解像度600dpiで行う。またPWMは6bitの自由度を持つ。ただし、後述する画像処理装置11において、出力用画像データは擬似中間調処理での量子化後には、600dpi4bitのデータに変換されるため、PWM6bit中の4bitを出力用画像データ(擬似中間調処理後のデータ)に対応づけて、LDの発光を制御する。このため、LDの発光は、出力用画像データに対応した4bit分(光らない状態を含めて16通り)となる。
このようにして、光変調されたレーザー光が、書き込み装置3によって、ベルト感光体1上に結像して走査されるために、ベルト感光体1上に所望の画像に対応した静電潜像を形成することができる。この静電潜像をトナー像へ現像して、用紙上のトナー像とするまでの作像工程は先述の通りである。以上説明した動作順により、用紙上に画像データに応じたフルカラー画像を形成することができる。
図8は、実施例1の画像処理装置の概略図である。図8において、入力画像データ111であるデジタル画像信号はRGB各色8bitのカラー画像信号であり、色分解画像処理装置112の色補正手段113、BG/UCR114によってカラー画像信号CMYK各色8bitのカラー画像信号に変換される。実施例1では、DLUT(Direct Look up Table)と呼ばれる方法でCMYKデータへ変換する。
DLUTは、入力色空間(RGB)を小さな単位立方体に分割し、各格子点に対応した出力値(CMYK)を後述する方法によって決定しておき、DLUT形式で保持する。そして格子点以外の入力値については、補間演算により計算する。実施例1では、この補間演算として、4面体補間を用いる。4面体補間は、単位立方体を6つの単位四面体で分割して補間演算を行う。実施例1ではこのような方法により、CMYK各色8bitのカラー画像信号を得ている。
上記のDLUTの作成方法を説明すると、DLUTを作成するために、まず色予測モデルを構築する必要がある。発明者らは、CMYKの各色ごと10段階の階調ステップについて、全ての組み合わせに対して、単色特性データおよび混色特性データを用意した。つまり5000通りのカラーパッチを、実際に感光体上色重ね方式の実験機を用いて紙上に形成して、自動測色機でLab値の測色を行い、この色予測モデル構築のために使用した。色予測モデルは、用意した5000パッチ分の測色データに対して、重回帰モデルを用いて統計処理することにより構築し、構築した色予測モデルを用いて、DLUTの各格子点の値を計算することで、DLUPを作成した。
本発明では、感光体上色重ね方式の特徴的な特性、つまり「2色目以降の現像において、感光体上にトナー層がある領域と感光体上にトナー層がない領域とでは、現像されるトナーの量(トナー付着量)が大きく異なるといった問題にともなう特性」は、基本的にはDLUTに保持されるデータによって吸収・補正されるようになっており、これにより狙いの色が再現されるようにCMYKデータへと変換される。しかしながら、この方法では、CMYKデータの値があらかじめ設定された範囲内に制限される(実施例1では、CMYKは8bitデータであるので、最大でもレベル255であり、これ以上の値にすることはできない)。このため、実施例1では、基本的には狙いの色を実現するためには、少なくなってしまう2色目以降の現像に合わせるように1色目のレベルを小さくすることで対応することになる。
上記の色補正手段113、BG/UCR114によって4色に分解された信号は、メモリ115に一旦記憶される。そして、メモリ115に記憶した画像信号に対して、プリンタγ補正手段116、ディザ処理手段117を適用する。
プリンタγ補正手段116では、1次元のLUT(ルックアップテーブル)であるプリンタγテーブルを用いて、CMYKデータ(8bit)からCMYKデータ(8bit)へ変換する。これにより、予め設定されている所定の入出力関係(予め設定されている、色補正後のCMYKデータに対する感光体上のトナー付着量または付着量を検知する反射センサの出力値との関係)に一致させる。これは、環境変動や経時変動などの変動要因によって入出力関係が変動してしまうことを、吸収して補正するために行うものである。
擬似中間調処理装置であるディザ処理手段117では、後述するディザマトリクスと呼ばれる閾値データが記入されたマトリクスが予めディザ処理手段117に記憶されており、プリンタγ補正手段116で変換されたCMYKデータに対して、1つ1つの画素についてCMYKデータ値とディザマトリクスの閾値データとを比較することにより、擬似中間調処理を行う。実施例1では、このディザ処理によって、CMYK8bitデータをCMYK4bitデータへ変換するディザ処理を行う。
実施例1のディザ処理手段7で使用するディザ処理(ディザマトリクス)の周期構造について説明する。実施例1ではディザ処理後の画像はドット状の周期構造になっており、いわゆるドットスクリーンディザとよばれるディザマトリクスを適用している。ディザマトリクスの周期構造を特徴づける数値として、スクリーン角度およびスクリーン線数が用いられる。
図9に示すような周期構造ディザマトリクスの場合、スクリーン角度およびスクリーン線数は、図9の計算式によって一義的に算出される。一般に、2次元の周期構造は、2つの2次元ベクトルによって表すことが便利であるため、この2つのベクトルを以後、主ベクトルおよび副ベクトルと呼ぶことにする。
上記の主ベクトル、副ベクトルを用いて、実施例1でのディザマトリクス(CMYKの4色)の組み合わせを記載すると表1のようになる。
表1中のa0x,a0y,a1x,a1yの4つの整数は、それぞれ、図9における主ベクトルのx成分、主ベクトルのy成分、副ベクトルのx成分、副ベクトルのy成分に対応している。実施例1では解像度が600dpiであるので、表1に記載した周期構造を実現することで、表1に記載したスクリーン線数になることは簡単に理解できる。
次に、実施例1のディザ処理手段117における、CMYKデータ(8bit)からCMYKデータ(4bit)への変換方法について説明する。図10は、実施例1のディザマトリクスを示す。図8のディザ処理手段117中のディザマトリクス記憶部には、CMYK4色の各色に対応するディザマトリクスがあらかじめ記憶されている。このディザマトリクスは、閾値データが記入されたマトリクスである。実施例1では、ディザ処理後のデータが4bit(16値)となるように、量子化数が4bit(16値)のディザ処理を行う。このとき、プリンタγ変換処理後のCMYKデータにおける各画素の階調値(8bit、256階調)とレベル0〜レベル15の16階調(4bit)のレベルに予め設定された閾値データとを比較することにより、入力データの各画素がレベル0〜レベル15のいずれのレベルに属するかを決定している(詳細後述)。このため、4bitディザマトリクスは、閾値データが記述された15枚のマトリクスによって構成される。つまり、ディザマトリクス記憶部には、このような閾値データが記述された15枚のマトリクスを1色分として、CMYK4色分のディザマトリクスが記憶されている。
ディザ処理手段117の比較部では、ディザマトリクス記憶部に記憶されている閾値データの値とプリンタγ補正手段116によって変換を施されたCMYKデータ(8bit)の値とを、1つ1つの画素について比較することで、各色4bit(16値)に変換されたCMYKデータ(出力用画像データ118)を得る。この閾値データとの比較方法を具体的に説明すると、次のようになる。まず1つの画素に注目して、プリンタγ補正処理後のCMYKデータにおける階調値(以後DATA値と略す)と、1枚目のディザマトリクスの注目する画素に対応する閾値データ(以後閾値と略す)とを比較する。DATA値が閾値よりも大きければ2枚目の閾値と比較する。以後、DATA値が閾値よりも大きい限り、レベル2、レベル3と比較を繰り返す、そして、はじめてDATA値が閾値以下となったのがN枚目のディザマトリクスであったと仮定すると、その画素のディザ処理後の値を(N−1)の値に変換する。もし、DATAが15枚目の閾値よりも大きければ、その画素のディザ処理後の値を15の値に変換する。実施例1では、このような変換を行うことで、入力データを、0〜15(4bit)のレベルをもつデータに変換する。
実施例1では、上述したように閾値データが記述された15枚のマトリクスを1色分として、CMYK4色分のディザマトリクスが、ディザマトリクス記憶部に記憶されているが、ここでは、Y色用のディザマトリクスを例に、より詳細に説明する。図10は、実施例1のY色用ディザマトリクスである。表1で説明したようにY色用ディザマトリクスは、低濃度領域では200lpi、0degのドットスクリーンディザである。解像度が600dpiであるため、X方向、Y方向ともに3画素おきに成長中心が現れる。ドットスクリーンディザでは成長中心の画素を中心にして、画像濃度が高くなるにしたがって、ドット状に網点が大きくなっていく。図10のPlane1をみると理解できるが、X方向、Y方向ともに3画素おきに、閾値が小さくなっており、この画素が成長中心に相当している。またPlane1をみるとわかるように、成長中心近くの画素の閾値が小さく成長中心から離れた画素の閾値が大きい。このように閾値を配置することで、ドット状のパターンによる擬似中間調処理を行っている。つまり、実施例1では、図10のディザマトリクスを使用することで、低濃度領域でドット状のパターンとなるような擬似中間調処理を行うことができる。
一方で、図10のPlane9をみると理解できるが、Plane9ではPlane1〜Plane8とは異なり36画素すべての閾値が近い値になっている(136〜152の範囲内である)。同様にPlane10〜Plane15についても、各Plane内では閾値が近い値になっている。このように閾値を設定することにより、全ての画素をほぼ均一に成長させることができるようになる。つまり、実施例1では、図10のディザマトリクスを使用することで、高濃度領域で全ての画素を平均的に成長させるような擬似中間調処理を行うことができる。
図11は、図10のディザマトリクスを使用して、擬似中間調処理であるディザ処理後のデータを表したものである。低濃度領域ではドット状のパターンとなり、中濃度で白地が全て埋まり、高濃度領域では全ての画素を平均的に成長させている(各画素での値が完全に一致しない場合もあるが、低濃度領域のように差が生じることはない)。このように、実施例1では、特に高濃度領域において全ての画素を平均的に成長させることで、白地が現れないようにしており、白地を現さずに光書込みによる潜像状態を変化させてトナー付着量を変化させている。このような白地部を現すことなく、トナー付着量をコントロールできる点が、本発明による顕著な効果である。
実施例1における、他のCMK色のディザマトリクスの成長順についても、Y色のディザマトリクスと同様であるので、説明を省略する。CMK色のディザマトリクスについても、低濃度領域ではドット状のパターンとなるように成長させ、高濃度領域では全ての画素を平均的に成長させるように、ディザマトリクスを作成して、ディザ処理を行なっている。
実施例1では、ディザ処理後のCMYKデータは、1画素あたりCMYK各色4bit(16値)のデータとなる。この1画素あたりのCMYK各色のデータがとりうるサイズ(実施例1の16値)を量子化数とよぶ。つまり、実施例1では量子化数が16値の擬似中間調処理(ディザ処理)を用いている。しかしながら、このことは本発明を何ら限定するものではない。本発明では、「高濃度側領域では全ての画素を平均的に成長させる成長順」を実現できるものであれば、量子化数が3値以上の擬似中間調処理であればよい(量子化数が2値の場合には、「高濃度側領域では全ての画素を平均的に成長させる成長順」を実現することができないが、量子化数が3値以上であれば中間レベルで全ての画素の値を一致させることができるため、「高濃度側領域では全ての画素を平均的に成長させる」ことができる)。
また、実施例1では入力データの値が136(136/255⇒約53%)を超えたところから、「全ての画素をほぼ均一に成長させる」ような形態へと移行することを説明した。このような移行を行う入力データの値のことを、これ以降では「移行点」と呼ぶことにする(上記の例では移行点は約53%)。この移行点についても、本発明は移行点を上記の値に何ら限定するものではない。移行点については、画像形成装置のいわゆる階調特性などによって適宜設定することが望ましい。多くの場合は、この移行点を40%〜80%の範囲内に設定することが望ましい。
実施例2:
実施例2の構成は、実施例1とほぼ同じである。ただし、実施例2では、ディザ処理において使用するディザマトリクスが実施例1と異なる。実施例2では、ディザ処理後の画像はライン状の周期構造になっており、いわゆるラインスクリーンディザとよばれるディザマトリクスを使用している。ラインスクリーンの場合もドットスクリーンと同じように、ディザマトリクスの周期構造を特徴づける数値として、スクリーン角度およびスクリーン線数が用いられる。
ラインスクリーンディザにおける、スクリーン角度およびスクリーン線数は、図12に示す計算式によって一義的に算出される。ラインスクリーンの場合も、2次元の周期構造は、2つの2次元ベクトルによって表すことが便利であるため、この2つのベクトルを以後、主ベクトルおよび副ベクトルと呼ぶことにする。
上記の主ベクトル、副ベクトルを用いて、実施例2でのディザマトリクス(CMYKの4色)の組み合わせを記載すると表2のようになる。
表2中のa0x,a0y,a1x,a1yの4つの整数は、それぞれ、図12における主ベクトルのx成分、主ベクトルのy成分、副ベクトルのx成分、副ベクトルのy成分に対応している。実施例2では解像度が600dpiであるので、表2に記載した周期構造を実現することで、表2に記載したスクリーン線数になることは簡単に理解できる。
図13は、実施例2のC色用ディザマトリクスである。表2で説明したようにC色用ディザマトリクスは、低濃度領域では212lpi、45degのラインスクリーンディザである。このため、角度が45°方向にライン状に連なったパターンとなり、画像濃度が高くなるにしたがって、ライン幅が太くなっていく。図13のPlane1をみると理解できるが、45°方向に閾値が小さくなっており、この方向に連なるディザパターンとなる。したがって、実施例2では、このような閾値を配置することでライン状のパターンによる擬似中間調処理を行っている。つまり、実施例2では、図13のディザマトリクスを使用することで、低濃度領域でライン状のパターンとなるような擬似中間調処理を実現できる。
一方で、図13のPlane9をみると理解できるが、Plane9ではPlane1〜Plane8とは異なり16画素すべての閾値が近い値になっている(136〜151の範囲内である)。これは、Plane1〜Plane8と明らかに異なっている。同様にPlane10〜Plane15についても、各Plane内では閾値が近い値になっている。このように閾値を設定することにより、全ての画素をほぼ均一に成長させることができるようになる。つまり、実施例2では、図13のディザマトリクスを使用することで、高濃度領域で全ての画素を平均的に成長させるような擬似中間調処理を実現できる。
図14は、図13のディザマトリクスを使用して、擬似中間調処理であるディザ処理後のデータを表す。低濃度領域ではライン状のパターンとなり、中濃度で白地が全て埋まり、高濃度領域では全ての画素を平均的に成長させている(各画素での値が完全に一致しない場合もあるが、低濃度領域のように差が生じることはない)。
このように、実施例2でも、高濃度領域において全ての画素を平均的に成長させることで、白地が現れないようにしており、白地を現さずに光書込みによる潜像状態を変化させてトナー付着量を変化させている。このような白地部を現すことなく、トナー付着量をコントロールできる点が、本発明による顕著な効果である。
実施例2における他のMYK色のディザマトリクスの成長順についてもC色のディザマトリクスと同様であるので、説明を省略する。MYK色のディザマトリクスについても、低濃度領域ではライン状のパターンとなるように成長させ、高濃度領域では全ての画素を平均的に成長させるような、ディザマトリクスを使用してディザ処理を行なっている。
実施例3:
実施例3の構成は、実施例1とほぼ同じである。ただし、実施例3では、現像装置のトナー担持体を無端状に形成し、このトナー担持体を回転自在に配置した点が実施例1と異なる(実施例1では、トナー担持体は固定されている)。具体的には、トナー担持体がギヤなどを通して駆動手段に接続されるように構成されている。
実施例3では、作像動作時には、トナー担持体は静止しているため、実施例1と同様に動作する。しかし、実施例3では、非画像作像時のタイミングで、トナー担持体を回転するようにしてある。実施例3では、このトナー担持体の回転は、トナー担持体の周速が50mm/secとなるようにした。
実施例4:
実施例4の構成は、実施例1とほぼ同じである。ただし、実施例4でも現像装置のトナー担持体を無端状に形成し、このトナー担持体を回転自在に配置してある。
実施例4では、作像動作時においてもトナー担持体を回転させるように構成し、周速が50mm/secで回転している。実施例4では、電極の構成や駆動電圧の周波数は実施例1と同じであるので、現像領域でのトナーの移動速度は150mm/secとなっている。このため、実施例4では、トナー担持体上のトナー付着量を0.47mg/cm^2になるように、トナー補給ローラに印加する電圧を調整した。具体的には、トナー補給ローラとトナー担持体間に印加する電圧を1.2kVにすることで、この状態を実現した。
実施例4のように、トナー担持体に印加する駆動電圧でトナーを搬送するとともに、トナー担持体自体を回転させることで、トナー担持体上のトナー担持量が少なくても、より多くのトナーを現像領域に搬送することができるようになる。トナー担持体上のトナー担持量が少ないほうが、温度や湿度の変動によって搬送量が変化するといった悪影響を受け難く、安定性の高いトナー搬送を実現できる。
実施例5:
実施例5の構成は、実施例1とほぼ同じである。ただし、実施例5では、現像装置のトナー担持体を無端状に形成し、このトナー担持体を回転自在に配置する。また、実施例5では、トナー担持体に配置される電極は、搬送電界ではなく、振動電界を発生する。
図15は、実施例5のトナー担持体の構成を表した概略図であり、トナー担持体42の電極421には振動電圧を印加することでトナーを非静止状態に担持するように構成してある。実施例5のトナー担持体42は、実施例1のように搬送電界によってトナーを搬送することはなく、同じ位置でトナーが往復運動を行なうようになっている。また、実施例5のトナー担持体は図15の矢印方向に、周速100mm/secで回転する。このように実施例5では、現像領域へのトナーの搬送は、トナー担持体42の電極421が形成する搬送電界ではなく、トナー担持体の回転移動によって行う。
図16は、実施例5の電極へ印加する駆動電圧を表している。このような駆動電圧を印加することで、実施例5ではトナー担持体上のトナーを、非静止状態で担持する。また、この駆動電圧の時間的平均値である−300Vが、現像バイアスに相当している。実施例5でも、この現像バイアスによって、現像領域において、トナーをベルト感光体1側に移動させて、静電潜像の現像を行なう。
実施例5においても、トナー担持体上のトナー量が、0.7mm/cm^2となるように、トナー供給ローラとトナー担持体間に印加する電圧を調整して、1.3kVとした。このため、トナー担持体42が搬送するトナー量は、実施例1と同じで、7mg/(cm・sec)となる。したがって、実施例5においても、実施例1と同じように、画像領域ではトナー担持体42上に保持されている全てのトナーがベルト感光体1側に移動したことになる。